JP2001303167A - オーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩耗性材料 - Google Patents

オーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩耗性材料

Info

Publication number
JP2001303167A
JP2001303167A JP2000125172A JP2000125172A JP2001303167A JP 2001303167 A JP2001303167 A JP 2001303167A JP 2000125172 A JP2000125172 A JP 2000125172A JP 2000125172 A JP2000125172 A JP 2000125172A JP 2001303167 A JP2001303167 A JP 2001303167A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
wear
cast iron
spheroidal graphite
graphite cast
resistant material
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2000125172A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3704676B2 (ja
Inventor
Yuichi Tanaka
雄一 田中
Yasuhiro Nagafune
康裕 長船
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Individual
Original Assignee
Individual
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Individual filed Critical Individual
Priority to JP2000125172A priority Critical patent/JP3704676B2/ja
Publication of JP2001303167A publication Critical patent/JP2001303167A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3704676B2 publication Critical patent/JP3704676B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P10/00Technologies related to metal processing
    • Y02P10/20Recycling

Landscapes

  • Soil Working Implements (AREA)
  • Heat Treatment Of Articles (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性の硬質部材を溶接する必要がなく、
しかも内部が強度と靭性延性に優れかつ表面が耐摩耗性
に優れた材料として、サプソイラー、ロータリー、プラ
ウ等の刃やスプロケット等の農機具、屎尿のポンプケー
ス、畜産糞尿ポンプや散布機械部品、汚泥の輸送パイ
プ、木材(チップ)破砕機、キャタピラ等の耐摩耗性材
料に好適であり、しかもコストを低減し、リサイクルが
可能な鋳造品を提供する。 【解決手段】 湿潤した摩耗面を有することを特徴とす
るオーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩耗性材料。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、内部が強度と靭
性延性に優れ、かつ表面が耐摩耗性に優れた耕作、攪
拌、掘削、破砕、散布等を行う器具に好適なオーステン
パ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩耗性材料に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、農機具として使用されるサプソ
イラー、ロータリー、プラウ等の刃やスプロケット、屎
尿のポンプケース、畜産糞尿ポンプや散布機械部品、汚
泥の輸送パイプ、木材(チップ)破砕機、キャタピラ等
の耐摩耗性材料には、主として鍛鋼品が使用されてい
る。
【0003】農機具等では、例えばプラウ等の刃で土地
を耕す場合、常に土砂と触れることになるので、鍛鋼品
の摩耗部分には高炭素鋼等の耐摩耗性の極めて硬い材料
を溶接し、かつ表面処理などを施して使用しているのが
普通である。この硬質の耐摩耗性部分の強度は引張り強
さで60kg/mm程度であり、延性は5%程度の材
料が使用されている。この特性は必ずしも良好なもので
はなく、耐摩耗性材料としては不十分であり、しかも、
溶接部分の摩耗寿命が製品の寿命となるという欠点があ
った。
【0004】また、上記のような農耕器具の鍛鋼品はプ
レス加工、鍛造、溶接等の加工が必要であるため、形状
が加工な可能な範囲に限られてしまうという問題があ
り、機械加工コストや製造工数さらには製造時間も増加
するという問題がある。この製造エネルギーを試算して
みたところ、ギア−を製造した場合において5800〜
6200kWの多くのエネルギーを消費するという結果
が得られた。さらに、上記のように溶接により接合して
製造したものは、使用後スクラップとして再利用する場
合には、複数の材料が混在しているため、リサイクル材
としては不向きであるという欠点がある。このようなこ
とから、耐摩耗性の硬質部材を使用しなくても済むよう
に、一体化した鋳造品の使用が最も有効と考えられる
が、そのような鋳造品で有効なものが得られていないの
が現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題
を解決するために、耐摩耗性の硬質部材を溶接する必要
がなく、しかも内部が強度と靭性延性に優れかつ表面が
耐摩耗性に優れた材料として、サプソイラー、ロータリ
ー、プラウ等の刃やスプロケット等の農機具、屎尿のポ
ンプケース、畜産糞尿ポンプや散布機械部品、汚泥の輸
送パイプ、木材(チップ)破砕機、キャタピラ等の耐摩
耗性材料に好適であり、しかもコストを低減し、リサイ
クルが可能な鋳造品を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、 1 湿潤した摩耗面を有することを特徴とするオーステ
ンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩耗性材料 2 土砂、汚泥等のスラッジ、パルプ又は粘性材料に、
7vol%以上の水分を含有させて、耕作、攪拌、掘
削、破砕、散布等を行う器具の摩耗面を湿潤面とするこ
とを特徴とするオーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩
耗性材料 3 10vol%以上の水分を含有することを特徴とす
る上記2記載のオーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩
耗性材料 4 15vol%以上の水分を含有することを特徴とす
る上記2記載のオーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩
耗性材料 5 摩耗面に水又は水溶液を散布又は流動させ、摩耗面
を湿潤面とすることを特徴とする上記1〜4のそれぞれ
に記載のオーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩耗性材
料 6 摩耗面を水又は水溶液に浸漬し、摩耗面を湿潤面と
することを特徴とする上記1〜4のそれぞれに記載のオ
ーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩耗性材料 7 平均黒鉛粒径が10μm以上であることを特徴とす
る上記1〜6のそれぞれに記載のオーステンパ球状黒鉛
鋳鉄からなる耐摩耗性材料 8 平均黒鉛粒径が20μm以上であることを特徴とす
る上記1〜6のそれぞれに記載のオーステンパ球状黒鉛
鋳鉄からなる耐摩耗性材料 9 平均黒鉛粒径が35μm以上であることを特徴とす
る上記1〜6のそれぞれに記載のオーステンパ球状黒鉛
鋳鉄からなる耐摩耗性材料 10 C2.5〜4.0mass%、Si1.8〜2.
7mass%、Mn0.05〜0.7mass%、P
0.08mass%以下、S0.02mass%以下、
Mg0.01〜0.1mass%、残部Fe及び不可避
的不純物からなる球状黒鉛鋳鉄を、830°C〜950
°Cの範囲で30分〜2時間保持した後、250°C〜
400°Cまで急冷し、その温度で30分〜2時間保持
して得た耐摩耗性材料であることを特徴とする上記1〜
9記載のオーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩耗性材
料 11 830°C〜900°Cの範囲で30分〜2時間
保持した後、300°C〜400°Cまで急冷し、その
温度で45分〜2時間熱処理することを特徴とする上記
10記載のオーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩耗性
材料、を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明は、耐摩耗性材料として、
C2.5〜4.0mass%、Si1.8〜2.7ma
ss%、Mn0.05〜0.7mass%、P0.08
mass%以下、S0.02mass%以下、Mg0.
01〜0.1mass%、残部Fe及び不可避的不純物
からなるオーステンパ球状黒鉛鋳鉄を使用する。この材
料の引張り強さは100kg/mm以上、延性12%
程度の機械的特性を有している。このオーステンパ球状
黒鉛鋳鉄は、本来合金鋼に匹敵する機械的特性を有する
ものであるが、本発明者らが研究してきたところによれ
ば、湿潤雰囲気で使用すると著しい脆化現象を起こすこ
とが分かった。例えば引張り強さで30%の低下、また
伸びで1/4に低下し、疲労限界も50%程度低下した
(鋳造工学、第70巻(1998)第3号、193〜1
99頁「水によるオーステンパ球状黒鉛鋳鉄の環境脆
化」、同第71巻(1999)第10号、679〜68
4頁「オーステンパ球状黒鉛鋳鉄の水脆化に及ぼす黒鉛
粒径の影響」、同698〜703頁「水環境におけるオ
ーステンパ球状黒鉛鋳鉄の疲れ特性」参照)。
【0008】このような球状黒鉛鋳鉄の水による脆化
は、塑性変形で活性化された鋳鉄表面において、水の分
解によって生じた吸着水素原子が鋳鉄中へ拡散吸収され
る結果、水素脆化によって引き起こされることが分かっ
た。しかも、黒鉛の粒径が大きくなるにしたがって、脆
化が大きくなることも判明した。このような球状黒鉛鋳
鉄を強靭材料として屋外又は水中で使用するようなこと
を考えた場合、従来は水による表面腐食、すなわち“さ
び“に注意が払われている程度であり、水による脆化現
象を知ることはなく、この研究自体は球状黒鉛鋳鉄の欠
点を知る上で技術的に大きな前進であったが、残念なが
ら球状黒鉛鋳鉄を風雨にさらされる屋外又は水中で使用
することについて否定する結果となった。このように、
球状黒鉛鋳鉄は機械設計者の材質的信頼性を得ている材
料とはいえなかった。
【0009】ところが、上記組成の球状黒鉛鋳鉄を83
0°C〜950°Cの範囲で30分〜2時間保持した
後、250°C〜400°Cまで急冷し、その温度で3
0分〜2時間保持(好ましくは、830°C〜900°
Cの範囲で30分〜2時間保持した後、300°C〜4
00°Cまで急冷し、その温度で45分〜2時間熱処
理)して得た本発明の耐摩耗性オーステンパ球状黒鉛鋳
鉄を常時湿潤面とし、摩耗特性を調べたところ、耐摩耗
性が著しく向上することが判明した。なお、ここでオー
ステンパ球状黒鉛鋳鉄の摩耗部が湿潤雰囲気(状態)に
あるということは、該摩耗部が常時湿り潤う環境にあり
乾燥状態にはないことを意味する。すなわち、大気中に
おいて水蒸気(湿潤飽和水蒸気)で飽和した空気が冷却
しその一部が摩耗部に凝結した状態、土中の水分により
摩耗部が湿潤している状態及び該摩耗部が水に浸漬して
いる状態等の全てを含む。上記熱処理の条件、250°
C〜400°Cで30分〜2時間保持する理由は、強度
と延性のバランスの良い材料が得られるからである。こ
の温度及び時間に満たない場合には、オーステンパ反応
が途中で終ってしまうため延性が小さくなり、またこの
条件を超えると反応が進みすぎ、炭化物が析出し強度及
び延性が落ちる。すなわち、上記の範囲は強度と伸びの
好適な極大値を得るためのものである。
【0010】オーステンパ球状黒鉛鋳鉄を摩耗面として
使用する場合には、一定期間使用した後、摩減した部品
を交換することが前提となるので、機械的強度よりもむ
しろ摩耗材としての耐久性の問題である。しかも後述す
る試験では、硬化は主として表面部分で起こり、内部は
オーステンパ球状黒鉛鋳鉄の機械的な特性をそのまま維
持しているということが分かった。また、表面の硬化は
上記のように脆化面ともなり、長期間風雨に曝されるよ
うな構造材として使用する場合には、表面が水素脆化し
亀裂や欠陥が入り易くなり疲労強度等の機械的強度が低
下するが、摩耗部品の場合には、このような面は常時摩
耗し新生面が現れるので、材料全体が脆化するというこ
とはない。このようなことから、本発明のオーステンパ
球状黒鉛鋳鉄は、上記の特性を生かし、水に濡れる屋外
の機械的構造材としてよりは、むしろ耐摩耗性材料とし
て新しい用途が見出された。
【0011】オーステンパ球状黒鉛鋳鉄表面を常時湿潤
面とするためには、例えば摩耗面を水又は水溶液に浸漬
するか又は摩耗面に水又は水溶液を散布又は流動させて
得ることができる。また、オーステンパ球状黒鉛鋳鉄を
耕作、攪拌、掘削、破砕、散布等を行う器具として使用
する場合には、対象物となる土砂、汚泥等のスラッジ、
パルプ又は粘性材料に、7vol%以上の水分を含有さ
せても本発明の効果を達成することができる。好ましく
は10vol%以上であり、さらに好ましくは15vo
l%以上の水分を含有させるのが良い。例えば、本発明
のオーステンパ球状黒鉛鋳鉄を耕作用(農耕用)爪とし
て使用する場合には、必要な耕作用爪の摩耗面の湿潤を
得るために、耕作用爪に水を散布して使用する。また、
土中の水分を利用することもできる。雨中若しくは雨上
がりに耕作する場合又は水分を多量に含有する耕作地の
場合には、特に上記のような水を散布する必要はなく、
そのままオーステンパ球状黒鉛鋳鉄の耕作用爪を使用す
ることができる。しかし、いずれにしても耐摩耗性を維
持するためには、常時オーステンパ球状黒鉛鋳鉄表面を
常時湿潤面とすることが必要である。
【0012】オーステンパ球状黒鉛鋳鉄の黒鉛の粒径は
大きい方が硬さは向上する。したがって、通常は平均黒
鉛粒径が10μm以上、好ましくは20μm以上、さら
に好ましくは平均黒鉛粒径35μm以上とするのが良
い。黒鉛粒径を大きくすると脆化が増す傾向があるの
で、用途に応じて黒鉛粒径を調整することができる。以
上によって、耐摩耗機械器具を鋳造により一体化したも
のを製造することが可能となり、製品全体を熱処理によ
って耐摩耗性を付与することができ、製品の全ての部分
で優れた耐摩耗性を有する。すなわち、内部はオーステ
ンパ球状黒鉛鋳鉄の強度を維持でき、かつ表面において
は湿潤環境下において硬度を上げて耐摩耗性を向上させ
ることができるという優れた特徴を有する。これによ
り、引張り強度は100kg/mm以上、延性12%
程度のオーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩耗性材料
が得られる。
【0013】上記のように、鋳造品は複雑形状や中空形
状を容易に製作できるため、プレス品、鍛造品、溶接品
等の成形加工品に比べ、部品形状にはるかに自由度があ
り、使用条件に適した部品形状にすることができ、設計
に制約がないという大きな特徴がある。そして、器具の
一部に耐摩耗性の硬質部材を溶接するようなことは全く
不要となった。また、従来品に比べ製造工数が少なく、
鋳物はマテリアルフローの最後の受け皿でもありコスト
を著しく低減することが可能となった。さらに、使用後
のオーステンパ球状黒鉛鋳鉄部品スクラップもさらに溶
解して再利用することが可能であるという優れた特徴を
有する。そして、製造エネルギーコストを試算してみた
ところ、ギア−を製造した場合において3100kWの
エネルギーを消費するのみで、従来の鍛鋼品に比べ半分
以下という結果が得られた。
【0014】
【実施例】次に、実施例について説明する。なお、本実
施例は発明の一例を示すためのものであり、本発明はこ
れらの実施例に制限されるものではない。すなわち、本
発明の技術思想に含まれる他の態様及び変形を含むもの
である。
【0015】供試材は平行部厚さ25mmのY形砂型に
鋳込んだ球状黒鉛鋳鉄であり、球状化率80%、平均黒
鉛粒径は25μmである。供試材の化学組成と表1に示
す。本発明のオーステンパ球状黒鉛鋳鉄(ADI)の熱
処理パターンの例を図1に示す。また、比較のために、
球状黒鉛鋳鉄の焼入れ焼戻し材(Q.T)及び鋳放し材
(as cast)を同様に作製した。図1の(a)はADI
の熱処理パターンの例を、(b)はQ.Tの熱処理パタ
ーンの例を示す。
【0016】
【表1】
【0017】摩耗試験は土砂を使用した。この試験装置
及び試験片を図2(a)(b)に示す。図2に示す装置
(a)にφ10mmの丸棒試験片(b)を取付け、水を
7〜35vol%混合したカンラン石又はケイ砂中で5
00rpm及び140rpmで回転させ、重量減少量を
測定した。図2の符号1は試験片、符号2は砂と水の混
合物、符号3は冷却水を示す。
【0018】引張試験は、φ6mm、平行部35mmの
JIS4号サブサイズ試験片で、クロスヘッド速度8.
3mm/ksで行った。引張試験環境は大気中及び試験
片中央部を水で濡らしたティシュペーパーを巻き付け水
付着状態(湿潤状態)とした。
【0019】硬さ試験は、マイクロビッカース硬さ試験
機により、付加荷重0.245Nで30秒間、表面を濡
らした状態と乾燥状態で行った。圧痕を走査型顕微鏡で
写真撮影し、その後、画像解析装置によって対角線長さ
を測定して硬さを算出した。
【0020】スクラッチテストは、試料表面を水で濡ら
した状態及び乾燥状態で、ダイヤモンド圧子を負荷速度
1.7N/sで50Nまで押付けながら試料を0.17
mm/sで移動させ圧痕幅を測定した。
【0021】86.4ksの土砂摩耗試験後の摩耗量
を、それぞれの硬さで整理したものを図3に示す。○は
オーステンパ球状黒鉛鋳鉄(ADI)、■は球状黒鉛鋳
鉄の焼入れ焼戻し材(Q.T)、左上は鋳放し材(as c
ast)をそれぞれ示す。ADIはQ.T及び鋳放し材(a
s cast)に比べ、優れた耐摩耗性を示した。特に硬さが
同程度であるQ.Tに比べても優れた耐摩耗性が得られ
ている。ADIの耐摩耗性は、オーステナイトの加工誘
起変態によると一般に言われているが、この結果は加工
誘起変態による硬さの上昇だけでは説明が困難であると
考えられる。すなわち、水の存在が硬さの上昇に強く影
響していることが、この実験結果から強く推測される。
この傾向は、水を7vol%以上混合した場合に顕著で
あった。
【0022】次に、乾燥及び水付着状態における硬さの
分布を図4に示す。図4のグラフは、正規確率紙にプロ
ットしたもので、Y軸は硬さの値、X軸はデータポイン
トより小さい変数Yのパーセンテージを示す。○は乾燥
状態、●は水付着状態を示す。図4から明らかな様に、
水付着によって、試料表面で硬化を生じた。硬さ試験の
負荷荷重が大きくなるとこの現象は発生せず、水による
硬化はごく薄い表面層で生じていると考えられる。これ
は、内部はオーステンパ球状黒鉛鋳鉄の強度(引張り強
さ及び靭性延性)を維持でき、かつ表面においては湿潤
環境下において硬度を上げて耐摩耗性を向上させること
ができるという耐摩耗性材料としての優れた特性を持つ
意味で重要である。
【0023】次に、ADIのスクラッチテストの結果を
図5に示す。図5で縦軸は圧痕の幅を示す。○は乾燥状
態、●は水付着状態を示す。図5から明らかなように、
水付着によって圧痕の幅が小さくなり、ひっかきによる
摩耗が抑制されている。
【0024】以上の摩耗試験、硬さ試験及びスクラッチ
テストの結果から、本発明のオーステンパ球状黒鉛鋳鉄
(ADI)の優れた耐摩耗特性は、オーステナイトの加
工誘起変態に加え、材料表面に水が付着した状態で塑性
変形をすることにより表面が硬化する水による自己硬化
現象によると考えることができる。オーステンパ球状黒
鉛鋳鉄の水分の存在による自己硬化現象を図6に模式的
に解説した。すなわち図6に示すように、砂等による摩
擦によりオーステンパ球状黒鉛鋳鉄が変形すると同時に
水分の存在により、硬化が生じる。
【0025】次に、本発明のオーステンパ球状黒鉛鋳鉄
(ADI)から製造した耕作用爪を使用して実際に耕作
し、該爪の摩耗量を調べた。この材料の球状化率は80
%、平均黒鉛粒径は25μm、化学組成は同様に表1に
示す通りである。また、この耕作用爪は球状黒鉛鋳鉄を
900°Cで2時間保持した後、300°Cまで急冷
し、その温度で1.5時間保持する熱処理を施したもの
である。比較材として、通常の黒鉛鋳鉄に構造用鋼(S
55C)を溶接して摩耗面とした従来使用されている耕
作用爪を用いた。いずれの場合も、耕作した土中の水分
量は15vol%であり、耕作用爪は湿潤環境(状態)
にあった。摩耗テストの結果を図7に示す。図における
○は比較例の摩耗曲線、●は本発明の実施例の摩耗曲線
を示す。また、縦軸は摩耗による重量減少量、横軸は耕
作面積を示す。図7に示す通り、比較例の耕作用爪は耕
作面積の増加とともに、急速に摩耗量が増加している
が、本発明の耕作用爪は比較例に比べ著しく摩耗量が減
少している。そして耕作面積の増加とともにその差が大
きくなっている。これらの対比から、本発明のオーステ
ンパ球状黒鉛鋳鉄(ADI)からなる耐摩耗性材料は、
従来の耐摩耗性材料に比べ極めて著しいことが分かる。
【0026】以上に示す通り、水分の存在によりオース
テンパ球状黒鉛鋳鉄の表面層のみが硬化し、耐摩耗性が
向上する。摩耗の進行とともにオーステンパ球状黒鉛鋳
鉄の新生面が現れるが、この新生面においても同様の機
構により硬さが上り、耐摩耗性が向上する。この耐摩耗
性の向上は耐摩耗性器具としてのオーステンパ球状黒鉛
鋳鉄が存在する間、継続することになり、器具の寿命が
著しく向上する利点がある。上記においては、水のみの
存在で説明したが、水に他の物質を含む水溶液でも、ま
た水分を含有するスラッジ、パルプ又は粘性材料におい
ても同様の結果が得られた。いずれにしても、耐摩耗性
を向上させるためには、オーステンパ球状黒鉛鋳鉄から
なる耐摩耗性材料の表面が湿潤状態にあることが必要で
ある。
【0027】
【発明の効果】本発明は、鋳造品の内部が強度と靭性延
性に優れかつ表面がより耐摩耗性に優れた材料を得るこ
とができ、しかもコストを低減し、リサイクルが可能な
鋳造品を提供することができる効果を有する。また、複
雑形状や中空形状を容易に製作できるため、プレス品、
鍛造品、溶接品等の成形加工品に比べ、部品形状にはる
かに自由度があり、使用条件に適した部品形状にするこ
とができ、さらに器具の一部に耐摩耗性の硬質部材を溶
接することも不要となる大きな利点を有する。そして、
サプソイラー、ロータリー、プラウ等の刃やスプロケッ
ト等の農機具、屎尿のポンプケース、畜産糞尿ポンプや
散布機械部品、汚泥の輸送パイプ、木材(チップ)破砕
機、キャタピラ等の耐摩耗性材料に使用することができ
る大きな特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】オーステンパ球状黒鉛鋳鉄(ADI)の熱処理
パターン(a)と球状黒鉛鋳鉄の焼入れ焼戻し材(Q.
T)の熱処理パターン(b)を示す図である。
【図2】摩耗試験装置(a)及び試験片(b)を示す図
である。
【図3】土砂摩耗試験後の摩耗量と硬さの関係を示すグ
ラフである。
【図4】乾燥及び水付着状態における硬さの分布を示す
グラフである。
【図5】ADIのスクラッチテストの結果を示すグラフ
である。
【図6】オーステンパ球状黒鉛鋳鉄の水分の存在による
自己硬化現象の模式的な説明図である。
【図7】本発明の実施例と比較例(従来例)の耕作用爪
の耕作面積に対する摩耗量を調べたグラフである。
【符号の説明】
1 試験片 2 砂と水の混合物 3 冷却水 4 砂 5 水 6 オーステンパ球状黒鉛鋳鉄 7 変形(硬化)

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 湿潤した摩耗面を備えていることを特徴
    とするオーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩耗性材
    料。
  2. 【請求項2】 土砂、汚泥等のスラッジ、パルプ又は粘
    性材料に、7vol%以上の水分を含有させて、耕作、
    攪拌、掘削、破砕、散布等を行う器具の摩耗面を湿潤面
    とすることを特徴とするオーステンパ球状黒鉛鋳鉄から
    なる耐摩耗性材料。
  3. 【請求項3】 10vol%以上の水分を含有すること
    を特徴とする請求項2記載のオーステンパ球状黒鉛鋳鉄
    からなる耐摩耗性材料。
  4. 【請求項4】 15vol%以上の水分を含有すること
    を特徴とする請求項2記載のオーステンパ球状黒鉛鋳鉄
    からなる耐摩耗性材料。
  5. 【請求項5】 摩耗面に水又は水溶液を散布又は流動さ
    せ、摩耗面を湿潤面とすることを特徴とする請求項1〜
    4のそれぞれに記載のオーステンパ球状黒鉛鋳鉄からな
    る耐摩耗性材料。
  6. 【請求項6】 摩耗面を水又は水溶液に浸漬し、摩耗面
    を湿潤面とすることを特徴とする請求項1〜4のそれぞ
    れに記載のオーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩耗性
    材料。
  7. 【請求項7】 平均黒鉛粒径が10μm以上であること
    を特徴とする請求項1〜6のそれぞれに記載のオーステ
    ンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩耗性材料。
  8. 【請求項8】 平均黒鉛粒径が20μm以上であること
    を特徴とする請求項1〜6のそれぞれに記載のオーステ
    ンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩耗性材料。
  9. 【請求項9】 平均黒鉛粒径が35μm以上であること
    を特徴とする請求項1〜6のそれぞれに記載のオーステ
    ンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩耗性材料。
  10. 【請求項10】 C2.5〜4.0mass%、Si
    1.8〜2.7mass%、Mn0.05〜0.7ma
    ss%、P0.08mass%以下、S0.02mas
    s%以下、Mg0.01〜0.1mass%、残部Fe
    及び不可避的不純物からなる球状黒鉛鋳鉄を、830°
    C〜950°Cの範囲で30分〜2時間保持した後、2
    50°C〜400°Cまで急冷し、その温度で30分〜
    2時間保持して得た耐摩耗性材料であることを特徴とす
    る請求項1〜9のそれぞれに記載のオーステンパ球状黒
    鉛鋳鉄からなる耐摩耗性材料。
  11. 【請求項11】 830°C〜900°Cの範囲で30
    分〜2時間保持した後、300°C〜400°Cまで急
    冷し、その温度で45分〜2時間熱処理することを特徴
    とする請求項10記載のオーステンパ球状黒鉛鋳鉄から
    なる耐摩耗性材料。
JP2000125172A 2000-04-26 2000-04-26 オーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる農機具の使用方法 Expired - Fee Related JP3704676B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000125172A JP3704676B2 (ja) 2000-04-26 2000-04-26 オーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる農機具の使用方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000125172A JP3704676B2 (ja) 2000-04-26 2000-04-26 オーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる農機具の使用方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001303167A true JP2001303167A (ja) 2001-10-31
JP3704676B2 JP3704676B2 (ja) 2005-10-12

Family

ID=18635169

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000125172A Expired - Fee Related JP3704676B2 (ja) 2000-04-26 2000-04-26 オーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる農機具の使用方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3704676B2 (ja)

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS58207354A (ja) * 1982-05-26 1983-12-02 Sugiyama Chuzo Kk 球状黒鉛鋳鉄製揚重機部品の製造方法
JPS6176612A (ja) * 1984-09-21 1986-04-19 Toyota Motor Corp 高強度球状黒鉛鋳鉄の製造方法
JPS61210151A (ja) * 1985-03-13 1986-09-18 Mazda Motor Corp 球状黒鉛鋳鉄鋳物
JPS61264154A (ja) * 1985-01-17 1986-11-22 Asahi Malleable Iron Co Ltd ベ−ナイト基地球状黒鉛鋳鉄
JPS6227547A (ja) * 1985-07-30 1987-02-05 Hitachi Metals Ltd コイルばねとその製造法
JPH09209034A (ja) * 1996-02-07 1997-08-12 Hitachi Metals Ltd 無脱炭オーステンパー処理鋳鉄およびその製造方法
JP2000119794A (ja) * 1998-10-14 2000-04-25 Hitachi Metals Ltd 耐水濡れ性に優れるオーステンパ球状黒鉛鋳鉄

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS58207354A (ja) * 1982-05-26 1983-12-02 Sugiyama Chuzo Kk 球状黒鉛鋳鉄製揚重機部品の製造方法
JPS6176612A (ja) * 1984-09-21 1986-04-19 Toyota Motor Corp 高強度球状黒鉛鋳鉄の製造方法
JPS61264154A (ja) * 1985-01-17 1986-11-22 Asahi Malleable Iron Co Ltd ベ−ナイト基地球状黒鉛鋳鉄
JPS61210151A (ja) * 1985-03-13 1986-09-18 Mazda Motor Corp 球状黒鉛鋳鉄鋳物
JPS6227547A (ja) * 1985-07-30 1987-02-05 Hitachi Metals Ltd コイルばねとその製造法
JPH09209034A (ja) * 1996-02-07 1997-08-12 Hitachi Metals Ltd 無脱炭オーステンパー処理鋳鉄およびその製造方法
JP2000119794A (ja) * 1998-10-14 2000-04-25 Hitachi Metals Ltd 耐水濡れ性に優れるオーステンパ球状黒鉛鋳鉄

Also Published As

Publication number Publication date
JP3704676B2 (ja) 2005-10-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Li et al. Microstructure and mechanical properties of a Mo alloyed high chromium cast iron after different heat treatments
Erić et al. The austempering study of alloyed ductile iron
Trudel et al. Effect of composition and heat treatment parameters on the characteristics of austempered ductile irons
Wiengmoon et al. A microstructural study of destabilised 30wt% Cr-2.3 wt% C high chromium cast iron
Zhou et al. Effect of nanoscale V2C precipitates on the three-body abrasive wear behavior of high-Mn austenitic steel
CN101082097A (zh) 耐疲劳裂纹性优异的高Cr铸铁及其制造方法
Pei et al. Dimensionality wear analysis: Three-body impact abrasive wear behavior of a martensitic steel in comparison with Mn13Cr2
Agunsoye et al. On the comparison of microstructure characteristics and mechanical properties of high chromium white iron with the Hadfield austenitic manganese steel
Wang et al. The effect of retained austenite on the wear mechanism of bainitic ductile iron under impact load
Chen et al. Fracture toughness improvement of austempered high silicon steel by titanium, vanadium and rare earth elements modification
CN105798270B (zh) 耐磨铸件及其制造方法
Uma et al. Influence of nickel on mechanical and slurry erosive wear behaviour of permanent moulded toughened austempered ductile iron
Murthy et al. Abrasion and erosion behaviour of manganese alloyed permanent moulded austempered ductile iron
Alp et al. MICROSTRUCTURE-PROPERTY RELATIONSHIPS IN CAST IRONS.
Olawale et al. Production of austempered gray iron (AGI) using forced air cooling
Batra et al. Austempering and austempered ductile iron microstructure in copper alloyed ductile iron
Gupta et al. Performance evaluation of different types of steel for duck foot sweep application
JP2001303167A (ja) オーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩耗性材料
Nan et al. Microstructure Evolution and Wear Resistance of Cu-Bearing Carbidic Austempered Ductile Iron after Austempering
Perttula Reproduced wootz Damascus steel
Březina et al. Application of ductile iron in the manufacture of ploughshares
CZ302696A3 (en) Alloyed steel with high content of carbon, process of its manufacture and use
Pearce et al. Use of electron microscopy on microstructure characterization of high chromium cast irons
Motorin et al. Improvement of wear resistance of working elements from gray iron for development of the ground
Batra et al. Tensile properties of copper alloyed austempered ductile iron: Effect of austempering parameters

Legal Events

Date Code Title Description
A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20030311

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050613

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20050715

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090805

Year of fee payment: 4

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees