JPH09202993A

JPH09202993A - 優れた外観を有する電気めっき鋼板及びその製造方法

Info

Publication number: JPH09202993A
Application number: JP1019996A
Authority: JP
Inventors: Takayuki Urakawa; 隆之浦川; Toru Imokawa; 透妹川; Masaaki Yamashita; 正明山下
Original assignee: NKK Corp; Nippon Kokan Ltd
Current assignee: JFE Engineering Corp
Priority date: 1996-01-24
Filing date: 1996-01-24
Publication date: 1997-08-05

Abstract

(57)【要約】【課題】原板の表面欠陥に起因するムラの発生が無い、
優れた外観を有する亜鉛めっき鋼板及びその製造方法を
提供する。【解決手段】銅イオンまたはコバルトイオンを添加した
めっき前処理用酸洗い液を準備する工程と、この酸洗い
液に鋼板を通板してめっき前処理し、鋼板上に析出量
０．５ｍｇ／ｍ² 以上１００ｍｇ／ｍ² 以下の銅層また
はコバルト層を形成する工程と、このめっき前処理をし
た鋼板に酸性めっき浴で電気めっきを施して銅層または
コバルト層上に電気亜鉛めっき層を形成する工程とを備
えている、優れた外観を有する電気めっき鋼板の製造方
法及びこの方法で得られた鋼板。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、ムラ等の表面欠
陥が無い電気亜鉛めっき鋼板及びその製造方法に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】電気亜鉛めっき鋼板は、家電製品、自動
車、建材等の広範な用途で使用されているが、特に各種
クロメート処理電気亜鉛めっき鋼板は、近年家電用途の
需要が増大している。この用途では無塗装で使用される
ために表面外観に優れることが要求され、優れた表面外
観の第一の条件はムラ等の表面欠陥が無いことである。

【０００３】めっき鋼板のムラには、めっき装置の不具
合によって生ずるムラとめっき原板の表面欠陥に起因す
るムラがある。前者のムラは、めっき装置の不具合を直
すことにより改善される。後者のムラは、原板の表面欠
陥を改善すれば当然解消されるはずであるが、工業的に
は原板の表面欠陥を完全に取り除くことは困難である。

【０００４】外観を改善した亜鉛めっき鋼板の製造方法
に関する提案として、特公昭46-38888号公報に示されて
いるようにめっき浴にポリアクリルアミドやポリビニル
アルコールを添加することにより光沢度を向上させる方
法、特開昭61-244769 号公報に示されているようにめっ
き前処理後に酸化処理を行ってギラつきが無い外観を得
る方法、特公平01-36559号公報に示されているように酸
性亜鉛めっき浴に非イオン性のポリアクリルアミドを添
加して高電流密度でめっきを行う方法が示されている。
しかし、これらは原板の表面欠陥を取り除く方法ではな
い。このように、めっき原板の表面欠陥に起因するムラ
等の表面欠陥がない電気亜鉛めっき鋼板及びその製造方
法は未だ提案されていない。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、原板
の表面欠陥に起因するムラの発生が無い、優れた外観を
有する電気めっき鋼板及びその製造方法を提供すること
にある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、原板の表
面欠陥に起因するムラに関して検討を行い、これらのム
ラの原因が原板表面に濃化した極微量のシリカ、アルミ
ナ、チタニア等の酸化物であることを見出した。これら
の酸化物が濃化した部分に析出した亜鉛結晶は、濃化し
ていない部分に析出した亜鉛結晶に比べて微細化してお
り、外観差を生じてムラが観察されることが判明した。
これらの酸化物が濃化した部分で亜鉛結晶が微細化する
原因は明かでないが、これらの部分では酸化物生成によ
り電気抵抗が増加していることが予想される。これが亜
鉛イオンの還元反応、結晶核生成、結晶成長に影響を与
えているものと考えられる。先にも述べたようにこれら
の酸化物の偏析を完全に防止できればこれらに起因する
ムラの発生を防止できるのだが、偏析量は極微量であ
り、これを完全に防止するのは不可能である。

【０００７】そこで、本発明者らは、めっき原板にこれ
らの酸化物が微量偏析していてもめっきムラが発生しな
い電気亜鉛めっき鋼板及びその製造方法に関して検討を
進めた結果、めっきに先立って極微量の銅、コバルトを
析出させることによってめっきムラが発生しなくなるこ
とを見出した。ムラが発生しなくなる機構としては、
銅、コバルトは亜鉛に比べて極めて貴でありかつ鉄に対
しても貴な金属であるために析出しやすく、酸化物が存
在する表面にも存在しない表面にも容易に析出して均一
な銅、コバルト析出層が形成され、結果的に亜鉛が析出
する時の表面が均一となってムラが発生しないと考えら
れる。更に、本発明者らは、この微量銅、コバルトの析
出によるムラ改善法を工業的に低コストで適用するため
の検討を進めた結果、亜鉛めっきの前処理として行われ
る酸洗液中に銅、コバルトを添加することにより、現行
の亜鉛めっき設備でそのまま製造でき、製造コストをほ
とんど引き上げない改善法を発明した。

【０００８】すなわち本発明の電気めっき鋼板は、鋼板
と、鋼板上に形成された析出量０．５ｍｇ／ｍ² 以上１
００ｍｇ／ｍ² 以下の銅層、コバルト層及び銅とコバル
トの混合層から選択された層と、この層上に形成された
電気亜鉛めっき層とを備えた、優れた外観を有する電気
めっき鋼板である。

【０００９】また、本発明の電気めっき鋼板の製造方法
は、銅イオン及びコバルトイオンの１種又は２種を添加
しためっき前処理用酸洗い液を準備する工程と、この酸
洗い液に鋼板を通板してめっき前処理し、鋼板上に析出
量０．５ｍｇ／ｍ² 以上１００ｍｇ／ｍ² 以下の銅層、
コバルト層及び銅とコバルトの混合層から選択された層
を形成する工程と、このめっき前処理をした鋼板に酸性
めっき浴で電気めっきを施して上記層上に電気亜鉛めっ
き層を形成する工程とを備えている、優れた外観を有す
る電気めっき鋼板の製造方法である。

【００１０】本発明によればめっき前処理の酸洗液に
銅、コバルトの塩を添加し、めっき原板表面に銅、コバ
ルトを０．５ｍｇ／ｍ² 以上、１００ｍｇ／ｍ² 以下析
出させた後に通常の亜鉛めっきを施せば、シリカ、アル
ミナ、チタニア等の偏析があってもムラを生じない。そ
の結果、本発明によればめっきの白色度の低下もなく、
ムラが無く、かつ白色度の高い理想的な外観を有する亜
鉛めっきが得られる。

【００１１】

【発明の実施の形態】次に本発明の詳細を述べる。ま
ず、原板を酸洗するが、酸洗での鋼板への銅、コバルト
の析出量は０．５ｍｇ／ｍ² 以上、１００ｍｇ／ｍ² 以
下にする必要がある。これは、０．５ｍｇ／ｍ² 未満の
析出量ではムラのま発生防止効果が不充分であり、一
方、１００ｍｇ／ｍ² を超える析出量では逆に銅、コバ
ルトの析出に起因すると思われる不均一な外観を生じる
ためである。このような銅、コバルトの析出量を得るた
めには、酸洗液中の銅、コバルト濃度を制御する必要が
あるが、銅、コバルトの析出量は酸濃度、処理時間、処
理温度等の影響を受けるために、これらの条件を考慮し
て酸洗液中の銅、コバルト濃度を決定すればよい。ここ
で、銅、コバルトの効果は銅、コバルトイオン（II価）
によるものであり、酸洗液中で銅、コバルトイオン（II
価）となる化合物、例えば硫酸銅、硫酸コバルト、塩化
銅、塩化コバルト等でムラ発生防止効果が得られる。な
お、本発明では、銅、コバルトの２種の析出量を０．５
ｍｇ／ｍ² 以上、１００ｍｇ／ｍ² 以下として、銅とコ
バルトとの混合層を形成してもよい。

【００１２】酸洗液は硫酸液、塩酸液、あるいはこれら
の混合液でもかなわないが、電解酸洗の場合は硫酸液に
限定される。浸漬酸洗の場合には、塩酸液の方がコバル
トの析出速度は大きい。その酸濃度は特に制限されず、
一般に用いられる１５〜２００ｇ／ｌの濃度で銅、コバ
ルトの添加効果が確認された。また、酸洗液中には鋼板
から溶解した鉄が徐々に増加していくが、銅、コバルト
の添加効果は２０ｇ／ｌの鉄濃度まで確認された。

【００１３】酸洗は浸漬、電解処理いずれも可能であ
る。しかし、ストリップの連続亜鉛めっきで行われる通
常の電解酸洗ではいわゆるグリッド通電といわれる通電
方式が適用されることが多いが、この方法では電極が交
互にアノード、カソードになるためにカソードとなった
電極上に銅、コバルトが析出する。銅、コバルトの析出
量が多くなると電極より剥離してストリップ、ロール間
に巻き込まれて押し傷を作り、通電ロールでのスパーク
を誘発する。従って、グリッド通電ではカソードに析出
した銅、コバルトが剥離する前に極性を変えてアノード
通電で析出した銅、コバルトを溶解してやる必要があ
り、短時間での極性切り替が必要である。

【００１４】次に、亜鉛めっき浴により電気亜鉛めっき
層を形成する。その析出量は通常４ｇ／ｍ² 〜７０ｇ／
ｍ² 程度である。亜鉛めっき浴は硫酸浴が望ましいが、
塩化物浴でも銅、コバルトのムラ発生防止効果が得られ
る。塩化物浴はめっき電圧が低い、高電流密度電解が容
易等の長所があるが、不溶性アノードが使用出来ずアノ
ード交換コストが高いという重大な問題があり、鋼板の
亜鉛めっき浴としては次第に使用されなくなっている。
めっき電流密度は特に制約されず、一般に鋼板の電気亜
鉛めっきとして工業生産される３０〜１５０Ａ／ｄｍ²
の電流密度はもちろん、更に高い電流密度、例えば２０
０Ａ／ｄｍ² でもムラ解消結果は得られる。

【００１５】適用可能なめっき浴ｐＨはアノードシステ
ムにより異なる。不溶性アノードを使用する場合はめっ
き浴ｐＨは０．８〜２．５が望ましい。ｐＨ０．８未満
ではめっき効率が低く不適である。ｐＨ２．５を越える
と亜鉛イオンの補給反応である金属亜鉛、酸化亜鉛等の
化学溶解速度が大きく低下するためにイオン補給が困難
となる。自溶性アノードを使用する場合はｐＨ３．０〜
５．０が望ましい。ｐＨ３．０未満では亜鉛アノードの
化学溶解反応速度が大きくめっき浴中の亜鉛イオン濃度
が増加するために望ましくない。ｐＨ５．０を越えると
水酸化亜鉛の沈澱が生成するために不適である。適用可
能なめっき温度は特に制限されず、一般に鋼板の電気亜
鉛めっきとして適用される４０〜６０℃で本発明の効果
は確認された。

【００１６】

【実施例】次に本発明の実施例を説明する。（実施例１）原板にシリカ、アルミナ、チタニア等の偏
析があり、通常の亜鉛めっきを行うと線状のムラを生じ
る冷延鋼板を用い、この鋼板を通常の方法で脱脂した後
に、表１に示すような酸洗条件、めっき浴組成、めっき
条件で２０ｇ／ｍ² の付着量となるようにめっきを行っ
た。得られためっきのムラ発生状況を目視で評価し、表
３に示した。

【００１７】表３の比較例Ａ〜Ｅは銅無添加の場合であ
り、原板の酸化物偏析によるスジ状ムラが発生した。比
較例Ｆ、Ｇは銅析出量が本発明範囲の０．５ｍｇ／ｍ²
より少ない場合であり、比較例Ａ〜Ｅに比べてスジ状ム
ラは軽微であるが、その改善量は不充分である。比較例
Ｈ、Ｉは銅析出量が本発明範囲の１００ｍｇ／ｍ² より
多い場合であり、原板の酸化物析出によるスジ状ムラは
認められないものの、めっき面全体に大きなムラを生じ
た。この原因は明らかではないが銅の析出量が多くなる
と、その析出状態にムラを生じるためだと考えられる。

【００１８】一方、実施例Ａ〜Ｐでは銅析出量が０．５
ｍｇ／ｍ² 以上、１００ｍｇ／ｍ²以下の範囲内でムラ
の発生は無く、良好な外観を示した。なお、白色度をＪ
ＩＳＺ８７２２に規定されている方法（条件ｄ、ハンタ
ー方式）で測定した明度指数Ｌ値で評価したが、銅の添
加によるＬ値の低下は認められなかった。

【００１９】（実施例２）実施例１と同じ冷延鋼板を通
常の方法で脱脂した後に、表２に示すような酸洗条件、
めっき浴組成、めっき条件で２０ｇ／ｍ² の付着量とな
るようにめっきを行った。得られためっきのムラ発生状
況を目視で評価し、表４に示した。

【００２０】表４の比較例Ａ〜Ｅはコバルト添加の場合
であり、原板の酸化物偏析によるスジ状ムラが発生し
た。比較例Ｆ、Ｇはコバルト析出量が本発明範囲の０．
５ｍｇ／ｍ² より少ない場合であり、比較例Ａ〜Ｅに比
べてスジ状ムラは軽微であるが、その改善量は不充分で
ある。比較例Ｈ、Ｉはコバルト析出量が本発明範囲の１
００ｍｇ／ｍ² より多い場合であり、原板の酸化物偏析
によるスジ状ムラは認められないものの、めっき面全体
に大きなムラを生じた。この原因は明らかではないが、
コバルトの析出量が多くなると、その析出状態にムラを
生じるためだと考えられる。

【００２１】一方、実施例Ａ〜Ｐではコバルト析出量が
０．５ｍｇ／ｍ² 以上、１００ｍｇ／ｍ² 以下の範囲内
でムラの発生は無く、良好な外観を示した。なお、白色
度をＪＩＳＺ８７２２に規定されている方法（条件ｄ、
ハンター方式）で測定した明度指数Ｌ値で評価したが、
銅の添加によるＬ値の低下は認められなかった。

【００２２】（実施例３）実施例１と同じ原板を用い、
実施例１と同様に表５に示すような酸洗条件、めっき浴
組成、めっき条件で２０ｇ／ｍ² の付着量となるように
めっきを行った。得られためっき表面のムラ発生状況を
目視で評価し、表５に示した。

【００２３】表５には、めっき液成分が異なる場合での
銅の効果を示した。いずれの場合でも、銅を添加しない
比較例に対して、銅を添加した実施例ではムラが発生し
なかった。また、白色度の低下もなかった。

【００２４】（実施例４）酸洗液に塩酸を用いた例とし
て、実施例１と同じ原板を用い、実施例１と同様に表６
に示すような酸洗条件、めっき浴組成、めっき条件で２
０ｇ／ｍ² の付着量となるようにめっきを行った。得ら
れためっき表面のムラ発生状況を目視で評価し、表６に
示した。

【００２５】表６には、めっき液成分が異なる場合での
コバルトの効果を示した。いずれの場合でも、コバルト
を添加しない比較例に対して、コバルトを添加した実施
例ではムラが発生しなかった。また、白色度の低下もな
かった。

【００２６】

【表１】

【００２７】

【表２】

【００２８】

【表３】

【００２９】

【表４】

【００３０】

【表５】

【００３１】

【表６】

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】鋼板と、鋼板上に形成された析出量０．
５ｍｇ／ｍ² 以上１００ｍｇ／ｍ² 以下の銅層、コバル
ト層及び銅とコバルトの混合層から選択された層と、こ
の層上に形成された電気亜鉛めっき層とを備えた、優れ
た外観を有する電気めっき鋼板。
【請求項２】銅イオン及びコバルトイオンの１種又は
２種を添加しためっき前処理用酸洗い液を準備する工程
と、この酸洗い液に鋼板を通板してめっき前処理し、鋼
板上に析出量０．５ｍｇ／ｍ² 以上１００ｍｇ／ｍ² 以
下の銅層、コバルト層及び銅とコバルトの混合層から選
択された層を形成する工程と、このめっき前処理をした
鋼板に酸性めっき浴で電気めっきを施して上記層上に電
気亜鉛めっき層を形成する工程とを備えている、優れた
外観を有する電気めっき鋼板の製造方法。