JPH09198106A - 周期性信号の適応制御方法 - Google Patents

周期性信号の適応制御方法

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JPH09198106A
JPH09198106A JP8005709A JP570996A JPH09198106A JP H09198106 A JPH09198106 A JP H09198106A JP 8005709 A JP8005709 A JP 8005709A JP 570996 A JP570996 A JP 570996A JP H09198106 A JPH09198106 A JP H09198106A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 一次角振動数ωの変化で特性が変動する周期
性信号に対しても、優れた収束性を発揮する周期性信号
の適応制御方法を提供すること。 【解決手段】 一次角振動数ωの周期性信号に同期した
適応信号を逆位相で加えることにより、周期性信号の特
定周波数成分の影響を能動的に除去する方法である。適
応信号を調和関数として生成する適応信号発生アルゴリ
ズム12と、その各次数の正弦波の振幅ak 、位相
φk 、位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットを成
分とする適応係数ベクトルW(n)を誤差信号e(n)
に基づき更新して適応的に調整する適応係数ベクトル更
新アルゴリズム11と、振幅ak の推定値等が含まれて
いる等価伝達特性データ13とを有する。一次角振動数
ωが変動した場合にも、等価伝達特性データ13を参照
して適応係数ベクトルW(n)の初期値が与えられるの
で、優れた収束性が発揮される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明の周期性信号の適応制
御方法は、除去すべき周期性信号に対し適応的に生成し
た信号を加えることによって、その周期性信号の特定周
波数成分の影響を能動的に除去する適応制御または能動
制御の技術分野に属する。除去すべき周期性信号は、振
動、騒音、電磁波、電気ノイズなどの多岐にわたるの
で、本発明は極めて広い技術分野において適用可能であ
る。
【0002】
【従来の技術】周期性信号の適応制御方法に関しては、
いわゆるアクティブコントロールとして既に幾つもの制
御理論とその適用例があり、例えば社団法人「計測自動
制御学会」発行の「計測と制御」誌第32巻第4号(平
成5年4月)の特集記事にも紹介されている。
【0003】(FX−LMS)従来、各種騒音や振動等
に対するアクティブキャンセルシステムとして適応デジ
タルフィルタ技術が利用されており、特に図5に模式的
に示すFiltered−X LMSアルゴリズム(略
称FX−LMS)が広く利用されている。また、この変
形態様として、図6に模式的に示すように、制御対象の
伝達特性Gの推定値を考慮に入れたFX−LMS制御方
法もある。
【0004】しかし、FX−LMSにおいては、参照信
号を生成する際に畳み込み演算が必要になり、系のイン
パルス応答を適正に実現するためにはサンプリング周期
によって異なる多数のタップ数が必要とされる。したが
って処理データが膨大になり、これに伴うフィルタ係数
の演算にもタップ数分の畳み込み演算が必要となるた
め、なお演算量が増加する。特に、複数の入出力信号を
扱う場合には、このような演算量の増加が一層顕著とな
り、演算装置の能力が追いつかなくなるばかりでなく、
フィルタ係数の適正な収束特性が得られない恐れもあ
る。
【0005】(SFX)このような不都合を解消しFX
−LMSの演算量を削減する目的で、図7に模式的に示
す同期式適応アルゴリズム(Synchronized
Filterd−X Algorithm、略称SF
X)が開発された。SFXは、周期性の信号または擬周
期性の信号を対象としており、周期性入力信号の基本周
期と同期したインパルス列をプロセッサ内部で生成し、
これを仮想入力としてFX−LMSを適用できるように
したものである。SFXのアルゴリズムは、特願平6−
201384号「周期性信号の適応制御方法」明細書の
従来の技術の欄に具体的に記載されている。SFXを用
いることによって畳み込み演算が不要になり演算量を削
減できるので、サンプリング周期をより速く設定できて
制御能力の向上を図ることができる。
【0006】しかしながら、上記SFXにおいては、制
御対象とする周期性信号の周波数が上昇すると、これに
同期してサンプリング周期が短くなるので、インパルス
応答のタップ数もこれに伴って次数を高くする必要が生
じる。その結果、これらの処理に要する演算時間の増大
とサンプリング周期の短縮によって、演算装置の能力が
不足したり、その不足を補うために演算精度を低下させ
ざるを得ないなどの問題がなお生じていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
(DXHS:先行技術1)前述のFSXが持つ問題を解
決し、周期性信号のサンプリング周期の短縮に伴う演算
精度の低下をもたらすことなく、システムの信号除去特
性を向上させることができる周期性信号の適応制御方法
を、本件出願人は前述の特願平6−201384号に出
願済である。その明細書に記載された先行技術1として
の制御方法を、ここではDelayed−X Harm
onics Synthesizerアルゴリズム(略
称DXHS)と呼ぶことにする。その制御方法の概要
を、ブロック線図にして図8に模式的に示す。
【0008】DXHSは、例えば自動車のエンジンの回
転や、飛行機のプロペラおよびヘリコプタのロータの回
転などによって生じる騒音や振動のような、周期性を持
った信号の基本波とその高調波を抑制対象とし、その特
定周波数成分を除去する適応制御方法である。すなわち
DXHSは、正弦波出力信号を含む関数の二乗で表され
る評価関数を、同出力信号の振幅と位相の関数であるフ
ィルタ係数Wによって偏微分することにより勾配ベクト
ルを求め、勾配ベクトルに一定数を掛け合わせたものを
前記フィルタ係数から減算することにより、時刻の経過
毎のフィルタ係数を更新し、更新したフィルタ係数の振
幅と位相により、正弦波出力信号の振幅と位相を更新す
るものである。かかる計算手法によりDXHSでは、従
来は出力計算に必要であった畳み込み演算を不要にし、
演算量を削減して演算精度の低下を防ぐことができる。
【0009】(従来技術および先行技術1が持つ問題
点)ところで、前述の従来技術および先行技術1(DX
HS)の各アルゴリズムでは、通常、システムの遅延要
素を含む伝達特性をインパルス応答、または各周波数で
のゲインおよび位相遅れといった形式で予め予測し、こ
れらのデータに基づいてフィルタ係数の更新を行ってい
る。
【0010】しかし、現実のシステムに応用すると、シ
ステムの伝達特性が初期に測定した状態のままであると
は限らない。例えば自動車のような系を対象とした場
合、停車時と走行時とでは伝達特性に違いがあり、ま
た、気温等の気象条件や荷客積載状態によっても左右さ
れるほか、新車の状態と数万キロメートル走行後の状態
とでも伝達特性が異なる。このように、実際の制御対象
となるシステムでは、常にその伝達特性が変化する可能
性を持っている。このような伝達特性の変化、特に位相
遅れで表現される遅延特性の変化に対しては、前述の従
来技術および先行技術1(DXHS)では、対応できる
範囲がごく限られたものでしかなかった。
【0011】この問題点を端的に示す例として、発明者
らは、FX−LMSとDXHSとを取り上げ、両者の位
相遅れ特性の変化に対する応答を調べる実験を行った。
(同実験については、前述の特願平6−201384号
に詳細が記載されている。)同実験では、電気回路内に
位相変換アンプを用いて位相遅れすなわち遅延特性の変
化を人為的に作りだし、制御対象システムの位相遅れ特
性の変化に対する上記両アルゴリズムの追随性を調べ
た。
【0012】その結果、FX−LMS・DXHS共に位
相変化±60度程度では対応できて応答は収束するが、
±90度に達すると追随できなくなり、系の応答は発散
してしまうことが確認された。したがって、従来技術
(FX−LMS)だけではなく先行技術1(DXHS)
によっても、制御対象となるシステムの伝達特性の位相
遅れが予め設定した値から大きく外れると、抑制すべき
周期性信号を安定に制御することができなくなるという
不都合があった。
【0013】(DXHS改:先行技術2)そこで発明者
らは、制御対象となるシステムの伝達特性(各周波数で
のゲインおよび位相遅れ)の変化に対応し、特に位相遅
れすなわち遅延特性の大きな経時変化に対応してこれに
追随しうる周期性信号の適応制御方法を、特願平7−1
29868号として出願した。同号に記載されている
「周期性信号の適応制御方法」を、先行技術2(DXH
S改)と本明細書中では呼ぶことにする。
【0014】DXHS改は、前述のDXHSに収束安定
係数を導入し、制御対称システムの伝達特性の変化に追
随することができるようにした周期性信号の適応制御方
法である。すなわち、DXHS改では、ゲインに関する
収束安定係数Gk g ハットおよび位相遅れに関する収束
安定係数Gk p ハットのうち少なくとも一方が、適応係
数ベクトルW(n)の成分として導入されている。ここ
で、収束安定係数Gk g ハットおよびGk p ハットのう
ち、前者は、DXHS改の持つ適応信号発生アルゴリズ
ムによって生成された適応信号が観測点に至るまでの制
御対象システムの伝達特性のゲインに関し、後者は位相
遅れに関する収束安定係数である。そして、適応係数ベ
クトル更新アルゴリズムに組み込んで、上記収束安定係
数をも更新させることにより、制御対象システムの伝達
特性の変化に追随することが可能になっている。
【0015】特に、位相遅れに関する収束安定係数G
k p ハットが適応係数ベクトルW(n)に導入されてい
る場合には、制御対称システムの位相遅れの極めて大き
な変化にも追随することができ、DXHS改は優秀な制
御成績を挙げている。また、DXHS改において、適応
係数ベクトル更新アルゴリズム中の上記収束安定係数G
k p ハット成分の更新式には、位相調整パラメータψが
加えられて収束性を改善している。DXHS改における
適正な位相調整パラメータψの範囲についても研究され
ており、例えば90度程度が適当であるとの成果が得ら
れている。
【0016】さらにDXHS改には、等価伝達特性デー
タを導入し、等価伝達特性データに収束安定係数を記録
しておく技術も適用されている。同技術では、一次角振
動数ωが変動した際に、新しい一次角振動数ωでの収束
安定係数の値を、等価伝達特性データから適応係数ベク
トルW(n)に提供することにより、収束性がさらに改
善されている。
【0017】したがって、DXHS改により、制御対称
システムの伝達特性の変化が極めて大きい場合にも、周
期性信号の影響を抑制してシステムの応答を収束させる
ことが可能になった。 (本発明の課題)前述の両先行技術はいずれも優れた技
術であり、それぞれの課題を解決しているが、なお改善
の余地がある。
【0018】例えば制御対象である周期性信号の一次角
振動数ωが変動していく場合にも、よりいっそう優れた
収束性を発揮することが望ましい。すなわち、一次角振
動数ωが変動する周期性信号に対しても、システムの応
答(適応信号によって抑制された誤差信号e(n))の
収束性がいっそう改善されていることが望ましい。な
お、ここで収束性とは、システムの応答の安定性(発散
せず収束すること)と、同応答の収束速度または収束時
間(速やかに収束すること)とを指す。
【0019】したがって、本発明の課題は、一次角振動
数ωの変化で特性が変動する周期性信号に対しても、シ
ステムの応答の安定性および収束速度のうち少なくとも
一方が改善されている周期性信号の適応制御方法を提供
することである。
【0020】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上
記課題を解決するために、発明者は以下の手段を発明し
た。 (第1発明)本発明の第1手段は、観測点へ影響を及ぼ
す周期性信号に対し、該周期性信号に同期した一次の基
本正弦波およびまたは該基本正弦波から該基本正弦波の
M次(2≦M)までの高調波信号からなる適応信号を逆
位相で加えることによって、該周期性信号の特定周波数
成分の該観測点への影響を能動的に除去する周期性信号
の適応制御方法であって、時刻nにおいて該周期性信号
の一次角振動数ωに基づいて該適応信号y(n)を発生
させる適応信号発生アルゴリズムと、該適応信号y
(n)の各次数(次数k=1,2,・・・,M)の正弦
波の振幅ak および位相φk 、ならびに該適応信号が該
観測点に至るまでの制御対象システムの伝達特性のゲイ
ンに関する収束安定係数Gk g ハットおよび位相遅れに
関する収束安定係数Gk p ハットのうち、少なくとも該
振幅ak および該位相φk を成分として含む適応係数ベ
クトルW(n)を、該周期性信号の影響を除去すべき該
観測点で検知された誤差信号e(n)に基づき該時刻n
の経過毎に更新して、該周期性信号の振幅および位相と
該制御対象システムの該伝達特性とに対し該適応係数ベ
クトルW(n)の各該成分を適応的に調整する適応係数
ベクトル更新アルゴリズムと、該適応係数ベクトルW
(n)の成分のうち少なくとも該振幅ak の推定値が含
まれている等価伝達特性データとを有し、更新された該
適応係数ベクトルW(n)の成分のうち各次数の振幅a
k および位相φk をもって、該適応信号y(n)の各次
数の正弦波の振幅ak および位相φk が更新され、該一
次角振動数ωの変動が所定量に達した場合には、該適応
係数ベクトルW(n)の成分のうち少なくとも該振幅a
k は、各次数の角振動数kωに対応する該等価伝達特性
データを参照して更新されることを特徴とする周期性信
号の適応制御方法である。
【0021】本手段では、少なくとも振幅ak の推定値
が含まれている等価伝達特性データが有り、周期性信号
の一次角振動数ωの変動が所定量に達した場合には、適
応係数ベクトルW(n)の成分のうち少なくとも振幅a
k は、各次数の角振動数kωに対応する等価伝達特性デ
ータを参照して更新される。ここで、等価伝達特性デー
タに含まれる成分としては、適応係数ベクトルW(n)
の成分であれば、振幅ak 以外の成分(例えば位相φk
や収束安定係数Gk g ハット、Gk p ハット)も含まれ
ていてもよい。
【0022】周期性信号の中には、一次角振動数ωが変
動すると大きく特性(各次数の信号の振幅および位相)
が変化するものもあるが、本手段ではその場合に、各次
数の角振動数kωに対応する等価伝達特性データが参照
される。すなわち、当該角振動数kωに対応して等価伝
達特性データから、適応係数ベクトルW(n)の成分の
うち振幅ak を含む成分が読みだされ、適応係数ベクト
ルW(n)の当該成分が更新される。
【0023】その結果、等価伝達特性データが概ね正確
であれば、少なくとも振幅ak は周期性信号の振幅の大
きな変動にも、即時大過なく適応することができる。振
幅a k さえ概ね適応できていれば、誤差の範囲が限定さ
れている位相φk について適応することはさほど困難で
はなく、収束は速やかに行われる。したがって、本手段
の周期性信号の適応制御システムは、周期性信号の一次
角振動数ωの変化に起因する特性の大きな変動にも速や
かに適応し、システムの応答(誤差)は短時間で収束す
る。また、適応が速やかに行われるので、応答が発散す
る危険も少なくなる。すなわち本手段によれば、一次角
振動数ωの変化で特性が変動する周期性信号に対して
も、周期性信号の適応制御システムの収束性が改善され
るという効果がある。
【0024】(第2手段)本発明の第2手段は、前述の
第1手段においてさらに、前記適応係数ベクトル更新ア
ルゴリズムにおいて、前記誤差信号e(n)の二乗を前
記適応係数ベクトルW(n)で偏微分することによって
勾配ベクトルを求め、該勾配ベクトルの各成分にそれぞ
れのステップサイズパラメータを掛け合わせたものを、
前記適応係数ベクトルW(n)から減算することによ
り、時刻nの経過毎に更新された該適応係数ベクトルが
算出されることを特徴とする。
【0025】本手段では、適応係数ベクトル更新アルゴ
リズムがいわゆる最小自乗法にしたがって構成されてい
るので、システムの振る舞いについて数学的な見通しが
つきやすい。また、ステップサイズパラメータの調整に
より、適応係数ベクトルW(n)の成分のそれぞれにつ
いて、更新の刻み幅を調整することができる。したがっ
て、本手段によれば、前述の第1手段の効果に加えて、
適応制御システムの設計が容易であり、ステップサイズ
パラメータの調整によって収束速度を調整することがで
きるという効果がある。
【0026】(第3手段)本発明の第3手段は、前述の
第1手段においてさらに、前記適応係数ベクトル更新ア
ルゴリズムにおいて、前記適応係数ベクトルW(n)
は、数6に示すように前記適応信号y(n)の各次数の
正弦波の振幅ak および位相φk を成分とし、前記誤差
信号e(n)に基づき数7に従って更新されることを特
徴とする。
【0027】
【数6】
【0028】
【数7】
【0029】本手段では、適応係数ベクトルW(n)の
成分が振幅ak および位相φk だけに限定されているの
で、適応係数ベクトル更新アルゴリズム(数7)は極め
て簡素である。したがって本手段によれば、前述の第1
手段の効果に加えて、適応制御システムを極めて簡素な
構成で実現できるので、同システムを安価に提供するこ
とができるという効果がある。
【0030】(第4手段)本発明の第4手段は、前述の
第3手段においてさらに、前記一次角振動数ωの変動が
所定量に達した場合には、前記適応係数ベクトルW
(n)の成分のうち、前記振幅ak が、各次数の角振動
数kωに対応する前記等価伝達特性データを参照して更
新されることを特徴とする。
【0031】本手段では、適応係数ベクトルW(n)の
成分のうち振幅ak だけが、等価伝達特性データから更
新される。それゆえ、等価伝達特性データとしては振幅
kだけを用意しておけばよいので、適応制御システム
を実現する上で必要なメモリーの容量が少なくて済む。
したがって本手段によれば、前述の第3手段の効果に加
えて、よりいっそう適応制御システムの構成が簡素で、
同システムをさらに安価に提供することができるという
効果がある。
【0032】(第5手段)本発明の第5手段は、前述の
第1手段においてさらに、前記適応係数ベクトル更新ア
ルゴリズムにおいて、前記適応係数ベクトルW(n)
は、数8に示すように前記適応信号y(n)の各次数の
正弦波の振幅ak および位相φk ならびに位相遅れに関
する収束安定係数Gk p ハットを成分とし、前記誤差信
号e(n)に基づき位相調整パラメータψを含む数9に
したがって更新されることを特徴とする。
【0033】
【数8】
【0034】
【数9】
【0035】本手段では、両収束安定係数のうち位相遅
れに関する収束安定係数Gk p ハットのみが適応係数ベ
クトルW(n)の成分に取り入れられている。また、適
応係数ベクトル更新アルゴリズムの中で、収束安定係数
k p ハットの更新に係わる成分には位相調整パラメー
タψが加えられている。位相遅れに関する収束安定係数
k p ハットには、制御対象システムの位相遅れが大き
く変動した場合にも、その変動分を吸収する作用があ
る。同作用により、適応制御システムは、制御対象シス
テムの伝達特性の大きな変動にも良く追随することが可
能になる。また、位相調整パラメータψには、制御対象
システムの位相遅れの変動に対し、収束安定係数Gk p
ハットの調整を速やかにし、適応制御システムの安定性
を強化する作用がある。
【0036】したがって本手段によれば、前述の第1手
段の効果に加えて、制御対象システムの伝達特性の大き
な変動にも良く追随し、速やかに適応することができる
という効果がある。 (第6手段)本発明の第6手段は、前述の第5手段にお
いてさらに、前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムに
おいて、前記位相調整パラメータはψ=π/2であり、
該パラメータの下で前記数9と等価な数10にしたがっ
て更新されることを特徴とする。
【0037】
【数10】
【0038】本手段では、位相調整パラメータψをπ/
2に限定することにより、制御対象システムの伝達特性
の大きな変動に対して、適応制御システムはより速やか
に追随する。また、位相調整パラメータの加減算が無く
なり、適応係数ベクトル更新アルゴリズムがより簡素に
なるので、計算量を低減する作用がある。したがって本
手段によれば、前述の第5手段の効果に加えて、制御対
象システムの伝達特性の大きな変動に対するより速やか
な追随性が得られるうえ、適応制御システムをより安価
に実現できるという効果がある。
【0039】(第7手段)本発明の第7手段は、前述の
第5手段または第6手段においてさらに、前記等価伝達
特性データは、各次数に対応する前記振幅ak および前
記位相に関する収束安定係数Gk p ハットの各推定値を
含み、前記一次角振動数ωの変動が所定量に達した場合
には、前記適応係数ベクトルW(n)の成分のうち、該
振幅ak および該収束安定係数Gk p ハットが、各次数
の角振動数kωに対応する該等価伝達特性データを参照
して更新されることを特徴とする。
【0040】本手段では、等価伝達特性データとして記
憶されているべきデータは、各次数に対応する振幅ak
および位相に関する収束安定係数Gk p ハットの各推定
値のみである。また、周期性信号の一次角振動数ωが所
定量変動した場合に、等価伝達特性データを参照して更
新されるのも、適応係数ベクトルW(n)の成分のうち
振幅ak および収束安定係数Gk p ハットのみである。
【0041】ここで、等価伝達特性データを参照しての
振幅ak の更新は、一次角振動数ωに変動による周期性
信号の振幅の大きな変化に対し、適応制御システムの適
応を速やかにして安定性と収束速度とを改善する作用が
ある。一方、等価伝達特性データを参照しての収束安定
係数Gk p ハットの更新は、一次角振動数ωに変動によ
る周期性信号の位相の大きな変化に対し、適応制御シス
テムの適応を速やかにして安定性と収束速度とを改善す
る作用がある。
【0042】したがって本手段によれば、前述の第5手
段または第6手段の効果に加えて、比較的小さな記憶容
量のメモリーに等価伝達特性データを保存でき、適応制
御システムを安価に提供できるという効果がある。ま
た、等価伝達特性データを参照しての適応係数ベクトル
W(n)の成分を更新する際に、比較的少数の信号の授
受で済むので、適応制御システムを実現するのが容易で
安価になるという効果もある。さらに、一次角振動数ω
に変動による周期性信号の振幅および位相の大きな変化
に対し、適応制御システムの適応を速やかにして安定性
と収束速度とを改善する作用がある。
【0043】すなわち本手段によれば、周期性信号の一
次角振動数ωが変わり、周期性信号の振幅および位相が
大きく変化した場合にも優れた収束特性を発揮する適応
制御システムを、より安価に提供することができるとい
う効果がある。 (第8手段)本発明の第8手段は、前述の第1手段にお
いてさらに、前記等価伝達特性データは、適応制御開始
以前に予め設定されていることを特徴とする。
【0044】本手段では、等価伝達特性データは予め設
定されており、適応制御システムにとって未経験の周期
性信号の一次角振動数ωにおいても、概ね適正な値が用
意されているものとすると、適応制御システムは初回か
ら優れた収束性を発揮する。また、等価伝達特性データ
は適応制御中に更新されることを要しないので、実シス
テムとして適応制御システムを製造する際に、等価伝達
特性データの記憶手段としてROMを使用することがで
きる。
【0045】したがって本手段によれば、前述の第1手
段の効果に加えて、未経験の一次角振動数ωの周期性信
号に対しても、良好な収束性を発揮する適応制御システ
ムを安価に製造することができるという効果がある。 (第9手段)本発明の第9手段は、前述の第1手段にお
いてさらに、前記等価伝達特性データは、前記適応係数
ベクトルW(n)の更新された成分によって更新される
ことを特徴とする。
【0046】本手段では、等価伝達特性データの内容
が、適応係数ベクトルW(n)の該当する成分によって
更新されていく。それゆえ、同一の一次角振動数ωで振
幅および位相が経時変化する周期性信号に対しても、適
応制御システムが経験する度に等価伝達特性データをア
ップデートしていくので、等価伝達特性データが周期性
信号の実状と乖離することがない。
【0047】したがって本手段によれば、前述の第1手
段の効果に加えて、同一の一次角振動数ωで振幅および
位相が経時変化する周期性信号に対しても、優れた収束
性を維持することができるという効果がある。
【0048】
【発明の実施の形態】本発明の周期性信号の適応制御方
法の実施の形態については、当業者に実施可能な理解が
得られるよう、以下の実施例等で明確かつ充分に説明す
る。 〔実施例1〕本発明の周期性信号の適応制御方法につい
て、図1および図2を参照して概略を、図3を参照して
詳細を以下に解説する。
【0049】(前提の説明)本発明の周期性信号の適応
制御方法は、その影響を除去すべき周期性信号d(n)
に対し、この周期性信号に同期した1次の基本正弦波の
みからなる適応信号y(n)か、または、該基本正弦波
とそれからそのM次(2≦M)までの高調波信号とから
なる適応信号y(n)を能動的に発生させるものであ
る。この適応信号y(n)は伝達されて適応伝達信号z
(n)となり、これが逆位相で周期性信号d(n)に加
えられることによって、周期性信号d(n)の基本波成
分または1次からM次までの特定周波数成分をキャンセ
ルするものである。
【0050】したがって、本発明の周期性信号の適応制
御方法は、周期性信号d(n)自身を除去するものでは
なく、同信号の影響を受ける観測点24において、同信
号の影響を相殺し、誤差信号e(n)をゼロに収束させ
ることを制御目的とする。なお、「1次の基本正弦波」
は「基本波」や「第1調波」あるいは「基本振動」、
「○次の高調波」は「第○次高調波」あるいは「○次の
高次振動」と呼ばれることもある。
【0051】(適応制御システムの全体構成)本発明の
周期性信号の適応制御方法を実施している制御システム
の全体構成は、図1に示すように、適応制御アルゴリズ
ム1とその制御対象である物理システム2とからなり、
両者1,2は相互に信号を交換している。適応制御アル
ゴリズム1は、後述の誤差信号e(n)によって駆動さ
れる適応係数ベクトル更新アルゴリズム11と、更新さ
れた適応係数ベクトルW(n)の要素に基づき1次〜M
次の正弦波を合成して適応信号y(n)を発生させる適
応信号発生アルゴリズム12と、等価伝達特性データ1
3とからなる。
【0052】等価伝達特性データ13には、各周波数k
ωでの振幅ak および収束安定係数Gk ハットの推定値
がストアされている。等価伝達特性データ13は、適応
制御始動時と周期性信号の一次角振動数ωが所定量変動
した場合とに、新しい各周波数kωでの振幅ak および
収束安定係数Gk ハットの初期値を更新アルゴリズム1
1に与える。また、更新アルゴリズム11によって適応
係数ベクトルW(n)が更新され十分に収束している場
合に、適応係数ベクトルW(n)の収束している成分の
うち振幅ak および収束安定係数Gk ハットによって、
等価伝達特性データ13は更新される。
【0053】適応制御アルゴリズム1の各要素の定義と
作用については、制御対象の物理システム2について説
明したのち、改めて詳細を説明する。(ここで、「ハッ
ト」とは、推定値であることを表す表記であり、図中で
は「G」の上に山形の記号(ルーフともいう)を付けて
表記してある。) (制御対象である周期性信号の定義)一方、制御対象の
物理システム2は、その影響を除去すべき周期性信号d
(n)を発生する周期性信号発生システム22を、未制
御の(若しくは制御が十分できない)固有システムとし
て有している。この周期性信号発生システム22は、周
期性信号の発生源である信号発生源20と、その信号を
観測点24まで伝達する信号伝達特性21
(G’ g,p )とからなる。
【0054】このような周期性信号発生システム22が
発生する周期性信号d(n)は、多くの場合、一次の基
本波とその高調波が合成されたものとして次の数11に
示すように表現することができる。すなわち、一次角振
動数(基本角周波数ともいう)をω* 、振幅および位相
をa* k ,φ* k とするk次(1≦k≦L)の正弦波を
合成した周期性信号として、観測点24で計測される周
期性信号d(n)を定式化する。これは、周期関数を分
解するフーリエ分解(調和分析)に基づく定式化であ
る。
【0055】
【数11】
【0056】(制御目標)前述の相殺すべき周期性信号
d(n)は、適応制御アルゴリズム1から入力される適
応信号y(n)が制御対象システムの伝達特性23(G
g,p )を介して伝達された適応伝達信号z(n)と合
成されて、観測点24で計測される誤差信号e(n)を
生じる。したがって、適切な適応信号y(n)を制御対
象の物理システム2に入力し、周期性信号d(n)のう
ち消去したい特定成分と同振幅逆位相の適応伝達信号z
(n)を発生させることができれば、同成分を相殺する
ことができ、誤差信号e(n)を十分低く抑制すること
が可能になる。
【0057】この目的に沿って、適応制御アルゴリズム
1は設計されている。適切な適応信号y(n)を発生さ
せる適応信号発生アルゴリズム12は、一次角振動数を
ω、振幅および位相をak ,φk とし、次の数12に示
す1次の基本波からM次の高調波までを合成した周期性
信号として、適応信号y(n)を発生させる。ただし、
M=1として基本波のみからなる適応信号y(n)であ
る場合もあり得る。
【0058】
【数12】
【0059】ここで、適応信号y(n)の次数Mは、通
常、影響を除去すべき周期性信号d(n)の次数L以下
の抑制したい高調波の最高次数に設定される。現実の物
理システムでは厳密には次数Lは通常無限大と言ってよ
く、適応信号の次数Mは除去すべき振動モードに合わせ
て必要最低限に抑え、制御システムのコストを下げる方
が賢明である。次数Lの周期性信号d(n)のうち、適
切に設定された適応信号y(n)の次数Mを超える高次
の信号(スピルオーバともいう)は、多くの場合、振幅
が小さくかつ減衰がよいので、実際上問題になることは
稀である。
【0060】さて、前述のように次数Mを適正に設定さ
れた適応信号y(n)は、一次角振動数ω、並びに各次
数の正弦波(角振動数kω)の振幅ak および位相φk
(k=1,2,・・・,M)を定めることにより、一義
的に定義される。このうち、周期性信号d(n)の一次
角振動数ωは、制御対象の物理システム2の信号発生源
20から直接一次角振動数の真値ω* を計測して求め
る。この計測は通常精密に測定できる場合が多く、一次
角振動数の真値ω* と計測値ωとは工学上等価(ω*
ω)として取り扱うものとする。一次角振動数ωは、信
号発生源20からの測定が困難な場合には、代替手段と
して周期性信号d(n)から求めてもよい。
【0061】(DXSH改に基づく更新アルゴリズムの
導出)一方、適応信号y(n)の第k次の正弦波の振幅
k および位相φk は、ステップ毎に更新される適応係
数ベクトルW(n)の要素として求められる。すなわ
ち、適応係数ベクトルW(n)は、次の数13に示すよ
うに、各次数の正弦波の振幅ak および位相φk ならび
に収束安定係数Gk ハット(1≦k≦M)とを成分とし
て定義される。
【0062】
【数13】
【0063】ここで、適応係数ベクトルW(n)の要素
に収束安定係数Gk ハットを導入したことに、本発明の
周期性信号の適応制御方法の特徴がある。収束安定係数
kハットは、ゲインに関する収束安定係数Gk g ハッ
トおよび位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットの
少なくとも一方からなる。これら各次数の両収束安定係
数Gk g ハットおよびGk p ハットは、制御対象システ
ムの伝達特性23(G g,p )の各周波数kωでのゲイ
ンGk g および位相遅れGk p に関するものである。す
なわち、上記の数12に示した適応信号y(n)が、制
御対象システム23の伝達特性G g,p により伝達され
た適応伝達信号z(n)は、次の数14に示すように記
述される。
【0064】
【数14】
【0065】すると、図1から明らかなように、誤差信
号e(n)は、周期性信号d(n)と適応伝達信号z
(n)の算術和として定義される。すなわち、 e(n)=d(n)+z(n) である。前記の誤差信号e(n)に基づき、後述の適応
係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズム11を定める
ことができる。そして同アルゴリズム11によって、適
応係数ベクトルW(n)の成分のうち収束安定係数Gk
ハット(成分はGk g ハットおよびGk p ハットのうち
少なくとも一方)は、各角振動数kωでの制御対象シス
テムの伝達特性G g,p (ゲインGk g および位相遅れ
k p のうち少なくとも一方)の変動に対応する。ここ
で、Gk g およびGk p は誤差信号e(n)を形成する
係数の一部であって、ここにおいてシステムは安定す
る。さて、以上のように定義された誤差信号e(n)の
二乗を、適応係数ベクトルW(n)で偏微分すると、次
の数15に示すように勾配ベクトル▽(n)が求まる。
ただし、ここでは適応係数ベクトルW(n)中の収束安
定係数Gk ハットは、ゲインに関する収束安定係数G
k g ハットおよび位相遅れに関する収束安定係数Gk p
ハットの両方からなるものとする。
【0066】
【数15】
【0067】この勾配ベクトル▽(n)は、誤差信号e
(n)の二乗の期待値を増す方向を示唆している。した
がって、勾配ベクトル▽(n)の各成分に適切なステッ
プサイズパラメータを乗じて適応係数ベクトルW(n)
から減算すれば、適応係数ベクトルW(n)を適切に収
束させることができる。ステップサイズパラメータは、
システムの状態に合わせて可変とすることもできるが、
以下の実施例では適当な正の一定数としている。
【0068】ここでは、勾配ベクトル▽(n)は、適応
係数ベクトルW(n)の4種類の成分(ak ,φk ,G
k g ハット,Gk p ハット)の各々についての成分を持
つので、これに応じてステップサイズパラメータも、μ
a ,μp ,μGg,μGpの4種類を用意する。ここで、同
ステップサイズパラメータは次数を示す添字kを付けて
各成分ごとに独立に設定されうるが、表記の煩雑さを避
ける目的で添字kは省略して記載している。すると、適
応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズムを、次の数
16に示すように設定することができる。
【0069】
【数16】
【0070】上記各ステップサイズパラメータが適当な
値に設定されれば、上記数16に示された更新アルゴリ
ズム11は収束し、適応信号y(n)の各次数の正弦波
の振幅ak および位相φk は適正に設定され得る。その
結果、適応制御アルゴリズム1は、制御すべき周期性信
号d(n)の特定成分と相殺する適応伝達信号z(n)
を生じる適応信号y(n)を発生して、観測点24での
誤差信号e(n)を小さく抑制することができる。この
ようにして、本発明の周期性信号の適応制御方法によれ
ば、制御対象の物理システム2の持つ信号伝達特性G
g,p ,G' g,p の変化にも適応してシステムを制御
することが可能になる。
【0071】(適応係数ベクトルの絞り込み)ところ
で、以上の制御方法は、制御対象システム23の伝達特
性G g,p が、ゲインGk g ・位相遅れGk p 共に大き
く変動する場合に適応するためのアルゴリズムである。
したがって、例えばゲインが大きく変動することは無い
場合、または振幅ak の調整だけで十分適応できる場合
には、ゲインGk g の推定をやめてアルゴリズムを簡略
化し、制御システム(コントローラ)のコスト(計算
量)を低減ことができる。
【0072】そこで、次の数17に示すように、適応係
数ベクトルW(n)に導入する収束安定係数は位相遅れ
に関するもの(Gk p ハット)のみとして、改めて適応
係数ベクトルW(n)を定義する。
【0073】
【数17】
【0074】したがって、誤差信号e(n)の二乗を、
新たに定義された適応係数ベクトルW(n)で偏微分す
ると、次の数18に示すように、新たに3種の成分から
なる勾配ベクトル▽(n)が求まる。
【0075】
【数18】
【0076】この勾配ベクトル▽(n)は、適応係数ベ
クトルW(n)の各次数についての3種類の係数
(ak ,φk ,Gk p ハット)の各々についての成分を
持つので、これに応じてステップサイズパラメータに
も、μa ,μp ,μGpの3種類を用意する。そして、適
応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズムを、次の数
19に示すように新たに定義することができる。
【0077】
【数19】
【0078】上記各ステップサイズパラメータが適当な
値に設定されれば、4種類の要素をもつ前述の更新アル
ゴリズムと同様に、上記数29に示す更新アルゴリズム
11は収束する。その結果、適応制御アルゴリズム1
は、制御対象の物理システム2の持つ信号伝達特性G
g,p およびG' g,p の位相遅れの大きな変化にも適
応してシステムを制御することが可能になる。
【0079】なお、この場合、制御対象システムGの等
価伝達特性データ13にストアされたデータも、位相遅
れに関する推定値Gk p ハットだけで十分であり、ゲイ
ンに関する推定値Gk g ハットは不要である。 (更新アルゴリズムの試行的改善)さて、以上のように
して、図1に示すシステム構成から適応係数ベクトル更
新アルゴリズム11が導き出された。
【0080】しかし、上記数19の更新アルゴリズムに
おいては、ゲインに関する収束安定係数Gk g ハットが
必要とされ、等価伝達特性データ13にGk g ハットも
ストアされている必要が生じて不都合である。そこで、
発明者はGk g ハットを除外した次の数20に示す更新
式を開発し、数値シミュレーションによって機能しうる
ことを確認した。本更新式によれば、等価伝達特性デー
タ13にゲインに関するGk g ハットをストアしておく
必要が無くなる。
【0081】
【数20】
【0082】ところが、上記数20の更新式による数値
シミュレーションでは、予想された位相遅れの誤差が大
きい場合には、収束性が十分に満足すべきものとは言え
ず、実用に供するには不満が残った。すなわち、適応制
御システム内に予め用意された位相データGk p ハット
と制御対象システムの位相遅れとの差が大きい場合につ
いて数値シミュレーションすると、十分な収束性が得ら
れないことが分かった。具体的には、170度(50H
z)異なる場合および190度(60Hz)異なる場合
には、収束させることは困難であった。なお、この際用
いたステップサイズパラメータは、μa =1.,μp
10.,μGp=1.であった。
【0083】上記の現象について発明者が考察した結
果、上記数20の更新式によって十分な収束性が得られ
ない原因として、同更新式の第2種成分と第3種成分と
はステップサイズパラメータを除いて同一であることが
挙げられた。すなわち、これゆえに、位相遅れに関する
収束安定係数Gk p ハットの機能が十分に発揮されてい
ないものと推測された。
【0084】そこで、上記第2種成分に対し、−π/2
の位相差を上記第3種成分に持たせた次の数21に示す
更新式を試行的に発案した。
【0085】
【数21】
【0086】上記数21の更新式を前述と同様の数値シ
ミュレーションで評価したところ、若干の収束性の向上
が見られた。すなわち、位相遅れの差(変動分)が大き
い場合について数値シミュレーションすると、170度
(50Hz)の場合では0.1秒程の間に誤差信号e
(n)を収束させることができた。しかし、190度
(60Hz)異なる場合には、収束させることは困難で
あった。
【0087】そこで、発明者がさらに試行を重ねた結
果、適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズム11
について、上記数21に示すものよりも収束性の優れた
ものを開発することができた。それは、次の数22に示
すように、位相遅れに関する第3種成分から適応信号y
(n)の各次数の振幅ak を除外したものである。
【0088】
【数22】
【0089】上記数22の更新式は、位相遅れに関する
第3種成分はゲインに関する調整を行うための成分では
なく、制御対象システムの伝達特性における大きな位相
遅れに対応することを目的とした成分であるとの考えに
立って発案された。この更新式を前述の数値シミュレー
ションで評価したところ、位相遅れが170度(50H
z)異なる場合および190度(60Hz)異なる場合
の両者について、良好な収束性が得られた。誤差信号e
(n)の収束に要した時間は、前者で0.2秒、後者で
0.05秒程度であった。
【0090】したがって、上記数22の更新式のよう
に、第3種成分から振幅ak を除外し、第2種成分との
位相差を与える手法が有効であることが結論付けられ
た。 (位相調整パラメータの導入)ところで、上記数22で
は上記位相差は−π/2に限定されていたが、必ずしも
これに限定されるべき理由はない。そこで、発明者は、
位相調整パラメータψを導入し、上記位相差を−ψと置
きなおして次の数23に示す更新式を開発した。
【0091】
【数23】
【0092】発明者は、上記数23の更新式について、
ψ=0,π/6,π/3,・・・,11π/6という具
合に30°おきに6通りの数値シミュレーションを行
い、収束性を評価した。その際の各ステップサイズパラ
メータは、前述の数値シミュレーションの場合と同じで
あった。その結果、位相調整パラメータψの範囲によっ
て、収束する場合と収束しない場合とに分かれた。すな
わち、制御対象システムの位相おくれが予期したものと
大きく外れた場合にも、図2に示すように、±πの部分
を除くある範囲のψの領域で誤差信号e(n)を収束さ
せることができた。この領域は、かなり広いものと考え
られる。
【0093】ψが±πの部分(すなわち、πの整数倍の
とき)で収束性が悪くなる理由としては、上記数25の
更新式の第2種成分と第3種成分とが同位相または逆位
相で完全に同期してしまっていることを、発明者は疑っ
ている。つまり、もともと第1種成分と第2種成分の更
新だけでは適応しえないほど大きな位相遅れの変動に適
応することを目的に、位相遅れに関する収束安定係数G
k p ハットを更新する第3種成分は、付加されている。
したがって、上記更新式の第2種成分と第3種成分とが
完全に同期してしまっては、第3種成分の位相遅れの変
動に対する適応能力が損なわれているものと考えられ
る。
【0094】ただし、ステップサイズパラメータ等の適
切な設定により、ψ=0またはψ=±πにおいても応答
を収束させることができる可能性はある。しかしなが
ら、収束に要する時間が長く、安定性が微妙であるの
で、実用化には不向きであると考えられる。 (更新アルゴリズムの三角関数表現)以上のような研究
成果が得られたので、発明者は、上記数23においてψ
=π/2に限定した上記数22を、本実施例に適用する
方針を固めた。数22は、指数関数表現を三角関数表現
に改めることによって、次の数24に示される等価な更
新式が得られる。
【0095】
【数24】
【0096】本更新式(数24)によれば、指数関数表
現よりもより少ない演算量で制御することが可能にな
り、制御装置のコストを低減できるという効果がある。
また、これと同様に適応信号y(n)を生成する前述の
式12をも、三角関数表現に書き改めて使用することに
より、同様の効果をあげることができる。以上詳述した
ように、本更新式(数24)を更新アルゴリズム11に
採用することにより、いっそう速やかに周期性信号d
(n)の影響を相殺して、誤差信号e(n)を収束させ
得るようになった。
【0097】なお、以上の更新式(適応係数ベクトル更
新アルゴリズム)は、先願2のDXHS改アルゴリズム
に相当するものである。 (等価伝達特性データの作用効果)本実施例の周期性信
号の適応制御方法は、等価伝達特性データ13を有し、
周期性信号d(n)の一次角振動数ωが所定量に達した
場合には、等価伝達特性データ13にストアされている
データにより適応係数ベクトルW(n)の一部が更新さ
れることに特徴がある。
【0098】すなわち、図3に示すように、等価伝達特
性データ13は、各次数に対応する振幅ak の推定値
と、位相に関する収束安定係数Gk p ハットの各推定値
とを含んでいる。これらの推定値ak ,Gk p ハット
は、一次角振動数ωの所定幅毎にテーブルデータ(表形
式の数値データ)として等価伝達特性データ13に格納
されている。実システムでは、等価伝達特性データ13
は、例えばRAMのように書き込み可能な高速メモリー
上に実現される。
【0099】また、等価伝達特性データ13と適応係数
ベクトル更新アルゴリズム11とは、一次角振動数ωを
観測する周波数変動判定手段J1と、誤差信号e(n)
を観測する収束判定手段J2とを介して、互いにak
k p ハットを更新しあっている。まず、制御を始める
場合と、周期性信号d(n)の一次角振動数ωの変動が
所定量に達した場合には、等価伝達特性データ13によ
る適応係数ベクトルW(n)の成分の更新が行われる。
すなわち、制御を始める場合と、周波数変動判定手段J
1により、周期性信号d(n)の一次角振動数ωの変動
が予め定められた変動幅に達したと判定される場合とに
は、一次角振動数ωに対応する推定値ak ,Gk p ハッ
トが等価伝達特性データ13から読みだされる。読みだ
された推定値ak ,Gk p ハットは、経路P1を経て適
応係数ベクトル更新アルゴリズム11に伝送され、適応
係数適応係数ベクトルW(n)の成分のうち振幅ak
収束安定係数Gk p ハットとを更新する。
【0100】したがって、周期性信号d(n)の一次角
振動数ωの違いによって、極端に周期性信号d(n)の
振幅ak が異なる場合にも、適応係数ベクトル更新アル
ゴリズム11が単独で発揮する収束速度より速やかに適
応して制御することが可能になるという効果がある。ま
た、周期性信号d(n)の一次角振動数ωが頻繁または
急速に変動し、その振幅および位相が変動する場合に
も、等価伝達特性データ13から即時、一次角振動数ω
での推定値ak ,Gk p ハットが供給されるので、極め
て良好な収束特性が発揮されるという効果がある。
【0101】なお、等価伝達特性データ13には、(ス
イープテストや数値解析などにより)推定されたak
k p ハットが一式、周波数毎(例えば1Hz毎)に制
御開始以前に用意されているものとする。しからざる場
合にも、以下に述べるように、適応係数ベクトル更新ア
ルゴリズム11により推定されたak ,Gk p ハットを
もって、等価伝達特性データ13の内容が更新されてい
く。したがって、予め等価伝達特性データ13を用意す
ることができない場合にも、始動時に収束時間を幾らか
余分に要するだけで通常大きな不都合は生じない。
【0102】次に、適応制御中に十分に適応が進んだ場
合には、適応係数ベクトル更新アルゴリズム11によっ
て等価伝達特性データ13が更新される。すなわち、収
束判定手段J2が、誤差信号e(n)の二乗である二乗
誤差を常に観測しており、同二乗誤差が十分に小さくな
った(所定の時間、所定の閾値を下回った)と判定した
場合には、経路P2を閉じる。すると、適応係数ベクト
ル更新アルゴリズム11から、更新された適応係数ベク
トルW(n)の成分のうち振幅ak と収束安定係数G
k p ハットとが読みだされて、等価伝達特性データ13
へ伝送される。読みだされた成分ak ,Gk p ハット
は、等価伝達特性データ13のうち当該一次角振動数ω
の内容(推定値ak ,Gk p ハット)を更新する。こう
して、等価伝達特性データ13の内容は、一次角振動数
ωが変動しても適応が進む毎に更新される。
【0103】したがって、制御対象である周期性信号d
(n)の振幅特性や位相特性が時間変化していく場合に
も、本実施例によれば適応制御することが可能で、収束
特性(安定性と収束速度)が大きく劣化することはな
い。 (実施例1の効果)以上詳述したように、本実施例の周
期性信号の適応制御方法によれば、周期性信号d(n)
の一次角振動数ωが頻繁または急速に変動し、その振幅
および位相が急激に変動する場合にも、極めて良好な収
束特性が発揮されるという効果がある。また、一次角振
動数ωの違いによって特性が異なる周期性信号d(n)
に対しても、特性の時間変化が大きい周期性信号d
(n)に対しても、優れた収束特性(安定性と収束速
度)が発揮されるという効果がある。もちろん、一次角
振動数ωの違いによって特性が異なり、かつ、特性の時
間変化が大きい周期性信号d(n)に対しても、同様に
有効である。同時に、適応制御の安定性が増すので、適
応係数ベクトル更新アルゴリズム11内のステップサイ
ズパラメータを大きく取って、よりいっそう短時間に収
束させることも可能になる。
【0104】あわせて、本実施例では等価伝達特性デー
タ13の記憶内容をak ,Gk p ハットの2種類に限定
したので、ハードウエアとして実現する上でRAMに要
求される容量が比較的少なく、安価に制御装置を製造す
ることができる。 (実施例1の変形態様1)前述の等価伝達特性データ1
3においてGk p ハットを廃し、振幅ak のみを格納す
る変形態様も可能である。本変形態様によれば、RAM
に要求される容量が減り、より安価に制御装置を製造す
ることができる。
【0105】逆に、等価伝達特性データ13の内容とし
て、ak ,Gk p ハットの2種類だけではなく位相遅れ
ψk を含む変形態様も可能ではある。しかし、位相の適
応性に関してはGk p ハットによりすでに充足されてい
るので、この変形態様にあまり大きな効果は期待できな
い。 (実施例1の変形態様2)前述の等価伝達特性データ1
3において、記憶内容ak ,Gk p ハットの形式を一次
角振動数ωの所定範囲に対応する表形式以外のメモリー
形式で記憶する変形態様も可能である。
【0106】例えば、一次角振動数ωに関し比較的粗く
データ(記憶内容ak ,Gk p ハット)を取っておき、
一次関数で線形補間する手段もある。また、2次や高次
の関数またはスプライン関数などで補間し、同関数を係
数等の形式で等価伝達特性データ13に記憶しておいて
もよい(更新手続きは複雑になる)。なお、一次角振動
数ωの刻みに関しては、変化の激しい部分でのみ密に取
り、変化の少ない部分では粗にして記憶容量を節約する
手段もある。
【0107】(実施例1の変形態様3)前述の収束判定
手段J2を含む経路P2を省略し、等価伝達特性データ
13の更新は行わない変形態様も可能である。同変形態
様によっても、振幅・位相特性(つまりボーデ線図)が
あまり大きく時間変化しない周期性信号d(n)に対し
ては、実施例1と同様に一次角振動数ωの変化に速やか
に適応する適応制御をすることができる。同変形態様に
よれば、収束判定(J2)をしないので計算量が減ると
ともに、等価伝達特性データ13をROM上に実現でき
るので、実施例1よりも安価に制御装置を提供すること
ができる。
【0108】(実施例1の変形態様4)前述の収束判定
手段J2では、誤差信号e(n)の二乗である二乗誤差
を常に観測しており、同二乗誤差が十分に小さくなった
と判定する旨記載したが、収束判定ロジックを次のよう
にした変形態様も可能である。第1に、同じ一次角振動
数ω領域での前回の収束時の二乗誤差を記憶しておき、
再び同じ一次角振動数ω領域で適応制御している間の二
乗誤差が、前回収束時の二乗誤差と比較して小さくなっ
た場合に、収束したと判定する方法もある。
【0109】第2に、周期性信号d(n)の振幅も観測
し、振幅の二乗に比較して二乗誤差が十分に小さくなっ
た場合をもって収束したとみなす判定方法もある。さら
に、上記第1、第2の判定方法を組み合わせて判定する
判定方法もあり、このように様々な判定方法のうちか
ら、制御目標や制御対象の性質と制御装置のコストとの
兼ね合いで最良のものを選定すればよい。
【0110】〔実施例2〕 (実施例2の特徴)本発明の実施例2としての周期性信
号の適応制御方法では、前掲の図1および図3のシステ
ム構成を示すブロック図のうち、適応係数ベクトル更新
アルゴリズム11’および等価伝達特性データ13’
が、実施例1と異なっている。
【0111】すなわち、本実施例では図4に示すよう
に、適応係数ベクトル更新アルゴリズム11’におい
て、適応係数ベクトルW(n)は、数25に示すように
適応信号y(n)の各次数の正弦波の振幅ak および位
相φk の2種類を成分としている。そして、本適応係数
ベクトルW(n)は、誤差信号e(n)に基づき、次の
数26に従って更新される。なお、数26の更新式は、
前述の先行技術1のDXHSアルゴリズムに相当してい
る。
【0112】
【数25】
【0113】
【数26】
【0114】また、本実施例では、一次角振動数ωの各
領域に対して適正な振幅ak の推定値が、等価伝達特性
データ13に格納されている。適応制御中に、周期性信
号d(n)の一次角振動数ωの変動が所定量に達した場
合には、適応係数ベクトルW(n)の成分のうち振幅a
k が、各次数の角振動数kωに対応する等価伝達特性デ
ータ13’を参照して更新される。すなわち、周波数変
動判定手段J1が、常に一次角振動数ωを観測してお
り、一次角振動数ωが変動して、他の周波数領域に移動
した場合には、経路P1を閉じる。すると、当該一次角
振動数ω領域の振幅ak が、等価伝達特性データ13’
から適応係数ベクトル更新アルゴリズム11’へ伝送さ
れ、適応係数ベクトルW(n)の成分のうち振幅ak
新しい一次角振動数ωに適した初期値に更新する。
【0115】したがって、一次角振動数ωが変動し、そ
れに伴う振幅や位相の特性変化が大きい周期性信号d
(n)に対しても、適応係数ベクトルW(n)の振幅a
k 成分が適正な初期値に更新されるので、急速に適応す
ることができる。また、等価伝達特性データ13による
適応係数ベクトルW(n)の振幅ak 成分の適正な更新
により、一次角振動数ωが変動して周期性信号d(n)
の特性が大きく変わっても、制御が発散することが防止
されている。
【0116】一方、一次角振動数ωの変動とは別に特性
が時間変化する周期性信号d(n)にも、収束した適応
係数ベクトルW(n)の振幅ak 成分をもって等価伝達
特性データ13の内容を更新する機能により対処してい
る。すなわち、収束判定手段J2は、誤差信号e(n)
を観測しており、その二乗誤差が所定の値よりも所定時
間小さくなっている場合、適応が十分に進んで系は収束
したと判定し、経路P2を閉じる。すると、適応係数ベ
クトル更新アルゴリズム11’から適応係数ベクトルW
(n)のうち振幅ak 成分が、等価伝達特性データ1
3’に伝達されて等価伝達特性データ13’の当該一次
角振動数ω領域の内容を更新する。
【0117】したがって、等価伝達特性データ13’の
内容は、収束した適応係数ベクトルW(n)の振幅ak
成分をもって更新されるので、特性の時間変動が大きい
周期性信号d(n)に対しても、等価伝達特性データ1
3の内容が適正な範囲を越えることがない。その結果、
特性の時間変動が大きい周期性信号d(n)に対して
も、本実施例の適応制御方法は、発散することなく速や
かに収束する適応制御を施すことができる。
【0118】(実施例2の効果)以上詳述したように、
本実施例の周期性信号の適応制御方法によれば、実施例
1と同様に、周期性信号d(n)の一次角振動数ωが頻
繁または急速に変動し、その振幅および位相が急激に変
動する場合にも、極めて良好な収束特性が発揮されると
いう効果がある。同様に、一次角振動数ωの違いによっ
て特性が大きく異なる周期性信号d(n)に対しても、
優れた収束特性(安定性と収束速度)が発揮されるとい
う効果がある。また、同一の一次角振動数ωにおいても
特性が時間変化していく周期性信号d(n)に対して
も、常に等価伝達特性データ13’をアップデートして
いくことにより、優れた収束特性をもつ適応制御を施す
ことが可能である。さらに、適応制御の安定性が増すの
で、適応係数ベクトル更新アルゴリズム11内のステッ
プサイズパラメータを大きく取って、よりいっそう短時
間に収束させることも可能になる。
【0119】あわせて、本実施例では等価伝達特性デー
タ13’の記憶内容を振幅ak のみに限定したので、ハ
ードウエアとして実現する上でRAMに要求される容量
が実施例1よりも少なく、より安価に制御装置を製造す
ることができる。 (実施例2の変形態様)本実施例に対しても、前述の実
施例1に対するその変形態様1〜4に相当する各種変形
態様が可能で、これらに準ずる作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の適応制御方法の構成を示すブロッ
ク線図
【図2】 実施例1の適応制御方法の収束範囲を示すψ
の位相図
【図3】 実施例1の等価伝達特性データの作用を示す
部分ブロック線図
【図4】 実施例2の等価伝達特性データの作用を示す
部分ブロック線図
【図5】 従来技術(FX−LMS)の適応制御方法を
示すブロック線図
【図6】 従来技術(FXLMS改)の適応制御方法を
示すブロック線図
【図7】 従来技術(SFX)の適応制御方法を示すブ
ロック線図
【図8】 先行技術1(DXHS)の適応制御方法を示
すブロック線図
【符号の説明】
1:適応制御アルゴリズム 11,11’:適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴ
リズム 12:適応信号発生アルゴリズム(y(n)=・・・) 13,13’:等価伝達特性データ 2:制御対象の物理システム 20:周期性信号発生
源 21:周期性信号の伝達特性 22:周期性信号発生
システム 23:制御対象システム(伝達特性はG g,p ) 24:誤差信号e(n)の観測点 d(n):周期性信号 e(n):誤差信号 y
(n):適応信号 z(n):適応伝達信号 n:時刻(ステップ) T:更新周期(サンプリング周期) W(n):適応
係数ベクトル ak * ,φk * :周期性信号d(n)のk次正弦波の振
幅・位相(1≦k≦L) ak ,φk :適応信号y(n)のk次の正弦波の振幅お
よび位相(1≦k≦M) L:制御対象の周期性信号の高次振動の最大次数(1≦
L) M:適応信号の高次振動の最大次数(1≦M≦L) ω* :周期性信号d(n)の一次角振動数 ω:適応信号y(n)の一次角振動数(ω* の計測値で
工学的にω* と等価) G g,p :制御対象システムの伝達特性 G' g,p :
周期性信号の伝達特性 Gk g ,Gk p :制御対象システムの角振動数kωでの
ゲインおよび位相遅れ Gk ハット:収束安定係数(Gk g ハット,Gk p ハッ
トの少なくとも一方) Gk g ハット,Gk p ハット:ゲインおよび位相遅れに
関する収束安定係数 ψ:位相調整パラメータ J1:周波数変動判定手段 J2:収束判定手段 P1:経路(更新アルゴリズム11から等価伝達特性デ
ータ13へ) P2:経路(等価伝達特性データ13から更新アルゴリ
ズム11へ)

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】観測点へ影響を及ぼす周期性信号に対し、
    該周期性信号に同期した一次の基本正弦波およびまたは
    該基本正弦波から該基本正弦波のM次(2≦M)までの
    高調波信号からなる適応信号を逆位相で加えることによ
    って、該周期性信号の特定周波数成分の該観測点への影
    響を能動的に除去する周期性信号の適応制御方法であっ
    て、 時刻nにおいて該周期性信号の一次角振動数ωに基づい
    て該適応信号y(n)を発生させる適応信号発生アルゴ
    リズムと、 該適応信号y(n)の各次数(次数k=1,2,・・
    ・,M)の正弦波の振幅ak および位相φk 、ならびに
    該適応信号が該観測点に至るまでの制御対象システムの
    伝達特性のゲインに関する収束安定係数Gk g ハットお
    よび位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットのう
    ち、少なくとも該振幅ak および該位相φkを成分とし
    て含む適応係数ベクトルW(n)を、該周期性信号の影
    響を除去すべき該観測点で検知された誤差信号e(n)
    に基づき該時刻nの経過毎に更新して、該周期性信号の
    振幅および位相と該制御対象システムの該伝達特性とに
    対し該適応係数ベクトルW(n)の各該成分を適応的に
    調整する適応係数ベクトル更新アルゴリズムと、 該適応係数ベクトルW(n)の成分のうち少なくとも該
    振幅ak の推定値が含まれている等価伝達特性データと
    を有し、 更新された該適応係数ベクトルW(n)の成分のうち各
    次数の振幅ak および位相φk をもって、該適応信号y
    (n)の各次数の正弦波の振幅ak および位相φk が更
    新され、 該一次角振動数ωの変動が所定量に達した場合には、該
    適応係数ベクトルW(n)の成分のうち少なくとも該振
    幅ak は、各次数の角振動数kωに対応する該等価伝達
    特性データを参照して更新されることを特徴とする周期
    性信号の適応制御方法。
  2. 【請求項2】前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムに
    おいて、 前記誤差信号e(n)の二乗を前記適応係数ベクトルW
    (n)で偏微分することによって勾配ベクトルを求め、 該勾配ベクトルの各成分にそれぞれのステップサイズパ
    ラメータを掛け合わせたものを、前記適応係数ベクトル
    W(n)から減算することにより、時刻nの経過毎に更
    新された該適応係数ベクトルが算出される請求項1記載
    の周期性信号の適応制御方法。
  3. 【請求項3】前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムに
    おいて、 前記適応係数ベクトルW(n)は、数1に示すように前
    記適応信号y(n)の各次数の正弦波の振幅ak および
    位相φk を成分とし、前記誤差信号e(n)に基づき数
    2に従って更新される請求項1記載の周期性信号の適応
    制御方法。 【数1】 【数2】
  4. 【請求項4】前記一次角振動数ωの変動が所定量に達し
    た場合には、前記適応係数ベクトルW(n)の成分のう
    ち、前記振幅ak が、各次数の角振動数kωに対応する
    前記等価伝達特性データを参照して更新される請求項3
    記載の周期性信号の適応制御方法。
  5. 【請求項5】前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムに
    おいて、 前記適応係数ベクトルW(n)は、数3に示すように前
    記適応信号y(n)の各次数の正弦波の振幅ak および
    位相φk ならびに位相遅れに関する収束安定係数Gk p
    ハットを成分とし、前記誤差信号e(n)に基づき位相
    調整パラメータψを含む数4に従って更新される請求項
    1記載の周期性信号の適応制御方法。 【数3】 【数4】
  6. 【請求項6】前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムに
    おいて、前記位相調整パラメータはψ=π/2であり、
    該パラメータの下で前記数4と等価な数5に従って更新
    される請求項5記載の周期性信号の適応制御方法。 【数5】
  7. 【請求項7】前記等価伝達特性データは、各次数に対応
    する前記振幅ak および前記位相に関する収束安定係数
    k p ハットの各推定値を含み、 前記一次角振動数ωの変動が所定量に達した場合には、
    前記適応係数ベクトルW(n)の成分のうち、該振幅a
    k および該収束安定係数Gk p ハットが、各次数の角振
    動数kωに対応する該等価伝達特性データを参照して更
    新される請求項5〜6のうちいずれかに記載の周期性信
    号の適応制御方法。
  8. 【請求項8】 前記等価伝達特性データは、適応制御開
    始以前に予め設定されている請求項1記載の周期性信号
    の適応制御方法。
  9. 【請求項9】 前記等価伝達特性データは、前記適応係
    数ベクトルW(n)の更新された成分によって更新され
    る請求項1記載の周期性信号の適応制御方法。
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