JPH09195768A - エンジンの冷却装置 - Google Patents

エンジンの冷却装置

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JPH09195768A
JPH09195768A JP954196A JP954196A JPH09195768A JP H09195768 A JPH09195768 A JP H09195768A JP 954196 A JP954196 A JP 954196A JP 954196 A JP954196 A JP 954196A JP H09195768 A JPH09195768 A JP H09195768A
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博之 福永
Naoya Kato
直也 加藤
Yoshimitsu Inoue
美光 井上
Yasutoshi Yamanaka
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高負荷運転直後のエンジン停止時におけるエ
ンジン水温の過上昇を防止する。 【解決手段】 水冷式エンジン1の冷却系回路に、冷却
水温度を感知するサーモワックス51の体積変化によっ
て変位する弁体52を有するサーモスタット5を備え、
弁体52によりラジエータ2とエンジン1との間の流路
を開閉する。この弁体52に外力を加えて、この弁体5
2を開弁させる電磁アクチュエータ10を備え、エンジ
ン1の停止時にエンジン1部分の冷却水温度が設定温度
以上であるときは、制御装置11により電磁アクチュエ
ータ10を作動させて前記弁体52を強制的に開弁させ
る。これにより、デッドソーク時にラジエータ2とエン
ジン1との間の流路を必ず開通させて、ラジエータ2側
の比較的低温の冷却水を、冷却水温度差による自然対流
でエンジン1側に流入させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水冷式エンジン
(内燃機関)の冷却装置において、特に、デッドソーク
時(高負荷運転直後のエンジン停止時)の冷却水温度の
過上昇を良好に防止できるようにした冷却装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、車両等に搭載される水冷式エンジ
ンの冷却系には、通常、エンジンのクランクシャフトに
よって機械的に駆動されるウォータポンプを設け、この
ウォータポンプにより冷却水を冷却系回路内を循環さ
せ、この冷却系回路内に設けられたラジエータにて冷却
水の放熱を行っている。
【0003】そして、冷却系回路内に冷却水温度に応動
するサーモスタットを備え、このサーモスタットによ
り、エンジンからラジエータへの冷却水の流量を制御し
て、冷却水の温度を所定温度に維持するようにしてい
る。ところで、エンジンの燃費向上を図るためには、エ
ンジンの低負荷時は冷却水温度を高めに設定して、エン
ジンの摩擦損失を低減させることが望ましい。一方、エ
ンジンの高負荷時は、ノッキングの抑制、充填効率の向
上のために、冷却水温度を低めに設定して、エンジン出
力を向上させることが望ましい。
【0004】このため、特開昭58−2419号公報、
特開昭58−124016号公報等において、エンジン
の負荷に対応して、サーモスタットによる冷却水設定温
度を変更する冷却装置が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公
報記載の従来装置では、エンジン運転中における冷却水
温度の制御システムについて提案しているのみで、エン
ジンのデッドソーク時(高負荷運転直後のエンジン停止
時)における冷却水温度の過上昇を防止する対策につい
ては何ら提案していない。
【0006】近年、エンジン出力の増大化に伴って、特
に、夏季の高負荷運転直後のデッドソークのごとく熱負
荷の高い状態でエンジンを停止した場合には、エンジン
部分の冷却水温度の過上昇が発生しやすい傾向にある。
極端な場合には、冷却水の沸騰を起こす場合もあり、エ
ンジン周囲の部品の耐久性に悪影響を及ぼす。本発明は
上記点に鑑みてなされたもので、夏季等の高負荷運転直
後における冷却水温度の過上昇を、良好に防止できるよ
うにすることをを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】デッドソーク時における
水温の過上昇は、エンジン停止によりウォータポンプが
停止するとともに、サーモスタット部分では冷却水の流
れ停止により水温が低下して、サーモスタットが閉じる
ので、エンジンとラジエータとの間の冷却水の交換がな
くなることが原因となって、発生する。
【0008】そこで、本発明では、エンジン停止時にエ
ンジン部分の水温が所定温度以上であるときは、サーモ
スタットを強制的に開弁するという技術的手段を採用す
ることにより、上記目的を達成しようとするものであ
る。具体的には、請求項1記載の発明では、水冷式エン
ジン(1)の冷却系回路に、冷却水温度を感知する感温
部材(51)によって変位する弁体(52)を有し、こ
の弁体(52)によりラジエータ(2)と水冷式エンジ
ン(1)との間の流路を開閉するサーモスタット(5)
を備えるとともに、このサーモスタット(5)の弁体
(52)に外力を加えて、この弁体(52)を開弁させ
る弁体駆動装置(10)を備え、水冷式エンジン(1)
の停止時に水冷式エンジン(1)部分の冷却水温度が第
1の設定温度以上であるときは、制御装置(11)によ
り前記弁体駆動装置(10)を作動させて前記弁体(5
2)を強制的に開弁させることを特徴としている。
【0009】従って、請求項1記載の発明によると、デ
ッドソーク時にラジエータ(2)と水冷式エンジン
(1)との間の流路を必ず開通させて、ラジエータ
(2)側の比較的低温の冷却水を、冷却水温度差による
自然対流でエンジン(1)側に流入させることができ
る。そのため、ウォータポンプが停止した後でも、エン
ジンとラジエータとの間の冷却水の交換を行って、冷却
水温度の過上昇を良好に防止できる。
【0010】このように冷却水温度の過上昇を防止する
ことにより、冷却系回路の各部品の耐圧性、耐熱性等の
設計基準を緩和でき、製品コストの低減を達成できる。
さらに、エンジンの冷却水温度の過上昇防止により、エ
ンジンの燃料系部品の温度上昇も同時に抑制できるた
め、これら部品内の燃料中にベーパーが発生するのを防
止して、エンジンの再始動不良を防止できる。
【0011】上記に加えて、請求項2記載の発明による
と、水冷式エンジン(1)の高負荷時に、制御装置(1
1)により弁体駆動装置(10)を作動させてサーモス
タット(5)の弁体(52)を強制的に開弁させている
から、エンジン高負荷時における弁体(52)の開弁リ
フト量を増大させて、ラジエータ(2)への循環冷却水
量を増大させて、エンジン水温を低めに設定でき、これ
によりエンジン高負荷時におけるエンジン出力の増大を
図ることができる。
【0012】逆に、エンジンの中低負荷時には、弁体
(52)を閉弁させるから、エンジン水温を高めに設定
でき、これによりエンジン中低負荷時における燃費等を
向上できる。また、請求項3記載の発明によると、水冷
式エンジン(1)の高回転時に、制御装置(11)によ
り弁体駆動装置(10)を作動させてサーモスタット
(5)の弁体(52)を強制的に開弁させているから、
エンジン高回転時における弁体(52)の開弁リフト量
を増大させて、エンジン水温を低めに設定し、エンジン
出力の増大を図ることができる。
【0013】また、請求項4記載の発明によると、水冷
式エンジン(1)の運転中に、水冷式エンジン(1)部
分の冷却水温度が前記第1の設定温度またはこれに近似
した温度以上であるときは、制御装置(11)により弁
体駆動装置(10)を作動させてサーモスタット(5)
の弁体(52)を強制的に開弁させているから、水冷式
エンジン(1)の運転中にエンジン水温が異常に上昇し
ようとする際に、事前に、弁体(52)の開弁リフト量
を増大させて、エンジン水温を引下げ、エンジン(1)
のオーバーヒートを未然に防止できる。
【0014】また、請求項5記載の発明によると、水冷
式エンジン(1)の冷却系回路に、断熱構造からなり、
高温の冷却水を蓄える蓄熱容器(16)を備え、水冷式
エンジン(1)の始動時に水冷式エンジン(1)部分の
冷却水温度が前記第1の設定温度より十分低い第2の設
定温度以下であるときは、蓄熱容器(16)内の冷却水
を水冷式エンジン(1)内に循環させるようにしている
から、水冷式エンジン(1)の暖機を蓄熱容器(16)
内の高温冷却水の循環により良好に促進できるととも
に、蓄熱容器(16)内の冷却水温度が前記第1の設定
温度と前記第2の設定温度との間の中間温度である第3
の設定温度より低い間は制御装置(11)により弁体駆
動装置(10)を作動させてサーモスタット(5)の弁
体(52)を強制的に閉弁させているから、この弁体
(52)の閉弁によりエンジン水温を高めに設定して、
より温度の高い冷却水を蓄熱容器(16)内に蓄えるこ
とができ、次回のエンジン暖機促進の効果を一層高める
ことができる。
【0015】また、請求項6記載の発明によると、水冷
式エンジン(1)の冷却系回路に、冷却水を熱源として
送風空気を加熱する車室暖房用ヒータコア(7)を備え
るとともに、この車室暖房用ヒータコア(7)に送風す
る送風機(23)を備え、この送風機(23)を作動さ
せて車室の暖房を行うときに、暖房能力を高める条件が
発生したときは、制御装置(11)により弁体駆動装置
(10)を作動させてサーモスタット(5)の弁体(5
2)を強制的に閉弁させているから、冷却水を熱源とし
て車室の暖房を行う際に、前記弁体(52)の閉弁によ
りエンジン水温を高めに設定して、暖房効果を高めるこ
とができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図に
基づいて説明する。 (第1実施形態)図1は本発明を車両用エンジンの冷却
装置に適用した第1実施形態を示すもので、1は車両の
走行用エンジン(内燃機関)で、水冷式のものである。
2はラジエータで、冷却ファン3により送風される冷却
空気と内燃機関1の冷却水とを熱交換して冷却水を冷却
するものである。ここで、冷却ファン3は、モータ3a
により駆動される電動軸流ファンから構成されている。
【0017】4はラジエータ2と並列に設けられたバイ
パス回路、5はラジエータ2とエンジン1との間の冷却
水の流れを制御するサーモスタット(冷却水温度応動
弁)で、サーモワックス(感温部材)51の温度による
体積変化を利用して弁体52を変位させて、冷却水流路
を開閉するものである。サーモスタット5の具体的構造
は後述する。
【0018】6はエンジン1の冷却系回路に冷却水を循
環するウォータポンプで、エンジン1のクランクシャフ
トの回転が伝達されて、機械的に駆動されるものであ
る。7は自動車用空調装置のヒータコア(暖房用熱交換
器)で、図示しない空調用送風機により送風される空調
空気を冷却水と熱交換して加熱するものである。このヒ
ータコア7は、周知のごとく図示しない空調用ダクト内
の通風路において冷房用蒸発器の空気下流側に設置さ
れ、この蒸発器で冷却された冷風を所定温度まで再加熱
することにより車室内への吹出空気温度を制御する。
【0019】8はこのヒータコア7へ冷却水を循環させ
るヒータ用回路で、9はラジエータ2へ冷却水を循環さ
せるメイン回路である。次に、サーモスタット5部分の
具体的構造について説明する。サーモワックス51はゴ
ム等からなる弾性変形可能なシール用収納体51a内に
収納されており、この収納体51aは金属等で成形され
た円筒状ケース53内に配設されている。このケース5
3の一端(上端)側の外周面には環状の板形状からなる
弁体52が一体に連結されており、また、収納体51a
およびケース53は支持シャフト54に対して摺動可能
に嵌合支持されている。
【0020】弁体52に対向するように、中心孔56a
を有する弁座プレート56が配置されており、この弁座
プレート56はハウジング57に固定されている。ケー
ス53の他端(下端)側には円板状の補助弁体58がコ
イルスプリング58aにより摺動可能に保持されてい
る。また、弁座プレート56にはスプリング保持プレー
ト59が固定されており、このスプリング保持プレート
59と弁体52との間にコイルスプリング60が配設さ
れている。
【0021】サーモワックス51周囲の冷却水温度が所
定温度(例えば82°C)より低いときは、サーモワッ
クス51の体積収縮により弁体52がコイルスプリング
60のばね力により図1の上方へ変位して、弁体52が
弁座プレート56に当接してその中心孔56aを閉塞す
る。これにより、サーモスタット5がラジエータ2とエ
ンジン1との間の冷却水流路を閉塞する。
【0022】そして、サーモワックス51周囲の冷却水
温度が所定温度より高いときは、サーモワックス51の
体積膨張により支持シャフト54を起点として弁体52
がケース53と一体になってコイルスプリング60のば
ね力に抗して図1の下方へ変位し、弁体52が弁座プレ
ート56から開離して中心孔56aを開放する。これに
より、サーモスタット5がラジエータ2とエンジン1と
の間の冷却水流路を開放する。
【0023】補助弁体58は上記弁体52の変位と連動
して変位し、弁体52がラジエータ2とエンジン1との
間の冷却水流路を閉塞するとき、バイパス回路4を全開
し、弁体52がラジエータ2とエンジン1との間の冷却
水流路を開放するとき、バイパス回路4を全閉する。さ
らに、上記支持シャフト54は、電磁アクチュエータ
(弁体駆動装置)10により変位するようになってお
り、電磁アクチュエータ10は電磁コイル10aを有
し、この電磁コイル10aに通電すると、鉄系の磁性材
からなる支持シャフト54を吸引して、コイルスプリン
グ60のばね力に抗して図1の下方へ強制的に変位させ
る。電磁コイル10aへの通電を遮断すると、コイルス
プリング60のばね力により支持シャフト54が図1の
上方へ変位し、その上端部54aがハウジング10bの
内壁面に当接して、支持シャフト54の位置決めがなさ
れる。
【0024】図2は電磁アクチュエータ10の電磁コイ
ル10aへの通電断続によりサーモスタット5の弁体5
2のリフト量hが2段階に制御されるリフト量特性を示
すもので、図2(b)のT1はサーモスタット5の弁体
52が開弁し始める設定温度(例えば、82°C)であ
り、T2はサーモスタット5の弁体52が全開状態とな
る設定温度(例えば、95°C)である。
【0025】図2(b)の実線は電磁コイル10aへの
通電を遮断しているときのリフト量特性であり、サーモ
スタット5周囲の冷却水温度が設定温度T1以下のとき
はリフト量が0となり、弁体52は全閉状態となる。図
2(b)の破線は電磁コイル10aに通電したときのリ
フト量特性であり、電磁コイル10aにて支持シャフト
54が吸引され、強制的にリフト量hだけ支持シャフト
54が引き下げられるため、サーモスタット5周囲の冷
却水温度が設定温度T1以下であっても、このリフト量
hの分だけ弁体52が開弁する。
【0026】11は電子制御装置で、電磁アクチュエー
タ10の電磁コイル10aへの通電を制御するものであ
り、本例では、マイクロコンピュータおよびその周辺回
路から構成されている。12はエンジン1部分(具体的
にはエンジン1の冷却水出口部)の冷却水温度を検出す
る水温センサで、サーミスタのような感温抵抗素子から
なる。本例では、この水温センサ12により「冷却水温
度に関連する信号を発生する水温信号手段」が構成され
ている。
【0027】13はエンジン1の点火回路に電源を供給
するイグニッションスイッチである。本例では、このイ
グニッションスイッチ18により「エンジン1の運転、
停止に関連する信号を発生するエンジン運転信号手段」
を構成している。14はエンジン1の吸気負圧を検出す
る圧力センサであり、本例ではこの圧力センサ14によ
り「エンジン1の負荷に関連する信号を発生するエンジ
ン負荷信号手段」を構成している。
【0028】15はエンジン回転数を検出する回転数セ
ンサであり、本例ではこの回転数センサ15により「エ
ンジン1の回転数に関連する信号を発生するエンジン回
転数信号手段」を構成している。電子制御装置11は、
上記イグニッションスイッチ13およびセンサ12、1
4、15等から入力される入力信号を予め設定されたプ
ログラムに従って判定、演算処理を行うとともに、その
演算処理結果に基づいて電磁コイル10aへの通電を制
御するものである。
【0029】次に、上記構成においてエンジン1の運転
モード別に作動を説明する。 デッドソーク時の水温制御 連続登坂走行時のごとく、エンジン1を連続して高負
荷、高回転にて運転し、エンジン1の熱負荷が高い状態
にてエンジン1を停止すると、エンジン1の停止後も、
エンジン1部分の水温が過剰に上昇することがある。
【0030】そこで、本実施形態では、エンジン1の停
止後も水温センサ12によりエンジン1部分の冷却水温
度のモニターを継続し、エンジン1部分の冷却水温度が
設定温度T3(例えば、105°C)以上であると、イ
グニッションスイッチ13のOFF信号(エンジン停止
信号)と水温センサ12からの水温信号とにより、電子
制御装置11がデッドソーク時であると判定し、電磁ア
クチュエータ10の電磁コイル10aに通電する。
【0031】すると、この電磁コイル10aの吸引力に
よりサーモスタット5の支持シャフト54が強制的にリ
フト量hだけ引き下げられるため、サーモスタット5周
囲の冷却水温度が設定温度T1以下であっても、このリ
フト量hの分だけ弁体52が開弁する。その結果、エン
ジン1とラジエータ2との間の冷却水流路が開通状態と
なるため、エンジン1内の高温の冷却水とラジエータ2
内の低温の冷却水との間に両者の密度差による対流が発
生する。これにより、エンジン1とラジエータ2との間
で冷却水が入れ替わるので、エンジン1部分の水温が過
剰に上昇することを防止できる。
【0032】図3はデッドソーク時におけるエンジン部
分の水温の変化を示すものであり、エンジン停止後の水
温上昇に対して、本実施形態では、エンジン部分の水温
が設定温度T3まで上昇すると、上記のごとくサーモス
タット5の弁体52をリフト量hの分だけ強制的に開弁
するため、図3の実線に示すごとく水温上昇を低く抑え
ることができる。
【0033】これに対し、従来の通常の冷却装置では、
高負荷運転直後のエンジン停止とともに冷却水の流動が
止まってしまうので、エンジン1内の冷却水温度が図3
の破線に示すごとく急上昇してしまう。なお、ウォータ
ポンプ6をエンジン1による機械的駆動方式とせずに、
モータによる電動駆動方式として、エンジン停止後もエ
ンジン部分の水温が設定温度T3以上であるときはウォ
ータポンプ6を作動させるようにすれば、デッドソーク
時により一層効果的にエンジン水温の過上昇を防止でき
る。
【0034】エンジン負荷による水温制御 エンジン1運転中の負荷が小さいとき(中低負荷時)は
エンジン1のスロットルバルブ(図示せず)の開度が小
さいため、エンジン1の吸気負圧が設定値(例えば、−
18kPa)より大きくなる。この吸気負圧の増大は圧
力センサ14により検出され、電子制御装置11に入力
される。これにより、電子制御装置11はエンジン1の
中低負荷運転を判定し、電磁アクチュエータ10の電磁
コイル10aに通電しないため、サーモスタット5の弁
体52は、電磁コイル10aによるリフト量hが付与さ
れず、図2の実線で示す通常のリフト量特性で作動す
る。
【0035】従って、サーモスタット5周囲の水温が設
定温度T1より低いときは、サーモワックス51の体積
収縮によりサーモスタット5の弁体52が全閉状態とな
り、補助弁体58がパイパス回路4を全開するため、ウ
ォータポンプ6の作動により水冷式エンジン1を冷却す
る冷却水は、パイパス回路4を循環するのみで、ラジエ
ータ2に流入しない。
【0036】そして、サーモスタット5周囲の水温が設
定温度T1より高くなると、サーモワックス51の体積
膨張によりサーモスタット5の弁体52が開弁し、水冷
式エンジン1を冷却する冷却水は、エンジン1を出た後
に、メイン回路9を通って、ラジエータ2に流入し、こ
こで冷却ファン3の送風空気と熱交換して冷却される。
そして、この冷却後の冷却水はサーモスタット5、ウォ
ータポンプ6を通ってエンジン1に戻る。
【0037】このように、エンジン1の中低負荷時に
は、サーモスタット5の弁体52は、電磁コイル10a
によるリフト量hが付与されず、図2の実線で示す通常
のリフト量特性で作動することにより、弁体52の開弁
時においても、リフト量hの分だけ弁体52の開弁量が
小となり、ラジエータ2への流入冷却水量が抑制され
る。従って、ラジエータ2での冷却水の放熱性能が抑制
され、エンジン水温を高めに設定することができるた
め、エンジン1の摩擦損失を軽減して、燃費を向上でき
る。
【0038】一方、エンジン1のスロットルバルブ(図
示せず)の開度が所定値以上となって、エンジン1が高
負荷運転しているときは、エンジン1の吸気負圧が設定
値(例えば、−18kPa)より小さくなる。この吸気
負圧の低下は圧力センサ14により検出され、電子制御
装置11に入力される。これにより、電子制御装置11
はエンジン1の高負荷運転を判定し、電磁アクチュエー
タ10の電磁コイル10aに通電する。その結果、サー
モスタット5の弁体52は、電磁コイル10aによりリ
フト量h分だけ強制的に開弁され、図2の破線で示すリ
フト量特性で作動する。
【0039】従って、サーモスタット5周囲の水温が設
定温度T1以下であっても、サーモスタット5の弁体5
2が強制的に開弁するとともに、水温が設定温度T1以
上であるときは、リフト量h分だけ弁体52の開弁量が
増大し、ラジエータ2への流入冷却水量が増大する。そ
のため、ラジエータ2での冷却水の放熱性能を増大で
き、エンジン水温を低めに制御できるので、高負荷時に
おけるエンジン出力の向上を図ることができる。
【0040】エンジン回転数による水温制御 エンジン回転数が設定値(例えば、4000rpm)よ
り低いときは、回転数センサ15からの入力信号により
電子制御装置11はエンジン1の中低回転運転を判定
し、電磁アクチュエータ10の電磁コイル10aに通電
しないため、サーモスタット5の弁体52は、電磁コイ
ル10aによるリフト量hが付与されず、図2の実線で
示す通常のリフト量特性で作動する。
【0041】エンジン回転数が設定値(例えば、400
0rpm)より高くなると、電子制御装置11はエンジ
ン1の高回転運転を判定し、電磁アクチュエータ10の
電磁コイル10aに通電する。その結果、サーモスタッ
ト5の弁体52は、電磁コイル10aによりリフト量h
分だけ強制的に開弁され、図2の破線で示すリフト量特
性で作動する。
【0042】従って、サーモスタット5周囲の水温が設
定温度T1以下であっても、サーモスタット5の弁体5
2が強制的に開弁するとともに、水温が設定温度T1以
上であるときは、リフト量h分だけ弁体52の開弁量が
増大し、ラジエータ2への流入冷却水量が増大する。そ
のため、ラジエータ2での冷却水の放熱性能を増大で
き、エンジン水温を低めに制御できるので、高回転時に
おけるエンジン出力の向上を図ることができる。
【0043】オーバーヒート防止のための水温制御 エンジン運転中に、何らかの原因でエンジン水温が異常
に上昇して、設定温度T3(例えば、105°C)以上
になると、水温センサ12からの入力信号により電子制
御装置11はこの水温の異常上昇を判定して、エンジン
負荷、エンジン回転数の如何にかかわらず、電磁アクチ
ュエータ10の電磁コイル10aに通電する。その結
果、サーモスタット5の弁体52は、電磁コイル10a
によりリフト量h分だけ強制的に開弁され、図2の破線
で示すリフト量特性で作動する。
【0044】従って、リフト量h分だけ弁体52の開弁
量が増大し、ラジエータ2への流入冷却水量が増大す
る。そのため、ラジエータ2での冷却水の放熱性能を増
大でき、エンジン水温が設定温度T3以上にさらに異常
上昇するのを防止でき、エンジン1のオーバーヒートを
未然に防止できる。なお、第1実施形態では、上記のご
とくエンジン運転中にオーバーヒート防止のために弁体
52を強制的に開弁させるエンジン水温の設定温度を、
デッドソーク時に弁体52を強制的に開弁させるエンジ
ン水温の設定温度と同一温度T3としているが、このT
3と近似した別の温度としてもよいことはもちろんであ
る。 (第2実施形態)図4は第2実施形態を示しており、本
例では高温の冷却水を蓄えておく蓄熱容器16をバイパ
ス回路4に設置し、この蓄熱容器16内の高温の冷却水
をエンジン1に循環して、エンジン1の暖機促進を図る
ものである。
【0045】具体的に説明すると、蓄熱容器16はステ
ンレスのような耐食性に優れた金属からなる2重タンク
構造の中間空隙部を真空として断熱構造としたものであ
る。この蓄熱容器16内には蓄熱水温を検出する温度セ
ンサ17が内蔵されている。蓄熱容器16の入口パイプ
16aおよび出口パイプ16bと、バイパス回路4との
間の流路は、流路切替弁18にて切替えられるようにな
っている。この流路切替弁18は例えば回転可能なロー
タリ式の弁体(図示せず)を内蔵し、このロータリ式の
弁体の回動位置をサーボモータ等の電気アクチュエータ
により選択して、流路の切替を行う。
【0046】19は空調用電子制御装置で、空調スイッ
チ20、外気温度を検出する外気温センサ21、ヒータ
コア3の吹出空気温度を検出する吹出温度センサ22等
から信号が入力される。この入力信号に基づいて、空調
用電子制御装置19は空調用送風機23等の作動を制御
するとともに、ヒータ信号を電子制御装置11に入力す
るものである。
【0047】第2実施形態も前述した〜の水温制御
を同様に実施することは可能であり、以下、第1実施形
態と異なる作動についてのみ説明する。まず、エンジン
1の冷間始動時について説明すると、エンジン水温が設
定温度(例えば、55°C)以下の時にエンジン1が始
動されると、水温センサ12およびスタータースイッチ
24からの入力信号に基づいて、電子制御装置11は冷
間始動時を判定し、流路切替弁18に流路切替信号を入
力する。これにより、流路切替弁18は蓄熱容器16の
入口パイプ16aおよび出口パイプ16bと、バイパス
回路4との間の流路を連通させて、バイパス回路4に直
列に蓄熱容器16を挿入するため、蓄熱容器16内の高
温の冷却水をバイパス回路4を通してエンジン1に循環
して、エンジン1の暖機促進を図ることができる。
【0048】ここで、エンジン1の暖機終了後には、次
回のエンジン始動に備えて蓄熱容器16内に高温の冷却
水を蓄える必要がある。そこで、本第2実施形態では、
温度サンサ17により蓄熱水温を検出し、蓄熱水温が設
定温度(例えば、80°C)より低い間は、常に、電子
制御装置11により電磁アクチュエータ10の電磁コイ
ル10aへの通電を遮断する。
【0049】従って、サーモスタット5の弁体52は、
電磁コイル10aによるリフト量hが付与されず、図2
の実線で示す通常のリフト量特性で作動するので、サー
モスタット5周囲の水温が設定温度T1(例えば、82
°C)より低いときは、サーモワックス51の体積収縮
によりサーモスタット5の弁体52が全閉状態となり、
補助弁体58がパイパス回路4を全開するため、ウォー
タポンプ6の作動により水冷式エンジン1の冷却水はパ
イパス回路4を循環するのみで、ラジエータ2に流入し
ない。
【0050】このように、サーモスタット5の弁体52
を全閉させることにより、水温を上昇させて、より高い
温度の冷却水を蓄熱容器16内に蓄えることができ、次
回のエンジン始動性、暖機促進を図ることができ、暖機
時に排出される排気エミッションの低減、燃費向上に貢
献できる。次に、車室内空調ヒータ使用時について説明
すると、空調スイッチ20の投入により、空調用電子制
御装置19によって空調用送風機23に通電され、送風
機23が作動し、その送風空気がヒータコア7で冷却水
と熱交換して加熱され、温風となり、この温風が車室内
へ吹き出して暖房を行う。
【0051】従って、寒冷時に暖房効果を高めるために
は暖房熱源となる冷却水温度を高めることが有効であ
る。そこで、本第2実施形態では、外気温センサ21に
より検出される外気温が設定温度(例えば、0°C)以
下であるとき、または吹出温度センサ22により検出さ
れる吹出空気温度が設定温度(例えば、40°C)以下
であるときは、空調用電子制御装置19によってこの状
態を判定して、電子制御装置11にヒータ信号を入力す
る。
【0052】すると、電子制御装置11をこのヒータ信
号に基づいて電磁アクチュエータ10の電磁コイル10
aへの通電を遮断する。従って、サーモスタット5周囲
の水温が設定温度T1(例えば、82°C)より低いと
きは、サーモスタット5の弁体52が全閉状態となり、
水冷式エンジン1の冷却水は、パイパス回路4を循環す
るのみで、ラジエータ2に流入しない。
【0053】このように、サーモスタット5の弁体52
を全閉させることにより、水温を上昇させることがで
き、寒冷時での暖房効果を高めることができる。なお、
上記ヒータ信号は、上記外気温または吹出空気温度の低
下を検出する以外に、ヒータコア7に流入する冷却水温
の低下を判定して、発生してもよい。要は、送風機23
を作動させて車室の暖房を行うときに、暖房能力を高め
る条件が発生したかどうかを判定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す車両用水冷式エン
ジンの冷却系回路図である。
【図2】(a)は図1におけるサーモスタットの作動特
性説明のための断面図、(b)はこのサーモスタットの
弁体のリフト量特性を示すグラフである。
【図3】デッドソーク時におけるエンジン水温の挙動を
示すグラフである。
【図4】本発明の第2実施形態を示す車両用水冷式エン
ジンの冷却系回路図である。
【符号の説明】
1…水冷式エンジン、2…ラジエータ、3…電動冷却フ
ァン、4…バイパス回路、5…サーモスタット、51…
サーモワックス、52…弁体、54…支持シャフト、6
…ウォータポンプ、7…ヒータコア、10…電磁アクチ
ュエータ、10a…電磁コイル、11…制御装置。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 井上 美光 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本電 装株式会社内 (72)発明者 山中 保利 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本電 装株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水冷式エンジン(1)の冷却系回路に設
    けられ、冷却水を冷却するラジエータ(2)と、 前記水冷式エンジン(1)の冷却系回路に設けられ、こ
    の冷却系回路に冷却水を循環させるウォータポンプ
    (8)と、 前記水冷式エンジン(1)の冷却系回路に設けられ、冷
    却水温度を感知する感温部材(51)によって変位する
    弁体(52)を有し、この弁体(52)により前記ラジ
    エータ(2)と前記水冷式エンジン(1)との間の流路
    を開閉するサーモスタット(5)と、 このサーモスタット(5)の弁体(52)に外力を加え
    て、この弁体(52)を開弁させる弁体駆動装置(1
    0)と、 この弁体駆動装置(10)の作動を制御する制御装置
    (11)とを備え、 前記水冷式エンジン(1)の停止時に前記水冷式エンジ
    ン(1)部分の冷却水温度が第1の設定温度以上である
    ときは、前記制御装置(11)により前記弁体駆動装置
    (10)を作動させて前記弁体(52)を強制的に開弁
    させることを特徴とするエンジンの冷却装置。
  2. 【請求項2】 前記水冷式エンジン(1)の高負荷時
    に、前記制御装置(11)により前記弁体駆動装置(1
    0)を作動させて前記弁体(52)を強制的に開弁させ
    ることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの冷却装
    置。
  3. 【請求項3】 前記水冷式エンジン(1)の高回転時
    に、前記制御装置(11)により前記弁体駆動装置(1
    0)を作動させて前記弁体(52)を強制的に開弁させ
    ることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン
    の冷却装置。
  4. 【請求項4】 前記水冷式エンジン(1)の運転中に、
    前記水冷式エンジン(1)部分の冷却水温度が前記第1
    の設定温度またはこれに近似した温度以上であるとき
    は、前記制御装置(11)により前記弁体駆動装置(1
    0)を作動させて前記弁体(52)を強制的に開弁させ
    ることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに
    記載のエンジンの冷却装置。
  5. 【請求項5】 前記水冷式エンジン(1)の冷却系回路
    に、断熱構造からなり、高温の冷却水を蓄える蓄熱容器
    (16)を備え、 前記水冷式エンジン(1)の始動時に前記水冷式エンジ
    ン(1)部分の冷却水温度が前記第1の設定温度より十
    分低い第2の設定温度以下であるときは、前記蓄熱容器
    (16)内の冷却水を前記水冷式エンジン(1)内に循
    環させるようにし、 さらに、前記蓄熱容器(16)内の冷却水温度が前記第
    1の設定温度と前記第2の設定温度との間の中間温度で
    ある第3の設定温度より低い間は前記制御装置(11)
    により前記弁体駆動装置(10)を作動させて前記弁体
    (52)を強制的に閉弁させることを特徴とする請求項
    1ないし4のいずれか1つに記載のエンジンの冷却装
    置。
  6. 【請求項6】 前記水冷式エンジン(1)の冷却系回路
    に、冷却水を熱源として送風空気を加熱する車室暖房用
    ヒータコア(7)を備えるとともに、この車室暖房用ヒ
    ータコア(7)に送風する送風機(23)を備え、 この送風機(23)を作動させて車室の暖房を行うとき
    に、暖房能力を高める条件が発生したときは、前記制御
    装置(11)により前記弁体駆動装置(10)を作動さ
    せて前記弁体(52)を強制的に閉弁させることを特徴
    とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のエンジ
    ンの冷却装置。
  7. 【請求項7】 前記サーモスタット(5)は、前記感温
    部材(51)を支持する支持シャフト(54)を有し、 前記弁体駆動装置(10)は前記支持シャフト(54)
    を変位させることにより前記弁体(52)を強制的に開
    弁させることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか
    1つに記載のエンジンの冷却装置。
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