JPH09187090A - スピーカ装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 バスレフ型スピーカ装置の特性（変換効率の
高さ、音の遅れ感のなさ）を維持しつつ、大入力時の周
波数特性を改善する。 【解決手段】 前方側に開口部２５を有する中央室部２
３と、この中央室部２３の両側に隔壁部２４，２４を介
して配設された一対の側方室部２２，２２とを有するエ
ンクロージャを用いる。スピーカユニット１，１及び中
空ダクト２６，２６を、上記各側壁部２４，２４に上記
中央室部２３内に向けて取付ける。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、電気信号を音響に
変換するスピーカ装置に関する技術分野に属する。

【０００２】

【従来の技術】従来、スピーカユニットをスピーカボッ
クス（エンクロージャ）に取付けて構成されたスピーカ
装置が提案されている。

【０００３】上記スピーカユニットは、ボイスコイルが
取付けられた振動板と磁気回路とを有し、該ボイスコイ
ルに電気信号を供給されると、該磁気回路の作用により
該ボイスコイルが該振動板を伴って振動させられて、音
響を発生するように構成されている。上記磁気回路及び
上記振動板は、フレームに取付けられて支持されてい
る。

【０００４】上記スピーカユニットにおいて、上記振動
板は、放音部となる前面側及び背面側の双方に対して、
音響を放射する。このように上記振動板の前後において
発生される音響は、互いに逆位相であるため、互いに打
ち消し合ってしまい、良好な音響再生を阻害する。

【０００５】そして、上記スピーカボックスは、図６に
示すように、筐体状に構成され、前面側の壁部であるバ
ッフル板１２４に、上記スピーカユニット１０１が取付
けられる。上記スピーカユニット１０１は、背面側を上
記スピーカボックス１２１内に臨ませて、このスピーカ
ボックス１２１に取付けられる。

【０００６】このスピーカ装置において、上記スピーカ
ボックスを密閉された筐体（いわゆる密閉型スピーカボ
ックス）とした場合においては、上記スピーカユニット
１０１の背面側より放射される音響、いわゆる背圧は、
該スピーカボックス内に閉じ込められて減衰され、外方
側に放射されることがない。したがって、このように上
記スピーカボックスを有するスピーカ装置においては、
上記背圧の影響を受けることのない良好な音響再生が行
える。

【０００７】また、上記スピーカ装置においては、図６
に示すように、上記スピーカボックス１２１を密閉され
たものとせず、このスピーカボックス１２１の内室部を
中空ダクト１２６を介して前方側外方に通じさせた、い
わゆるバスレフ型のスピーカ装置が提案されている。

【０００８】このようなバスレフ型のスピーカ装置は、
特に、低周波数帯域の音響を再生するウーファースピー
カ装置、または、いわゆるスーパーウーファースピーカ
装置として構成される。

【０００９】このスピーカ装置において、上記スピーカ
ユニット１０１は、上記スピーカボックス１２１のバッ
フル板１２４に上記フレームを取付けられ、このバッフ
ル板１２４に設けられた開口部を介して、放音部である
上記振動板の前面部を前方側外方に臨ませている。

【００１０】このバスレフ型のスピーカ装置において
は、上記スピーカユニット１０１より発せられる背圧
は、上記スピーカボックス１２１の内室部内より、上記
中空ダクト１２６の音導孔内を経て、前方側外方に放射
される。このとき、上記背圧は、この音導孔内を経るこ
とにより、上記スピーカユニット１０１より前方側に放
射される音響と同位相となされる。

【００１１】このバスレフ型のスピーカ装置において
は、電気信号の音響への変換効率が良好であり、また、
再生音響の音質については、いわゆる音の遅れ感のない
良好な音質の音響再生が行える。

【００１２】また、図７に示すように、上記スピーカボ
ックス１２１に、上記スピーカユニット１０１及び上記
中空ダクト１２６をそれぞれ一対ずつ取り付けて構成さ
れたスピーカ装置が提案されている。

【００１３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上述したバ
スレフ型のスピーカ装置においては、小入力時には、周
波数特性におけるピークのない良好な音響再生が行える
が、入力が大きくなると、低域周波数特性にピークが生
じるようになる。

【００１４】例えば、上記図６に示したスピーカ装置に
おいては、図８に示すように、４０Ｈｚ近辺に共振ピー
クが生じる。このデータは、上記スピーカユニット１０
１の口径を９０ｍｍとし、上記スピーカボックス１２１
の容積を３リットルとした場合のものである。

【００１５】また、上記図７に示したスピーカ装置にお
いては、図９に示すように、３０Ｈｚ乃至４０Ｈｚ近辺
に共振ピークが生じる。このデータは、上記各スピーカ
ユニット１０１，１０１の口径を９０ｍｍとし、上記ス
ピーカボックス１２１の容積を６リットルとした場合の
ものである。

【００１６】このようなピークの周波数においては、ス
ピーカユニットにおける振動板の振幅が大振幅となり、
無制動で不安定な音となり、再生音響の音質を劣化させ
る。これは、上記中空ダクト１２６からの音の放射速度
が早くなり過ぎるのが原因である。

【００１７】そこで、本発明は、上述の実情に鑑みて提
案されるものであって、大入力時においても、バスレフ
型のスピーカ装置における良好な電気−音響変換効率、
及び、良好な音質の音響再生特性が維持され、また、再
生音響の周波数特性（周波数−音圧特性）の劣化の防止
が図られたスピーカ装置の提供という課題を解決しよう
とするものである。

【００１８】

【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するた
め、本発明に係るスピーカ装置は、前方側に開口部を有
する中央室部と、この中央室部の両側側にこの中央室部
に対して隔壁を介して配設された一対の側方室部と、該
中央室部と該各側方室部とを隔てる各隔壁のそれぞれに
対応されて取付けられ放音部を該中央室内に臨ませ背面
部を該各側方室部内に臨ませた一対のスピーカユニット
と、該中央室部と該各側方室部とを隔てる各隔壁のそれ
ぞれに対応されて取付けられ該各側方室部内方に向けて
突設され該各側方室部内と該中央室内とを通じさせる一
対の中空ダクトとを備えたものである。

【００１９】また、本発明は、上記スピーカ装置におい
て、上記各中空ダクトは、上記各スピーカユニットより
も後方側に配設され、上記中央室部への開口部を互いに
対向させていることとしたものである。

【００２０】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照しながら説明する。

【００２１】本発明に係るスピーカ装置は、図１乃至図
３に示すように、一対の隔壁部２４，２４により、中央
室部２３と一対の側方室部２２，２２とに分割されたス
ピーカボックスを有して構成される。このスピーカボッ
クスは、中空の筐体状に構成されている。上記各側方室
部２２，２２は、上記中央室部２３に対して、それぞれ
上記隔壁部２４を介してこの中央室部２３の両側側に設
けらていることとなる。そして、上記中央室部２３は、
前方側に開口部２５を有している。

【００２２】上記各隔壁部２４，２４には、それぞれ放
音部を上記中央室部２３内に臨ませ、背面部を上記各側
方室部２２，２２内に臨ませた一対のスピーカユニット
１が対応して取付けられている。

【００２３】上記スピーカユニット１は、図４に示すよ
うに、ボイスコイル８が取付けられたコーン紙（振動
板）２と磁気回路とを有し、該ボイスコイル８に電気信
号を供給されると、該磁気回路の作用により該ボイスコ
イル８が該コーン紙２を伴って振動させられ、音響を発
生するように構成されている。上記磁気回路及び上記コ
ーン紙２は、フレーム６に取付けられて支持されてい
る。

【００２４】すなわち、上記磁気回路は、磁性材料によ
り形成された円盤状のヨーク１１と、このヨーク１１の
前面部に固定して配設された円環状のマグネット１０と
を有している。上記ヨーク１１の前面部中央には、円筒
状のセンターポール部１３が一体的に突設されている。
このセンターポール部１３は、上記マグネット１０に対
して同軸状となされ、このマグネット１０の中央の透孔
部内に進入されている。

【００２５】上記マグネット１０の前面部には、磁性材
料により中央部に透孔を有する円盤状に形成されたプレ
ート９が取付けられている。このプレート９の中央部の
透孔には、上記センターポール部１３の先端側部分が進
入されている。このプレート９の中央部の透孔の内周面
部と、上記センターポール部１３の先端側部分の外周面
部とは、互いに対向して、磁気ギャップ１６を形成して
いる。

【００２６】上記スピーカフレーム６は、金属の如き充
分な剛性を有する材料により、略々円錐状に前端側が拡
径された円筒状に構成され、後端側部分を上記プレート
９の前面部に固定されている。

【００２７】上記スピーカフレーム６の前端側の保持部
には、コーン紙２の周囲部分が、エッジ３を介して取付
けられている。このエッジ３は、可撓性を有して形成さ
れ、前後方向に変位可能となっている。このエッジ３
は、円環状に形成されるとともに、前方側（放音方向）
に対して円筒面状に膨出された形状を有している。この
エッジ３は、紙、布、あるいは、ゴムにより形成されて
いる。

【００２８】上記コーン紙２は、略々円錐形状に形成さ
れ、中央部に透孔を有している。そして、このコーン紙
２の中央部の透孔には、ボビンが嵌合されて取付けられ
ている。このボビンは、円筒状に形成され、前端側部分
において上記コーン紙２を支持している。このボビンの
前端部は、キャップ５により閉蓋されている。

【００２９】このボビンは、高い剛性を有しながら、軽
量に形成することが望ましい。したがって、このボビン
は、ベークライト板、エポキシ樹脂を含浸した紙や布、
ガラス−エポキシ板（エポキシ樹脂で固めたガラス繊維
材料）等の如き合成樹脂材料を円筒状に丸めて形成する
ことが望ましい。また、このボビンは、金属板や紙等に
より形成することとしてもよい。

【００３０】そして、上記ボビンの後端側の外周面部に
は、ボイスコイル８が接着されている。このボイスコイ
ル８は、巻回されて円筒状に形成され、錦糸線（引き出
し線）１４を有している。上記錦糸線１４は、上記スピ
ーカフレーム６に支持部材を介して設けられた入力端子
１５に接続される。

【００３１】上記ボイスコイル８は、上記磁気ギャップ
１６内に位置されている。すなわち、上記ボイスコイル
８は、上記センターポール部１３に対して同軸状となさ
れて、このセンターポール部１３と上記プレート９の中
央部の透孔の内面部との間に進入されている。

【００３２】そして、上記ボビンは、可撓性及び振動吸
収性を有するダンパ７を介して、上記スピーカフレーム
６の後端側部分により、前後方向に移動可能に懸架され
ている。上記コーン紙２及び上記ダンパ７は、上記ボビ
ンに対して、略々同一の箇所で接着されている。

【００３３】上記ダンパ７は、布、紙、または、ゴムの
如き材料により、同心円状の屈曲部を有する略々円盤状
に形成され、中央部に円形の透孔を有している。このダ
ンパ７は、外周縁部分を上記スピーカフレーム６に取付
けられている。このダンパ７は、中央部の透孔に上記ボ
ビンを嵌合させて接着させ、このボビンを懸架してい
る。

【００３４】そして、上記各スピーカユニット１，１
は、上記各隔壁部２４，２４に上記フレーム６の前端部
分を取付けられ、これら隔壁部２４，２４に設けられた
開口部を介して、放音部である上記コーン紙２の前面部
を該中央室部２３内に臨ませている。

【００３５】そして、このスピーカ装置においては、上
記各側方室部２２，２２内より上記中央室部２３側に向
けて配設され、該各側方室部２２，２２内を該中央室部
２３内に通じさせる一対の中空ダクト２６，２６が設け
られている。これら中空ダクト２６，２６は、上記各隔
壁部２４，２４に設けられた透孔に対応して、これら隔
壁部２４，２４に対応して取付けられ、上記各側方室部
２２，２２の内方側に突設されている。

【００３６】また、上記各中空ダクト２６，２６は、上
記各スピーカユニット１，１よりも後方側、すなわち、
該各スピーカユニット１，１よりも上記開口部２５から
離れた側に配設されるとともに、互いに上記中央室部２
３への開口部を対向させている。

【００３７】このスピーカ装置においては、上記各スピ
ーカユニット１，１より発せられる背圧は、上記各側方
室部２２，２２内より、図２中の矢印に示すように、上
記各中空ダクト２６，２６の音導孔内を経て、上記中央
室部２３内に放射される。これら背圧は、さらに、上記
開口部２５を経て、前方側に放射される。

【００３８】このとき、上記背圧は、これら音導孔内を
経ることにより、上記各スピーカユニット１，１より前
方側に放射され上記中央室部２３内及び上記開口部２５
を経て前方側に放射される音響と同位相となされる。

【００３９】このスピーカ装置は、上記各スピーカユニ
ット１，１の最低共振周波数と上記各中空ダクト２６，
２６の共振との２つの共振を作り、これら２つの共振の
間のインピーダンス特性の最も低い周波数まで低域の音
圧周波数を再生するものである。

【００４０】このスピーカユニットにおいては、一方の
側方室部２２についてのみ見ると、１個のスピーカユニ
ット１と１本の中空ダクト２６とを有するバスレフ型の
スピーカ装置となっている。また、このスピーカユニッ
トにおいて、他方の側方室部２２についても、１個のス
ピーカユニット１と１本の中空ダクト２６とを有するバ
スレフ型のスピーカ装置となっている。これらバスレフ
型のスピーカ装置は、単独で、バスレフ型のスピーカ装
置の再生が行われるように、上記中空ダクト２６の径や
長さが調整されている。

【００４１】ただし、上記各側壁部２４，２４及び上記
各中空ダクト２６，２６を互いに対向させると、互いの
負荷により、バスレフ型のスピーカ装置の再生が行われ
る条件が変化する。そのため、このスピーカ装置におい
ては、上記各側壁部２４，２４及び上記各中空ダクト２
６，２６が互いに対向された状態で、バスレフ型のスピ
ーカ装置の再生が行われるように、該各中空ダクト２
６，２６の径や長さが調整されている。

【００４２】

【実施例】以下、本発明の具体的な実施例を挙げる。

【００４３】上述のように構成された本発明に係るスピ
ーカ装置を、上記各スピーカユニット１，１の口径を９
０ｍｍとし、上記各側方室部２２，２２の容積をそれぞ
れ３リットルとし、上記各側壁部２４，２４間の間隔を
１５ｍｍとして作製した。

【００４４】そして、このスピーカ装置の周波数特性
（周波数−音圧特性）を測定した。このスピーカ装置に
おいては、上記各中空ダクト２６，２６より上記中央室
部２３に向けて放射される音響が互いに制動し合ってい
るため、周波数特性においては、図５に示すように、３
０Ｈｚ乃至４０Ｈｚの帯域において良好に制動が効いて
おり、ピークが生じていない。また、５００Ｈｚ乃至７
００Ｈｚ近辺の帯域においては、上記中央室部２３内に
おける音響効果により、音圧が上昇している。

【００４５】

【発明の効果】上述のように、本発明に係るスピーカ装
置は、各中空ダクトより中央室部に向けて放射される音
響が互いに制動し合うため、低域周波数帯域において良
好に制動が効き、ピークのない良好な音響再生が行え
る。

【００４６】すなわち、本発明は、大入力時において
も、バスレフ型のスピーカ装置における良好な電気−音
響変換効率、及び、良好な音質の音響再生特性が維持さ
れ、また、再生音響の周波数特性（周波数−音圧特性）
の劣化の防止が図られたスピーカ装置を提供することが
できるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るスピーカ装置の構成を一部を破断
して示す斜視図である。

【図２】上記スピーカ装置の構成を示す横断面図であ
る。

【図３】上記スピーカ装置の構成を示す正面図である。

【図４】上記スピーカ装置のスピーカユニットの構成を
示す縦断面図である。

【図５】上記スピーカ装置の周波数特性を示すグラフで
ある。

【図６】従来のスピーカ装置の構成を示す斜視図であ
る。

【図７】従来のスピーカ装置の構成の他の例を示す斜視
図である。

【図８】従来のスピーカ装置の周波数特性を示すグラフ
である。

【図９】従来のスピーカ装置の周波数特性の他の例を示
すグラフである。

【符号の説明】

１ スピーカユニット ２２ 側方室部 ２３ 中央室部 ２４ 隔壁部 ２５ 開口部 ２６ 中空ダクト

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 前方側に開口部を有する中央室部と、 上記中央室部の両側側にこの中央室部に対して隔壁を介
   して配設された一対の側方室部と、 上記中央室部と上記各側方室部とを隔てる各隔壁のそれ
   ぞれに対応されて取付けられ、放音部を該中央室内に臨
   ませ、背面部を該各側方室部内に臨ませた一対のスピー
   カユニットと、 上記中央室部と上記各側方室部とを隔てる各隔壁のそれ
   ぞれに対応されて取付けられ、該各側方室部内方に向け
   て突設され、該各側方室部内と該中央室内とを通じさせ
   る一対の中空ダクトとを備えたスピーカ装置。
2. 【請求項２】 各中空ダクトは、各スピーカユニットよ
   りも後方側に配設され、中央室部への開口部を互いに対
   向させている請求項１記載のスピーカ装置。