JPH09184372A - 複層ガラスの装着構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】複層ガラスの装着構造に関し、延焼防止効果に
優れた複層ガラスの装着構造の提供を目的とする。 【解決手段】防火ガラス１０ａを構成ガラス１０として
含む複層ガラス１を框２のガラス装着溝３に装着する複
層ガラスの装着構造であって、前記ガラス装着溝３に
は、加熱により難燃の膨張体４を生成して、構成ガラス
１０、１０間の分離を防止するとともに、ガラス装着溝
３内に形成される煙等の流路を閉塞する熱膨張材５を配
置して構成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、複層ガラスの装着構
造、および該装着構造に適した複層ガラスに関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】一面に網入りガラス等の防火ガラスを装
着した複層ガラスは、防火戸、あるいは嵌め殺しの窓等
に多用されており、従来、かかる複層ガラスの装着は、
框に形成されたガラス装着溝内に複層ガラスを嵌合させ
た後、周囲をシーラント材により固定することにより行
われている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上述した装着
構造においては、以下に述べる欠点が指摘されている。
すなわち、火災時には、防火ガラスは耐熱性を有するた
めにダメージを受けることはないが、火災側のシーラン
ト材が熱、あるいは炎により焼失、あるいは風化する
と、炎が複層ガラスを取り囲んで、複層ガラスの構成ガ
ラスの接着に使用する封止シーラント材が焼失したり溶
出することがあり、その結果、複層ガラス自体は複層構
造を維持できなくなって分離することとなる。

【０００４】複層ガラスの分解により、ガラス装着溝と
構成ガラスとの間には大きな間隙が発生し、該間隙から
炎、煙等が半火災側に流動して室外側への延焼を惹起し
たり、あるいは構成ガラスの落下等を惹起し、防災上難
がある。

【０００５】また、上記封止シーラント材を耐火性を有
する材料により形成することも可能であるが、この場合
はコストが上昇する上に、耐火性を有するといえども構
成ガラスへの接着能力は劣化するために、構成ガラスの
分離を完全に防止できない。

【０００６】本発明は、以上の欠点を解消すべくなされ
たものであって、延焼防止効果に優れた複層ガラスの装
着構造の提供を目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明によれば上記目的
は、防火ガラス１０ａを構成ガラス１０として含む複層
ガラス１を框２のガラス装着溝３に装着する複層ガラス
の装着構造であって、前記ガラス装着溝３には、加熱に
より難燃の膨張体４を生成して、構成ガラス１０、１０
間の分離を防止するとともに、ガラス装着溝３内に形成
される煙等の流路を閉塞する熱膨張材５が配置される複
層ガラスの装着構造を提供することにより達成される。

【０００８】「防火ガラス１０ａを構成ガラス１０とし
て含む複層ガラス１」としては種々の態様のものが使用
可能であるが、例えば、図１に示すように、防火ガラス
１０ａとフロートガラス１０ｂ、あるいは複数枚の防火
ガラス１０ａ、１０ａを間隙保持枠１１を介して対面さ
せ、間隙保持枠１１の周縁に充填される接合シーラント
材１２により接合して製造される。

【０００９】複層ガラス１は、框２に形成されたガラス
装着溝３内に嵌合されており、該複層ガラス１の固定は
ガラス装着溝３の内壁と複層ガラス１との間にシーラン
ト材６を充填することにより行われる。

【００１０】図１において、室内側で火災が発生した場
合を想定すると、複層ガラス１を固定しているシーラン
ト材６が炎、あるいは熱により焼失、あるいは風化して
しまうために、該シーラント材６の装着部位から複層ガ
ラス１の周縁を通り、反火災側のシーラント材６の装着
部位に至る煙、あるいは炎の流路が形成されることとな
る。

【００１１】一方、火災により框２は温度上昇するため
に、この温度により、あるいは上記流路を流れる炎によ
り熱膨張材５は膨張を開始して難燃の膨張体４を生成す
る（図２参照）。膨張体４の生成により、ガラス装着溝
３内の流路は閉塞されるとともに、複層ガラス１の分離
が防止され、上記流路を通って煙、あるいは炎が反火災
側に移動することが防止される。

【００１２】なお、膨張体４による複層ガラス１の分離
の規制は、主として、上記接合シーラント材１２を膨張
体４が覆うことにより達成され、該膨張体４は、上記流
路を流れてきた炎が接合シーラント材１２に触れること
を防止して、接合シーラント材１２の溶出、あるいは性
能劣化が防止される。また、複層ガラス１の分離防止
は、接合シーラント材１２が接着性能を喪失した場合で
あっても、膨張した膨張体４が対向する構成ガラス１
０、１０の双方を内方に押し付けることによっても達成
される。

【００１３】膨張体４による流路は、ガラス装着溝３内
の少なくとも一カ所で閉塞していれば足りるが、請求項
３に提案するように、ガラス装着溝３のほぼ全範囲に膨
張体４を充填させた状態とするならば、より延焼防止効
果を向上させることが可能になる。

【００１４】この場合、請求項５において提案されるよ
うに、ガラス装着溝３の壁面に補助熱膨張材７を配置し
ておき、膨張量の不足を補うことが可能であり、この補
助熱膨張材７を、請求項６に記載されるように、ガラス
装着面に臨んで配置される断熱用連結体８上に固定して
おけば、装着の手間が省くことができる。

【００１５】熱膨張材５としては、所定温度まで加熱さ
れることにより膨張して体積が増加し、かつ、膨張体４
が難燃性を有するものであるならば種々の材料が使用可
能であり、一般に膨張体４の主成分となる膨張剤とバイ
ダーとを混合して得られる。

【００１６】選定の際の目処として、膨張開始温度は、
火災が発生した際に室内側框部材２０が火災の熱により
上昇する温度の近傍、すなわち、１８０℃程度で膨張を
開始し、２５０℃程度で顕著な膨張を呈するものが望ま
しい。

【００１７】さらに、膨張率は、１０〜１５倍程度であ
れば過大な熱膨張材５を配置する必要がなくなり、実用
的であり、これらの性能を備えた熱膨張材５、あるいは
補助熱膨張材７としては、グラファイト系膨張材、およ
び／またはポリリン酸アンモニウム系膨張材を含んだ材
料が使用可能であり、具体的には、株式会社古河テクノ
マテリアル製の「ダンシール−Ｄ」（商品名）、あるい
はその同等材料が使用できる。

【００１８】熱膨張材５の配置方法には種々の手段が採
用可能であり、熱膨張材５が作業時に粘性を有する場合
には、塗布、充填等によることが可能であり、固形の場
合には、貼着等の手段も採用可能である。なお、上記
「ダンシール−Ｄ」はテープ状で供給されるために、接
着等による固定が望ましい。

【００１９】また、熱膨張材５の配置部位は、ガラス装
着溝３側であっても、複層ガラス１側であってもよい
が、請求項４において提案されるように、複層ガラス１
の外周面に固定しておけば、施工時の熱膨張材５の配置
作業が不要となり作業性の向上がもらされる。

【００２０】一方、防火ガラス１０ａ側のシーラント材
６は、炎に触れることがないために、加熱による性能劣
化が比較的少ないが、熱伝導による温度上昇の恐れがあ
る場合には、請求項２記載のように、耐火性を有する材
料により形成するのが望ましく、具体的には、協立化学
産業株式会社製「シリコーンシーラント」、あるいはそ
の同等品が使用可能である。

【００２１】請求項７記載の発明において、上述した構
造に最適な複層ガラスが提案される。すなわち、複層ガ
ラスは、構成ガラス１０、１０間を接合する接合シーラ
ント材１２が加熱により難燃の膨張体４を生成して構成
ガラス１０間の分離を防止する熱膨張材５により覆われ
て構成される。

【００２２】複層ガラス１は、上述したように、例え
ば、防火ガラス１０ａとフロートガラス１０ｂとを間隙
保持枠１１を介して対面させ、間隙保持枠１１の周縁に
充填される接合シーラント材１２により接合することに
より製造可能であり、防火ガラス１０ａとしては、網入
りガラス、超耐熱結晶化ガラス、日本板硝子製の「マル
チライト・レイボーク」と呼ばれる金属膜をコーティン
グした特殊ガラス、あるいはドイツ・フラハグラス社製
の「パイロットストップ」と呼ばれる珪酸ソーダ層を積
層した多層ガラス等の使用が可能であり、接合シーラン
ト材１２には、チオコールシーラント、あるいは上記
「シリコーンシーラント」の使用が可能である。

【００２３】上記複層ガラス１は、外周壁に加熱により
膨張する熱膨張材５を有しており、框２のガラス装着溝
３に嵌合させた後、周縁をシーラント材６にて固定する
だけで請求項１記載の装着構造が構成される。

【００２４】なお、熱膨張材５は、複層ガラス１を巻回
するように全周に形成するのが作業性を考慮した場合、
望ましいが、本発明の目的が達成されるならば、所定ピ
ッチをおいて散点状に形成することも可能であり、さら
には、請求項８に記載するように、複層ガラス１の外周
木口のみではなく、構成ガラス１０の外周表面部にまで
延設し、必要な膨張量を確保することも可能である。

【００２５】

【発明の実施の形態】図１に本発明が適用された防火戸
の縦断面図が示されている。なお、本図は建物の開口部
のほぼ下半分のみを図示したもので、上半分は、図示部
分とほぼ対称形に形成される。

【００２６】図１において９は外壁９０に固定される窓
枠であり、アルミニウム材からなる室内側窓枠体９１ａ
と室外側窓枠体９１ｂとを連結して構成される。室内側
窓枠体９１ａはヒンジ部材保持溝９２を有しており、該
ヒンジ部材保持溝９２に固定されるヒンジ部材（図示せ
ず）により、ガラス障子Ａが窓枠内で回動自在に支持さ
れる。

【００２７】ガラス障子Ａは、アルミニウム製の室内側
框部材２０と室外側框部材２１とを連結した框２と、複
層ガラス１とからなり、室外側框部材２１と、室内側框
部材２０に連結される押し縁２０ａによりガラス装着溝
３が形成される。

【００２８】なお、図１において２０ｂは室内側框部材
２０に装着される緩衝体、２１ａは室外側框部材２１に
装着されるタイト材、９３は室外側窓枠体９１ｂに装着
されるパッキンを示し、各々、合成ゴム、合成樹脂等に
より形成される。

【００２９】８は室内側窓枠体９１ａと室外側窓枠体９
１ｂ、および室内側框部材２０と室外側框部材２１とを
連結するためのポリイミド樹脂製の断熱用連結体であ
り、両側縁に形成した嵌合突条８０を対応部材の凹部に
弾発的に嵌合させて装着される。

【００３０】一方、複層ガラス１は、網入りガラス（防
火ガラス１０ａ）とフロートガラス１０ｂとを間隙保持
枠１１を介して対面させ、間隙保持枠１１の外周に充填
されるチオコールシーラント（接合シーラント材１２）
により接着して形成される。

【００３１】５は熱膨張材であり、株式会社古河テクノ
マテリアル製の「ダンシール−Ｄ」（商品名）が使用さ
れる。上記「ダンシール−Ｄ」は、グラファイト系膨張
材、および／またはポリリン酸アンモニウム系膨張材を
含み、１８０℃程度で膨張を開始して難燃性の膨張体４
を生成する熱膨張材５であり、２５０℃程度で１０〜１
５倍程度の顕著な膨張を呈するもので、テープ状で供給
されるものを適宜の接着剤により接着して複層ガラス１
に固定される。

【００３２】上記複層ガラス１は、框２に形成されたガ
ラス装着溝３内に嵌合された状態で装着されており、複
層ガラス１の外周部側壁と室外側框部材２１、および押
し縁２０ａとの間には協立化学産業株式会社製「シリコ
ーンシーラント」が充填されて複層ガラス１が固定され
る。なお、図１において３０は室外側框部材２１上に載
置され、複層ガラス１を支承するためのピース状のスペ
ーサである。

【００３３】７は補助熱膨張材であり、ガラス装着溝３
の壁面を構成する断熱用連結体８の表面に貼着保持され
る。この補助熱膨張材７は、上述した熱膨張材５と全く
同一のものであり、火災時に押し縁２０ａと複層ガラス
１の間に間隙が形成された場合であっても断熱用連結体
８上面で膨張して該間隙を埋め、炎等の流入を防ぐとと
もに、炎が直接基体となる断熱用連結体８に接触するこ
とを防止している。

【００３４】また、上記以外の断熱用連結体８Ａ、８Ｂ
上にも同様に熱膨張材５’が貼着保持される。これら各
々の断熱用連結体８Ａ、８Ｂ上での熱膨張材５’の貼着
面は、内外窓枠部材９１ａ、９１ｂ、あるいは框部材２
０、２１間の間隙を流路として室外側に流れる炎、煙等
の移動状態を考慮して決定され、先ず、上述した断熱用
連結体８に対峙して配置される断熱用連結体８Ａには、
ガラス装着溝３側の断熱用連結体８に対して背向位置に
熱膨張材５’が貼着される。

【００３５】この断熱用連結体８Ａ上で生成される膨張
体４は、緩衝体２０ｂの装着部位から進入した炎が基体
である断熱用連結体８Ａに接触するのを防止して該断熱
用連結体８Ａを保護するとともに、室内側窓枠部材９１
ａと室外側窓枠部材９１ｂとを連結する断熱用連結体８
Ｂ上の膨張体４と共働してパッキン９３側への炎、煙の
流路を閉塞する。

【００３６】この場合、ガラス装着溝３側の断熱用連結
体８と、対向部位の断熱用連結体８Ａとは、上面に生成
される膨張体４により相互に補完し合って相手方を保護
するように作用するもので、一方の断熱用連結体８、８
Ａ上に生成される膨張体４は、基体となる断熱用連結体
８、８Ａを保護することにより、他方の断熱用連結体８
Ａ、８の熱膨張材５が装着されない面が炎に触れること
を防止する関係となっている。

【００３７】したがってこの実施の形態において、室内
側で火災が発生した場合には、室内側框部材２０、ある
いは室内側窓枠部材９１ａからの伝熱、または緩衝体２
０ｂ装着部位からの炎の進入により断熱用連結体８、８
Ａ、８Ｂ、および複層ガラス１に固定された熱膨張材
５、さらには補助熱膨張材７が膨張して難燃性の膨張体
４を生成する。

【００３８】図２は室内側で火災が発生した際の各膨張
体４の膨張状態を右上がりのハッチングを付して示すも
ので、緩衝体２０ｂ装着部位からの炎、煙の流路は、対
向する断熱用連結体８Ａ、８Ｂ上の膨張体４により完全
に遮断され、パッキン９３の装着部位、およびタイト材
２１ａ装着部位からの炎、煙の室外側への流出が防止さ
れる。

【００３９】一方、ガラス装着溝３は、断熱用連結体８
上の補助熱膨張材７による膨張体４と、複層ガラス１周
縁の熱膨張材５による膨張体４により概ね埋められる状
態となり、押し縁２０ａと複層ガラス１との間に形成さ
れる間隙を入口とし、室外側框部材２１と複層ガラス１
との接合部位の間隙を出口とする煙、炎の流路が完全に
遮断される。

【００４０】また、接合シーラント材１２としてチオコ
ールシーラントを使用したこの実施の形態において、接
合シーラント材１２は伝導熱により一部溶出するが、該
接合シーラント材１２の装着部位には、膨張体４が置換
されて接合シーラント材１２の非溶出残部を押し上げて
複層ガラス１の分離が防止される。

【００４１】なお、図２においては、熱膨張材５、およ
び補助熱膨張材７が全て膨張体４に変化した場合を示し
ているが、温度等により、一部が熱膨張材５の状態で残
存する場合もあり、さらにシーラント材６が風化等に脱
落する場合もあるが、かかる状態においても本発明の目
的は達成されることはもちろんである。

【００４２】なお、以上においては、窓枠内に框２を回
動自在に装着した防火ドアに本発明を適用した場合が示
されているが、建物の開口に直接嵌め込む、いわゆる嵌
め殺しの窓等にも適用可能である。

【００４３】

【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明
によれば、隣接する他室、あるいは屋外への延焼防止効
果を高めることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を示す図である。

【図２】本発明の作用を示す図である。

【符号の説明】

１ 複層ガラス １０ 構成ガラス １０ａ 防火ガラス １２ 接合シーラント材 ２ 框 ２０ 室内側框部材 ２１ 室外側框部材 ３ ガラス装着溝 ４ 膨張体 ５ 熱膨張材 ６ シーラント材 ７ 補助熱膨張材 ８ 断熱用連結体

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】防火ガラスを構成ガラスとして含む複層ガ
   ラスを框のガラス装着溝に装着する複層ガラスの装着構
   造であって、 前記ガラス装着溝には、加熱により難燃の膨張体を生成
   して、構成ガラス間の分離を防止するとともに、ガラス
   装着溝内に形成される煙等の流路を閉塞する熱膨張材が
   配置される複層ガラスの装着構造。
2. 【請求項２】前記複層ガラスは防火ガラスを室外側に向
   けて装着され、かつ、室外側において複層ガラスを固定
   するシーラント材は、耐火性を有している請求項１記載
   の複層ガラスの装着構造。
3. 【請求項３】前記熱膨張材は、ガラス装着溝内を充填す
   るに十分な膨張量を有している請求項１または２記載の
   複層ガラスの装着構造。
4. 【請求項４】前記熱膨張材は複層ガラスの外周縁に固定
   される請求項１、２または３記載の複層ガラスの装着構
   造。
5. 【請求項５】前記ガラス装着溝の壁面には、複層ガラス
   に固定された熱膨張材の膨張量を補填して該ガラス装着
   溝内を難燃の膨張体によりほぼ埋め尽くすための補助熱
   膨張材が固定される請求項４記載の複層ガラスの装着構
   造。
6. 【請求項６】前記框は、室内側框部材と室外側框部材と
   を断熱用連結体を介して連結してなり、 かつ、前記補助熱膨張材は、ガラス装着面に臨んで配置
   される断熱用連結体上に固定される請求項５記載の複層
   ガラスの装着構造。
7. 【請求項７】防火ガラスを構成ガラスとして含む複層ガ
   ラスであって、 構成ガラス間を接合する接合シーラント材が加熱により
   難燃の膨張体を生成して構成ガラス間の分離を防止する
   熱膨張材により覆われている複層ガラス。
8. 【請求項８】前記熱膨張材は、構成ガラスの外周表面部
   にまで延設されており、框のガラス装着溝と構成ガラス
   表面との間に形成される間隙を膨張体で閉塞可能な請求
   項７記載の複層ガラス。