JP2009108620A - 建築物の耐火設計法及び耐火建築物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガラスを用いた防火設備を有している火災室について、火災発生よりガラスを用いた防火設備が脱落するまでの時間を算定し、次いでガラスを用いた防火設備脱落後の屋内火災の継続時間を算定した後、火災発生よりガラスを用いた防火設備が脱落するまでの時間とガラスを用いた防火設備脱落後の屋内火災の継続時間とを合算して、火災室の合算屋内火災継続時間を算定する一方、火災室に面する部材の保有耐火時間を算定し、合算屋内火災継続時間が算定した保有耐火時間以下となるよう部材、耐火被覆厚さを適合させる。
【選択図】図1
Description
a)火災時に破損するか、確実に開放されるもの。
b)外気との通気経路が確保されるもの。
上記a)の条件において、防火設備、すなわち網入ガラスや耐熱強化ガラス等のガラスを用いた防火装備を設けた開口部は、有効開口因子には算入しないこととされている。
2001年版耐火性能検証法の解説及び計算例とその解説、国土交通省住宅局建築指導課
請求項2に係る発明は、建築物の全ての火災室について、屋内火災継続時間が算定した保有耐火時間以下となるよう部材、耐火被覆厚さを適合させる建築物の耐火設計法において、特定の火災室がガラスを用いた防火設備を有しているとき、当該火災室について、火災温度上昇係数を算定し、火災発生より前記ガラスを用いた防火設備が脱落するまでの時間を算定し、前記ガラスを用いた防火設備が脱落した開口面積を再計算し、有効開口因子に算入して、ガラスを用いた防火設備脱落時の残可燃物の単位時間当たりの発熱量及びガラスを用いた防火設備脱落後の屋内火災の継続時間を算定した後、火災発生よりガラスを用いた防火設備が脱落するまでの時間とガラスを用いた防火設備脱落後の屋内火災の継続時間とを合算して、特定の火災室の合算屋内火災継続時間を算定する一方、特定の火災室に面する部材の保有耐火時間を算定し、合算屋内火災継続時間が算定した保有耐火時間以下となるよう部材、耐火被覆厚さ、開口面積、内装材料等の室の諸条件を変更し適合させることとした。
請求項3に係る発明は、ガラスを用いた防火設備を備えた開口部を有する室が、請求項1乃至請求項2のいずれかに記載されたに前記耐火設計法に基づいて、耐火処理された建築物である。
その結果、前記特定の火災室に面する部材の保有耐火時間を算定し、前記合算屋内火災継続時間が前記算定した保有耐火時間以下となるよう部材、耐火被覆厚さを適合させればよいので、耐火被覆厚さや構造部材の寸法や強度を下げても適正な耐火性を保つことが可能となる。
請求項2に係る発明によれば、告示検証法に準拠した耐火設計法であるので、屋内火災継続時間を合理的、短時間に算定することができるから、請求項1に係る発明に比し、より簡便に耐火性を保つことが可能となる。
また、請求項3に係る発明によれば、建築物の構造部材の寸法や強度や耐火被覆の厚さを必要以上に上げる必要がないので、建築コストの低減や、有効面積の拡大が可能になる。
次いで、ガラスを用いた防火設備脱落後は、ガラスを用いた防火設備が火災により脱落することが予測される面積を開口(ただし、後述するように開口率をrとする。)として見込んで火災性状を再計算し、火災継続時間を算出する。
図1は、告示検証法を使用した場合の計算フロー図、図2は、本実施例において、ガラスを用いた防火装備の1例として、網入ガラスが脱落しないとした場合の火災室温度を示す図、図3は、火災温度上昇係数αが460の室の火災室温度と網入ガラス脱落時間を示し、網入ガラスが脱落するときを丸印で示す図、図4は、網入ガラスが脱落したことを考慮したときとしないときの差に基づいて、火災継続時間が異なることを示す図、図5は、本発明を実施した集合住宅の室の平面概略図である。
図1において使用される記号の意味について次に示す。
Qr 当該室内の可燃物の発熱量[MJ]
ql 当該室内の収納可燃物の床面積1m2あたりの発熱量[MJ/m2]
Ar 当該室内の床面積[m2]
qf 当該室の壁、床、天井の室内に面する部分の内装用建築材料の表面積1m2、厚さ1mmあたりの発熱量[MJ/m2/mm]
Af 当該室の内装用建築材料の種類ごとの各部分の表面積[m2]
df 当該室の内装用建築材料の厚さ[mm]
fa 熱侵入係数[-]
qla 当該室の隣接室の収納可燃物の床面積1m2あたりの発熱量[MJ/m2]
Ara 当該室内の隣接室の床面積[m2]
qfa 当該室の隣接室の内装用建築材料の表面積1m2、厚さ1mmあたりの発熱量[MJ/m2/mm]
Afa 当該室の隣接室の内装用建築材料の種類ごとの各部分の表面積[m2]
dfa 当該室の隣接室の内装用建築材料の厚さ[mm]
α 火災温度上昇係数[℃/分1/6]
αaft 網入ガラス脱落後の火災温度上昇係数[℃/分1/6]
qb 当該室内の可燃物の1秒あたりの発熱量[MW]
qb_aft 網入ガラス脱落後の当該室内の可燃物の1秒あたりの発熱量[MW]
χ 燃焼型支配因子[m1/2]
χaft 網入ガラス脱落後の燃焼型支配因子[m1/2]
Afuel 可燃物表面積[m2]
Ac 当該室の壁、床、天井の部分ごとの表面積[m2]
Ih 当該室の壁、床、天井の部分ごとの熱慣性[kWs1/2/m2/K]
fop 有効開口因子[m5/2]
fop_aft 網入ガラス脱落後の有効開口因子[m5/2]
tf 当該室における火災継続時間[分]
tf_fallout 網入ガラス脱落後の当該室における火災継続時間[分]
tfallout 網入ガラス脱落時間[分]
Aop 各開口部の面積[m2]
Aop_aft 網入ガラス脱落後の各開口部の面積[m2]
Hop 各開口部の上端から下端までの鉛直距離[m]
Hop_aft 網入ガラス脱落後の各開口部の上端から下端までの垂直距離[m]
r 網入ガラス脱落後の各開口部の高さ方向の開口比率 [-]
Qr_aft 網入ガラス脱落後の当該室内の可燃物の発熱量[MJ]
Hr 当該室の床から天井までの平均高さ [m]
Wop ガラス幅 [m]
tfr 屋内火災保有耐火時間[分]
Tf_crit 網入ガラス脱落時の火災室温度[℃]
この室は床面積84.3m2、室高さ2.71mであり、図1の室条件設定の手順において、これらの値を含む室条件を設定する上で必要な値がコンピュータの入力手段によりに入力され、RAMに記憶される(手順1)。フロートガラス、網入ガラスなどの開口部の種類は手順1において入力する。
なお、後述する式は全て上記RAMに記憶されており、演算手順はプログラム化されている。
網入ガラスが脱落する前はAop、Hopはフロートガラスの開口のみを考慮して計算する。
fopも同様に網入ガラスが脱落する前はフロートガラスの開口のみを考慮し、
ΣAcIh=426の場合、αは460になり火災室温度Tfは図2、図3のようになる。
その結果、網入ガラスは用いられていないと判断したときは、手順13へジャンプして火災継続時間tfを算出する。
このときCPUは、網入ガラスが用いられていない室については、網入ガラスが脱落して開口面積が増えるようなことはないから、単純に式6の1を用いてtfを次のようにする。
tf=Qr/60qb 式6の1
手順14、15については後述する。
よく知られているように、火災室温度Tfは、温度上昇係数αを係数とする時間関数で表され、αの大きさにより決定付けられる。その式は次のとおりである。
Tf=αt1/6+20 式6
本発明はこの知見に基づいて創作されたもので、αの値毎にガラスを用いた防火設備脱落時間と炉内温度の関係について実験的に求め、これら値はデータベース化されている。
そして手順6では、火災温度上昇係数αと網入ガラスが脱落する耐火炉の炉内温度Tf_critの関係を利用することとしている。
すなわち、上記式4の1により、火災温度上昇係数αの値は求められているから、網入ガラス脱落時の火災室温度は前記データべースを検索して得られ、この温度に達する時間を上記式6にて求めればよい。
実験の結果、図3に示すように、αが460の場合には、6.8mm厚の網入ガラスが脱落する火災室温度Tf_critは843℃となることが究明されている。
そこで、火災室温度が843℃になる網入ガラス脱落時間tfalloutを、次の式7
手順8では、網入ガラスが脱落すると開口部面積が増加するので、次の式8にしたがって、開口部面積、開口部の上端から下端までの垂直距離を再度算出する。
Aop_aft=Wop×Hop_aft ただし、Hop_aft=Hop×r 式8
網入ガラス脱落後の開口部の上端から下端までの垂直距離Hop_aftを算出するにあたっては、係数rを掛けている。
この係数rは、網入ガラス全面積に対する脱落後の開口面積の割合が、実験により確認されているので、本実施例では安全をみて0.5としている。
なお、フロートガラスの場合は、ガラスが開口部全体に亘って脱落するのでr=1としている。
よって、網入ガラス脱落後の開口は、
開口1〜5 Hop_aft=1.0 Aop_aft=1.4×1.0
開口6 Hop_aft=1.0 Aop_aft=0.74×1.0
開口7、8、10 Hop_aft=1.8×0.5=0.9 Aop_aft=1.8×0.9
開口9 Hop_aft=1.8×0.5=0.9 Aop_aft=2.8×0.9
となる。
網入ガラス脱落後に残っている可燃物の発熱量Qr_aftは、次の式9にて算出することができる。
Qr_aft =99203−qb×tfallout×60=74909
となる。
網入ガラス脱落後においては、開口部面積が増えるので燃焼性状が変化する。
このため、手順10に進んで、網入ガラス脱落後の燃焼型因子χaftと、可燃物の燃焼による1秒あたりの発熱量qb_aftを、次の式2の2、式3の2にて再計算する。
χaftは max[0.0320, 0.0046] となり、qb_aftは1.6×0.0320×428.6=21.9 MWと計算される。
次いで手順11に進んで、αaftとfop_aftは、次の式5の2と式4の2により再計算され、
[脱落後の火災継続時間の計算]
さらに、網入ガラス脱落後の室内火災の継続時間tf_falloutを式10に基づいて算出する。
tf_fallout =74909/21.9/60=56.9分となる。
一方、網入ガラスの脱落を考慮しない火災継続時間は、
tf=99203/12.386/60=133.5(分)である。
網入ガラスが用いられた建築物の耐火設計において、網入ガラスが火災時に脱落しないとした場合、火災温度上昇係数αは、実際の火災に比べ小さな値を示す結果、
温度上昇は図4の下側細線の右上がりの曲線に表されるように緩やかとなり、右側細破線の垂線で示されるように火災継続時間は130分を越える。
これに対して網入ガラスが火災時に脱落するとした場合は、脱落後の火災温度上昇係数αaftは、脱落しないとした場合に比し大きな値をとることとなり、温度上昇曲線は、図4の上側太線に示されるように急激となる。
この結果、火災継続時間は左側の太破線の垂線で示されるように90分を切り、大幅に短縮される。
ところで、耐火性能検証法で提示されている耐火構造として大臣認定を受けた部材を適用するために、標準加熱曲線による耐火試験で確認した耐火時間を室火災に補正する式を変換すると以下のようになる。
tf_ef=tf×(α/460)3/2
tf_ef:標準加熱曲線による火災継続時間(等価火災継続時間)[分]
上記の式を網入ガラスの脱落を考慮した式に変形すると下記のようになる。
tf_ef=tfallout×(α/460)3/2+ tf_fallout×(αaft /460)3/2
手順14において上記換算を行った結果、網入ガラスの脱落を考慮した場合はtf_ef=108.5分、考慮しない場合はtf_ef=133.5分となる。
網入ガラスの脱落を考慮しない場合には、2時間の耐火性能を持つ部材を使用することができない。
このため、手順1の前に戻って、火災室の床面積、天井高さ、開口等の設計を変更したり、耐火性能を変更した部材を採用したり、内装材料、用途に応じた可燃物量等を変更するなどして、再度各手順において計算し直し、当該室の部材ごとの保有耐火時間が火災継続時間を上回るまで繰り返す。
ここで、等価火災継続時間に対応する耐火構造について、表1に示す。
以上、網入ガラスの実施例について説明したが、耐熱強化ガラスについても同様の作用効果を奏することが可能である。
したがって、火災時の網入ガラスや耐熱強化ガラスを含むガラスを用いた防火設備の脱落による開口形成を考慮することで、実情に合った火災継続時間を算出することができる。そのため、対象室の耐火時間を短くすることが可能となり、耐火被覆の削減や床スラブのコストダウンなどを図ることが可能となる。
具体的には、図5に示された集合住宅の住戸における実施例においては、告示検証法によれば、火災継続時間が133.5分と算定され、3時間耐火としなければならないところ、本実施例では、それが108.5分と短縮され、2時間耐火とすればよいこととなる。
Claims (3)
- 特定の火災室がガラスを用いた防火設備を有しているとき、当該火災室について、火災発生より前記ガラスを用いた防火設備が脱落するまでの時間を算定し、次いで前記ガラスを用いた防火設備脱落後の屋内火災の継続時間を算定した後、前記火災発生より前記ガラスを用いた防火設備が脱落するまでの時間と前記ガラスを用いた防火設備脱落後の屋内火災の継続時間とを合算して、前記特定の火災室の合算屋内火災継続時間を算定する一方、前記特定の火災室に面する部材の保有耐火時間を算定し、前記合算屋内火災継続時間が前記算定した保有耐火時間以下となるよう部材、耐火被覆厚さ、開口面積、内装材料等の室の諸条件を変更し適合させることを特徴とする建築物の耐火設計法。
- 特定の火災室の床面積、天井高さ、内装材料、用途に応じた可燃物量、開口面積などの諸条件を設定し、前記特定の火災室の可燃物の総発熱量を算定し、前記可燃物の単位時間当たりの発熱量と屋内火災の継続時間を算定し、前記特定の火災室に面する部材の保有耐火時間を算定して、前記屋内火災の継続時間が前記算定した保有耐火時間以下となるよう部材、耐火被覆厚さ、開口面積、内装材料等の室の諸条件を変更し適合させ、その後火災室を順次変更しながら、前記建築物の全ての火災室について、前記屋内火災継続時間が前記算定した保有耐火時間以下となるよう部材、耐火被覆厚さ、開口面積、内装材料等の室の諸条件を変更し適合させる建築物の耐火設計法において、
前記特定の火災室がガラスを用いた防火設備を有しているとき、当該火災室について、火災温度上昇係数を算定し、火災発生より前記ガラスを用いた防火設備が脱落するまでの時間を算定し、前記ガラスを用いた防火設備が脱落した開口面積を再計算し、有効開口因子に算入して、前記ガラスを用いた防火設備脱落時の残可燃物の単位時間当たりの発熱量及び前記ガラスを用いた防火設備脱落後の屋内火災の継続時間を算定した後、前記火災発生より前記ガラスを用いた防火設備が脱落するまでの時間と前記ガラスを用いた防火設備脱落後の屋内火災の継続時間とを合算して、前記特定の火災室の合算屋内火災継続時間を算定する一方、前記特定の火災室に面する部材の保有耐火時間を算定し、前記合算屋内火災継続時間が前記算定した保有耐火時間以下となるよう部材、耐火被覆厚さ、開口面積、内装材料等の室の諸条件を変更し適合させることを特徴とする建築物の耐火設計法。 - 前記ガラスを用いた防火設備を備えた開口部を有する室が、請求項1乃至請求項2のいずれかに記載された前記耐火設計法に基づいて、耐火処理された建築物。
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