JPH09184007A - クロム含有スラグを用いたステンレス鋼の精錬方法 - Google Patents

クロム含有スラグを用いたステンレス鋼の精錬方法

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JPH09184007A
JPH09184007A JP35265795A JP35265795A JPH09184007A JP H09184007 A JPH09184007 A JP H09184007A JP 35265795 A JP35265795 A JP 35265795A JP 35265795 A JP35265795 A JP 35265795A JP H09184007 A JPH09184007 A JP H09184007A
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hot metal
refining
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JP35265795A
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Kenichiro Miyamoto
健一郎 宮本
Shinya Kitamura
信也 北村
Akio Shinkai
昭男 新飼
Katsuhiko Kato
勝彦 加藤
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来廃棄等していたクロム含有スラグ中のク
ロム分をステンレス鋼中に回収させることができると共
に、クロム含有スラグを残存させた精錬炉内に溶銑を装
入する際に、いわゆる突沸が発生するのを防止すること
ができるクロム含有スラグを用いたステンレス鋼の精錬
方法を提供する。 【解決手段】 前チャージの脱炭工程で生成されたクロ
ム含有スラグ13を精錬炉10内に残存させたまま突沸
を生じないように、次チャージ用の溶銑14を装入した
後、溶銑14及びクロム含有スラグ13を吹酸昇温し
て、少なくともクロム含有スラグ13中のクロム分を溶
銑14中に還元回収するクロム還元回収工程と、クロム
還元回収工程で溶銑14中にクロム分が還元回収されて
なるクロム還元回収済スラグ13aを排滓する中間排滓
工程と、少なくとも中間排滓工程で精錬炉10内に残存
された溶銑14a中の炭素を脱炭する脱炭工程とを有す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クロム含有スラグ
を用いたステンレス鋼の精錬方法に係り、更に詳しく
は、前チャージで生成されたクロム含有スラグ中に含有
されるクロム分を、次チャージの溶銑中に還元回収させ
ることができると共に、クロム含有スラグ中に含有され
る酸化スラグや酸化鉄と、溶銑中に含有される炭素とが
反応して、いわゆる突沸が発生するのを防止することが
できるクロム含有スラグを用いたステンレス鋼の精錬方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば、上吹転炉や上底吹転炉等
の精錬炉内に、クロム鉱石を溶融還元して生成された含
クロム溶銑を装入した後、前記精錬炉内に酸素を吹き込
んで、前記溶銑中に含有される炭素を脱炭精錬する、ス
テンレス鋼の精錬方法が一部に適用されている。
【0003】ところが、前記ステンレス鋼の精錬方法で
は、前記溶銑中の炭素濃度が低下すると、溶銑中の炭素
と酸素が反応する脱炭反応に比べ、前記溶銑中のクロム
と酸素が反応する酸化反応が起こり易くなるために、精
錬操業終了時、前記精錬炉から排滓されるスラグ中に、
クロム分が高濃度で含有される(以下クロムが含有され
るスラグをクロム含有スラグという)という問題点を有
していた。
【0004】このため、前記クロムが高価であることか
らも、前記クロム含有スラグ中のクロム分を回収する、
何等かの方法が希求されていた。
【0005】そこで、これらの問題点を解決するため
に、精錬操業終了時、すなわち、クロム含有スラグの
排滓前に、精錬炉内にフェロシリコン(以下Fe−Si
という)等の還元材を装入する方法が提案されている。
【0006】また、特公昭57−37646号公報に
は、製鋼炉にて溶製された13%以上のクロム含有量を
有する含クロム鋼の残滓を冷却固化せしめるか、或い
は、転炉における他の含クロム鋼用チャージの吹錬時に
前記の固体残滓を添加せしめる含クロム鋼滓よりのクロ
ム回収利用方法が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記
の方法では、Fe−Si等の還元材が高価なために、生
産コストが増大する一方、例えば、Fe−Si中のSi
分とクロム含有スラグ中の酸化物との反応によって生成
された二酸化硅素(SiO2 )によって、精錬炉の炉壁
を構成する耐火物(以下炉耐火物という)が溶損等され
るという問題点を有していた。また、前記炉耐火物の溶
損を防止するために、例えば、生石灰や石灰石等を装入
して、スラグの塩基度(又はCaO/SiO2 という)
を高める(又は高塩基度化するという)必要があるとい
う問題点を有していた。
【0008】そこで、この問題点を解決するために、前
記の方法が提案されているが、前記の方法では、製
鋼炉にて溶製された13%以上のクロム含有量を有する
含クロム鋼の残滓を、前記製鋼炉内に残存させたまま、
この残滓に焼石灰又は軽焼ドロマイト等の冷却材を装入
して冷却固化し、固体残滓を形成する必要があるので、
多量の冷却材が必要となるという問題点を有していた。
【0009】また、吹錬操業開始時に、製鋼炉内に固体
残滓を残存させたまま、高温の溶銑を装入しても、該溶
銑の温度が低下するために、溶銑の温度を上昇させる顕
熱材が必要であると共に、溶銑の温度を上昇させる時間
が必要であるために、昇温還元時間を大幅に延長させ、
精錬時間の遅延化が生じる等、生産性を阻害するという
問題点を有していた。
【0010】一方、他の含クロム鋼用チャージの、吹錬
操業開始時に、溶銑が装入された製鋼炉内に、残滓を破
砕した固体残滓を添加した場合も、前記と同様な問題点
を有していた。
【0011】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
もので、従来廃棄等していたクロム含有スラグ中のクロ
ム分をステンレス鋼中に回収させることができると共
に、クロム含有スラグを残存させた精錬炉内に溶銑を装
入する際に、クロム含有スラグと溶銑とが反応して、い
わゆる突沸が発生するのを防止すると共に、昇熱材の節
減と還元精錬の迅速化を図ることができるクロム含有ス
ラグを用いたステンレス鋼の精錬方法を提供することを
目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】前記目的に沿う請求項1
記載のクロム含有スラグを用いたステンレス鋼の精錬方
法は、前チャージの脱炭工程で生成されたクロム含有ス
ラグを精錬炉内に残存させたまま、次チャージ用の溶銑
を装入した後、該溶銑及び前記クロム含有スラグを吹酸
昇温して、少なくとも前記クロム含有スラグ中のクロム
分を前記溶銑中に還元回収するクロム還元回収工程と、
該クロム還元回収工程で前記溶銑中に前記クロム分が還
元回収されてなるクロム還元回収済スラグを排滓する中
間排滓工程と、少なくとも該中間排滓工程で前記精錬炉
内に残存された溶銑中の炭素を脱炭する前記脱炭工程と
を有し、かつ、前記クロム還元回収工程で前記精錬炉内
に前チャージの前記脱炭工程で生成された前記クロム含
有スラグを残存させたまま、前記溶銑及び前記クロム含
有スラグの反応に起因する突沸が生じないように、次チ
ャージ用の前記溶銑を装入する。
【0013】請求項2記載のクロム含有スラグを用いた
ステンレス鋼の精錬方法は、請求項1記載のクロム含有
スラグを用いたステンレス鋼の精錬方法において、前記
クロム還元回収工程で、前記精錬炉内に残存される前記
クロム含有スラグを、強制冷却することなく、所定の顕
熱を有する状態で保持する。
【0014】請求項3記載のクロム含有スラグを用いた
ステンレス鋼の精錬方法は、請求項1又は2記載のクロ
ム含有スラグを用いたステンレス鋼の精錬方法におい
て、前記クロム還元回収工程で、前記精錬炉内に残存さ
れる前記クロム含有スラグの温度、前記クロム含有スラ
グ中に含有される総FeO含有量、前記クロム含有スラ
グの固相率、前記精錬炉内に装入される前記溶銑の温
度、前記溶銑の装入速度の内少なくとも1以上制御し
て、前記突沸を防止する。
【0015】なお、前記精錬炉としては、上吹転炉や、
底吹転炉、上底吹転炉等のLD転炉等を使用することが
できる。勿論、上吹転炉や、底吹転炉、上底吹転炉で
は、前記クロム還元回収工程(又は昇温還元工程とい
う)や、前記脱炭工程(又は脱炭精錬工程という)で、
後述する酸化性ガスを吹き込んで、前記溶銑を攪拌する
ことができるので、効率良く脱炭等を生じさせ、精錬時
間を短縮することができる。
【0016】また、前記溶銑としては、高炉から出銑し
た高炉溶銑や、前記高炉溶銑を脱燐・脱硫処理したも
の、更に、クロム鉱石を溶融還元した含クロム溶銑、そ
の他、ステンレス鋼スクラップを電気炉で溶製した含ク
ロム溶鉄等、種々のものを使用することができる。な
お、これら溶銑を精錬炉内に装入するときは、後述する
溶銑の装入速度を持って、連続的に装入してもよいし、
或いは前記装入速度を持って複数回に分けて装入しても
よい(換言すると溶銑装入は、当該チャージの必要溶銑
量の装入速度を時間をかけて制御するか、或いは複数回
に分割することもできる)。
【0017】また、精錬炉内に残存させたクロム含有ス
ラグは、吹酸脱炭精錬終了後のものをそのままで用いる
ものであるが、望ましくはクロム含有スラグを強制的に
冷却固化せず十分な顕熱を有する状態のものを使用す
る、すなわち、脱炭精錬終了直後から精錬炉を1乃至複
数回の炉振りを行う程度、或いは精錬炉の自然放熱に制
限したもの、いわゆるホットリサイクルしたものが望ま
しい。従来の如く、顕熱材の必要性等を省略することが
できるからである。さらに、この十分な顕熱を有するク
ロム含有スラグは、その温度が400℃以上、好ましく
は1000℃以上、更に好ましくは1400℃以上とな
る程、該クロム含有スラグ中の酸化クロムの還元反応時
間、及び、熱効率を順次大幅に向上させることができ
る。なお、「所定の顕熱」とは、前述したホットリサイ
クルの状態のものをいい、また、「強制的に冷却固化」
とは、精錬炉内に冷却材を添加して、クロム含有スラグ
を冷却固化することをいう。
【0018】また、前記クロム含有スラグとは、通常、
3wt%以上のクロム含有率(CCr)を有するものをい
うものである。特に、前記クロム含有スラグのクロム含
有率(CCr)としては、6wt%≦(CCr)≦50wt
%の範囲内が望ましい。これは、前記クロム含有率が6
wt%未満では、クロム含有スラグの流動性が良くなる
ことに起因して、溶銑装入時に、該溶銑中の炭素
((C)M )と、クロム含有スラグ中の酸化クロム
((Cr2 3 S )や酸化鉄((FeO)S )が急激
に反応して、突沸が生じ易くなる傾向が現れる一方、前
記クロム含有率が50wt%を越えると、すなわち、ク
ロム含有スラグ中の酸化クロムの量が多くなると、クロ
ム還元回収工程の時間を長くしなければならないため
に、生産性が低下する傾向が現れるからである。
【0019】また、前記クロム還元回収工程における
「吹酸昇温する」とは、前記精錬炉内に酸化性ガスを吹
き込むと共に炭材を装入して、例えば、下記(1)式に
示す反応を生じさせて、前記溶銑、及び、前記クロム含
有スラグの温度を上昇させることをいうものである。 2(C)M +O2 →2CO ・・・・・・・・・・・・・・・・(1) 但し、前記(1)式中、(C)M は溶銑中に含有される
炭素である。
【0020】また、前記クロム還元回収工程における
「還元回収する」とは、例えば、下記(2)式に示す反
応を生じさせて、クロム含有スラグ中の酸化クロムを溶
銑中に還元回収することをいうものである。 (Cr2 3 S +3(C)M →2(Cr)M +3CO ・・・・・(2) 但し、前記(2)式中、(Cr2 3 S はクロム含有
スラグ中に含有される酸化クロム、(Cr)M は溶銑中
に含有されるクロムである。
【0021】なお、前記酸化性ガスとは、上吹転炉や上
底吹転炉でランスから吹き込まれる純酸素等や、底吹転
炉や上底吹転炉でガス送気用羽口から吹き込まれる酸
素、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス、或いは、
炭酸ガス、燃料ガス等の混合ガス等をいうものである。
なお、クロム還元回収工程で、前記ランスから吹き込ま
れる純酸素の送酸速度(VP :(単位:Nm3 /min
/ton))としては、1.5≦VP ≦6の範囲とされ
るのが望ましい。これは、前記送酸速度が1.5(Nm
3 /min/ton)未満では、酸素供給量が減少する
ことに起因して、溶銑中の炭素と酸素による発熱反応速
度が減少して、酸化クロムの還元速度(以下クロム還元
速度という)が小さくなるために、精錬時間が長くなる
等、精錬効率が低下する傾向が現れる一方、前記送酸速
度が6(Nm3 /min/ton)を越えると、熱供給
が過剰となり、溶銑や溶滓の温度が高くなり過ぎて耐火
物が溶損する傾向が現れるからである。
【0022】また、前記炭材とは、精錬操業、開始前
に、予め精錬炉内に装入されたり、精錬操業中、連続的
に装入されたりするものであり、例えば、粉状コークス
や、この粉状コークスを各種バインダーで塊状に固結し
た塊状コークス、更に、前記粉状コークスと粒状鉄とを
前記バインダーで塊状にした成形コークス、或いは粉状
無煙炭を前記バインダーで塊状にした無煙炭ブリケット
等をいうものである。その他、クロム含有スラグ中のク
ロム分を還元するために、金属アルミニウムを含有した
アルミドロス等の還元材等を用いてもよい。特に、アル
ミドロスは昇温材の役目を兼ねると共に、クロム含有ス
ラグの組成の制御や、これによるクロム含有スラグ中の
クロム分の還元速度の向上に寄与することができ、極め
て有用である。
【0023】なお、クロム還元回収工程の炭材の含有率
(VC )は、クロム含有スラグに対し、重量比率で2w
t%≦VC ≦10wt%、好適には3wt%≦VC ≦6
wt%の範囲とされるのが望ましい。これは、前記炭材
の含有率がクロム含有スラグに対し重量比率で3wt%
未満では、前記(1)及び(2)式の反応等で生成され
たCOガスの気泡によってクロム含有スラグの突沸が発
生する傾向が現れ、特に2wt%未満ではその傾向が著
しくなる一方、前記炭材の含有率がクロム含有スラグに
対し重量比率で6wt%を越えると、前記(1)及び
(2)式の反応等で生成されたCOガスの量が増加する
ために、COガスの気泡が破壊される等、クロム含有ス
ラグ(又はクロム還元回収済スラグ)のフォーミング不
足を招き、地金が飛散するいわゆる地金飛散ロス等によ
り歩留りが低下する傾向が現れ、特に10wt%を越え
るとその傾向が著しくなるからである。
【0024】また、中間排滓後に行う脱炭工程では、前
記精錬炉内に装入される溶銑の成分等に応じて、フェロ
クロム合金等を添加したり、その他、温度の調整を行っ
てもよい。なお、前記フェロクロム合金は、溶銑のクロ
ム含有率を調整するために使用されるものであり、この
フェロクロム合金としては、クロム含有率が10wt%
〜50wt%の一般クロム鉱石や、高炭素フェロクロ
ム、中炭素フェロクロム、低炭素フェロクロム等の貧鉱
を富化処理したもの、或いは還元処理されたペレット等
のクロム鉱石類等を使用することができる。その他、ス
テンレス鋼スクラップ等を使用してもよい。
【0025】また、前記クロム含有スラグの塩基度(又
は(CaO/SiO2 )という)は、1.5≦(CaO
/SiO2 )≦3.5の範囲内とされるのが望ましい。
これは、前記クロム含有スラグの塩基度が1.5未満で
は、クロム含有スラグの塩基度が低過ぎて精錬炉を構成
する耐火物の溶損が進行する傾向が現れる一方、前記ク
ロム含有スラグの塩基度が3.5を越えると、クロム含
有スラグからのクロム回収率が低下したり、クロム含有
スラグの排滓率が低下したり、或いは溶鋼歩留りの低下
を招く傾向が現れるからである。
【0026】また、前記クロム含有スラグのMgOの含
有率(CMgO )は、5wt%≦(CMgO )≦15wt%
の範囲内とされるのが望ましい。これは、前記クロム含
有スラグのMgOの含有率が5wt%未満では、精錬炉
を構成する耐火物からMgOが溶出し易くなるために、
耐火物の溶損が進行する傾向が現れる一方、前記クロム
含有スラグのMgOの含有率が15wt%を越えると、
クロム含有スラグ中の酸化クロムとMgOが結合してス
ピネルを形成し易くなり、クロム含有スラグ中の酸化ク
ロム((Cr2 3 S )の活量を低下させるために、
クロム還元速度が低下すると共に、前記と同様に、クロ
ム回収率の低下やクロム還元回収済スラグの排滓率低
下、更に溶鋼歩留りの低下を招く傾向が現れるからであ
る。
【0027】また、前記クロム含有スラグのAl2 3
の含有率((Al2 3 S )としては、3wt%≦
(Al2 3 S ≦23wt%、好適には8wt%≦
(Al23 S ≦20wt%の範囲とされるのが望ま
しい。これは、前記Al2 3 の含有率が8wt%未満
では、例えば、ダイカルシウムシリケート等の高融点化
合物の析出によるクロム含有スラグの液相率の低下に伴
って、クロム還元速度が低下する傾向が現れ、特に3w
t%未満ではその傾向が著しくなる一方、前記Al2
3 の含有率が20wt%を越えると、クロム含有スラグ
の粘性が低下することでクロム含有スラグの突沸が発生
し易くなると共に、精錬炉を構成する耐火物の溶損も進
行する傾向が現れ、特に23wt%を越えるとその傾向
が著しくなるからである。
【0028】
【作用】本発明者等は鋭意研究を進めた結果、通常、精
錬操業中ではクロム含有スラグや溶銑中の種々含有成分
の含有率(又は濃度)が変動することに着目すること
で、精錬操業終了時の高クロム含有率のクロム含有スラ
グを、精錬炉内に残存させたまま、精錬操業を開始する
と、溶銑とクロム含有スラグのクロム濃度差を利用して
容易に溶銑中にクロム分を還元させると共に、該クロム
分を還元回収してなる低クロム含有率のクロム還元回収
済スラグを排滓することにより、クロムを高効率で溶銑
中に回収することができること、及び、クロム含有スラ
グと溶銑との急激な反応による突沸を防止しつつ溶銑装
入することにより、好ましい条件でクロムを回収するこ
とができることを知見し得た。
【0029】また、クロム還元回収工程で、前チャージ
の脱炭工程で生成されたクロム含有スラグを、従来の如
く、冷却固化させることなく、ホットリサイクルさせる
ことで、クロム還元回収工程の時間を短縮化させること
ができることを知見し得た。
【0030】更に、クロム還元回収工程で、前チャージ
の脱炭工程で生成されたクロム含有スラグを精錬炉内に
残存させたまま、次チャージ用の溶銑を装入する際、ク
ロム含有スラグの温度や総FeO含有量(又は(%Fe
O)という)、固相率、溶銑の温度や装入速度の内少な
くとも一つ以上を制御することによって、クロム含有ス
ラグ中の酸化クロム((Cr2 3 S )や酸化鉄
((FeO)S )と、溶銑中の炭素((C)M )が、急
激に反応して、多量のCOガスが発生して、これら溶銑
やクロム含有スラグが、精錬炉外に溢れ出す、いわゆる
突沸が生じ、精錬が不可能となるのを防止することがで
きることを知見し得た。
【0031】以上の説明から明らかなように、請求項1
〜3記載のクロム含有スラグを用いたステンレス鋼の精
錬方法においては、前チャージの脱炭工程で生成された
クロム含有スラグを精錬炉内に残存させたまま、次チャ
ージ用の溶銑を装入した後、溶銑及びクロム含有スラグ
を吹酸昇温して、少なくともクロム含有スラグ中のクロ
ム分を溶銑中に還元回収するクロム還元回収工程と、ク
ロム還元回収工程で溶銑中にクロム分が還元回収されて
なるクロム還元回収済スラグを排滓する中間排滓工程
と、少なくとも中間排滓工程で精錬炉内に残存された溶
銑中の炭素を脱炭する脱炭工程とを有することにより、
前記クロム還元回収工程で、前チャージのクロム含有ス
ラグと、次チャージ用の溶銑のクロム濃度差を利用して
クロム含有スラグ中のクロム分を、容易にかつ、効率よ
く、溶銑中に還元回収することができる。また、前記ク
ロム還元回収工程で前記精錬炉内に前チャージの前記脱
炭工程で生成された前記クロム含有スラグを残存させた
まま、前記溶銑及び前記クロム含有スラグの反応に起因
する突沸が生じないように、次チャージ用の前記溶銑を
装入することにより、突沸が生じるのを防止することが
できる。
【0032】特に、請求項2記載のクロム含有スラグを
用いたステンレス鋼の精錬方法においては、前記クロム
含有スラグが所定の顕熱を有する、すなわち、前記クロ
ム含有スラグをホットリサイクルすることにより、該ク
ロム含有スラグの冷却固化を防止することができるの
で、従来の如く、固体残滓を、一旦、冷却固化した後、
昇温する作業等を必要とせず、炭材等の顕熱材や酸素等
の節減を図ることができると共に、クロム含有スラグと
溶銑の反応性を向上させて、還元処理時間の短縮を図る
ことができる等、極めて迅速な精錬作業を行うことがで
きる。
【0033】請求項3記載のクロム含有スラグを用いた
ステンレス鋼の精錬方法においては、クロム含有スラグ
の温度、クロム含有スラグの総FeO含有量(%Fe
O)、クロム含有スラグの固相率、前記溶銑の温度及び
前記溶銑の装入速度の内少なくとも一つ以上を制御する
ことによって、突沸を防止することができる。
【0034】
【発明の効果】請求項1〜3記載のクロム含有スラグを
用いたステンレス鋼の精錬方法においては、精錬操業終
了時の高クロム含有率のクロム含有スラグを精錬炉内に
残存させたまま、次チャージ用の溶銑を装入すること
で、溶銑にクロム含有スラグ中のクロム分を高い還元速
度で回収できると共に、低クロム含有率のクロム還元回
収済スラグを排滓することで、クロム含有スラグ中の多
量のクロム分を廃棄等することなくステンレス鋼中に回
収することができ、さらに、高価な還元材の使用量を極
めて低減することができ、効率的なステンレス鋼の精錬
を可能とすることができる。
【0035】また、前チャージのクロム含有スラグを精
錬炉内に残存させたまま、次チャージ用の溶銑を装入す
る際に、クロム含有スラグ中の酸化鉄と溶銑が反応し
て、多量のCOが発生して前記溶銑や前記クロム含有ス
ラグが精錬炉外に溢れ出す、いわゆる突沸を防止するこ
とができると共に、炉耐火物の溶損を防止することがで
きる。
【0036】特に、請求項2記載のクロム含有スラグを
用いたステンレス鋼の精錬方法においては、前記クロム
含有スラグをホットリサイクルすることにより、該クロ
ム含有スラグの冷却固化を防止して、従来の如く、固体
残滓を、一旦冷却固化した後、昇温する作業等を必要と
せず、極めて迅速な精錬作業を行うことができる。
【0037】請求項3記載のクロム含有スラグを用いた
ステンレス鋼の精錬方法においては、クロム含有スラグ
の温度、総FeO含有量(%FeO)及び固相率、前記
溶銑の温度及び装入速度の内少なくとも一つ以上を制御
することによって、突沸を防止することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】続いて、添付した図面を参照しつ
つ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発
明の理解に供する。
【0039】ここに、図1(a)は本発明の一実施の形
態に係るクロム含有スラグを用いたステンレス鋼の精錬
方法のクロム還元回収工程の溶銑装入状態の説明図、図
1(b)は同ステンレス鋼の精錬方法のクロム還元回収
工程のクロム還元回収状態の説明図、図1(c)は同ス
テンレス鋼の精錬方法の中間排滓工程の排滓状態の説明
図、図1(d)は同ステンレス鋼の精錬方法の脱炭工程
の脱炭状態の説明図、図1(e)は同ステンレス鋼の精
錬方法の脱炭工程の出鋼状態の説明図、図2はクロム含
有スラグの表面温度と昇温還元反応時間指数、及び、熱
効率指数との関係を示す特性図、図3は溶銑の装入速度
及びクロム含有スラグの温度に起因するクロム含有スラ
グのフォーミング高さ指数を示す特性図である。
【0040】まず、本発明の一実施の形態に係るクロム
含有スラグを用いたステンレス鋼の精錬方法に用いる精
錬炉の一例である上底吹転炉10について説明する。こ
の上底吹転炉10は、耐火レンガ等を積み重ねて、ほぼ
徳利状に形成されている。なお、図1中、符号10a
は、上底吹転炉10内に溶銑を装入するための装入口、
符号10bは、上底吹転炉10の装入口10aより下方
の側壁部、すなわち図1(a)中、上底吹転炉10の右
側壁部に形成され、上底吹転炉10で脱炭精錬された溶
鋼を出鋼するための出鋼口、符号10cは、上底吹転炉
10の底部に設けられた複数のガス送気用羽口、符号1
0dは、ガス送気用羽口10cに取り付けられたガス送
気管である。
【0041】また、この上底吹転炉10は、トラニオン
リング方式又はトラニオンリングレス方式等の傾動装置
(図示せず)を適用して、所定方向、すなわち、図1
(a)〜(e)中、時計回り方向、及び、反時計回り方
向に、傾動自在(又は回動自在)に保持されている。ま
た、上底吹転炉10の装入口10aの近傍部には、取鍋
11がこの上底吹転炉10に近接及び傾動自在に配置さ
れている。更に、上底吹転炉10の装入口10aの上部
には、酸素等の酸化性ガスを供給するためのランス12
が昇降自在に配置されている。なお、図示しないが、ラ
ンス12に近接して溶銑(又は溶鋼)やスラグの成分測
定や温度測定等を行うためのサブランスも配置されてい
る。
【0042】続いて、本発明の一実施の形態に係るクロ
ム含有スラグを用いたステンレス鋼の精錬方法について
説明する。まず、上底吹転炉10内に、前チャージで生
成されたクロム含有スラグ13を残存させたまま、図1
(a)に示すように、上底吹転炉10を、取鍋11の方
に向かって、反時計回りに傾動させた後、取鍋11から
装入口10aを介して上底吹転炉10内に、次チャージ
用の溶銑14を装入すると共に、石灰やホタル石等の造
滓剤(又はフラックスという)を装入する。ここで、必
要に応じて、金属アルミニウムを含有した適量のアルミ
ドロスを事前に添加してもよい。
【0043】次に、粉状コークス等の炭材を、クロム含
有スラグ13に対し、重量比率で3wt%≦VC ≦6w
t%の範囲内となるように、連続的に装入しながら、添
加すると共に、図1(b)に示すように、ランス12の
先端部を、装入口10aを介して、上底吹転炉10内ま
で下降させ、このランス12から酸素を供給する。これ
により(このような上吹吹酸により)、溶銑14及びク
ロム含有スラグ13の昇温を行うと共に、クロム含有ス
ラグ13中の酸化クロムを溶銑14中に還元し、溶銑1
4中にクロムを回収させる(クロム還元回収工程)。
【0044】次に、クロム含有スラグ13中の酸化クロ
ムが還元されて、クロム含有率が3wt%以下となった
クロム還元回収済スラグ13aが生成されると、図1
(c)に示すように、上底吹転炉10を、出鋼口10b
とは反対方向(すなわち反時計回り)に傾動させ、装入
口10aから、クロム還元回収済スラグ13aを排滓す
る(中間排滓工程)。次に、図1(d)に示すように、
上底吹転炉10内に、装入口10aを介してフェロクロ
ム合金やフラックス(13b)を添加し、さらに前述し
たように、上吹吹酸を行い、脱炭精錬を行った(脱炭工
程)。これにより、溶銑(又は溶鋼)14a上には、新
たにクロム酸化物を含有したクロム含有スラグ13が生
成される。
【0045】次に、所定組成で所定温度の溶鋼14bが
生成されると、図1(e)に示すように、上底吹転炉1
0を、時計回りに傾動して、この出鋼口10bから溶鋼
14bを出鋼する。なお、クロム含有スラグ13のクロ
ム含有率は11wt%〜19wt%とした。ここで、生
成されたクロム含有スラグ13は、そのまま上底吹転炉
10内に残存させる。
【0046】以上のように本発明の一実施の形態に係る
クロム含有スラグを用いたステンレス鋼の精錬方法によ
れば、精錬操業終了時の高クロム含有率のクロム含有ス
ラグを精錬炉内に残存させたまま、突沸を防止しつつ、
次チャージ用の溶銑を装入することで、溶銑とクロム含
有スラグ中のクロム分を高い還元速度で回収させ、か
つ、低クロム含有率のクロム還元回収済スラグを排滓す
ることで、クロム含有スラグ中の多量のクロム分を廃棄
等することなくステンレス鋼中に回収することができる
と共に、Fe−Si、アルミニウム等の高価な還元材の
使用量を低減して、効率的なステンレス鋼の精錬を可能
とすることができる。
【0047】また、前チャージのクロム含有スラグを精
錬炉内に残存させたまま、次チャージ用の溶銑を装入す
る際に、クロム含有スラグ中の酸化鉄と溶銑が反応し
て、多大な量のCOが発生する、いわゆる突沸を防止す
ることができると共に、精錬炉を構成する耐火物の溶損
を防止することができる。
【0048】
【実施例】続いて、本発明の一実施の形態に係るクロム
含有スラグを用いたステンレス鋼の精錬方法の確認試験
について説明する。
【0049】(実施例1)まず、クロム含有スラグの表
面温度と、昇温還元反応時間指数との関係を調べた。そ
の結果を、図2中、実線aに示す。なお、炭材の一例で
あるコークスの装入量は、溶銑120(ton)に対
し、10(ton)とした。また、酸素は28000
(Nm3 /hr)とした。また、精錬炉内に残存された
クロム含有スラグの塩基度は、2.0〜2.5で、精錬
操業中のクロム含有スラグの塩基度は1.4〜1.7で
あった。また、クロム含有スラグの総FeO含有量(%
FeO)は5〜10%、クロム含有スラグの固相率は、
クロム含有スラグの表面温度が400℃のとき、100
%、クロム含有スラグの表面温度が1400℃のとき、
約95〜100%程度、溶銑の温度は1250〜135
0℃、溶銑の装入速度(又は溶銑装入速度という)は1
00(ton/min)以下とした。また、昇温還元反
応時間指数は、常温まで強制冷却したクロム含有スラグ
を用いたときの還元処理時(通常は30min)を1.
0とした場合を示すものである。
【0050】この図2中、実線aから明らかなように、
クロム含有スラグの表面温度が上昇するに連れ、昇温還
元反応指数が上昇することがわかった。また、クロム含
有スラグの表面温度が、約400℃、約1000℃、約
1400℃と高温に移行するにつれてクロム含有スラグ
の顕熱量の増加となるために、温度の上昇と共に、溶銑
及び炭材との反応が大幅に改善され、これに伴い、還元
反応を段階的に向上させることができる。
【0051】(実施例2)次に、他の条件を前記と同様
にして、クロム含有スラグの表面温度と、熱効率指数と
の関係を調べた。その結果を、図2中、破線bに示す。
なお、熱効率指数は、常温まで強制冷却したクロム含有
スラグを用いたときの還元処理時を1.0とした場合を
示すものである。この図2中、破線bから明らかなよう
に、クロム含有スラグの表面温度が上昇するに連れ、熱
効率指数が上昇することがわかった。また、クロム含有
スラグの表面温度が、約400℃、約1000℃、約1
400℃と高温となるにつれて、顕熱量の増加と共に、
精錬炉内に有効に活用できる熱量が大幅に増加し、結果
として、冷却固化したクロム含有スラグの熱効率を1.
0とした場合に比べ、段階的に向上することができた。
【0052】(実施例3)次に、クロム含有スラグのフ
ォーミング高さに及ぼす、溶銑の装入速度の影響を調べ
た。その結果を図3中、実線c、及び、表1に示す。な
お、クロム含有スラグの総FeO含有量(%FeO)は
5wt%≦(%FeO)≦10wt%(平均値約8%)
であった。また、図3はクロム含有スラグの温度が10
00℃の場合で、他は前記のクロム含有スラグの条件と
同じである。また、溶銑及びクロム含有スラグの盛り上
がり高さ指数(H)とは、精錬炉の炉底から装入口まで
の高さ(h1 )を1としたとき、精錬炉の炉底から溶銑
及びクロム含有スラグの上面までの高さ(h2 )を表し
たものである(図1参照)。すなわち、下記(4)式で
示されるものである。
【0053】
【表1】
【0054】 H=h2 /h1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4) 但し、h1 :精錬炉の炉底から装入口までの高さ h2 :精錬炉の炉底から溶銑及びクロム含有スラグの上
面までの高さ
【0055】この図3、及び、表1から明らかなよう
に、クロム含有スラグの温度によらず、ほぼ同様に、溶
銑の装入速度が大きくなるに連れて、フォーミング高さ
指数が大きくなることがわかった。また、溶銑の装入速
度がほぼ100(ton/min)を越えると、突沸が
発生することがわかった。また、溶銑の装入速度がほぼ
10(ton/min)未満では、生産性が低下するこ
とがわかった。
【0056】さらに、クロム含有スラグの顕熱が高くな
るにつれて、反応性が良好となり、還元反応の向上、精
錬用熱効率の向上と、クロム含有スラグが顕熱を有する
ことによる突沸防止のために溶銑の装入速度を低い側に
制御しても何等生産性の低下にはならないこともわかっ
た。
【0057】(実施例4)次に、クロム含有スラグのフ
ォーミング高さ指数に及ぼすクロム含有スラグの総Fe
O含有量(%FeO)、クロム含有スラグの固相率、溶
銑の温度との影響について、調べた結果を、図3に基づ
き説明する。
【0058】まず、クロム含有スラグのフォーミング高
さ指数に対し、クロム含有スラグの総FeO含有量(%
FeO)は通常、5〜10wt%であるが、この総Fe
O含有量(%FeO)が高くなると、溶銑中の炭素との
反応により生成されるCOガスが増加し、この生成され
たCOガスがクロム含有スラグ及び溶銑中に保持され、
クロム含有スラグのフォーミング高さが大きくなるため
に、溶銑の装入速度は図3の値よりも溶銑の装入速度を
遅くする、すなわち、図3中、実線cより左方域の値と
するのが好ましい。
【0059】また、クロム含有スラグの固相率は約80
0℃以下では100%であるが、固相率が低い程、クロ
ム含有スラグの温度が高い程、図2にも示すように、溶
銑及び添加される炭材との反応性が良好であるために、
反応により生成されるCOガスが急激に増加して、前記
総FeO含有量(%FeO)と同様に、溶銑装入速度は
図3の値よりも溶銑装入速度を遅くするのが好ましい。
【0060】さらに、装入する溶銑の温度が高い場合も
反応が良好となり、生成されるCOガスが急激に増加す
ることから溶銑装入速度を遅くするのが好ましい。この
ような要件を制御することにより、クロム含有スラグの
フォーミング高さ指数を安定域に維持することができ
る。
【0061】以上の結果、前記クロム含有スラグの温度
(TS )は、他の条件にも依るが400℃≦(TS )≦
1600℃、好適には1000℃≦(TS )≦1600
℃、更に好適には1400℃≦(TS )≦1600℃の
範囲内とされるのが望ましいことがわかった。これは、
前記温度が1400℃未満では、溶銑を装入したとき、
該溶銑の温度が低下するために、昇温還元時間を大幅に
延長させてしまい、生産性を阻害する傾向が現れ、10
00℃未満ではその傾向が著しく、特に、400℃未満
ではその傾向が極めて著しくなる一方、前記温度が16
00℃を越えると炉耐火物が溶損され易くなる傾向が現
れるからである。換言するならば、クロム含有スラグを
常温以下に強制冷却しなければよい。
【0062】また、前記クロム含有スラグの総FeO含
有量(%FeO)は、他の条件にも依るが、(%Fe
O)≦10wt%とされるのが望ましいことがわかっ
た。前記(%FeO)が10wt%を越えると、溶銑装
入時の反応が大きくなって、突沸防止のために、溶銑の
装入速度を調整する必要がある等、生産性が低下する傾
向が現れるからである。
【0063】また、前記クロム含有スラグの固相率(R
S )は、他の条件にも依るが、70%≦(RS )≦90
%の範囲内とされるのが望ましいことがわかった。前記
固相率が、70%未満では、クロム含有スラグ中の酸化
クロムや酸化鉄と、溶銑中の炭素とが反応し易くなっ
て、突沸が生じ易くなる傾向が現れる一方、前記固相率
が、90%を越えると、すなわち、クロム含有スラグが
完全に固化する(常温まで冷却される)と、昇温還元時
間を大幅に延長させてしまい、生産性を阻害する傾向が
現れるからである。
【0064】また、前記溶銑の温度(TP )は、他の条
件にも依るが、1250℃≦(TP)≦1450℃の範
囲内とされるのが望ましいことがわかった。さらに、前
記溶銑の装入速度(VCP)は、他の条件にも依るが、1
0(ton/min)≦(VCP)≦100(ton/m
in)の範囲内とされるのが望ましい。前記装入速度が
10(ton/min)未満では、生産性が低下する傾
向が現れる一方、前記装入速度が100(ton/mi
n)を越えると突沸が発生し易くなる傾向が現れるから
である。
【0065】なお、溶銑は、連続的に装入するのみに限
られず、例えば、多分割して装入してもその効果は同等
であることがわかった。
【0066】以上、本発明の実施の形態を説明したが、
本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではな
く、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用
範囲である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の一実施の形態に係るクロム含有
スラグを用いたステンレス鋼の精錬方法のクロム還元回
収工程の溶銑装入状態の説明図である。 (b)同ステンレス鋼の精錬方法のクロム還元回収工程
のクロム還元回収状態の説明図である。 (c)同ステンレス鋼の精錬方法の中間排滓工程の排滓
状態の説明図である。 (d)同ステンレス鋼の精錬方法の脱炭工程の脱炭状態
の説明図である。 (e)同ステンレス鋼の精錬方法の脱炭工程の出鋼状態
の説明図である。
【図2】クロム含有スラグの表面温度と昇温還元反応時
間指数、及び、熱効率指数との関係を示す特性図であ
る。
【図3】溶銑の装入速度及びクロム含有スラグの温度に
起因するクロム含有スラグのフォーミング高さ指数を示
す特性図である。
【符号の説明】
10 上底吹転炉 10a 装入口 10b 出鋼口 10c ガス送
気用羽口 10d ガス送気管 11 取鍋 12 ランス 13 クロム含
有スラグ 13a クロム還元回収済スラグ 13b フェロクロム合金やフラックス 14 溶銑 14a 溶銑又
は溶鋼 14b 溶鋼
フロントページの続き (72)発明者 加藤 勝彦 福岡県北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新 日本製鐵株式会社八幡製鐵所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 前チャージの脱炭工程で生成されたクロ
    ム含有スラグを精錬炉内に残存させたまま、次チャージ
    用の溶銑を装入した後、該溶銑及び前記クロム含有スラ
    グを吹酸昇温して、少なくとも前記クロム含有スラグ中
    のクロム分を前記溶銑中に還元回収するクロム還元回収
    工程と、該クロム還元回収工程で前記溶銑中に前記クロ
    ム分が還元回収されてなるクロム還元回収済スラグを排
    滓する中間排滓工程と、少なくとも該中間排滓工程で前
    記精錬炉内に残存された溶銑中の炭素を脱炭する前記脱
    炭工程とを有し、かつ、前記クロム還元回収工程で前記
    精錬炉内に前チャージの前記脱炭工程で生成された前記
    クロム含有スラグを残存させたまま、前記溶銑及び前記
    クロム含有スラグの反応に起因する突沸が生じないよう
    に、次チャージ用の前記溶銑を装入することを特徴とす
    るクロム含有スラグを用いたステンレス鋼の精錬方法。
  2. 【請求項2】 前記クロム還元回収工程で、前記精錬炉
    内に残存される前記クロム含有スラグを、強制冷却する
    ことなく、所定の顕熱を有する状態で保持したことを特
    徴とする請求項1記載のクロム含有スラグを用いたステ
    ンレス鋼の精錬方法。
  3. 【請求項3】 前記クロム還元回収工程で、前記精錬炉
    内に残存される前記クロム含有スラグの温度、前記クロ
    ム含有スラグ中に含有される総FeO含有量、前記クロ
    ム含有スラグの固相率、前記精錬炉内に装入される前記
    溶銑の温度、前記溶銑の装入速度の内少なくとも1以上
    制御して、前記突沸を防止したことを特徴とする請求項
    1又は2記載のクロム含有スラグを用いたステンレス鋼
    の精錬方法。
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