JP3509072B2 - 製鉄・製鋼法 - Google Patents

製鉄・製鋼法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸化鉄(鉄鉱石
等)を炭素質還元剤(炭材等)と共に加熱還元して金属
鉄を製造する製鉄法および製鋼法の改良技術に関し、特
に、炭素質還元剤を内装した酸化鉄含有成形体(ペレッ
トやブリケット等)を固形状態で加熱還元した後、これ
を更に還元溶融して溶融鉄を製造する際に、加熱還元か
ら還元溶融に渡る一連の工程の熱効率を高めると共に、
脈石成分の分離を効率よく遂行できる様に改善された製
鉄法および製鋼法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鉄鉱石や酸化鉄ペレット等の酸化鉄を炭
材や還元性ガスにより直接還元して還元鉄を製造する直
接製鉄法としては、従来よりミドレックス法に代表され
るシャフト炉法が知られている。この種の直接製鉄法
は、天然ガス等から製造される還元ガスをシャフト炉下
部の羽口より吹込み、その還元力を利用し酸化鉄を還元
して還元鉄を得る方法である。また最近では、天然ガス
に代わる還元剤として石炭等の炭材を使用する還元鉄製
造プロセスが注目されており、具体的には、鉄鉱石等の
焼成ペレットを石炭粉と共にロータリーキルンで加熱還
元する所謂SL/RN法が既に実用化されている。
【0003】また他の製鉄法として米国特許第3,44
3,931号には、炭材と粉状酸化鉄を混合して塊状化
し、ロータリーハース上で加熱還元して還元鉄を製造す
るプロセスが開示されている。このプロセスでは、粉鉱
石と粉炭を混合して塊状化し、これを高温雰囲気下で加
熱還元するものである。
【0004】これらの方法で製造された還元鉄は、その
まま或はブリケット状などに成形してから常温で電気炉
へ装入し、鉄源として利用される。この還元鉄はトラン
プエレメント等の不純金属成分の含有量が少ないので、
鉄スクラップのリサイクルが活発化している近年におい
ては、この還元鉄はスクラップ中に混入してくるトラン
プエレメントの希釈材として注目されている。
【0005】ところが従来の還元製鉄法によって得られ
る還元鉄には、原料として用いた酸化鉄(鉄鉱石など)
や炭材(石炭など)に脈石成分として含まれるSi
2,Al23,CaO等のスラグ成分がそのまま混入
してくるため、製品の鉄品位(金属鉄としての純度)が
低くなる。実用に当たっては、これらのスラグ成分は次
の製錬工程で分離除去されるが、スラグ量の増加は製錬
溶融鉄の歩留りを低下させるばかりでなく、電気炉の操
業コストにも大きな悪影響を及ぼすので、鉄品位が高く
スラグ成分含有量の少ない還元鉄が求められるが、前述
の如き従来の還元鉄の製法でこうした要求に応えるに
は、還元鉄製造原料として鉄品位の高い鉄鉱石を使用し
なければならず、実用可能な製鉄原料の選択の幅を大幅
に狭めることになる。
【0006】更に上記の様な従来法は、還元された固体
製品を中間製品として得ることを最終の目的としてお
り、実用化に当たっては次の工程となる精錬工程へ送る
までにブリケット化、冷却、搬送、貯蔵といった工程が
必要となり、この間に大きなエネルギー損失が生じた
り、ブリケット化のために余分の設備やエネルギーが必
要になってくる。
【0007】他方、酸化鉄を直接還元して予備還元鉄を
得る方法としてDIOS法などの溶融還元法も知られて
いる。この方法は、酸化鉄を予め鉄純度で30〜50%
程度まで予備還元しておき、その後、鉄浴中で炭材およ
び/または一酸化炭素と直接還元反応させることによっ
て金属鉄にまで還元してから溶融する方法であるが、こ
の方法では、予備還元工程に必要な還元性ガスを溶融炉
で生成して予備還元炉へ導入するリサイクルシステムを
構築しているため、プロセスのバランスを図るのが煩雑
で且つ非常に困難となる。しかも、鉄浴中に存在する溶
融酸化鉄(FeO)と耐火物が溶融状態で直接接触する
ため、耐火物の損耗が激しいという問題も指摘される。
【0008】更に他の方法として特公平3−60883
号公報には、粉末状の鉄鉱石と炭材を混合して団塊状に
成形した成形体を回転炉型の加熱炉で予備還元した後、
得られる予備還元物を冷却することなく溶融炉へ装入し
て溶融させ、これに炭材を加えて還元を進め、更に酸素
吹込みにより精錬を行う製鉄法が開示されている。この
方法は、予備還元物を冷却することなく溶融炉へ送って
還元・精錬を行う方法であるから、熱エネルギーのロス
が少なく且つ連続操業が可能で生産性の上でも有効な方
法と考えられる。
【0009】この製鉄法では、加熱および精錬のため溶
融炉内に多量の炭材と共に酸素(あるいは空気)が吹き
込まれる。そして、該溶融炉へ送り込まれる前記予備還
元物の中には、前述の如く鉄鉱石や炭材中の脈石成分が
スラグ形成成分として多量含まれているため、該溶融炉
内では溶融鉄の湯面上に多量のスラグが浮遊した状態で
激しい撹拌状態に曝されるが、該スラグ中には未還元状
態の酸化鉄(FeO)が多量混入しているため、内張り
耐火物が著しく溶損されるという実用上重大な問題を生
じるので、工業規模での実用化は期し難い。
【0010】いずれにしても、上流側の予備還元炉で必
要となる十分な還元ポレンシャルを持った還元性ガスを
溶融炉で確保するには、該溶融炉に多量の酸素と炭材
[数百kg/tmi(mi:製造される溶融鉄)]を補
給してこれらを燃焼させなければならないので、溶融炉
の熱負荷は非常に大きく、しかも溶融鉄とスラグの激し
い攪拌により、内張り耐火物は激しい溶損を受ける。更
に、予備還元炉で必要となる適正な組成と量の還元性ガ
スを安定して供給するのに、設備全体としてのバランス
を取る為の制御が非常に煩雑で高度の制御システムが必
要となる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたものであって、その目的は、鉄成
分含有量の高い酸化鉄源はもとより、鉄成分含有量の比
較的低い鉄鉱石などからであっても、耐火物の溶損を生
じることなく且つ高いエネルギー効率および還元効率
で、しかも簡単な設備および操作で効率よく溶融鉄を得
ることのできる製鉄法、更にはこの方法によって得られ
る還元鉄を用いた製鋼法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係る製鉄法とは、炭素質還元剤を内装
した酸化鉄含有成形体を主原料とする還元鉄製造設備に
より製造される高温の固形還元鉄を、実質的に冷却する
ことなくアーク加熱式溶解炉へ供給し、該溶解炉で加熱
して溶融鉄を得る製鉄法であって、前記固形還元鉄の金
属化率を60%以上に進めると共に、該固形還元鉄内の
炭素分含有量を、該固形還元鉄内に残存する酸化鉄を還
元するのに必要な理論当量に対し50%以上、該固形還
元鉄の比重を1.7以上に制御し、該固形還元鉄を、前
記アーク加熱式溶解炉で加熱することにより、炭素含有
量1.5〜4.5%の溶融鉄を得るところに要旨を有し
ている。
【0013】上記本発明を実施するに当たっては、上記
アーク加熱式溶解炉の内張り耐火物の溶損を最小限に抑
えつつ溶融還元を効率よく進めるため、前記固形還元鉄
を、前記アーク加熱式溶解炉内の溶融スラグ上へ装入し
て加熱溶解することとし、該溶融スラグの塩基度を1.
0〜1.8の範囲に制御するのがよく、且つ該溶融スラ
グ中の酸化鉄成分含量は、Fe換算で9%以下、更に好
ましくは5%以下に抑えることが望ましい。
【0014】また、上記アーク加熱式溶解炉において、
不足分の炭素質還元剤を追加装入する際には、前記固形
還元鉄の添加位置に向けて該炭素質還元剤を添加するこ
とにより、溶融還元を一層効率よく進めることができる
ので望ましい。
【0015】また、上記アーク加熱式溶解炉内に追加装
入される炭素質還元剤の装入量は、溶融還元によって得
られる還元鉄中の炭素含有量を本発明で定める上記1.
5〜4.5%の範囲に納める上で重要となるが、該炭素
質還元剤の追加装入量の調整法としては、前記アーク
加熱式溶解炉中の溶融鉄を採取し、該溶融鉄を直接分析
してその炭素含有量が上記範囲となる様に炭素質還元剤
の添加量を調整する方法、あるいは前記アーク加熱式
溶解炉から排出される排ガス組成と排出量を測定し、該
測定値から算出される排ガスの酸素当量に基づいて、溶
融鉄の炭素含有量を計算によって求め、炭素質還元剤の
添加量を調整する方法が好ましい方法として推奨され
る。
【0016】更に本発明においては、追って詳述する如
く溶融鉄の炭素含有量が上記範囲内となる様に制御する
ところに大きな技術的特徴を有しているが、この溶融鉄
は、Si含有量が0.05%以下、Mn含有量が0.1
%以下、P含有量が0.1%以下、S含有量が0.20
%以下のものとして得ることができ、これを後述する様
な方法で脱硫、脱燐処理を行なうと、S含有量は0.0
50%程度以下、P含有量は0.040%程度以下に低
減し、電気炉(以下、EAFと略記する)や転炉(以
下、BOFと略記する)などの製鋼原料として有用な不
純物含量の少ない溶融鉄として得ることができる。
【0017】ここで採用される脱硫および/または脱燐
法としては以下の方法が推奨される。前記アーク加熱式
溶解炉で溶解された溶融鉄を別容器に移し、石灰系の脱
流用フラックスを添加(もしくはガスと共にインジェク
ション)して脱硫し、及び/又は、固体酸素源(酸化鉄
など)を含む石灰系フラックスと気体酸素を吹き込んで
脱燐する方法。
【0018】なお本発明の方法では、高炉製鉄法に比べ
て鉄鉱石等の酸化鉄源を還元する際の還元ポテンシャル
が低く、脈石成分中のSiO2は還元を受けることなく
SiO2としてスラグ化する。従って、得られる溶融鉄
のSi含有量は低い(0.05%以下)ので格別の脱珪
処理は必要とされない。しかも該溶融鉄中のSi含有量
は低いので、予備脱珪等を全く要することなく、上記の
様な脱燐処理によって容易に低P溶融鉄を得ることがで
きるのである。
【0019】かくして得られる不純物含量の低減された
溶融鉄は、隣接して設けたEAFあるいはBOF等へ溶
融状態のままで製鋼原料として供給することにより製鉄
・製鋼一貫法として実用化することができるし、あるい
は製造した溶融鉄を一旦炉外へ排出し、冷却凝固した金
属状鉄をEAFあるいはBOF等へ製鋼原料として供給
することもできる。特に、上記方法で製造された不純物
含量の少ない高温の溶融鉄を溶融状態のままでEAFや
BOFへ製鋼原料として供給して製鋼を行う方法を採用
すれば、溶融鉄が保有する熱エネルギーを精錬のための
熱源として有効に活用できるので、経済的にも極めて有
効な方法として推奨される。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、一実施例を示す全体フロー
図によって本発明の全体構成を概説する。そして個々の
工程について条件等を定めた理由を詳細に説明する。
【0021】図1は、本発明に係る製鉄法および製鉄/
製鋼一貫法を示す概略フロー図であり、図中において原
料成形体製造部1、還元鉄製造設備2、アーク加熱式溶
解炉3、製鋼炉4を夫々示す。矢印Aで示す一連の工程
は、製鉄(還元鉄の製造)法に相当し、矢印Bで示す工
程は、製鋼法に相当する。
【0022】まず製鉄法においては、原料成形体製造部
1で、鉄鉱石等の酸化鉄源と石炭粉やコークス粉等の炭
素質還元剤の粉末を原料として、炭材内装酸化鉄含有成
形体(ペレットやブリケットなど)の製造が行われ、そ
して製造された該成形体は逐次還元鉄製造設備2へ送り
込まれる。該還元鉄製造設備2としては、要は炭材内装
酸化鉄含有成形体(以下、単に成形体ということがあ
る)を加熱し、実質的に固形状態を保ったままで内装炭
材の還元力およびその燃焼によって生じるCOガスの還
元力により成形体内の酸化鉄分の還元を進める機能を備
えたものであればよい。例えばロータリーキルン型や回
転炉床型など任意の構造の物を使用することができる。
この設備2には上記成形体の移送手段が設けられる他、
バーナ等の加熱源、燃焼用酸素供給部、必要によっては
還元性ガス供給部、更には温度計や温度制御手段などを
組み込んで還元進行状態を適宜制御できる様にした構造
のものが用いられる。図1では、回転炉床型のもので、
装入部2aから装入された成形体を回転炉床の移動に伴
って移動させながら加熱還元し、所定の還元率に達した
時点で逐次排出部2bから固形状態のままで排出する構
成のものを示している。
【0023】上記還元鉄製造設備2で還元を受けて排出
される固形還元鉄は、実質的に冷却することなく引き続
いてアーク加熱式溶解炉3へ送り込まれ、該溶解炉3に
おいて成形体中に未還元状態で残存する酸化鉄の加熱還
元が進められると共に、還元鉄の溶解が同時に行われ
る。なお上記還元鉄製造設備2から排出される固形還元
鉄は通常700〜1300℃程度の熱を保有しており、
この熱は実質的にそのままアーク加熱式溶解炉3の熱源
として利用されるので、アーク加熱のための消費エネル
ギー低減に寄与できる。
【0024】ここで用いられるアーク加熱式溶解炉3
は、アーク熱を利用して溶融鉄を強制撹拌することなく
加熱し、内張り耐火物の溶損を可及的に抑えつつ還元と
溶解を効率よく進める機能を有しており、そしてアーク
には、溶解炉3内の溶鉄に浮上するスラグ内に電極3a
を装入して通電することにより生じるサブマージアーク
が含まれる。そして、アーク加熱式溶解炉3へ装入され
る前記固形還元鉄がアーク熱を受けて速やかに還元され
且つ溶解する様、アーク加熱部(即ち、電極3aの挿入
部)付近に原料(固形還元鉄)装入部3bが設けられ
る。また炭素質還元剤の追加装入部3cは、固形還元鉄
の装入位置に向けて設けられている。
【0025】そして該アーク加熱式溶解炉3では、装入
された固形還元鉄Aの還元と溶融によって溶融鉄(溶融
金属または溶融鉄ということもある)が生成し、これ
は、その前に既に生成し滞留している溶融鉄に逐次取り
込まれ、固形還元鉄A内に共存している脈石成分は、溶
融スラグとなり湯面上に浮遊している溶融スラグに合流
していく。従って、該アーク加熱式溶解炉3内に溶融鉄
や溶融スラグが所定量溜った時点で、適宜該溶解炉3の
側壁下方位置から溶融鉄を逐次抜き出すか、また溶融ス
ラグと溶融鉄の界面位置よりやや上方から溶融スラグを
適宜抜き出していけばよい。
【0026】得られた溶融金属鉄は、必要により脱硫、
脱燐等の清浄化処理を行った後、製鋼炉4へ製鋼原料と
して送り込まれる。製鋼炉4としては、EAF4aまた
はBOF4b等が使用され、この部分で鉄スクラップや
銑鉄等と混合して精錬処理が行われる。このとき、アー
ク加熱式溶解炉3に隣接して製鋼炉4を配置しておけ
ば、高温の溶融還元鉄を実質的に降温させることなく製
鋼炉4の原料として供給することができ、それにより溶
融還元鉄の保有熱をそのまま精錬のための熱源として利
用できるので熱効率上最も好ましい。場合によっては、
アーク加熱式溶解炉3で得た溶融還元鉄を一旦鋳型等に
受けて冷却固化し、中間製鋼原料として商品化したり、
或は離れた位置の製鋼炉へ製鋼原料として送ることも可
能である。
【0027】本発明によって得られる溶融還元鉄は、前
にも述べた様にスクラップに比べて異種金属元素の混入
量が極めて少ないので、スクラップと適量併用すること
によりスクラップ中の不純金属元素の希釈剤として有効
に活用することができる。
【0028】本発明における基本的な工程は上記の通り
であるが、こうした工程を工業的規模で効率よく実施す
るには、上記還元鉄製造設備における固形還元鉄の金属
化率、該固形還元鉄内の炭素分含量、該固形還元鉄の比
重等の調整が極めて重要になる他、アーク加熱式溶解炉
3により溶融還元することによって製造される溶融鉄の
炭素含有量を適正に制御することが極めて重要となる。
以下、それらについて詳述する。
【0029】まず、還元鉄製造設備2へ供給される酸化
鉄含有成形体の成形に当たっては、成形原料として鉄鉱
石等の酸化鉄源と石炭やコークス等の炭素質還元剤の各
粉末を、必要により適量のバインダーと共に混練し、該
混練物を任意の造粒装置やペレタイザー等を用いて任意
の形状に成形し、必要により予備焼成したものが使用さ
れる。該成形体の製造に当たっては、還元鉄製造設備2
における還元を効率よく進めるため、酸化鉄源中に含ま
れる酸化鉄に対し、酸化鉄を還元するのに必要な理論当
量と、還元鉄製造設備の還元反応特性を考慮し、目標の
残留炭素量を得るのに必要な炭素質還元剤を酸化鉄源と
共に混合することが望ましい。なお本発明法の安定操業
を遂行する上で重要となる「金属化率60%以上」の固
形還元鉄を得るには、予め設定された目標の金属化率の
還元鉄を得るのに必要な炭材を配合し、還元炉の雰囲気
温度や反応時間などを適正に制御すればよい。
【0030】次に本発明においては、上記の様に還元鉄
製造設備2における予備還元工程でで得られる固形還元
鉄の金属化率を60%以上に進めておくことが重要な要
件となる。即ち、該還元鉄製造設備2による予備還元か
ら次工程のアーク加熱式溶解炉3による溶融還元を一貫
プロセスとして安定に効率よく遂行するには、還元鉄製
造設備2からアーク加熱式溶解炉3へ供給される固形還
元鉄の金属化率のバラツキを最小限に抑えることが肝要
である。該金属化率が大幅に変動すると、上記溶解炉3
で追加投入される炭素質還元剤の添加量や加熱条件など
の操業条件の制御が困難となり、ひいては固形還元鉄の
速やかな溶融還元が困難になるばかりでなく、溶融還元
鉄中の炭素含有量の制御も難しくなるからである。
【0031】即ちアーク加熱式溶解炉3へ供給される固
形還元鉄の金属化率が60%未満では、該固形還元鉄中
に残存している未還元酸化鉄の還元に要する反応熱(吸
熱反応)を補償するため、溶解炉3で大量の熱を補給し
なければならなくなる。具体的にはアーク加熱用の電極
に大量の電力を供給しなければならず、該溶解炉の還元
負荷が著しく増大するばかりでなく、該溶解炉3の内張
り耐火物の溶損も激しくなり、該溶解炉3の極端な寿命
短縮を招くことになり、工業的規模での実用化が困難に
なるからである。ところが、固形還元鉄の金属化率を6
0%以上、好ましくは70%以上に高めておけば、アー
ク加熱式溶解炉3における過度の還元負荷を生じること
がなく、上記の様な問題が回避されて円滑な溶融還元を
遂行することが可能となる。
【0032】還元鉄製造設備2で得られる固形還元鉄の
金属化率を60%以上に高めるための具体的手段は特に
制限されず、原料成形体を製造する際の炭素質還元剤の
配合量(酸化鉄分に対する当量比)を適正に調整し、ま
た還元鉄製造設備2における予備還元条件(温度、還元
ポテンシャル、処理時間など)を適正に制御すればよ
い。これらの条件については、予備実験でそれらの条件
と金属化率の関係を予め調べておいてこれを実操業に適
用すれば、大幅なバラツキを生じることなく所定の金属
化率を容易に確保することができる。
【0033】またアーク加熱式溶解炉3へ供給される固
形還元鉄は、上記金属化率に加えて、該固形還元鉄の比
重を1.7以上にすると共に、該固形還元鉄内の炭素分
含有量を、該固形還元鉄内に残存する酸化鉄を還元する
のに必要な理論当量に対して50%以上とすることが重
要となる。
【0034】上記要件を定めた理由は以下の通りであ
る。即ち、アーク加熱式溶解炉3内に装入される固形還
元鉄Aは、例えば図2(模式図)に示す如く、該溶解炉
3内で既に生成し溶融鉄上に浮上している溶融スラグS
上に投入される。この固形還元鉄Aをアーク熱によって
効率よく加熱して還元を速やかに進めるには、該固形還
元鉄Aが溶融スラグS内に潜り込んで全面から熱を受け
る様にする必要がある。そして種々実験の結果、この様
に固形還元鉄Aを速やかに溶融スラグS内に潜り込ませ
て速やかに還元を進めるには、該固形還元鉄Aの比重を
1.7以上とし、且つ固形還元鉄A内の炭素分含有量
を、該固形還元鉄A内に残存する酸化鉄を還元するのに
必要な理論当量に対して50%以上とすればよいことが
確認された。
【0035】溶融スラグの一般的な比重は2.4〜2.
7程度であるが、比重1.8程度の固形還元鉄Aが該溶
融スラグS内に潜り込む理由は次の様に考えている。即
ち、溶解炉3内の溶融スラグS上に装入された固形還元
鉄Aは、該溶融スラグSの表面部からの熱を受け、内部
に残存する炭素質還元剤によって生じる還元反応によ
り、該固形還元鉄Aの周りに主にCOガスと若干量のC
2ガスが発生し、これらが泡状となって溶融スラグS
内へ混入して泡立ち(図2A参照)、溶融スラグSの比
重は低下していく。そして、該固形還元鉄Aが溶融スラ
グS内に更に沈み込んでいくと(図2B)、固形還元鉄
Aから発生する前記ガスは更に多くなって溶融スラグS
の発泡は一層激しくなる。その比重は更に低くなって固
形還元鉄Aは更に溶融スラグS内に沈み込み、固形還元
鉄A全体が沈み込んだ時点以降は、該還元鉄Aはその全
面から溶融スラグSからの熱を受け(図2C)、固形還
元鉄Aは速やかに還元されると共に溶融する。そして、
溶融した鉄分は溶融鉄Feに逐次取り込まれると共に、
副生するスラグ成分は逐次溶融スラグS中に取り込まれ
ていく。
【0036】このとき、固形還元鉄の比重が1.7未満
である場合は、前記図2Aに示した如くアーク加熱式溶
解炉3内の溶融スラグS上に投入された固形還元鉄A
が、溶融スラグS上に浮上したままで溶融スラグS内に
沈み込まなくなり、溶融スラグSとの接触面積が少なく
なって加熱効率が低下し、還元反応速度が遅くなって処
理時間が長くなる。その結果として生産性が著しく低下
し、工業的且つ経済的な実用化が困難となる。
【0037】ところが、固形還元鉄Aの比重が1.7以
上、より好ましくは1.8以上、更に好ましくは1.9
以上である場合は、上記図2B,2Cで示した如く溶融
スラグS上に装入された固形還元鉄Aは比重差で極く短
時間のうちに溶融スラグS内に沈み込み、全面で溶融ス
ラグSの熱を受けて加熱還元が速やかに進行するため、
還元効率が著しく向上して速やかに還元反応が完了す
る。その一方では、溶融スラグSへの酸化鉄の溶解量も
最小限に抑えられ、内張り耐火物の溶損も最小限に抑え
られることになる。
【0038】固形還元鉄Aの還元効率は、上記の様に溶
融スラグSを経て伝えられるアーク熱の伝熱効率が極め
て重要となる。たとえ比重が適正であっても、該固形還
元鉄A中に含まれる炭素質還元剤の量が不足する場合
は、満足のいく還元効率は得られない。しかして該溶解
炉3では、還元に必要な炭素質還元剤を固形還元鉄Aと
は別に追加投入することも可能であるが、追加投入され
る炭素質還元剤はあくまでも固形還元鉄Aの周辺に供給
されるだけであって、固形還元鉄Aの内部まで侵入して
いくわけではなく、固形還元鉄Aが溶融しない限りその
還元力は有効に発揮されず、固形還元鉄A内における還
元速度は当該固形還元鉄A内に存在する炭素質還元剤の
量に依存する。
【0039】こうした観点から、溶解炉3内に投入され
た固形還元鉄Aの加熱還元を短時間で効率よく進めるた
めの他の要件として、当該固形還元鉄A内に含まれる炭
素質還元剤の量について検討した結果、当該固形還元鉄
A内の炭素分含有量を、該固形還元鉄A内に残存する酸
化鉄を還元するのに必要な理論当量に対し50%以上、
より好ましくは70%以上にしてやれば、固形還元鉄A
内で未還元酸化鉄の還元が外部からの熱を受けて速やか
に進行し、高い還元溶融効率が得られることを知った。
【0040】なお上記炭素分含有量は100%以上にす
ることが最善であるが、炭素分含有量に50%程度の不
足分があっても、該不足分の炭素分については別途炭素
質還元剤を追加投入することによって、固形還元鉄Aの
溶融により流出してくる未還元状態の酸化鉄は速やかに
還元されるので、実用上の障害は殆んど生じないことを
確認している。従って、アーク加熱式溶解炉3へ供給さ
れる固形還元鉄A内の炭素分含有量が、未還元状態で残
存する酸化鉄の還元に必要な理論当量に対し100%に
満たない場合は、不足分の炭素分は、別途炭素質還元剤
として固形還元鉄Aの投入部近辺に追加投入すればよ
い。
【0041】上記還元鉄製造設備で製造される固形還元
鉄の比重は、還元鉄製造設備へ供給される原料の性状や
配合率、更には該還元鉄製造設備における還元条件(特
に雰囲気温度や時間)などにより変わってくるので、こ
れらの条件と比重の関係を予備実験によって予め確認し
ておき、それらに応じて適正な条件設定を行なえばよ
い。
【0042】また、当該固形還元鉄中の残存炭素量を調
整するには、還元鉄製造設備における還元特性を十分に
把握した上で、配合原料の銘柄やその組成からそれらの
還元反応特性を考慮に入れて配合量を決定し、加熱還元
条件(温度、時間、雰囲気ガス組成など)を適正に制御
すればよい。
【0043】次に、上記アーク加熱式溶解炉3によって
得られる溶融還元鉄Aの酸素含有量を1.5〜4.5%
の範囲に設定した理由について説明する。
【0044】炭素質還元剤の内装された酸化鉄含有成形
体から製造された還元鉄の場合、通常は石炭等の炭素質
還元剤に含まれる硫黄分のうち約70%が還元鉄内に残
留する。そして、この還元鉄を溶解炉で溶解する場合、
特に低金属化率の還元鉄を溶解するときは、溶解炉内で
の脱硫は殆んど期待できず、そのため、溶解炉内へ持ち
込まれた硫黄分の大部分は溶鉄内へ移行し、高Sの溶融
鉄が製造されることになる。
【0045】該溶融鉄中の硫黄分は、溶解炉から出湯し
た後取鍋内で主に石灰系フラックスを用いて脱硫するこ
とができる。ところが、溶融鉄中の炭素含有量[C]が
1.5%未満になると、溶融鉄中に平衡状態で存在する
酸素濃度[O]レベルが高くなるため、その後の脱硫効
率が著しく阻害される。従って、脱硫効率を高めて低S
の溶融鉄の製造を容易にするには、前記アーク加熱式溶
解炉3によって製造される溶融鉄の[C]を1.5%以
上に高めておくことが必要となる。ただし、該溶融鉄中
の[C]は4.5%付近でほぼ飽和状態となり、飽和
[C]の溶融鉄を安定して得るにはかなり過剰量の炭素
質還元剤を溶解炉内へ投入し、該炉内のスラグ中に炭素
質還元剤を常時10%程度以上存在させることが必要と
なり、炭素質還元剤に要する費用が高騰するばかりでな
く、その後の精錬時における脱炭負荷も増大するので好
ましくない。操業安定性を高める上で特に好ましい該溶
融鉄の炭素含有量の下限は2.0%、好ましい上限は
3.5%である。
【0046】アーク加熱式溶解炉9によって製造される
溶融鉄中の炭素量を上記1.5〜4.5%の範囲に制御
するための具体的な方法は特に制限されず、こうした炭
素量を確保するための最適条件(原料成形体を製造する
際の内装炭材量、還元鉄製造設備での予備還元条件、ア
ーク加熱式溶解炉での炭素質還元剤の追加投入量や操業
条件など)を予備実験により予め設定しておき、設定さ
れた条件で操業を行うことも可能であるが、上記成形体
の原料となる酸化鉄源や炭素質還元剤の品質等は必ずし
も安定しておらず、かなり変動するのが普通であるか
ら、こうした変動要因にも拘らず前記適正範囲で安定し
た炭素含有量の溶融鉄を得るには、例えば次の様な方法
を採用することが望ましい。
【0047】アーク加熱式溶解炉内の溶融鉄を採取
し、該溶融鉄を分析して溶融鉄中の炭素量を実測しなが
ら炭素質還元剤の添加量を調整し、該溶融鉄中の炭素含
有量を適正範囲に調整する方法。
【0048】アーク加熱式溶解炉から排出される排ガ
ス組成と排出量を測定し、該測定値から算出される排ガ
スの酸素当量から溶融鉄中の炭素含有量を計算によって
求め、該炭素含有量に応じて追加投入する炭素質還元剤
の量を調整する方法。
【0049】ところで上記アーク加熱式溶解炉で固形還
元鉄の還元を進めると共に溶解させる際には、該固形還
元鉄中の脈石成分に由来して生成する溶融スラグが湯面
上に浮上する。該溶融スラグの塩基度と酸化鉄含有量を
適正に制御することは、該溶解炉内での還元効率や溶融
スラグの分離効率を高めたり、溶解炉の内張り耐火物の
溶損を抑えるうえで実用上極めて有効である。本発明を
実施する際には、該溶融スラグの塩基度を1.0〜1.
8(より好ましい下限は1.1、より好ましい上限は
1.5)の範囲に調整すると共に、該溶融スラグ中のト
ータル鉄分(T.Fe)、(鉄酸化物として存在する鉄
分の合計量)を9%以下、より好ましくは5%以下に制
御することが望ましい。
【0050】スラグ塩基度は、スラグ性状を特徴付ける
基本的且つ代表的な特性の1つで、溶融スラグ中に含ま
れる代表的な成分であるCaOとSiO2の比、即ち
(CaO)/(SiO2)で表される。溶融スラグの塩
基度が1.8を超えるとスラグの融点が急上昇して流動
性が低下し、溶融鉄温度を故意に高くしない限り溶解炉
内での還元と溶解が円滑に進行しにくくなり、また該塩
基度が1.0未満になると内張り耐火物の溶損が激しく
なる。また溶解炉の内張り耐火物の溶損は、溶融スラグ
中の酸化鉄量が多くなるほど激しくなる。こうした傾向
は溶融スラグの(T.Fe)が9%を超えると顕著に現
れてくる。従って、該溶解炉における固形還元鉄の還元
と溶解を短時間で効率よく進めると共に内張り耐火物の
溶損を最小限に抑えて溶解炉の寿命延長を図るには、ア
ーク加熱式溶解炉による固形還元鉄の還元・溶解工程で
適宜溶融スラグを採取してその塩基度や(T.Fe)量
を測定し、スラグ塩基度調整剤(CaOやSiO2)を
添加してスラグ塩基度を適正範囲に調整し、或は炭素質
還元剤の追加投入量を調整して溶融スラグ中の(T.F
e)量を抑えることが望まれる。
【0051】上記の様にして、アーク加熱式溶解炉3で
還元し溶融することにより、炭素含有量が1.5〜4.
5%でSi含有量が0.05%程度以下の溶融鉄として
得ることができ、これは、先に図1で説明した様に、溶
融鉄中の[C]量によって若干異なるが、概1350℃
程度以上の熱を保有した溶融状態のままでEAFやBO
F等の製鋼炉へ供給し、あるいは一旦鋳型に取り出し冷
却固化させてから、製鋼用の中間製品として利用するこ
とができる。しかしながら、上記で得られる溶融鉄の中
には多量の硫黄や燐が含まれているので、好ましくは製
鋼工程へ送るまでにこれらの硫黄や燐を除去しておくこ
とが望ましい。
【0052】そのために採用される好ましい脱硫法とし
ては、上記溶解炉3で製造した溶融鉄を取鍋等に出湯
し、これに脱硫用として新たに石灰系フラックスを添加
し、好ましくは溶融鉄内に浸漬した吹込みランスを用い
て石灰系フラックスを不活性ガスと共に溶融鉄内へイン
ジェクションし、該フラックスにより硫黄を捕捉してス
ラグとして湯面上に分離除去する方法が例示される。ま
た好ましい脱燐法としては、取鍋などに出湯した溶融鉄
に、石灰系フラックスと共に固体酸素源(酸化鉄など)
或は気体酸素源(酸素や空気など)を供給し、燐成分を
優先的に酸化しフラックスに捕捉させて溶融鉄上に浮上
分離する方法、等が例示される。これら脱硫法や脱燐法
は制限的でなく、公知の他の脱硫・脱燐法を採用するこ
とも勿論可能である。しかし後者の脱燐法を採用すれ
ば、公知の高炉溶銑とは異なり、溶解炉で製造される溶
融鉄の[Si]は前述の如く0.05%以下と低く、特
別の脱珪処理をせずとも高い脱燐率を確保できるので好
ましい。
【0053】これら脱硫・脱燐処理を行うと、[C]:
1.5〜4.5%、[Si]:0.05%程度以下、
[Mn]:0.1%程度以下、[S]:0.05%程度
以下、[P]:0.04%程度以下で、残部は実質的に
Feからなる高純度の還元鉄として得ることができ、製
鋼原料として極めて有効に活用することができる。特に
この方法によって得られる溶融鉄は鉄分純度が高く、他
の不純金属成分の含有量が非常に少ないので、これを製
鋼原料として例えば20〜50%程度を他の鉄源(スク
ラップや銑鉄など)と併用すれば、スクラップ等から混
入してくる不純金属元素の希釈材として作用し、不純金
属元素含有量の少ない鋼を得ることが可能となる。勿
論、併用されるスクラップ中の不純金属元素含有量によ
っては、該還元鉄の併用比率を上記範囲以外から選定す
ることもできるし、あるいは該還元鉄100%使用で鉄
分純度の高い鋼の製造を行うことも有効であり、更に
は、EAFやBOFを用いた製鋼工程の末期に他の金属
元素を積極的に添加し、合金鋼を製造することも可能で
ある。
【0054】いずれにしても、本発明の方法によって得
られる上記還元鉄は、不純金属元素の含有量が非常に少
ないという大きな特徴を有しているので、こうした特徴
を生かして鋼や各種合金鋼の製造に幅広く活用すること
ができる。
【0055】次に、本発明で定める“固形還元鉄の金属
化率:60%以上”、“該固形還元鉄内の炭素分含有
量:該固形還元鉄内に残存する酸化鉄を還元するのに必
要な理論当量(以下、FeO還元当量炭素量ということ
がある)の50%以上”、“該固形還元鉄の比重:1.
7以上”、“アーク加熱式溶解炉で製造される溶融鉄の
炭素含有量:1.5〜4.5”にそれぞれ定めた根拠に
ついて、更に詳しく説明を加えておく。
【0056】“固形還元鉄の金属化率:60%以上”に
定めた根拠 還元鉄製造設備で製造される固形還元鉄の金属化率曲線
は、配合される酸化鉄原料や炭素質還元剤の組成や配合
率、更には還元条件によって変わる。該金属化率曲線は
例えば図3に示す様な傾向を示す。
【0057】即ち図3の曲線におけるA点は、金属化
率76%、残留炭素量4.8%の点を示し、B点は、金
属化率85%、残留炭素量1.6%の点を示している。
残留炭素量は、FeO還元当量炭素量に対してA点では
142%、B点では63.5%となり、還元時間の経過
につれて残留炭素量は減少していく。図3における曲線
は、原料配合等を変えて固形還元鉄の金属化率を低め
に抑えた例である。いずれにしても、金属化率は還元時
間の進行につれて最初は急激に立ち上がり、時間が経過
して金属化率が高くなるにつれて上昇カーブは緩やかに
なってくる。
【0058】ところで、本発明で採用される固形還元鉄
の製造とその還元溶解の連続プロセスでは、還元鉄製造
設備で製造される固形還元鉄の金属化率が、アーク加熱
式溶解炉(以下、アーク溶解炉という)の操業性に顕著
な影響を及ぼす。例えば図4は、固形還元鉄の金属化率
と、アーク溶解炉における未還元酸化鉄の還元・溶解に
消費される電力原単位との関係を示したグラフである。
還元鉄製造設備とアーク溶解炉の連続操業を行なう際に
は、アーク溶解炉の安定操業を確保することが重要であ
り、該アーク溶解炉に供給される電力の増大に伴って必
然的に電極による熱供給負荷が増大し、溶解炉の内張り
耐火物に与える熱衝撃が大きくなる。このため、電極装
置や炉壁への熱衝撃を減らすため炉体を大型とせざるを
得なくなり、経済的にも実用的にも劣るものとなる。
【0059】通常のアーク溶解炉でこうした障害が顕著
に現われるのは電力原単位が800kWh/tmiを超
えたときであり、従って上記の様な障害を未然に回避す
るには、アーク溶解炉へ供給される固形還元鉄の金属化
率を60%以上、より好ましくは70%以上に抑えるべ
きである。
【0060】また、還元鉄製造設備で製造される固形還
元鉄の金属化率のバラツキは、金属化率の絶対値によっ
て大きく影響を受け、該金属化率が低くなる程そのバラ
ツキは大きくなる。ちなみに図5は、金属化率の平均値
が62.8%と80.2%の固形還元鉄について、金属
化率のバラツキを調べた結果を示したグラフであり、金
属化率が低くなるほどそのバラツキが著しくなることを
確認できる。実操業においては、該金属化率のバラツキ
が大きくなると目標金属化率そのものが不安定になるの
で、安定した目標金属化率を確保するには該金属化率を
高めに設定する必要がある。種々実験の結果、金属化率
のバラツキを実操業可能なレベルに抑えるには、該金属
化率の平均値を60%以上、より好ましくは70%以上
にすべきであることが確認された。
【0061】“該固形還元鉄内の炭素分含有量:FeO
還元当量炭素量の50%以上に定めた根拠 図6は、様々の条件で製造された固形還元鉄について、
該固形還元鉄中のFeO還元当量炭素量と溶融スラグ中
の酸化鉄含有量の関係を調べた結果を示したグラフであ
る。この実験では、固形還元鉄の金属化率が78〜82
%でFeO還元当量炭素量の異なるものを使用し、20
トンのEAFを用いて溶解した時の、溶融スラグ中の酸
化鉄含有量(T.Fe)を調べた。この図からも明らか
である様に、固形還元鉄内にFeO還元当量炭素量(未
還元酸化鉄を還元するのに必要な理論当量の炭素量)が
含まれる場合は、溶融スラグ中の(T.Fe)は低レベ
ルに抑えられるが、該炭素量がFeO還元当量炭素量の
50%(即ち、FeO還元当量炭素量×0.5)を下回
ると、溶融スラグ中の(T.Fe)が急増しており、ひ
いては内張り耐火物の溶損が著しくなることを確認でき
る。従って、内張り耐火物の溶損を最小限に抑えて安定
操業を確保するには、固形還元鉄中の炭素分含有量を、
FeO還元当量炭素量の50%以上にすべきである。
【0062】尚この実験では、アーク溶解炉で製造され
る溶融鉄の炭素量が2.1〜2.4の範囲となる様に、
いずれの場合も不足炭材をアーク溶解炉で追加投入した
が、こうした追加炭材量には殆ど関わりなく、固形還元
鉄自体の残存炭素量をFeO還元当量炭素量の50%以
上にしなければ、溶融スラグ中の(T.Fe)を十分に
低減することはできない。勿論、固形還元鉄中に残存す
る酸化鉄に対し還元当量炭素量と溶融鉄の目標炭素含有
量を確保するのに十分な量の炭材を追加投入すれば、溶
融スラグ中の(T.Fe)を低減することは可能と思わ
れる。しかしながら現実には、溶融鉄中の炭素量を飽和
炭素量以下の一定の値に維持することは非常に難しく、
処理時間の経過につれて溶融鉄中の炭素含有量は徐々に
増大し、目標炭素含有量の溶融鉄が得られ難くなるので
好ましくない。
【0063】“固形還元鉄の比重:1.7以上”に定め
た根拠 炭材内装酸化鉄成形体を固形状態で予備還元して固形還
元鉄を得る本発明の方法を採用する場合、各成形体には
炭材などを配合する分だけ予備還元の進行によって内部
に空洞ができるので、例えばミドレックス法等により製
造される予備還元鉄に較べると固形還元鉄の比重はかな
り小さくなる。
【0064】一方、前記図2で説明した様に、該固形還
元鉄をアーク溶解炉で還元溶解する際に、該固形還元鉄
の還元溶解効率を高めるには、アーク溶解炉内へ装入さ
れた固形還元鉄が溶融鉄上の溶融スラグ内へ速やかに沈
み込んで全面からアーク熱を効率よく受け得る様にすべ
きである。そのためには、固形還元鉄の比重が大きな影
響を及ぼす。ちなみに図7は、比重が1.65−1.7
5(平均比重:1.65)と1.8−2.3(平均比
重:2.1)の固形還元鉄を用いてアーク溶解炉で還元
溶解を行なう際に、固形還元鉄の比重が還元溶解速度に
及ぼす影響を調べた結果を示したグラフであり、横軸
は、各固形還元鉄を単体で溶融スラグ上に装入したとき
の溶解速度、縦軸は、各固形還元鉄を連続的に装入して
還元溶解を行なうことのできる限界溶解速度をそれぞれ
示している。
【0065】この図からも明らかである様に、固形還元
鉄の平均比重が1.65の場合、溶融スラグ上に固形還
元鉄を連続的に装入しても、該固形還元鉄が溶融スラグ
内に潜り込む現象は認められず、殆どの固形還元鉄は溶
融スラグ表面で還元溶解が進行する。そのため、固形還
元鉄を連続装入した時の溶解速度は、単体で装入した時
の溶解速度の概略100倍程度となっている。この水準
の溶解速度では、連続装入による還元溶解を実用規模で
実施することはできない。これに対し、平均比重が2.
1の固形還元鉄では、溶融スラグ上に装入された固形還
元鉄は速やかに該スラグ内へ潜り込んで還元溶解が効率
よく進行する為、固形還元鉄を単体で装入する場合に較
べて連続装入した時の溶解速度は大幅に高まって、約3
00倍の連続溶解速度が得られる。この程度の溶解速度
であれば、連続還元溶解を工業規模で十分に実用化でき
る。
【0066】こうした固形還元鉄の比重の影響について
は、平均比重が1.7を境にして溶解時の様相は大きく
変化し、連続溶解速度は急変する。そして平均比重が
1.7未満では、工業規模での連続操業に耐える溶解速
度が得られず、平均比重を1.7以上、より好ましくは
1.9以上にすると、連続操業を行なうのに十分な溶解
速度を確保することが可能となる。
【0067】“アーク加熱式溶解炉で製造される溶融鉄
の炭素含有量:1.5〜4.5“に定めた根拠 一般に溶融鉄中の炭素量と溶存酸素量の間には密接な関
係があり、溶融鉄中の炭素量が低下するにつれて該溶融
鉄中の溶存酸素量が増大する。そして該溶存酸素量が高
いほど該溶融鉄の酸素ポテンリャルは高くなって脱硫に
は不利となる。それに伴って溶融鉄と平衡する溶融スラ
グの酸素ポテンリャルも高くなり、ひいては溶融スラグ
中のFeO濃度が高くなって耐火物との反応性が増大
し、溶解炉の内張り耐火物の溶損が激しくなる。その
為、脱硫処理時の脱硫率を高めると共に、溶解炉の内張
り耐火物の溶損を抑えてその寿命を延長するには、溶融
鉄中の炭素含有量をある程度高めに設定することが必要
となる。
【0068】ちなみに図8は、多くの実験によって得ら
れた溶融鉄中の炭素含有量と脱硫率の関係をまとめて示
したグラフである。この実験では、CaO系脱硫剤を取
鍋内溶融鉄にインジェクションする方法を採用し、脱硫
剤原単位を一定としたときのデータを整理して示してい
る。この図からも明らかである様に、溶融鉄中の炭素含
有量が1.5%未満になると脱硫率が著しく低下し、目
標の脱硫率を確保するには大量の脱硫剤をインジェクシ
ョンしなければならなくなり、その結果として大量に発
生するスラグ中に多量の金属鉄が取り込まれて鉄ロスが
大きくなる。即ち本発明を実用規模で実施可能にするに
は、脱硫に伴って生じるスラグの処理など付随的な問題
も考慮する必要があり、取鍋脱硫を少ない脱硫剤原単位
で効率よく行なうには、溶融鉄中の炭素含有量を1.5
%以上、より好ましくは2.0%以上にすべきである。
【0069】但し、溶融鉄中の炭素含有量は約4.5%
で飽和状態に達し、飽和炭素含有量の還元溶融鉄を安定
して得るにはかなり過剰量の炭素質還元剤を使用しなけ
ればならなくなるので不経済であり、しかもその後の製
錬時の脱酸負荷も増大するので、該炭素含有量は4.5
%以下、より好ましくは3.5以下に抑えるのがよい。
【0070】“溶融スラグの塩基度:1.0〜1.8”
に定めた根拠 この塩基度(即ちCaO/SiO2比)は、本発明にお
いて必須の要件ではないが、アーク溶解炉における固形
還元鉄の還元溶解効率に少なからぬ影響を及ぼすばかり
でなく、該溶解炉の内張り耐火物の溶損にも大きな影響
を及ぼす。
【0071】即ち溶融スラグの塩基度はその流動性に大
きな影響を及ぼし、例えば図9に示す如く塩基度が低く
なるにつれてスラグの溶融温度は低くなって流動性は高
まり、固形還元鉄の還元溶解効率には好影響を及ぼす反
面、耐火物との反応性は高くなって内張り耐火物の溶損
が激しくなる。一方、塩基度が高くなると、スラグの溶
融温度は上昇し、従ってスラグを溶解するには炉内温度
を過度に高めなければならなくなり、熱エネルギー的に
マイナスになるばかりでなく、高温による炉体への熱影
響も大きくなってくる。こうした傾向は、図9にも現わ
れる如く、スラグ塩基度が1.0未満あるいは1.8を
超えると顕著になるので、アーク溶解炉内の溶融スラグ
の塩基度は1.0〜1.8、より好ましくは1.3〜
1.6の範囲に調整することが望ましい。
【0072】
【実施例】次に本発明の実施例を示す。本発明は下記実
施例によって制限を受けるものではなく、本発明の範囲
を超えない限り適当に変更して実施することができ、そ
れらは本発明の技術的範囲に含まれる。
【0073】実施例 鉄鉱石と石炭の各粉砕物および少量のバインダ(ベント
ナイト)を使用し、これらを、鉄鉱石中の酸化鉄に対し
石炭中の炭素が理論当量となる様に配合する。これらを
造粒装置で直径約13〜20mmの略球形に成形し、こ
の炭材を含む酸化鉄含有成形体を原料成形体として使用
した。用いた鉄鉱石と石炭の組成の一例を下記に示す。
【0074】鉄鉱石の組成: T・Fe=65%,FeO=0.7%,SiO2=2.
5% Al23=2.10%,CaO=0.04% 石炭の組成: 全炭素量=77.6%,固定炭素=71.2%, 揮発分=17.0%,灰分=11.8%
【0075】上記成形体(生ペレット)を回転炉床型の
還元鉄製造設備へ供給し、温度1250〜1350℃、
回転炉内での平均滞留時間7〜9分間で加熱還元を行っ
て固形還元鉄を製造した。得られる固形還元鉄中の未還
元酸化鉄量と残留炭素量は上記加熱還元条件によって異
なる。この実施例では、該固形還元鉄中の酸化鉄の金属
化率がいずれも60%以上となる様に加熱還元条件を調
整した。得られた固形還元鉄の金属化率と成分組成の一
例を表1に示す。更に、同様の実験で得た固形還元鉄の
重量と比重は例えば図10に示す通りであり、1ピース
当たりの重量には殆ど関係なく、平均比重はいずれも
1.7〜2.5の範囲である。
【0076】
【表1】
【0077】上記還元鉄製造設備で得られる固形還元鉄
は、可能な限り大気と接触しない様に、且つ高温を保っ
た状態(本実験では1000℃)で、還元鉄製造設備に
近接して設けられたアーク加熱式溶解炉に連続的に投入
し、更なる還元と溶融を行う。このとき、溶解炉内には
一定量の溶融鉄を保持させておくと共に、溶融鉄上に浮
上する溶融スラグの塩基度を1.0〜1.8の範囲に調
整し、アーク加熱のための電極は該溶融スラグ内に突っ
込んだ状態で通電し、サブマージアーク加熱方式を採用
した。そして固形還元鉄は該アーク加熱部近傍に向けて
投入すると共に、該固形還元鉄投入位置に向けて石炭を
追加投入し、アーク加熱による還元と溶融を進めた。
【0078】この還元・溶融工程中の固形還元鉄は、ス
ラグ形成成分としてのSiO2が他の酸化物よりも多く
含まれている。溶解炉内で還元鉄の溶解が進行するにつ
れて塩基度が低下してくるので、塩基度調整剤として主
に焼石灰、必要により焼成ドロマイト等を含むフラック
スを添加し、溶融スラグの塩基度を1.0〜1.8の範
囲に調整した。この方法により、前述の如く溶融スラグ
の塩基度が1.8を超えると、溶融スラグが粘稠になり
固形還元鉄が該溶融スラグ内へ沈み込み難くなって加熱
還元効率が低下し、また1.0未満になると内張り耐火
物の溶損が著しくなることが確認された。
【0079】この加熱還元・溶解工程で、溶融スラグ上
に装入された固形還元鉄は、溶融スラグに接してアーク
熱を受け、内部に残存する炭素分によって未還元酸化鉄
の還元が進行し、固形還元鉄の表面にCOガスが放出さ
れて該固形還元鉄は活発に動き回ると共に、該COガス
によって溶融スラグは激しく発泡する。そして、該発泡
に伴う比重の低下につれて固形還元鉄は溶融スラグ内へ
沈み込んで更に加熱還元を受け、その周辺に追加投入さ
れる炭素質還元剤の作用で未還元鉄はほぼ完全に還元さ
れると共に溶融し、下部の溶融鉄内に取り込まれてい
く。
【0080】このとき、装入される固形還元鉄の比重が
1.7以上、より好ましくは1.8以上、更に好ましく
は1.9以上である場合は、溶融スラグ上から装入した
後速やかに溶融スラグ内に沈み込んで加熱還元が短時間
で効率よく進行するが、比重が1.7未満である時は、
装入された固形還元鉄は溶融スラグ内部への沈み込みが
起り難いため溶融スラグからの熱伝達が不十分となって
発泡も少なくなり、加熱還元に要する時間が大幅に遅
れ、それに伴って溶融スラグへの酸化鉄の溶解量も増
し、該溶解炉の内張り耐火物を溶損し易くなる。
【0081】更に、該固形還元鉄中の炭素分含有量が、
該固形還元鉄中の未還元酸化鉄を還元するのに必要な理
論炭素量に対して50%未満である場合は還元効率不足
となり、該溶解炉内へ炭素質還元剤を追加装入したとし
ても還元速度が遅く、溶融スラグ中の酸化鉄含有量も多
くなって内張り耐火物の溶損が著しくなる。
【0082】また上記加熱還元工程では、溶融鉄を定期
的にサンプリングすることによって炭素量を測定し、該
炭素量が1.5〜4.5%の範囲に納まる様に炭素質還
元剤の追加投入量を調整した。
【0083】こうした加熱還元・溶解工程を連続的に行
い、該溶解炉内に所定量の溶融鉄が溜った時点で、炉底
部に設けた出湯孔から取鍋へ溶湯を抜き出すと共に、該
溶解炉の側壁に設けたスラグ排出孔から適量の溶融スラ
グを抜き出し、炉内に残留するスラグ量を調整する。
【0084】こうした加熱還元・溶解を行う際の具体的
な条件等および結果を例示すると次の通りである。
【0085】(還元鉄の性状) 固形還元鉄の組成等:前記表1のNo.3(金属化率:
80%) アーク加熱式溶解炉への装入温度:1000℃ 装入方法:連続装入 (アーク加熱式溶解炉の操業条件) アーク加熱電極への電力原単位:約565KWh/tm
i(mi:製造される溶融鉄) (副原料の種類と投入量) 消石灰:92.2kg/tmi,焼成ドロマイト:2
1.5kg/tmi 石炭追加装入量:約20kg/tmi 還元鉄の使用原単位:1227kg/tmi (得られる溶融鉄と生成スラグ組成) 溶融鉄: C:2.0%,Si:0.03%以下,Mn:0.05
%以下,P:0.043%,S:0.137%,温度1
550℃ 生成スラグ: CaO:36.5%,SiO2:26.1%,Al
23:18.2%,MgO:10.0%,T・Fe:
6.3%,塩基度:1.4
【0086】上記からも明らかである様に、溶融鉄のS
i含有量は、上記還元・溶解工程で十分に低減している
が、製鋼原料としてはS含有量およびP含有量が多過ぎ
るので、取鍋により脱硫、脱燐処理を行ない、下記組成
の溶湯を得た。
【0087】脱硫剤(石灰系フラックス) 組成:CaO:83〜90%、CaF2:6〜10%、
C:4.0% 使用量:約12kg/tmi 脱燐剤(石灰系フラックス+Fe23) 組成:CaO:44〜45%、CaF2:7〜8%、F
23:47〜48% 使用量:約20kg/tmi 脱硫・脱燐後の溶融鉄組成: C:1.8〜2.0%,Si:痕跡,Mn:0.02
%,P:0.032%S:0.038%.
【0088】上記脱硫・脱燐処理を終えた溶融鉄(14
50℃)を、鉄スクラップおよび銑鉄と下記の配合でE
AFへ装入し、これに下記の副原料を添加すると共に少
量の酸素を吹込みながら電気炉製鋼を行い、下記組成の
溶鋼を製造した。 (電気炉装入原料) 脱硫・脱燐溶融鉄:40%部、 スクラップ:50%、銑鉄:10% (副原料) 焼石灰:50.2kg/tmi,焼成ドロマイト:10
kg/tmi, 珪石:15.1kg/tmi 吹込み酸素量:約18Nm3/tmi (得られた溶鋼組成) C:0.10%,Mn:0.06%,Si:痕跡,S:
0.022%,P:0.018%.
【0089】上記実験では、アーク加熱式溶解炉で製造
し、脱硫・脱燐処理した溶融鉄を溶融状態のまま、即ち
高温を保った状態でEAFへ供給して製鉄原料として用
いる例を示したが、同様にBOFへ製鋼原料として供給
することもできるし、更にはこの溶融鉄を一旦鋳型に取
り出して冷却凝固させ、製鋼用に中間原料として用いる
ことも有効である。
【0090】最後に、本発明は上記記述に照らして様々
変更して実施することも可能であり、従って、それらは
特許請求の範囲に含まれると理解すべきであり、本発明
は上記以外の態様でも実施し得るものと考えるべきであ
る。
【0091】この出願は、日本特許庁に1997年9月
1日に出願された特願平9−236214号に基づくも
ので、その内容は全てその中に含まれている。
【0092】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、安
定して高い還元効率を確保し得ると共に、処理炉の内張
り耐火物の溶損も最小限に抑えられて炉寿命の延長を図
ることができ、それらの効果に伴って、炭素質還元剤を
内装した酸化鉄含有成形体を主原料とする還元鉄の製造
と、それによって得られる固形還元鉄の更なる還元と溶
融による高純度溶融還元鉄の製造を、少ないエネルギー
ロスの下で工業的規模で極めて効率よく実現できる。ま
た、この方法によって得られる還元鉄は不純金属元素の
含有量が少ないので、これを製鋼原料として利用するこ
とによって高純度の鋼材の製造を可能にするばかりでな
く、合金鋼を製造する際の成分調整も容易となる。更
に、アーク加熱式溶解炉に隣接して製鋼炉を設けてお
き、該溶解炉で製造した溶融還元鉄、あるいはその脱硫
・脱燐溶湯を、高い熱を保有した溶融状態で製鋼原料と
して製鋼炉へ供給する様にすれば、溶融還元鉄の保有熱
を製鋼のための熱源として有効に活用できるので、熱エ
ネルギーを一段と低減することができ、還元鉄の製造か
ら製鋼の一貫システムとして、実用上極めて効率の良い
方法を確立することができる。 [図面の簡単な説明]
【図1】本発明に従って炭材内装酸化鉄含有成形体の加
熱還元、アーク加熱式溶解および製鋼の連続工程の代表
例を示す概略図である。
【図2】アーク加熱式溶解炉の溶融スラグ上から装入さ
れた固形還元鉄の加熱還元状況を示す説明図である。
【図3】実験で得た固形還元鉄の還元化率と還元時間の
関係の一例を示すグラフである。
【図4】固形還元鉄の還元化率とアーク溶解炉での電力
原単位の関係を示すグラフである。
【図5】固形還元鉄の金属化率とそのバラツキの一例を
示すグラフである。
【図6】固形還元鉄中の炭素含有量と溶融スラグ中の酸
化鉄(T.Fe)の関係を示すグラフである。
【図7】固形還元鉄単体の溶解速度と連続装入する時の
限界溶解速度の関係を示すグラフである。
【図8】溶融鉄中の炭素含有量と脱硫率の関係を示すグ
ラフである。
【図9】スラグの塩基度と溶融温度の関係を示すグラフ
である。
【図10】固形還元鉄の1ピース当たりの重量と比重を
示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−228411(JP,A) 特開 平8−337827(JP,A) 特開 平2−185913(JP,A) 特開 平3−130314(JP,A) 特開 昭62−230924(JP,A) 特開 昭63−42315(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21B 13/14

Claims (21)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記方法からなることを特徴とする、炭
    素含有量1.5〜4.5%の溶融鉄を製造する製鉄法。 (a)酸化鉄と炭素質還元剤を準備し、 (b)前記炭素質還元剤と酸化鉄から成形体を製造し、 (c)前記成形体から、金属化率が少なくとも60%で、
    比重が少なくとも1.7以上であり、且つ、残存する酸
    化鉄を還元するのに必要な理論当量に対し50%以上の
    炭素を含む固形還元鉄を製造し、 (d)該固形還元鉄を実質的に冷却することなくアーク加
    熱式溶解炉で加熱し、炭素含有量1.5〜4.5%の溶
    融鉄を得る。
  2. 【請求項2】 前記固形還元鉄を、前記アーク加熱式溶
    解炉内で700〜1,300℃に加熱する請求項1に記
    載の製鉄法。
  3. 【請求項3】 アーク加熱式溶解炉における固形還元鉄
    の供給位置に炭素質還元剤を供給する請求項1に記載の
    製鉄法。
  4. 【請求項4】 アーク加熱式溶解炉における溶融スラグ
    に固形還元鉄を供給する請求項1記載の製鉄法。
  5. 【請求項5】 上記溶融スラグの塩基度が1.0〜1.
    8である請求項4に記載の製鉄法。
  6. 【請求項6】 前記溶融スラグの酸化鉄含量が9%以下
    である請求項4記載の製鉄法。
  7. 【請求項7】 前記溶融スラグの酸化鉄含量が5%以下
    である請求項6に記載の製鉄法。
  8. 【請求項8】 アーク加熱式溶解炉内の溶融鉄をサンプ
    リングして該溶融鉄を分析し、炭素質還元剤の供給量を
    調整することにより、該溶融鉄中の炭素量を調整する請
    求項4に記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記アーク加熱式溶解炉からの排ガスの
    量と組成を測定し、該測定値から計算される排ガスの酸
    素当量に応じて必要量の炭素質還元剤を添加することに
    より、溶融鉄中の炭素量を調整する請求項4に記載の方
    法。
  10. 【請求項10】(削除)
  11. 【請求項11】 前記アーク加熱式溶解炉内の溶融鉄
    を、別容器に移して脱硫する請求項1に記載の製鉄法。
  12. 【請求項12】 前記アーク加熱式溶解炉内の溶融鉄
    を、別容器に移して脱燐する請求項1に記載の製鉄法。
  13. 【請求項13】(削除)
  14. 【請求項14】(削除)
  15. 【請求項15】(削除)
  16. 【請求項16】(削除)
  17. 【請求項17】 前記請求項1によって得た溶融鉄を製
    鋼炉へ供給して鋼を製造する製鋼法。
  18. 【請求項18】 製鋼炉が電気炉(EAF)または転炉
    (BOF)である請求項17に記載の製鋼法。
  19. 【請求項19】 (a)請求項1によって得た溶融鉄を冷
    却して凝固鉄とし、(b)該凝固鉄を製鋼炉へ供給して鋼
    を製造する製鋼法。
  20. 【請求項20】 製鋼炉が、電気炉(EAF)または転
    炉(BOF)である請求項19に記載の製鋼法。
  21. 【請求項21】 溶融鉄のSi量が0.05%以下、M
    n量が0.1%以下、P量が0.1%以下、S量が0.
    20%以下である請求項1に記載の方法。
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