JPH07216429A - 脱炭滓を用いたステンレス粗溶鋼の製造方法 - Google Patents

脱炭滓を用いたステンレス粗溶鋼の製造方法

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JPH07216429A
JPH07216429A JP1180794A JP1180794A JPH07216429A JP H07216429 A JPH07216429 A JP H07216429A JP 1180794 A JP1180794 A JP 1180794A JP 1180794 A JP1180794 A JP 1180794A JP H07216429 A JPH07216429 A JP H07216429A
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chromium
refining
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JP1180794A
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Kenichiro Miyamoto
健一郎 宮本
Katsuhiko Kato
勝彦 加藤
Shinya Kitamura
信也 北村
Masataka Yano
正孝 矢野
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Nippon Steel Corp
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 突沸を引き起こすことなく、且つ耐火物溶損
を増加させることなしに、フェロシリコンの如き高価な
還元剤を全く使用しない効率的なステンレス鋼の精錬方
法を提供する。 【構成】 クロムを含有した溶鉄を、転炉型反応器にて
脱炭精錬するに際し、前チャージで生成したクロム酸化
物を含有する脱炭滓を炉内に残存させたまま、炉内に炭
材を投入することにより、脱炭滓中のクロム酸化物(C
2 3 )濃度を20%以下とし、且つ脱炭滓の温度を
1400〜1700℃に保熱した状態で1500℃以下
の次チャージの溶銑を装入し、吹酸昇温精錬することに
より前記脱炭滓中のクロム分を還元した後、クロム回収
済スラグを排滓し、引き続いて同一炉でフェロクロム合
金を溶解しつつ脱炭精錬を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は転炉型反応容器による精
錬において前チャージで生成した脱炭滓中の酸化クロム
分を、次チャージの溶銑で還元した後、クロム回収済ス
ラグを排滓し、引き続いて同一炉で脱炭精錬することを
特徴とするステンレス粗溶鋼の製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】クロムを含んだ溶鋼を精錬するための原
料としては、炉外精錬で脱燐・脱硫した高炉溶銑、クロ
ム鉱石の溶融還元により生成した含クロム溶銑、ステン
レス鋼スクラップを利用して電気炉で溶製した含クロム
溶鉄等がある。これらの原料は、上吹き転炉、底吹き転
炉、上底吹き転炉、AODで吹酸脱炭精錬され、場合に
よっては、さらにVODやRH−OBといった真空精錬
炉で吹酸脱炭精錬されることによって、材質特性を満た
す炭素濃度へと低下されている。
【0003】しかしながら、これらの精錬炉において
は、吹酸終了時に、吹酸脱炭中に生成した酸化クロムを
Fe−Si等の還元剤を用いて還元回収することが広く
行われている。この還元剤は価格が高いため、吹酸中の
クロム酸化をできる限り低下させる試みがなされてい
る。例えば、特開昭61−3815号公報や特開昭61
−19716号公報では、吹錬中の送酸速度と攪拌力と
を適正に制御することで、クロムの酸化を抑制した精錬
方法が開示されている。しかし、これらの方法を用いて
も、還元剤使用量をゼロにすることはできていない。
【0004】一方、クロムを含まない普通鋼では、脱炭
で生成したスラグを、転炉型反応容器で行う溶銑脱燐処
理の脱燐剤として用いる方法が、特開昭63−1952
09号公報で示されている。しかし、普通鋼の脱炭精錬
で生成するFeOは低温であっても溶銑中の炭素で容易
に還元されるために脱燐剤として有効であるのに対し
て、高クロム鋼の脱炭精錬で生成する酸化物は、難還元
性のCr2 3 であるため、Cr2 3 は低温状態では
炭素飽和に近い濃度の溶銑であっても還元できず、脱燐
剤としては利用できないという問題があった。また、F
eOの高いスラグは反応性が良いため、溶銑装入時に爆
発的なCOガスの発生反応が生じ、装入溶銑が飛散す
る、いわゆる突沸が起こるため、安全上の問題があっ
た。
【0005】ところで、脱燐は炉外精錬で実施して、単
にクロム酸化物の還元のみを目的とした場合には、クロ
ム酸化物の転炉型反応容器での溶融還元技術に相当し、
このような技術は特開昭60−9815号公報や特開平
1−215913号公報で示されている。この方法は、
特定のスラグ組成に制御した条件下でクロム鉱石と炭材
とを連続的に添加するというものである。しかし、スラ
グ中に含有されるクロム酸化物濃度は脱炭滓に比較する
と極めて低く、スラグの流動性が高いことと、還元用に
多量の炭材を使用するため、溶銑は炭素が飽和濃度に近
く、溶銑による還元も速い速度で進行するという特徴が
あり、この技術では、クロム酸化物濃度が高く流動性が
ないスラグ状態での、炭素不飽和で、且つスラグ中の炭
材が存在しない条件での還元はできないという問題があ
った。
【0006】また、含クロム鋼滓からのクロムの回収利
用方法として、含クロム鋼の残滓を冷却固化し、転炉に
おける他の含クロム鋼用チャージの吹錬時に固体残滓を
添加する方法が特開昭53−119210号公報にて示
されている。しかし、この方法では、含クロム鋼の残滓
を冷却固化させるため、溶銑装入時の突沸は回避できる
ものの、低温時にはほとんど反応が進行せず、還元反応
を進行させて目標量のクロム分を回収するには、ある程
度の温度まで溶銑温度およびスラグ温度を上昇させる必
要があり、このことに起因して著しい精錬時間の延長、
すなわち生産性の低下を招くといった問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、特開昭61
−3815号公報や特開昭61−19716号公報に開
示された技術では高価な還元剤使用量をゼロにすること
はできないという問題や、特開昭63−195209号
公報で開示されている技術では、突沸という安全上の問
題がある上に、高クロム鋼の脱炭精錬で生成する酸化物
は、難還元性のCr2 3 であるため溶銑で容易に還元
されず、脱燐剤としては利用できないという問題、およ
び特開昭60−9815号公報や特開平1−21591
3号公報で開示されている方法では、クロム酸化物濃度
が高く流動性がないスラグ状態での、炭素不飽和で、且
つスラグ中に炭材が存在しない条件での還元はできない
という問題、さらには特開昭53−119210号公報
で示されている方法では著しい吹錬時間の延長を招くと
いった問題を解決し、効率的な脱炭滓を用いたステンレ
ス粗溶鋼の製造方法を提供することを目的とするもので
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解
決するものであって、その要旨とするところは、クロム
を含有した溶鉄を、転炉型反応容器にて脱炭精錬するに
際し、前チャージで生成したクロム酸化物を含有する脱
炭滓を炉内に残存させたまま、炉内に炭材を投入するこ
とにより、脱炭滓中のクロム酸化物(Cr2 3 )濃度
を20%以下とし、且つ脱炭滓の温度を1400〜17
00℃に保熱した状態で1500℃以下の温度の次チャ
ージの溶銑を装入し、吹酸昇温精錬して前記脱炭滓中の
クロム分を還元した後、クロム回収済スラグを排滓し、
引き続いて同一炉でフェロクロム合金を溶解しつつ脱炭
精錬を行うことを特徴とする脱炭滓を用いたステンレス
粗溶鋼の製造方法にある。
【0009】ここで、次チャージの溶銑を装入するまで
に長時間を要し、脱炭滓の温度が1400℃未満に低下
するような場合には、炭材添加後に上吹き吹酸を行い、
炭材を燃焼させることにより、溶銑装入前の脱炭滓の温
度を1400〜1700℃に保持することが有効であ
る。また、前チャージ出鋼後に、生成スラグ(脱炭滓)
1トンに対し、1000kg/(ton−Slag)以
下の溶鋼を炉内に残存させるとともに、前チャージで生
成したクロム酸化物を含有する脱炭滓の成分が、CaO
/SiO2 が1.0〜3.0、MgOが15%以下であ
るか、あるいはCaO/SiO2 が3.0〜4.0、A
2 3 が5〜20%、MgOが15%以下であるこ
と、また吹酸昇温精錬は溶鋼中炭素濃度を1%以上とし
た状態で、溶鋼温度を1500〜1700℃に制御しつ
つ行うことにより、一層効率的に脱炭滓中のクロム分を
還元回収できる。
【0010】さらに、前記のスラグ保熱温度を1400
〜1500℃にすると、耐火物の溶損は完全に抑制で
き、より安定して十分な効果が達成できる。
【0011】
【作用】本発明の工程を図1に示す。工程1は出鋼後の
炭材添加による還元工程を、工程2は脱燐・脱硫溶銑の
転炉への装入工程を、工程3は昇温還元工程を、工程4
は中間排滓工程を、工程5は脱炭およびフェロクロム合
金の溶解工程を、工程6は出鋼工程を示す。図1におい
て、1は前チャージで生成した脱炭滓、2は炭材還元終
了後のスラグ、3は溶鉄(溶銑ないし溶鋼)、4は転
炉、5はクロム回収済スラグ、6は脱炭滓である。この
ように、前チャージの脱炭により生成した脱炭滓を転炉
内に残したまま、炭材を添加し、複数回の炉振りを行
い、脱炭滓と炭材を混合させることにより、脱炭滓中の
クロム酸化物(Cr2 3 )濃度を20%以下にまで低
下させ、且つ酸素を上吹きして炭材を燃焼させることに
より、脱炭滓の温度を1400〜1700℃に保持した
状態で、1500℃以下の次チャージの溶銑を装入し、
次に酸素を上吹きして昇温を行うとともに、脱炭滓中の
クロム酸化物を還元する。その後、転炉を傾動してこの
クロム回収分スラグを排滓した後、炉を直立させ、酸素
を上吹きして脱炭を行うとともにフェロクロム合金を添
加溶解してステンレス粗溶鋼を製造する工程である。な
お、本発明でいう転炉型反応容器とは、上吹き転炉、上
底吹き転炉に代表される酸化性ガスによる吹錬を精錬手
段とする反応容器を指している。
【0012】本発明者らは、Cr2 3 含有スラグと炭
素飽和溶鉄との反応に関し、鋭意検討を行った結果、C
2 3 含有スラグの温度が1400℃以上であり、流
動性を有するものであっても、Cr2 3 濃度を20%
以下にまで低下させることにより、1350℃程度の溶
銑とは、ほとんど反応が進行しないことを知見し得た。
本発明はこの知見に基づきなされたものである。すなわ
ち、普通鋼脱炭精錬で生成したスラグに溶銑を受銑した
場合に発生する、急激な酸化鉄の還元によるCOガスの
発生を原因とした突沸という大きな問題が、本発明の場
合には全く生じず、このため、前チャージの生成スラグ
を残存した炉内に溶銑を反応抑制した状態で装入でき
る。
【0013】Cr2 3 含有スラグからのクロムの還元
速度を速くするための条件は、スラグ/メタル間の反応
界面積が大きいこと、つまりスラグの液相率を高位に保
つこと、および溶融スラグ相中のCr2 3 の還元反応
界面への移動の駆動力を大きく保つこと、つまりスラグ
中のCr2 3 の活量が高いことであるが、図2に示す
如く、Cr2 3 濃度が25%程度以上である場合に対
し、20%以下であるとスラグ中のCr2 3 の活量は
1/2以下となり、反応の駆動力である溶融スラグ相中
のCr2 3 の活量と反応界面積での活量差が小さくな
ることに起因して、スラグ/メタル間の反応性は著しく
低下してしまう。これは、スラグ中のCr2 3 濃度が
20%以下まで低下すると固相中の純粋なCr2 3
消滅し、CaO・Cr2 3 やMgO・Cr2 3 など
の複合酸化物の形成が主体となるためである。従って、
Cr2 3 濃度が20%以下である場合には、溶銑によ
るクロムの還元反応はほとんど進行せず、溶銑装入時の
急激な還元反応に起因したCOガスの発生、すなわち突
沸の回避が可能となる。
【0014】しかしながら、溶銑装入後の昇熱還元期
(図1中の工程3)においてもクロムの還元が進行しな
ければ、生産性の低下等を招き、実用的でない。これに
対し、本発明者らは、溶鉄(溶銑および溶鋼)、スラグ
双方の温度が1500℃以上であるならば、Cr2 3
濃度が20%以下の場合でも、還元反応が大幅に促進さ
れることを発見した。図3はCr2 3 含有スラグの溶
銑による還元反応の温度依存性を調査した結果である
が、Cr2 3 濃度が20%以下である場合でも、15
00℃近傍を境界に還元速度が急激に増大していること
がわかる。つまり、通常操業範囲内である、脱炭滓の炉
内残存量が、装入溶銑量に対し、100〜500(kg
/ton−Pig)程度である場合には、装入溶銑の温
度が1500℃以下であり、且つスラグ温度が1700
℃以下であると、溶銑装入直後の双方の温度は1500
℃以下となるため、突沸回避が可能であることになる。
【0015】従って、このスラグを転炉内で溶銑と共存
させて昇温すれば、温度が上昇した後にスラグ中のクロ
ム酸化物が還元されることを示している。これはCr2
3濃度が20%以下の場合、スラグ温度が1500℃
以上であると、スラグの液相率が著しく向上し、溶融ス
ラグ相中へのクロム酸化物の溶解速度が大きくなり、C
2 3 の活量も上昇するために反応が促進されている
ものである。ただし、実操業上は1700℃よりも高温
の場合には、耐火物の溶損量が急激に増大する。
【0016】本発明において、突沸の回避は可能である
ものの、生産性やクロム歩留りを考慮した場合、昇温還
元工程における還元速度は極力高位に維持することが必
要であり、この還元条件をより有利にするためには、C
2 3 濃度が20%以下であってもスラグ組成の制御
により、スラグ中のCr2 3 の活量はできる限り高位
に維持する必要がある。これは、高クロム鋼の脱炭精錬
で生成したCr2 3を25%以上含有するスラグから
のクロムの還元はスラグ中のCr2 3 の活量が1と高
いため反応速度が速いということと、スラグ中に存在す
るクロム酸化物がCr2 3 であるため容易に液相中へ
と溶解できるので、マクロ的には液相率を増大させずと
も還元が可能であるという事実の発見に基づくものであ
る。つまり、Cr2 3 を含有するスラグはCr2 3
を主成分とした微小な固相が、その他の酸化物により構
成される液体(溶融スラグ相)中に、無数に存在する状
況にあり、クロムの還元速度を高位に維持するために
は、固相は純粋なCr2 3とすること、換言すれば、
CaO・Cr2 3 やMgO・Cr2 3 などを極力形
成しない条件にスラグ組成を保持することが必須であ
る。
【0017】このうち、MgO・Cr2 3 はクロム鉱
石中の主成分であり、また脱炭滓においてもMgO濃度
が高すぎる場合には生成するため、脱炭滓中のMgO濃
度を15%以下にする必要がある。一方、CaO・Cr
2 3 はスラグ中のCaO濃度が高すぎる場合に生成す
るため、CaO/SiO2 を3.0以下にする必要があ
る。ただし、CaO/SiO2 が3.0〜4.0の範囲
である場合にはAl23 濃度を5〜20%の範囲に制
御することにより、CaO・Al2 3 系の化合物を形
成するため、CaO・Cr2 3 の形成を極小化するこ
とが可能である。しかしながら、CaO/SiO2
3.0以下であっても、Al2 3 濃度が5%未満の場
合や、CaO/SiO2 が4.0超であると20%以下
のAl2 3 濃度ではCaO・Al2 3 系化合物の形
成に不十分であるため、CaO・Cr2 3 の形成が促
進されてしまう。また、CaO/SiO2 が1.0未満
の場合や、Al2 3 濃度が20%超の場合には、Mg
O溶解度が増えるため耐火物溶損が増大して実用的では
ない。
【0018】また、上記各組成のスラグは粘性が高いた
め、炭材を過剰に添加せずともスロッピングしないとい
う特徴がある。従って、上吹き酸素により鋼浴の脱炭を
進行させつつ還元を実施することが可能となる。こうす
ることで、還元期と脱炭期とを通した全脱炭量が減少す
るため、生産性を大幅に向上させることができる。図4
は炭素濃度と還元速度の関係を示したものであるが、ス
ラグ組成を上記の条件に制御することにより、炭素濃度
は1%以上であれば十分な還元力があることがわかる。
【0019】ところで、出鋼後の脱炭滓の炭材添加によ
る還元についても、生産性の観点から極力効率的に行う
必要がある。この条件としては、転炉内に炭材を添加
後、複数回の炉振りを行うことにより、スラグ/炭材界
面積を十分に確保すること、および上吹き吹酸による炭
材の燃焼により還元反応を行うのに十分な温度を確保す
ることであるが、1700℃より高温で炭材還元を行
う、つまり溶銑装入時のスラグ温度が1700℃超であ
る場合には、還元速度は高位を維持できるものの、たと
えCr2 3 濃度を20%以下にまで低減しても、次工
程の溶銑装入時に局部的な高温部分が存在し、突沸を引
き起こす可能性があり、また耐火物の溶損量も増大する
ために実用的ではない。逆に突沸回避のためにスラグ冷
却を行うと、冷却時間を必要とするため生産性に障害を
生じる。また、溶銑装入時のスラグ温度が1400℃未
満であると、還元速度そのものが遅くなるという問題が
生じることになる。従って、出鋼後の脱炭滓の炭材還元
は1400〜1700℃の範囲で行う必要がある。な
お、この炭材還元を、1000kg/(ton−Sla
g)以下の前チャージ出鋼後の溶鋼を炉内に残存させて
行うことにより、スラグ/炭材間に加え、スラグ/溶鉄
間も反応界面となり得るため、還元速度は飛躍的に向上
する。ただし、残存溶鋼量が1000kg/(ton−
Slag)を超えると、それ以上の還元速度の向上効果
はほとんどなく(図5)、逆に出鋼歩留りが低下し、生
産性に障害を生じるため実用的ではない。
【0020】さらに、装入溶銑温度についても、その温
度が1500℃を超える場合には、炉内残存スラグ温度
が1400℃以上であるとスラグ・メタル間の局部的な
高温(1500℃以上)部分を形成する場合があるた
め、突沸の危険性を回避することができない。
【0021】
【実施例】実施例の工程は図1と同一である。前チャー
ジの脱炭により生成した脱炭滓を炉内に残した175ト
ン上底吹き転炉へ、炉上から炭材を添加し、複数回の炉
振りを行った後、次チャージの溶銑を装入し、次に酸素
を上吹きして昇温を行うとともに、脱炭滓中のクロム酸
化物を還元する(昇温還元期)。その後、転炉を傾動し
て、一部もしくは大部分のスラグを排滓し、次いで炉を
直立させ、フェロクロム合金とフラックスを添加しつつ
送酸を行い、脱炭精錬を実施する。目的の炭素濃度まで
低下した後に、再び炉を傾動し、溶鋼のみを出鋼し、ク
ロム酸化物を含んだスラグは炉内に残留させる。出鋼し
た溶鋼は仕上脱炭工程へ移動し、転炉へはスラグを残し
たまま炉上から炭材を添加する。ここでは、熱的条件や
スラグ条件によっては、昇温還元期において炭材やフラ
ックスを用いる場合や、昇温還元期、もしくは脱炭期に
スクラップを用いる場合もある。
【0022】表1に本発明における炭材還元の実施例を
比較例とともに示す。試験番号1から6は本発明の実施
例である。これに対し、試験番号7は溶銑装入時のスラ
グ温度が高い場合であるが、突沸の発生が見られ、また
耐火物の溶損も多大である。また、試験番号8は保熱温
度が低く、炭材還元が不十分でCr2 3 濃度が高い場
合であるが、この場合は装入溶銑温度が1500℃以下
であると、突沸の発生は起こらないもののその後の昇温
還元工程に時間を要し、生産性に問題を生じる。さら
に、試験番号9、試験番号10は装入溶銑温度が高い場
合であるが、これらの場合はいずれも突沸が発生してい
る。また、試験番号11、12は保熱温度は十分である
が、炉振りを行わず、炭材還元が不十分であった場合で
あるが、スラグ温度が高く、溶銑装入後のスラグ・溶銑
双方の温度が1500℃を超えてしまうような場合には
突沸が発生し、1500℃以下の場合では炭材還元期に
還元が進行しなかったことに起因して、その後の昇熱還
元期に長時間を要するため、生産性に問題を生じる。
【0023】
【表1】
【0024】表2は図1に示した本発明の昇温還元期に
おいて、より効率的条件を明確にしたものを比較例と併
せてて示したものである。試験番号13から21は本発
明の実施例における好ましい条件に対応する。一方、試
験番号の22と23は脱炭滓中の塩基度(CaO/Si
2 )が低い場合と高い場合であるが、低い場合には還
元自体に問題はないものの、スラグ中へのMgOの溶解
度が増すため耐火物溶損量が増大する。逆に高い場合に
は、スラグ中の固相がCaO・Cr2 3 となるため、
Cr2 3 の活量が低下し、還元速度が向上せず、昇温
還元期終了時のCr2 3 濃度が高くなる。また、試験
番号24はAl2 3 濃度が高い場合であるが、この場
合においても還元自体には問題はないものの、耐火物溶
損量の増大が問題となる。さらに、試験番号25はMg
O濃度が高い場合であるが、この場合もスラグ中の固相
がMgO・Cr2 3 となるため、Cr2 3 の活量が
低下し、還元速度が低いため、昇温還元期終了時のCr
2 3 濃度が高くなる。これに対して、試験番号26と
27は昇温還元期終了時の温度が高い場合と低い場合で
あるが、高い場合には還元自体には問題はないものの、
耐火物溶損量が著しく増加する。逆に低い場合には、ス
ラグの液相率の低下に起因して反応性が阻害されるた
め、昇温還元終了時のCr2 3 濃度が高くなる。ま
た、試験番号28は溶鉄中の炭素濃度が1%以下の場合
であるが、還元速度の低下に起因して、昇温還元終了時
のCr2 3 が高くなる。
【0025】
【表2】
【0026】
【発明の効果】本発明により、転炉型反応容器による精
錬において、前チャージの脱炭滓を次チャージの吹錬に
利用することにより、突沸を引き起こすことなく、且つ
耐火物溶損を増加させることなしに高価な還元剤を全く
使用しない効率的なステンレス鋼の精錬が可能となっ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の工程を示す図である。
【図2】スラグ中Cr2 3 の活量に対するCr2 3
濃度の影響を示す図である。
【図3】スラグ中のクロム酸化物量の低下速度に対する
温度依存性を示す図である。
【図4】スラグ中のクロム酸化物量の低下速度に対する
炭素濃度の影響を示す図である。
【図5】スラグ中のクロム酸化物量の低下速度に対する
炉内残存溶鋼量の影響を示す図である。
【符号の説明】
1 前チャージで生成した脱炭滓 2 炭材還元終了後のスラグ 3 溶鉄(溶銑ないし溶鋼) 4 転炉 5 クロム回収済スラグ 6 脱炭滓
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 矢野 正孝 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クロムを含有した溶鉄を、転炉型反応容
    器にて脱炭精錬するに際し、前チャージで生成したクロ
    ム酸化物を含有する脱炭滓を炉内に残存させたまま、炉
    内に炭材を投入することにより、脱炭滓中のクロム酸化
    物(Cr2 3 )濃度を20%以下とし、且つ脱炭滓の
    温度を1400〜1700℃に保熱した状態で1500
    ℃以下の次チャージの溶銑を装入し、吹酸昇温精錬して
    前記脱炭滓中のクロム分を還元した後、クロム回収済ス
    ラグを排滓し、引き続いて同一炉でフェロクロム合金を
    溶解しつつ脱炭精錬を行うことを特徴とする脱炭滓を用
    いたステンレス粗溶鋼の製造方法。
  2. 【請求項2】 クロムを含有した溶鉄を、転炉型反応容
    器にて脱炭精錬するに際し、前チャージで生成したクロ
    ム酸化物を含有する脱炭滓を炉内に残存させたまま、炉
    内に炭材を投入することにより、脱炭滓中のクロム酸化
    物(Cr2 3 )濃度を20%以下とし、且つ酸素を吹
    付けることにより、炭材を燃焼させ、脱炭滓の温度を1
    400〜1700℃に保熱した状態で1500℃以下の
    次チャージの溶銑を装入し、吹酸昇温精錬して前記脱炭
    滓中のクロム分を還元した後、クロム回収済スラグを排
    滓し、引き続いて同一炉でフェロクロム合金を溶解しつ
    つ脱炭精錬を行うことを特徴とする脱炭滓を用いたステ
    ンレス粗溶鋼の製造方法。
  3. 【請求項3】 前チャージ出鋼後に、生成スラグ(脱炭
    滓)1トンに対し、1000kg/(ton−Sla
    g)以下の溶鋼を炉内に残存させることを特徴とする請
    求項1または2記載の脱炭滓を用いたステンレス粗溶鋼
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 前チャージで生成したクロム酸化物を含
    有する脱炭滓の成分が、CaO/SiO2 が1.0〜
    3.0、MgOが15%以下であることを特徴とする請
    求項1〜3のいずれか1項に記載の脱炭滓を用いたステ
    ンレス粗溶鋼の製造方法。
  5. 【請求項5】 前チャージで生成したクロム酸化物を含
    有する脱炭滓の成分が、CaO/SiO2 が3.0〜
    4.0、Al2 3 が5〜20%、MgOが15%以下
    であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に
    記載の脱炭滓を用いたステンレス粗溶鋼の製造方法。
  6. 【請求項6】 吹酸昇温精錬は炭素濃度を1%以上とし
    た状態で溶鋼温度を1500〜1700℃に制御しつつ
    行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記
    載の脱炭滓を用いたステンレス粗溶鋼の溶製方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003083144A1 (de) * 2002-03-28 2003-10-09 Sms Demag Aktiengesellschaft Verfahren zur behandlung von legierten kohlenstoffhaltigen eisenschmelzen zur herstellung von stahl
CN102851594A (zh) * 2012-08-31 2013-01-02 舞阳钢铁有限责任公司 一种低成本临氢铬钼钢的冶炼控硅方法
KR20200049076A (ko) * 2018-10-31 2020-05-08 주식회사 포스코 용융물 처리 방법 및 이에 의하여 제조되는 스테인리스 강

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