JPH07216429A - 脱炭滓を用いたステンレス粗溶鋼の製造方法 - Google Patents
脱炭滓を用いたステンレス粗溶鋼の製造方法Info
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- JPH07216429A JPH07216429A JP1180794A JP1180794A JPH07216429A JP H07216429 A JPH07216429 A JP H07216429A JP 1180794 A JP1180794 A JP 1180794A JP 1180794 A JP1180794 A JP 1180794A JP H07216429 A JPH07216429 A JP H07216429A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 突沸を引き起こすことなく、且つ耐火物溶損
を増加させることなしに、フェロシリコンの如き高価な
還元剤を全く使用しない効率的なステンレス鋼の精錬方
法を提供する。 【構成】 クロムを含有した溶鉄を、転炉型反応器にて
脱炭精錬するに際し、前チャージで生成したクロム酸化
物を含有する脱炭滓を炉内に残存させたまま、炉内に炭
材を投入することにより、脱炭滓中のクロム酸化物(C
r2 O3 )濃度を20%以下とし、且つ脱炭滓の温度を
1400〜1700℃に保熱した状態で1500℃以下
の次チャージの溶銑を装入し、吹酸昇温精錬することに
より前記脱炭滓中のクロム分を還元した後、クロム回収
済スラグを排滓し、引き続いて同一炉でフェロクロム合
金を溶解しつつ脱炭精錬を行う。
を増加させることなしに、フェロシリコンの如き高価な
還元剤を全く使用しない効率的なステンレス鋼の精錬方
法を提供する。 【構成】 クロムを含有した溶鉄を、転炉型反応器にて
脱炭精錬するに際し、前チャージで生成したクロム酸化
物を含有する脱炭滓を炉内に残存させたまま、炉内に炭
材を投入することにより、脱炭滓中のクロム酸化物(C
r2 O3 )濃度を20%以下とし、且つ脱炭滓の温度を
1400〜1700℃に保熱した状態で1500℃以下
の次チャージの溶銑を装入し、吹酸昇温精錬することに
より前記脱炭滓中のクロム分を還元した後、クロム回収
済スラグを排滓し、引き続いて同一炉でフェロクロム合
金を溶解しつつ脱炭精錬を行う。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は転炉型反応容器による精
錬において前チャージで生成した脱炭滓中の酸化クロム
分を、次チャージの溶銑で還元した後、クロム回収済ス
ラグを排滓し、引き続いて同一炉で脱炭精錬することを
特徴とするステンレス粗溶鋼の製造方法に関するもので
ある。
錬において前チャージで生成した脱炭滓中の酸化クロム
分を、次チャージの溶銑で還元した後、クロム回収済ス
ラグを排滓し、引き続いて同一炉で脱炭精錬することを
特徴とするステンレス粗溶鋼の製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】クロムを含んだ溶鋼を精錬するための原
料としては、炉外精錬で脱燐・脱硫した高炉溶銑、クロ
ム鉱石の溶融還元により生成した含クロム溶銑、ステン
レス鋼スクラップを利用して電気炉で溶製した含クロム
溶鉄等がある。これらの原料は、上吹き転炉、底吹き転
炉、上底吹き転炉、AODで吹酸脱炭精錬され、場合に
よっては、さらにVODやRH−OBといった真空精錬
炉で吹酸脱炭精錬されることによって、材質特性を満た
す炭素濃度へと低下されている。
料としては、炉外精錬で脱燐・脱硫した高炉溶銑、クロ
ム鉱石の溶融還元により生成した含クロム溶銑、ステン
レス鋼スクラップを利用して電気炉で溶製した含クロム
溶鉄等がある。これらの原料は、上吹き転炉、底吹き転
炉、上底吹き転炉、AODで吹酸脱炭精錬され、場合に
よっては、さらにVODやRH−OBといった真空精錬
炉で吹酸脱炭精錬されることによって、材質特性を満た
す炭素濃度へと低下されている。
【0003】しかしながら、これらの精錬炉において
は、吹酸終了時に、吹酸脱炭中に生成した酸化クロムを
Fe−Si等の還元剤を用いて還元回収することが広く
行われている。この還元剤は価格が高いため、吹酸中の
クロム酸化をできる限り低下させる試みがなされてい
る。例えば、特開昭61−3815号公報や特開昭61
−19716号公報では、吹錬中の送酸速度と攪拌力と
を適正に制御することで、クロムの酸化を抑制した精錬
方法が開示されている。しかし、これらの方法を用いて
も、還元剤使用量をゼロにすることはできていない。
は、吹酸終了時に、吹酸脱炭中に生成した酸化クロムを
Fe−Si等の還元剤を用いて還元回収することが広く
行われている。この還元剤は価格が高いため、吹酸中の
クロム酸化をできる限り低下させる試みがなされてい
る。例えば、特開昭61−3815号公報や特開昭61
−19716号公報では、吹錬中の送酸速度と攪拌力と
を適正に制御することで、クロムの酸化を抑制した精錬
方法が開示されている。しかし、これらの方法を用いて
も、還元剤使用量をゼロにすることはできていない。
【0004】一方、クロムを含まない普通鋼では、脱炭
で生成したスラグを、転炉型反応容器で行う溶銑脱燐処
理の脱燐剤として用いる方法が、特開昭63−1952
09号公報で示されている。しかし、普通鋼の脱炭精錬
で生成するFeOは低温であっても溶銑中の炭素で容易
に還元されるために脱燐剤として有効であるのに対し
て、高クロム鋼の脱炭精錬で生成する酸化物は、難還元
性のCr2 O3 であるため、Cr2 O3 は低温状態では
炭素飽和に近い濃度の溶銑であっても還元できず、脱燐
剤としては利用できないという問題があった。また、F
eOの高いスラグは反応性が良いため、溶銑装入時に爆
発的なCOガスの発生反応が生じ、装入溶銑が飛散す
る、いわゆる突沸が起こるため、安全上の問題があっ
た。
で生成したスラグを、転炉型反応容器で行う溶銑脱燐処
理の脱燐剤として用いる方法が、特開昭63−1952
09号公報で示されている。しかし、普通鋼の脱炭精錬
で生成するFeOは低温であっても溶銑中の炭素で容易
に還元されるために脱燐剤として有効であるのに対し
て、高クロム鋼の脱炭精錬で生成する酸化物は、難還元
性のCr2 O3 であるため、Cr2 O3 は低温状態では
炭素飽和に近い濃度の溶銑であっても還元できず、脱燐
剤としては利用できないという問題があった。また、F
eOの高いスラグは反応性が良いため、溶銑装入時に爆
発的なCOガスの発生反応が生じ、装入溶銑が飛散す
る、いわゆる突沸が起こるため、安全上の問題があっ
た。
【0005】ところで、脱燐は炉外精錬で実施して、単
にクロム酸化物の還元のみを目的とした場合には、クロ
ム酸化物の転炉型反応容器での溶融還元技術に相当し、
このような技術は特開昭60−9815号公報や特開平
1−215913号公報で示されている。この方法は、
特定のスラグ組成に制御した条件下でクロム鉱石と炭材
とを連続的に添加するというものである。しかし、スラ
グ中に含有されるクロム酸化物濃度は脱炭滓に比較する
と極めて低く、スラグの流動性が高いことと、還元用に
多量の炭材を使用するため、溶銑は炭素が飽和濃度に近
く、溶銑による還元も速い速度で進行するという特徴が
あり、この技術では、クロム酸化物濃度が高く流動性が
ないスラグ状態での、炭素不飽和で、且つスラグ中の炭
材が存在しない条件での還元はできないという問題があ
った。
にクロム酸化物の還元のみを目的とした場合には、クロ
ム酸化物の転炉型反応容器での溶融還元技術に相当し、
このような技術は特開昭60−9815号公報や特開平
1−215913号公報で示されている。この方法は、
特定のスラグ組成に制御した条件下でクロム鉱石と炭材
とを連続的に添加するというものである。しかし、スラ
グ中に含有されるクロム酸化物濃度は脱炭滓に比較する
と極めて低く、スラグの流動性が高いことと、還元用に
多量の炭材を使用するため、溶銑は炭素が飽和濃度に近
く、溶銑による還元も速い速度で進行するという特徴が
あり、この技術では、クロム酸化物濃度が高く流動性が
ないスラグ状態での、炭素不飽和で、且つスラグ中の炭
材が存在しない条件での還元はできないという問題があ
った。
【0006】また、含クロム鋼滓からのクロムの回収利
用方法として、含クロム鋼の残滓を冷却固化し、転炉に
おける他の含クロム鋼用チャージの吹錬時に固体残滓を
添加する方法が特開昭53−119210号公報にて示
されている。しかし、この方法では、含クロム鋼の残滓
を冷却固化させるため、溶銑装入時の突沸は回避できる
ものの、低温時にはほとんど反応が進行せず、還元反応
を進行させて目標量のクロム分を回収するには、ある程
度の温度まで溶銑温度およびスラグ温度を上昇させる必
要があり、このことに起因して著しい精錬時間の延長、
すなわち生産性の低下を招くといった問題があった。
用方法として、含クロム鋼の残滓を冷却固化し、転炉に
おける他の含クロム鋼用チャージの吹錬時に固体残滓を
添加する方法が特開昭53−119210号公報にて示
されている。しかし、この方法では、含クロム鋼の残滓
を冷却固化させるため、溶銑装入時の突沸は回避できる
ものの、低温時にはほとんど反応が進行せず、還元反応
を進行させて目標量のクロム分を回収するには、ある程
度の温度まで溶銑温度およびスラグ温度を上昇させる必
要があり、このことに起因して著しい精錬時間の延長、
すなわち生産性の低下を招くといった問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、特開昭61
−3815号公報や特開昭61−19716号公報に開
示された技術では高価な還元剤使用量をゼロにすること
はできないという問題や、特開昭63−195209号
公報で開示されている技術では、突沸という安全上の問
題がある上に、高クロム鋼の脱炭精錬で生成する酸化物
は、難還元性のCr2 O3 であるため溶銑で容易に還元
されず、脱燐剤としては利用できないという問題、およ
び特開昭60−9815号公報や特開平1−21591
3号公報で開示されている方法では、クロム酸化物濃度
が高く流動性がないスラグ状態での、炭素不飽和で、且
つスラグ中に炭材が存在しない条件での還元はできない
という問題、さらには特開昭53−119210号公報
で示されている方法では著しい吹錬時間の延長を招くと
いった問題を解決し、効率的な脱炭滓を用いたステンレ
ス粗溶鋼の製造方法を提供することを目的とするもので
ある。
−3815号公報や特開昭61−19716号公報に開
示された技術では高価な還元剤使用量をゼロにすること
はできないという問題や、特開昭63−195209号
公報で開示されている技術では、突沸という安全上の問
題がある上に、高クロム鋼の脱炭精錬で生成する酸化物
は、難還元性のCr2 O3 であるため溶銑で容易に還元
されず、脱燐剤としては利用できないという問題、およ
び特開昭60−9815号公報や特開平1−21591
3号公報で開示されている方法では、クロム酸化物濃度
が高く流動性がないスラグ状態での、炭素不飽和で、且
つスラグ中に炭材が存在しない条件での還元はできない
という問題、さらには特開昭53−119210号公報
で示されている方法では著しい吹錬時間の延長を招くと
いった問題を解決し、効率的な脱炭滓を用いたステンレ
ス粗溶鋼の製造方法を提供することを目的とするもので
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解
決するものであって、その要旨とするところは、クロム
を含有した溶鉄を、転炉型反応容器にて脱炭精錬するに
際し、前チャージで生成したクロム酸化物を含有する脱
炭滓を炉内に残存させたまま、炉内に炭材を投入するこ
とにより、脱炭滓中のクロム酸化物(Cr2 O3 )濃度
を20%以下とし、且つ脱炭滓の温度を1400〜17
00℃に保熱した状態で1500℃以下の温度の次チャ
ージの溶銑を装入し、吹酸昇温精錬して前記脱炭滓中の
クロム分を還元した後、クロム回収済スラグを排滓し、
引き続いて同一炉でフェロクロム合金を溶解しつつ脱炭
精錬を行うことを特徴とする脱炭滓を用いたステンレス
粗溶鋼の製造方法にある。
決するものであって、その要旨とするところは、クロム
を含有した溶鉄を、転炉型反応容器にて脱炭精錬するに
際し、前チャージで生成したクロム酸化物を含有する脱
炭滓を炉内に残存させたまま、炉内に炭材を投入するこ
とにより、脱炭滓中のクロム酸化物(Cr2 O3 )濃度
を20%以下とし、且つ脱炭滓の温度を1400〜17
00℃に保熱した状態で1500℃以下の温度の次チャ
ージの溶銑を装入し、吹酸昇温精錬して前記脱炭滓中の
クロム分を還元した後、クロム回収済スラグを排滓し、
引き続いて同一炉でフェロクロム合金を溶解しつつ脱炭
精錬を行うことを特徴とする脱炭滓を用いたステンレス
粗溶鋼の製造方法にある。
【0009】ここで、次チャージの溶銑を装入するまで
に長時間を要し、脱炭滓の温度が1400℃未満に低下
するような場合には、炭材添加後に上吹き吹酸を行い、
炭材を燃焼させることにより、溶銑装入前の脱炭滓の温
度を1400〜1700℃に保持することが有効であ
る。また、前チャージ出鋼後に、生成スラグ(脱炭滓)
1トンに対し、1000kg/(ton−Slag)以
下の溶鋼を炉内に残存させるとともに、前チャージで生
成したクロム酸化物を含有する脱炭滓の成分が、CaO
/SiO2 が1.0〜3.0、MgOが15%以下であ
るか、あるいはCaO/SiO2 が3.0〜4.0、A
l2 O3 が5〜20%、MgOが15%以下であるこ
と、また吹酸昇温精錬は溶鋼中炭素濃度を1%以上とし
た状態で、溶鋼温度を1500〜1700℃に制御しつ
つ行うことにより、一層効率的に脱炭滓中のクロム分を
還元回収できる。
に長時間を要し、脱炭滓の温度が1400℃未満に低下
するような場合には、炭材添加後に上吹き吹酸を行い、
炭材を燃焼させることにより、溶銑装入前の脱炭滓の温
度を1400〜1700℃に保持することが有効であ
る。また、前チャージ出鋼後に、生成スラグ(脱炭滓)
1トンに対し、1000kg/(ton−Slag)以
下の溶鋼を炉内に残存させるとともに、前チャージで生
成したクロム酸化物を含有する脱炭滓の成分が、CaO
/SiO2 が1.0〜3.0、MgOが15%以下であ
るか、あるいはCaO/SiO2 が3.0〜4.0、A
l2 O3 が5〜20%、MgOが15%以下であるこ
と、また吹酸昇温精錬は溶鋼中炭素濃度を1%以上とし
た状態で、溶鋼温度を1500〜1700℃に制御しつ
つ行うことにより、一層効率的に脱炭滓中のクロム分を
還元回収できる。
【0010】さらに、前記のスラグ保熱温度を1400
〜1500℃にすると、耐火物の溶損は完全に抑制で
き、より安定して十分な効果が達成できる。
〜1500℃にすると、耐火物の溶損は完全に抑制で
き、より安定して十分な効果が達成できる。
【0011】
【作用】本発明の工程を図1に示す。工程1は出鋼後の
炭材添加による還元工程を、工程2は脱燐・脱硫溶銑の
転炉への装入工程を、工程3は昇温還元工程を、工程4
は中間排滓工程を、工程5は脱炭およびフェロクロム合
金の溶解工程を、工程6は出鋼工程を示す。図1におい
て、1は前チャージで生成した脱炭滓、2は炭材還元終
了後のスラグ、3は溶鉄(溶銑ないし溶鋼)、4は転
炉、5はクロム回収済スラグ、6は脱炭滓である。この
ように、前チャージの脱炭により生成した脱炭滓を転炉
内に残したまま、炭材を添加し、複数回の炉振りを行
い、脱炭滓と炭材を混合させることにより、脱炭滓中の
クロム酸化物(Cr2 O3 )濃度を20%以下にまで低
下させ、且つ酸素を上吹きして炭材を燃焼させることに
より、脱炭滓の温度を1400〜1700℃に保持した
状態で、1500℃以下の次チャージの溶銑を装入し、
次に酸素を上吹きして昇温を行うとともに、脱炭滓中の
クロム酸化物を還元する。その後、転炉を傾動してこの
クロム回収分スラグを排滓した後、炉を直立させ、酸素
を上吹きして脱炭を行うとともにフェロクロム合金を添
加溶解してステンレス粗溶鋼を製造する工程である。な
お、本発明でいう転炉型反応容器とは、上吹き転炉、上
底吹き転炉に代表される酸化性ガスによる吹錬を精錬手
段とする反応容器を指している。
炭材添加による還元工程を、工程2は脱燐・脱硫溶銑の
転炉への装入工程を、工程3は昇温還元工程を、工程4
は中間排滓工程を、工程5は脱炭およびフェロクロム合
金の溶解工程を、工程6は出鋼工程を示す。図1におい
て、1は前チャージで生成した脱炭滓、2は炭材還元終
了後のスラグ、3は溶鉄(溶銑ないし溶鋼)、4は転
炉、5はクロム回収済スラグ、6は脱炭滓である。この
ように、前チャージの脱炭により生成した脱炭滓を転炉
内に残したまま、炭材を添加し、複数回の炉振りを行
い、脱炭滓と炭材を混合させることにより、脱炭滓中の
クロム酸化物(Cr2 O3 )濃度を20%以下にまで低
下させ、且つ酸素を上吹きして炭材を燃焼させることに
より、脱炭滓の温度を1400〜1700℃に保持した
状態で、1500℃以下の次チャージの溶銑を装入し、
次に酸素を上吹きして昇温を行うとともに、脱炭滓中の
クロム酸化物を還元する。その後、転炉を傾動してこの
クロム回収分スラグを排滓した後、炉を直立させ、酸素
を上吹きして脱炭を行うとともにフェロクロム合金を添
加溶解してステンレス粗溶鋼を製造する工程である。な
お、本発明でいう転炉型反応容器とは、上吹き転炉、上
底吹き転炉に代表される酸化性ガスによる吹錬を精錬手
段とする反応容器を指している。
【0012】本発明者らは、Cr2 O3 含有スラグと炭
素飽和溶鉄との反応に関し、鋭意検討を行った結果、C
r2 O3 含有スラグの温度が1400℃以上であり、流
動性を有するものであっても、Cr2 O3 濃度を20%
以下にまで低下させることにより、1350℃程度の溶
銑とは、ほとんど反応が進行しないことを知見し得た。
本発明はこの知見に基づきなされたものである。すなわ
ち、普通鋼脱炭精錬で生成したスラグに溶銑を受銑した
場合に発生する、急激な酸化鉄の還元によるCOガスの
発生を原因とした突沸という大きな問題が、本発明の場
合には全く生じず、このため、前チャージの生成スラグ
を残存した炉内に溶銑を反応抑制した状態で装入でき
る。
素飽和溶鉄との反応に関し、鋭意検討を行った結果、C
r2 O3 含有スラグの温度が1400℃以上であり、流
動性を有するものであっても、Cr2 O3 濃度を20%
以下にまで低下させることにより、1350℃程度の溶
銑とは、ほとんど反応が進行しないことを知見し得た。
本発明はこの知見に基づきなされたものである。すなわ
ち、普通鋼脱炭精錬で生成したスラグに溶銑を受銑した
場合に発生する、急激な酸化鉄の還元によるCOガスの
発生を原因とした突沸という大きな問題が、本発明の場
合には全く生じず、このため、前チャージの生成スラグ
を残存した炉内に溶銑を反応抑制した状態で装入でき
る。
【0013】Cr2 O3 含有スラグからのクロムの還元
速度を速くするための条件は、スラグ/メタル間の反応
界面積が大きいこと、つまりスラグの液相率を高位に保
つこと、および溶融スラグ相中のCr2 O3 の還元反応
界面への移動の駆動力を大きく保つこと、つまりスラグ
中のCr2 O3 の活量が高いことであるが、図2に示す
如く、Cr2 O3 濃度が25%程度以上である場合に対
し、20%以下であるとスラグ中のCr2 O3 の活量は
1/2以下となり、反応の駆動力である溶融スラグ相中
のCr2 O3 の活量と反応界面積での活量差が小さくな
ることに起因して、スラグ/メタル間の反応性は著しく
低下してしまう。これは、スラグ中のCr2 O3 濃度が
20%以下まで低下すると固相中の純粋なCr2 O3 が
消滅し、CaO・Cr2 O3 やMgO・Cr2 O3 など
の複合酸化物の形成が主体となるためである。従って、
Cr2 O3 濃度が20%以下である場合には、溶銑によ
るクロムの還元反応はほとんど進行せず、溶銑装入時の
急激な還元反応に起因したCOガスの発生、すなわち突
沸の回避が可能となる。
速度を速くするための条件は、スラグ/メタル間の反応
界面積が大きいこと、つまりスラグの液相率を高位に保
つこと、および溶融スラグ相中のCr2 O3 の還元反応
界面への移動の駆動力を大きく保つこと、つまりスラグ
中のCr2 O3 の活量が高いことであるが、図2に示す
如く、Cr2 O3 濃度が25%程度以上である場合に対
し、20%以下であるとスラグ中のCr2 O3 の活量は
1/2以下となり、反応の駆動力である溶融スラグ相中
のCr2 O3 の活量と反応界面積での活量差が小さくな
ることに起因して、スラグ/メタル間の反応性は著しく
低下してしまう。これは、スラグ中のCr2 O3 濃度が
20%以下まで低下すると固相中の純粋なCr2 O3 が
消滅し、CaO・Cr2 O3 やMgO・Cr2 O3 など
の複合酸化物の形成が主体となるためである。従って、
Cr2 O3 濃度が20%以下である場合には、溶銑によ
るクロムの還元反応はほとんど進行せず、溶銑装入時の
急激な還元反応に起因したCOガスの発生、すなわち突
沸の回避が可能となる。
【0014】しかしながら、溶銑装入後の昇熱還元期
(図1中の工程3)においてもクロムの還元が進行しな
ければ、生産性の低下等を招き、実用的でない。これに
対し、本発明者らは、溶鉄(溶銑および溶鋼)、スラグ
双方の温度が1500℃以上であるならば、Cr2 O3
濃度が20%以下の場合でも、還元反応が大幅に促進さ
れることを発見した。図3はCr2 O3 含有スラグの溶
銑による還元反応の温度依存性を調査した結果である
が、Cr2 O3 濃度が20%以下である場合でも、15
00℃近傍を境界に還元速度が急激に増大していること
がわかる。つまり、通常操業範囲内である、脱炭滓の炉
内残存量が、装入溶銑量に対し、100〜500(kg
/ton−Pig)程度である場合には、装入溶銑の温
度が1500℃以下であり、且つスラグ温度が1700
℃以下であると、溶銑装入直後の双方の温度は1500
℃以下となるため、突沸回避が可能であることになる。
(図1中の工程3)においてもクロムの還元が進行しな
ければ、生産性の低下等を招き、実用的でない。これに
対し、本発明者らは、溶鉄(溶銑および溶鋼)、スラグ
双方の温度が1500℃以上であるならば、Cr2 O3
濃度が20%以下の場合でも、還元反応が大幅に促進さ
れることを発見した。図3はCr2 O3 含有スラグの溶
銑による還元反応の温度依存性を調査した結果である
が、Cr2 O3 濃度が20%以下である場合でも、15
00℃近傍を境界に還元速度が急激に増大していること
がわかる。つまり、通常操業範囲内である、脱炭滓の炉
内残存量が、装入溶銑量に対し、100〜500(kg
/ton−Pig)程度である場合には、装入溶銑の温
度が1500℃以下であり、且つスラグ温度が1700
℃以下であると、溶銑装入直後の双方の温度は1500
℃以下となるため、突沸回避が可能であることになる。
【0015】従って、このスラグを転炉内で溶銑と共存
させて昇温すれば、温度が上昇した後にスラグ中のクロ
ム酸化物が還元されることを示している。これはCr2
O3濃度が20%以下の場合、スラグ温度が1500℃
以上であると、スラグの液相率が著しく向上し、溶融ス
ラグ相中へのクロム酸化物の溶解速度が大きくなり、C
r2 O3 の活量も上昇するために反応が促進されている
ものである。ただし、実操業上は1700℃よりも高温
の場合には、耐火物の溶損量が急激に増大する。
させて昇温すれば、温度が上昇した後にスラグ中のクロ
ム酸化物が還元されることを示している。これはCr2
O3濃度が20%以下の場合、スラグ温度が1500℃
以上であると、スラグの液相率が著しく向上し、溶融ス
ラグ相中へのクロム酸化物の溶解速度が大きくなり、C
r2 O3 の活量も上昇するために反応が促進されている
ものである。ただし、実操業上は1700℃よりも高温
の場合には、耐火物の溶損量が急激に増大する。
【0016】本発明において、突沸の回避は可能である
ものの、生産性やクロム歩留りを考慮した場合、昇温還
元工程における還元速度は極力高位に維持することが必
要であり、この還元条件をより有利にするためには、C
r2 O3 濃度が20%以下であってもスラグ組成の制御
により、スラグ中のCr2 O3 の活量はできる限り高位
に維持する必要がある。これは、高クロム鋼の脱炭精錬
で生成したCr2 O3を25%以上含有するスラグから
のクロムの還元はスラグ中のCr2 O3 の活量が1と高
いため反応速度が速いということと、スラグ中に存在す
るクロム酸化物がCr2 O3 であるため容易に液相中へ
と溶解できるので、マクロ的には液相率を増大させずと
も還元が可能であるという事実の発見に基づくものであ
る。つまり、Cr2 O3 を含有するスラグはCr2 O3
を主成分とした微小な固相が、その他の酸化物により構
成される液体(溶融スラグ相)中に、無数に存在する状
況にあり、クロムの還元速度を高位に維持するために
は、固相は純粋なCr2 O3とすること、換言すれば、
CaO・Cr2 O3 やMgO・Cr2 O3 などを極力形
成しない条件にスラグ組成を保持することが必須であ
る。
ものの、生産性やクロム歩留りを考慮した場合、昇温還
元工程における還元速度は極力高位に維持することが必
要であり、この還元条件をより有利にするためには、C
r2 O3 濃度が20%以下であってもスラグ組成の制御
により、スラグ中のCr2 O3 の活量はできる限り高位
に維持する必要がある。これは、高クロム鋼の脱炭精錬
で生成したCr2 O3を25%以上含有するスラグから
のクロムの還元はスラグ中のCr2 O3 の活量が1と高
いため反応速度が速いということと、スラグ中に存在す
るクロム酸化物がCr2 O3 であるため容易に液相中へ
と溶解できるので、マクロ的には液相率を増大させずと
も還元が可能であるという事実の発見に基づくものであ
る。つまり、Cr2 O3 を含有するスラグはCr2 O3
を主成分とした微小な固相が、その他の酸化物により構
成される液体(溶融スラグ相)中に、無数に存在する状
況にあり、クロムの還元速度を高位に維持するために
は、固相は純粋なCr2 O3とすること、換言すれば、
CaO・Cr2 O3 やMgO・Cr2 O3 などを極力形
成しない条件にスラグ組成を保持することが必須であ
る。
【0017】このうち、MgO・Cr2 O3 はクロム鉱
石中の主成分であり、また脱炭滓においてもMgO濃度
が高すぎる場合には生成するため、脱炭滓中のMgO濃
度を15%以下にする必要がある。一方、CaO・Cr
2 O3 はスラグ中のCaO濃度が高すぎる場合に生成す
るため、CaO/SiO2 を3.0以下にする必要があ
る。ただし、CaO/SiO2 が3.0〜4.0の範囲
である場合にはAl2O3 濃度を5〜20%の範囲に制
御することにより、CaO・Al2 O3 系の化合物を形
成するため、CaO・Cr2 O3 の形成を極小化するこ
とが可能である。しかしながら、CaO/SiO2 が
3.0以下であっても、Al2 O3 濃度が5%未満の場
合や、CaO/SiO2 が4.0超であると20%以下
のAl2 O 3 濃度ではCaO・Al2 O3 系化合物の形
成に不十分であるため、CaO・Cr2 O3 の形成が促
進されてしまう。また、CaO/SiO2 が1.0未満
の場合や、Al2 O3 濃度が20%超の場合には、Mg
O溶解度が増えるため耐火物溶損が増大して実用的では
ない。
石中の主成分であり、また脱炭滓においてもMgO濃度
が高すぎる場合には生成するため、脱炭滓中のMgO濃
度を15%以下にする必要がある。一方、CaO・Cr
2 O3 はスラグ中のCaO濃度が高すぎる場合に生成す
るため、CaO/SiO2 を3.0以下にする必要があ
る。ただし、CaO/SiO2 が3.0〜4.0の範囲
である場合にはAl2O3 濃度を5〜20%の範囲に制
御することにより、CaO・Al2 O3 系の化合物を形
成するため、CaO・Cr2 O3 の形成を極小化するこ
とが可能である。しかしながら、CaO/SiO2 が
3.0以下であっても、Al2 O3 濃度が5%未満の場
合や、CaO/SiO2 が4.0超であると20%以下
のAl2 O 3 濃度ではCaO・Al2 O3 系化合物の形
成に不十分であるため、CaO・Cr2 O3 の形成が促
進されてしまう。また、CaO/SiO2 が1.0未満
の場合や、Al2 O3 濃度が20%超の場合には、Mg
O溶解度が増えるため耐火物溶損が増大して実用的では
ない。
【0018】また、上記各組成のスラグは粘性が高いた
め、炭材を過剰に添加せずともスロッピングしないとい
う特徴がある。従って、上吹き酸素により鋼浴の脱炭を
進行させつつ還元を実施することが可能となる。こうす
ることで、還元期と脱炭期とを通した全脱炭量が減少す
るため、生産性を大幅に向上させることができる。図4
は炭素濃度と還元速度の関係を示したものであるが、ス
ラグ組成を上記の条件に制御することにより、炭素濃度
は1%以上であれば十分な還元力があることがわかる。
め、炭材を過剰に添加せずともスロッピングしないとい
う特徴がある。従って、上吹き酸素により鋼浴の脱炭を
進行させつつ還元を実施することが可能となる。こうす
ることで、還元期と脱炭期とを通した全脱炭量が減少す
るため、生産性を大幅に向上させることができる。図4
は炭素濃度と還元速度の関係を示したものであるが、ス
ラグ組成を上記の条件に制御することにより、炭素濃度
は1%以上であれば十分な還元力があることがわかる。
【0019】ところで、出鋼後の脱炭滓の炭材添加によ
る還元についても、生産性の観点から極力効率的に行う
必要がある。この条件としては、転炉内に炭材を添加
後、複数回の炉振りを行うことにより、スラグ/炭材界
面積を十分に確保すること、および上吹き吹酸による炭
材の燃焼により還元反応を行うのに十分な温度を確保す
ることであるが、1700℃より高温で炭材還元を行
う、つまり溶銑装入時のスラグ温度が1700℃超であ
る場合には、還元速度は高位を維持できるものの、たと
えCr2 O3 濃度を20%以下にまで低減しても、次工
程の溶銑装入時に局部的な高温部分が存在し、突沸を引
き起こす可能性があり、また耐火物の溶損量も増大する
ために実用的ではない。逆に突沸回避のためにスラグ冷
却を行うと、冷却時間を必要とするため生産性に障害を
生じる。また、溶銑装入時のスラグ温度が1400℃未
満であると、還元速度そのものが遅くなるという問題が
生じることになる。従って、出鋼後の脱炭滓の炭材還元
は1400〜1700℃の範囲で行う必要がある。な
お、この炭材還元を、1000kg/(ton−Sla
g)以下の前チャージ出鋼後の溶鋼を炉内に残存させて
行うことにより、スラグ/炭材間に加え、スラグ/溶鉄
間も反応界面となり得るため、還元速度は飛躍的に向上
する。ただし、残存溶鋼量が1000kg/(ton−
Slag)を超えると、それ以上の還元速度の向上効果
はほとんどなく(図5)、逆に出鋼歩留りが低下し、生
産性に障害を生じるため実用的ではない。
る還元についても、生産性の観点から極力効率的に行う
必要がある。この条件としては、転炉内に炭材を添加
後、複数回の炉振りを行うことにより、スラグ/炭材界
面積を十分に確保すること、および上吹き吹酸による炭
材の燃焼により還元反応を行うのに十分な温度を確保す
ることであるが、1700℃より高温で炭材還元を行
う、つまり溶銑装入時のスラグ温度が1700℃超であ
る場合には、還元速度は高位を維持できるものの、たと
えCr2 O3 濃度を20%以下にまで低減しても、次工
程の溶銑装入時に局部的な高温部分が存在し、突沸を引
き起こす可能性があり、また耐火物の溶損量も増大する
ために実用的ではない。逆に突沸回避のためにスラグ冷
却を行うと、冷却時間を必要とするため生産性に障害を
生じる。また、溶銑装入時のスラグ温度が1400℃未
満であると、還元速度そのものが遅くなるという問題が
生じることになる。従って、出鋼後の脱炭滓の炭材還元
は1400〜1700℃の範囲で行う必要がある。な
お、この炭材還元を、1000kg/(ton−Sla
g)以下の前チャージ出鋼後の溶鋼を炉内に残存させて
行うことにより、スラグ/炭材間に加え、スラグ/溶鉄
間も反応界面となり得るため、還元速度は飛躍的に向上
する。ただし、残存溶鋼量が1000kg/(ton−
Slag)を超えると、それ以上の還元速度の向上効果
はほとんどなく(図5)、逆に出鋼歩留りが低下し、生
産性に障害を生じるため実用的ではない。
【0020】さらに、装入溶銑温度についても、その温
度が1500℃を超える場合には、炉内残存スラグ温度
が1400℃以上であるとスラグ・メタル間の局部的な
高温(1500℃以上)部分を形成する場合があるた
め、突沸の危険性を回避することができない。
度が1500℃を超える場合には、炉内残存スラグ温度
が1400℃以上であるとスラグ・メタル間の局部的な
高温(1500℃以上)部分を形成する場合があるた
め、突沸の危険性を回避することができない。
【0021】
【実施例】実施例の工程は図1と同一である。前チャー
ジの脱炭により生成した脱炭滓を炉内に残した175ト
ン上底吹き転炉へ、炉上から炭材を添加し、複数回の炉
振りを行った後、次チャージの溶銑を装入し、次に酸素
を上吹きして昇温を行うとともに、脱炭滓中のクロム酸
化物を還元する(昇温還元期)。その後、転炉を傾動し
て、一部もしくは大部分のスラグを排滓し、次いで炉を
直立させ、フェロクロム合金とフラックスを添加しつつ
送酸を行い、脱炭精錬を実施する。目的の炭素濃度まで
低下した後に、再び炉を傾動し、溶鋼のみを出鋼し、ク
ロム酸化物を含んだスラグは炉内に残留させる。出鋼し
た溶鋼は仕上脱炭工程へ移動し、転炉へはスラグを残し
たまま炉上から炭材を添加する。ここでは、熱的条件や
スラグ条件によっては、昇温還元期において炭材やフラ
ックスを用いる場合や、昇温還元期、もしくは脱炭期に
スクラップを用いる場合もある。
ジの脱炭により生成した脱炭滓を炉内に残した175ト
ン上底吹き転炉へ、炉上から炭材を添加し、複数回の炉
振りを行った後、次チャージの溶銑を装入し、次に酸素
を上吹きして昇温を行うとともに、脱炭滓中のクロム酸
化物を還元する(昇温還元期)。その後、転炉を傾動し
て、一部もしくは大部分のスラグを排滓し、次いで炉を
直立させ、フェロクロム合金とフラックスを添加しつつ
送酸を行い、脱炭精錬を実施する。目的の炭素濃度まで
低下した後に、再び炉を傾動し、溶鋼のみを出鋼し、ク
ロム酸化物を含んだスラグは炉内に残留させる。出鋼し
た溶鋼は仕上脱炭工程へ移動し、転炉へはスラグを残し
たまま炉上から炭材を添加する。ここでは、熱的条件や
スラグ条件によっては、昇温還元期において炭材やフラ
ックスを用いる場合や、昇温還元期、もしくは脱炭期に
スクラップを用いる場合もある。
【0022】表1に本発明における炭材還元の実施例を
比較例とともに示す。試験番号1から6は本発明の実施
例である。これに対し、試験番号7は溶銑装入時のスラ
グ温度が高い場合であるが、突沸の発生が見られ、また
耐火物の溶損も多大である。また、試験番号8は保熱温
度が低く、炭材還元が不十分でCr2 O3 濃度が高い場
合であるが、この場合は装入溶銑温度が1500℃以下
であると、突沸の発生は起こらないもののその後の昇温
還元工程に時間を要し、生産性に問題を生じる。さら
に、試験番号9、試験番号10は装入溶銑温度が高い場
合であるが、これらの場合はいずれも突沸が発生してい
る。また、試験番号11、12は保熱温度は十分である
が、炉振りを行わず、炭材還元が不十分であった場合で
あるが、スラグ温度が高く、溶銑装入後のスラグ・溶銑
双方の温度が1500℃を超えてしまうような場合には
突沸が発生し、1500℃以下の場合では炭材還元期に
還元が進行しなかったことに起因して、その後の昇熱還
元期に長時間を要するため、生産性に問題を生じる。
比較例とともに示す。試験番号1から6は本発明の実施
例である。これに対し、試験番号7は溶銑装入時のスラ
グ温度が高い場合であるが、突沸の発生が見られ、また
耐火物の溶損も多大である。また、試験番号8は保熱温
度が低く、炭材還元が不十分でCr2 O3 濃度が高い場
合であるが、この場合は装入溶銑温度が1500℃以下
であると、突沸の発生は起こらないもののその後の昇温
還元工程に時間を要し、生産性に問題を生じる。さら
に、試験番号9、試験番号10は装入溶銑温度が高い場
合であるが、これらの場合はいずれも突沸が発生してい
る。また、試験番号11、12は保熱温度は十分である
が、炉振りを行わず、炭材還元が不十分であった場合で
あるが、スラグ温度が高く、溶銑装入後のスラグ・溶銑
双方の温度が1500℃を超えてしまうような場合には
突沸が発生し、1500℃以下の場合では炭材還元期に
還元が進行しなかったことに起因して、その後の昇熱還
元期に長時間を要するため、生産性に問題を生じる。
【0023】
【表1】
【0024】表2は図1に示した本発明の昇温還元期に
おいて、より効率的条件を明確にしたものを比較例と併
せてて示したものである。試験番号13から21は本発
明の実施例における好ましい条件に対応する。一方、試
験番号の22と23は脱炭滓中の塩基度(CaO/Si
O2 )が低い場合と高い場合であるが、低い場合には還
元自体に問題はないものの、スラグ中へのMgOの溶解
度が増すため耐火物溶損量が増大する。逆に高い場合に
は、スラグ中の固相がCaO・Cr2 O3 となるため、
Cr2 O3 の活量が低下し、還元速度が向上せず、昇温
還元期終了時のCr2 O3 濃度が高くなる。また、試験
番号24はAl2 O3 濃度が高い場合であるが、この場
合においても還元自体には問題はないものの、耐火物溶
損量の増大が問題となる。さらに、試験番号25はMg
O濃度が高い場合であるが、この場合もスラグ中の固相
がMgO・Cr2 O3 となるため、Cr2 O3 の活量が
低下し、還元速度が低いため、昇温還元期終了時のCr
2 O3 濃度が高くなる。これに対して、試験番号26と
27は昇温還元期終了時の温度が高い場合と低い場合で
あるが、高い場合には還元自体には問題はないものの、
耐火物溶損量が著しく増加する。逆に低い場合には、ス
ラグの液相率の低下に起因して反応性が阻害されるた
め、昇温還元終了時のCr2 O3 濃度が高くなる。ま
た、試験番号28は溶鉄中の炭素濃度が1%以下の場合
であるが、還元速度の低下に起因して、昇温還元終了時
のCr2 O3 が高くなる。
おいて、より効率的条件を明確にしたものを比較例と併
せてて示したものである。試験番号13から21は本発
明の実施例における好ましい条件に対応する。一方、試
験番号の22と23は脱炭滓中の塩基度(CaO/Si
O2 )が低い場合と高い場合であるが、低い場合には還
元自体に問題はないものの、スラグ中へのMgOの溶解
度が増すため耐火物溶損量が増大する。逆に高い場合に
は、スラグ中の固相がCaO・Cr2 O3 となるため、
Cr2 O3 の活量が低下し、還元速度が向上せず、昇温
還元期終了時のCr2 O3 濃度が高くなる。また、試験
番号24はAl2 O3 濃度が高い場合であるが、この場
合においても還元自体には問題はないものの、耐火物溶
損量の増大が問題となる。さらに、試験番号25はMg
O濃度が高い場合であるが、この場合もスラグ中の固相
がMgO・Cr2 O3 となるため、Cr2 O3 の活量が
低下し、還元速度が低いため、昇温還元期終了時のCr
2 O3 濃度が高くなる。これに対して、試験番号26と
27は昇温還元期終了時の温度が高い場合と低い場合で
あるが、高い場合には還元自体には問題はないものの、
耐火物溶損量が著しく増加する。逆に低い場合には、ス
ラグの液相率の低下に起因して反応性が阻害されるた
め、昇温還元終了時のCr2 O3 濃度が高くなる。ま
た、試験番号28は溶鉄中の炭素濃度が1%以下の場合
であるが、還元速度の低下に起因して、昇温還元終了時
のCr2 O3 が高くなる。
【0025】
【表2】
【0026】
【発明の効果】本発明により、転炉型反応容器による精
錬において、前チャージの脱炭滓を次チャージの吹錬に
利用することにより、突沸を引き起こすことなく、且つ
耐火物溶損を増加させることなしに高価な還元剤を全く
使用しない効率的なステンレス鋼の精錬が可能となっ
た。
錬において、前チャージの脱炭滓を次チャージの吹錬に
利用することにより、突沸を引き起こすことなく、且つ
耐火物溶損を増加させることなしに高価な還元剤を全く
使用しない効率的なステンレス鋼の精錬が可能となっ
た。
【図1】本発明の工程を示す図である。
【図2】スラグ中Cr2 O3 の活量に対するCr2 O3
濃度の影響を示す図である。
濃度の影響を示す図である。
【図3】スラグ中のクロム酸化物量の低下速度に対する
温度依存性を示す図である。
温度依存性を示す図である。
【図4】スラグ中のクロム酸化物量の低下速度に対する
炭素濃度の影響を示す図である。
炭素濃度の影響を示す図である。
【図5】スラグ中のクロム酸化物量の低下速度に対する
炉内残存溶鋼量の影響を示す図である。
炉内残存溶鋼量の影響を示す図である。
1 前チャージで生成した脱炭滓 2 炭材還元終了後のスラグ 3 溶鉄(溶銑ないし溶鋼) 4 転炉 5 クロム回収済スラグ 6 脱炭滓
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 矢野 正孝 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内
Claims (6)
- 【請求項1】 クロムを含有した溶鉄を、転炉型反応容
器にて脱炭精錬するに際し、前チャージで生成したクロ
ム酸化物を含有する脱炭滓を炉内に残存させたまま、炉
内に炭材を投入することにより、脱炭滓中のクロム酸化
物(Cr2 O 3 )濃度を20%以下とし、且つ脱炭滓の
温度を1400〜1700℃に保熱した状態で1500
℃以下の次チャージの溶銑を装入し、吹酸昇温精錬して
前記脱炭滓中のクロム分を還元した後、クロム回収済ス
ラグを排滓し、引き続いて同一炉でフェロクロム合金を
溶解しつつ脱炭精錬を行うことを特徴とする脱炭滓を用
いたステンレス粗溶鋼の製造方法。 - 【請求項2】 クロムを含有した溶鉄を、転炉型反応容
器にて脱炭精錬するに際し、前チャージで生成したクロ
ム酸化物を含有する脱炭滓を炉内に残存させたまま、炉
内に炭材を投入することにより、脱炭滓中のクロム酸化
物(Cr2 O 3 )濃度を20%以下とし、且つ酸素を吹
付けることにより、炭材を燃焼させ、脱炭滓の温度を1
400〜1700℃に保熱した状態で1500℃以下の
次チャージの溶銑を装入し、吹酸昇温精錬して前記脱炭
滓中のクロム分を還元した後、クロム回収済スラグを排
滓し、引き続いて同一炉でフェロクロム合金を溶解しつ
つ脱炭精錬を行うことを特徴とする脱炭滓を用いたステ
ンレス粗溶鋼の製造方法。 - 【請求項3】 前チャージ出鋼後に、生成スラグ(脱炭
滓)1トンに対し、1000kg/(ton−Sla
g)以下の溶鋼を炉内に残存させることを特徴とする請
求項1または2記載の脱炭滓を用いたステンレス粗溶鋼
の製造方法。 - 【請求項4】 前チャージで生成したクロム酸化物を含
有する脱炭滓の成分が、CaO/SiO2 が1.0〜
3.0、MgOが15%以下であることを特徴とする請
求項1〜3のいずれか1項に記載の脱炭滓を用いたステ
ンレス粗溶鋼の製造方法。 - 【請求項5】 前チャージで生成したクロム酸化物を含
有する脱炭滓の成分が、CaO/SiO2 が3.0〜
4.0、Al2 O3 が5〜20%、MgOが15%以下
であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に
記載の脱炭滓を用いたステンレス粗溶鋼の製造方法。 - 【請求項6】 吹酸昇温精錬は炭素濃度を1%以上とし
た状態で溶鋼温度を1500〜1700℃に制御しつつ
行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記
載の脱炭滓を用いたステンレス粗溶鋼の溶製方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1180794A JPH07216429A (ja) | 1994-02-03 | 1994-02-03 | 脱炭滓を用いたステンレス粗溶鋼の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1180794A JPH07216429A (ja) | 1994-02-03 | 1994-02-03 | 脱炭滓を用いたステンレス粗溶鋼の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07216429A true JPH07216429A (ja) | 1995-08-15 |
Family
ID=11788113
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP1180794A Withdrawn JPH07216429A (ja) | 1994-02-03 | 1994-02-03 | 脱炭滓を用いたステンレス粗溶鋼の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH07216429A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2003083144A1 (de) * | 2002-03-28 | 2003-10-09 | Sms Demag Aktiengesellschaft | Verfahren zur behandlung von legierten kohlenstoffhaltigen eisenschmelzen zur herstellung von stahl |
CN102851594A (zh) * | 2012-08-31 | 2013-01-02 | 舞阳钢铁有限责任公司 | 一种低成本临氢铬钼钢的冶炼控硅方法 |
KR20200049076A (ko) * | 2018-10-31 | 2020-05-08 | 주식회사 포스코 | 용융물 처리 방법 및 이에 의하여 제조되는 스테인리스 강 |
-
1994
- 1994-02-03 JP JP1180794A patent/JPH07216429A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2003083144A1 (de) * | 2002-03-28 | 2003-10-09 | Sms Demag Aktiengesellschaft | Verfahren zur behandlung von legierten kohlenstoffhaltigen eisenschmelzen zur herstellung von stahl |
CN102851594A (zh) * | 2012-08-31 | 2013-01-02 | 舞阳钢铁有限责任公司 | 一种低成本临氢铬钼钢的冶炼控硅方法 |
KR20200049076A (ko) * | 2018-10-31 | 2020-05-08 | 주식회사 포스코 | 용융물 처리 방법 및 이에 의하여 제조되는 스테인리스 강 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20010403 |