JPH09183799A - ヒト化モノクローナル抗体 - Google Patents

ヒト化モノクローナル抗体

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JPH09183799A
JPH09183799A JP29396196A JP29396196A JPH09183799A JP H09183799 A JPH09183799 A JP H09183799A JP 29396196 A JP29396196 A JP 29396196A JP 29396196 A JP29396196 A JP 29396196A JP H09183799 A JPH09183799 A JP H09183799A
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mouse
human
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mab15
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JP29396196A
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Mary Dr Bendig
ベンディッグ マリー
Tarran Jones
ジョーンズ ターラン
Jose Saldana
サルダナ ジョーズ
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Merck Patent GmbH
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 新規のヒト化再成形モノクローナル抗体、そ
のDNAおよびアミノ酸配列、および腫瘍、とくに肺癌
の治療に使用するための該抗体を含む組成物を提供す
る。 【解決手段】 ネズミモノクローナル抗体15(MAb
15)のアミノ酸配列を利用して抗MAb15ヒト化再
成形モノクローナル抗体をデザインして合成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する分野】本発明は、そのネズミ型からヒト
化された新規のモノクローナル抗体に関する。本発明は
とくに、ヒト腫瘍細胞、好ましくはヒト肺癌に治療的効
果を示すことが公知のネズミMAb15(DSM ACC211
7)のヒト化および再成形された変異体に関する。
【0002】さらに本発明は、該抗体の可変部の特有の
DNAおよびアミノ酸配列(図14、15および図1
7、18)に関する。
【0003】さらに本発明は、黒色腫、神経膠腫または
癌腫、とくに肺癌腫などの腫瘍の治療を目的とする、該
抗体またはそのフラグメントからなる薬剤組成物に関す
る。該抗体またはフラグメントはまた、これら腫瘍をイ
ンビトロまたはインビボで探索および評価するに当たっ
ての診断的適用のために使用することができる。
【0004】最後に、本発明は、ネズミMAb15の今
日まで公知ではなかったDNAおよびアミノ酸配列(図
1、2)に関する。
【0005】マウスモノクローナル抗体MAb15は、
ヒト小細胞肺癌腫の変異体細胞系のTKB−2細胞で免
疫したマウスから分離された。
【0006】MAb15は、ブダペスト条約の規定およ
び要求に従って、DSM ACC2117の受託番号で「Deutsche
Sammlung fur Mikroorganismen(独国微生物収集)」に
出願者によって寄託された。
【0007】
【従来の技術】MAb15は、四つの主要型肺癌細胞、
および肺癌の72%と反応すると初めは報告された。正
常組織との交差反応は、食道および腎細管に限定された
(Endoら、1986)。MAb15は、分子量45、000および
85、000kDの二つの糖タンパク質を認識するマウスIg
G1/κ抗体であると報告された(Endoら、1986)。全
マウスIgG抗体の会合定数は、1.9×10-9Mと決
定された(Endoら、1988)。マウスを用いたTKB−2
細胞の異種移植の実験によって、MAb15およびMA
b15由来抗体フラグメントが腫瘍細胞への抗体局在性
を示すことが示された(Endoら、1988)。さらなる研究
によって、培養培地に加えられた場合、MAb15は肺
癌細胞の増殖を阻害することが示された。肺癌に特異的
な成長因子レセプターをブロックすることによってMA
b15が増殖を阻害したことが示唆された(Kammaら、1
989)。
【0008】現在、MAb15によって認識される抗原
は、80〜90kDのグリコシル化重鎖および38kD
の非グリコシル化軽鎖からなる120〜125kDのジ
スルフィド結合ヘテロダイマーのヒト細胞表面抗原4F
2であると考えられている。この抗原は増殖している細
胞に遍在して発現されるが、非増殖細胞では特定の組織
に限定される。その機能は、Ca+/Na+交換に関係す
ると言われている。4F2は、細胞内カルシウム濃度の
調節および成長、興奮性およびホルモン分泌の同時的コ
ントロールにおいて役割を有すると考えられている(Te
ixeiraら、1987;Quackenbushら、1987)。
【0009】MAb15は、充実性腫瘍の免疫療法のた
めの基礎となり得ると思われるマウス抗体のひとつであ
る。しかし、マウス抗体は、ヒトに対して免疫原性が高
く、そのためにヒトにおける治療的価値が限定される。
ヒトのインビボでのマウス抗体の半減期は比較的短い。
加えて、マウス抗体は何回も投与すると、期待された効
果を阻害するだけではなく患者に悪いアレルギー性反応
のリスクをもたらすような免疫応答を引き起こす。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】したがって、以上の問
題を解決するためには、ヒト化されたMAb15変形体
を作り出すことが望ましいと思われる。いくつかのヒト
化工程が公知である(例えば、EP 0239 400)が、新た
に合成された「ヒト」抗体が多くの場合に抗原結合部位
への親和性の一部または完全欠失を示すために、これら
ヒト化工程は多くはあまり満足いく結果をもたらしてい
ない。したがって、まず、抗原親和性を再確立するため
に抗体の骨格(フレームワーク:frame wor
k)領域のいくつかのアミノ酸を交換することが必要で
ある。しかし、この必要とされる交換は、通常、予測で
きない。
【0011】マウス抗体は、二つの方法でヒト化でき
る。より簡単な方法は、可変部がオリジナルのマウスモ
ノクローナル抗体に由来し、定常部が適当なヒト抗体に
由来するようなキメラ抗体を構築する方法である。得ら
れるキメラ抗体は、オリジナルのマウス抗体の全可変ド
メインを含み、オリジナルのマウス抗体と同じ特異性で
抗原に結合することが期待される。加えて、キメラ抗体
では非ヒト源に由来するタンパク質配列の割合が実質的
に減っていることから、オリジナルのマウス抗体よりも
低い免疫原性が期待される。キメラ抗体は抗原によく結
合し、免疫原性もより低減されることが予測されるが、
マウス可変部への免疫応答はやはり起き得る(LoBuglio
ら、1989;Khazaeliら、1991;Meredithら、1991;Sale
hら、1992)。
【0012】
【課題を解決するための手段】マウス抗体をヒト化する
ための第二の方法は、より複雑だが、より確実にマウス
抗体の潜在的免疫原性を低減する方法である。この方法
では、マウス抗体の可変部からの相補性決定領域(CD
R)をヒト可変部に移植して「再成形された(resh
aped)」ヒト可変部を作出する。次いで、これら再
成形されたヒト可変部とヒト定常部を連結する。非ヒト
タンパク質配列に由来する最終再成形ヒト抗体の唯一の
部分は、CDRである。CDRは、高度に可変性のタン
パク質配列である。これらは種特異的配列を示さない。
これらの理由から、マウスCDRを有する再成形ヒト抗
体は、ヒトCDRを含む天然のヒト抗体より高くない免
疫原性を示すはずである。
【0013】本発明は、(1)マウス15軽鎖および重
鎖の可変部をクローニングして配列決定し、(2)キメ
ラ15抗体を構築、発現および分析し、(3)マウス1
5可変部のモデルを作り、(4)再成形ヒト15可変部
をデザインして、(5)数バージョンの再成形ヒト15
抗体を構築、発現および分析することからなる。以前の
報告(WO 92/15683)に、EGFレセプターに対する抗体
のMAb425であるヒト化に関して最初の二つの部分
の結果が詳述されている。
【0014】本明細書における次の技術用語は以下のよ
うに定義される。「FR」(フレームワーク領域)は、
三つのCDRを支える軽鎖(L鎖)または重鎖(H鎖)
の可変部の四つのサブ領域を意味する。「CDR」(相
補性決定領域)は、超可変配列を有し、抗原との直接接
触の決定要因となるループ構造物を形成する軽鎖または
重鎖可変部の三つのサブ領域を意味する。
【0015】「キメラ」すなわち部分的にヒト化された
抗体は、ヒト材料に由来する定常部および非ヒト材料、
例えばマウスなどの非ヒト材料に由来する可変部(CD
Rを含む)からなる抗体を意味する。
【0016】「ヒト化」すなわち完全にヒト化された抗
体は、ヒト材料由来の定常部およびFRからなるが、C
DRは非ヒト材料に由来する抗体を意味する。
【0017】「再成形された」抗体は、最適の構造を得
るため、すなわち抗原の結合部位への親和性を再確立す
るために二、三のアミノ酸を変更したFRを含む抗体を
意味する。
【0018】本発明は、提示したDNAまたはアミノ酸
配列を包含するだけではなく、加えて、例えば、これら
のまたは完全な抗体または抗体フラグメントの生物的活
性を変化させない物理的または化学的な自然発生的影響
または所望の処理によって生じたこれら配列の突然変異
体および変異体(例えば二、三のヌクレオチドまたはア
ミノ酸の変更)をも含む。
【0019】用語「抗体」はまた、F(ab´)、F
(ab´)2または単鎖Fvなどの抗体フラグメントを
含む。
【0020】
【発明の実施の形態】全長マウス15可変部のクローニング MAb15を発現するハイブリドーマ細胞系から調製し
たcDNAからのマウス15可変部のクローニングを、
デザインされた混合変性プライマーを用いて達成した
(JonesおよびBendig、1991)。二組のプライマーがデ
ザインされた。一組はマウスκ鎖のリーダー配列とハイ
ズリダイズし、11個のプライマー群からなる。もう一
組はマウスγ鎖のリーダー配列とハイブリダイズし、1
2のプライマーグループからなる。変性5´−PCRプ
ライマーを、マウスκおよびγ−1定常部内でハイブリ
ダイズする3´−PCRプライマーと共に用いた(表
1)。両組のプライマーは、可変部コード配列の外側に
あり、したがって全長マウス可変部をクローニングす
る。PCR増幅の後、κおよびγ鎖反応からの適当な長
さ(450bp)の生成物が得られた。次いで、これら
生成物を、PCRプライマー内に含まれる制限酵素部
位、すなわちリーダー配列プライマー内のXmaIおよ
び定常部プライマー内のSalIを用いて、pUC19
ベクター中にクローニングした。増幅中のPCRエラー
の可能性のため、別々のPCR反応からの少なくとも二
つのクローンをクローニングして配列決定した。
【0021】マウス15γ鎖可変部を、γリーダー配列
プライマーとγ−1定常部プライマーとの混合物を用い
てPCR−クローニングした。二つの重鎖クローンのD
NA配列決定によって、全長可変部に翻訳可能な同一配
列が得られた。第三のクローニングされたPCRフラグ
メントからは376位に塩基置換を有する配列が得ら
れ、これは可変部中に停止コドンを生じさせた。この塩
基置換は、おそらくPCR増幅中に導入されたものと思
われた。得られたDNA配列から、マウス重鎖リーダー
配列プライマーグループ4は、マウス15重鎖可変部の
PCR−クローニングを導くと思われた(表1)。
【0022】マウス15κ鎖可変部を、κリーダー配列
プライマーとκ定常部プライマーとの混合物を用いてP
CR−クローニングした。プライマーグループ2は、4
50bpのDNAフラグメントのPCR−クローニング
を導いた。二つの別々のPCR反応からの四つのDNA
フラグメントのDNA配列分析によって、これらκ鎖可
変部がフレームワーク4中に停止部を、CDR3周辺に
読み枠シフトを有することが示された。この無機能性κ
鎖のDNA配列は、mopc21n遺伝子配列のDNA
配列(Walfieldら、1981)に対応した。この遺伝子は、
V−J2接合部において四つのヌクレオチドの欠失をも
たらす不良配列を有し、その結果、翻訳読み枠シフトが
生じる。PCR−クローニングは、κ鎖リーダー配列プ
ライマーグループを別々に用いて繰り返した。グループ
2およびグループ7からのプライマーを用いてDNA生
成物を得た。無機能性mopc21nκ鎖を、グループ
2からのプライマーを用いてクローニングした。全長可
変部をグループ7からのプライマーを用いてクローニン
グした。このPCR生成物は、機能性マウス15κ鎖可
変部と考えられた。同一のDNA配列を、グループ7プ
ライマーを用いて生じさせた二つの別々のPCR反応か
ら得た。これらはともに、同一の全長可変部をコードし
た。
【0023】マウス15軽鎖および重鎖可の変部のDN
A配列およびタンパク質翻訳を、図1、2および図3、
4にそれぞれ示す。
【0024】マウス15可変部のタンパク質配列とマウ
ス可変部の共通配列との比較 マウス15軽鎖および重鎖の可変部を、米国ウィスコン
シン大学遺伝学コンピューターグループの配列分析ソフ
トウェアパッケージからのGAPプログラムを用いて、
Kapatら(1987)によって定義されたマウス可変部の異
なるサブグループの共通配列と比較した。一致の割合を
表2に示す。マウス15軽鎖可変部は、72.6%の一
致を示すマウスκ鎖可変部サブグループ「k1」に最も
類似している。マウス15重鎖可変部は、73.3%の
一致を示すその他種々のマウス重鎖可変部サブグループ
(表では「その他」(miscellaneous)で
表示する)に最も類似している。このデータは、マウス
15軽鎖および重鎖の可変部のためにクローニングした
cDNAが確かに典型的な機能性マウス可変部をコード
することを示唆する。
【0025】キメラ15抗体の構築 キメラ15抗体を、PCR−クローニングしたマウス1
5軽鎖および重鎖の可変部をヒトκおよびγ−1定常部
にそれぞれ連結することによって構築した。必要なヒト
定常部を既に含んでいる入手可能な哺乳動物細胞発現ベ
クターを用いた(図5)。軽鎖および重鎖の発現ベクタ
ーは、ともにpSV2neo(SouthernおよびBerg、19
82)を基にし、免疫グロブリン(IgG)軽鎖および重
鎖の効率的転写のためのヒトサイトメガロウイルス(H
CMV)プロモーターおよびエンハンサーを含む。これ
らベクターは、細菌細胞中でのDNA複製のためのco
lE1複製開始点およびDNA複製および続いての哺乳
動物cos細胞中でのタンパク発現のためのSV40複
製開始点を含む。これらベクターはまた、マウス15軽
鎖および重鎖のリーダーおよび可変部DNA配列を正し
い方向位置でHCVMベクターにサブクローニングする
のに用いたそれぞれ唯一のHindIIIおよびBamH
I制限酵素部位を含む(図5)。
【0026】マウス軽鎖および重鎖の可変部の5´−お
よび3´−末端を、効率的なクローニングと続いてのH
CMV発現ベクターでの発現が可能になるようにPCR
技法によって修飾した。5´−末端における修飾には、
(i)効率的な翻訳のためのKozak配列(Kozak、198
7)、(ii)HCMVベクターへのクローニングのため
のHindIII制限部位が含まれた。3´−末端におけ
る修飾には、(i)マウス可変部のヒト定常部へのスプ
ライシングのためのJ−C接合点におけるスプライシン
グドナー部位、(ii)HCMVベクターへのクローニン
グのためのBamHI制限部位が含まれた。キメラ15
抗体構築における使用のためにデザインされたPCRプ
ライマーを表3に示す。
【0027】キメラプライマーを用いたPCRクローニ
ングの後、生成物を再配列決定してPCR増幅中にエラ
ーが生じなかったことを確認した。キメラ15抗体の発
現のために修飾されたマウス15軽鎖および重鎖の可変
部のDNAおよびアミノ酸配列を図6、7および図8、
9にそれぞれ示す。
【0028】キメラ15抗体の発現および分析 キメラ15軽鎖および重鎖HCMVベクターを、2系統
で、哺乳動物cos細胞中に共トランスフェクトさせ
た。3日間の経過的発現の後、細胞培養上清を集めた。
上清をELISAで分析して、ヒト抗体が産生されたか
どうかを決定した。ヒトIgG1の良好な産生が観察さ
れた(約500ng/ml)。上清はまた、MAb15
で認識される抗原を発現するヒトA431細胞への結合
に関して、細胞ベースのELISA中で試験した。co
細胞中で産生された未精製キメラ15抗体は、A43
1細胞への結合を示した。標準として用いた精製マウス
15抗体はまた、同じA431被覆プレートとよく結合
し、これは細胞ベースのELISAが正しく機能してい
たことを示している。これら初期研究において、マウス
15抗体およびキメラ15抗体のサンプルのA431細
胞への結合は、検出に用いた抗体−酵素複合体がマウス
抗体とキメラ抗体では異なることから直接的比較はでき
なかった(方法を参照)。DNAなしで擬転写(moc
k−transfer)されたcos細胞からの上清
は、A431細胞への結合を示さなかった。抗CMV糖
タンパク質抗体を有する陰性対照もまた、陰性の結果を
示した。マウス425抗体は、間接的陽性対照となり、
A431細胞との良好な結合を示した。
【0029】cos中で産生された非精製キメラ15抗
体を、直接的免疫蛍光法によって非固定TKB−2標的
細胞への結合に関して分析した。結果は、キメラ15抗
体がTKB−2細胞への結合に関してマウス15抗体に
匹敵することを示した。
【0030】これら初期研究によって、哺乳動物cos
細胞で発現されたキメラ15抗体がマウス15抗体と同
様にしてMAb15標的細胞に結合することが示され
た。これらの結果は、正しいマウス15軽鎖および重鎖
の可変部がクローニングされて配列決定されていたこと
を確認する。キメラ15抗体はまた、完全にヒト化され
た、または再成形されたヒト15抗体の異なるバージョ
ンの評価における重要な対照となり得る。
【0031】マウス15可変部の構造のモデルの構築 MAb15のマウス可変部の分子モデルを、シリコング
ラフィックスIRIS4D上でソフトウェアパッケージ
QUANTA(ポリゲン社製)を用いて構築した。MA
b15の軽鎖および重鎖の可変部のためのフレームワー
ク領域は、それぞれマウス抗体MCPC603(Satow
ら、1987)およびJ529(Suhら、1986)の構造に基
づいた。L1、L2およびL3CDR領域はChothiaら
(1989)によって提唱された基準構造に対応し、L1は
それら関連基準構造のグループ3、L2およびL3はグ
ループ1であった(表4を参照されたい)。H1および
H2CDR領域もまた、Chothiaら(1989)の提唱した
基準構造に対応し、H1はグループ1、H2はグループ
3であった(表5を参照されたい)。H3CDRのモデ
ルを、高解像度タンパク構造のデータベースをサーチす
ることによって作出した。アンカー部は、フレームワー
ク領域3ではC96、A97、R98であり、フレーム
ワーク領域4ではW110、G111、Q112だっ
た。最良の対合はCDR H3の領域のMCPC603
の重鎖構造中に見出された。モデルは、立体衝突を軽減
するためにQUANTAで実施する急勾配下降(ste
epestdescent)および共勾配エネルギー最
少化(conjugate gradient ene
rgy minimization)に供した。
【0032】再成形ヒト15抗体のデザイン デザイン工程の最初の段階は、再成形ヒト15可変部の
最良の基礎となり得るヒト軽鎖および重鎖のフレームワ
ーク領域を選択することであった。マウス15軽鎖およ
び重鎖の可変部(全長可変部およびフレームワーク領域
のみ)のアミノ酸配列を、上記GAPプログラムを用い
て、Kabatら(1987)による定義のヒトサブグループの
共通配列のアミノ酸配列と比較した。比較結果を表6お
よび7に示す。
【0033】一般に、軽鎖可変部は、重鎖可変部よりも
より多様性が少なく、軽鎖可変部の抗体との結合特異性
への寄与はより少ないと考えられている(Amitら、198
6)。マウス15軽鎖可変部のアミノ酸配列は、全ヒト
κ鎖共通サブグループの配列と高度の相同性を示す(表
6A)。マウス15軽鎖フレームワーク領域は、ヒトκ
サブグループ4フレームワーク領域と82.5%の一致
を示し、ヒトκサブグループ1フレームワーク領域と7
5.0%の一致を示す(表6A)。ヒトκサブグループ
1抗体であるヒトREIは、これまで何度も、有用な成
形ヒト軽鎖可変部のデザインおよび構築の基礎として用
いられてきた(例えば、Riechmannら、1988;Kettlebor
oughら、1991)。フレームワーク領域内で、マウス15
軽鎖可変部およびヒトREI可変部は75.0%の一致
を示す(表6B)。マウス15およびヒトRIE軽鎖可
変部のフレームワーク領域の配列を並べて表6Bに示
す。REIフレームワークの再成形ヒト425軽鎖可変
部の構築における使用(Kettleboroughら、1991)は、
広く公知である。したがって、ヒトREIフレームワー
ク領域を再成形ヒト15軽鎖可変部のデザインの基礎と
して選択した。
【0034】マウス15重鎖フレームワーク領域のアミ
ノ酸配列は、78.2%の一致でヒト重鎖サブグループ
3のアミノ酸配列に最も類似していた(表7A)。再成
形ヒト15重鎖可変部は、合成DNAオリゴヌクレオチ
ドを用いて標準的方法によって合成しなければならな
い。マウス15重鎖可変部に最も適合する重鎖可変部を
有する個々のヒト抗体を選択するために、マウス15重
鎖可変部のアミノ酸配列をLEEDSデータベースのタ
ンパク質配列で見出される全公知ヒト重鎖可変部と比較
した。ヒト抗体を、ヒト胎児肝からのヒト30P1抗体
と同定した(Schroederら、1987)。重鎖可変部のフレ
ームワーク領域内で、マウス15抗体とヒト30P1抗
体の間で、88.5%の類似および77.0%の一致が
認められた。ヒト30P1抗体はまた、再成形ヒト15
重鎖可変部のデザインに有用な公知のDNAリーダー配
列を有する。マウス15およびヒト30P1重鎖可変部
のフレームワーク領域の配列を並べて表7Bに示す。ヒ
ト30P1フレームワーク領域を再成形ヒト15重鎖可
変部のデザインの基礎として選択した。
【0035】デザイン工程の第二段階は、マウス15軽
鎖および重鎖の可変部からのCDR配列を、選択された
ヒト軽鎖および重鎖の可変部からのフレームワーク領域
配列に単に連結することであった。再成形ヒトCAMP
ATH−1および425抗体における使用を応用して、
マウス15軽鎖CDRをヒトRIE軽鎖可変部からのフ
レームワーク領域に連結した。マウス15重鎖CDR
を、ヒト30P1重鎖可変部からのフレームワーク領域
に連結した。
【0036】デザイン工程のうちで最も複雑な第三段階
は、マウス15フレームワーク領域と選択されたヒト抗
体からのフレームワーク領域の配列間で異なる個々のア
ミノ酸残基を同定して分析することであった。抗体可変
部の構造およびあるとすれば抗原結合部位へそれらの二
次的影響の決定における異なる残基の役割を評価するこ
とは重要である。フレームワーク領域は患者の可能な免
疫原性反応を軽減するためにできるだけヒトに近いもの
に保ち、かつ、抗原との結合に不可欠のマウス配列中の
アミノ酸残基を含むようにしなければならない。
【0037】再成形ヒト15軽鎖可変部のデザインにお
いて、ヒトREI抗体およびマウス15抗体からのフレ
ームワーク残基を並べて、相互に、さらにマウスの関連
サブグループおよびヒトκ鎖可変部の共通配列と、比較
した(表8)。フレームワーク領域内で、23個のアミ
ノ酸残基がマウス15とヒトREI軽鎖可変部間で異な
っていた(表8)。マウス15軽鎖可変部とCAMPA
TH−1Hにおける使用のために修飾されたヒトRIE
軽鎖可変部間では、フレームワーク領域内で20個のア
ミノ酸残基が異なっていた(図11、Riechmannら、198
8)。CAMPATH−1Hにおける使用のために修飾
されたヒトREIのフレームワーク領域内では、5個が
オリジナルのヒトREIと異なっている(位置39、7
1、104、105および107;Kabatら、1987によ
る)。FR4における3個の変化(位置104、105
および107)は、他のヒトκ軽鎖からのより典型的な
ヒトJ領域に基づいた。したがって、ヒトからのずれを
生じない(Riechmannら、1988)。再成形ヒト15軽鎖
可変部の構築のための鋳型DNAとなる再成形ヒト42
5軽鎖可変部を、再成形ヒトCAMPATH−1軽鎖可
変部を基にして構築した(Kettleboroughら、1991)。
【0038】マウス15とヒトREIの軽鎖可変部のフ
レームワーク領域配列間で異なる23個のアミノ酸残基
の評価の後、6個の残基を変更のために選択した。三つ
の残基は、再成形ヒトCAMPATH−1抗体の構築に
おいて修飾されたFR4中の三つの残基(位置104、
105および107)である。上記に説明したように、
これら三つの変化はより典型的なヒトJ領域の使用に基
づいてなされた(サブグループ1のヒトκ鎖可変部の共
通配列のFR4を参照されたい;表8)。これら三つの
変化はヒトからのずれを生じることなく、かわりに、フ
レームワーク4においてより典型的なアミノ酸配列への
改良をもたらす。残りの変更された三つの位置は、3
9、60および71である(表8)。位置39は、ヒト
REIに存在するトレオニンから、マウス15に存在
し、再成形ヒトCAMPATH−1にも存在するリジン
に変えた。位置60は、ヒトREIに存在するセリンか
らマウス15に存在するアスパラギン酸に変えた。マウ
ス15可変部の構造のモデルから、位置60のアスパラ
ギン酸はCDR2ループの位置54のアルギニンと相互
作用するようである。このことから、FR3の位置60
のマウスアミノ酸残基を保存することが最良と決定され
た。位置71は、ヒトREIに存在するチロシンからマ
ウス15に存在するフェニルアラニンに変えた。軽鎖可
変部の残基71は、CDR1ループのための基準構造の
部分である(Chothiaら、1989)。したがって、この位
置に同じアミノ酸をマウス15抗体に存在するように保
持することは重要である。再成形ヒト15軽鎖可変部の
デザインの概要を図11に示す。
【0039】再成形ヒト15重鎖可変部のデザインにお
いて、ヒト30P1抗体およびマウス15抗体からのフ
レームワーク残基を並べて、相互に、さらにマウスおよ
びヒト重鎖可変部の関連サブグループ共通配列と、比較
した(表9)。フレームワーク領域内で、20個のアミ
ノ酸残基がマウス15とヒト30P1重鎖可変部間で異
なっていた(表9)。マウス15とヒト30P1重鎖可
変部間で異なるフレームワーク領域配列のアミノ酸残基
の評価の後、位置28、44、49および94の4個の
残基を変更のために選択した(表9)。再成形ヒト15
重鎖可変部のCバージョンにおいて、位置28を、ヒト
30P1に存在するトレオニンから、マウス15に存在
するアラニンに変えた。重鎖可変部の残基28は、CD
R1ループのための基準構造の重要部分である(Chothi
aら、1989)。マウス15可変部の構造のモデルに見ら
れるように、残基28はおそらく抗原と直接相互反応す
ると思われる構造H1ループの重要部分である(図1
0)。したがって、この位置に同じアミノ酸をマウス1
5抗体に存在するように維持することは重要である。再
成形ヒト15重鎖可変部のバージョンAにおいて、位置
44を、ヒト30P1に存在するグリシンから、マウス
15に存在するアルギニンに変えた。マウス15可変部
の構造モデル(図10)に基づいて、残基44はマウス
15軽鎖および重鎖の可変部のパッキングに可能な役割
を有すると考えられた。しかし、残基44は、Chothia
ら(1985)およびChothiaおよびLesk(1987)によって
同定されたVL−VHパッキングにおいて役割を有する残
基のひとつではない。三つの再成形ヒト15重鎖可変部
の全てのバージョンにおいて、位置49をヒト30P1
に存在するセリンからマウス15に存在するアラニンに
変えた。残基49はCDR2領域に隣接し、マウス15
可変部の構造のモデルから、マウス15配列のこの位置
にアラニンの代わりにより大きなセリン残基が挿入され
た場合、CDR2ループの構造が壊される可能性がある
と考えられる(図10)。再成形ヒト15重鎖可変部の
三バージョンの全てにおいて、位置94をヒト30P1
に存在するリジンからマウス15に存在するアルギニン
に変えた。重鎖可変部の残基94は、CDR1ループの
標準構造の重要部分である(Chothiaら、1989)。マウ
ス15可変部の構造のモデルは、残基94がフレームワ
ーク残基に対して、CDR1ループ、あるいはCDR3
ループのパッケージングにおいて重要であることを示
す。ここでも、ループ構造のための基準構造に属すると
同定される残基をマウス15抗体に存在すると同じアミ
ノ酸に維持することは重要である。再成形ヒト15重鎖
可変部の三つバージョンのデザインの概要を図12に示
す。
【0040】再成形ヒト15可変部の構築 再成形ヒト15軽鎖の構築を、PCR−突然変異誘発法
(Kammanら、1989)に基づく新規の方法を用いて行っ
た。マウス15軽鎖可変部からのCDRを、ヒトREI
フレームワークに連続して移植した(方法および図13
を参照されたい)。用いたDNA鋳型は、HindIII
−BamHIフラグメントとしてpUC18ベクターに
クローニングした再成形ヒト425軽鎖可変部のバージ
ョンa(Kettleboroughら、1991)であった。マウス1
5軽鎖可変部からのCDRコード配列を再成形ヒト42
5軽鎖可変部のフレームワーク領域に連結するための四
つの合成オリゴヌクレオチドをデザインして合成した
(表10)。FR3の位置60におけるヒトのセリンか
らマウスのアスパラギン酸への変更は、CDR2−移植
プライマーに組み込まれた(表10)。マウス15軽鎖
可変部のCDR1は、約50bpの後方および前方オリ
ゴヌクレオチドを用いて組み込まれた(表10)。これ
ら二つのプライマーは、再成形ヒト425軽鎖可変部の
FR1およびFR2内にそれぞれハイブリダイズする
(図13)。二つのプライマーは、マウスCDR1の1
9bp内でオーバーラップして相互にハイブリダイズす
る。構築法はまた、全長再成形ヒト15軽鎖可変部をは
さむ二つの外側PCRプライマーを要求した(表10、
図13)。全長再成形ヒト15軽鎖可変部を構築した後
は、これをpUC19ベクターにクローニングして配列
決定した。四つのクローンのDNA配列は、全てが欠失
および点突然変異の双方のPCR−誘導エラーを含むこ
とを示した。アミノ酸配列を変えない二つの点突然変異
のみを位置422(C−T)および479(G−A)に
有する一つのクローンからの再成形ヒト15軽鎖可変部
を、ヒト定常部を含む哺乳動物HCMV発現ベクターに
サブクローニングした(図5)。再成形ヒト15軽鎖可
変部のDNAおよびアミノ酸配列を図14、15に示
す。
【0041】再成形ヒト15重鎖可変部の最初のバージ
ョンを、合成DNAオリゴヌクレオチドから構築した
(図16)。構築すべきDNA配列を、ヒト30P1リ
ーダーおよび重鎖可変部のDNA配列およびマウス15
重鎖可変部からのCDRのDNA配列を基にしてデザイ
ンした。全長再成形ヒト15重鎖可変部を、改変PCR
法(Higuchiら、1988;Lewisら、1991;Daughertyら、1
991)によって組み立てた。再成形ヒト15重鎖領域全
長に及ぶ六つの合成オリゴヌクレオチドをデザインして
(表11)、PCR−組立を図16に示すように行っ
た。三つのセンスDNAオリゴヌクレオチド(1、3お
よび5)および三つのアンチセンスオリゴヌクレオチド
(2、4および6)のアニーリングおよび伸張をPCR
の1サイクルで行った。次いで外側順および逆PCRプ
ライマーを用いて全長生成物の増幅を20サイクルで行
った(表11)。全長再成形ヒト15重鎖可変部をPC
R−組立した後は、DNA生成物を配列決定のためにp
UC19ベクターにクローニングした。配列決定した四
つのDNAクローンのうち、一つは点突然変異および欠
失のいずれをも含まない正しい全長配列を有した。この
確実なクローンを、ヒト重鎖γ−1定常部を含むHCM
V発現ベクターにサブクローニングした(図5)。再成
形ヒト15重鎖可変部(バージョンA)のDNAおよび
アミノ酸配列を図17、18に示す。
【0042】再成形ヒト15重鎖可変部の続いての二つ
のバージョン(バージョンBおよびC)を、修飾した組
み換えPCR−突然変異誘発手法(Higuchiら、1988)
を用いて構築した。バージョンCを、図19に示すよう
にして構築した。各20bpの二つのオーバーラップし
た相補的突然変異誘発性プライマーをデザインして、合
成した(表12)。両プライマーは、位置28のトレオ
ニンをアラニンに変える一塩基対ミスマッチを含んだ
(表9)。最初のPCR反応を、二つの突然変異誘発性
PCRプライマーと二つの外側PCRプライマーを用い
て行った(表12および図19)。次いで、二つの最初
のPCR生成物をPCR反応中で合わせて、得られる全
長生成物を外側PCRプライマーを用いて増幅した(図
19)。pUC19ベクターへのサブクローニングの
後、四つのクローンのDNA配列決定を行った。三つの
クローンに、所望の突然変異が導入された。バージョン
Bの構築は、オーバーラップ領域に唯一のBanI制限
酵素部位が存在すること以外はバージョンCと同様であ
り、この部位を二つの最初のPCR生成物を共に連結す
るために用いた。バージョンBの構築に用いた二つの突
然変異誘発性PCRプライマーは、14bpのオーバー
ラップを有した(表12)。最終的DNA生成物を、p
UC19ベクターにクローニングして、二つのクローン
を配列決定した。クローンの一つは、正しく突然変異し
たDNA配列を含んでいた。
【0043】異なるバージョンの再成形ヒト15抗体の
発現および分析 再成形ヒト15軽鎖の一つのバージョンおよび再成形ヒ
ト15重鎖の三つのバージョンを、哺乳動物細胞系co
s中で対にして経過的に共発現させた。キメラおよび再
成形ヒト15抗体がcos細胞中で充分量産生された
(ELISAによる定量で1.5〜2.0μg/m
l)。最初に、cos細胞上清に存在する抗体の未精製
サンプルを、A431標的細胞への結合について分析し
た(図20)。キメラおよび再成形ヒト15抗体の異な
るバージョンについて得られた結合曲線から、キメラ抗
体が再成形ヒト抗体の三つのバージョンよりも僅かに良
好で、再成形ヒト15抗体の三つのバージョンのうちで
はバージョンL+Haが最良であるようだった。キメラ
および再成形ヒト15抗体を、cos細胞上清からプロ
テインA−精製して、A431細胞への結合について再
分析した(図21)。精製抗体のサンプルのうちでは、
再成形ヒト15抗体のバージョンL+Haがキメラ15
抗体よりも僅かに良好に細胞に結合していた。再成形ヒ
ト15抗体のバージョンL+HbおよびL+Hcは、キ
メラ15抗体とほぼ同程度に結合していた。
【0044】マウス、キメラおよび再成形ヒト15抗体
の親和性定数の決定 マウス、キメラおよびバージョンL+Haの再成形ヒト
15抗体の抗原親和性を、精製マウス15抗体のサンプ
ルおよび図21に示すデータを得るために用いたプロテ
インA−精製キメラおよび再成形ヒト15抗体の同一サ
ンプルを用いて決定した。ELISA分析からのデータ
はシグマプロット(SIGMA PLOT)を用いる最
良曲線に適合し、50%飽和を示す抗体の濃度を決定し
た。結果を図22、図23および図24に示す。決定さ
れたKdは、マウス15抗体で0.34nM、キメラ1
5抗体で0.49nM、再成形ヒト15抗体(バージョ
ンL+Ha)で0.27nMだった。ELISA分析に
基いて親和性を決定するこの比較的簡単な方法からは最
も正確な親和性測定値は得られないかも知れないが、こ
れらの結果はオリジナルのマウス15抗体および再成形
ヒト15抗体(バージョンL+Ha)がA431細胞に
よく結合することを示す。加えて、再成形ヒト15抗体
(バージョンL+Ha)による結合は、マウス15抗体
による結合よりも僅かに良好かも知れない。要約する
と、再成形ヒト15抗体の最良のバージョンは、マウス
15抗体またはキメラ15抗体とほぼ同等の抗原に対す
る親和性を有する。
【0045】マウス15軽鎖および重鎖の可変部を、Jo
nesおよびBendig(1991)によってデザインされたPC
Rプライマーを用いてマウスMAb15ハイブリドーマ
細胞系からPCR−クローニングすることに成功した。
マウス15重鎖可変部については、二つの独立したPC
R生成物からのDNA配列は一致して、アミノ酸翻訳に
よって全長マウス重鎖可変部が得られた(図3、4)。
マウス15軽鎖可変部については、二つの異なる軽鎖可
変部をPCRクローニングした。DNA配列決定および
続いてのアミノ酸翻訳は、一つだけが停止コドンを有し
ない全長可変部であることを示した(図1、2)。第二
の軽鎖可変部は無機能性mopc21nκ鎖と同定され
たが、これはおそらく、マウスMAb15ハイブリドー
マ細胞系の構築中に融合相手として用いられた黒色腫細
胞系のP3X63Ag8U.1に由来すると思われた
(Endoら、1986)。マウス軽鎖および重鎖の可変部の異
なるグループの共通配列との比較は、マウス15可変部
が典型的なマウス配列であることを示した(表2)。
【0046】クローニングされたマウス軽鎖および重鎖
の可変部がマウス15抗体のものであるという確認は、
キメラ15抗体の構築および発現によって得られた。マ
ウス15可変部を、ヒト定常部に連結して、哺乳動物細
胞発現ベクターに挿入した。cos細胞中で産生された
未精製キメラ15抗体は、細胞ベースのELISA分析
においてヒトA431への良好な結合を示した。キメラ
抗体の未精製サンプルもまた、TKB−2細胞への良好
な結合を示した。これらの結果から、正しいマウス15
配列がクローニングされていたことが確認された。続い
てキメラ15抗体を、再成形ヒト15抗体の異なるバー
ジョンの抗原結合を評価するための陽性対照として用い
た。
【0047】再成形ヒト15可変部を、マウス15フレ
ームワークと高い一致割合を示したヒトフレームワーク
をまず選択することによってデザインした。軽鎖の場
合、ヒトREIフレームワークを選択した。重鎖では、
ヒト30P1フレームワーク領域を選択した。マウス1
5可変部の構造のモデルを、知られた構造を有する抗体
との相同性に基づいて作出した(図10)。モデルの分
析および免疫グロブリン可変部の確認に関する入手可情
報を、マウス15抗体に存在する同一アミノ酸として保
存すべきフレームワーク領域のアミノ酸位置を確認する
ために用いた。この段階で、再形成抗体をできるだけヒ
トに近いものに保ちつつ、超可変ループの構造決定、す
なわち良好な抗原結合部位の作出に不可欠の残基のみを
選択することが重要である。
【0048】再成形ヒト15軽鎖可変部の一つのバージ
ョンをデザインして構築した。公知のヒト抗体の配列と
異なるフレームワーク領域の変更を三つだけ含んだ(表
8、図11)。再成形ヒト重鎖可変部の三つのバージョ
ンをデザインして構築した。最良のバージョンであるバ
ージョンAは、公知のヒト抗体30P1の配列と異なる
フレームワーク領域の変更を三つだけ含んだ(表9、図
12)。
【0049】PCRに基づく方法を用いてマウス15C
DRをヒトREIフレームワーク領域に連続移植するこ
とによる再成形ヒト15軽鎖可変部の構築は、高頻度の
PCR−誘導エラーを起こした。おそらく実施されるP
CRステップの回数のために、配列決定された全クロー
ンが突然変異を有したためである。PCR組立による再
成形ヒト15重鎖可変部の構築(図19)は、より簡単
で、PCR−誘導エラーの頻度も少なかった。この場
合、第二の方法が再成形ヒト可変部の構築には好ましい
方法だった。
【0050】マウス、キメラおよび再成形ヒト15抗体
を、ヒトA431細胞への結合についてELISA分析
によって調べた。マウス抗体について得られた結合曲線
とキメラまたは再成形ヒト抗体について得られた結合曲
線との直接比較は、検出に用いられた抗体が異なること
から不可能だった。マウス抗体はヤギ抗マウス抗体で、
キメラおよび再成形ヒト抗体はヤギ抗ヒト抗体を用い
て、それぞれ検出した。しかし、キメラと再成形ヒト抗
体についての結合曲線の直接比較は可能であった。キメ
ラ抗体は、オリジナルのマウス抗体に見られると同様に
抗原に結合することが期待される。多くのELISA分
析は、三つの再成形ヒト15抗体のうち、重鎖のバージ
ョンAがバージョンBまたはCよりも僅かに良好である
ことを示した。より重要なことは、この最良再成形ヒト
15抗体がキメラ15抗体と同様に抗原に結合したこと
であった。ある分析ではキメラ15抗体が僅かに良好で
あり、別の分析では再成形ヒト15抗体が僅かに良好で
あった。このタイプのELISA分析で達成し得る精度
内で、重鎖のバージョンAを有する再成形ヒト15抗体
は、実質的にはキメラ15抗体と同等の抗原への良好な
親和性を有すると考えられる。
【0051】再成形ヒト15重鎖可変部のバージョンA
が最良の再形成ヒト15抗体を作出すると思われた。位
置44のマウス残基は再成形ヒト15抗体の結合を僅か
に改善すると思われた。モデルから、残基44はVL
H連結部にあると思われ、V LとVHドメインのパッキ
ングに関与すると考えられる。驚いたことに、残基44
はChothiaら(1985および1987)によって定義された保
存パッキング残基ではない。残基28についてもまた、
その抗原結合への影響について分析した。残基28は、
重鎖可変部のCDR1ループの基準構造の重要部分であ
る(Chothiaら、1989)。バージョンBおよびCの結果
と比較すると、A431細胞への結合における相違は無
視できると思われる。驚いたことに、この抗体において
は、重鎖可変部の残基28は抗原との結合を決定する極
めて重要な位置にはないようである。
【0052】マウス15抗体、キメラ15抗体および最
良バージョンの再成形ヒト15抗体の親和性をより正確
に比較して評価するために、精製して濃縮した抗体サン
プルを用いて、2系統で、広い希釈範囲において、A4
31への結合に関するELISA分析で調べた。これら
のデータを、飽和結合曲線にデータを適合させ、次いで
抗原結合部位の半飽和での遊離抗体濃度を算出すること
によって解離定数(Kd)を決定するプロッティングプ
ログラムを用いて分析した。マウス、キメラおよび再成
形ヒト15抗体のKdはそれぞれ、0.34nM、0.
49nMおよび0.27nMであった。これによって、
再成形プロセスが、少なくともマウスまたはキメラ抗体
と同等の親和性で細胞に結合する再成形ヒト15抗体を
もたらしたことが示された。
【0053】再成形ヒト15抗体の最良バージョンの、
より正確な評価が、ここで要求される。一方法として、
非標識マウス、キメラおよび再成形ヒト15抗体と標識
マウス15抗体の間で競合結合分析を行うことが示唆さ
れる。別の可能性としては、ファルマシア社から最近売
り出されたバイオセンサー機(BIAcore)を用いて抗原
親和性の正確な測定値を得る試みがある。これには、BI
Acore機の金フィルム上のデキストランに結合させ得る
抗体サンプルが要求される。再成形ヒト15抗体の綿密
な分析には、多量の精製抗体が必要となる。再成形ヒト
15重鎖をコードするDNAは、dhfr遺伝子増幅ベ
クターに導入された。このベクターと再成形ヒト15軽
鎖を発現するベクターをCHOdhfr細胞に共トラン
スフェクトさせた。二つのベクターを含む細胞を最初に
選択した後、抗体の産生は、遺伝子増幅のためのメトト
レキセート中での選択によって増加するであろう。
【0054】治療および診断的使用 本発明の抗体フラグメントおよび全抗体は、治療のため
に患者に投与することができる。したがって、本発明の
目的は、活性組成分として上記および請求の範囲に記載
の少なくとも一つの抗体または抗体フラグメントを、一
つまたはそれ以上の薬剤学的に容認し得る担体、賦形剤
または希釈剤とともに含んでなる薬剤調製物を提供する
ことである。
【0055】通常、本発明の抗体は静脈注射によってま
たは非経口的に投与される。一般に、抗体フラグメント
の投与量は、所望の腫瘍抑制および腫瘍溶解効果が得ら
れるに充分な範囲の量である。投与量は、患者の年齢、
状態、性別、病気の程度によって異なり、0.1mg/
kg〜200mg/kg、好ましくは0.1mg/kg
〜100mg/kg/用量の範囲で1日1回またはそれ
以上を1日または数日間投与することができる。
【0056】非経口的投与のための調製物には、滅菌水
溶液または非水溶液、懸濁液および乳濁液が含まれる。
非水性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリ
エチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイ
ン酸エチルなどの注射可能な有機エステルおよびこれら
の目的に適した当業者に公知の他の溶媒があげられる。
本発明の抗体は、生理学的に容認し得る担体を含む組成
物において使用することができる。それら適当な担体の
例としては、生理食塩水、PBS、リンゲル溶液または
乳酸リンゲル溶液があげられる。保存剤および他の添加
剤、例えば抗生物質、抗酸化剤およびキレート剤などを
薬剤調製物に加えることも可能である。
【0057】本発明による抗体またはそのフラグメント
はまた、それらの細胞毒性を支持するためにIL−2な
どのサイトカインと公知の方法によって抱合させること
ができる。
【0058】本発明の薬剤調製物は、黒色腫、神経膠腫
および癌腫、さらに循環系の腫瘍およびとくに好ましく
は肺癌腫などの固形腫瘍(solid tumor)を
含むあらゆる種類の腫瘍の治療に適している。
【0059】診断目的のために、抗体は、例えば放射線
不透過性染料と抱合させるかまたは放射線標識すること
ができる。好ましい標識法はロドゲン法である。抗体
は、診断目的のためにF(ab´)2またはscFvフ
ラグメントとして投与できる。これによってバックグラ
ンド差し引きが不要になるような優れた結果が得られ
る。
【0060】文献一覧表
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】
【表7】
【0068】
【表8】
【0069】
【表9】
【0070】
【表10】
【0071】
【表11】 1:類似割合は、ウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループの「GAP 」プログラムを用いて決定した。 2:共同配列は、Kabatら(1987)から転記。
【0072】
【表12】 1:類似割合は、ウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループの「GAP 」プログラムを用いて決定した。 2:共通配列は、Kabatら(1987)から転記。
【0073】
【表13】
【0074】
【表14】
【0075】
【表15】
【0076】
【表16】 凡例:(*)CDRループの基準構造の重要部分(Choth
iaら、1989);(太字)ヒトアミノ酸残基が異なるアミ
ノ酸残基で置換されたFR中の位置;(マウス15)マ
ウス15抗体からのVL領域のアミノ酸配列;(マウス
κ1)サブグループ1からのマウスκVL領域の共通配
列(Kabatら、1987);(ヒトκ1)サブグループ1か
らのヒトVL領域の共通配列(Kobatら、1987);(ヒト
REI)ヒトREI抗体からのアミノ酸配列(Palmら、
1975);(RH VL15)再成形ヒト15VL領域のア
ミノ酸配列。
【0077】
【表17】
【0078】
【表18】
【0079】
【表19】
【0080】
【表20】 凡例:(*)CDRループの基準構造の重要部分(Choth
iaら、1989);(太字)ヒトアミノ酸残基が異なるアミ
ノ酸残基で置換されたFR中の位置;(マウス15)マ
ウス15抗体からのVH領域のアミノ酸配列;(マウス
その他)その他のマウスサブグループからのマウスVH
領域の共通配列(Kabatら、1987);(ヒト3)サブグ
ループ3からのヒトVH領域の共通配列(Kobatら、198
7);(ヒト30P1)ヒト30P1抗体からのアミノ
酸配列(Schroederら、1987);(RHVH15)再成形
ヒト15VH領域のアミノ酸配列。
【0081】
【表21】
【0082】
【表22】
【0083】
【表23】
【0084】
【実施例】
[実施例1]マウス15可変部のPCRクローニングおよびDNA配
列決定 全RNAを、MAb15−G1/K1−2細胞から標準
グアニジウムイソチオシアナト/塩化セシウム法(Chir
gwinら、1979)を用いて単離した。細胞(2×108
を集めて、全RNAを単離した。ポリ(A)+RNA
を、オリゴd(T)カラム(Qiagen)を用いて全RNA
から分離した。RNA単離に用いた細胞が機能性MAb
15を産生していたことを確認するために、細胞上清を
集めてELISAで分析した。上清からは、MAb15
標的細胞に結合する抗体が得られることが確認された。
第一鎖cDNA合成を、基本的にはLarrickら(1989)
の記述に従って直接に2μgのポリ(A+)RNAから
達成した。ただし25uのヒト胎盤リボヌクレアーゼイ
ンヒビター、HRPI(Amersham社、英国)をRNasin
の代わりに各10μl反応液中で用いた。
【0085】マウス15軽鎖および重鎖の可変部を、鋳
型DNAとしての第一鎖cDNA合成の生成物およびJo
nesおよびBendig(1991)によってデザインされた前向
および後向PCRプライマーを用いてPCR−クローニ
ングした。マウス15重鎖可変部のPCR増幅のため
に、100μlのPCR反応液は、10mMトリス塩酸
(pH8.3)、50mM塩化カリウム、1.5mM
MgCl2、200μMdNTP、2.5u Amplitaq
(Perkin Elmer Cetus)、10%の第一鎖cDNA合成
反応物、2.5μMの重鎖γ−1定常部逆プライマー、
および各0.25μMの重鎖リーダー配列プライマー
(グループ1〜12)を含んだ。マウス15軽鎖可変部
のPCR増幅のためには、PCRプライマーを3μMの
κ定常部逆プライマーおよび各0.25μMの軽鎖リー
ダー配列プライマー(グループ1〜11)に変えた。各
PCR反応液を50μlの鉱油で覆い、最初に94℃で
1分間融解後、94℃で1分間、50℃で1分間および
72℃で1分間のサイクルを25回繰り返し、最終伸張
を72℃で10分間行った後、4℃に冷却した。各ステ
ップのランプタイム(ramp time)は30秒だ
ったが、ミスマッチしたプライマーが正しくアニーリン
グすることを確実にするために、プライマーアニーリン
グと伸張との間のランプタイムはより遅くした(2分
間)。各PCR反応の10μlのサンプルを、臭化エチ
ジウム染色した1%アガロースゲル上で分析した。PC
R生成物を、QiagenPCR精製キット(Hybaid社、英
国)を用いて精製して、次いで、SalIおよびXma
I制限酵素で順次消化した。ゲル精製後、PCRフラグ
メントをpUC19ベクター中に連結して、大腸菌DH
5αコンピテント細胞(Life Technologies)を形質転
換させた。陽性クローンを、制限酵素分析で同定して、
二本鎖DNAをシーケナーゼバージョン2.0キット
(米国Biochemical Corporation)を用いて配列決定し
た。
【0086】[実施例2]キメラ15軽鎖および重鎖の構築 マウス15軽鎖および重鎖の可変部を、マウス−ヒトキ
メラ軽鎖および重鎖の構築に適するように5´−および
3´−末端で修飾した。マウス可変部への使用に適した
PCRプライマーを、表3に示す。各PCR反応液は、
鋳型DNAとしてマウス軽鎖または重鎖可変部を含む1
0ngのpUC19プラスミド、10mMトリス塩酸
(pH8.3)、50mM塩化カリウム、1.5mM
MgCl2、2.5u Amplitaq、200μM dNT
P、および各1μMのPCRプライマー(前向および逆
行)を含んだ。最初の融解後、94℃で1分間、60℃
で1分間および72℃で1分間のPCRサイクルを25
回繰り返し、最終伸張を72℃で10分間行った。PC
R生成物を、HindIIIおよびBamHI制限酵素部
位を用いてpUC19にクローニングして、再配列決定
して、次いでHCMV発現ベクターにサブクローニング
した(図5)。
【0087】[実施例3]cos細胞トランスフェクション ジーンパルサー装置(Biorad)を用いて、キメラ軽鎖お
よび重鎖をコードするDNA配列を含む各10μgの二
つのHCMV発現ベクターでcos細胞をエレクトロポ
レーション処理した。DNAを、0.8mlのcos
胞PBS懸濁液に加えた(1×107細胞/ml)。パ
ルスを1900ボルト、25μFのキャパシタンスで与え
た。室温で10分間の回復期の後、細胞を10%熱不活
化した無γグロブリンウシ胎児血清を含むDMEM(Gi
bco)培地8ml中に移した。37℃で72時間培養後
cos細胞上清を集めて、遠心分離して細胞残渣を除
去して、4℃で保存した。
【0088】[実施例4]キメラおよび再成形ヒト15抗体のプロテインA精製 抗体を、IgG精製キット(Pierce)からの固定化プロ
テインAカラム1mlを用いてcos細胞上清から精製
した。cos細胞上清を0.2μmフィルターを通して
濾過滅菌して、次いで等量の結合緩衝液と混合した。培
地を、5mlの結合緩衝液で平衡にしたプロテインAカ
ラムに供した。カラムを15mlの結合緩衝液で洗浄し
て、抗体を8mlの溶出緩衝液で溶出した。マイクロ濃
縮装置(Centricon 10、アミコン社)を用いて、溶出さ
れた液を濃縮して緩衝液をPBS/0.02%アジ化ナ
トリウムに変えた。次いで、精製サンプルをELISA
で分析して、存在するヒトIgG量を測定した。
【0089】[実施例5]ヒトIgGのELISA分析 cos 細胞上清および精製抗体調製物を、存在するIg
G量に関してELISAで分析した。ヤギ抗ヒトIgG
(全分子、シグマ社)を用いて96ウェルプレートを被
覆した(0.25μg/ウェル)。cos細胞上清(1
0μl/ウェル)を加えて、37℃で2時間インキュー
ベートした。結合した抗体を、アルカリホスファターゼ
複合ヤギ抗ヒトIgG(γ鎖特異性、シグマ社)を用い
て検出した。インキュベーションおよび洗浄の後、基質
緩衝液を加えた。反応を1M NaOHを用いて止め
て、405nmでの吸光度を測定した。精製ヒトIgG
(シグマ社)を標準として用いた。
【0090】「実施例6]A431細胞への抗体結合のELISA分析 精製抗体およびcos細胞上清中の抗体のA431標的
細胞への結合を、細胞ベースELISAを用いて分析し
た。滅菌条件下で組織培養96ウェルマイクロタイター
プレート(Nunclon、 Delta SI)を100μg/mlの
ポリ−D−リジンで被覆して、室温で15分間インキュ
ーベートした。次いで、プレートを滅菌蒸留水で洗浄し
て、室温で2時間乾燥した。A431細胞のDMEM培
地懸濁液(1×108細胞/ml)を調製して、100
μl/ウェルの割合で加えて、プレートを37℃で一晩
インキューベートした。細胞をPBSで洗浄して、1%
BSAおよび0.1Mグリシンを含むDMEM中で室温
で30分間インキューベートした。洗浄後、1%BSA
を含むDMEMの200μl/ウェルを加えて、プレー
トを使用時まで−70℃で保存した。A431細胞被覆
プレートを1%BSAおよび0.05%ツイーン20を
含むPBSで洗浄した後、2%BSAおよび0.05%
ツイーン20を含むPBSを用いて4℃で一晩ブロック
した。対照マウス15抗体(1000ng/ml)およ
び被検抗体サンプルをプレートに加えて、10%FCS
を含む洗浄緩衝液中で1:2に希釈した。プレートを3
7℃で90分間インキューベートした。結合した抗体
を、結合したマウス抗体の検出ためのホースラディッシ
ュペルオキシダーゼ複合ヤギ抗マウスIgGおよびIg
M抗体(Stratech-Jackson Immunochemicals)、または
結合したキメラ抗体および再成形ヒト抗体の検出のため
のホースラディッシュペルオキシダーゼ複合ヤギ抗ヒト
IgG(γ鎖特異性)抗体(シグマ)のいずれかを用い
て検出した。37℃で90分間インキューベートした
後、O−フェニルジアミン(OPD)基質を加えて、プ
レートを室温で20分間インキューベートして、反応を
1M H2SO4で停止した。吸光度を490nmで測定
した。
【0091】[実施例7]再成形ヒト15軽鎖可変部の構築 再成形ヒト15軽鎖可変部を、マウス15軽鎖可変部か
らのCDRをヒトREIヒトフレームワーク領域に移植
することによって構築した。PCRに基づく新規の方法
を、CDR移植の実施に用いた。用いたPCRプライマ
ーを表10に示し、PCR反応を図13に示す。
【0092】最初のPCR反応液は、20ngの鋳型D
NA(再成形ヒト425軽鎖可変部、バージョンa、p
UC18ベクター中)、各0.5μMのAPCR1およ
びCDR3PCRプライマーおよび4uのAmplitaqを含
んだ。緩衝条件は上記と同様にした。熱サイクルを、9
4℃で1分間、37℃で2分間および72℃で1分間で
25回、アニーリングと伸張間のランプタイムを5分間
で行った。生成物A(350bp)を、臭化エチジウム
染色したアガロースゲルから精製してエタノール沈殿さ
せた。次いで、二本鎖生成物Aを、0.2μMのCDR
1PCRプライマーおよび20ngの鋳型DNAととも
に第二PCR反応において逆PCRプライマーとして用
いた。緩衝液および熱サイクル条件は上記と同じであっ
た。460bpのPCR生成物Bをゲル精製して、0.
5μMのCDR1前方PCRプライマーおよび50ng
のDNA鋳型とともにPCRプライマーとして用いた。
再度、PCR生成物Cをゲル精製した。第四PCR反応
液は、20ngのDNA鋳型および各0.5μMの外側
APCR4プライマーおよびCDR1後向PCRプライ
マーを含んだ。熱サイクルを94℃で1分間、48℃で
1分間および72℃で1分間で25回繰り返して行っ
た。PCR生成物D(270bp)を得て、ゲル精製し
た。次いで、二本鎖PCR生成物CおよびDをそれぞれ
の等モル量を含むPCR反応液中で合わせて、94℃で
2分間、45℃で2分間および72℃で5分間で1サイ
クル、アニーリングと伸張間のランプタイムを5分間に
して処理した。次いで、外側プライマー、汎用プライマ
ー(UP)および逆配列プライマー(RSP)を最終濃
度を各0.5μMになるように加えて、94℃で1分
間、50℃で1分間および72℃で1分間のサイクルを
25回繰り返した。全長再成形ヒト15軽鎖可変部生成
物(530bp)を得て、HindIII−BamHI消
化して、pUC19ベクターにサブクローニングした。
【0093】[実施例8]再成形ヒト15重鎖可変部の第1バージョンの構築 全長重鎖可変部遺伝子の組立のためのPCR法を図16
に示す。六つのオーバーラップしている合成オリゴヌク
レオチドを、二次的構造物が形成されないことを確実に
するために、遺伝学コンピューターグループの配列分析
ソフトウェアパッケージ(Sequence Analysis Software
Package of Genetics Computer Group、米国ウィスコ
ンシン大学)のステムループ(Stemloop)プログラムを
利用してデザインした。DNAオリゴヌクレオチドの最
終デザインを、Milligen/Biosearch7500DNA合成
機上で合成した。これら合成オリゴヌクレオチドは、長
さが86〜96merの範囲にあり、約19bpのオーバ
ーラップをオリゴヌクレオチド間に有した(表7、図1
6)。六つの合成オリゴヌクレオチドの全てを、8M尿
素の存在下でPAGEによって精製して、各200ピコ
モルのオリゴヌクレオチドを100mMトリス塩酸(p
H8.0)、10mM MgCl2、7mMDTT、2.
5mM ATPおよび20uのT4ポリヌクレオチドキ
ナーゼ(NewEngland Biolabs、米国)を含む反応液中で
燐酸化した。PCR(90μl容量)は、5ピコモルの
それぞれの燐酸化オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオ
チド1〜6)を含んだ。上記の緩衝条件を用いた。反応
は、95℃で1分間、50℃で2分間および72℃で4
分間を1サイクル、アニーリングと伸張間のランプタイ
ムを10分間で行った。それぞれ50ピコモルの前向お
よび逆外側PCRプライマーを加えて、95℃で1分
間、60℃で1分間および72℃で2分間のPCRサイ
クルを20回繰り返して行った。次いで450bpの全
長生成物をHindIII−BamHI消化して、ゲル精
製して、pUC18ベクターでクローニングした。
【0094】[実施例9]再成形15重鎖可変部のバージョンBおよびCの構築 再成形ヒト15重鎖可変部のバージョンBおよびCを、
表12に示したPCRプライマーを用いて構築した。P
CR反応を図19に示した。バージョンCの構築では、
二つの最初のPCR反応液は、鋳型DNAとしての20
ngの再成形ヒト15重鎖可変部(バージョンB)およ
び0.5μMの各プライマーを含んだ。94℃で1分
間、45℃で1分間および72℃で1分間の熱サイクル
を25回繰り返した。PCR生成物をゲル生成した。二
つのPCR生成物を、各生成物の0.5ピコモルを含む
PCR反応液中で合わせた。反応を、94℃で2分間、
50℃で2分間および72℃で5分間のサイクルを1
回、アニーリングと伸張間のランプタイムを5分間で行
った。この1サイクルの後で、0.5μMの各外側プラ
イマーを加えて、94℃で1分間、50℃で1分間およ
び72℃で1分間のサイクルをさらに25回繰り返し
た。バージョンBを、バージョンCと同様にして構築し
た。ただし、鋳型DNAは再成形ヒト15重鎖可変部
(バージョンA)を用いて、最初のPCR反応からの二
つの生成物を再成形ヒト15重鎖可変部遺伝子に存在す
る唯一のBanI制限酵素部位を用いて連結させた。
【0095】
【発明の効果】本発明によれば、新規のヒト化再成形モ
ノクローナル抗体、そのDNAおよびアミノ酸配列、お
よび腫瘍、とくに肺癌の治療に使用するための該抗体を
含む組成物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マウス15軽鎖可変部のDNAおよびアミノ酸
配列の前半部分を示す図である。
【図2】マウス15軽鎖可変部のDNAおよびアミノ酸
配列の後半部分を示す図である。
【図3】マウス15重鎖可変部のDNAおよびアミノ酸
配列の前半部分を示す図である。
【図4】マウス15重鎖可変部のDNAおよびアミノ酸
配列の後半部分を示す図である。
【図5】遺伝子操作して得た抗体の哺乳動物細胞中での
発現のためにヒトサイトメガロウイルス(HCMV)即
時初期遺伝子プロモーター(immediate ea
rly gene promoter)およびエンハン
サーを利用したベクターの構成を示す図である。
【図6】キメラ軽鎖の構築に使用するPCR修飾したマ
ウス15軽鎖可変部のDNAおよびアミノ酸配列の前半
部分を示す図である。
【図7】キメラ軽鎖の構築に使用するPCR修飾したマ
ウス15軽鎖可変部のDNAおよびアミノ酸配列の後半
部分を示す図である。
【図8】キメラ重鎖の構築に使用するPCR修飾したマ
ウス15重鎖可変部のDNAおよびアミノ酸配列の前半
部分を示す図である。
【図9】キメラ重鎖の構築に使用するPCR修飾したマ
ウス15重鎖可変部のDNAおよびアミノ酸配列の後半
部分を示す図である。
【図10】マウス15抗体からの可変部の分子モデルを
示す図である。なお、フレームワーク領域を太線で、C
DR領域を細線で示す。再成形において問題となる残基
の側鎖を点線で示す。それらは、軽鎖のD60および重
鎖のA28、R44、A49およびR94である(番号
はKabatら、1987による)。
【図11】再成形ヒト15軽鎖可変部の一バージョンの
デザインの概要を示す図である。なお、REIのフレー
ムワーク領域は、再成形ヒトCAMPATH−1H抗体
(Riechmannら、1988)に見出されるものである。RE
Iフレームワーク領域の5個の下線アミノ酸残基は、ヒ
トREIのアミノ酸配列(Palmら、1975;Eppら、197
5)と異なるものである。
【図12】再成形ヒト15重鎖可変部の三つの異なるバ
ージョンのデザインの概要を示す図である。なお、30
PIのフレームワーク領域はヒト抗体30PI(Schroe
derら、1987)に見出されたものである。
【図13】再成形ヒト15軽鎖可変部の構築過程を示す
図である。
【図14】再成形ヒト15軽鎖可変部のDNAおよびア
ミノ酸配列の前半部分を示す図である。
【図15】再成形ヒト15軽鎖可変部のDNAおよびア
ミノ酸配列の後半部分を示す図である。
【図16】再成形ヒト15重鎖可変部の第一バージョン
の構築過程を示す図である。
【図17】再成形ヒト15重鎖可変部の第一バージョン
のDNAおよびアミノ酸配列の前半部分を示す図であ
る。
【図18】再成形ヒト15重鎖可変部の第一バージョン
のDNAおよびアミノ酸配列の後半部分を示す図であ
る。
【図19】再成形ヒト15重鎖可変部の第二および第三
バージョンの構築過程を示す図である。
【図20】キメラおよび再成形ヒト15抗体のA431
細胞への結合能を試験するELISA分析(cos細胞
上清からの非精製抗体)の結果を示す図である。
【図21】キメラおよび再成形ヒト15抗体のA431
細胞への結合能を試験するELISA分析(cos細胞
上清からのプロテインA精製抗体)の結果を示す図であ
る。
【図22】マウス15抗体のA431細胞への結合に関
する曲線近似プロットおよびKdの算出のための図であ
る。
【図23】キメラ15抗体のA431細胞への結合に関
する曲線近似プロットおよびKdの算出のための図であ
る。
【図24】再成形ヒト15抗体(バージョンL+Ha)
のA431細胞への結合に関する曲線近似プロットおよ
びKd算出のための図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12P 21/08 9282−4B C12N 15/00 A (71)出願人 591032596 Frankfurter Str. 250, D−64293 Darmstadt,Fed eral Republic of Ge rmany (72)発明者 ターラン ジョーンズ ドイツ連邦共和国 デー−64271 ダルム シュタット メルク カーゲーアーアー内 (72)発明者 ジョーズ サルダナ ドイツ連邦共和国 デー−64271 ダルム シュタット メルク カーゲーアーアー内

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ネズミモノクローナル抗体MAb15
    (DSM ACC2117)に由来するヒト化再成形モ
    ノクローナル抗体。
  2. 【請求項2】 図14、15および図17、18に示さ
    れた可変部のアミノ酸およびDNA配列を有する請求項
    1に記載のヒト化再成形モノクローナル抗体。
  3. 【請求項3】 図14、15の軽鎖可変部のアミノ酸お
    よびDNA配列を有する請求項2に記載のヒト化再成形
    モノクローナル抗体。
  4. 【請求項4】 図17、18の重鎖可変部のアミノ酸お
    よびDNA配列を有する請求項2に記載のヒト化再成形
    モノクローナル抗体。
  5. 【請求項5】 図14、15のアミノ酸およびDNA配
    列。
  6. 【請求項6】 請求項5の配列中にあるCDR領域。
  7. 【請求項7】 図17、18のアミノ酸およびDNA配
    列。
  8. 【請求項8】 請求項7の配列中のCDR領域。
  9. 【請求項9】 形質転換された宿主細胞の培養培地中で
    の培養および標準法による発現抗体タンパク質の精製お
    よび分離による請求項1〜4のいずれか1項に記載のモ
    ノクローナル抗体の調製法であって、以下のステップ (i)ネズミMAb15軽鎖および重鎖の可変部のクロ
    ーニングおよび配列決定 (ii)キメラMAb15抗体の構築、発現および分析 (iii)ネズミMAb15可変部の構造のモデル化 (iv)再成形ヒトMAb15可変部のデザイン (v)ヒト免疫グロブリンの軽鎖および重鎖の定常部の
    アミノ酸配列をコードするオリゴヌクレオチド配列の合
    成、部分合成または単離 (vi)完全な再成形ヒトMAb15抗体の構築、発現お
    よび分析 を有することを特徴とするモノクローナル抗体の調製
    法。
  10. 【請求項10】 適宜、薬剤学的に容認し得る担体とと
    もに、請求項1〜4のいずれか1項に記載のモノクロー
    ナル抗体を含んでなる薬剤組成物。
  11. 【請求項11】 腫瘍の治療において使用するための請
    求項10に記載の薬剤組成物。
  12. 【請求項12】 肺癌の治療において使用するための請
    求項11に記載の薬剤組成物。
  13. 【請求項13】 腫瘍とくに、肺癌に関連する薬物の製
    造のための請求項1〜4のいずれか1項に記載のモノク
    ローナル抗体の使用。
  14. 【請求項14】 請求項5〜8のいずれか1項に記載の
    配列を導く図1、2のDNAおよびアミノ酸配列。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007515925A (ja) * 2003-02-13 2007-06-21 セルテック アール アンド ディ リミテッド ヒトIL−1βに対する特異性を有する抗体分子

Cited By (3)

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