JPH09164931A - 車両の運動制御装置 - Google Patents

車両の運動制御装置

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JPH09164931A
JPH09164931A JP34759895A JP34759895A JPH09164931A JP H09164931 A JPH09164931 A JP H09164931A JP 34759895 A JP34759895 A JP 34759895A JP 34759895 A JP34759895 A JP 34759895A JP H09164931 A JPH09164931 A JP H09164931A
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JP
Japan
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vehicle
wheel
control
braking force
slip ratio
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Application number
JP34759895A
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English (en)
Inventor
Yoshiyuki Yasui
由行 安井
Kenji Toutsu
憲司 十津
Masanobu Fukami
昌伸 深見
Takayuki Ito
孝之 伊藤
Norio Yamazaki
憲雄 山崎
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Aisin Corp
Original Assignee
Aisin Seiki Co Ltd
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Publication date
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  • Hydraulic Control Valves For Brake Systems (AREA)
  • Regulating Braking Force (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 車両の運動制御作動時に後輪に付与される制
動力が所定の上限値を越えないように制御し、安定した
状態で車両が旋回し得るようにする。 【解決手段】 車両が旋回中に、車両状態判定手段DR
にて過度のオーバーステアと判定したときには、運動制
御手段MAによりブレーキペダルBPの操作に起因した
制動状態にあるか否かに拘らずブレーキ液圧制御装置P
Cを制御し、車両に対し外向きのモーメントが生ずるよ
うに各車輪に制動力を付与すると共に、過度のアンダー
ステアと判定したときには、内向きのモーメントが生ず
るように各車輪に制動力を付与する。車両状態判定手段
DRの判定結果に応じて、運動制御手段MAが車両後方
の車輪に対して制動力を付与する場合には、後輪制動力
制限手段RBによって、その制動力を所定の上限値未満
となるように制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両の旋回時等におい
て、ブレーキペダルの操作に起因した制動状態にあるか
否かに拘らず各車輪に対して制動力を付与することによ
り、過度のオーバーステア及び過度のアンダーステアを
抑制制御する車両の運動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近時、車両の運動特性、特に旋回特性を
制御する手段として、制動力の左右差制御により旋回モ
ーメントを直接制御する手段が注目され、実用に供され
つつある。例えば、特開平2−70561号公報には、
車両の横力の影響を補償する制動制御手段により車両の
安定性を維持する運動制御装置が提案されている。同装
置においては、実ヨーレイトと目標ヨーレイトの比較結
果に応じて制動制御手段により車両に対する制動力を制
御するように構成されており、例えばコーナリング時の
車両の運動に対しても確実に安定性を維持することがで
きる。
【0003】一般的に、操舵特性を表す語としてオーバ
ーステアあるいはアンダーステアという語が用いられる
が、前者が過大となると、車両の旋回中に後輪の横すべ
りが大となって車両が所望の旋回半径の内側にはみ出す
状態となる。この状態を過度のオーバーステアと呼び、
前輪のコーナリングフォースCFf が後輪のコーナリン
グフォースCFr より極端に大きく(CFf >>CFr
)なったときに生ずる。例えば、図13に示すように
車両VLが旋回半径Rのカーブを旋回するときに必要な
横加速度Gy は、車両の速度をVとするとGy =V2
Rとして求められ、これに車両VLの質量mを乗じた値
m・Gy が、旋回半径Rを旋回するときに必要なコーナ
リングフォースの合計CFo となる(CFo =ΣCF=
m・Gy )。従って、旋回半径Rのカーブを旋回するの
に必要なコーナリングフォースの合計CFo より前輪及
び後輪のコーナリングフォースCFf ,CFr の和の方
が大となり(CFo <CFf +CFr )、且つ前輪のコ
ーナリングフォースCFf が後輪のコーナリングフォー
スCFr より極端に大きくなると(CFf >>CF
r)、車両VLの旋回半径が小さくなり、車両VLはカ
ーブの内側に回り込み、図13に示す状態となる。
【0004】また、アンダーステアが過大となると、車
両の旋回中に生ずる横すべりが大となり、車両が所望の
旋回半径から外側にはみ出す状態となる。これを過度の
アンダーステアと呼び、図14に示すように前輪と後輪
のコーナリングフォースCFf ,CFr が略等しく釣り
合っているか、あるいは後輪側のコーナリングフォース
CFr の方が僅かに大きい場合(CFf <CFr )で、
旋回半径Rのカーブを旋回可能なコーナリングフォース
の合計CFo より前輪及び後輪のコーナリングフォース
CFf ,CFr の和の方が小さくなると(CFo >CF
f +CFr )、車両VLの旋回半径が大きくなり、車両
VLはカーブの外側へはみ出すこととなる。
【0005】上記過度のオーバーステアは、例えば車体
横すべり角(β)と車体横すべり角速度(Dβ)に基づ
いて判定される。車両が旋回中において、過度のオーバ
ーステアと判定されたときには、例えば旋回外側の前輪
に制動力が付与され、車両に対し外向きのヨーモーメン
ト、即ち車両を旋回外側に向けるヨーモーメントが生ず
るように制御される。これをオーバーステア抑制制御と
呼び、安定性制御とも呼ばれる。
【0006】一方、過度のアンダーステアは、例えば目
標横加速度と実横加速度との差、もしくは目標ヨーレイ
トと実ヨーレイトとの差に基づいて判定される。そし
て、上記車両VLが旋回中に過度のアンダーステアと判
定されたときには、例えば後輪駆動車の場合、旋回外側
の前輪及び後二輪に制動力が付与され、車両に対し内向
きのヨーモーメント、即ち車両を旋回内側に向けるヨー
モーメントが生ずるように制御される。これはアンダー
ステア抑制制御と呼び、コーストレース性制御とも呼ば
れる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、例えば各車
輪の車輪スリップ率に対する車両に作用するヨーモーメ
ントの変化は、図15に示すような関係にある。図15
において、実線は旋回内側の前輪、二点鎖線は旋回外側
の前輪、一点鎖線は旋回内側の後輪、破線は旋回外側の
後輪の特性を示す。中央のヨーモーメント変化0の線か
ら上側が車両に対し内向きのヨーモーメントが発生しア
ンダーステア抑制効果がある領域であり、下側が車両に
対し外向きのヨーモーメントが発生しオーバーステア抑
制効果がある領域である。例えば、オーバステア抑制制
御の一環として、旋回外側の前輪に対し自動的に制動力
が付与され、制動力の上昇に伴い車両に対し外向きのヨ
ーモーメントが発生することは前述のとおりであるが、
制動力上昇に起因するコーナリング力の減少によって、
車両に対し内向きのヨーモーメントが減少することにも
なる。従って、車両が内側に回り込む傾向にある場合に
は、旋回外側の前輪に対しオーバーステア抑制制御の一
環として自動的に制動力を付与することが車両運動の安
定化に寄与する。
【0008】然し乍ら、オーバーステア抑制制御の一環
として、更に旋回外側の後輪に対し制動力を付与する場
合には、制動力の上昇に伴い車両に対し外向きのヨーモ
ーメントが発生するものの、制動力の上昇に起因するコ
ーナリング力の減少により、図5に破線で示すように外
向きのヨーモーメントが減少することになる。このた
め、旋回外側の後輪に対しオーバーステア抑制制御の一
環として自動的に制動力を付与することは、場合によっ
ては車両の安定性を損なうおそれが生ずる。
【0009】一方、アンダーステア抑制制御において
は、後輪駆動車の場合は、前述のように旋回外側の前輪
及び後二輪に自動的に制動力が付与される。即ち、車両
に対し、内向きのヨーモーメントを与えながら、減速す
ることにより車両のコーストレース性を向上させること
としている。然し乍ら、後二輪に対する制動力が過大で
あると、後輪のコーナリング力が失われることになり、
却って車両安定性が損なわれるおそれがある。
【0010】そこで、本発明は車両の運動制御装置にお
いて、車両の運動制御作動時に後輪に付与される制動力
が所定の上限値を越えないように制御し、安定した状態
で車両が旋回し得るように構成することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、本発明は、図1に構成の概要を示したように、車両
前方及び後方の各車輪FR,FL,RR,RLに対し少
くともブレーキペダルBPの操作に応じて制動力を付与
するブレーキ液圧制御装置PCと、車両の運動状態を判
定する車両状態判定手段DRと、ブレーキペダルBPの
操作に起因した制動状態にあるか否かに拘らず車両状態
判定手段DRの判定結果に基づきブレーキ液圧制御装置
PCを制御し、車両が旋回中に過度のオーバーステアと
判定したときには、車両に対し外向きのモーメントが生
ずるように車両の各車輪に制動力を付与すると共に、車
両が旋回中に過度のアンダーステアと判定したときに
は、車両に対し内向きのモーメントが生ずるように車両
の各車輪に制動力を付与する運動制御手段MAとを備え
た車両の運動制御装置において、車両状態判定手段DR
の判定結果に応じて、運動制御手段MAが車両後方の車
輪に対して制動力を付与する場合には、この制動力を所
定の上限値未満となるように制御する後輪制動力制限手
段RBを設けたものである。
【0012】尚、前記上限値は、路面摩擦係数、横加速
度、推定車体速度又はこれらを二つ以上組合せたものの
関数として設定される。ブレーキ液圧制御装置PCは、
後述の実施形態に示すように、ブレーキペダルBPの操
作に応じてブレーキ液圧を出力するマスタシリンダのほ
か、例えば液圧ポンプ及びアキュムレータを備えた補助
液圧源を含み、ブレーキペダルBPの非操作時にも補助
液圧源からブレーキ液圧を出力するように構成すること
ができる。車両状態判定手段DRは、例えば各車輪の車
輪速度、車輪加速度、車体横加速度、ヨーレイト等を検
出し、これらの検出結果、並びに検出結果に基づいて演
算した推定車体速度、車体横すべり角等に基づき、車両
の運動状態を判定するように構成し、過度のオーバース
テア及び過度のアンダーステアの発生を判定することが
できる。
【0013】上記運動制御手段MAは、例えば請求項2
に記載のように、少くとも車両状態判定手段DRの判定
結果に基づいて車両の各車輪に対する目標スリップ率を
設定する目標スリップ率設定手段DSと、車両の各車輪
の実スリップ率を測定するスリップ率測定手段SPと、
目標スリップ率と実スリップ率との偏差を演算するスリ
ップ率偏差演算手段SDを備えたものとし、このスリッ
プ率偏差演算手段SDの演算結果に基づきブレーキ液圧
制御装置PCを駆動制御するように構成すると共に、後
輪制動力制限手段RBを、車両後方の車輪に対する目標
スリップ率を所定の上限スリップ率未満の値に設定する
ように構成することができる。
【0014】更に、後輪制動力制限手段としては、各車
輪に圧力センサを設け、後輪のホイールシリンダのブレ
ーキ液圧に基づいて上限値を設定するように構成するこ
とができる。あるいは、各車輪にトルクセンサを設け、
後輪のブレーキトルクに基づいて上限値を設定するよう
に構成することもできる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の望ましい実施の形
態を図面を参照して説明する。図2は本発明の運動制御
装置の一実施形態を示すもので、本実施形態のエンジン
EGはスロットル制御装置TH及び燃料噴射装置FIを
備えた内燃機関で、スロットル制御装置THにおいては
アクセルペダルAPの操作に応じてメインスロットルバ
ルブMTのメインスロットル開度が制御される。また、
電子制御装置ECUの出力に応じて、スロットル制御装
置THのサブスロットルバルブSTが駆動されサブスロ
ットル開度が制御されると共に、燃料噴射装置FIが駆
動され燃料噴射量が制御されるように構成されている。
本実施形態のエンジンEGは変速制御装置GS及びディ
ファレンシャルギヤDFを介して車両後方の車輪RL,
RRに連結されており、所謂後輪駆動方式が構成されて
いるが、本発明における駆動方式をこれに限定するもの
ではない。
【0016】次に、制動系については、車輪FL,F
R,RL,RRに夫々ホイールシリンダWfl,Wf
r,Wrl,Wrrが装着されており、これらのホイー
ルシリンダWfl等にブレーキ液圧制御装置PCが接続
されている。尚、車輪FLは運転席からみて前方左側の
車輪を示し、以下車輪FRは前方右側、車輪RLは後方
左側、車輪RRは後方右側の車輪を示しており、本実施
形態では前輪の液圧制御系と後輪の液圧制御系に区分さ
れた前後配管が構成されているが、所謂X配管としても
よい。ブレーキ液圧制御装置PCはブレーキペダルBP
の操作に応じて駆動され、各車輪毎のホイールシリンダ
液圧を制御するもので、種々の態様のものを用いること
ができる。本実施形態では例えば図12に示すように構
成されるが、これについては後述する。
【0017】図2に示すように、車輪FL,FR,R
L,RRには車輪速度センサWS1乃至WS4が配設さ
れ、これらが電子制御装置ECUに接続されており、各
車輪の回転速度、即ち車輪速度に比例するパルス数のパ
ルス信号が電子制御装置ECUに入力されるように構成
されている。更に、ブレーキペダルBPが踏み込まれた
ときオンとなるブレーキスイッチBS、車両前方の車輪
FL,FRの舵角δf を検出する前輪舵角センサSS
f、車両の横加速度を検出する横加速度センサYG及び
車両のヨーレイトを検出するヨーレイトセンサYS等が
電子制御装置ECUに接続されている。ヨーレイトセン
サYSにおいては、車両重心を通る鉛直軸回りの車両回
転角(ヨー角)の変化速度、即ちヨー角速度(ヨーレイ
ト)が検出され、実ヨーレイトγとして電子制御装置E
CUに出力される。
【0018】尚、従動輪側の左右の車輪(本実施形態で
は車両前方の車輪FL,FR)の車輪速度差Vfd(=V
wfr −Vwfl )に基づき実ヨーレイトγを推定すること
ができるので、車輪速度センサWS1及びWS2の検出
出力を利用することとすればヨーレイトセンサYSを省
略することができる。更に、車輪RL,RR間に舵角制
御装置(図示せず)を設けることとしてもよく、これに
よれば電子制御装置ECUの出力に応じてモータ(図示
せず)によって車輪RL,RRの舵角を制御することも
できる。
【0019】本実施形態の電子制御装置ECUは、図2
に示すように、バスを介して相互に接続されたプロセシ
ングユニットCPU、メモリROM,RAM、入力ポー
トIPT及び出力ポートOPT等から成るマイクロコン
ピュータCMPを備えている。上記車輪速度センサWS
1乃至WS4、ブレーキスイッチBS、前輪舵角センサ
SSf、ヨーレイトセンサYS、横加速度センサYG等
の出力信号は増幅回路AMPを介して夫々入力ポートI
PTからプロセシングユニットCPUに入力されるよう
に構成されている。また、出力ポートOPTからは駆動
回路ACTを介してスロットル制御装置TH及びブレー
キ液圧制御装置PCに夫々制御信号が出力されるように
構成されている。マイクロコンピュータCMPにおいて
は、メモリROMは図4乃至図7に示したフローチャー
トを含む種々の処理に供するプログラムを記憶し、プロ
セシングユニットCPUは図示しないイグニッションス
イッチが閉成されている間当該プログラムを実行し、メ
モリRAMは当該プログラムの実行に必要な変数データ
を一時的に記憶する。尚、スロットル制御等の各制御毎
に、もしくは関連する制御を適宜組合せて複数のマイク
ロコンピュータを構成し、相互間を電気的に接続するこ
ととしてもよい。
【0020】図3は上記マイクロコンピュータCMPの
処理機能を示したブロック図で、ブロックB1では車輪
速度センサWS1乃至WS4の出力信号に基づき各車輪
速度Vw** (**は車輪FL,FR,RL,RR を代表して表す)及
び車輪加速度DVw** が演算され、これらに基づきブロ
ックB2にて各車輪毎に推定車体速度Vso**が演算され
る。また、ブロックB3ではヨーレイトセンサYS、横
加速度センサYG、前輪舵角センサSSf等の出力信号
に基づき各種車両状態量の推定演算が行なわれ、ブロッ
クB4では各車輪について以下の各種制御の開始又は終
了の処理が行なわれる。
【0021】而して、先ずブロックB5では制動操舵制
御が行なわれる。即ち、車両旋回時に、車両の安定性及
びコーストレース性を確保するように、ブロックB51
にてオーバーステア抑制制御が行なわれ、ブロックB5
2にてアンダーステア抑制制御が行なわれる。前者のオ
ーバーステア抑制制御は、車両旋回時に過度のオーバー
ステアとなるのを防止するため、ブロックB53を経て
ブロックB9にてブレーキ液圧制御装置の電磁弁(後
述)のソレノイドを駆動制御することにより、例えば旋
回外側前輪に制動力を付与し、車両を旋回外側に操向す
るものである。後者のアンダーステア抑制制御は、車両
旋回時に過度のアンダーステアとなるのを防止するた
め、例えば旋回外側前輪及び後二輪に制動力を付与し、
車両を旋回内側に操向しつつ減速するものである。尚、
必要に応じブロックB54を経てブロックB10にてス
ロットルが駆動制御され、車両の旋回運動が維持され
る。
【0022】また、ブロックB6ではアンチスキッド制
御が行なわれ、車両制動時に、車輪のロックを防止する
ように、各車輪に付与する制動力が制御される。ブロッ
クB7では前後輪の制動力配分制御が行なわれ、車両の
制動時に車両の安定性を維持するように、後輪に付与す
る制動力の前輪に付与する制動力に対する配分が制御さ
れる。尚、これらのブロックB6,B7における制御を
実行するため、ブロックB9にてソレノイドが駆動処理
され、ブレーキ液圧制御が行なわれる。
【0023】そして、ブロックB8ではトラクション制
御が行なわれる。即ち、ブロックB81にて、車両駆動
時に駆動輪のスリップを防止するように、駆動輪に対し
制動力が付与されると共に、ブロックB82及びブロッ
クB10にてスロットル制御が行なわれ、これらの制御
によって駆動輪に対する駆動力が制御される。
【0024】上記のように構成された本実施形態におい
ては、電子制御装置ECUにより制動操舵制御、アンチ
スキッド制御等の一連の処理が行なわれ、イグニッショ
ンスイッチ(図示せず)が閉成されると図4乃至図7等
のフローチャートに対応したプログラムの実行が開始す
る。図4は車両の運動制御作動を示すもので、先ずステ
ップ101にてマイクロコンピュータCMPが初期化さ
れ、各種の演算値がクリアされる。次にステップ102
において、車輪速度センサWS1乃至WS4の検出信号
が読み込まれると共に、前輪舵角センサSSfの検出信
号(舵角δf )、ヨーレイトセンサYSの検出信号(実
ヨーレイトγ)及び横加速度センサYGの検出信号(即
ち、実横加速度であり、Gyaで表す)が読み込まれる。
【0025】続いてステップ103に進み、各車輪の車
輪速度Vw** が演算され、これらの演算結果に基づきス
テップ104にて車体速度が推定され、各車輪毎に推定
車体速度Vso**が求められ、更に、必要に応じ、車両旋
回時の内外輪差等に基づく誤差を低減するため正規化が
行われる。即ち、正規化推定車体速度NVso**がNVso
**=Vso**(n) −ΔVr** (n) として演算される。ここ
で、ΔVr**(n)は旋回補正用の補正係数で、例えば以下
のように設定される。即ち、補正係数ΔVr**(**は各
車輪FR等を表し、特にFWは前二輪、RWは後二輪を表す)
は、車両の旋回半径R及びγ・VsoFW(≒横加速度Gy
a)に基づき、基準とする車輪を除き各車輪毎のマップ
(図示省略)に従って設定される。例えば、ΔVrFLが
基準とすると、これは0とされるが、ΔVrFRは内外輪
差マップに従って設定され、ΔVrRLは内々輪差マップ
に従い、ΔVrRRは外々輪差マップ及び内外輪差マップ
に従って設定される。
【0026】そして、ステップ105において、上記ス
テップ104で求められた推定車体速度Vso(=MAX
[Vw**])が微分されて前後方向の車体加速度DVso
が求められると共に、この車体加速度DVsoと横加速度
センサYGの検出信号の実横加速度Gyaに基づき、各車
輪に対する路面摩擦係数μが近似的に(DVso2 +Gya
2)1/2 として求められる。この路面摩擦係数μの値と各
車輪のホイールシリンダ液圧Pw**の推定値に基づいて
各車輪の路面摩擦係数μ**が決定される。尚、路面摩擦
係数を検出する手段としてはこれに限るものではなく、
直接路面摩擦係数を検出するセンサ等、種々の手段を用
いることができる。
【0027】また、ステップ105においては、上記ス
テップ103及び104で求められた各車輪の車輪速度
Vw** と推定車体速度Vso(あるいは、正規化推定車体
速度NVso**)に基づき各車輪の車輪スリップ率Sa**
(以下、実スリップ率Sa**という)がSa** =(Vso
−Vw** )/Vsoとして求められる。
【0028】次に、ステップ106にて初期特定制御が
行なわれた後、ステップ107に進み制動操舵制御モー
ドとされ、後述するように制動操舵制御に供する目標ス
リップ率が設定され、後述のステップ114の液圧サー
ボ制御により、車両の運転状態に応じてブレーキ液圧制
御装置PCが制御され各車輪に対する制動力が制御され
る。この制動操舵制御は、後述する全ての制御モードに
おける制御に対し重畳される。尚、ステップ106にお
ける初期特定制御は制動操舵制御開始前に行なわれ、後
段のトラクション制御開始前にも行なわれるが、アンチ
スキッド制御が開始するときには直ちに終了とされる。
この後ステップ108に進み、アンチスキッド制御開始
条件を充足しているか否かが判定され、開始条件を充足
し制動操舵時にアンチスキッド制御開始と判定される
と、初期特定制御は直ちに終了しステップ109にて制
動操舵制御及びアンチスキッド制御の両制御を行なうた
めの制御モードに設定される。
【0029】ステップ108にてアンチスキッド制御開
始条件を充足していないと判定されたときには、ステッ
プ110に進み前後制動力配分制御開始条件を充足して
いるか否かが判定され、制動操舵制御時に前後制動力配
分制御開始と判定されるとステップ111に進み、制動
操舵制御及び前後制動力配分制御の両制御を行なうため
の制御モードに設定され、充足していなければステップ
112に進みトラクション制御開始条件を充足している
か否かが判定される。制動操舵制御時にトラクション制
御開始と判定されるとステップ113にて制動操舵制御
及びトラクション制御の両制御を行なうための制御モー
ドに設定され、制動操舵制御時に何れの制御も開始と判
定されていないときには、ステップ114にて制動操舵
制御のみを行なう制御モードに設定される。そして、こ
れらの制御モードに基づきステップ115にて液圧サー
ボ制御が行なわれ、ステップ116にて終了特定制御が
行なわれた後にステップ102に戻る。尚、ステップ1
09,111,113,114に基づき、必要に応じ、
車両の運転状態に応じてスロットル制御装置THのサブ
スロットル開度が調整されエンジンEGの出力が低減さ
れ、駆動力が制限される。
【0030】図5は図4のステップ107における制動
操舵制御に供する目標スリップ率の設定の具体的処理内
容を示すもので、制動操舵制御にはオーバーステア抑制
制御及びアンダーステア抑制制御が含まれ、各車輪に関
しオーバーステア抑制制御及び/又はアンダーステア抑
制制御に応じた目標スリップ率が設定される。先ず、ス
テップ201,202においてオーバーステア抑制制御
及びアンダーステア抑制制御の開始・終了判定が行なわ
れる。
【0031】ステップ201で行なわれるオーバーステ
ア抑制制御の開始・終了判定は、図8に斜線で示す制御
領域にあるか否かに基づいて行なわれる。即ち、判定時
における車体横すべり角βと車体横すべり角速度Dβの
値に応じて制御領域に入ればオーバーステア抑制制御が
開始され、制御領域を脱すればオーバーステア抑制制御
が終了とされ、図8に矢印の曲線で示したように制御さ
れる。そして、後述するように、制御領域と非制御領域
の境界(図8に二点鎖線で示す)から制御領域側に外れ
るに従って制御量が大となるように各車輪の制動力が制
御される。
【0032】一方、ステップ202で行なわれるアンダ
ーステア抑制制御の開始・終了判定は、図9に斜線で示
す制御領域にあるか否かに基づいて行なわれる。即ち、
判定時において目標横加速度Gytに対する実横加速度G
yaの変化に応じて、一点鎖線で示す理想状態から外れて
制御領域に入ればアンダーステア抑制制御が開始され、
制御領域を脱すればアンダーステア抑制制御が終了とさ
れ、図9に矢印の曲線で示したように制御される。
【0033】続いて、ステップ203にてオーバーステ
ア抑制制御が制御中か否かが判定され、制御中でなけれ
ばステップ204にてアンダーステア抑制制御が制御中
か否かが判定され、これも制御中でなければそのままメ
インルーチンに戻る。ステップ204にてアンダーステ
ア抑制制御と判定されたときにはステップ205に進
み、各車輪の目標スリップ率が後述するアンダーステア
抑制制御用に設定される。ステップ203にてオーバー
ステア抑制制御と判定されると、ステップ206に進み
アンダーステア抑制制御か否かが判定され、アンダース
テア抑制制御でなければステップ207において各車輪
の目標スリップ率は後述するオーバーステア抑制制御用
に設定される。ステップ206でアンダーステア抑制制
御が制御中と判定されると、オーバーステア抑制制御と
アンダーステア抑制制御が同時に行なわれることにな
り、ステップ208にて同時制御用の目標スリップ率が
設定される。
【0034】まず、ステップ207におけるオーバース
テア抑制制御用の目標スリップ率の設定には、車体横す
べり角βと車体横すべり角速度Dβが用いられる。尚、
車体横すべり角βは、車両の進行方向に対する車体のす
べりを角度で表したもので、次のように演算し推定する
ことができる。即ち、車体横すべり角速度Dβは車体横
すべり角βの微分値dβ/dtであり、Dβ=Gy /V
so−γとして求めることができ、これを積分しβ=∫
(Gy /Vso−γ)dtとして車体横すべり角βを求め
ることができる。尚、Gy は車両の横加速度、Vsoは推
定車体速度、γはヨーレイトを表す。あるいは、進行方
向の車速Vx とこれに垂直な横方向の車速Vy の比に基
づき、β=tan-1(Vy /Vx )として求めることも
できる。
【0035】また、アンダーステア抑制制御における目
標スリップ率の設定には、目標横加速度Gytと実横加速
度Gyaとの差が用いられる。この目標横加速度GytはG
yt=γ(θf)・Vsoに基づいて求められる。ここで、
γ(θf)はγ(θf)=(θf/N・L)・Vso/
(1+Kh ・Vso2 )として求められ、Kh はスタビリ
ティファクタ、Nはステアリングギヤレシオ、Lはホイ
ールベースを表す。
【0036】ステップ205における各車輪の目標スリ
ップ率は、旋回外側の前輪がStufoに設定され、旋回外
側の後輪がSturoに設定され、旋回内側の後輪がSturi
に設定される。ここで示したスリップ率(S)の符号に
ついては "t"は「目標」を表し、後述の「実測」を表す
"a"と対比される。 "u"は「アンダーステア抑制制御」
を表し、 "r"は「後輪」を表し、 "o"は「外側」を、 "
i"は「内側」を夫々表す。
【0037】ステップ207における各車輪の目標スリ
ップ率は、旋回外側の前輪がStefoに設定され、旋回外
側の後輪がSteroに設定され、旋回内側の後輪がSteri
に設定される。ここで、 "e"は「オーバーステア抑制制
御」を表す。
【0038】そして、ステップ208においては、各車
輪の目標スリップ率は、旋回外側の前輪がStefoに設定
され、旋回外側の後輪がSturoに設定され、旋回内側の
後輪がSturiに夫々設定される。即ち、オーバーステア
抑制制御とアンダーステア抑制制御が同時に行なわれる
ときには、旋回外側の前輪はオーバーステア抑制制御の
目標スリップ率と同様に設定され、後輪は何れもアンダ
ーステア抑制制御の目標スリップ率と同様に設定され
る。尚、何れの場合も旋回内側の前輪(即ち、後輪駆動
車における従動輪)は推定車体速度設定用のため非制御
とされている。
【0039】オーバーステア抑制制御に供する旋回外側
前輪の目標スリップ率Stefoは、Stefo=K1・β+K
2・Dβとして設定される。また、旋回外側後輪の目標
スリップ率Steroは(K3 ・β+K4 ・Dβ)と車輪ス
リップ率制限値Slmt1との比較において、小さい方の値
が選択される。即ち、Stero=MIN(K3 ・β+K4
・Dβ,Slmt1)として求められる。ここで、K1乃至
K4は定数であり、MINは最小値を求める関数であ
る。従って、旋回外側の後輪の目標スリップ率Stero
は、常に車輪スリップ率制限値Slmt1以下となるように
設定され、図15において、常に外向きのヨーモーメン
トを発生する範囲に制限される。例えば、車輪スリップ
率制限値Slmt1は、車輪スリップ率で概ね10%程度に
設定される。
【0040】尚、車輪スリップ率制限値Slmt1は、前述
のステップ105で求められる路面摩擦係数μ**の関数
とすることが望ましい。また、横加速度Gy 及び/又は
推定車体速度Vsoの関数としてもよい。本実施形態で
は、車輪スリップ率を制限することによって後輪に対し
制動力の制限を行なうこととしたものであるが、圧力セ
ンサ又はトルクセンサを有する場合には、後輪のホイー
ルシリンダのブレーキ液圧に上限値を設定することとし
てもよく、あるいは後輪側のブレーキトルクに上限値を
設定することとしてもよい。
【0041】これに対し、旋回内側の後輪の目標スリッ
プ率Steriは、Steri=K5・β+K6・Dβとして設
定される。ここで、K5,K6は定数である。前述のよ
うに、旋回外側の前輪及び後輪の目標スリップ率Stefo
及びSteroは、加圧方向(制動力を増大する方向)の制
御を実行する値に設定されるのに対し、旋回内側の後輪
の目標スリップ率Steriは減圧方向(制動力を低減する
方向)の制御を実行する値に設定される。
【0042】一方、アンダーステア抑制制御に供する目
標スリップ率は、目標横加速度Gytと実横加速度Gyaの
偏差ΔGy に基づいて以下のように設定される。即ち、
旋回外側の前輪に対する目標スリップ率Stufoは、Stu
fo=K7 ・ΔGy と設定され、定数K7 は加圧方向(も
しくは減圧方向)の制御を行なう値に設定される。
【0043】また、旋回外側及び内側の後輪に対する目
標スリップ率Sturo及びSturiは、夫々、Sturo=MI
N(K8・ΔGy ,Slmt2),Sturi=MIN(K9・
ΔGy ,Slmt3)として、各々の車輪スリップ率制限値
Slmt2及びSlmt3を越えないように設定される。ここ
で、K8及びK9は定数である。これにより、アンダス
テア抑制制御時に後輪に対する制動力が過大となって、
車両安定性が損なわれることが防止される。車輪スリッ
プ率制限値Slmt2及びSlmt3も、路面摩擦係数μ**の関
数とすることが望ましいが、横加速度Gy 及び/又は推
定車体速度Vsoの関数としてもよい。また、圧力センサ
またはトルクセンサを有する場合には、後輪のホイール
シリンダ液圧または後輪側のブレーキトルクの上限値を
設定することとしてもよい。
【0044】図6及び図7は図4のステップ115で行
なわれる液圧サーボ制御の処理内容を示すもので、各車
輪についてホイールシリンダ液圧のスリップ率サーボ制
御が行なわれる。先ず、前述のステップ205、207
又は208にて設定された目標スリップ率St** がステ
ップ401にて読み出され、これらがそのまま各車輪の
目標スリップ率St** として読み出される。次に、ステ
ップ402に進みアンチスキッド制御中か否かが判定さ
れ、そうであればステップ403にて目標スリップ率S
t** にアンチスキッド用のスリップ率補正量ΔSs** が
加算されて、目標スリップ率St** が更新される。アン
チスキッド制御中でなければ、ステップ404に進み前
後制動力配分制御中か否かが判定される。ステップ40
4で前後制動力配分制御中と判定されると、ステップ4
05にて、目標スリップ率St**にスリップ率補正量Δ
Sb** が加算されて更新され、そうでなければステップ
406に進む。ステップ406ではトラクション制御中
か否かが判定され、そうであればステップ407にて目
標スリップ率St** にスリップ率補正量ΔSr** が加算
されて更新される。ステップ403,405及び407
で目標スリップ率St** が更新された後、あるいはステ
ップ406にてトラクション制御中でもないと判定され
たときにはそのままで、ステップ408に進み各車輪毎
にスリップ率偏差ΔSt** が演算されると共に、ステッ
プ409にて車体加速度偏差ΔDVso**が演算される。
【0045】上記ステップ408においては、各車輪の
目標スリップ率St** と実スリップ率Sa** の差が演算
されスリップ率偏差ΔSt** が求められる(ΔSt** =
St** −Sa** )。また、ステップ409においては基
準車輪(非制御対象の車輪)と制御対象の車輪における
車体加速度DVso**の差が演算され、車体加速度偏差Δ
DVso**が求められる。このときの各車輪の実スリップ
率Sa** 及び車体加速度偏差ΔDVso**はアンチスキッ
ド制御、トラクション制御等の制御モードに応じて演算
が異なるが、これらについては説明を省略する。
【0046】続いて、ステップ410に進みスリップ率
偏差ΔSt** が所定値Ka と比較され、所定値Ka 以上
であればステップ411にてスリップ率偏差ΔSt** の
積分値が更新される。即ち、今回のスリップ率偏差ΔS
t** にゲインGI** を乗じた値が前回のスリップ率偏差
積分値IΔSt** に加算され、今回のスリップ率偏差積
分値IΔSt** が求められる。スリップ率偏差|ΔSt*
* |が所定値Ka を下回るときにはステップ412にて
スリップ率偏差積分値IΔSt** はクリア(0)され
る。次に、図7のステップ413乃至416において、
スリップ率偏差積分値IΔSt** が上限値Kb 以下で下
限値Kc 以上の値に制限され、上限値Kbを超えるとき
はKb に設定され、下限値Kc を下回るときはKc に設
定された後、ステップ417に進む。
【0047】ステップ417においては、各制御モード
におけるブレーキ液圧制御に供する一つのパラメータY
**がGs** ・(ΔSt** +IΔSt** )として演算され
る。ここでGs** はゲインであり、車体横すべり角βに
応じて図11に実線で示すように設定される。また、ス
テップ418において、ブレーキ液圧制御に供する別の
パラメータX**がGd** ・ΔDVso**として演算され
る。このときのゲインGd** は図11に破線で示すよう
に一定の値である。
【0048】この後、ステップ419に進み、各車輪毎
に、上記パラメータX**,Y**に基づき、図10に示す
制御マップに従って液圧制御モードが設定される。図1
0においては予め急減圧領域、パルス減圧領域、保持領
域、パルス増圧領域及び急増圧領域の各領域が設定され
ており、ステップ419にてパラメータX**及びY**の
値に応じて、何れの領域に該当するかが判定される。
尚、非制御状態では液圧制御モードは設定されない(ソ
レノイドオフ)。
【0049】更に、ステップ419にて今回判定された
領域が、前回判定された領域に対し、増圧から減圧もし
くは減圧から増圧に切換わる場合には、ブレーキ液圧の
立下りもしくは立上りを円滑にする必要があるので、ス
テップ420において増減圧補償処理が行われる。例え
ば急減圧モードからパルス増圧モードに切換るときに
は、急増圧制御が行なわれ、その時間は直前の急減圧モ
ードの持続時間に基づいて決定される。そして、ステッ
プ421にて上記液圧制御モードに応じて、ブレーキ液
圧制御装置PCを構成する各電磁弁のソレノイドが駆動
され、各車輪の制動力が制御される。而して、過度のオ
ーバーステア及び過度のアンダーステアが同時に発生し
た場合でもオーバーステア抑制制御及びアンダーステア
抑制制御が適宜優先処理され、制御ハンチングを惹起す
ることなく車両の横方向の動特性が適切に制御される。
【0050】図12は上記実施形態におけるブレーキ液
圧制御装置PCの一例を示すもので、マスタシリンダM
C及び液圧ブースタHBがブレーキペダルBPの操作に
応じて駆動される。液圧ブースタHBには補助液圧源A
Pが接続されており、これらはマスタシリンダMCと共
に低圧リザーバRSに接続されている。
【0051】補助液圧源APは、液圧ポンプHP及びア
キュムレータAccを有する。液圧ポンプHPは電動モー
タMによって駆動され、低圧リザーバRSのブレーキ液
を昇圧して出力し、このブレーキ液が逆止弁CV6を介
してアキュムレータAccに供給され、蓄圧される。電動
モータMは、アキュムレータAcc内の液圧が所定の下限
値を下回ることに応答して駆動され、またアキュムレー
タAcc内の液圧が所定の上限値を上回ることに応答して
停止する。尚、アキュムレータAccと低圧リザーバRS
との間にはリリーフバルブRVが介装されている。而し
て、アキュムレータAccから所謂パワー液圧が適宜液圧
ブースタHBに供給される。液圧ブースタHBは、補助
液圧源APの出力液圧を入力し、マスタシリンダMCの
出力液圧をパイロット圧として、これに比例したブース
タ液圧に調圧するもので、これによってマスタシリンダ
MCが倍力駆動される。
【0052】マスタシリンダMCと車両前方のホイール
シリンダWfr,Wflの各々を接続する前輪側の液圧
路には、電磁切換弁SA1及びSA2が介装されてお
り、これらは制御通路Pfr及びPflを介して夫々電
磁開閉弁PC1,PC5及び電磁開閉弁PC2,PC6
に接続されている。また、液圧ブースタHBとホイール
シリンダWrl等の各々を接続する液圧路には電磁開閉
弁SA3、給排制御用の電磁開閉弁PC1乃至PC8が
介装されており、後輪側には比例減圧弁PVが介装され
ている。そして、電磁開閉弁STRを介して補助液圧源
APが電磁開閉弁SA3の下流側に接続されている。図
12では前輪の液圧制御系と後輪の液圧制御系に区分さ
れた前後配管が構成されているが、所謂X配管としても
よい。
【0053】前輪側液圧系において、電磁開閉弁PC1
及びPC2は電磁開閉弁STRに接続されている。電磁
開閉弁STRは2ポート2位置の電磁開閉弁であり、非
作動時の閉位置では遮断状態で、作動時の開位置では電
磁開閉弁PC1及びPC2を直接アキュムレータAccに
連通する。電磁切換弁SA1及び電磁切換弁SA2は3
ポート2位置の電磁切換弁で、非作動時は図12に示す
第1位置にあってホイールシリンダWfr,Wflは何
れもマスタシリンダMCに連通接続されているが、ソレ
ノイドコイルが励磁され第2位置に切換わると、ホイー
ルシリンダWfr,Wflは何れもマスタシリンダMC
との連通が遮断され、夫々電磁開閉弁PC1及びPC
5、電磁開閉弁PC2及びPC6と連通する。
【0054】これら電磁開閉弁PC1及びPC2に対し
て並列に逆止弁CV1及びCV2が接続されており、逆
止弁CV1の流入側が制御通路Pfrに、逆止弁CV2
の流入側が制御通路Pflに夫々接続されている。逆止
弁CV1は、電磁切換弁SA1が作動位置(第2位置)
にある場合において、ブレーキペダルBPが開放された
ときには、ホイールシリンダWfrのブレーキ液圧を液
圧ブースタHBの出力液圧の低下に迅速に追従させるた
めに設けられたもので、液圧ブースタHB方向へのブレ
ーキ液の流れは許容されるが逆方向の流れは阻止され
る。尚、逆止弁CV2についても同様である。
【0055】次に、後輪側液圧系について説明すると、
電磁開閉弁SA3は2ポート2位置の電磁開閉弁で、非
作動時には図12に示す開位置にあって、電磁開閉弁P
C3,PC4は比例減圧弁PVを介して液圧ブースタH
Bと連通する。このとき、電磁開閉弁STRは閉位置と
され、アキュムレータAccとの連通が遮断される。電磁
開閉弁SA3が作動時の閉位置に切換えられると、電磁
開閉弁PC3,PC4は液圧ブースタHBとの連通が遮
断され、比例減圧弁PVを介して電磁開閉弁STRに接
続され、この電磁開閉弁STRが作動時にアキュムレー
タAccと連通する。
【0056】また、電磁開閉弁PC3及びPC4に対し
て並列に逆止弁CV3及びCV4が接続されており、逆
止弁CV3の流入側がホイールシリンダWrrに、逆止
弁CV4の流入側がホイールシリンダWrlに夫々接続
されている。これらの逆止弁CV3,CV4は、ブレー
キペダルBPが開放されたときには、ホイールシリンダ
Wrr,Wrlのブレーキ液圧を液圧ブースタHBの出
力液圧の低下に迅速に追従させるために設けられたもの
で、電磁開閉弁SA3方向へのブレーキ液の流れが許容
され逆方向の流れは阻止される。更に、逆止弁CV5が
電磁開閉弁SA3に並列に設けられており、電磁開閉弁
SA3が閉位置にあるときにも、ブレーキペダルBPに
よる踏み増しが可能とされている。
【0057】上記電磁切換弁SA1,SA2及び電磁開
閉弁SA3,STR並びに電磁開閉弁PC1乃至PC8
は前述の電子制御装置ECUによって駆動制御され、前
述の制動操舵制御を初めとする各種制御が行なわれる。
例えば、ブレーキペダルBPが操作されていない状態で
行なわれる制動操舵制御時には、液圧ブースタHB及び
マスタシリンダMCからはブレーキ液圧が出力されない
ので、電磁切換弁SA1,SA2が第2位置とされ、電
磁開閉弁SA3が閉位置とされ、そして電磁開閉弁ST
Rが開位置とされる。これにより、補助液圧源APの出
力パワー液圧が電磁開閉弁STR並びに開状態の電磁開
閉弁PC1乃至PC8を介してホイールシリンダWfr
等に供給され得る状態となる。而して、電磁開閉弁PC
1乃至PC8が適宜開閉駆動されることによって各ホイ
ールシリンダ内のブレーキ液圧が急増圧、パルス増圧
(緩増圧)、パルス減圧(緩減圧)、急減圧、及び保持
状態とされ、前述のようにオーバーステア抑制制御及び
/又はアンダーステア抑制制御が行なわれる。
【0058】以上のように、本実施形態の制動操舵制御
においては、ブレーキペダルBPの操作に起因した制動
状態にあるか否かに拘らず各車輪に対し制動力が付与さ
れ、オーバーステア抑制制御及び/又はアンダーステア
抑制制御が行なわれ、もちろんブレーキペダルBPが操
作されて制動状態にある場合でも同様の制御が行なわれ
る。前述のフローチャートでは過度のオーバーステアと
過度のアンダーステアが同時に発生したときの処理とし
ているが、短時間で過度のオーバーステアと過度のアン
ダーステアが連続して発生する場合にも同様に処理する
ことができる。また、本実施形態ではスリップ率によっ
て制御することとしているので、高価な圧力センサを必
要とすることなく、安価な装置を提供することができ
る。
【0059】尚、オーバーステア抑制制御及びアンダー
ステア抑制制御の制御目標としてはスリップ率のほか、
各車輪のホイールシリンダのブレーキ液圧(但し、この
場合には圧力センサが必要となる)、ブレーキトルク
等、各車輪に付与される制動力に対応する目標値であれ
ばどのような値を用いてもよい。更に、本発明は後輪駆
動車に限ることなく、前輪駆動車又は四輪駆動車にも適
用することができる。四輪駆動車の場合には全ての車輪
が制御対象となり、車輪速度センサでは車体速度を検出
することができなくなるので別途センサを設ける必要が
ある。
【0060】
【発明の効果】本発明は上述のように構成されているの
で以下の効果を奏する。即ち、本発明の車両の運動制御
装置においては、ブレーキペダルの操作に起因した制動
状態にあるか否かに拘らず、車両状態判定手段の判定結
果に応じて、運動制御手段が車両後方の車輪に対して制
動力を付与する場合には、後輪制動力制限手段によって
その制動力を所定の上限値未満となるように制御するこ
ととしているので、安定した状態で車両を旋回させるこ
とができる。
【0061】請求項2に記載の運動制御装置において
は、更に、ブレーキ液圧制御装置を目標スリップ率と実
スリップ率との偏差に応じて制御するように構成すると
共に、車両後方の車輪に対する目標スリップ率を所定の
上限スリップ率未満の値に設定することとしており、簡
単且つ安価な構成で確実に後輪制動力制限手段を構成す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両の運動制御装置の概要を示すブロ
ック図である。
【図2】本発明の運動制御装置の一実施形態の全体構成
図である。
【図3】本発明の運動制御装置の一実施形態の機能ブロ
ック図である。
【図4】本発明の一実施形態における車両の運動制御の
全体を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態における制動操舵制御のた
めの処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態における液圧サーボ制御の
処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態における液圧サーボ制御の
処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態におけるオーバーステア抑
制制御の開始・終了判定領域を示すグラフである。
【図9】本発明の一実施形態におけるアンダーステア抑
制制御の開始・終了判定領域を示すグラフである。
【図10】本発明の一実施形態においてブレーキ液圧制
御に供するパラメータと液圧制御モードとの関係を示す
グラフである。
【図11】本発明の一実施形態における車体横すべり角
とパラメータ演算用のゲインとの関係を示すグラフであ
る。
【図12】本発明の一実施形態におけるブレーキ液圧制
御装置の一例を示す構成図である。
【図13】一般的な車両の左旋回時における過度のオー
バーステア状態を示す説明図である。
【図14】一般的な車両の左旋回時における過度のアン
ダーステア状態を示す説明図である。
【図15】一般的な車両の旋回時に各車輪に対し制動力
を付与したときの車輪スリップ率と車両に作用するヨー
モーメントとの関係を示す説明図である。
【符号の説明】
BP ブレーキペダル BS ブレーキスイッチ MC マスタシリンダ HB 液圧ブースタ Wfr,Wfl,Wrr,Wrl ホイールシリンダ WS1〜WS4 車輪速度センサ FR,FL,RR,RL 車輪 PC ブレーキ液圧制御装置 ST サブスロットルバルブ EG エンジン GS 変速制御装置 YS ヨーレイトセンサ YG 横加速度センサ FI 燃料噴射装置 DF ディファレンシャルギヤ SSf 前輪舵角センサ CMP マイクロコンピュータ IPT 入力ポート OPT 出力ポート ECU 電子制御装置 AMP 増幅回路 ACT 駆動回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊藤 孝之 愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイシ ン精機株式会社内 (72)発明者 山崎 憲雄 愛知県刈谷市昭和町2丁目3番地 アイシ ン・ニューハード株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両前方及び後方の各車輪に対し少くと
    もブレーキペダルの操作に応じて制動力を付与するブレ
    ーキ液圧制御装置と、前記車両の運動状態を判定する車
    両状態判定手段と、前記ブレーキペダルの操作に起因し
    た制動状態にあるか否かに拘らず前記車両状態判定手段
    の判定結果に基づき前記ブレーキ液圧制御装置を制御
    し、前記車両が旋回中に過度のオーバーステアと判定し
    たときには、前記車両に対し外向きのモーメントが生ず
    るように前記車両の各車輪に制動力を付与すると共に、
    前記車両が旋回中に過度のアンダーステアと判定したと
    きには、前記車両に対し内向きのモーメントが生ずるよ
    うに前記車両の各車輪に制動力を付与する運動制御手段
    とを備えた車両の運動制御装置において、前記車両状態
    判定手段の判定結果に応じて、前記運動制御手段が前記
    車両後方の車輪に対して制動力を付与する場合には、該
    制動力を所定の上限値未満となるように制御する後輪制
    動力制限手段を備えたことを特徴とする車両の運動制御
    装置。
  2. 【請求項2】 前記運動制御手段が、少くとも前記車両
    状態判定手段の判定結果に基づいて前記車両の各車輪に
    対する目標スリップ率を設定する目標スリップ率設定手
    段と、前記車両の各車輪の実スリップ率を測定するスリ
    ップ率測定手段と、前記目標スリップ率と前記実スリッ
    プ率との偏差を演算するスリップ率偏差演算手段を備
    え、該スリップ率偏差演算手段の演算結果に基づき前記
    ブレーキ液圧制御装置を駆動制御するように構成すると
    共に、前記後輪制動力制限手段が、前記車両後方の車輪
    に対する目標スリップ率を所定の上限スリップ率未満の
    値に設定するように構成したことを特徴とする請求項1
    記載の車両の運動制御装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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