JPH0914394A - 自動差動制限装置 - Google Patents

自動差動制限装置

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JPH0914394A
JPH0914394A JP17947695A JP17947695A JPH0914394A JP H0914394 A JPH0914394 A JP H0914394A JP 17947695 A JP17947695 A JP 17947695A JP 17947695 A JP17947695 A JP 17947695A JP H0914394 A JPH0914394 A JP H0914394A
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Tsunekazu Nakada
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ASANO HAGURUMA KOSAKUSHO KK
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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16HGEARING
    • F16H48/00Differential gearings
    • F16H48/06Differential gearings with gears having orbital motion
    • F16H48/08Differential gearings with gears having orbital motion comprising bevel gears
    • F16H2048/085Differential gearings with gears having orbital motion comprising bevel gears characterised by shafts or gear carriers for orbital gears

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Abstract

(57)【要約】 【目的】ノーマルデフの基本構造を殆ど変えず、小型・
シンプルな構造で、コスト・重量も殆ど同じで、多板ク
ラッチ式のもの以上のバイアス比が得られ、充分な差動
制限効力を有する自動差動制限装置の提供。 【構成】車両用の差動制限装置において、デフケース1
内に、各ピニオン2を支持するピニオンシャフトに代え
て、ピニオン支承兼カム部材5を設け、該ピニオン支承
兼カム部材5を、サイドギヤ4の中心線Xに直交する垂
直面Vで分離可能な一対の支承体5a,5bが当接した
ものとし、当接状態の支承体5a,5bの側周部で上記
垂直面V上の対象箇所に、各ピニオン2のフェイス面8
に対応する支承凹曲面10をもつピニオン支承凹部9を
各々設けて、該各ピニオン支承用凹部9で、各ピニオン
2を抱持支承させる。より大きな差動制限力が必要な車
両では、各ピニオン2のフェイス角α1 が標準的角度よ
り大きいものを用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は車両に設ける自動差動制
限装置、即ち差動制限を自動的に行い得る差動装置(デ
フ)の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動差動制限装置は、車両のフロントデ
フ、リヤデフ又はセンターデフとして設けた場合に、左
右両側の駆動輪の内で片側の駆動輪が、例えば泥地や凍
結路面のような摩擦係数の小さい場所に入って高速空転
するような際に、ノーマルデフ(普通の差動装置)と異
なり、自動的に差動を制限して、他側の駆動輪に空転側
以上の回転駆動トルクを伝えて、泥地等からの脱出を可
能とする装置である。
【0003】その差動制限装置として、従来より例えば
次のようなものがあった。 1)多板クラッチに摩擦抵抗を生じさせるのに、サイド
ギヤの噛み合いによるスラスト力に加えて、両サイドギ
ヤ間に予圧力バネを設け、該バネのバネ力によりサイド
ギヤを介して多板クラッチに予圧力を与え、初期設定ト
ルクを得るようにしたもの(例えば実公昭56−341
92号公報参照)。
【0004】2)多板クラッチに摩擦抵抗を生じさせる
のに、サイドギヤ噛み合いによるスラスト力に加えて、
両サイドギヤ間に予圧力バネを設けるとともに、さらに
多板の伝達トルクに比例して多板クラッチへの押力を増
加させるカム手段を、ピニオンシャフトとデフケースと
の間に付加したもの(例えば特公昭50−2135号公
報参照)。
【0005】3)本件と同一人が先に出願したものであ
り、デフケース内に、該デフケースと共に回転する一対
のデフピニオンと、両側の各出力軸に軸装され上記各デ
フピニオンに噛合して回転する一対のサイドギヤとを設
けた差動制限装置において、デフケース内に、両デフピ
ニオンを支持するピニオンシャフトに代えて、各デフピ
ニオンのフェイス面(歯先面)に対応する支承凹曲面を
もつ一対のピニオン支承プレートを、サイドギヤの中心
線を含む面に沿って分離可能に対向状に設け、各ピニオ
ンを該各ピニオン支承プレートにより抱持支承させたも
の(実開平6−76748号公報参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが従来の差動制
限装置の内、上記1)・2)のものは、差動制限用に多
板クラッチを用いているし、またそれに加えてピニオン
シャフトとデフケース間にカム手段を設けたりしてい
る。そのため、この差動制限装置は部品点数が多くなる
とともに、各部品の加工も容易でなく、コスト高になっ
ている。さらに装置全体が大型化するとともに、重量も
重くなる等の問題点があった。
【0007】また上記3)のものは、多板クラッチ式と
ほぼ等しいバイアス比が得られるものであり、ノーマル
デフの基本構造を殆ど変えることなく小型でシンプルな
構造にできたものであるが、それ以上に大きなバイアス
比を必要とする車両には、この構造ではカム作用がない
ために、これ以上のバイアス比を得るのは無理で、対応
しきれ無いという問題点があった。
【0008】本発明は、上記従来の差動制限装置がもつ
問題点を解決しようとするものである。即ち本発明の目
的は、従来の差動制限機構のないノーマルデフの基本構
造を殆ど変えることなく、小型でシンプルな構造であ
り、コストおよび重量もノーマルデフと殆ど同じであ
り、かつ従来の一般的な多板クラッチ式のもの以上のバ
イアス比が得られて、充分な差動制限効果(LSD効
果)を発揮できるような、自動差動制限装置を提供する
ことにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係る自動差動制
限装置は、デフケース1内に、該デフケース1と共に回
転するデフピニオン2と、両側の各出力軸3に軸装され
上記各デフピニオン2に噛合して回転する一対のサイド
ギヤ4とを設けた差動制限装置において、デフケース1
内に、各ピニオン2を支持するピニオンシャフトに代え
て、ピニオン支承兼カム部材5を設けたものであり、該
ピニオン支承兼カム部材5を、サイドギヤ4の中心線X
に直交する垂直面Vで分離可能な一対の支承体5a,5
bが当接したものとし、各支承体5a,5bには、上記
中心線X上の各外側部にサイドギヤ係合凹部6を形成す
るとともに、中央に初期トルク設定用の皿バネ係合孔7
を設け、かつ、当接状態の支承体5a,5bの側周部で
上記垂直面V上の対象箇所に、各ピニオン2のフェイス
面8に対応する支承凹曲面10をもつピニオン支承凹部
9を各々設け、該ピニオン支承兼カム部材5の各ピニオ
ン支承用凹部9にて、各ピニオン2を抱持支承させたも
のである。
【0010】上記の構成において、ピニオン支承兼カム
部材5に形成されるピニオン支承凹部9の数は、デフピ
ニオン2の数に相応しており、ピニオン2が二個の場合
は対象箇所の二か所に、ピニオン2が四個の場合は同様
に四箇所に形成してある。
【0011】各ピニオン2のフェイス角α1 は、例えば
オフロード車や農業用車のように、差動制限装置として
比較的大きいバイアス比が必要な車両では、標準的角度
より大きい角度のものを用い、例えばFF車(フロント
エンジン・フロントドライブ車)の如く、比較的小さい
バイアス比でよい車両では標準的角度より小さい角度の
ものを用いるようにする。ここで標準的角度とは、標準
的なバイアス比で充分な車両の場合に、本発明の構成に
おいて用いる各ピニオン2のフェイス角α1 の角度をい
う。
【0012】なお、上記の如く各ピニオン2のフェイス
角α1 を、大きくまたは小さくした場合に、ピニオン支
承兼カム部材5の各ピニオン支承凹部9の支承凹曲面1
0の傾斜角α2 も、それに対応して大きく又は小さい角
度にしておく。
【0013】上記ピニオン支承兼カム部材5は、デフケ
ース1内でこれと一体的に回転するように、外周部に設
けた掛止凸部12をデフケース1内周部の掛止凹部13
で掛止固定してある。図において、11a,11bは各
支承体5a,5bの外側端面、14はリングギヤ、15
はスラストプレート、16はデフケース1の内周面、1
7はピニオン2の外球面、18a,18bは各サイドギ
ヤ4の対向する内側端面、19は締め付けボルト、20
は皿バネ、Sはピニオン2のフェイス面とピニオン支承
兼カム部材5の支承凹曲面10との間の間隙、Tは回転
駆動トルクを各々示す。
【0014】
【作用】本発明に係る自動差動制限装置においても、公
知のノーマルデフと同様に、エンジンの回転およびトル
クがドライブピニオン(図示略)・リングギヤ14等を
介して、デフケース1を回転駆動させる。デフケース1
の回転によって、該デフケース1内に掛止固定されたピ
ニオン支承兼カム部材5が一緒に回転するので、該ピニ
オン支承兼カム部材5で抱持支承された各デフピニオン
2も、デフケース1と一緒の回転即ち公転する。
【0015】A 差動制限を必要としない通常走行の場
合の作動状態 1)まず、車両の前または後の左右の駆動輪に対する回
転抵抗トルクが同一の場合、例えば左右の両駆動輪にか
かる路面抵抗即ち路面と両側タイヤとの抵抗が等しく、
左右の各出力軸3を介して各サイドギヤ4へ伝達される
回転抵抗トルクが同一の場合には、該各サイドギヤ4と
噛合している各デフピニオン2は、それ自体は回転(自
転)せず、デフケース1と一緒に回転(公転)している
だけである。
【0016】これは、上記の場合に各デフピニオン2の
左右サイドギヤ4との噛合い点荷重が同一であるので、
両サイドギヤ4は等速でデフケース1と同一回転するこ
とになる。そのため、差動作用は生じず、左右の各出力
軸3が一本になったような状態で同一回転しており、左
右両駆動輪の同速回転により車両は直進走行することに
なる。この際、ドライブピニオンから伝達された回転駆
動トルクTは、両出力軸3で1/2ずつになっている。
【0017】2)次に、車両が旋回する際の如く、左右
の路面抵抗が同じで、左右の駆動輪に対する回転が異な
り、各出力軸3を介して各サイドキヤ4へ伝達される回
転に差が生じる場合には、これと噛合している各デフピ
ニオン2は、デフケース1と一体的に公転すると同時
に、ピニオン支承兼カム部材5内で自転を行うことにな
る。
【0018】このデフピニオン2の自転によって、回転
の大きい側のサイドギヤ4は、デフケース1の回転より
早く回転することになり、該サイドギヤ4側の出力軸3
の回転速度は早くなる。他方のサイドギヤ4は、デフケ
ース1の回転より遅くなるので、該サイドギヤ4側の出
力軸3の回転が遅くなる。即ち、左右の各駆動輪間に差
動が生じ、回転数に差が生じるので、車両は滑らかに旋
回走行できることになる。
【0019】B 差動制限を必要とする走行の場合の作
動状態 左右の両駆動輪の内で片側の駆動輪が、泥地や凍結路の
如く摩擦係数(μ)が非常に小さい場所へ入った場合に
は、その側の駆動輪の回転抵抗トルクは殆ど零になるの
で、両サイドギヤ4の相対的な回転速度差はきわめて大
きくなる。差動制限機構を持たぬノーマルデフでは、こ
のような場合にも差動作用が働き、その側の駆動輪だけ
が高速空転・スリップすることになるので、他側の駆動
輪には充分な回転駆動トルクTが伝えられず、その結果
として車両はその場所から脱出できず走行不能となる。
【0020】上記の如く、各出力軸3へ伝達された回転
抵抗トルク差が大きい場合には、本発明に係る自動差動
制限装置も従来一般の自動差動制限装置と同様に、その
差を補正するために各デフピニオン2が自転する。しか
しここでは、各ピニオン2の支持を、ピニオンシャフト
ではなく、ピニオン支承兼カム部材5で抱持支承してあ
り、かつ該ピニオン支承兼カム部材5は、サイドギヤ4
の中心線Xに直交する垂直面Vに沿って分離可能な支承
体5a,5bを一体的に当接したものである。そのた
め、本自動差動制限装置では、デフケース1、各ピニオ
ン2、ピニオン支承兼カム部材5、各サイドギヤ4、各
スラストプレート15等で、次のような摺動抵抗トルク
t1 ・t2 ・t3 ・t4 ・t5 (いずれも図示は略)が
各々発生しており、その総和である摩擦抵抗トルクt
(図示は略)が差動を制限する力となる。
【0021】1)各デフピニオン2のフェイス面(歯先
面)8とピニオン支承兼カム部材5の各ピニオン支承凹
部9の支承凹曲面10間では、ピニオンフェイス面摺動
抵抗トルクt1 が発生している。即ち、上記の如く自転
する各ピニオン2は、ピニオン支承兼カム部材5の各ピ
ニオン支承凹部9内で抱持支承されているが、フェイス
面(歯先面)8と支承凹曲面10間には僅かな間隙Sが
ある。これで各ピニオン2は、各ピニオン支承凹部9内
でフローティング状態にあり、デフケース1の回転方向
に対しても、その間隙Sの範囲内でフリー状態にある。
【0022】そのため、デフケース1が回転して各デフ
ピニオン2に回転駆動トルクTが伝達され、各ピニオン
2が公転することにより、各ピニオン2のフェイス面8
とピニオン支承兼カム部材5の各支承凹曲面10との間
では、図4で示す如くピニオンフェイス面押し付け力n
1 が生じる。
【0023】したがって各ピニオン2は、フェイス面8
がピニオン支承兼カム部材5の支承凹曲面10へ接触を
強める方向へ移動することになり、圧接状態になる。こ
の圧接により、自転する各ピニオン2のフェイス面8と
ピニオン支承兼カム部材5の支承凹曲面10との間で、
ピニオンフェイス面摺動抵抗トルクt1 が発生してい
る。
【0024】2)他面、デフケース1の内周面16と各
デフピニオン2の外球面17間では、ピニオン球面摺動
抵抗トルクt2 が発生している。即ち、デフケース1の
回転で各ピニオン2に回転駆動トルクTが伝達され、各
ピニオン2が公転することによって、デフケース1の内
周面16と各ピニオン2の外球面17との間では、図4
で示す如く、ピニオン球面押し付け力n2 が生じる。同
時に、上記の如く各ピニオン2がピニオン支承兼カム部
材5の支承凹曲面10側へ移動することで、各ピニオン
2がデフケース1の内局面16とピニオン支承兼カム部
材5の支承凹曲面10との間にクサビ状に入り込むこと
になる(同図4参照)。
【0025】そのため、各ピニオン2の外球面17がデ
フケース1の内周面16に圧接状態になるので、この圧
接により、自転する各ピニオン2の外球面17とデフケ
ース1の内周面16との間で、ピニオン球面摺動抵抗ト
ルクt2 が発生している。
【0026】3)デフピニオン2と各サイドギヤ4間で
は、歯車噛み合い摺動抵抗トルクt3 が発生している。
即ち、各ピニオン2は、上記の如くピニオン支承兼カム
部材5の各ピニオン支承凹部9内でフローティング状態
にあるが、該各ピニオン2が自転すると、ピニオン支承
兼カム部材5の支承凹曲面9との摺動抵抗により、各ピ
ニオン2は各サイドギヤ4の方向へ移動することにな
る。そのため各ピニオン2は、噛合する各サイドギヤ4
との間で言わばクサビの如く深く噛み合う状態になるの
で、各ピニオン2が自転する際に、歯車噛み合い摺動抵
抗トルクt3 が発生している。
【0027】4)スラストプレート15で、デフケース
1とサイドギヤ4との間に、スラストプレート面摺動抵
抗トルクt4 が発生している。即ち、初期トルク設定用
の皿バネ20が各サイドギヤ4を押圧する力、各サイド
ギヤ4がデフピニオン2と噛み合うことによるスラスト
力等により、各サイドギヤ4がスラストプレート15側
へ押圧され、圧接状態になる(図1参照)。この圧接に
より摺動抵抗が生じ、スラストプレート面摺動抵抗トル
クt4 が発生している。
【0028】5)さらに、ピニオン支承兼カム部材5と
各サイドギヤ4間では、サイドギヤ面摺動抵抗トルクt
5 が発生している。即ち、本願発明でのピニオン支承兼
カム部材5は、サイドギヤ4の中心線Xに直交する垂直
面Vで分離可能な一対の支承体5a,5bを当接した構
造である。そのため、各デフピニオン2が自転する際に
は、上記の如く生じたピニオンフェイス面押し付け力n
1 が、図5で示すように、上記各支承体5a,5bとピ
ニオン2との間で押圧力f3 及びf4 として作用する。
これが、上記各支承体5a,5bを垂直面Vを境にして
分離させる方向(同図では上・下方向)への分力p3 及
びp4 を生じている。
【0029】つまり、自転する各ピニオン2は、カム作
用により各支承体5a,5bが分離する方向、換言すれ
ば各サイドギヤ4の方向へ移動させ、該各支承体5a,
5bを各サイドギヤ4側へ押圧する力が生じている。こ
れで、各支承体5a,5bの外側端面11a,11b
が、各サイドギヤ4の各先端面18a,18bへ圧接状
態となり(図5,図1参照)、この圧接による摺動抵抗
でサイドギヤ摺動抵抗トルクt5 を発生している。
【0030】したがって、本発明に係る自動差動制限装
置では、上記各摺動抵抗トルクt1・t2 ・t3 ・t4
・t5 の総和である摩擦抵抗トルクtによる差動制限力
が発生している。即ち、路面の摩擦抵抗(μ)が低い高
速回転側の駆動輪では回転駆動トルクTが殆ど零になる
が、他方の低速回転側の駆動輪には、上記t1 ・t2・
t3 ・t4 ・t5 の総和である摩擦抵抗トルクtが加算
されるので、回転駆動トルクT+摩擦抵抗トルクtとい
う充分なトルクが伝達される。これで、高速回転側と低
速回転側の摩擦抵抗トルクの比即ちバイアス比も増大し
ており、例えば泥地や凍結路からの脱出ができるように
なる。この差動制限作用は、車両の前進時および後進時
の両方において同様に生じている。
【0031】なお、各ピニオン2のフェイス角α1 、お
よびピニオン支承兼カム部材5の各ピニオン支承凹部9
の支承凹曲面10の傾斜角α2 を大きくした場合には、
それに伴って上記のピニオンフェイス面摺動抵抗トルク
t1 ,ピニオン球面摺動抵抗トルクt2 ,歯車噛み合い
摺動抵抗トルクt3 が各々増大する。したがって、例え
ばオフロード車用の如く比較的大きいバイアス比が必要
な差動制限装置では、フェイス角α1 を標準的角度より
大きめにしておけばよいし、逆に例えばFF車用の如く
比較的小さいバイアス比でよい差動制限装置には、フェ
イス角α1 を標準的角度より小さめに設定しておけばよ
くなる。
【0032】また、上記の如く各デフピニオン2を、ピ
ニオン支承兼カム部材5で抱持支承したことにより、デ
フケース1からデフピニオン2へ回転駆動トルクTを伝
達する距離が、従来はピニオンシャフトの半径であった
のに対し、ここではピニオン支承兼カム部材5の支承凹
曲面19の曲率半径、換言すれば各ピニオン2の外径に
ほぼ等しくなっているので、この半径差だけ摩擦抵抗ト
ルクが大きくなる、という面もある。
【0033】
【実施例】図1ないし図2は、本発明に係る自動差動制
限装置の実施例を示しているが、公知の差動制限装置と
同様に、エンジンの駆動力によりドライブピニオン(図
示略)・リングギヤ14等を介して回転するデフケース
1内に、該デフケース1と共に回転(公転)する一対
(2個)のデフピニオン2と、該各ピニオン2に噛合し
て回転する一対のサイドギヤ4とが設けてある。上記各
サイドギヤ4は、左右の車駆動輪(図示略)に連結され
る各出力軸3に軸装されている。上記デフケース1は、
左右のケース部を締め付けボルト19で一体化する構造
の例を示しているが、一体物としてもよい。
【0034】本発明の構成上の特徴は、従来一般の自動
差動制限装置がデフピニオン2の支持をピニオンシャフ
トで行っていたのと異なるし、また本件出願人が先に出
願したものが、出力軸の中心線を含む平面で分割可能な
一対のピニオン支承プレートで構成してある(実開平6
−76748号公報参照)のとも異なる。
【0035】即ち、デフケース1内に、各デフピニオン
2を支持するピニオンシャフトに代えて、各ピニオン2
を抱持支承するピニオン支承兼カム部材5を設けたもの
であるが、該ピニオン支承兼カム部材5は、出力軸3・
サイドギヤ4の中心線Xに直交する垂直面Vに沿って分
離可能な一対の支承体5a,5bを当接するように構成
してある。
【0036】該ピニオン支承兼カム部材5の各支承体5
a,5bには、上記中心線X上の両側部、即ち各支承体
5a,5bの両側部に、サイドギヤ係合凹部6を各々形
成するとともに、中央に初期トルク設定用の皿バネ20
の係合孔7を設けてある。そして、当接状態の支承体5
a,5bの側周部で上記垂直面V上の対象箇所に、各ピ
ニオン2のフェイス面8に対応する支承凹曲面10をも
つピニオン支承凹部9を各々設けてある。
【0037】該ピニオン支承兼カム部材5に形成される
ピニオン支承凹部10の数は、ここではデフピニオン2
が一対で二個のため2か所に形成してあるが、ピニオン
2が二対の四個なら4か所に形成しておく。また該ピニ
オン支承兼カム部材5は、デフケース1内と一緒に回転
可能とするため、該ピニオン支承兼カム部材5の周部に
形成した掛止用凸部12を、デフケース1内周部に形成
した掛止用凹部13に掛止固定させてある。
【0038】上記ピニオン支承兼カム部材5の各ピニオ
ン支承凹部9に形成された支承凹曲面10の傾斜角α2
は、デフピニオン2のフェイス面(歯先面)8の角度、
即ちピニオンフェイス角α1 に対応しているが、ここで
はピニオンフェイス角α1 =傾斜角α2 を、標準的な角
度として43.5°とした場合の例を示している。また
スラストプレートは単板式の例を示している。
【0039】上記実施例の場合と他の場合との性能比較
データを図6で示す。同図で(イ)の二点鎖線で示した
ものが差動制限機構を持たぬノーマルデフの場合の理論
値、(ロ)の一点鎖線で示したものがノーマルデフの場
合の測定値、(ハ)の細い実線で示したものが本件出願
人が先に出願した自動差動制限装置(実開平6−767
48号公報参照)の場合の測定値、(ニ)の太い実線で
示したものが本発明に係る自動差動制限装置の場合の測
定値、(ホ)の太い一点鎖線は本発明に係る自動差動制
限装置を多板式のスラストプレートにした場合の測定値
である。
【0040】これで明らかな如く、(イ)のノーマルデ
フの場合の理論値は、片側の駆動輪の出力軸で回転駆動
トルクTが10(kg・m,以下単位は同じ)の場合
に、他側の駆動輪の出力軸でも回転駆動トルクTは同じ
く10で、この際のバイアス比は1になっている。他
方、(ハ)の本件出願人が先に出願したピニオン支承プ
レートをもつ自動差動制限装置の場合には、高速回転側
の出力軸で回転駆動トルクTが10の場合に、低速回転
側の出力軸では22.5で、この際のバイアス比は2.
25であった。
【0041】これに対して、(ニ)の単板式スラストプ
レートを有する本願発明の自動差動制限装置では、高速
回転側の出力軸3で回転駆動トルクTが10の場合に、
他側の低速回転側の出力軸3では36.0で、バイアス
比が3.6になる。これは、従来のノーマルデフと殆ど
変わらぬ構造・大きさでありながら、上記従来のこの種
のものに比べてバイアス比が60%増大しており、充分
な差動制限力が発生していることを示す。
【0042】なお、より大きいバイアス比を必要とする
車両(例えばオフロード車や農業用車)では、同一の構
造で同一のデフケース1を用いて、内部のデフピニオン
2をフェイス角α1 がより大きいものを用いればよい。
この際、同時に両サイドギヤ4・ピニオン支承兼カム部
材5も交換することになるが、これで図7で示す如くフ
ェイス角α1 の拡大につれてバイアス比も増大し、大き
いバイアス比を必要とする車両に対応できる。またスラ
ストプレートを多板式とすれば、単板式に比べてバイア
ス比が大きくなることは言うまでもない。
【0043】
【発明の効果】以上で明らかな如く、本発明に係る自動
差動制限装置によれば、従来の差動制限機構のないノー
マルデフの基本構造を殆ど変えることなく、小型でシン
プルな構造で、コストおよび重量もノーマルデフと殆ど
同じでありながら、差動制限が必要な場合に自動的に大
きなバイアス比を得ることができ、一層大きい差動制限
効果(LSD効果)を発揮することができる。
【0044】即ち、従来の自動差動制限装置は、多板ク
ラッチ式で、サイドギヤの噛み合いのスラスト力に加え
て初期トルク設定用バネを設けたもの、また多板クラッ
チへの押力を増加させるため、ピニオンシャフトとデフ
ケース間にカム手段を付加したもの、或いは本件出願人
による先願で、ピニオン支承凹部をもつピニオン支承プ
レートを、サイドギヤの中心線を含む平面で分割した構
造にしたもの等があった。
【0045】しかし、前二者は多板クラッチ式のもので
あり、またそれに加えてピニオンシャフトとデフケース
間にカム手段を付加するため、部品点数が多く、各部品
の加工も容易でなく、コスト高になり、装置全体が大型
化し、重量も重くなってしまった。さらに、ピニオン支
承プレートを用いて上記問題点を解決したものも、より
大きなバイアス比を必要とする車両に搭載するには、能
力不足の感があった。
【0046】これに対して、本発明に係る自動差動制限
装置は、上記先願のピニオン支承プレートをもつものと
同様に、ノーマルデフの基本構造を殆ど変えることな
く、小型でシンプルな構造であり、コストおよび重量も
ノーマルデフと殆ど同じでありながら、ピニオン支承プ
レートに代えて分離可能なピニオン支承兼カム部材を用
いたことにより、先のピニオン支承兼カム部材が一体形
のものと比較しても、バイアス比を50ないし70%程
度のアップを図ることができる。これで、より大きな差
動制限効果(LSD効果)を必要とする車両にも、充分
に搭載することができるものである。
【0047】なお、さらに大きな差動制限力を必要とす
る車両には、上記と同じ構造・同じデフケースを用いな
がら、デフピニオンのフェイス角を大きいものにするこ
とにより、それに対応してバイアス比を向上させること
ができ、必要な差動制限効果(LSD効果)を発揮させ
ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る自動差動制限装置の実施例を示
し、第2図のI−O−I線で切断した場合の正面図であ
る。
【図2】図1で示した実施例を、そのII−II線で切
断した場合の断面図である。
【図3】図1で示した実施例で用いたピニオン支承兼カ
ム部材の斜視図である。
【図4】図1で示した実施例で、デフケースとデフピニ
オンとピニオン支承兼カム部材とで、摺動抵抗トルクが
生じることを説明する要部の縦断側面図である。
【図5】図1で示した実施例で、デフピニオンとピニオ
ン支承兼カム部材とサイドギヤとで、摺動抵抗トルクが
生じることを説明する要部の横断平面図である。
【図6】図1で示した実施例と従来品との性能比を示す
グラフである。
【図7】図1で示した実施例で、ピニオンフェイス角と
バイアス比との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1−デフケース 2−デフピニオン 3−出力軸 4−サイドギヤ 5−ピニオン支承兼カム部材 5a−支承体 5b−支承体 6−サイドギヤ係
合凹部 7−皿バネ係合孔 8−フェイス面 9−ピニオン支承凹部 10−支承凹曲面 11a−支承体の外側端面 11b−支承体の
外側端面 12−掛止用凸部 13−掛止用凹部 14−リングギヤ 15−スラストプ
レート 16−デフケースの内周面 17−ピニオンの
外球面 18a−サイドギヤの先端面 18b−サイドギ
ヤの先端面 19−締め付けボルト 20−皿バネ X−中心線 V−垂直面 α1 −フェイス角 α2 −傾斜面 S−間隙
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年1月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正内容】
【図5】

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】デフケース1内に、該デフケース1と共に
    回転するデフピニオン2と、両側の各出力軸3に軸装さ
    れ上記各デフピニオン2に噛合して回転する一対のサイ
    ドギヤ4とを設けた差動制限装置において、 デフケース1内に、各ピニオン2を支持するピニオンシ
    ャフトに代えて、ピニオン支承兼カム部材5を設けたも
    のであり、 該ピニオン支承兼カム部材5を、サイドギヤ4の中心線
    Xに直交する垂直面Vで分離可能な一対の支承体5a,
    5bが当接したものとし、 各支承体5a,5bには、上記中心線X上の各外側部に
    サイドギヤ係合凹部6を形成するとともに、中央に初期
    トルク設定用の皿バネ係合孔7を設け、 かつ、当接状態の支承体5a,5bの側周部で上記垂直
    面V上の対象箇所に、各ピニオン2のフェイス面8に対
    応する支承凹曲面10をもつピニオン支承凹部9を各々
    設け、 該ピニオン支承兼カム部材5の各ピニオン支承用凹部9
    にて、各ピニオン2を抱持支承させたことを特徴とす
    る、自動差動制限装置。
  2. 【請求項2】ピニオン支承兼カム部材5の各ピニオン支
    承凹部9の支承凹曲面10で支承される各ピニオン2の
    フェイス角α1 を、比較的大きいバイアス比が必要な車
    両では標準的角度より大きい角度に、比較的小さいバイ
    アス比でよい車両では標準的角度より小さい角度にし
    た、請求項1に記載の自動差動制限装置。
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