JPH09143167A - 酵素の安定化法 - Google Patents

酵素の安定化法

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JPH09143167A
JPH09143167A JP32380195A JP32380195A JPH09143167A JP H09143167 A JPH09143167 A JP H09143167A JP 32380195 A JP32380195 A JP 32380195A JP 32380195 A JP32380195 A JP 32380195A JP H09143167 A JPH09143167 A JP H09143167A
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enzyme
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ectoin
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lipase
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JP32380195A
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Yasuhiro Toyoda
康裕 豊田
Kazuhiko Oowaya
和彦 大和谷
Mitsuo Takano
光男 高野
Seiichi Shibata
征一 柴田
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Dainippon Pharmaceutical Co Ltd
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Dainippon Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 酵素溶液の保存、または酵素反応における酵
素の安定化法。 【解決手段】 酵素溶液を保存するとき、または酵素反
応するときに、適当量のエクトインを添加しておくと、
酵素溶液を長期間安定に保存でき、また、酵素反応にお
いて酵素活性の低下を防ぎ、反応を安定に行わせること
が可能である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エクトインを添加
することを特徴とする酵素の安定化法、特に、酵素溶液
の保存または酵素反応において、酵素の変性を防ぎ、酵
素活性を保持する方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】酵素
は、現在、食品、洗剤、診断用、繊維加工など様々な分
野で利用されている。酵素は主として蛋白質からできて
おり、熱やpHなどにより変性し、活性が低下するか、
もしくは失われる。特に、水溶液状態では不安定で、変
性し易く、そのため、溶液状態での酵素の安定化法が種
々研究されている。例えば、酵素溶液中に種々のアミノ
酸(グリシンベタインなど)、糖(庶糖、マルトース、
トレハロースなど)、ポリオール(グリセロールな
ど)、金属イオン(カルシウムイオンなど)を添加して
酵素を安定化させる方法が知られている。また、その安
定化機構についても研究されている〔例えば、月向邦
彦,蛋白質 核酸 酵素 Vol. 30(10), pp 1115-1126
(1985) 〕。しかしながら、その安定化の効果は十分で
あるとはいえなかった。また、これらの安定化剤は酵素
の種類によって異なり、安定化剤の選択が必要であっ
た。
【0003】一般に酵素は粉末状よりも液状(溶液)の
方が取り扱いが簡便であるため、現在では市販酵素は液
状品が増加している。しかしながら、酵素の液状品は一
般に安定性が低い。例えば、リパーゼを溶液状態で保存
すると、上述の安定化剤を添加しても活性の低下が著し
いので、リパーゼの溶液保存は極めて困難である。した
がって、溶液状態で不安定な酵素を安定化させ得る安定
化剤が望まれている。また、酵素反応において、酵素の
反応性を高めるため通常比較的高温下で反応させるが、
その際にも酵素蛋白の熱変性という問題があった。例え
ば、通常55℃以下で酵素反応を行うと、菌による腐敗が
起こりやすいので、55℃以上で反応を行うことが望まし
いが、そのような高温下では熱安定性の低い酵素は失活
する。そのため、酵素反応時の活性低下を防ぎ、反応を
安定に行わせる酵素の安定化剤が望まれている。
【0004】上述のように、酵素の溶液保存または酵素
反応において、いずれの酵素にも適用可能で、効果的な
酵素の溶液安定化剤はこれまで知られていなかった。
【0005】一方、エクトインは、1,4,5,6−テ
トラヒドロ−2−メチル−4−ピリミジン−カルボン
酸、又は3,4,5,6−テトラヒドロ−2−メチル−
4−ピリミジン−カルボン酸の化学名を有する環状アミ
ノ酸であり、好塩性細菌 Ectothiorhodospira halochlo
ris が生産する補償溶質として発見され、その高浸透圧
に対する耐性作用(すなわち、高浸透圧耐性)が知られ
ている(Galinski, E. A.ら, Eur. J. Biochem., Vol. 1
49, pp135-139 (1985);高野光男ら, 日本発酵工学会大
会プログラム第193 頁 1988 年)。また、エクトインを
微生物から抽出単離する方法〔Khunajakr, N. ら, Annu
al Reports of International Center ofCooperative R
esearch in Biotechnology, Japan, Vol. 12, pp157-16
7 (1989)〕や化学的に合成する方法(特開平3-31265
号)が知られている。
【0006】さらに、乳酸デヒドロゲナーゼおよびホス
ホフルクトキナーゼについてエクトインの添加による耐
凍結・解凍性、耐凍結乾燥および耐熱性の付与が知られ
ている〔Lippert. K. ら, Appl Microbiol Biotechnol
(1992) 37: 61-65 〕。しかしながら、酵素の溶液保存
での安定性や酵素反応での安定性については知られてい
ない。
【0007】本発明者らはエクトインの有用性を調べて
いく中で、エクトインが酵素溶液を安定化させることを
見出した。
【0008】本発明の目的はエクトインを用いて、1)酵
素を溶液状態で長期間安定に保存する方法、2)酵素反応
時の活性低下を防ぎ反応を安定に行わせる方法、3)熱安
定性の低い酵素の熱安定性を高め、高温下で迅速に反応
させるとともに、菌による腐敗が起こりにくい55℃以上
で反応させる方法および4)取扱が簡便かつ普遍的である
方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、酵素溶液
を安定化させる方法について鋭意研究した結果、タイ国
北東部の土壌に生息する好塩性細菌ハロモナス属KS-3株
Halomonas sp. KS-3)の菌体内産物である耐塩性因子
エクトインを酵素溶液に添加すると有効かつ普遍的に酵
素を安定化させることが可能であることを見出した。
【0010】本発明によれば、酵素溶液中に適宜選択さ
れた量のエクトインを添加すると、保存時または酵素反
応時においても、長時間酵素を効果的に安定化させるこ
とが可能である。溶液状態で不安定な酵素、例えばリパ
ーゼやアミラーゼも長時間保存が可能である。また、高
温下での酵素の利用、例えば55℃以上でのセルラーゼや
プロテアーゼの利用が可能である。
【0011】酵素を溶液状態で保存するとき、酵素濃度
は特に限定はしないが、例えば10μg/mlから100mg/mlで
ある。酵素溶液へのエクトインの添加量は、特に限定し
ないが、0.05〜50%(w/v) 、好ましくは0.1 〜25%(w/
v) 、特に好ましくは0.5 〜15%(w/v) である。添加量
が0.05%(w/v) 以下では効果がなく、50%(w/v) 以上で
はエクトインが完全には溶解しない。通常、エクトイン
の濃度は酵素の100 〜10万倍モルで使用される。また、
酵素を反応させるときの酵素濃度およびエクトインの添
加量は上記の酵素の溶液保存時と同様である。その添加
時期は反応の初期または中途の段階のいずれでもよい。
【0012】本発明に用いるエクトインは、化学合成に
よっても、微生物から抽出単離しても入手しうるが、食
品分野で用いられる場合も考慮して、より安全性の高い
後者から得るのが好ましく、特に、微生物として好塩性
Halomonas sp. からの入手が好ましい。エクトインは
単離・精製すると粉末として得られるので、この粉末を
直接にまたは水に溶かした状態で使用することができ
る。
【0013】本発明に用いられる酵素の種類は特に限定
しないが、ペルオキシダーゼなどの酸化還元酵素、グル
カノトランスフェラーゼなどの転移酵素、ペクチンリア
ーゼなどの脱離酵素、グルコースイソメラーゼなどの異
性化酵素、グルタミンシンテースなどの合成酵素、リパ
ーゼなどの加水分解酵素などが挙げられ、動物、植物、
微生物由来のいずれでもよい。特に、本発明に用いられ
る酵素としては現在、食品、洗剤、診断用、繊維加工な
どの分野で利用されている加水分解酵素、例えばアミラ
ーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼが好まし
い。
【0014】本発明における酵素の安定化剤として、エ
クトインを単独使用しうるものであるが、公知のアミノ
酸、糖、ポリオール、金属イオンなどと併用してもよ
い。
【0015】
【発明の効果】本発明の実施の効果としては、1)酵素溶
液を長期間安定に保存でき、2)酵素反応における酵素活
性の低下を防ぎ、反応を安定に行わせることができる、
また、3)熱安定性の低い酵素の熱安定性を向上させ、菌
による腐敗の起こりにくい55℃以上での反応を可能と
し、4)簡便かつ普遍的に行うことができることが挙げら
れる。
【0016】
【実施例】以下に参考例と実施例を挙げ本発明を詳細に
説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるも
のではない。
【0017】(参考例) エクトインの調製:− 好塩性細菌ハロモナス属KS-3株〔工業技術院生命工学技
術研究所;国際寄託番号FERM BP-4841(平成6年10月20
日移管)〕を、M63培地(組成: 0.1M KH2PO4,75mM KO
H, 15mM (NH4)2SO4, 1mM MgSO4, 3.9 μM FeSO4, 22mM
glucose, 0.51MNaCl)に0.25%(w/v) 酵母エキスを加え
(濃度はすべて終濃度)、通気攪拌条件下37℃で一夜前
培養した。この前培養液を110mM のグルコースを含んだ
M63培地に2 %濃度で接種し、30℃で通気条件(0.5vvm)
下に攪拌し、培養した。約7 時間培養し、培養菌液の濁
度(波長660nm の吸光度)が約1.5 に達した時に、塩化
ナトリウムを最終濃度2.56M となるように添加し、更に
10時間培養した。遠心分離にて菌体を採取し洗浄、菌体
(wet) を得た。この菌体を10倍量の70%エタノールで80
℃にて10分間攪拌し、ガラスフィルターによる濾過にて
粗抽出液を得た。その粗抽出液中のエタノールを減圧濃
縮(35 ℃) にて除去した濃縮液に、同量のクロロホルム
を添加混合した後、遠心分離(8,000 rpm, 30分間) し
た。次いで、その遠心上層液(水層)を回収し、減圧下
に濃縮乾固した。残留物にクロロホルム処理時と同量の
エタノールを加え、不溶物を遠心分離(8,000 rpm, 30分
間) で除去した。遠心上清液を減圧下に濃縮乾固した
後、残留物を適量の蒸留水に溶解させ、陰イオン交換カ
ラム(DIAION SA10A,三菱化成株式会社製) に負荷する。
洗浄画分にエクトインが溶出し、これを回収後凍結乾燥
し、粉末精製のエクトインを得た。エクトインの分析
は、ピータースらの方法(Peters, P. ら, FEMS Microbi
ol. Lett., Vol. 71, pp157-162 (1990))にしたがっ
て、高速液体クロマトグラフィーまたは薄層クロマトグ
ラフィーを用いて行った。上記の培養・精製を1000L タ
ンクで行ったとき、湿重量6.2kg の菌体から約40g の粉
末精製のエクトインを得た。
【0018】(実施例1) α−アミラーゼの溶液安定
性:− 細菌α−アミラーゼ〔大和化成(株) 製〕を50μg/10ml
となるようにイオン交換水に溶解した。この酵素溶液に
エクトインを10%(w/v) になるように添加した後37℃で
静置し、経日的に残存酵素活性を測定した。α−アミラ
ーゼの酵素活性の測定は、基質として可溶性デンプン
(メルク社製)を用い、生成した還元糖量をSomogyi-Ne
lson法〔 N. Nelson, J. Biol. Chem., 153, 375 (194
4); M. Somogyi, J. Biol. Chem., 195, 19 (1952) 〕
で測定することにより行った。この場合の酵素活性1ユ
ニットは1分間に1μmoleのグルコース当量の還元糖を
遊離する酵素量と定義した。また、エクトイン添加直後
の酵素活性を100 %とした。結果を図1に示す。
【0019】図1から明らかなように、エクトインを添
加するとα−アミラーゼの溶液安定性は顕著に向上し
た。
【0020】(実施例2) リパーゼAKの溶液安定性
(1):− リパーゼAK〔天野製薬(株) 製〕を 100μg/10mlとなる
ようにイオン交換水に溶解した。この酵素溶液にエクト
インをそれぞれ0.1 %(w/v) ,1.0 %(w/v) および10%
(w/v) になるように添加した後、37℃で静置し、経日的
に残存酵素活性をそれぞれ測定した。リパーゼAKの活性
測定は、リパーゼキットS 〔大日本製薬(株) 製〕を用
いて行った。すなわち、基質として三酪酸ジメルカプロ
ールを用い、リパーゼの作用により生成したメルカプロ
ールに2-ニトロ安息香酸を添加し、生成した TNBアニオ
ンを波長420nm での吸光度を測定することにより行っ
た。この場合の酵素活性1ユニットは基質を加えていな
いコントロールと比較して1分間に吸光度差が0.001 生
じた場合の酵素量と定義した。また、各溶液添加直後の
酵素活性を100 %とした。結果を図2に示す。
【0021】図2から明らかなように、エクトインの添
加量を増やすにつれて、リパーゼAKの安定性は向上し
た。
【0022】(実施例3) リパーゼAKの溶液安定性
(2):− リパーゼAK〔天野製薬(株) 製〕を 100μg/10mlとなる
ようにイオン交換水に溶解する。この酵素溶液にエクト
インを 1.0%(w/v)(0.07M)になるように添加する。37℃
で静置し、経日的に残存酵素活性を測定した。測定法は
実施例2に同じ。比較対照として、グリシンベタイン、
グリセロールおよび塩化カルシウムをエクトインと同モ
ル濃度になるように調製して用いた。結果を図3に示
す。
【0023】図3から明らかなように、他剤に比べ、エ
クトインを添加するとリパーゼAKの安定性は顕著に向上
した。
【0024】(実施例4)70℃および80℃での酵素反応
におけるセルラーゼの熱安定性:セルラーゼ“オノズ
カ”3S〔ヤクルト本社(株) 製〕を 500μg/10mlとなる
ようにイオン交換水に溶解する。この酵素溶液にエクト
インを 1.0%(w/v) になるように添加する。次いで、こ
の酵素溶液に基質のカルボキシメチルセルロースナトリ
ウム(CMC-Na)〔和光純薬工業(株) 製〕を1.0 %(w/
v) 添加し、70℃および80℃でそれぞれ酵素反応させ
た。生成する還元糖量を実施例1と同様に Somogyi-Nel
son 法で経時的に測定した。結果を図4(70℃での酵素
反応)および図5(80℃での酵素反応)にそれぞれ示
す。
【0025】図4と図5から明らかなように、エクトイ
ンを添加すると高温下の酵素反応におけるセルラーゼの
熱安定性は有意に向上した。
【0026】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はα−アミラーゼの溶液安定性を示す。縦
軸はα−アミラーゼの残存活性(%) を表し、横軸は日数
を表す。記号−■−はエクトインの10%(w/v) 添加時の
曲線を、記号−●−はエクトイン無添加時の曲線を示
す。
【図2】図2はリパーゼAKの溶液安定性を示す。縦軸は
リパーゼAKの残存活性(%) を表し、横軸は日数を表す。
記号−■−、記号−▲−および記号−△−はエクトイン
をそれぞれ10%(w/v) 、1.0 %(w/v) および 0.1%(w/
v) 添加したときの曲線を、記号−●−はエクトイン無
添加時の曲線を示す。
【図3】図3はリパーゼAKの溶液にエクトインを1.0 %
(w/v) 添加したときのリパーゼAKの溶液安定性を示す。
比較対照として、グリシンベタイン、グリセロールおよ
び塩化カルシウムをそれぞれ1.0 %(w/v) 用いた。縦軸
はリパーゼAKの残存活性(%) を表し、横軸は日数を表
す。記号−■−はエクトインを添加したときの曲線を、
記号−▲−、記号−* −および記号−+−はそれぞれ比
較対照のグリシンベタイン(ベタインで表示)、グリセ
ロールおよび塩化カルシウムを添加したときの曲線を、
記号−●−は無添加時の曲線を示す。
【図4】図4は70℃での酵素反応におけるセルラーゼの
熱安定性を示す。縦軸は生成還元糖量(グルコース換算
量:μg/ml)を表し、横軸は反応時間(分) を表す。記
号−■−はエクトインの1.0 %(w/v) 添加時の曲線を、
記号−●−はエクトイン無添加時の曲線を示す。
【図5】図5は80℃での酵素反応におけるセルラーゼの
熱安定性を示す。縦軸は生成還元糖量(グルコース換算
量:μg/ml)を表し、横軸は反応時間(分) を表す。記
号−■−はエクトインの1.0 %(w/v) 添加時の曲線、記
号−●−はエクトイン無添加時の曲線を示す。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エクトインを添加することを特徴とする
    酵素の安定化法。
  2. 【請求項2】 酵素溶液の保存において、または酵素反
    応においてエクトインを添加する請求項1記載の酵素の
    安定化法。
  3. 【請求項3】 酵素がアミラーゼ、リパーゼ、セルラー
    ゼ、またはプロテアーゼである請求項1又は2記載の酵
    素の安定化法。
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