JPH09124700A - 新規プロテアーゼインヒビターおよびその製造方法、エラスターゼが関与する疾患の治療剤 - Google Patents

新規プロテアーゼインヒビターおよびその製造方法、エラスターゼが関与する疾患の治療剤

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JPH09124700A
JPH09124700A JP7288527A JP28852795A JPH09124700A JP H09124700 A JPH09124700 A JP H09124700A JP 7288527 A JP7288527 A JP 7288527A JP 28852795 A JP28852795 A JP 28852795A JP H09124700 A JPH09124700 A JP H09124700A
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JP
Japan
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protease inhibitor
uti
amino acid
acid sequence
dna
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JP7288527A
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Hajime Horii
肇 堀井
Yoshiji Ideno
祥次 井手野
Setsu Goto
節 後藤
Minoru Tsukada
稔 塚田
Masakazu Niitome
正和 新留
Hiromi Tsuchiyama
博美 土山
Tomohiko Matsui
智彦 松井
Tomoyuki Maruyama
智之 丸山
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Mitsubishi Tanabe Pharma Corp
Original Assignee
Green Cross Corp Japan
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 天然型尿性トリプシンインヒビターより強い
エラスターゼ阻害活性を有する新規プロテアーゼインヒ
ビター、並びにその遺伝子工学的手法による製造方法、
エラスターゼが関与する疾患の治療剤を提供する。 【解決手段】 少なくとも下記式Iのアミノ酸配列を有
することを特徴とする新規プロテアーゼインヒビター、
それをコードするDNA、このDNAを含有するベクタ
ー、このベクターを含有する形質転換体及び新規プロテ
アーゼインヒビターの製造方法、新規プロテアーゼイン
ヒビター有効成分とするエラスターゼが関与する疾患の
治療剤。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れたプロテアー
ゼ阻害特性を有する新規プロテアーゼインヒビター、当
該プロテアーゼインヒビターをコードするDNA、当該
DNAを有するベクター、当該ベクターで形質転換され
た形質転換体および当該形質転換体を培養することを特
徴とする新規プロテアーゼインヒビターの製造方法に関
する。また本発明は、優れたプロテアーゼ阻害特性を有
し、かつ遺伝子工学的手法で大量に発現・産生し得る新
規プロテアーゼインヒビター及び該プロテアーゼインヒ
ビターの発現増強方法を提供するものである。
【0002】
【従来技術・発明が解決しようとする課題】急性膵炎に
代表される炎症では、炎症局所組織の破壊や併発する細
菌感染によってインターロイキン−6、インターロイキ
ン−8、腫瘍壊死因子(TNF)等の各種サイトカイン
が誘導され、その結果として組織、臓器での好中球の遊
走・活性化が起こる。このような病態は播種性血管内凝
固症候群(DIC)や多臓器不全(Multiple Organ Fai
lure:MOF)を惹起し、重篤な症状を引き起こす。局
所での炎症の発生からMOFやDIC等の全身病態への
移行で特徴的な点は(1) 局所から全身への病態の進行
が、短時間に急激に進行する事、(2) 最終的には、活性
化された好中球の放出するエラスターゼ(HNE) や膵臓細
胞の放出するエラスターゼ(HPE)等のプロテアーゼが関
与する事の二点にある。従って、膵炎等の治療では炎症
初期にその進行を抑制する事と、プロテアーゼの阻害の
二つのアプローチが考えられている。しかし前者のアプ
ローチでは複数の因子が関与している事や、進行が急激
である事などから有効な薬剤の開発が困難であり、現状
では新規開発も含めて後者のアプローチが有効と考えら
れている。
【0003】かかる観点のもと、現在、膵炎に代表され
る炎症の治療では、低分子の合成プロテアーゼインヒビ
ターや、生体成分である蛋白性プロテアーゼインヒビタ
ーが使用されている。しかし、現行製剤中にはエラスタ
ーゼ阻害活性を示す製剤が殆どなく、エラスターゼ阻害
活性を有するプロテアーゼインヒビターの開発が望まれ
ている。主な蛋白性プロテアーゼインヒビターのうちエ
ラスターゼ阻害活性を有するものとして、α1-アンチト
リプシン (α1-AT) と尿性トリプシンインヒビター
(以下、UTIという)が挙げられる。これらは、いず
れも主として好中球エラスターゼを阻害する。α1-AT
は血液中に大量に存在するセリンプロテアーゼインヒビ
ターであり、好中球エラスターゼに対し強力な阻害活性
を示すが、活性酸素によって容易に失活することが知ら
れている。一方、UTIの好中球エラスターゼ阻害活性
はα1-ATに比べて弱いことが知られている。また、U
TIはヒト尿中より精製される蛋白質なので、大量に生
産する場合には原材料の確保が困難であり、また原材料
が不均一であるため成分の一定な製剤を製造することも
難しい。更には未知成分やヒト感染性ウイルスの混入と
いった生体成分由来の製剤一般に共通する問題も考慮し
なくてはならない。さらに、UTIおよびそのKuni
tz型ドメイン並びにそれらに関連する改変型UTIを
遺伝子工学的手法により大量に製造する報告はなく、す
なわち遺伝子工学的手法により大量に製造し得る改変型
UTI分子は知られていなかった。
【0004】このように現在医薬品として使用されてい
る蛋白性プロテアーゼインヒビターには、解決すべき問
題点が多数残されている。従って、生体内のプロテアー
ゼが関与する疾患の治療を可能にするためには、当該プ
ロテアーゼを阻害する有用な蛋白性プロテアーゼインヒ
ビターの大量製造法の確立、また更にプロテアーゼ阻害
活性に優れる新規物質の開発が必要である。
【0005】本発明の目的は、優れたプロテアーゼ阻害
活性、なかんずく天然型UTIに比して強いエラスター
ゼ阻害活性を有する新規プロテアーゼインヒビター並び
にその遺伝子工学的手法による製造方法を提供すること
である。
【0006】
【課題を解決するための手段】UTIは当初、ヒト尿中
よりプロクシュ(Proksch)等の方法(Proksch G. J.
等、J. Lab.Clin. Med., 79 巻、p491-499、1972年) に
準じて分離・精製された蛋白性のプロテアーゼインヒビ
ターであり(須見等、日本生理誌、39巻、p53-58、1977
年) 、さらに Watcher, E 等の研究により図2に示す一
次構造を有することが知られている( Watcher, E and
Hochstrasser, K., Hoppe-Seyler's Z. Physiol. Che
m.,362巻, p1351, 1981)。尚、図2に示すタンパクの一
次構造は、精製されたタンパクから直接求められたアミ
ノ酸配列である。
【0007】当該UTIは、2つの構造的に関連するK
unitz型ドメインから連続してなる。すなわち、図
2に示されるように、UTIにおいては、一方のKun
itz型ドメイン1はUTIのN末端側領域に位置し、
N末端から数えてアミノ酸残基22〜77として定義さ
れるものであり、他方のKunitz型ドメイン2はU
TIのC末端側領域に位置し、N末端から数えてアミノ
酸残基78〜143として定義されるものである(Hoch
strasser, K.等, Hoppe-Seyler's Z. Physiol.Chem., 3
62, p1351, 1981) 。
【0008】尚、DNA組換え法(cDNA配列からア
ミノ酸配列を推定)によると、本発明でいうUTIのK
unitz型ドメイン1およびKunitz型ドメイン
2はそれぞれ図3にて示されるアミノ酸配列を有するこ
とが報告されている〔J.F.Kaumeyer等,Nucl. Acids Re
s. 14(20), p7839-7850, 1986:アミノ酸番号86,87及
び138 位が精製されたタンパクから直接求められたアミ
ノ酸配列(図2)と相違する〕。本発明でいうKuni
tz型ドメイン1およびKunitz型ドメイン2と
は、実質的にこれらのドメインをそれぞれ意味する。ま
た、このDNA組換え法によれば、UTI構造遺伝子は
441塩基からなり147アミノ酸をコードしている
が、天然型UTIにおいては147位のアミノ酸を末端
にもつ配列は報告されていない(Hochstrasser, K.等,
Hoppe-Seyler's Z. Physiol. Chem.,362, 1351, 198
1)。よって遺伝子工学的にUTIの発現を行う場合、天
然に見られる配列にするのが望ましいと考えられること
から、本発明では、145位のアミノ酸をKunitz
型ドメイン2のC末端アミノ酸とする。
【0009】本発明者らは、すでにUTIのcDNAを
クローニングし、UTIおよび上記各Kunitz型ド
メインをピキア属酵母を宿主細胞として発現、産生する
ことに成功し、それらの蛋白質を遺伝子工学的に製造す
る方法を確立している。今回、さらに天然型UTIの短
所である好中球エラスターゼ阻害活性の弱さを改善し、
より強い好中球エラスターゼ阻害活性を有する新規ポリ
ペプチドを作り出すことを目的とし、様々な検討を行っ
た。その結果、天然型UTIの一部のアミノ酸を置換し
てなる特定のアミノ酸置換型UTI、および該アミノ酸
置換型UTI中のドメイン1に含まれる活性部位を有す
るポリペプチドが強い好中球エラスターゼ阻害活性を有
すること、及びこれらのポリペプチドは特定のアミノ酸
配列をN末端に有することに起因して発現量が著しく増
加すること等を見出し、当該ポリペプチドを遺伝子工学
的に製造することに成功して本発明を完成した。
【0010】即ち、本発明は、優れたプロテアーゼ阻害
特性を有する新規ポリペプチド、即ち少なくとも下記の
式Iまたは式IIで示されるアミノ酸配列を有することを
特徴とする新規プロテアーゼインヒビターに関する。
【0011】
【化9】
【0012】
【化10】
【0013】好ましくは、少なくとも上記の式Iまたは
式IIで示されるアミノ酸配列を有し、天然型UTIに比
して好中球エラスターゼに対する阻害活性が増強されて
なる新規プロテアーゼインヒビターである。
【0014】更に本発明は、当該新規プロテアーゼイン
ヒビターをコードする塩基配列を有するDNA、該DN
Aを含有することを特徴とするベクターおよび該ベクタ
ーで形質転換された形質転換体に関する。また、本発明
は当該形質転換体を培養することを特徴とする本発明の
新規プロテアーゼインヒビターの製造方法に関する。
【0015】また、本発明は、当該新規プロテアーゼイ
ンヒビターを有効成分とするエラスターゼが関与する疾
患の治療剤に関する。エラスターゼが関与する疾患とし
ては、肺障害、リウマチ、気道感染症、気道炎、肺出
血、成人呼吸困難症候群、血管透過性亢進による浮腫、
臓器障害および多臓器不全等が挙げられる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書および図面において使用する略号(例え
ば、アミノ酸の三文字表記、一文字表記等)は、当該分
野における慣用略号に基づくものである。
【0017】本発明の新規プロテアーゼインヒビター
は、トリプシン、エラスターゼ等の膵酵素、好中球エラ
スターゼ等の炎症関連酵素、プラスミン、トロンビン、
ファクターXa、カリクレイン等の凝固線溶系酵素のう
ち少なくとも1つのプロテアーゼに対して阻害活性を有
することを特徴とする。本発明の新規プロテアーゼイン
ヒビターとして、好ましくは尿由来の天然型UTIが有
する好中球エラスターゼ阻害活性よりも強い好中球エラ
スターゼ阻害活性を有するもの、より好ましくは加えて
トリプシンに対する阻害活性をも有するものが挙げられ
る。
【0018】本発明の新規プロテアーゼインヒビター
は、その一次構造を規定するアミノ酸配列の少なくとも
一部として、次式(I)のアミノ酸配列を含有するもの
であれば、上記特徴を有する限り、いかなるアミノ酸配
列のポリペプチドであってもよい。
【0019】
【化11】
【0020】すなわち本発明の新規プロテアーゼインヒ
ビターは、式Iで示されるアミノ酸配列そのもので規定
されるポリペプチドであってよいし、また式Iのアミノ
酸配列のN末端および/またはC末端に任意の1以上の
アミノ酸が付加されたポリペプチドであってもよい。ま
た、式Iで示されるアミノ酸配列のうち、N末端から1
1〜13番目のアミノ酸配列Ile-Ala-Phe がVal-Ala-Me
t に置換されてなるアミノ酸配列を有するものも本発明
の新規プロテアーゼインヒビターの態様に含まれる。こ
れらのポリペプチドは、尿由来の天然型UTIに比して
好中球エラスターゼ阻害活性が極めて強いという点で有
用である。また、本発明の新規プロテアーゼインヒビタ
ーは、そのアミノ酸配列のC末端側領域に、次式IVで示
されるアミノ酸配列を有していてもよい。
【0021】
【化12】
【0022】このようなポリペプチドは、強い好中球エ
ラスターゼ阻害活性を有するのみならず、トリプシン阻
害活性を有するという点で有用である。このようなポリ
ペプチドの例として、次式VIII、式IXのアミノ酸配列を
有するポリペプチドが挙げられる。
【0023】
【化13】
【0024】
【化14】
【0025】本発明の新規プロテアーゼインヒビター
は、そのN末端に次式V、式III 、式VIで示されるアミ
ノ酸配列を有していてもよい。
【0026】
【化15】
【0027】
【化16】
【0028】
【化17】
【0029】N末端側に式III で示されるアミノ酸配列
を有するポリペプチドは、強い好中球エラスターゼ阻害
活性を有すると同時に、該アミノ酸配列を有することに
起因して該アミノ酸配列を持たないポリペプチドに比較
してその発現量が著しく多いため、組換えDNA技術に
よって大量に製造できるという点で有用である。このよ
うなポリペプチドの好ましい例は、次式VII のアミノ酸
配列を有するポリペプチドである。
【0030】
【化18】
【0031】当該本発明の新規プロテアーゼインヒビタ
ーは、式VIII、式IX、式VII で示されるアミノ酸配列そ
のもので規定されるポリペプチドのみならず、式VIII、
式IX、式VII のアミノ酸配列のN末端および/またはC
末端に任意の1以上のアミノ酸が付加されたポリペプチ
ドをも包含するものである。より好ましくは、式VIII、
式IX、式VII で示されるアミノ酸配列を有し、かつトリ
プシン阻害活性及び好中球エラスターゼ阻害活性を有す
るペプチドであり、その好中球エラスターゼ阻害活性が
尿由来の天然型UTIが有する当該阻害活性に比して、
顕著に増強されてなるものである。具体的には好中球エ
ラスターゼに対する阻害活性がKi値で10-11 M以
下、より好しくはKi値で10-12 M以下であるポリペ
プチドが例示される。
【0032】本発明の新規プロテアーゼインヒビター
は、極めて強い好中球エラスターゼ阻害活性を有すると
共に、組換えDNA技術を用いて大量に製造することが
できる。特に、N末端側に式III で示されるアミノ酸配
列を有するポリペプチドは、発現量が極めて高いという
点で有用である。また、本発明の新規プロテアーゼイン
ヒビターは、天然型UTIと部分的に共通するアミノ酸
配列を有するため、ヒトに対して抗原性を示さないこと
が期待される。また、このようなポリペプチドは、α1
−アンチトリプシンと比べて低分子であるために組織浸
透性が高いことが期待される。さらに、本発明の新規プ
ロテアーゼインヒビターは、必要に応じてそのN末端お
よび/またはC末端に別の機能を有する他のポリペプチ
ドを融合させるなど、融合蛋白質を作製するための材料
としても有用である。
【0033】本発明の新規プロテアーゼインヒビター
は、糖鎖を有していてもよいし、有していなくてもよ
い。また、その取得の由来は特に制限されない。例え
ば、ペプチド合成機等を使用して化学的に合成されたも
のであってもよい。好ましくは、組換えDNA技術を使
用して作製されたポリペプチドである。より好ましくは
酵母または大腸菌を宿主とした組換えDNA技術により
産生されたポリペプチドである。当該酵母としてはピキ
ア属酵母が好ましい。また、当該ポリペプチドは、特定
の活性に実質的な低下を与えない限り、化学的な修飾
(例えば糖付加、アルキル化等)を受けていてもよい。
さらに薬理学上許容されうる酸または塩基との塩や、ポ
リエチレングリコール等のポリマーとの複合体を形成さ
せて得られる物質等も本発明の新規プロテアーゼインヒ
ビターの態様に含まれる。
【0034】また、本発明は、上記新規プロテアーゼイ
ンヒビターをコードする塩基配列を有するDNAに関す
る。当該DNAは、式Iで示されるアミノ酸配列、また
はそれらのアミノ酸配列のN末端および/またはC末端
に他のアミノ酸またはペプチド等(例えば式III,式V,
式VIまたは式IV等で示されるアミノ酸配列を有するも
の)を配してなるポリペプチド(例えば式II,式VIIIま
たは式VII 等で示されるアミノ酸配列を有するもの)の
アミノ酸配列に変化を生じさせない範囲であれば、いか
なる塩基配列であってもよい。
【0035】具体的には、式Iで示されるポリペプチド
をコードするDNAとしては、配列表配列番号1に示さ
れる塩基配列を有するDNAが例示される。式IIで示さ
れるポリペプチドをコードするDNAとしては、配列表
配列番号2に示される塩基配列を有するDNAが例示さ
れる。また、式VIIIで示されるポリペプチドをコードす
るDNAとしては、配列表配列番号3に示される塩基配
列を有するDNAが、式VII で示されるポリペプチドを
コードするDNAとしては、配列表配列番号4に示され
る塩基配列を有するDNAが例示される。また、式III
で示されるポリペプチドをコードするDNAとしては配
列表配列番号5に示される塩基配列を有するDNAが、
式Vで示されるポリペプチドをコードするDNAとして
は、配列表配列番号6に示される塩基配列を有するDN
Aが、また式IVで示されるポリペプチドをコードするD
NAとしては、配列表配列番号7に示される塩基配列を
有するDNAが、また式VIで示されるポリペプチドをコ
ードするDNAとしては、配列表配列番号8に示される
塩基配列を有するDNAが例示される。
【0036】式Iで示されるアミノ酸配列のうち、N末
端から11〜13番目のアミノ酸配列Ile-Ala-Phe がVa
l-Ala-Met に置換されてなるアミノ酸配列を有するポリ
ペプチドをコードするDNAとしては、配列表配列番号
1に示される塩基配列の5’末端から31〜39番目の
塩基が、 GTTGCTATG に置換された配列を有するDNAが例示される。また、
式IIに示されるアミノ酸配列のうち、N末端から15〜
17番目のアミノ酸配列Ile-Ala-Phe がVal-Ala-Met に
置換されてなるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコ
ードするDNAとしては、配列表配列番号2に示される
塩基配列の5’末端から43〜51番目の塩基が、 GTTGCTATG に置換された配列を有するDNAが例示される。さら
に、式IXに示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド
をコードするDNAとしては、配列表配列番号3に示さ
れる塩基配列の5’末端から43〜51番目の塩基が、 GTTGCTATG に置換された配列を有するDNAが例示される。
【0037】また、1つのアミノ酸に対して複数のコド
ンが対応することを考慮し、本発明のDNAには、それ
ぞれ配列番号1〜8に示される塩基配列のうち1以上の
塩基が他の塩基で置換された塩基配列を有するものも包
含される。また、本発明のDNAは、配列表の上記配列
番号1〜4の記載から特定される塩基配列に加えてその
5’末端および/または3’末端に任意の一つ以上の塩
基が付加されたものであってもよい。付加される塩基
は、上記塩基配列に付加されることにより、付加される
側の塩基配列がコードするアミノ酸配列に変化を生じさ
せない範囲であれば、いかなる塩基、塩基配列であって
もよい。一例として、5’末端に付加される塩基配列と
しては、開始コドンである塩基配列ATG等が例示さ
れ、また3’末端に付加される塩基配列としては、終止
コドンであるTAA、TAGもしくはTGA等が例示さ
れる。また、本発明のDNAは、本発明の新規プロテア
ーゼインヒビターのアミノ酸配列をコードする塩基配列
の5’末端および/または3’末端に他のアミノ酸やポ
リペプチドをコードする塩基配列を有していてもよい。
【0038】本発明のDNAはいかなる方法で得られた
ものであってもよい。例えば、配列表配列番号1〜8に
示された塩基配列を参考にして化学的に合成する方法、
適当な染色体DNAライブラリーやcDNAライブラリ
ー等を材料として、組換えDNAの技術を用いて得る方
法がある。本発明のDNAを化学合成するには、例えば
次のように行う。本発明の新規プロテアーゼインヒビタ
ーのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する所望の
DNAを設計し、必要があれば設計したDNAを適当な
断片に分割して、各断片に相当するオリゴマーを全自動
DNA合成機(例えば、381A型、アプライドバイオ
システムズ社製)を用いて化学合成する。
【0039】一方、組換えDNA技術を用いて本発明の
DNAを得る方法としては、適当なcDNAライブラリ
ー、染色体DNAライブラリー、または例えば式I、II
又はVII 等に示されたアミノ酸配列をコードするDNA
等を材料に部位特異的突然変異法(以下、Site-directe
d mutagenesis という、Kramer. W 等、Nucleic AcidRe
s., 12 巻、p9441-9456、1984年およびKunkel, T.A.
等、Methods in Enzymology 、154 巻、p367-382、1987
年参照)やPCR法等の公知の方法で塩基配列の改変と
DNAの増幅を行う方法が例示される。
【0040】本発明のベクターは、前述した本発明のD
NAを含有することを特徴とする。当該ベクターは、上
記本発明のDNAを含有するものであれば、その由来は
限定されない。例えばpBR322、pUC18、pU
C19等の各種プラスミドベクター、λgt10、λg
t11等のファージベクター等の適当な位置に本発明の
DNAが導入されたものが挙げられる。好ましくは、使
用する宿主細胞内で複製可能なベクターあるいは宿主染
色体に組込み可能なベクターであり、より好ましくは、
大腸菌または酵母、好ましくはピキア属酵母内で複製可
能な、もしくはそれらに組込み可能なベクターである。
【0041】本発明のベクターは、本発明のDNAに加
えて本発明の新規プロテアーゼインヒビターを宿主内で
発現させるための必要なプロモーター、ターミネータ
ー、相同領域、マーカー遺伝子や任意のリボゾーム結合
部位等の塩基配列を有することが好ましく、特に、本発
明のベクターが分泌発現用ベクターである場合には、さ
らに加えてシグナルペプチドをコードする塩基配列等を
有することが好ましい。上記プロモーター、リボゾーム
結合部位、シグナルペプチドをコードする塩基配列等
は、使用する宿主内で機能する配列であればよい。
【0042】プロモーターとしては、AOX1プロモー
ター(特開昭63−39584号公報)、DASプロモ
ーター、変異型AOX2プロモーター(特開平6−90
768号公報)等を用いることができる。また、シグナ
ルペプチドとしては、酵母インベルターゼ(SUC2)
(特開昭60−41488号公報)、α−ファクター
(特開昭59−198980号公報のような酵母由来の
もの、HSAのシグナルペプチドまたはその誘導体(特
開平2−167095号公報)、人工的に創案したシグ
ナル配列(特開平1−240191号公報)等を用いる
ことができる。
【0043】ターミネーターとしては、AOX1ターミ
ネーター(特開昭63−39584号公報)等を用いる
ことができる。相同領域はHIS4(特開昭61−10
8391号公報)、URA3、LEU2、ARG4等が
例示される。マーカー遺伝子は抗生物質耐性遺伝子や栄
養要求性相補遺伝子等が用いられる。抗生物質としては
シクロヘキシミド、G−418、クロラムフェニコー
ル、ブレオマイシン、ハイグロマイシン等が例示され
る。栄養要求性相補遺伝子としては、HIS4、URA
3、LEU2、ARG4等が挙げられる。
【0044】本発明のベクターは、簡便にはプロモータ
ー、リボゾーム結合部位、シグナルペプチドをコードす
る塩基配列等の本発明の新規プロテアーゼインヒビター
の発現や産生、好ましくは更に分泌に必要な塩基配列を
予め有するプラスミドベクターまたはファージベクター
等に、本発明のDNAを常法(例えば、Molecular Clon
ing 、a laboratory manual 、Second edition、T.Mani
atis等編、Cold Spring Harbor Laboratory 、1989年)
に従って導入することにより作製することができる。ま
たは、発現に必要な塩基配列を化学的に合成し、本発明
のDNAとともにプラスミドベクターまたはファージベ
クター等に導入すればよい。
【0045】また、本発明は前述のベクターで形質転換
された形質転換体である。当該形質転換体は、塩化カル
シウム法、塩化ルビジウム法、ハナハン(Hanahan, D
著、Techniques for Transformation of E.coli. In: D
NA cloning vol 1, Glover, D.M. (ed.) p109-136、IRL
press 、1985年) 等の公知の方法に従って、適当な宿
主細胞を本発明のベクターで形質転換することにより得
られる。宿主細胞として酵母を用いる場合は、スフェロ
プラスト法(Hinnen A. 等、Proc. Natl. Acad. Sci. U
SA 75, p1929-1933, 1978 年, Cregg J.T.等、Mol.Cel
l.Biol.5, p3376-3385, 1985 年) 、アルカリカチオン
法、(Itoh H. 等, J. Bacteriol. 153, p163-168, 198
3 年) 等の公知の方法を用いることができる。本発明の
形質転換体は、より好ましくは本発明の新規プロテアー
ゼインヒビターを産生し、かつ形質転換体外に分泌する
性質を有するものである。本発明の形質転換体が本発明
の新規プロテアーゼインヒビターを形質転換体外に分泌
させるものである場合は、導入されるベクターとしては
本発明のDNAに加えてシグナルペプチドをコードする
塩基配列を有するものが好ましい。
【0046】用いられる宿主細胞としては、本発明の新
規プロテアーゼインヒビターの発現・産生に適したもの
であれば、酵母等に代表される真核生物細胞であっても
大腸菌、枯草菌等に代表される原核生物細胞であっても
よい。好ましくは、大腸菌および酵母であり、より好ま
しくはピキア属酵母である。
【0047】また本発明は、前述の形質転換体を培養
し、本発明の新規プロテアーゼインヒビターを産生さ
せ、得られる培養物から該プロテアーゼインヒビターを
採取することを特徴とする本発明の新規プロテアーゼイ
ンヒビターの製造方法である。当該製造方法は、下記
(a)〜(c)の工程を行うことを特徴とする。 (a)本発明の新規プロテアーゼインヒビターのアミノ
酸配列をコードする塩基配列を有するDNAを得る。 (b)(a)で得られたDNAを含有するベクターで宿
主細胞を形質転換させて形質転換体を得る。 (c)該形質転換体を培養して、得られる培養物から本
発明の新規プロテアーゼインヒビターを採取する。
【0048】形質転換体の培養は、微生物または動物細
胞を培養するのに用いられる一般的方法、すなわち「生
物化学工学」(合葉修一等著、1976年、東京大学出
版会)あるいは「組織培養」(中井準之助等編、197
6年、朝倉書店)などに記載された方法に準じて行うこ
とができる。形質転換体がピキア属酵母である場合は、
例えば特開平6−22784号公報に記載された方法に
準ずることができる。
【0049】具体的には、培地としては0.01〜8%
メタノール含有YNB液体番地〔0.7% Yeast Nitro
gen Base w/o Amino Acids ( Difco社) 〕および0.0
1〜8%メタノール含有YP培地〔1% Yeast Extract
( Difco社)、2% Peptone( Difco社)〕等が例示さ
れる。また、培養は、通常15〜43℃、好ましくは2
0〜30℃で、20〜360時間程度行い、必要により
通気や攪拌を加えることもできる。
【0050】つづいて、当該培養物から、形質転換体に
よって産生された目的の蛋白質を採取する。産生された
蛋白質が形質転換体の体外に分泌されない場合は該形質
転換体から、分泌される場合はその培養上清から単離す
ることが好ましい。培養物から、目的の蛋白質を採取す
る方法は、通常蛋白質の精製に使用されている手段、例
えば「生化学実験講座1、タンパク質の化学」(日本生
化学会編、1976年、東京化学同人)等の多くの文献
等に記載されている方法を参照して実施することができ
る。
【0051】得られた蛋白質は必要に応じてさらに精製
することもできる。精製方法としては、塩析法、限外濾
過膜法、等電点沈澱法、ゲル濾過法、イオン交換クロマ
トグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニテ
ィークロマトグラフィー、クロマトフォーカシング法、
吸着クロマトグラフィーおよび逆相クロマトグラフィー
等各種クロマトグラフィーなどが例示される。
【0052】また、本発明は、プロテアーゼ阻害活性を
有するポリペプチドを、形質転換体で大量に発現させる
ための発現増強方法に関する。本発明者等は、上述した
ように、N末端側に式III で示されるアミノ酸配列を有
するポリペプチドは、N末端側に式III に示されるアミ
ノ酸配列をもたないポリペプチドよりも、酵母による発
現量が著しく多いことを見出した。従って、式I、式I
I、または式VIIIで示されるアミノ酸配列を有する本発
明の新規プロテアーゼインヒビター(これらの式中のア
ミノ酸配列Ile-Ala-Phe がVal-Ala-Met に置換されたポ
リペプチド、例えば、式IXで示されるアミノ酸配列を有
するポリペプチドも含む)のN末端側に式III で示され
るアミノ酸配列を結合させて、該ポリペプチドを、N末
端側に式III で示されるアミノ酸配列が付加された形で
発現させることにより、該新規プロテアーゼインヒビタ
ーを多量に得ることができる。すなわち、該新規プロテ
アーゼインヒビターをコードする塩基配列の5’末端側
に、式III で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配
列を結合したベクターを作成し、このベクターを用いる
ことによって、該新規プロテアーゼインヒビターの形質
転換体における発現が増強され、多量のプロテアーゼイ
ンヒビターを得ることができる。プロテアーゼ阻害活性
部位を含むアミノ酸配列と式III のアミノ酸配列との間
に、1以上のアミノ酸が配される構成としてもよい。
【0053】
【発明の効果】本発明は、一以上のプロテアーゼ阻害活
性を有し、かつ天然型UTIよりエラスターゼ阻害活性
の優れた有用な新規ポリペプチド、好ましくは優れたエ
ラスターゼ阻害活性を有し、かつ遺伝子工学的手法にお
いて発現量の高い有用な新規ポリペプチド、およびその
遺伝子工学的手法による該ポリペプチドの製造方法を提
供する。
【0054】本発明の新規プロテアーゼインヒビター
は、極めて強いエラスターゼ阻害活性を有すると共に、
組換えDNA技術を用いて大量に製造することができ
る。特に、N末端側に式III で示されるアミノ酸配列を
有するポリペプチドは、発現量が極めて高いという点で
有用である。
【0055】また、本発明の新規プロテアーゼインヒビ
ターは、天然型UTIと部分的に共通するアミノ酸配列
を有するために、ヒトに対して抗原性を示さないことが
期待できる。さらに、必要に応じてそのN末端および/
またはC末端に別の機能を有する他のポリペプチドを融
合させるなど、融合蛋白質を作製するための材料として
も有用である。本発明のプロテアーゼインヒビターの発
現増強方法によれば、プロテアーゼ阻害活性を有するポ
リペプチドの酵母による発現量を著しく増加させること
が可能である。
【0056】本発明の新規プロテアーゼインヒビター
は、優れたエラスターゼ阻害活性、特に好中球エラスタ
ーゼ阻害活性を有することから、当該エラスターゼが関
与する疾患、例えば、肺障害(急性肺障害等)、リウマ
チ(慢性関節リウマチ等)、気道感染症(慢性気道感染
症等)、気道炎(慢性気道炎等)、肺出血、ARDS
(成人呼吸困難症候群)、血管透過性亢進による浮腫、
臓器障害、多臓器不全等の予防または治療に極めて有用
である。また、UTIが本来有するトリプシン阻害作用
等を併せもつことから、UTIの公知用途への適用も可
能である。例えば、膵炎、循環不全、ショック、腎障
害、浮腫、潰瘍性大腸炎等の予防または治療にも適用で
きる。投与方法としては、静脈内投与、点滴静注、気道
内投与等が例示される。投与量としては、0.01mg
/kg体重〜100mg/kg体重程度が例示される
が、患者の体重、性別、症状等に応じて適宜変えること
ができる。製剤化は公知の手法により行うことができ
る。すなわち、各種添加剤(安定化剤、賦形剤等)の添
加、加熱処理、除菌濾過、小分け分注、凍結乾燥等の処
理を施すことができる。
【0057】
【実施例】以下、本発明をより一層明確にするために実
施例をもって説明する。しかしこれらは、本発明の一態
様であり、これらにより本発明はなんら限定されるもの
ではない。また、以下に示す実施例中の諸操作は、下記
の雑誌、成書を参考として実施した。
【0058】1.ラボマニュアル遺伝子工学、村松正實
著、1989年、丸善株式会社 2.遺伝子操作実験法、高木康敬編著、1980年、講談社 3.遺伝子操作マニュアル、高木康敬編著、1982年、講
談社 4.Molecular Cloning, a laboratory manual、Second
edition, T. Maniatis等編、1989年、コールドスプリ
ングハーバー・ラボラトリー 5.Methods in Enzymology 、65巻、L. Grossman 等
編、1980年、Academic Press 6.Methods in Enzymology 、68巻、R. Wu 編、1979
年、Academic Press
【0059】実施例1 プロテアーゼインヒビター(E
p1−d21−RPDF−52−55)の作成 式VIIIに示すアミノ酸配列を有するプロテアーゼインヒ
ビター〔UTI(d21,K22R,E23P,S25F,M36I,G37A,M38F,
T39F,S40P,E52Q,Q55V)、以下Ep1−d21−RPDF
−52−55という。図1の(2)〕を作成した。な
お、アミノ酸番号は図2および図3に示したUTIのN
末端を1とした時の番号で示した。
【0060】(1)Ep1−d21−RPDF−52−
55遺伝子のカセット化 (a)UTIのcDNAのクローニング (i )プローブの調製 J.F.Kaumeyer等により報告されたUTIcDNA の塩基配列
(J.F.Kaumeyer等,Nucl. Acids Res. 14(20),p7839-78
50, 1986) のうち、2 つのインヒビタードメインをコー
ドする領域に注目し、40塩基前後の長さでGC含量が50%
以上になるようプローブ1およびプローブ2を設計し
た。各プローブの領域を下記に示す。塩基番号は上記J.
F.Kaumeyer等の報告に従った。
【0061】 796 837 ・プローブ1 GGTACATCCA TGGCCTGTGA GACTTTCCAG TACGGCGGCT GC 1048 1089 ・プローブ2 GAGTACTGCG GTGTCCCTGG TGATGGTGAT GAGGAGCTGC TG
【0062】この配列を基にして0.2μM FODカ
ラム(アプライドバイオシステムズ・ジャパン社製)を
用いて、オリゴヌクレオチドをDNA合成機(モデル3
92、アプライドバイオシステムズ・ジャパン社製)で
合成した。合成されたオリゴヌクレオチドを、OPC カー
トリッジ(アプライドバイオシステムズ・ジャパン社
製)を用いて精製したものを7M尿素10% アクリルアミド
変性ゲルで泳動した結果、両プローブとも単一のバンド
が見られた。これらのオリゴヌクレオチドをγ- 32P AT
P で末端標識した。標識は、100ngのオリゴヌクレオチ
ドと4.6MBqのγ- 32P ATP を混合し(モル比で1:5)、T4
poly nucleotide kinase (宝酒造製) を用いて常法に
従って反応させることにより行った。
【0063】(ii)スクリーニング 一次スクリーニング ヒト肝由来cDNAλgt10ライブラリー(クローン
テック社製)のファージ液を4.2 ×105 pfu/mlとなるよ
うにSM緩衝液(100mM NaCl,10mM MgSO4,50mMTris-HCl
(pH7.5), 0.001% ゼラチン) で希釈し、その100 μl
と希釈指示菌液とを混合した後、混合液をTB10 bottom
agarプレート(1.5% ager/TB10培地、φ15cm) に重層
し、37℃で約7 時間インキュベートした。
【0064】なお、希釈指示菌液は次のようにして調製
した。E.coli C600hfl株を5mlL培地
に植菌し、37℃で9時間培養した。これを2Lコルベ
ンに分注した500ml TB10培地に全量植菌し、
37℃で一晩培養した。培養液の600nmにおける濁
度を測定した後集菌し、得られた菌体を10mM Mg
SO4 水溶液で洗浄後25mlの10mM MgSO4
水溶液に懸濁し(濁度OD600 =31.2)、さらに1
0mM MgSO4 水溶液でOD600 =2に希釈して使
用した。
【0065】プラークが確認できるようになった時点で
培養を止め、マスタープレートとして4 ℃に保存した。
マスタープレート当たり2 枚のメンブレン(colony/pla
quescreen, デュポン社製)を調製した。得られたメン
ブレンをTB10 bottom agarプレート上で37℃一晩インキ
ュベートし、ファージの増幅を行った。これらのメンブ
レンを0.5N水酸化ナトリウム水溶液に5 分間浸たし、ア
ルカリ変性処理した。同様の操作を繰り返した後、濾紙
で菌体残渣を除去した。その後、1M Tris-HCl緩衝液(pH
7.5) に浸して中和し、2 ×SSC 緩衝液でリンスした。
これらを濾紙上で風乾した後、プレハイブリダイゼーシ
ョン溶液(2×SSC,2% SDS,5×Denhardt'ssoln., 500μg/
ml yeast tRNA)中で60℃4 時間インキュベートした。プ
レハイブリダイゼーション後、メンブレンを新たなバッ
グに移し換え、各プローブのハイブリダイゼーション溶
液(2 ×SSC,2% SDS,5×Denhardt's soln.,100 μg/ml
yeast tRNA , 末端標識された各プローブを含む溶液を
加熱急冷処理したもの) を加えた後、40℃一晩ハイブリ
ダイゼーションした。その後、メンブレンを2 ×SSC-2%
SDS水溶液で室温20分間,2×SSC-2% SDS水溶液で52℃20
分間, さらに1 ×SSC-2% SDS水溶液で45℃40分間洗浄し
た後、各メンブレンをサランラップ(登録商標)で被
い、−80℃で一晩感光した。シグナルを確認した結
果、各メンブレンとも30〜40の特異的シグナルがあり、
全体で約400 個のシグナルが得られた。また、ほとんど
がプローブ1 及び2 で一致していた。
【0066】二次スクリーニング 一次スクリーニングに使用したマスタープレートからプ
ローブ1 及び2 でシグナルが一致した10スポットのtop
agarose を剥がし取り、0.5ml SM緩衝液に入れ細かく
砕いた後、クロロホルムを1 滴を加え4 ℃に2.5 時間放
置してファージの溶出をおこなった。ファージ溶出液の
濃度を1 ×107 pfu/mlと仮定して、SM緩衝液で5 ×10
3 , 1 ×103 , 5 ×102 pfu/mlの3 段階に希釈した。こ
れらファージ希釈液100 μl と希釈指示菌液100 μl を
混合し、37℃20分間インキュベートした。3ml TB10 top
agaroseを加え、予め37℃に保温しておいたTB10 botto
magarプレート(φ9cm)に重層し、37℃一晩インキュベ
ートしたところ、5 ×102pfu/mlに設定した希釈系でも1
03-4 pfu/mlのプラークが観察された。従って、次のメ
ンブレンの調製には、主に5 ×102 pfu/mlに設定した系
を使用した。
【0067】一次スクリーニングと同様に、メンブレン
上で37℃6 時間ファージの増幅をおこない、4 ℃に保存
した。メンブレンをアルカリ変性, 中和処理, 及び2 ×
SSCリンスした後、プレハイブリダイゼーション溶液(2
×SSC,2% SDS,5×Denhardt'ssoln., 100 μg/ml yeast
tRNA)中で60℃6 時間インキュベートした。プレハイブ
リダイゼーション後、プローブ2を用いて一次スクリー
ニングと同様にハイブリダイゼーションした。各メンブ
レンを1×SSC-2% SDS水溶液で室温10分間の条件にて、
2回洗浄した。その後、各メンブレンをサランラップ
(登録商標)で被い、室温で6 時間感光した。これを現
像した結果、シグナルの観察されたスポットについて三
次スクリーニングに供した。
【0068】三次スクリーニング 二次スクリーニングに使用した各マスタープレートから
シグナルに相当するプラークを爪楊枝で指示菌プレート
(100μl 希釈指示菌液と3ml TB10 top agaroseを混合
し、予め37℃に保温しておいたTB10 bottom agarプレー
トに重層したものに植菌した。これを37℃一晩インキュ
ベートした。メンブレン上で37℃3 時間ファージの増幅
をおこない、アルカリ変性, 中和処理, 及び2 ×SSC リ
ンスをおこなった後、プレハイブリダイゼーション溶液
を加え、60℃で2.5時間インキュベートした。プレ
ハイブリダイゼーション後、プローブ1を用いて一次ス
クリーニングと同様にハイブリダイゼーションした。1
×SSC-2% SDS水溶液で室温10分間の洗浄後、各メンブレ
ンをサランラップ(登録商標)で被い、室温で6 時間、
増感用スクリーンを用いて感光した。現像の結果、純化
したと考えられるファージクローンを各スポットあたり
1 〜5 株得ることが出来た。
【0069】サブクローニング 得られたファージクローン16株からファージDNA を調製
し、制限酵素EcoRI 消化後1%アガロースゲル電気泳動し
てインサートの確認をおこなった。ほとんどのファージ
クローンに0.5 〜2kb の大きさをもつインサートがひと
つないし二つ認められた。更に、プローブ2を用いたサ
ザンハイブリダイゼーションを行い、文献(J. F. Kaum
eyer等, Nucl. Acids Res. 14(20),p7839-7850, 1986)
に報告されている1.2 〜1.3kb のインサートをもつ6 ク
ローンからcDNAを切り出し、pUC19 のEcoRI 部位にサブ
クローニングした。制限酵素マッピングをおこない、得
られたプラスミドDNA を用いて塩基配列の確認をおこな
った。
【0070】塩基配列の確認 [α-32p]dCTP を用いたダイデオキシ法によって塩基配
列を確認した。具体的にはSequenase ver.2(ファルマシ
ア製) および7-DEAZA Sequenceing kit ver.2(宝酒造
社製) を用いて、そのプロトコールに従って行った。そ
の結果、得られたUTIcDNA の塩基配列は、Kaumyer らの
報告している配列(J.F.Kaumeyer等, Nucl. Acids Res.
14(20), p7844-7845,1986)と全く同じであった(図4
〜図8)。以下、得られたサブクローニング株のうち、
UTIcDNAの全塩基配列が確認されたNo.7株を
用いて操作を行った。
【0071】(iii )UTIcDNAのカセット化 上記(ii)で得られたUTIcDNA の塩基配列を検討したとこ
ろ、図4〜図8に示す塩基配列の塩基番号 660位のGを
Cに置換することで新たに制限酵素Aoro51HIサイトが生
じることが判明した(塩基番号はKaumyer らの報告に従
った) 。Aoro51HIサイトが生じたことによって天然型UT
I のN末端に相当する部分で遺伝子を開裂でき、今後の
発現系構築において非常に有効であると考えられた。ま
た、UTI構造遺伝子は441 塩基からなり147 アミノ酸を
コードしている。一方、天然型UTI のC末端アミノ酸は
主にLeu143であり、Arg144またはPhe145をもつ配列の存
在も報告されているが (Hochstrasse K.等, Hoppe-Seyl
er's Z. Phisiol. Chem.365, p1123-1230, 1984)、Asn1
47をC末端にもつ配列は報告されていない。従って遺伝
子工学的にUTI の発現をおこなう場合、天然に見られる
配列にするのが望ましいと考えられることから、Phe145
をC末端アミノ酸にすることにした。以上の点に考慮し
てUTIcDNA のカセット化を行った。
【0072】上記の改変に対応したUTI遺伝子の5’
末端および3’末端領域の合成DNA(図9)をDNA 合
成機 (アプライドバイオシステムズ・ジャパン社製、 m
odel392) で作成した。合成DNA はアニール後両端が各
制限酵素接着末端になるように設計し、またC末端をコ
ードする領域に対応した合成DNA は、C末端の2アミノ
酸に対応した6塩基の欠失ならびに操作上の点から3'非
翻訳領域中の21塩基を欠失した配列にした。一方、サブ
クローニング株No.7のプラスミド♯7に含有されるUT
IcDNAの塩基番号504 位にてBbeIで消化し平滑末端
に修復した後、更にEcoRI 消化して得られたUTIcDNA を
含むDNA 断片をpUC19 のSmaI-EcoRI領域にサブクローニ
ングした(#7/BbeI-ERI、図10) 。この#7/BbeI-ERI を
もとに各合成DNA の組込みをおこなった。
【0073】N末端をコードする領域(以下、N末コー
ド領域という)の置換をおこなうために、#7/BbeI-ERI
をBamHI およびEcoRI で消化し、UTIcDNA を含むDNA 断
片を回収した。これをUTIcDNAの塩基番号686 位
のSau3AIで消化してSau3AI-EcoRI断片を回収した。ま
た、#7/BbeI-ERI をUTIcDNAの塩基番号645 位の
AvaIおよびEcoRI で消化してベクター部分を回収した。
得られた両DNA 断片及び合成DNA を連結し、N末コード
領域が改変されたクローンpUTI-Nを得た(図11)。C
末端をコードする領域(以下、C末コード領域という)
の置換をおこなうために、#7/BbeI-ERI をUTIcDN
Aの塩基番号877 位のPstIおよびEcoRI で消化してUTIc
DNA の後半部分を含むDNA 断片を回収した。これをUT
IcDNAの塩基番号1089位のHhaIで消化してPstI-Hha
I 断片を回収した。また、#7/BbeI-ERI をPstIおよび塩
基番号1146位のSmaIで消化してベクター部分を回収し
た。得られた両DNA 断片及び合成DNA を連結し、C末コ
ード領域が改変されたクローンpUTI-Cを得た(図1
2)。次に、pUTI-NをPstI消化してpUC19 由来のPstIサ
イトとUTIcDNAの塩基番号877 位のPstIサイトの
間のDNA 断片を回収した。これをpUTI-CのPstIサイトに
連結し、N末コード領域及びC末コード領域が改変され
たクローンpUTI N-Cを作成した(図13) 。このプラス
ミドをAor51HI-SmaI消化することにより3'非翻訳領域の
ポリA配列が除去されたUTIcDNA を得ることができる。
【0074】(b)ピキア属酵母でのUTI発現プラス
ミドpHH310の作成(図15) ピキア属酵母の発現用プラスミドであるpAO807N
(特開平2−104290号公報)は、クローニングサ
イトにEcoRI部位を持つ。これに対応させるため、
カセット化されたUTIcDNAを担持するプラスミド
pUTI N−CをSmaI消化してCIP(calf int
estine alkaline phosphatase 、宝酒造社製)処理し、
EcoRIリンカー(宝酒造社製)を連結し、これでコ
ンピテントセルE.coliHB101を常法により形
質転換してプラスミドpUTIN−C/ERIを作成し
た(図14)。このプラスミドをAor51HIおよび
EcoRIで消化することにより3’非翻訳領域のポリ
A配列が除去されたUTIcDNAを得ることが出来
る。
【0075】UTIの発現系構築用に調製した酵母SU
C2シグナルペプチドに対応したDNA(Chang C. N.
等, Mol. Cell. Biol 6, p1812-1819, 1986)をアニー
リングした後、T4kinaseを用いてリン酸化し
た。このDNAはその5’末端がEcoRI連結末端
に、3’末端が平滑末端になるように設計されており、
またピキア属酵母のcodon usage に従って一部の塩基配
列が改変されている(図16参照)。次に、pUTI
N−C/ERIをAor51HI及びEcoRI消化
し、UTI遺伝子を含む約0.4kbのDNA断片を回
収した。因に、このDNA断片は、5’の末端が天然型
UTIのN末に対応し、SUC2シグナルと直接連結で
きる。また、このDNA断片は、図9に示す改変に加え
て3’非翻訳領域のポリA配列が除去されている。以上
5’末端にEcoRI接合部位を有するように調製した
合成SUC2シグナル遺伝子、pUTI N−C/ER
IをAor51HIおよびEcoRIで消化して得られ
た約0.4kbのDNA断片、ならびにEcoRI消化
pAO807Nの3つのDNA断片を混合し、連結した
後、先と同様にコンピテントセルE.coliHB101を形
質転換した。得られた形質転換体から常法によりプラス
ミドDNAを調製し、制限酵素処理並びにAOX1プロ
モーター・SUC2シグナル・UTI遺伝子の連結領
域、及びUTI遺伝子・AOX1ターミネーターの連結
領域の塩基配列を確認し、ピキア属酵母の発現ベクター
である当該プラスミドをpHH310と命名した(図1
5)。
【0076】(c)Kunitz型ドメイン1およびK
unitz型ドメイン2の遺伝子のカセット化 UTIを構成する2つのKunitz型ドメイン(図
3)各々をコードする遺伝子のカセット化をおこなっ
た。なお、本実施例においてKunitz型ドメイン1
は、本来のKunitz型ドメイン1のN末端に21ア
ミノ酸からなるUTIのN末ペプチドが付加されたポリ
ペプチド、すなわちAla1〜Arg77からなるポリ
ペプチド(以下、N末ペプチド付加Kunitz型ドメ
イン1という)をコードする遺伝子を発現するようにカ
セット化した。
【0077】(i )合成DNAの調製 N末ペプチド付加Kunitz型ドメイン1、Kuni
tz型ドメイン2各々の遺伝子をカセット化するため
に、まずN末ペプチド付加ドメイン1のC末コード領域
を補う合成DNA(図17)およびKunitz型ドメ
イン2のN末コード領域を補う合成DNA(図18)を
調製した。N末ペプチド付加ドメイン1のC末コード領
域合成DNAの設計は、5’にPstI接合末端、3’
にEcoRI接合末端を持ち、途中に停止コドンを設け
た構造とした。Kunitz型ドメイン2のN末コード
領域合成DNAは、SUC2シグナルと連結する5’を
平滑末端、3’にApaI接合末端を持つ構造にした。
また、1塩基置換によりアミノ酸の変化なしに配列中に
制限酵素SphI部位が創製されることから、UTIc
DNAの塩基番号902(図7参照)のCをAに変更し
た。この新たに設けたSphI部位は、Kunitz型
ドメイン1とKunitz型ドメイン2との再連結やK
unitz型ドメイン2のN末コード領域を改変する場
合に有効である。これらの合成は、図17および図18
に記載の配列に基づいて、DNA合成機(アプライドバ
イオシステムズ・ジャパン製、モデル392)で行っ
た。
【0078】(ii)N末ペプチド付加Kunitz型ド
メイン1遺伝子のカセット化(N末ペプチド付加Kun
itz型ドメイン1:UTIcDNAの塩基番号661
〜891、図4乃至図8参照) 上記(b)で構築したpHH310を制限酵素EcoR
I及びPstI消化し、〔SUC2シグナル+N末ペプ
チド付加Kunitz型ドメイン1構造遺伝子〕を含む
断片を切り出した。これを図17に示すN末ペプチド付
加Kunitz型ドメイン1のC末コード領域に対応し
た合成DNAと共にpUC19のEcoRI部位に連結
し、分泌型N末ペプチド付加Kunitz型ドメイン1
遺伝子ユニット(図19参照)を担持したプラスミドp
HH305を作成した(図20)。
【0079】(iii )Kunitz型ドメイン2の遺伝
子のカセット化(Kunitz型ドメイン2:UTIc
DNAの塩基番号892〜1095、図4乃至図8参
照) 上記(b)で構築したpUTI N−C/ERIを制限
酵素ApaI及びEcoRI消化し、Kunitz型ド
メイン2構造遺伝子DNA断片を得た。これと図18 に
示すKunitz型ドメイン2のN末コード領域に対応
した合成DNAならびに合成SUC2シグナル遺伝子
(図16)とをpUC19のEcoRI部位に連結し、
分泌型Kunitz型ドメイン2遺伝子ユニット(図1
9参照)を担持したプラスミドpHH306を作成した
(図22)。
【0080】(d)改変型UTI(Ep1−UTI)の
作成 (i )Kunitz型ドメイン1遺伝子の改変 UTIのKunitz型ドメイン1のアミノ酸配列の一
部を改変した改変型UTIを作製した。改変は、Kun
itz型ドメイン1の活性部位を含む領域(Met-Gly-Me
t-Thr-Ser)を(Ile-Ala-Phe-Phe-Pro) に置換することに
よって行った。置換は、U.S.E.mutagenesis kit (ファ
ルマシア社製)を用いたsite directed mutagenesis 法
により行った。特に述べる以外はキットに添付されたプ
ロトコールに従って操作した。上記(c)で作成したpH
H305上に含まれるKunitz型ドメイン1遺伝子はpU
C19 のlacZ遺伝子の転写方向と逆向きに挿入されてい
る。そこで、mutagenicprimerはキットのselection pri
merと同一鎖上に存在するように設計した。mutagenic p
rimerの配列を図24に示す。調製したmutagenic prime
rの5’末端をT4kinaseでリン酸化し、キットのプロト
コールに従ってsite directed mutagenesis をおこなっ
た。なお、selection primerとしてSspI/StuI selectio
n primer(ファルマシア社製)を用いた。得られたクロ
ーンについて塩基配列を確認し、目的の改変が導入され
たKunitz型ドメイン1遺伝子を担持したプラスミ
ドをpTK325とした。
【0081】(ii)Ep1−UTI遺伝子のカセット化 得られたpTK325をEcoRI およびPstIで消化して3’領域
を欠いたN末ペプチド付加改変Kunitz型ドメイン
1遺伝子断片を回収した。次にpHH306をSphIおよびEcoR
I で消化して5’領域を欠いたKunitz型ドメイン
2遺伝子断片を回収した。そしてKunitz型ドメイ
ン1上のPstIサイトからKunitz型ドメイン2上の
SphIサイト間に相当する合成DNAを調製した(図2
5)。これら3者とEcoRI 消化したpUC19 とを連結し、
目的の改変UTI 遺伝子(Ep1-UTI 遺伝子)を担持したpT
K332を得た。図26にEp1−UTI遺伝子の塩基配列
ならびにそれから推定されるアミノ酸配列(一文字表
記)を示した。
【0082】上述のように構築されたSUCシグナル遺
伝子/Ep1−UTI遺伝子からなる分泌発現用にカセ
ット化されたEp1−UTI遺伝子を担持したpTK3
32をもとに、UTIのN末21アミノ酸を欠失しかつ
Kunitz型ドメイン1のN末4アミノ酸(22〜2
5位に相当)のうち3アミノ酸についてK22R,E23P,S25F
の置換が施された分泌発現用Ep1−d21−RPDF
遺伝子のカセット化をおこなった。
【0083】pTK332をSUC2シグナル内にある
制限酵素サイトHindIII とUTIドメイン1内にあ
るEco52Iで消化し、SUC2シグナルの大部分と
UTIのN末アミノ酸およびKunitz型ドメイン1
のN末コード領域を欠いたUTI遺伝子を担持するベク
ターDNAのHindIII −Eco52I断片を回収し
た。次に、SUC2シグナルHindIII サイトより
3’末側の領域ならびにUTIKunitz型ドメイン
1のN末端対応部からEco52Iまでの領域について
合成DNAを調製した(図27)。その際、SUC2シ
グナルのCコード領域については塩基置換によりアミノ
酸変化なしにEcoRVサイトが新たに設けられるよう
に設計し、Kunitz型ドメイン1のN末コード領域
に関しては先に示したアミノ酸置換を含み、且つ本来あ
ったPvuIIサイトの変わりにHincIIサイトが出来
るように設計した(図30)。これらを連結し、分泌発
現用Ep1−d21−RPDF遺伝子を担持したプラス
ミドEp1−d21−RPDF/pUCを作成した(図
28)。
【0084】このEp1−d21−RPDF/pUCを
もとに52位と55位のアミノ酸についてE52Q,Q55V の
置換をおこなった。即ち、Ep1−d21−RPDF/
pUCをKunitz型ドメイン1内にある制限酵素サ
イトNcoIとPstIとで消化し、UTIの48〜7
4位のアミノ酸に相当する領域を欠いたDNA断片を回
収した。次に、先に示したE52Q,Q55V のアミノ酸置換を
含むドメイン1のNcoIサイトとPstIサイト間に
相当する領域の合成DNAを調製した(図29)。その
際、塩基置換によりアミノ酸変化なしにUTIの58位
〜60位のアミノ酸をコードする領域にEcoT22I
サイトが新たに設けられるように設計した。これらを連
結して分泌発現用Ep1−d21−RPDF−52−5
5遺伝子(図30)を担持したプラスミドpHH337
を作成した(図31)。
【0085】(2) ピキア属酵母発現プラスミドの作成 pHH337をEcoRI消化し、得られた分泌発現用
Ep1−d21−RPDF−52−55遺伝子をピキア
属酵母の発現用プラスミドpAO807NのEcoRI
サイトに連結し、Ep1−d21−RPDF−52−5
5発現プラスミドpHH340を作成した(図32)。
【0086】(3)発現株の作成および性状 pHH340を選択マーカーであるHIS4上の制限酵
素StuIサイトで線状化した後、ピキア属酵母 Pichi
a pastoris GTS115株のhis4遺伝子座を標的
にスフェロプラスト法(Cregg J. T.等, Mol. Cell. Bi
o1. 5, p3376-3385, 1985 )に従った挿入型組み込みに
より形質転換をおこなった。得られた形質転換体を2m
lYNB培地(0.7% Yeast Nitrogen Base, 2% dextros
e )に植菌し、30℃で2日間培養した。これを2ml
3×YP−2%グリセロ─ル培地(3% Yeast Extrac
t, 6% Peptone, 2% glycerol )に10%植菌し、30
℃で2日間培養後、終濃度4%になるようにメタノール
を添加し、さらに30℃で5日間培養した。
【0087】培養液を遠心し(10000rpm,5分,4
℃)、得られた培養上清中のEp1−d21−RPDF
−52−55発現量を抗rUTI抗体(後述の参考例1
に示す)によるELISA法で測定した。なお、発色酵
素にワサビペルオキシダーゼアビジンD(VECTOR LABOR
ATORIES 社製)、発色基質にペルオキシダーゼ用発色キ
ットO(住友ベークライト社製)を供給元の推奨に従っ
て使用した。一般的な手順は成書にしたがった。測定は
タイターテックマルチスキャンMCC/340 MKII
(Flow Laboratories 社製)でおこない、デ─タの解析
にはΔSOFT(Vers.2.12F, BioMetallics社製)を用
いた。その結果0.7m/Lの発現が認められた。ま
た、得られた培養上清について、後述の参考例2および
参考例3に記載の方法に準じてトリプシン阻害活性およ
び好中球エラスターゼ阻害活性を測定した。その結果、
該培養上清はトリプシン阻害活性を示すと共に、顕著に
強い好中球エラスターゼ阻害活性を示した。
【0088】実施例2 プロテアーゼインヒビター(E
p1−UTI−RPDF−52−55)の作成 式VII に示すアミノ酸配列を有するプロテアーゼインヒ
ビター〔UTI(K22R,E23P,S25F,M36I,G37A,M38F,T39
F,S40P,E52Q,Q55V)、以下、Ep1−UTI−RPDF
−52−55という。図1の(4) 〕を作成した。なお、
アミノ酸番号は図3に示したUTIのN末端を1とした
ときの番号で示した。
【0089】(1)Ep1−UTI−RPDF−52−
55遺伝子のカセット化 実施例1の(1)(d)で得られたpHH337をEc
oRVとHincIIで消化し、SUC2シグナルのC末
コード領域からKunitz型ドメイン1のN末コード
領域を欠いたUTI遺伝子を担持するベクターDNAの
EcoRV−HincII断片を回収した。次に、SUC
2シグナル内のEcoRVサイトからUTIのN末21
アミノ酸を含みKuitz型ドメイン1内のHincII
サイトまでの領域に相当する合成DNA(図33)を調
製した。その際、UTIのN末ペプチド領域に、塩基置
換によりアミノ酸変化なしにBalIサイトとBstE
IIサイトを設けることができた。これらを連結して分泌
発現用Ep1−UTI−RPDF−52−55遺伝子
(図34)を担持したプラスミドpHH354を作成し
た(図35)。
【0090】(2)発現株の作成および性状 pHH354をEcoRI消化し、得られた分泌発現用
Ep1−UTI−RPDF−52−55遺伝子をピキア
属酵母の発現用プラスミドpAO807NのEcoRI
サイトに連結し、ピキア属酵母でのEp1−UTI−R
PDF−52−55発現プラスミドpHH355を作成
した(図36)。pHH355を選択マーカーであるHI
S4上の制限酵素StuIサイトで線状化した後、ピキア属酵
母 Pichia pastoris GTS115株のhis4遺伝子座を標的に
スフェロプラスト法(Cregg J. T.等, Mol. Cell. Bio
1. 5, p3376-3385, 1985)に従った挿入型組込みにより
形質転換を行った。
【0091】得られた形質転換体を2mlのYNB 培地に
植菌し、30℃で2日間培養した。これを2mlYP-2% グ
リセロール培地に10% 植菌後、30℃で2日間培養し、終
濃度4%になるようにメタノールを添加し、更に30℃
で5日間培養した。培養液を遠心し、(10000rpm, 5分,
4 ℃) 、得られた培養上清中のEp1−UTI−RPD
F−52−55の発現量を実施例1と同様に抗rUTI
抗体によるELISA法で測定した。その結果10mg
/Lの発現が認められた。
【0092】また、得られた培養上清について後述の参
考例2および参考例3に記載の方法に準じてトリプシン
阻害活性および好中球エラスターゼ阻害活性を測定し
た。その結果、該培養上清はトリプシン阻害活性を示す
と共に、顕著に強い好中球エラスターゼ阻害活性を示し
た。
【0093】実施例1で示したEp1−d21−RPD
F−52−55発現株の培養上清中には0.7m/Lの
改変型UTIが検出されたのに対して、21アミノ酸か
らなるUTIのN末ペプチドを持つEp1−UTI−R
PDF−52−55発現株の培養上清中には、10mg
/Lの改変型UTIが検出された。即ち、21アミノ酸
からなるUTIのN末ペプチドの有無により、発現量に
14倍強の差が認められた。また、表1に示すように両
改変型UTIの各酵素阻害活性は同等であることから、
21アミノ酸からなるUTIのN末ペプチドは酵素阻害
活性に影響することなく遺伝子工学的手法における発現
量の増大に寄与することが示唆された。
【0094】
【表1】
【0095】実施例3 プロテアーゼインヒビター(E
p7−d21−UTI−RPDF−52−55)の作成 式IXに示すアミノ酸配列を有するプロテアーゼインヒビ
ター〔UTI(d21,K22R,E23P,S25F,M36V,G37A,T39F,S4
0P,E52Q,Q55V) 以下、Ep7−d21−RPDF−52
−55という。図1の(3) 〕を作成した。なお、アミノ
酸番号はUTIのN末端を1としたときの番号で示し
た。
【0096】(1)Ep7−d21−RPDF−52−
55遺伝子のカセット化 実施例1(1)(d)で得られたpHH337をEco
52IとBlnIで消化し、UTIのKunitz型ド
メイン1の結合中心領域を欠いたUTI遺伝子を担持し
たベクターDNAのEco52I−BlnI断片を回収
した。次に、先に示したアミノ酸置換が含まれるように
Kunitz型ドメイン1のEco52IサイトからB
lnIサイトまでの領域に相当する合成DNA(図3
7)を調製した。その際、塩基置換によりアミノ酸変化
なしにEco52Iサイトのすぐ下流にNaeIサイト
を設けることができた。これらを連結し、分泌発現用E
p7−d21−UTI−RPDF遺伝子(図38)を担
持したプラスミドpHH338を作成した(図39)。
【0097】(2)発現株の作成および性状 pHH338をEcoRI消化し、得られた分泌発現用
Ep7−d21−RPDF−52−55遺伝子をピキア
属酵母の発現用プラスミドpAO807NのEcoRI
サイトに連結し、ピキア属酵母でのEp7−d21−R
PDF−52−55発現プラスミドpHH341を作成
した(図40)。このpHH341を選択マーカーであ
るHIS4上の制限酵素StuIサイトで線状化した後、ピキア
属酵母 Pichia pastoris GTS115株のhis4遺伝子座を標
的にスフェロプラスト法に従った挿入型組み込みにより
形質転換を行った。
【0098】得られた形質転換体を2mlのYNB 培地に植
菌し、30℃で2日間培養した。これを2ml YP-2%グリセ
ロール培地に10% 植菌し、30℃で2日間培養し菌体を培
養後、終濃度4%になるようにメタノールを添加し、さ
らに30℃で5日間培養した。培養液を遠心し(10000rp
m,5分, 4℃) 、得られた培養上清中のEp7−d21
−RPDF−52−55の発現量を実施例1と同様に抗
rUTI抗体によるELISA法で測定した。その結果
2mg/Lの発現が認められた。また、得られた培養上清に
ついて参考例2および参考例3記載の方法に準じてトリ
プシン阻害活性および好中球エラスターゼ阻害活性を測
定した。その結果、該培養上清はトリプシン阻害活性を
示すと共に、顕著に強い好中球エラスターゼ阻害活性を
示した。
【0099】実験例1 各改変型UTIの精製および性
状分析 (1)培養上清からの各改変型プロテアーゼインヒビタ
ーの精製 (a)Ep1−d21−RPDF−52−55およびE
p7−d21−RPDF−52−55の精製 実施例1および実施例3で得られた各改変型UTI発現
株を、実施例1の(3)および実施例3の(2)に準じ
て100mlYNB培地で培養後、2Lの3×YP−2
%グリセロ─ル培地に5%植菌し培養した。途中、終濃
度4%になるようにメタノールを添加して発現を誘導し
た。
【0100】得られた培養液を4℃で7000rpm ,30分
間遠心後、上清を0.45μm膜(MILLIPAK2
00R ,ミリポア社製)で濾過し、更に10kDカット
の限外濾過膜(FILTRON MINISETT
TM,FILTRON社製)を用いて 100mlに濃縮し
た。該濃縮液を10Lの結合用緩衝液(50mM Tr
is,20mM CaCl2 ,pH8.0)を用いて透
析した。次に透析した該濃縮液をアンハイドロトリプシ
ン−アガロースカラム(φ2.0 ×2.2 cm)に自然落下
で通過させ、カラムを15mlの結合用緩衝液で洗浄
後、15mlの250mMベンズアミジン含有結合用緩
衝液で洗浄した。更に15mlの結合用緩衝液で洗浄し
た後、溶出液I (0.02N HCl,20mM CaCl
2 )を用いてカラムから吸着画分を溶出し、1mlずつ
分取した。波長280nmにおける吸光度を測定し、ピ
ーク画分を集め中和液(1M Tris−HCl,pH
8.0)を溶出液の1/10量添加して中和した。これ
を生理食塩水(0.15M NaCl)を用いて透析
後、セントリプレップ10で濃縮し、精製品とした。
【0101】得られた各改変型UTI精製品の総UTI
活性(参考例2)およびカラム添加力価に対する回収率
は、Ep1−d21−RPDF−52−55が 370ユニ
ット,20.4%、Ep7−d21−RPDF−52−55
が1550ユニット,41.3%であった。また、精製品のSD
S電気泳動パターンは、いずれの改変型UTIも17.
7kDに主バンドを示した。
【0102】(b)Ep1−UTI−RPDF−52−
55の精製 実施例2で得られたEp1−UTI−RPDF−52−
55発現株を、実施例2の(2)に準じて、300ml
YNB培地で培養後6Lの3×YP−2%グリセロ─ル
培地に5%埴菌し培養した。途中、終濃度4%になるよ
うにメタノールを添加して発現を誘導した。
【0103】得られた培養液を7000rpm ,30分間遠心
後、得られた上清を0.45μm膜(MILLIPAK
200R )で濾過し、得られた濾液を10Lの上記結合
用緩衝液を用いて透析した。次に、透析した該濾液をト
リプシン−アガロースカラム(φ5.0 ×5.0 cm)に自
然落下で通過させ、カラムを 700mlの結合用緩衝液で
洗浄した後、溶出液II(0.2 M Glycine −HCl,2
0mM CaCl2 ,pH2.5)を用いてカラムから
吸着画分を溶出し、50〜100mlずつ分取した。波
長280nmにおける吸光度を測定し、ピーク画分を集
め上記中和液を溶出液の1/10量添加して中和した。
これをTris緩衝液(1mM TrisHCl,pH
8.0)を用いて透析後、セントリプレップ10で濃縮
し、精製品とした。
【0104】得られたEp1−UTI−RPDF−52
−55の精製品の総UTI活性は 45800ユニットであ
り、カラム添加力価に対する回収率は48.5%であっ
た。また、精製品のSDS電気泳動パターンは、20k
Dに主バンドを示した。
【0105】なお、以下の物性試験に用いられた各改変
型UTIは、本実験例で得られた精製品である。
【0106】(2)精製プロテアーゼインヒビターの酵
素阻害物質定数(Ki)の測定 実施例1〜実施例3で得られた各種精製プロテアーゼイ
ンヒビターの各種酵素〔ヒト好中球エラスターゼ(表
中、HNEと示す)、トリプシン(ウシ,ヒト)、プラ
スミン〕に対するKi値を参考例3に記載する方法に従
って測定した。結果を、表1に天然型UTI及び後述の
参考例4に記載された遺伝子工学的に作成された改変の
ない天然型UTIと同じアミノ酸配列を有するUTI
(以下、Intact-rUTI と呼ぶ。)の値と共に示す。表1
中、天然型UTIは、特開平5−9200号公報に記載
の方法に従い調製した。
【0107】表1に示されるように、阻害活性がUTI
のKunitz型ドメイン2領域に起因すると言われる
トリプシンに対しては、天然型UTI、Intact-rUTI と
ほぼ同様の値を示したのに対し、阻害活性がUTIのK
unitz型ドメイン1に起因すると言われる好中球エ
ラスターゼに対してはEp1−d21−RPDF−52
−55に関しては、天然型UTIよりも3オーダー、In
tact-rUTI よりも6オーダーもKi値が小さくなり阻害
能の著しい上昇が認められ、Ep7−d21−RPDF
−52−55についても、天然型UTIよりも 2オー
ダー、Intact-rUTI よりも5オーダーもKi値が小さく
なり阻害能の著しい上昇が認められた。
【0108】(3)精製プロテアーゼインヒビターのヒ
ト好中球エラスターゼ阻害の反応速度(kon)の測定 各種プロテアーゼインヒビター(Ep1−d21−RP
DF−52−55、Ep7−d21−RPDF−52−
55、ヒト血漿由来のα1−AT)についてヒト好中球
エラスターゼに対するkonを求めた。緩衝液A(0.1M
Tris, 10mM CaCl2,0.1% TritonX-100,pH8) で10nMに希
釈したプロテアーゼインヒビター溶液250 μl に緩衝液
Aを1000μl 、緩衝液B(10mMNaOAc,10mM CaCl2,0.1
% TritonX-100, pH4.5 )で10nMに希釈したヒト好中球
エラスターゼ(Elastin Product 社製)を250 μl を加
え速やかに混和した。25℃でインキュベートを開始し、
14分まで1 分〜2 分毎に62.5μM Suc(OMe)-Ala-Ala-Pro
-Val-MCA/25% DMSO (ペプチド研究所) を1000μl 混和
し、25℃30秒間インキュベート後、20% 酢酸溶液を1000
μl 加えて反応を止め、励起波長380nm 、蛍光波長470n
m で蛍光強度を測定した。各インキュベート時間での蛍
光強度の0時間に対する比に酵素初濃度〔E0 〕を乗ず
ることで残存酵素濃度〔E〕を求め、下記の式に従った
プロットの直線の傾きからkon を求めた。
【0109】
【数1】
【0110】(式中、〔E0 〕は酵素初濃度、〔E〕は
各時間における酵素濃度、tは時間を意味する。) 結果を表2に示す。
【0111】
【表2】
【0112】この結果から、改変型UTIのα1−AT
に対するkon値の比は1/8〜1/7と評価された。
【0113】(4)精製プロテアーゼインヒビターの酸
化感受性の評価 50mM リン酸緩衝液,pH7.0で5μMに希釈した
各種プロテアーゼインヒビター(Ep1−d21−RP
DF−52−55、Ep7−d21−RPDF−52−
55)または天然型UTI各25μlに、同緩衝液で2
0.0mMから1.25μMまで連続5倍希釈したクロラミン
T(ナカライテスク社製)を25μl添加し、室温で2
0分間反応させた。次いで、水に溶解した 200mMのL
−メチオニン(ナカライテスク社製)を50μl添加し
て反応を停止した。つぎに反応後のインヒビターを緩衝
液Aで94nMに希釈し、その40μlに緩衝液Aを11
0 μl,緩衝液Bで 250nMに溶解したエラスターゼを
20μl添加して25℃で30分間反応させた。次に2
5%DMSOに溶解した2mMのS-2484(第一化学社
製) を50μl添加し、反応初速度をDU−7400分
光光度計(Beckman 社製)により吸光度(405nm)
の経時的な変化を測定することにより求めた。また、比
較のため、上記α1−ATについても同様にクロラミン
T酸化による影響を調べた。
【0114】図40に、クロラミンT酸化のEp1−d
21−RPDF−52−55、Ep7−d21−RPD
F−52−55、天然型UTIのエラスターゼ阻害に対
する影響を示す。図41中の残存阻害率は、阻害率をイ
ンヒビター非添加時の反応初速度に対するインヒビター
添加時の反応初速度の減少割合(%)としたとき、クロ
ラミンT非酸化インヒビターの阻害率に対する、クロラ
ミンT酸化インヒビターの阻害率の割合(%)を示して
いる。図41に示すように、Ep1−d21−RPDF
−52−55やEp7−d21−RPDF−52−55
は、α1−ATや天然型UTIが失活するような低濃度
域のクロラミンT酸化では全く失活せず、明らかに酸化
抵抗性の増大が認められた。
【0115】Ep1−d21−RPDF−52−55、
Ep7−d21−RPDF−52−55は、尿由来の天
然型UTIのN末端から36位に相当するメチオニンが
イソロイシンまたはバリンに、更にEp1−d21−R
PDF−52−55では尿由来の天然型UTIのN末端
から38位に相当するメチオニンもフェニルアラニンに
変換されており(図1参照)、酸化に対する耐性向上が
期待される。
【0116】クロラミンTは、中性または弱アルカリ性
においてメチオニンをメチオニンスルホキシドに酸化す
ることが知られているが、図10に示すようにEp1−
d21−RPDF−52−55、Ep7−d21−RP
DF−52−55、Ep1−UTIのエラスターゼ阻害
活性は天然型UTIに比べてクロラミンT酸化に耐性と
なっていることが確認された。炎症の場において、好中
球はエラスターゼと共に、活性酸素も放出することが知
られているが、そのような場においても安定性の向上が
期待される。
【0117】(5) 好中球エラスターゼ(HNE)惹
起肺出血モデルにおける改変型UTIの効力 実施例2で得られた改変型UTIと天然型UTIとの効
力の相違を以下の方法によって比較した。ハムスター
(体重100g前後)をペントバルビタールナトリウム
(70mg/kg体重、腹腔内投与)により麻酔し、背位
に固定した。気管を露出させて、小切開を施し、注射針
を気管分枝櫛の手前まで挿入し、被検薬を0.1W/V%の
ヒト血清アルブミン溶液に適宜溶解し、その100μl
を気管内投与した。その5分後にHNE〔等張リン酸緩
衝液(pH7.4)に溶解させた〕30Uを気管内投与
した。HNE投与1時間後に、動物を放血致死させ、肺
胞洗浄液(BAL)を採取し、そのヘモグロビン濃度を
測定した。一群は7匹とした。結果を表3および表4に
示す。
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】この結果から、HNE惹起肺出血に対し
て、本発明の新規プロテアーゼインヒビターである改変
型UTIは天然型UTIと比較して約6倍抑制効果が強
いことが判明した。
【0121】(6) モルモット皮膚血管透過性亢進モ
デルにおける改変型UTIの効力 実施例2で得られた改変型UTIと天然型UTIとのH
NEにより惹起される血管透過性亢進に対する効力の相
違を以下の方法によって比較した。モルモット(体重3
00g〜400g)に被検薬を静脈内投与した。その5
分後にHNE3Uを皮内投与し、2W/V%エバンスブルー
を静脈内投与した。HNE投与30分後に動物を屠殺
し、皮膚片を切り取った。皮膚片は1N−KOH1ml
に浸して37℃で1晩処理した。該処理液にさらにアセ
トン−リン酸液(13:5V/V )9mlを添加後、上清
を分取してA620 を測定した。一群は4匹とした。結果
を表5に示す。
【0122】
【表5】
【0123】この結果から、HNE惹起モルモット皮膚
血管透過性亢進に対して、本発明の新規プロテアーゼイ
ンヒビターである改変型UTIは天然型UTIと比較し
て抑制効果が極めて強いことが判明した。
【0124】実施例4 高密度フラスコ培養による発現
量の比較 実施例1の(3)および実施例2の(2)で実施した培
養(試験管培養)において、21アミノ酸からなるUT
IのN末ペプチドを持つEp1−UTI−RPDF−5
2−55は、それを持たないEp1−d21−RPDF
−52−55に比して遺伝子工学的に大量に発現される
ことが示唆された。これを確認するためにメタノール誘
導時の菌体密度を高めた形でのフラスコ培養(高密度フ
ラスコ培養)を行い、それぞれの発現量を比較した。
【0125】実施例1の(3)で得られたEp1−d2
1−RPDF−52−55発現株ならびに実施例2の
(2)で得られたEp1−UTI−RPDF−52−5
5発現株を2mlのYNB培地に植菌し、30℃で2日
間培養した。これを 200mlの3×YP−2グリセロー
ル培地(3% Yeast Extract,6% Peptone,2% glycerol )
に1mlずつ植菌し、30℃で2日間培養した後、波長
540nmにおける濁度(OD540 )を測定した。培養
液から集菌した後、それぞれのOD540 値が250程度
になるように2×YP−4%メタノール培地(2% Yeast
Extract, 4% Peptone, 4% methanol)にに混濁した。
これらをバッフル付 300ml容三角フラスコに40ml
ずつ入れ、150rpm ,66時間培養した。培養温度は3
0℃とした。24時間毎に培養液の濁度を測定し、また
発現量測定用の培養上清を回収して、−20℃に凍結保
存した。培養終了後、凍結保存しておいた培養上清を室
温で自然融解し、各変異型UTIの発現量を実施例1の
(3)と同様にELISA法で測定した。各時間毎の濁
度および発現量を表6に示す。
【0126】
【表6】
【0127】Ep1−UTI−RPDF−52−55発
現株の培養終了時の培養上清中には34.4mg/L、Ep
1−d21−RPDF−52−55発現株の培養終了時
の培養上清中には 1.7mg/Lの改変型UTIが検出さ
れた。即ち、実施例1および実施例2の試験管培養の結
果と同様に、21アミノ酸からなるUTIのN末ペプチ
ドがピキア属酵母発現系での発現量の増大に寄与するこ
とが示された。また、高密度培養においては、試験管培
養よりも当該発現量の増大は更に顕著になった。
【0128】参考例1 アフィニティー精製ポリクロー
ナル抗rUTI抗体の調製 天然型UTIで免疫したウサギ抗血清を硫安塩析し、I
g画分を回収した。これを天然型UTIをFMP活性化
セルロファイン(生化学工業製)に固定したアフィニテ
ィーカラムに吸着させ、0.5M NaCl−0.1M
トリス(pH7.0)で洗浄後、0.1Mグリシン塩
酸(pH2.5)で溶出した。また必要い応じて、常法
に従ってビオチン化を行った。
【0129】参考例2 UTI力価(トリプシン阻害活
性)の測定方法 約50u/mlに希釈したUTI検体200 μl 、反応緩衝液
(0.1M Tris-HCl, 20mMCaCl2 , 1.5mg/ml Gelatin, pH
8.0) 1.6ml、100 μg/mlに希釈したウシ・トリプシン20
0 μl を混和し5 分間静置後、5mg/mlの L-BApNA (N-α
-Bengoyl-L-Argine-p-Nitroanilide)1ml を混和し正確
に5分間反応させた。その後、20%酢酸1mlを混和
して反応を止め405nm の吸光度を測定した。UTIは上
記反応緩衝液で希釈し、トリプシンは20mM CaCl2, 1.5m
g/ml Gelatin, pH3.0 で希釈した。
【0130】参考例3 Ki値の測定 種々の濃度のプロテアーゼインヒビター検体と酵素を25
℃で10分間反応後、基質を2 種の濃度で添加し405n
m吸光度を連続的に測定し、反応初速度を求めた。得ら
れた測定結果より、Easson-Stedmanプロット〔J.G.Biet
h Bull.europ.Physiopath.resp 1980, 16(suppl.) 183
-195〕、Dixon プロットまたはLineweaber-Burk の2次
プロットによりKi値を求めた。反応系の緩衝液は緩衝
液Aとし、基質は、トリプシンには S-2222 、好中球エ
ラスターゼにはS-2484、プラスミンにはS-2251、キモト
リプシンにはS-2586(以上、第一化学薬品社より購入)
を用いた。
【0131】反応条件は、下記の通りである。トリプシ
ンは20mM CaCl2 ,0.1%トライトンX−1
00,pH3.0で6.3×10-9Mに希釈した。当該
トリプシン液20μlに、緩衝液Aで10-8〜10-9
に種々濃度希釈したUTI検体80μlを加え、更に緩
衝液Aを220μlまたは310μl加えた。25℃で
10分間反応後、各反応液に5mMに蒸留水に溶解した
S−2222を120μlまたは30μl加え、405
nmの吸光度を経時的に測定した。
【0132】好中球エラスターゼは、緩衝液Bで5×1
-8Mに希釈した。希釈したエラスターゼ液20μl
に、緩衝液Aを用いて10-5〜10-9Mに種々濃度に希
釈したUTI検体80μlを加え、更に緩衝液Aを24
0μlまたは290μlを加えた。この混合液を25℃
で10分間反応させた後、各反応液に4mMに25%D
MSO/蒸留水に溶解したS−2484を100μlま
たは50μlを加え、405nmの吸光度を経時的に測
定した。
【0133】プラスミンは、緩衝液Bで8×10-8Mに
希釈した。希釈したプラスミン液40μlに、緩衝液A
で10-5〜10-8Mに種々濃度に希釈したUTI検体8
0μlを加え、更に緩衝液Aを180μl加えた。25
℃で10分間反応後、各反応液に5mMまたは2.5m
Mに蒸留水に溶解したS−2251を100μl加え、
405nmの吸光度を経時的に測定した。
【0134】参考例4 Intact-rUTI発現株の作成お
よびその性状 実施例1(b)で得られたpHH310を、選択マーカーであ
るHIS4上の制限酵素StuIサイトで線状化した後、ピキア
属酵母 Pichia pastoris GTS115株を、その染色体のhi
s4遺伝子座を標的にスフェロプラスト法(Cregg J. T.
等, Mol. Cell.Bio1. 5, p3376-3385, 1985)に従った
挿入型組み込みにより形質転換した。
【0135】得られた形質転換体を5ml のYNB 培地(0.7
% Yeast Nitrogen Base w/o AminoAcids, 2% dextrose)
に植菌し、30℃で2日間培養した。これを5ml 2 ×YP-
2%グリセロール培地(2% Yeast Extract, 4% Peptone, 2
% glycerol) に10% 植菌後、30℃で2日間培養し菌体を
増殖させた。これを遠心し(2000rpm, 5分, 常温)、得
られた菌体を5ml のYP-2% メタノール培地(1% Yeast Ex
tract, 2% Peptone,2% methanol) に懸濁し、更に30℃
で5日間培養した。培養液を遠心し(10000rpm, 5分, 4
℃) 、培養上清を回収した。得られた培養上清につい
て、トリプシン阻害活性及びヒト好中球エラスターゼ阻
害活性を参考例2、3記載の方法に従って測定した。そ
の結果、該上清は顕著なトリプシン阻害活性を示すと共
に、わずかながらヒト好中球エラスターゼ阻害活性を示
した。
【0136】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:153 配列の型: 核酸 鎖の数 : 二本鎖 トポロジー: 直鎖状 配列の種類: 他の核酸 配列 TGTCAACTGG GCTACTCGGC CGGTCCCTGC ATCGCTTTCT TTCCTAGGTA TTTCTATAAT 60 GGTACATCCA TGGCCTGTCA GACTTTCGTG TACGGCGGAT GCATGGGCAA CGGTAACAAC 120 TTCGTCACAG AAAAGGAGTG TCTGCAGACC TGC 153
【0137】配列番号:2 配列の長さ:165 配列の型: 核酸 鎖の数 : 二本鎖 トポロジー: 直鎖状 配列の種類: 他の核酸 配列 AGACCAGATT TCTGTCAACT GGGCTACTCG GCCGGTCCCT GCATCGCTTT CTTTCCTAGG 60 TATTTCTATA ATGGTACATC CATGGCCTGT CAGACTTTCG TGTACGGCGG ATGCATGGGC 120 AACGGTAACA ACTTCGTCAC AGAAAAGGAG TGTCTGCAGA CCTGC 165
【0138】配列番号:3 配列の長さ:372 配列の型: 核酸 鎖の数 : 二本鎖 トポロジー: 直鎖状 配列の種類: 他の核酸 配列 AGACCAGATT TCTGTCAACT GGGCTACTCG GCCGGTCCCT GCATCGCTTT CTTTCCTAGG 60 TATTTCTATA ATGGTACATC CATGGCCTGT CAGACTTTCG TGTACGGCGG ATGCATGGGC 120 AACGGTAACA ACTTCGTCAC AGAAAAGGAG TGTCTGCAGA CCTGCCGAAC TGTGGCGGCA 180 TGCAATCTCC CCATAGTCCG GGGCCCCTGC CGAGCCTTCA TCCAGCTCTG GGCATTTGAT 240 GCTGTCAAGG GGAAGTGCGT CCTCTTCCCC TACGGGGGCT GCCAGGGCAA CGGGAACAAG 270 TTCTACTCAG AGAAGGAGTG CAGAGAGTAC TGCGGTGTCC CTGGTGATGG TGATGAGGAG 300 CTGCTGCGCT TC 372
【0139】配列番号:4 配列の長さ:435 配列の型: 核酸 鎖の数 : 二本鎖 トポロジー: 直鎖状 配列の種類: 他の核酸 配列 GCTGTGCTAC CCCAAGAAGA GGAAGGATCA GGGGGTGGCC AACTGGTAAC CGAAGTCACC 60 AAGAGACCAG ATTTCTGTCA ACTGGGCTAC TCGGCCGGTC CCTGCATCGC TTTCTTTCCT 120 AGGTATTTCT ATAATGGTAC ATCCATGGCC TGTCAGACTT TCGTGTACGG CGGATGCATG 180 GGCAACGGTA ACAACTTCGT CACAGAAAAG GAGTGTCTGC AGACCTGCCG AACTGTGGCG 240 GCATGCAATC TCCCCATAGT CCGGGGCCCC TGCCGAGCCT TCATCCAGCT CTGGGCATTT 300 GATGCTGTCA AGGGGAAGTG CGTCCTCTTC CCCTACGGGG GCTGCCAGGG CAACGGGAAC 360 AAGTTCTACT CAGAGAAGGA GTGCAGAGAG TACTGCGGTG TCCCTGGTGA TGGTGATGAG 420 GAGCTGCTGC GCTTC 435
【0140】配列番号:5 配列の長さ: 63 配列の型: 核酸 鎖の数 : 二本鎖 トポロジー: 直鎖状 配列の種類: 他の核酸 配列 GCTGTGCTAC CCCAAGAAGA GGAAGGATCA GGGGGTGGCC AACTGGTAAC CGAAGTCACC 60 AAG 63
【0141】配列番号:6 配列の長さ:12 配列の型: 核酸 鎖の数 : 二本鎖 トポロジー: 直鎖状 配列の種類: 他の核酸 配列 AGACCAGATT TC 12
【0142】配列番号:7 配列の長さ:204 配列の型: 核酸 鎖の数 : 二本鎖 トポロジー: 直鎖状 配列の種類: 他の核酸 配列 ACTGTGGCGG CATGCAATCT CCCCATAGTC CGGGGCCCCT GCCGAGCCTT CATCCAGCTC 60 TGGGCATTTG ATGCTGTCAA GGGGAAGTGC GTCCTCTTCC CCTACGGGGG CTGCCAGGGC 120 AACGGGAACA AGTTCTACTC AGAGAAGGAG TGCAGAGAGT ACTGCGGTGT CCCTGGTGAT 180 GGTGATGAGG AGCTGCTGCG CTTC 204
【0143】配列番号:8 配列の長さ:75 配列の型: 核酸 鎖の数 : 二本鎖 トポロジー: 直鎖状 配列の種類: 他の核酸 配列 GCTGTGCTAC CCCAAGAAGA GGAAGGATCA GGGGGTGGCC AACTGGTAAC CGAAGTCACC 60 AAGAGACCAG ATTTC 75
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の新規プロテアーゼインヒビターの一次
構造の模式図を天然型UTIと対比して示した図であ
る。
【図2】尿中より単離されたUTIの一次構造を示す図
である( Watcher, E and Hochstrasser, K., Hoppe-Se
yler's Z. Physiol. Chem., 362, p1351, 1981) 。
【図3】UTIのKunitz型ドメイン1およびKu
nitz型ドメイン2の一次構造を示す図である。
【図4】クローニングしたUTIcDNAの塩基配列
(−20〜240)を示す図である。塩基番号は、J.F.
Kaumeyer等,Nucl. Acids Res. 14(20), p7839-7850 (1
986)の報告に従った。
【図5】クローニングしたUTIcDNAの塩基配列
(241〜540)を示す図である。塩基番号は、J.F.
Kaumeyer等, Nucl. Acids Res. 14(20), p7839-7850 (1
986)の報告に従った。なお、図中の制限酵素サイトは、
各実施例で使用したものを示した。
【図6】クローニングしたUTIcDNAの塩基配列
(541〜780)を示す図である。塩基番号は、J.F.
Kaumeyer等, Nucl. Acids Res. 14(20), p7839-7850 (1
986)の報告に従った。UTIのcDNAから求めたアミ
ノ酸配列を下段に示す。なお、図中の制限酵素サイト
は、各実施例で使用したものを示した。
【図7】クローニングしたUTIcDNAの塩基配列
(781〜1020)を示す図である。塩基番号は、J.
F.Kaumeyer等, Nucl. Acids Res. 14(20), p7839-7850
(1986)の報告に従った。UTIのcDNAから求めたア
ミノ酸配列を下段に示す。なお、図中の制限酵素サイト
は、各実施例で使用したものを示した。
【図8】クローニングしたUTIcDNAの塩基配列
(1021〜1235)を示す図である。塩基番号は、
J.F.Kaumeyer等, Nucl. Acids Res. 14(20), p7839-785
0(1986)の報告に従った。UTIのcDNAから求めた
アミノ酸配列を下段に示す。なお、図中の制限酵素サイ
トは、各実施例で使用したものを示した。
【図9】UTIのN末端をコードする領域、C末端をコ
ードする領域の改変塩基配列を示す図である。
【図10】#7/BbeI−ERIの構築工程を示す図
である。
【図11】#7/BbeI−ERIからpUTI−Nの
構築工程を示す図である。
【図12】#7/BbeI−ERIからpUTI−Cの
構築工程を示す図である。
【図13】pUTI N−Cの構築工程を示す図であ
る。
【図14】pUTI N−C/ERIを構築する工程を
示す図である。
【図15】pUTI N−CおよびpAO807Nの制
限酵素地図、およびpHH310の構築工程を示す図で
ある。
【図16】SUC2シグナルの塩基配列を示す図であ
る。
【図17】UTIのKunitz型ドメイン1のC末端
をコードする領域を補う合成DNAの塩基配列を示す図
である。
【図18】UTIのKunitz型ドメイン2のN末端
をコードする領域を補う合成DNAの塩基配列を示す図
である。
【図19】UTIのN末ペプチド付加Kunitz型ド
メイン1およびKunitz型ドメイン2の遺伝子ユニ
ットを示す図である。図中、各Kunitz型ドメイン
の領域はUTIのアミノ酸番号で示した。
【図20】pHH305の構築工程およびその制限酵素
地図を示す図である。
【図21】pHH313の制限酵素地図を示す図であ
る。
【図22】pHH306の構築工程およびその制限酵素
地図を示す図である。
【図23】pHH314の制限酵素地図を示す図であ
る。
【図24】mutagenic primerに用いた領域を示す図であ
る。
【図25】Kunitz型ドメイン1のPstIサイトから
Kunitz型ドメイン2のSphIサイト間に相当する合
成DNA(実施例1(1)(d)(ii)参照)の塩基配
列を示す図である。
【図26】図1(1) に示すEp1−UTIのアミノ酸配
列(一文字表記)及びそれをコードする塩基配列を示す
図である。
【図27】Ep1−d21−RPDFのN末端合成DN
A(実施例1(1)(d)(ii)参照)の塩基配列を示
す図である。□で囲んだ部分は新たに制限酵素サイトを
設けるために置換した塩基を示す(但し、アミノ酸配列
の変化なし)。
【図28】Ep1−d21−RPDF/pUCの構築工
程およびその制限酵素地図を示す図である。
【図29】E52Q,Q55V置換を行うための合成D
NAの塩基配列(実施例1(1)(d)(ii)参照)の
塩基配列を示す図である。□で囲んだ部分は新たに制限
酵素サイトを設けるために置換した塩基を示す(但し、
アミノ酸配列の変化なし)。
【図30】pHH337に担持された分泌発現用Ep1
−d21−RPDF−52−55遺伝子の塩基配列及び
それによってコードされるアミノ酸配列を示す図であ
る。
【図31】pHH337の構築工程およびその制限酵素
地図を示す図である。
【図32】pHH340の構築工程およびその制限酵素
地図を示す図である。
【図33】Ep1−UTI−RPDF−52−55/p
UCのN末端領域の合成DNAの塩基配列(実施例2
(1)参照)。□で囲んだ部分は新たに制限酵素サイト
を設けるために置換した塩基を示す(但し、アミノ酸配
列の変化なし)。
【図34】pHH354に担持された分泌発現用Ep1
−UTI−RPDF−52−55遺伝子の塩基配列及び
それによってコードされるアミノ酸配列を示す図であ
る。
【図35】pHH354の構築工程およびその制限酵素
地図を示す図である。
【図36】pHH355の構築工程およびその制限酵素
地図を示す図である。
【図37】Ep7−d21−RPDF−52−55/p
UCを作製するための合成DNAの塩基配列を示す図で
ある。□で囲んだ部分は新たに制限酵素サイトを設ける
ために置換した塩基を示す(但し、アミノ酸配列の変化
なし)。
【図38】pHH338に担持された分泌発現用Ep7
−d21−RPDF−52−55遺伝子の塩基配列及び
それによってコードされるアミノ酸配列を示す図であ
る。
【図39】pHH338の構築工程およびその制限酵素
地図を示す図である。
【図40】pHH341の構築工程およびその制限酵素
地図を示す図である。
【図41】各種プロテアーゼインヒビターのクロラミン
T酸化感受性を示す図である。横軸はクロラミンT処理
濃度、縦軸はクロラミンT酸化後に残存するエラスター
ゼに対する阻害活性を示す(クロラミンT非酸化インヒ
ビターの阻害率に対する、クロラミンT酸化インヒビタ
ーの阻害率の割合%で示す。)
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07H 21/04 A61K 37/64 ABJ C12N 1/19 ACD 15/09 ZNA ADD C12P 21/02 9162−4B C12N 15/00 ZNAA //(C12N 1/19 C12R 1:84) (C12P 21/02 C12R 1:84) (72)発明者 塚田 稔 大阪府枚方市招提大谷2丁目25番1号 株 式会社ミドリ十字中央研究所内 (72)発明者 新留 正和 大阪府枚方市招提大谷2丁目25番1号 株 式会社ミドリ十字中央研究所内 (72)発明者 土山 博美 大阪府枚方市招提大谷2丁目25番1号 株 式会社ミドリ十字中央研究所内 (72)発明者 松井 智彦 大阪府枚方市招提大谷2丁目25番1号 株 式会社ミドリ十字中央研究所内 (72)発明者 丸山 智之 大阪府枚方市招提大谷2丁目25番1号 株 式会社ミドリ十字中央研究所内

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも下記式Iのアミノ酸配列を有
    することを特徴とする新規プロテアーゼインヒビター。 【化1】
  2. 【請求項2】 少なくとも下記式IIのアミノ酸配列を有
    することを特徴とする請求項1記載の新規プロテアーゼ
    インヒビター。 【化2】
  3. 【請求項3】 式Iまたは式II中のアミノ酸配列 Ile-A
    la-Pheが、 Val-Ala-Metに置換されたものである請求項
    1または2に記載の新規プロテアーゼインヒビター。
  4. 【請求項4】 下記式IVのアミノ酸配列をC末端側領域
    に有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記
    載の新規プロテアーゼインヒビター。 【化3】
  5. 【請求項5】 下記式VIIIのアミノ酸配列を有すること
    を特徴とする請求項1または2記載の新規プロテアーゼ
    インヒビター。 【化4】
  6. 【請求項6】 下記式IXのアミノ酸配列を有することを
    特徴とする請求項3記載の新規プロテアーゼインヒビタ
    ー。 【化5】
  7. 【請求項7】 下記式III のアミノ酸配列をN末端側に
    有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載
    の新規プロテアーゼインヒビター。 【化6】
  8. 【請求項8】 下記式VII のアミノ酸配列を有すること
    を特徴とする請求項1記載の新規プロテアーゼインヒビ
    ター。 【化7】
  9. 【請求項9】 天然型尿性トリプシンインヒビターに比
    して好中球エラスターゼに対する阻害活性が増強されて
    なる請求項1〜8のいずれかに記載の新規プロテアーゼ
    インヒビター。
  10. 【請求項10】 トリプシンに対する阻害活性を有し、
    かつ天然型尿性トリプシンインヒビターに比して好中球
    エラスターゼに対する阻害活性が増強されてなる請求項
    1〜8記載の新規プロテアーゼインヒビター。
  11. 【請求項11】 請求項1〜10のいずれかに記載の新
    規プロテアーゼインヒビターをコードする塩基配列を有
    することを特徴とするDNA。
  12. 【請求項12】 請求項11記載のDNAを含有するこ
    とを特徴とするベクター。
  13. 【請求項13】 請求項12記載のベクターで形質転換
    された形質転換体。
  14. 【請求項14】 請求項13記載の形質転換体を培養し
    て、請求項1〜10のいずれかに記載の新規プロテアー
    ゼインヒビターを産生させ、得られる培養物から当該プ
    ロテアーゼインヒビターを採取することを特徴とする請
    求項1〜9のいずれかに記載の新規プロテアーゼインヒ
    ビターの製造方法。
  15. 【請求項15】 請求項1〜6記載のいずれかの新規プ
    ロテアーゼインヒビターをコードする塩基配列の5’末
    端側に、下記式(III )のアミノ酸配列をコードする塩
    基配列が結合されたベクターにて形質転換された形質転
    換体を培養することを特徴とするプロテアーゼインヒビ
    ターの発現増強方法。 【化8】
  16. 【請求項16】 請求項1〜10記載の新規プロテアー
    ゼインヒビターを有効成分とするエラスターゼが関与す
    る疾患の治療剤。
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