JPH09111412A - 高強度・高降伏比・低延性非調質鋼 - Google Patents

高強度・高降伏比・低延性非調質鋼

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JPH09111412A
JPH09111412A JP27127695A JP27127695A JPH09111412A JP H09111412 A JPH09111412 A JP H09111412A JP 27127695 A JP27127695 A JP 27127695A JP 27127695 A JP27127695 A JP 27127695A JP H09111412 A JPH09111412 A JP H09111412A
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JP
Japan
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steel
connecting rod
heat treated
strength
content
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Application number
JP27127695A
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English (en)
Inventor
Mitsuo Uno
光男 宇野
Masaki Sakamoto
雅紀 坂本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高い強度と降伏比を有し、低延性で常温分割加
工が可能でその分割破面がフラットな脆性破面を呈す
る、コンロッド用鋼として好適な鋼の提供。 【解決手段】C:0.20〜0.65%、Si:0.1
〜1.5%、Mn:0.3〜2.0%、P:0.02〜
0.15%、S:0.01〜0.10%、Cr:0.0
2〜1.50%、V:0.05〜0.50%、Nb:0
〜0.10、Ti:0〜0.20%、Al:0〜0.1
00%、N:0〜0.02%を含有し、残部はFeと不
可避不純物からなり、Si(%)+2V(%)+5P
(%)−0.8≧0及びC(%)+Si(%)/10+
Mn(%)/5+5Cr(%)/22+1.65V
(%)−5S(%)/7−0.8≧0であることを特徴
とする高強度・高降伏比・低延性非調質鋼。Cu、N
i、Mo、B、Pbのうちの1種以上を含有していても
良い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高強度・高降伏比
・低延性非調質鋼に関し、より詳しくは、座屈強度に優
れ、高い強度が要求されるものの延性は必要とせず、む
しろ常温での冷間分割加工が可能でその破断面がフラッ
トな脆性破面を呈し、自動車エンジンなどのコネクティ
ングロッドやコネクティングロッドキャップ用の材料と
して好適な高強度・高降伏比・低延性非調質鋼に関す
る。
【0002】
【従来の技術】自動車エンジンなどの部品である図1に
示すコネクティングロッド(通称コンロッド)の本体1
及びコネクティングロッドキャプ(通称コンロッドキャ
ップ)2は、従来、別の工程で熱間鍛造された後で焼入
れ焼戻しの調質処理を施され、次いで、機械加工による
ボルト穴の加工と仕上げ整形加工を受け、その後でボル
ト3によって形状の複雑なクランクシャフトに結合・組
み立てられていた。
【0003】しかしながら、最近、厳しい経済情勢を反
映して、各種自動車部品の製造コスト低減の動きが活発
化しており、この動きはエンジン部品においても例外で
はなくなってきている。
【0004】前記のコネクティングロッド本体1及びコ
ネクティングロッドキャプ2に関しては、製造コスト低
減対策として、両者を熱間鍛造にて一体成形しこれに焼
入れ焼戻しの熱処理を施すか、あるいは熱間鍛造後放冷
し、その後でコネクティングロッド本体1及びコネクテ
ィングロッドキャプ2に分割し、次いでボルト穴の加工
を行うだけで、すなわち接合部(接合面どうし)に対す
る仕上げ整形のための機械加工は施すことなく、ボルト
3でクランクシャフトに結合して組み立てるという方法
が検討されている。
【0005】上記の一体成形したコネクティングロッド
本体1及びコネクティングロッドキャプ2を分割する方
法としては、例えば治具を挿入することによって図1中
に矢印で示した方向に働く力を与えて分割する方法が考
えられる。この方法ではコネクティングロッド本体1及
びコネクティングロッドキャプ2に分割した分割面をフ
ラットにすることが極めて重要となる。
【0006】しかしながら、従来使用されてきた鋼(J
IS規格のS45CやS48C相当鋼など)をそのまま
用いて熱間鍛造で一体成形し、その後常温でコネクティ
ングロッド本体1及びコネクティングロッドキャプ2に
分割すると、分割面がアメやガムを千切ったような所謂
「延性破断面」となってフラットな「脆性破面」が得ら
れず、機械加工による仕上げ整形加工を行わなければな
らないという問題がある。上記の分割を低温(例えば液
体窒素温度)で行えば脆性破壊が生じて容易にフラット
な脆性破面が得られるが、大量の製品が流れる実操業ラ
インにおいて低温状態とすることは技術的に容易ではな
く、更に設備を建設し維持する費用が嵩むため必ずしも
コスト低減には結びつかないといった問題がある。
【0007】一方、熱間鍛造で一体成形した後の熱処理
はコストが嵩むため、熱処理を省略できる新しいタイプ
の鋼に対する要望も生じている。
【0008】熱間圧延や熱間鍛造後に行う熱処理として
の調質処理を省略できる非調質鋼としては、例えば特開
平5−195140号公報に「非調質高強度鋼」が提案
されている。しかし、この公報に記載された非調質鋼
は、連続鋳造時にブルーム表面に生ずる割れを防止した
タイプの高強度非調質鋼である。そのため、上記の提案
鋼をコネクティングロッド本体1及びコネクティングロ
ッドキャプ2用鋼として用いた場合、所望の強度は得ら
れるものの、前記した一体成形した後でコネクティング
ロッド本体1及びコネクティングロッドキャプ2に常温
で分割する方法に対しては、延性が大き過ぎて脆性破面
が得られない。従って、機械加工による仕上げ整形加工
を行う必要がある。
【0009】一方、本発明者は特願平7−153030
号及び特願平7−185598号の出願で高強度・低延
性非調質鋼を提案した。上記の2つの出願で提案した鋼
は、従来鋼と同等以上の引張強度を有し、且つ熱間鍛造
した一体成形材を前記したような方法によって常温で分
割した時の破面がフラットな脆性破面を呈するものの、
座屈強度という点では必ずしも充分とはいえないもので
あった。すなわち、急発進のような厳しい条件でエンジ
ンを稼働させた場合には、引張強度の割には降伏強度が
それほど大きくない、換言すれば降伏比(降伏強度/引
張強度)が必ずしも高くないために座屈を生じてしまう
こともあった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に
鑑みなされたもので、従来鋼と同等以上の引張強度を有
すると共に高い降伏比を有するために降伏強度(換言す
れば座屈強度)も高く、且つ熱間鍛造した一体成形材を
前記したような方法によって常温で分割した時の破面
が、フラットな脆性破面を呈する高強度・高降伏比・低
延性非調質鋼の提供を課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の課題
を解決するため種々検討を重ねた結果、下記の知見を得
た。
【0012】固溶強化によってフェライトを強化する
Si、析出強化によってフェライトを強化するV及び粒
界脆化を促進するPは、各々単独に添加した場合には鋼
の破壊形態あるいは降伏比に及ぼす影響は小さい。しか
し、適正量のSi、V及びPを同時に添加すれば延性が
大きく低下して鋼の脆性破壊が著しく促進されると共に
降伏比が高まる。
【0013】上記のSi、V及びPの複合添加効果の
発現には、0.1%以上のSi、0.05%以上のV及
び0.02%以上のPを含有し、且つfn1=Si
(%)+2V(%)+5P(%)−0.8の値を0以上
にすることが必要である。
【0014】鋼の化学成分が特定の条件範囲にある
時、上記のfn1≧0を満たせば0.7以上の降伏比が
得られる。更に、降伏比が0.7以上で、且つ常温引張
試験した時の鋼材の伸び値が10%以下の場合には、熱
間鍛造した一体成形材の常温分割面はフラットな脆性破
面となる。
【0015】鋼の化学成分が特定の条件範囲にある
時、非調質鋼の引張強度は下記fn2で整理でき、この
値が0以上の場合に800MPa以上の引張強度が得ら
れる。
【0016】fn2=C(%)+Si(%)/10+M
n(%)/5+5Cr(%)/22+1.65V(%)
−5S(%)/7−0.8 鋼の化学成分を厳密に制御した上で、上記のfn1
≧0と常温引張試験した時の鋼材の伸び値が10%以
下、並びにのfn2≧0の条件を満足できれば、高い
降伏比が得られると共に常温での分割でフラットな脆性
破面となり、且つ高強度が得られる。従って、前記した
新しいプロセスによって所望強度である800MPa以
上の引張強度と560MPa以上の降伏強度を有するコ
ネクティングロッド本体1及びコネクティングロッドキ
ャプ2を製造することができる。
【0017】上記知見に基づく本発明は、下記(1)〜
(4)の高強度・高降伏比・低延性非調質鋼を要旨とす
る。
【0018】(1)重量%で、C:0.20〜0.65
%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.3〜2.0
%、P:0.02〜0.15%、S:0.01〜0.1
0%、Cr:0.02〜1.50%、V:0.05〜
0.50%、Nb:0〜0.10%、Ti:0〜0.2
0%、Al:0〜0.100%、N:0〜0.02%を
含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、且つ前
記したfn1≧0及びfn2≧0であることを特徴とす
る高強度・高降伏比・低延性非調質鋼。
【0019】(2)上記(1)に記載の成分に加えて更
に、重量%で、0.01〜0.2%のCu、0.01〜
0.5%のNi、0.01〜0.50%のMo及び0.
0003〜0.0100%のBのうちの1種以上を含有
し、且つ前記したfn1≧0及びfn2≧0であること
を特徴とする高強度・高降伏比・低延性非調質鋼。
【0020】(3)上記(1)に記載の成分に加えて更
に、重量%で、0.01〜0.30%のPbを含有し、
且つ前記したfn1≧0及びfn2≧0であることを特
徴とする高強度・高降伏比・低延性非調質鋼。
【0021】(4)上記(1)に記載の成分に加えて更
に、重量%で、0.01〜0.2%のCu、0.01〜
0.5%のNi、0.01〜0.50%のMo及び0.
0003〜0.0100%のBのうちの1種以上、並び
に0.01〜0.30%のPbを含有し、且つ前記した
fn1≧0及びfn2≧0であることを特徴とする高強
度・高降伏比・低延性非調質鋼。
【0022】
【発明の実施の形態】以下に、本発明における鋼の化学
組成を上記のように限定する理由について説明する。な
お、「%」は「重量%」を意味する。
【0023】C:Cは鋼に所望の静的強度を付与するの
に必要な元素であるが、反面熱間鍛造性を低下させる元
素でもある。最低限の静的強度(引張強度で800MP
a以上)を得るには、0.20%以上が必要である。一
方、0.65%を超えて含有させると、熱間鍛造性が低
下し、熱間での鍛造時に割れを生じ易くなる。従って、
Cの含有量は、0.20%〜0.65%とした。
【0024】Si:Siは鋼の脱酸を促進するととも
に、フェライト中に固溶してフェライトを強化する作用
がある。更に、後述するP及びVと共に適正量を複合添
加すれば、延性を大きく低下させて脆性破壊を促進する
と共に降伏比を高める効果も有する。
【0025】これらの効果を確実に得るには、Siは
0.1%以上の含有量とする必要がある。しかし、その
含有量が1.5%を超えると熱間鍛造性が低下し、熱間
での鍛造時に割れを生じ易くなる。従って、Siの含有
量を0.1〜1.5%とした。
【0026】Mn:Mnは脱酸に必要であるとともに、
焼入れ性を高めて静的強度を向上させる作用がある。し
かし、その含有量が0.3%未満では所望の効果が得ら
れず、2.0%を超えると熱間鍛造性が劣化するように
なるので、その含有量を0.3〜2.0%とした。
【0027】P:Pは粒界脆化を引き起こし延性を低下
させる作用があるので、前記したような常温での分割方
法でフラットな脆性破面を得るのに有効である。更に、
Si及びVと複合添加すれば降伏比を高める作用も有す
る。これらの効果を確実に得るために、Pは0.02%
以上の含有量とする必要がある。しかし、その含有量が
0.15%を超えると熱間鍛造性が著しく劣化する。従
って、Pの含有量を0.02〜0.15%とした。
【0028】S:Sは粒界脆化を引き起こし延性を低下
させる作用があるので、Pと同様に前記したような常温
での分割方法でフラットな脆性破面を得るのに有効であ
る。また、Sにはボルト穴加工時の切削性を向上させる
作用がある。しかし、その含有量が0.01%未満では
所望の効果が得られず、一方0.10%を超えると熱間
鍛造性が著しく劣化するようになる。従って、Sの含有
量を0.01〜0.10%とした。
【0029】Cr:Crは焼入れ性を向上させるととも
に、静的強度を向上させる効果がある。しかし、その含
有量が0.02%未満では所望の効果が得られず、1.
50%を超えて含有してもその効果は飽和し、コストの
みが上昇し経済性を損うことになるので、その含有量を
0.02〜1.50%とした。
【0030】V:Vは(炭)窒化物を生成して結晶粒を
微細化する効果を有すると共に、前述のSi及びPと複
合添加すれば延性を著しく低下させて脆性破壊を促進す
ると共に降伏比を高める作用がある。しかし、その含有
量が0.05%未満では添加効果に乏しく、一方、0.
50%を超えて含有すると鋼の熱間加工性が低下する。
従って、Vの含有量を0.05〜0.50%とした。
【0031】Nb:Nbは添加しなくても良い。添加す
れば(炭)窒化物を生成して結晶粒を微細化する効果を
有する。この効果を確実に得るには、Nbは0.003
%以上の含有量とすることが望ましい。しかし、0.1
0%を超えて含有すると鋼の熱間加工性が大きく低下す
るようになる。従って、Nbの含有量を0〜0.10%
とした。
【0032】Ti:Tiも添加しなくても良い。添加す
れば(炭)窒化物を生成して結晶粒を微細化する効果を
有する。この効果を確実に得るには、Tiは0.005
%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、0.2
0%を超えて含有すると巨大なTiNが生成して熱間加
工時に割れを生じ易くなる。従って、Ti含有量を0〜
0.20%とした。
【0033】Al:Alは添加しなくても良い。添加す
れば鋼の脱酸の安定化及び均質化を図るとともに、窒化
物を生成して結晶粒を微細化する作用を有する。これら
の効果を確実に得るには、Alは0.005%以上の含
有量とすることが望ましい。しかし、0.100%を超
えて含有すると酸化物系の介在物が著しく増加して、熱
間加工時に割れを生じ易くなる。従って、Alの含有量
を0〜0.100%とした。
【0034】N:Nは含有させなくても良い。含有させ
れば上記Al、Ti及びNbなどと窒化物や炭窒化物を
生成して結晶粒を微細化する作用を有する。又、フリー
の固溶Nには脆性破壊を促進する作用がある。これらの
効果を確実に得るには、Nは0.003%以上の含有量
とすることが望ましい。しかし、0.02%を超えて含
有させることは技術的に困難でありコストアップにつな
がる。従って、Nの含有量を0〜0.02%とした fn1:0.1%以上のSi、0.02%以上のP及び
0.05%以上のVを複合添加した時の、延性を大きく
低下させ且つ降伏比を高める効果は前記fn1で整理で
き、この値が0以上の場合に脆性破壊が促進されると共
に0.7以上の降伏比が安定して得られる。そしてfn
1≧0、且つ常温引張試験した時の鋼材の伸び値が10
%以下の場合に、熱間鍛造した一体成形材の常温分割破
面がフラットな脆性破面となって、前記したような新し
いプロセスによって、所望強度である800MPa以上
の引張強度と560MPa以上の降伏強度を有するコネ
クティングロッド本体及びコネクティングロッドキャプ
を製造することができる。従って、fn1≧0とする。
【0035】fn2:鋼の化学成分を厳密に制御し、且
つ前記fn2の値を0以上とした場合に始めて、コネク
ティングロッド本体及びコネクティングロッドキャプと
して必要な800MPa以上の引張強度を非調質鋼に付
与できる。従って、fn2≧0とする。
【0036】本発明の高強度・高降伏比・低延性非調質
鋼には、上記の成分に加えて、更にCu、Ni、Mo、
Bのうちの1種以上及び/又はPbを含んでいても良
い。これらの合金元素の作用効果と望ましい含有量は下
記のとおりである。
【0037】Cu、Ni、Mo、B:Cu、Ni、Mo
及びBは鋼の焼入れ性を高めて静的強度を向上させる効
果を有する。従って、Cu、Ni、Mo及びBは必要に
応じてその1種以上を添加しても良い。しかし、Cuの
場合には0.01%未満の含有量では所望の効果が得ら
れず、0.2%を超えて含有すると熱間加工性の劣化を
もたらし、熱間圧延時や熱間鍛造時に割れの発生を招
く。一方、Niの場合には、0.01%未満の含有量で
は所望の効果が得られず、0.5%を超えて含有すると
延性と靭性の増加をきたして、フラットな脆性破面が得
られなくなる。又、Moの場合には、0.01%未満の
含有量では所望の効果が得られず、0.50%を超えて
含有させてもその効果は飽和し、コストのみが上昇し経
済性を損うことになる。更に、Bの場合には0.000
3%未満の含有量では所望の効果が得られず、0.01
00%を超えて含有すると焼入れ性向上効果が飽和する
ばかりか、熱間鍛造性が著しく劣化するようになる。従
って、これらの合金元素を1種以上添加する場合には、
Cu:0.01〜0.2%、Ni:0.01〜0.5
%、Mo:0.01〜0.50%及びB:0.0003
〜0.0100%の含有量とするのが良い。
【0038】Pb:Pbはボルト穴加工時の切削性を向
上させる効果を有する。従って、Pbは必要に応じて添
加しても良い。しかし、0.01%未満の含有量では所
望の効果が得られず、0.30%を超えて含有すると熱
間加工性の劣化をもたらし熱間圧延時や熱間鍛造時に割
れの発生を招く。従って、Pbを添加する場合には、
0.01〜0.30%の含有量とするのが良い。
【0039】前記の化学組成を有する鋼は通常の方法で
溶製された後、例えば、通常の方法による熱間での圧延
及び鍛造によって、コネクティングロッド本体1とコネ
クティングロッドキャプ2がつながった一体物に成形さ
れる。その後、コネクティングロッド本体1及びコネク
ティングロッドキャプ2に前記したような方法によって
常温で分割され、次いで、ボルト穴加工を施され、ボル
ト3でクランクシャフトに結合されて組み立てられる。
【0040】なお、本発明鋼を熱間で圧延及び鍛造する
に際して、1230℃を超える温度に加熱すると粒界脆
化により熱間加工性が劣化して割れを生じ易くなる。一
方、1100℃を下回る温度での加熱では、変形抵抗が
大きくなるため金型やロールといった熱間加工工具の寿
命が低下する。従って、熱間で圧延及び鍛造する場合の
加熱温度は1100〜1230℃とすることが好まし
い。
【0041】
【実施例】表1〜4に示す化学組成を有する鋼を通常の
方法により試験炉を用いて真空溶製した。表1、2にお
ける鋼1〜15は本発明鋼であり、表2〜4における鋼
16〜36は成分のいずれかが本発明で規定する含有量
の範囲から外れた比較鋼である。
【0042】次いで、これらの本発明鋼及び比較鋼を1
200℃に加熱し通常の方法によって鋼片となした後、
1150℃に加熱してから1100〜950℃の温度で
直径30mmの丸棒に熱間鍛造し、その後常温まで空冷
した。
【0043】こうして得られた熱間鍛造ままの丸棒から
JIS4号試験片を切り出し、常温で引張試験を行っ
た。更に、常温引張試験後の破面の状態を走査型電子顕
微鏡(SEM)で観察した。
【0044】なお、30mmに熱間鍛造した丸棒の表面
は目視で観察して鍛造割れの有無を確認した。
【0045】常温引張試験結果、破面観察結果及び鍛造
割れ確認結果を表5、6に示す。
【0046】本発明鋼である鋼1〜15にあっては、い
ずれも鍛造割れを生ずることもなく、所望の800MP
a以上の引張強度、560MPa以上の降伏強度、0.
7以上の降伏比及び10%以下の伸びが得られており、
常温引張試験後の破面はすべてフラットな脆性破面であ
った(表5参照)。
【0047】これに対して、成分のいずれかが本発明で
規定する含有量の範囲から外れた比較鋼のうち、C量、
Mn量とfn2の値がそれぞれ規定値から低目に外れた
鋼16、20と34及び35では引張強度が800MP
aに達していない。
【0048】又、C量、Si量、Mn量、P量、S量、
Cu量、Al量、Nb量、Ti量、V量及びPb量がそ
れぞれ規定値に対して高目に外れた鋼17、19、2
1、23、24、25、27、28、29、31及び3
2には熱間での鍛造割れが認められた。
【0049】更に、Si量、P量及びV量とfn1の値
が規定値から低めに外れた鋼18、22、30、33、
35及び36は降伏比が0.7を下回り、且つ常温伸び
が10%を超えるため常温引張試験後の破面はすべて延
性破面である。
【0050】又、Ni量が規定値から高めに外れた鋼2
6は常温伸びが10%を超えるため、常温引張試験後の
破面はすべて延性破面であった。(以上、表6参照)。
【0051】次いで、前記の表1及び表2に記載した本
発明鋼である鋼1、5、10、及び15を素材として通
常の熱間鍛造法によって、コネクティングロッド本体1
とコネクティングロッドキャプ2がつながった一体物を
各々20体ずつ熱間成形した。次いで、前記した方法に
よって常温でコネクティングロッド本体1及びコネクテ
ィングロッドキャプ2への分割テストを行った。この結
果、各鋼とも20体すべてにフラットな脆性破面が得ら
れ、機械加工による仕上げ整形なしで使用できることが
分かった。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
【発明の効果】本発明による高強度・高降伏比・低延性
非調質鋼を用いれば、コネクティングロッド本体及びコ
ネクティングロッドキャプをコストの低い新プロセスで
製造することが可能で、産業上の効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】コネクティングロッドの詳細を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/60 C22C 38/60 // F16C 7/00 F16C 7/00

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.20〜0.65%、S
    i:0.1〜1.5%、Mn:0.3〜2.0%、P:
    0.02〜0.15%、S:0.01〜0.10%、C
    r:0.02〜1.50%、V:0.05〜0.50
    %、Nb:0〜0.10%、Ti:0〜0.20%、A
    l:0〜0.100%、N:0〜0.02%を含有し、
    残部はFe及び不可避不純物からなり、且つfn1≧0
    及びfn2≧0であることを特徴とする高強度・高降伏
    比・低延性非調質鋼。但し、 fn1=Si(%)+2V(%)+5P(%)−0.
    8、 fn2=C(%)+Si(%)/10+Mn(%)/5
    +5Cr(%)/22+1.65V(%)−5S(%)
    /7−0.8
  2. 【請求項2】請求項1に記載の成分に加えて更に、重量
    %で、0.01〜0.2%のCu、0.01〜0.5%
    のNi、0.01〜0.50%のMo及び0.0003
    〜0.0100%のBのうちの1種以上を含有し、且つ
    fn1≧0及びfn2≧0であることを特徴とする高強
    度・高降伏比・低延性非調質鋼。但し、 fn1=Si(%)+2V(%)+5P(%)−0.
    8、 fn2=C(%)+Si(%)/10+Mn(%)/5
    +5Cr(%)/22+1.65V(%)−5S(%)
    /7−0.8
  3. 【請求項3】請求項1に記載の成分に加えて更に、重量
    %で、0.01〜0.30%のPbを含有し、且つfn
    1≧0及びfn2≧0であることを特徴とする高強度・
    高降伏比・低延性非調質鋼。但し、 fn1=Si(%)+2V(%)+5P(%)−0.
    8、 fn2=C(%)+Si(%)/10+Mn(%)/5
    +5Cr(%)/22+1.65V(%)−5S(%)
    /7−0.8
  4. 【請求項4】請求項1に記載の成分に加えて更に、重量
    %で、0.01〜0.2%のCu、0.01〜0.5%
    のNi、0.01〜0.50%のMo及び0.0003
    〜0.0100%のBのうちの1種以上、並びに0.0
    1〜0.30%のPbを含有し、且つfn1≧0及びf
    n2≧0であることを特徴とする高強度・高降伏比・低
    延性非調質鋼。但し、 fn1=Si(%)+2V(%)+5P(%)−0.
    8、 fn2=C(%)+Si(%)/10+Mn(%)/5
    +5Cr(%)/22+1.65V(%)−5S(%)
    /7−0.8
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