JPH09108807A - 耐溶損性及び保温性に優れた圧力鋳造用スリーブ - Google Patents
耐溶損性及び保温性に優れた圧力鋳造用スリーブInfo
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- JPH09108807A JPH09108807A JP27442095A JP27442095A JPH09108807A JP H09108807 A JPH09108807 A JP H09108807A JP 27442095 A JP27442095 A JP 27442095A JP 27442095 A JP27442095 A JP 27442095A JP H09108807 A JPH09108807 A JP H09108807A
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- Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 Ti合金等に比較して安価な鋼材を圧力鋳造
用スリーブの母材として採用することを前提にして、し
かもCVD等の特殊な方法を採用しなくても、高い耐溶
損性を発揮すると共に、保温性にも優れる圧力鋳造用ス
リーブを提供する。 【解決手段】 非鉄金属の圧力鋳造に用いられる円筒状
のスリーブであって、少なくとも溶湯と接触する内周面
が、Crを10質量%以上含有する合金鋼からなること
に特徴を有する。従って、上記スリーブ全体を上記合金
鋼から構成することは勿論のこと、スリーブを外周側部
材と内周側部材に分け、外周側には従来の熱間工具鋼を
用い、内周側に上記合金鋼を採用することも本発明の範
囲に含まれる。また、少なくとも溶湯と接触する内周面
に、Nを1質量%以上含有させるか、CrNを形成すれ
ば、一層優れた耐溶損性が得られる。
用スリーブの母材として採用することを前提にして、し
かもCVD等の特殊な方法を採用しなくても、高い耐溶
損性を発揮すると共に、保温性にも優れる圧力鋳造用ス
リーブを提供する。 【解決手段】 非鉄金属の圧力鋳造に用いられる円筒状
のスリーブであって、少なくとも溶湯と接触する内周面
が、Crを10質量%以上含有する合金鋼からなること
に特徴を有する。従って、上記スリーブ全体を上記合金
鋼から構成することは勿論のこと、スリーブを外周側部
材と内周側部材に分け、外周側には従来の熱間工具鋼を
用い、内周側に上記合金鋼を採用することも本発明の範
囲に含まれる。また、少なくとも溶湯と接触する内周面
に、Nを1質量%以上含有させるか、CrNを形成すれ
ば、一層優れた耐溶損性が得られる。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非鉄金属の圧力鋳
造に用いられ、優れた耐溶損性及び耐保温性を発揮する
圧力鋳造用スリーブに関するものである。また、スリー
ブ以外でも、例えばプランジャーチップ,中子ピンや湯
口等の様に、溶融金属と接触する各種ダイカスト用部材
に適用することができる。
造に用いられ、優れた耐溶損性及び耐保温性を発揮する
圧力鋳造用スリーブに関するものである。また、スリー
ブ以外でも、例えばプランジャーチップ,中子ピンや湯
口等の様に、溶融金属と接触する各種ダイカスト用部材
に適用することができる。
【0002】
【従来の技術】従来圧力鋳造用スリーブには、SKD6
1等の熱間金型用合金工具鋼(熱間工具鋼)が用いられ
ており、溶湯との接触による溶損の防止を目的として、
窒化処理等の表面硬化処理を施すことが一般的である。
上記表面硬化処理によって母材表面には、Nが固溶した
N拡散層や、Fe−N化合物層(Fe4N,Fe3N,Fe2.5N,Fe2
N 等)が形成される。これらの表面層は高い硬度は有す
るものの、耐溶損性に関しては不十分であることから、
種々の改善技術が提案されている。
1等の熱間金型用合金工具鋼(熱間工具鋼)が用いられ
ており、溶湯との接触による溶損の防止を目的として、
窒化処理等の表面硬化処理を施すことが一般的である。
上記表面硬化処理によって母材表面には、Nが固溶した
N拡散層や、Fe−N化合物層(Fe4N,Fe3N,Fe2.5N,Fe2
N 等)が形成される。これらの表面層は高い硬度は有す
るものの、耐溶損性に関しては不十分であることから、
種々の改善技術が提案されている。
【0003】例えば、特開平3−71963号公報に
は、表面に、TiNやTiCN等のセラミックス皮膜を
CVDにより形成する方法が提案されている。しかしな
がら、上記セラミックス皮膜の熱膨張率は、母材である
上記工具鋼の熱膨張率と大幅に異なり、圧力鋳造用スリ
ーブが熱サイクル下で使用される為、容易に剥離してし
まうという問題を有していた。
は、表面に、TiNやTiCN等のセラミックス皮膜を
CVDにより形成する方法が提案されている。しかしな
がら、上記セラミックス皮膜の熱膨張率は、母材である
上記工具鋼の熱膨張率と大幅に異なり、圧力鋳造用スリ
ーブが熱サイクル下で使用される為、容易に剥離してし
まうという問題を有していた。
【0004】そこで上記セラミックス皮膜の密着性を向
上することを目的として、母材に窒化処理を行った後
で、上記セラミックス皮膜を形成する方法が提案されて
いる(特開平5−98422)。しかしながらこの方法
でも、まだ密着性は十分ではなく、しかも、上記セラミ
ックス皮膜をスリーブ内周面に形成する方法として、C
VD等の特殊な方法に頼らざるを得ないことから、コス
ト的にも不利である。
上することを目的として、母材に窒化処理を行った後
で、上記セラミックス皮膜を形成する方法が提案されて
いる(特開平5−98422)。しかしながらこの方法
でも、まだ密着性は十分ではなく、しかも、上記セラミ
ックス皮膜をスリーブ内周面に形成する方法として、C
VD等の特殊な方法に頼らざるを得ないことから、コス
ト的にも不利である。
【0005】また、溶湯と接触する上記圧力鋳造用スリ
ーブに要求される特性としては、溶湯の温度低下を可及
的に抑制するという観点から、保温性に優れていること
も重要である。そこで、熱伝導率が大きく保温性に乏し
いSKD61等の工具鋼に代わり、熱伝導率が小さく保
温性に優れるTi合金の適用が提案されており(特開平
4−224069)、その他にも、Ti合金とセラミッ
クスのサーメット(特開平2−280953,特開平4
−224067,特開平4−224068)や、サイア
ロン(特開平5−270924)を用いることも提案さ
れている。
ーブに要求される特性としては、溶湯の温度低下を可及
的に抑制するという観点から、保温性に優れていること
も重要である。そこで、熱伝導率が大きく保温性に乏し
いSKD61等の工具鋼に代わり、熱伝導率が小さく保
温性に優れるTi合金の適用が提案されており(特開平
4−224069)、その他にも、Ti合金とセラミッ
クスのサーメット(特開平2−280953,特開平4
−224067,特開平4−224068)や、サイア
ロン(特開平5−270924)を用いることも提案さ
れている。
【0006】しかしながら、これらの保温性材料はいず
れも非常に高価であり、Al,ZnやSn等の比較的安
価な非鉄金属の圧力鋳造用スリーブに適用することは現
実的とは言えない。
れも非常に高価であり、Al,ZnやSn等の比較的安
価な非鉄金属の圧力鋳造用スリーブに適用することは現
実的とは言えない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に
着目してなされたものであって、Ti合金等に比較して
安価な鋼材を圧力鋳造用スリーブの母材として採用する
ことを前提にして、しかもCVD等の特殊な方法を採用
しなくても、高い耐溶損性を発揮すると共に、保温性に
も優れる圧力鋳造用スリーブを提供しようとするもので
ある。
着目してなされたものであって、Ti合金等に比較して
安価な鋼材を圧力鋳造用スリーブの母材として採用する
ことを前提にして、しかもCVD等の特殊な方法を採用
しなくても、高い耐溶損性を発揮すると共に、保温性に
も優れる圧力鋳造用スリーブを提供しようとするもので
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成した本発
明の圧力鋳造用スリーブとは、非鉄金属の圧力鋳造に用
いられる円筒状のスリーブであって、少なくとも溶湯と
接触する内周面が、Crを10%(質量%、以下同じ)
以上含有する合金鋼からなることに要旨を有するもので
ある。従って、上記スリーブ全体を上記合金鋼から構成
することは勿論のこと、スリーブを外周側部材と内周側
部材に分け、外周側には従来の熱間工具鋼を用い、内周
側に上記合金鋼を採用することも本発明の範囲に含まれ
る。また、少なくとも溶湯と接触する内周面に、Nを1
%以上含有させるか、CrNを形成すれば、一層優れた
耐溶損性が得られる。
明の圧力鋳造用スリーブとは、非鉄金属の圧力鋳造に用
いられる円筒状のスリーブであって、少なくとも溶湯と
接触する内周面が、Crを10%(質量%、以下同じ)
以上含有する合金鋼からなることに要旨を有するもので
ある。従って、上記スリーブ全体を上記合金鋼から構成
することは勿論のこと、スリーブを外周側部材と内周側
部材に分け、外周側には従来の熱間工具鋼を用い、内周
側に上記合金鋼を採用することも本発明の範囲に含まれ
る。また、少なくとも溶湯と接触する内周面に、Nを1
%以上含有させるか、CrNを形成すれば、一層優れた
耐溶損性が得られる。
【0009】さらに、前記合金鋼がオーステナイト相を
主体とするか、Ni,C,Mnよりなる群から選択され
る1種以上を含有し、かつそれらの含有量が下記(1)
式を満足する場合には、耐溶損性に加えて優れた保温性
も得られる。 [Ni]+30×[C]+0.5 ×[Mn]>10 …(1) 但し、[Ni],[C],[Mn]は夫々の元素の含有
率(%)を示す。
主体とするか、Ni,C,Mnよりなる群から選択され
る1種以上を含有し、かつそれらの含有量が下記(1)
式を満足する場合には、耐溶損性に加えて優れた保温性
も得られる。 [Ni]+30×[C]+0.5 ×[Mn]>10 …(1) 但し、[Ni],[C],[Mn]は夫々の元素の含有
率(%)を示す。
【0010】
【発明の実施の形態】圧力鋳造用スリーブとしては、従
来SKD61が主として用いられている。該SKD61
は、Crを5%程度含有しているものの、Al溶湯との
耐溶損性に関しては、Crを含まない鉄基合金に比べて
も耐溶損性の改善効果はほとんど見られない。上記Cr
を含有する合金としては、SUS304,SUS316
等のステンレス鋼が挙げられるが、これまでに、合金中
に含まれるCr量と、Al溶湯との関係について検討さ
れたことはなく、圧力鋳造用スリーブとして用いられた
ことはない。本発明者らは、圧力鋳造用スリーブの耐溶
損性について、鋭意研究を重ねる中で、Crの含有量を
増量していくと、ある点から急激に耐溶損性が向上する
ことを見出した。図1は、750℃のAl−15%Si
溶湯で、浸漬試験を行ったときの溶損量と、スリーブに
用いた合金中のCr含有量の関係を示すグラフである。
Cr含有量:10%を境にして、10%以上では耐溶損
性が大幅に改善されていることが分かる。上記Cr含有
量は、20%以上であるとより好ましい。
来SKD61が主として用いられている。該SKD61
は、Crを5%程度含有しているものの、Al溶湯との
耐溶損性に関しては、Crを含まない鉄基合金に比べて
も耐溶損性の改善効果はほとんど見られない。上記Cr
を含有する合金としては、SUS304,SUS316
等のステンレス鋼が挙げられるが、これまでに、合金中
に含まれるCr量と、Al溶湯との関係について検討さ
れたことはなく、圧力鋳造用スリーブとして用いられた
ことはない。本発明者らは、圧力鋳造用スリーブの耐溶
損性について、鋭意研究を重ねる中で、Crの含有量を
増量していくと、ある点から急激に耐溶損性が向上する
ことを見出した。図1は、750℃のAl−15%Si
溶湯で、浸漬試験を行ったときの溶損量と、スリーブに
用いた合金中のCr含有量の関係を示すグラフである。
Cr含有量:10%を境にして、10%以上では耐溶損
性が大幅に改善されていることが分かる。上記Cr含有
量は、20%以上であるとより好ましい。
【0011】この様にCr含有量が10%以上になる
と、急に耐溶損性が向上する理由については完全に解明
された訳ではないが、高融点金属であるCrが母材中に
大量に添加されることにより、緻密で保護性に優れたC
rの濃化した酸化皮膜が表面に形成され、溶湯中への母
材の溶出が抑制されるものと考えられる。尚、Cr含有
量の上限に関しては、Crが多くなればなる程、母材自
身が脆化する傾向にあるので、実用上は50%以下にす
ることが好ましい。
と、急に耐溶損性が向上する理由については完全に解明
された訳ではないが、高融点金属であるCrが母材中に
大量に添加されることにより、緻密で保護性に優れたC
rの濃化した酸化皮膜が表面に形成され、溶湯中への母
材の溶出が抑制されるものと考えられる。尚、Cr含有
量の上限に関しては、Crが多くなればなる程、母材自
身が脆化する傾向にあるので、実用上は50%以下にす
ることが好ましい。
【0012】本発明のスリーブには、Crを10%以上
含有する合金鋼を用いればよいが、Fe,Co及びNi
からなる群から選択される1種以上の金属を主体とし
て、Crを10%以上含有する合金を適用してもよい。
また、圧力鋳造用スリーブの場合には高温で使用される
ことが多いことから、高温強度等を考慮すれば、Moや
W等の元素を含有させることが望ましい。
含有する合金鋼を用いればよいが、Fe,Co及びNi
からなる群から選択される1種以上の金属を主体とし
て、Crを10%以上含有する合金を適用してもよい。
また、圧力鋳造用スリーブの場合には高温で使用される
ことが多いことから、高温強度等を考慮すれば、Moや
W等の元素を含有させることが望ましい。
【0013】更に、少なくとも溶融Alと接触する内周
面にNを1%以上含有させることにより、溶融Alに対
する耐溶損性を更に向上することができる。合金内に含
有されたNは、母材中のNと結合しやすいCrまたはF
eとの間で化合物を形成するが、SKD61等に比べて
Cr量の多い当該合金では、より多くCrとNの化合物
が形成されていると考えられる。下限値を1%以上に規
定したのは、1%未満では母材中のFeまたはCrと化
合物を形成してもその量が不十分で、窒化相による耐溶
損性の向上効果が十分に発揮されないからであり、N量
が2%以上であるとより好ましい。
面にNを1%以上含有させることにより、溶融Alに対
する耐溶損性を更に向上することができる。合金内に含
有されたNは、母材中のNと結合しやすいCrまたはF
eとの間で化合物を形成するが、SKD61等に比べて
Cr量の多い当該合金では、より多くCrとNの化合物
が形成されていると考えられる。下限値を1%以上に規
定したのは、1%未満では母材中のFeまたはCrと化
合物を形成してもその量が不十分で、窒化相による耐溶
損性の向上効果が十分に発揮されないからであり、N量
が2%以上であるとより好ましい。
【0014】N量の上限は、各合金の成分により異な
る。例えば、Fe−20Cr合金では、Fe及びCrが
Nとの間で化合物及び固溶体を形成するためN量の上限
は20%程度になる。またNi−20Crの場合には、
NはNiに固溶せず、またNとNiは化合物も形成せ
ず、Nと化合物や固溶体を形成するのはCrだけである
ので、N量の上限は5%前後とすることが望ましい。
る。例えば、Fe−20Cr合金では、Fe及びCrが
Nとの間で化合物及び固溶体を形成するためN量の上限
は20%程度になる。またNi−20Crの場合には、
NはNiに固溶せず、またNとNiは化合物も形成せ
ず、Nと化合物や固溶体を形成するのはCrだけである
ので、N量の上限は5%前後とすることが望ましい。
【0015】また、少なくとも溶融Alと接触するスリ
ーブ内周面にCrNを形成すれば、耐溶損性を向上させ
ることが可能である。CrとNの化合物としてはCrN
やCr2 N等があり、またCr中にNが固溶したCr−
N固溶体もあり、CrとNには様々な生成物が存在する
が、本発明者らは上記生成物中ではCrNの結晶構造を
有する化合物が最も耐溶損性に優れていることを突き止
めた。表面におけるCrNの割合は高ければ高い程、耐
溶損性を有する。
ーブ内周面にCrNを形成すれば、耐溶損性を向上させ
ることが可能である。CrとNの化合物としてはCrN
やCr2 N等があり、またCr中にNが固溶したCr−
N固溶体もあり、CrとNには様々な生成物が存在する
が、本発明者らは上記生成物中ではCrNの結晶構造を
有する化合物が最も耐溶損性に優れていることを突き止
めた。表面におけるCrNの割合は高ければ高い程、耐
溶損性を有する。
【0016】表面にCrN層を形成する方法としては、
イオン注入法、窒化法、またはPVD(AIP,スパッ
タリング等)があるが、内面への付き回り性やコスト的
な有利さを考慮すれば、窒化法を採用することが好まし
い。従来のSKD61等の様に、Cr含有量が5%程度
の材料では、上述のいかなる処理法を採用してもCrN
層は形成されにくいが、本発明の様にCr含有量が10
%以上の合金では、窒化法を採用すれば、比較的容易に
CrN層を表面に形成することができる。
イオン注入法、窒化法、またはPVD(AIP,スパッ
タリング等)があるが、内面への付き回り性やコスト的
な有利さを考慮すれば、窒化法を採用することが好まし
い。従来のSKD61等の様に、Cr含有量が5%程度
の材料では、上述のいかなる処理法を採用してもCrN
層は形成されにくいが、本発明の様にCr含有量が10
%以上の合金では、窒化法を採用すれば、比較的容易に
CrN層を表面に形成することができる。
【0017】本発明のスリーブに用いる合金としては、
保温性の向上の観点から、オーステナイト相(γ相)を
主体とすることが望ましい。上記オーステナイト相は、
面心立方の結晶構造であり、従来材のSKD61等の結
晶構造であるマルテンサイト相(α’相)やフェライト
相(α相)と比較すると、熱伝導率は約1/2程度であ
る。従って、オーステナイト相を主体とすれば、良好な
保温性を得ることができる。マルテンサイト相やフェラ
イト相と混合してもよいが、オーステナイト相の増加に
伴い、熱伝導率は低下して保温性は向上することからオ
ーステナイト相の割合は高い程望ましい。
保温性の向上の観点から、オーステナイト相(γ相)を
主体とすることが望ましい。上記オーステナイト相は、
面心立方の結晶構造であり、従来材のSKD61等の結
晶構造であるマルテンサイト相(α’相)やフェライト
相(α相)と比較すると、熱伝導率は約1/2程度であ
る。従って、オーステナイト相を主体とすれば、良好な
保温性を得ることができる。マルテンサイト相やフェラ
イト相と混合してもよいが、オーステナイト相の増加に
伴い、熱伝導率は低下して保温性は向上することからオ
ーステナイト相の割合は高い程望ましい。
【0018】合金中にオーステナイト相を含有させる方
法としては、使用する合金をオーステナイト安定化領域
まで冷却を行った後、その後急冷することによってα相
の生成を抑制してγ相を含んだ合金を得る方法を採用す
れば良い。
法としては、使用する合金をオーステナイト安定化領域
まで冷却を行った後、その後急冷することによってα相
の生成を抑制してγ相を含んだ合金を得る方法を採用す
れば良い。
【0019】本発明で用いる合金鋼として、Ni,C,
Mnよりなる群から選択される1種以上を含有し、かつ
含有量が下記(1)式を満足することが、以下の理由に
より推奨される。 [Ni]+30×[C]+0.5 ×[Mn]>10 …(1)
Mnよりなる群から選択される1種以上を含有し、かつ
含有量が下記(1)式を満足することが、以下の理由に
より推奨される。 [Ni]+30×[C]+0.5 ×[Mn]>10 …(1)
【0020】即ち、上記の3元素は、Fe系合金におい
てγ相安定化元素であり、上式を満たす割合で、Ni,
C,Mnが含有されていれば合金中γ相が得られ、熱伝
導率の小さい合金となるからである。上記の3元素は必
ずしも同時に含有する必要はなく、上記(1)式を満足
する範囲であれば、1種または2種の組合わせでも良
い。上式を満たすような成分の合金鋼としては、SUS
304,SUS306,SUS201等に相当するもの
が挙げられるが、本発明はこれらのステンレス鋼に限定
されるものではない。例えば、できるだけNiの添加を
抑え、MnやC等をできるだけ高めることによりオース
テナイト化を図った合金を採用することが、コスト的に
は推奨される。
てγ相安定化元素であり、上式を満たす割合で、Ni,
C,Mnが含有されていれば合金中γ相が得られ、熱伝
導率の小さい合金となるからである。上記の3元素は必
ずしも同時に含有する必要はなく、上記(1)式を満足
する範囲であれば、1種または2種の組合わせでも良
い。上式を満たすような成分の合金鋼としては、SUS
304,SUS306,SUS201等に相当するもの
が挙げられるが、本発明はこれらのステンレス鋼に限定
されるものではない。例えば、できるだけNiの添加を
抑え、MnやC等をできるだけ高めることによりオース
テナイト化を図った合金を採用することが、コスト的に
は推奨される。
【0021】実際の部材への適用方法としては、Crを
10%以上含有する合金でスリーブ全体を作製すること
も可能である。但し、高温強度の点では熱間工具鋼が有
利であるので、図1に示すように、Crを10%以上含
有する本発明の合金で作製した内周側部材1を、通常の
熱間工具鋼(SKD61等)製の外周側部材2の内部に
挿設するような構成を採用することも望ましい方法の一
つとして例示できる。
10%以上含有する合金でスリーブ全体を作製すること
も可能である。但し、高温強度の点では熱間工具鋼が有
利であるので、図1に示すように、Crを10%以上含
有する本発明の合金で作製した内周側部材1を、通常の
熱間工具鋼(SKD61等)製の外周側部材2の内部に
挿設するような構成を採用することも望ましい方法の一
つとして例示できる。
【0022】以下本発明を実施例によって更に詳細に説
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0023】
【実施例】表1に示す合金を基材として圧力鋳造用スリ
ーブを作製した。尚、表1に示す合金のうち、SUS3
04,SUS316,SUS201は、本発明に係る条
件式(1)を満足する合金であり、SUS403,SK
D11,SKD1は本発明の条件式(1)を満足しない
例である。また、比較材として、窒化処理したSKD6
1を用いた。
ーブを作製した。尚、表1に示す合金のうち、SUS3
04,SUS316,SUS201は、本発明に係る条
件式(1)を満足する合金であり、SUS403,SK
D11,SKD1は本発明の条件式(1)を満足しない
例である。また、比較材として、窒化処理したSKD6
1を用いた。
【0024】また、スリーブNo.6〜10及びNo.
12及びNo.14については、表1に併記する条件で
窒化処理を行った。処理後の表面相の化合物種類、及び
表面のN量も示す。
12及びNo.14については、表1に併記する条件で
窒化処理を行った。処理後の表面相の化合物種類、及び
表面のN量も示す。
【0025】これらのスリーブを用いて、以下の様にし
て耐溶損性及び保温性を調べた。 [耐溶損性]750℃のJIS−AC8C溶湯中に、上
記スリーブを3時間保持して溶損量を測定した。 [保温性]スリーブを、750℃のJIS−AC8C溶
湯をスリーブ内に保持し、凝固に至るまでの時間(分)
で評価した。結果は表1に示す。
て耐溶損性及び保温性を調べた。 [耐溶損性]750℃のJIS−AC8C溶湯中に、上
記スリーブを3時間保持して溶損量を測定した。 [保温性]スリーブを、750℃のJIS−AC8C溶
湯をスリーブ内に保持し、凝固に至るまでの時間(分)
で評価した。結果は表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】No.1〜10は本発明の実施例であり、
いずれも耐溶損性に優れている。また、基材がγ相(オ
ーステナイト相)からなるNo.3〜10は、保温性に
も優れ、更に、窒化処理を施したNo.6〜10は、耐
溶損性が非常に優れていることが分かる。一方、No.
11〜14は、本発明で規定する要件を満足していない
比較例であるが、耐溶損性及び保温性がいずれも低い。
いずれも耐溶損性に優れている。また、基材がγ相(オ
ーステナイト相)からなるNo.3〜10は、保温性に
も優れ、更に、窒化処理を施したNo.6〜10は、耐
溶損性が非常に優れていることが分かる。一方、No.
11〜14は、本発明で規定する要件を満足していない
比較例であるが、耐溶損性及び保温性がいずれも低い。
【0028】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されているの
で、耐溶損性及び保温性が共に優れた圧力鋳造用スリー
ブが提供できることとなった。
で、耐溶損性及び保温性が共に優れた圧力鋳造用スリー
ブが提供できることとなった。
【図1】スリーブの溶損量と、Cr含有量の関係を示す
グラフである。
グラフである。
【図2】本発明に係るスリーブの好ましい構造を示す断
面概略説明図である。
面概略説明図である。
1 内周側部材 2 外周側部材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C23C 14/06 C23C 14/06 A
Claims (5)
- 【請求項1】 非鉄金属の圧力鋳造に用いられる円筒状
のスリーブであって、少なくとも溶湯と接触する内周面
が、Crを10質量%以上含有する合金鋼からなること
を特徴とする耐溶損性に優れた圧力鋳造用スリーブ。 - 【請求項2】 少なくとも溶湯と接触する内周面が、N
を1質量%以上含有する請求項1に記載の圧力鋳造用ス
リーブ。 - 【請求項3】 少なくとも溶湯と接触する内周面に、C
rNが形成されている請求項1または2に記載の圧力鋳
造用スリーブ。 - 【請求項4】 前記合金鋼はオーステナイト相を主体と
する請求項1〜3のいずれかに記載の耐溶損性及び保温
性に優れた圧力鋳造用スリーブ。 - 【請求項5】 前記合金鋼が、Ni,C,Mnよりなる
群から選択される1種以上を含有し、かつそれらの含有
量が下記(1)式を満足する請求項1〜4のいずれかに
記載の圧力鋳造用スリーブ。 [Ni]+30×[C]+0.5 ×[Mn]>10 …(1) 但し、[Ni],[C],[Mn]は夫々の元素の含有
率(質量%)を示す。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27442095A JP3243985B2 (ja) | 1995-10-23 | 1995-10-23 | 耐溶損性及び保温性に優れた圧力鋳造用スリーブ |
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JP27442095A JP3243985B2 (ja) | 1995-10-23 | 1995-10-23 | 耐溶損性及び保温性に優れた圧力鋳造用スリーブ |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH09108807A true JPH09108807A (ja) | 1997-04-28 |
JP3243985B2 JP3243985B2 (ja) | 2002-01-07 |
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JP27442095A Expired - Fee Related JP3243985B2 (ja) | 1995-10-23 | 1995-10-23 | 耐溶損性及び保温性に優れた圧力鋳造用スリーブ |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002035917A (ja) * | 2000-07-26 | 2002-02-05 | Kanakku:Kk | ダイカスト又は射出成形用金型及びその製造方法 |
US7504828B2 (en) | 2006-12-13 | 2009-03-17 | Ge Medical Systems Global Technology Company, Llc | Frequency synthesizer for RF pulses, MRI apparatus and RF pulse generating method |
CN108097920A (zh) * | 2018-01-31 | 2018-06-01 | 宁波海天金属成型设备有限公司 | 钛合金料筒结构 |
CN113732263A (zh) * | 2016-08-31 | 2021-12-03 | 日立金属株式会社 | 压铸用套筒及其制造方法 |
-
1995
- 1995-10-23 JP JP27442095A patent/JP3243985B2/ja not_active Expired - Fee Related
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