JPH08947B2 - 黒化処理性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni合金 - Google Patents
黒化処理性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni合金Info
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- JPH08947B2 JPH08947B2 JP2902092A JP2902092A JPH08947B2 JP H08947 B2 JPH08947 B2 JP H08947B2 JP 2902092 A JP2902092 A JP 2902092A JP 2902092 A JP2902092 A JP 2902092A JP H08947 B2 JPH08947 B2 JP H08947B2
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、黒化処理性に優れた
Fe−Ni合金に係り、カラーブラウン管に使用される好ま
しいシャドウマスク用Fe−Ni系合金系薄板に関するもの
である。
Fe−Ni合金に係り、カラーブラウン管に使用される好ま
しいシャドウマスク用Fe−Ni系合金系薄板に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】近年、カラーテレビの高品位化に伴い、
色ずれの問題に対処できるシャドウマスク用合金とし
て、34〜38wt%のNiを含有するFe−Ni系合金(以下
「従来のFe−Ni系合金」という)が使用されている。こ
の従来のFe−Ni系合金は、シャドウマスク用材料として
従来から使用されてきた低炭素鋼に比べ、熱膨張率が著
しく小さい。従って、従来のFe−Ni系合金によってシャ
ドウマスクを作れば、シャドウマスクが電子ビームによ
り加熱されても、シャドウマスクの熱膨張による色ずれ
の問題は生じ難い。
色ずれの問題に対処できるシャドウマスク用合金とし
て、34〜38wt%のNiを含有するFe−Ni系合金(以下
「従来のFe−Ni系合金」という)が使用されている。こ
の従来のFe−Ni系合金は、シャドウマスク用材料として
従来から使用されてきた低炭素鋼に比べ、熱膨張率が著
しく小さい。従って、従来のFe−Ni系合金によってシャ
ドウマスクを作れば、シャドウマスクが電子ビームによ
り加熱されても、シャドウマスクの熱膨張による色ずれ
の問題は生じ難い。
【0003】シャドウマスク用合金薄板は、通常、下記
工程によって、製造される。即ち連続鋳造法または造塊
法によって、合金塊を調製し、次いで、このように調製
された合金塊に、分塊圧延、熱間圧延および冷間圧延を
施して、合金薄板を製造する。
工程によって、製造される。即ち連続鋳造法または造塊
法によって、合金塊を調製し、次いで、このように調製
された合金塊に、分塊圧延、熱間圧延および冷間圧延を
施して、合金薄板を製造する。
【0004】上述のように製造されたシャドウマスク用
合金薄板は、通常、下記工程によって、シャドウマスク
に加工される。即ちシャドウマスク用合金薄板に、フォ
トエッチングによって、電子ビームの通過孔(以下、単
に「孔」という)を形成し(以下、エッチングによって
穿孔されたままのシャドウマスク用合金薄板を「フラッ
トマスク」という)、次いで、フラットマスクに焼鈍を
施し、その後、焼鈍を施したフラットマスクを、ブラウ
ン管の形状に合うように曲面形状にプレス成形し、それ
をシャドウマスクに組立て、次いでその表面上に黒化処
理を施す。
合金薄板は、通常、下記工程によって、シャドウマスク
に加工される。即ちシャドウマスク用合金薄板に、フォ
トエッチングによって、電子ビームの通過孔(以下、単
に「孔」という)を形成し(以下、エッチングによって
穿孔されたままのシャドウマスク用合金薄板を「フラッ
トマスク」という)、次いで、フラットマスクに焼鈍を
施し、その後、焼鈍を施したフラットマスクを、ブラウ
ン管の形状に合うように曲面形状にプレス成形し、それ
をシャドウマスクに組立て、次いでその表面上に黒化処
理を施す。
【0005】しかしながら、このような従来のFe−Ni系
合金は、従来の低炭素鋼のシャドウマスク材に比べて黒
化処理性に劣るという大きな問題を有しており、この黒
化処理性の問題は、特に黒化処理時に形成される酸化膜
(以下、黒化膜と称す)の黒色度、色調のむら、および
密着性が従来の低炭素鋼に比べて良くないことを意味す
る。そこで斯かる黒化処理性の問題を解決するために、
次の先行技術が知られている。
合金は、従来の低炭素鋼のシャドウマスク材に比べて黒
化処理性に劣るという大きな問題を有しており、この黒
化処理性の問題は、特に黒化処理時に形成される酸化膜
(以下、黒化膜と称す)の黒色度、色調のむら、および
密着性が従来の低炭素鋼に比べて良くないことを意味す
る。そこで斯かる黒化処理性の問題を解決するために、
次の先行技術が知られている。
【0006】即ち、(a)特開昭60−194059号
公報は、Fe−Ni系インバー合金に充分な黒色度を有し且
つ緻密で密着性の良い黒化膜を形成させるようにした熱
処理方法が提案されている。この方法は、水蒸気を適正
量に制御し、且つ前段は酸化力の弱い雰囲気中で、また
後段は酸化力の強い雰囲気中でそれぞれ処理するという
ものである(以下、「先行技術1」という)。
公報は、Fe−Ni系インバー合金に充分な黒色度を有し且
つ緻密で密着性の良い黒化膜を形成させるようにした熱
処理方法が提案されている。この方法は、水蒸気を適正
量に制御し、且つ前段は酸化力の弱い雰囲気中で、また
後段は酸化力の強い雰囲気中でそれぞれ処理するという
ものである(以下、「先行技術1」という)。
【0007】また、(b)特開平3−199384号公
報のものは、Fe−Ni系インバー合金の表面に緻密で均質
で密着性の高い酸化膜を、適正な黒化処理条件(大気中
400〜800℃)に加え、その処理前の焼処理の条
件、すなわち温度400〜800℃、雰囲気中の露点0
℃以上により得ようとするものである(以下、「先行技
術2」という)。
報のものは、Fe−Ni系インバー合金の表面に緻密で均質
で密着性の高い酸化膜を、適正な黒化処理条件(大気中
400〜800℃)に加え、その処理前の焼処理の条
件、すなわち温度400〜800℃、雰囲気中の露点0
℃以上により得ようとするものである(以下、「先行技
術2」という)。
【0008】更に、特開昭61−42838号公報のも
のは、Fe−Ni系インバー合金において、Mnを0.8〜10
%添加し、黒化酸化膜をFe、Ni、Mn、Oからなるスピネ
ル構造とすることにより、熱輻射率を向上させるもので
ある(以下、「先行技術3」という)。
のは、Fe−Ni系インバー合金において、Mnを0.8〜10
%添加し、黒化酸化膜をFe、Ni、Mn、Oからなるスピネ
ル構造とすることにより、熱輻射率を向上させるもので
ある(以下、「先行技術3」という)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記した先行
技術1は、黒色度と密着性を向上させているが、黒化処
理を特定雰囲気で行うため、従来用いられている黒化処
理炉が使用できず、工業上の実用性に乏しく、実際にこ
の技術では、素材の成分によって、黒色度が必ずしも均
一にならず、優れた熱輻射性能を均一に発揮することが
できない。
技術1は、黒色度と密着性を向上させているが、黒化処
理を特定雰囲気で行うため、従来用いられている黒化処
理炉が使用できず、工業上の実用性に乏しく、実際にこ
の技術では、素材の成分によって、黒色度が必ずしも均
一にならず、優れた熱輻射性能を均一に発揮することが
できない。
【0010】また、先行技術2は、緻密で均質で密着性
の良好な黒化膜が形成可能であるが、この技術では、黒
化処理前のアニールでの焼鈍条件(雰囲気、温度)を特
定条件とする必要があり、工業上の実用性に乏しく、実
際にこの技術でも、黒色度が必ずしも均一にならず、優
れた熱輻射性能を均一に発揮することができなかった。
の良好な黒化膜が形成可能であるが、この技術では、黒
化処理前のアニールでの焼鈍条件(雰囲気、温度)を特
定条件とする必要があり、工業上の実用性に乏しく、実
際にこの技術でも、黒色度が必ずしも均一にならず、優
れた熱輻射性能を均一に発揮することができなかった。
【0011】更に、先行技術3は、成分的にMnを0.8〜
10%含有するため、黒化処理性は向上させているが、
酸化し易いMnを多量に含むため、シャドウマスク用素材
の製造工程中における熱処理で強固な酸化膜が形成さ
れ、エッチング性が劣化する。また、Mnは固溶強化元素
であり、この元素を多量に含むことにより、強度が上昇
し、プレス成形性が劣化するといった問題も有してい
る。更には、最近のブラウン管メーカーでの生産性向
上、コスト低減の要望から、黒化処理の低温化、短時間
化といった傾向もみられている。
10%含有するため、黒化処理性は向上させているが、
酸化し易いMnを多量に含むため、シャドウマスク用素材
の製造工程中における熱処理で強固な酸化膜が形成さ
れ、エッチング性が劣化する。また、Mnは固溶強化元素
であり、この元素を多量に含むことにより、強度が上昇
し、プレス成形性が劣化するといった問題も有してい
る。更には、最近のブラウン管メーカーでの生産性向
上、コスト低減の要望から、黒化処理の低温化、短時間
化といった傾向もみられている。
【0012】このような要望に対して、たとえば、先行
技術1では500〜700℃で10分以上の処理に加
え、550〜750℃で10分以上の処理を施すという
もの、先行技術2では、450℃で180min 、550
℃で100min 、600℃で60min という処理を施す
ものであり、先行技術3では、620℃で30min とい
う処理を施すものであって、基本的には500℃以上で
も10min 以上、450℃では180min と、長時間の
処理をせざるを得ないのが現状である。実際、ブラウン
管メーカーでの黒化処理も、前記した処理条件よりも、
より低温化、短時間化を指向しているものの、このよう
な処理条件では、所要の黒化処理性、すなわち、所要の
黒化膜の黒色度、色調のむら品位、および密着性が得ら
れなくなるといった問題も有していた。
技術1では500〜700℃で10分以上の処理に加
え、550〜750℃で10分以上の処理を施すという
もの、先行技術2では、450℃で180min 、550
℃で100min 、600℃で60min という処理を施す
ものであり、先行技術3では、620℃で30min とい
う処理を施すものであって、基本的には500℃以上で
も10min 以上、450℃では180min と、長時間の
処理をせざるを得ないのが現状である。実際、ブラウン
管メーカーでの黒化処理も、前記した処理条件よりも、
より低温化、短時間化を指向しているものの、このよう
な処理条件では、所要の黒化処理性、すなわち、所要の
黒化膜の黒色度、色調のむら品位、および密着性が得ら
れなくなるといった問題も有していた。
【0013】
【課題を解決するため手段】本発明は、上記したような
実情に鑑み、検討を重ねて創案されたものであって、黒
化処理性が優れ、所要の性能を有する黒化膜を従来より
も短時間で形成可能な、シャドウマスク用インバー合金
を提供することに成功したものである。なお、所要の黒
化膜の性能とは優れた黒色度、むらがなく、優れた密着
性、高い熱輻射能を有することを意味するもので、本発
明の要旨は以下の如くである。
実情に鑑み、検討を重ねて創案されたものであって、黒
化処理性が優れ、所要の性能を有する黒化膜を従来より
も短時間で形成可能な、シャドウマスク用インバー合金
を提供することに成功したものである。なお、所要の黒
化膜の性能とは優れた黒色度、むらがなく、優れた密着
性、高い熱輻射能を有することを意味するもので、本発
明の要旨は以下の如くである。
【0014】(1) wt%で、Ni:34〜38%を含有
し、H:1ppm 以下、Mn:0.35%以下、Al:0.02%
以下、Si:0.05%以下、Cr:0.05%以下、Ti:0.0
2%以下であって、〔Ti〕+〔Cr〕+〔Al〕+Si≦0.1
0%であり、 Mo:0.05%以下、 W:0.02%以下、 N
b:0.02%以下、 V:0.02%以下、 Cu:0.02%以下として黒
化処理前における合金板表面への{210}結晶面集積
度(以下単に「{210}結晶面の集積度」という。)
が16%以下であることを特徴とする黒化処理性に優れ
たシャドウマスク用Fe−Ni合金。
し、H:1ppm 以下、Mn:0.35%以下、Al:0.02%
以下、Si:0.05%以下、Cr:0.05%以下、Ti:0.0
2%以下であって、〔Ti〕+〔Cr〕+〔Al〕+Si≦0.1
0%であり、 Mo:0.05%以下、 W:0.02%以下、 N
b:0.02%以下、 V:0.02%以下、 Cu:0.02%以下として黒
化処理前における合金板表面への{210}結晶面集積
度(以下単に「{210}結晶面の集積度」という。)
が16%以下であることを特徴とする黒化処理性に優れ
たシャドウマスク用Fe−Ni合金。
【0015】(2)wt%で、 Ni:34〜38%を含有
し、H:1ppm 以下、Mn:0.35%以下、Al:0.02%
以下、Si:0.05%以下、Cr:0.05%以下、Ti:0.0
2%以下であって、〔Ti〕+〔Cr〕+〔Al〕+〔Si〕≦
0.10%であり、 Mo:0.05%以下、 W:0.02%以下、 N
b:0.02%以下、 V:0.02%以下、 Cu:0.02%以下として、
熱延鋼帯を810〜890℃の範囲内で焼鈍し、以降、
冷延−焼鈍−仕上げ冷延を行い、エッチング後焼鈍する
ことにより、黒化処理前における合金表面への{21
0}結晶面集積度が16%以下であることを特徴とする
前記(1)に記載の黒化処理性に優れたシャドウマスク
用Fe−Ni合金。
し、H:1ppm 以下、Mn:0.35%以下、Al:0.02%
以下、Si:0.05%以下、Cr:0.05%以下、Ti:0.0
2%以下であって、〔Ti〕+〔Cr〕+〔Al〕+〔Si〕≦
0.10%であり、 Mo:0.05%以下、 W:0.02%以下、 N
b:0.02%以下、 V:0.02%以下、 Cu:0.02%以下として、
熱延鋼帯を810〜890℃の範囲内で焼鈍し、以降、
冷延−焼鈍−仕上げ冷延を行い、エッチング後焼鈍する
ことにより、黒化処理前における合金表面への{21
0}結晶面集積度が16%以下であることを特徴とする
前記(1)に記載の黒化処理性に優れたシャドウマスク
用Fe−Ni合金。
【0016】
【作用】上記したような本発明について更に説明する
と、本発明者等は、上述した観点から、黒化処理性に優
れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金薄板を開発すべく、
鋭意研究を重ねた結果、次の知見を得た。即ち、シャド
ウマスク用Fe−Ni系合金薄板の化学成分組成、更には特
定の結晶面の集積度を所定の範囲内に調整することによ
り、黒化処理性が優れ、所要の性能を有する黒化膜を従
来よりも短時間で形成可能なシャドウマスク用インバー
合金を得ることができる。
と、本発明者等は、上述した観点から、黒化処理性に優
れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金薄板を開発すべく、
鋭意研究を重ねた結果、次の知見を得た。即ち、シャド
ウマスク用Fe−Ni系合金薄板の化学成分組成、更には特
定の結晶面の集積度を所定の範囲内に調整することによ
り、黒化処理性が優れ、所要の性能を有する黒化膜を従
来よりも短時間で形成可能なシャドウマスク用インバー
合金を得ることができる。
【0017】即ち、従来よりも、より低温度化、短時間
化を指向した黒化処理の条件においても所定の範囲内の
Hの含有により黒化膜の密着性を高め、所定の範囲内の
Mn、Cr、Al、Ti、Siの含有により黒化膜の黒色度を高め
ることにより熱輻射率を高め、所定値の内のMo、W,N
b、V、Cuの含有により黒化膜の成長速度を高め、また
合金薄板表面への{210}結晶面の集積度を所定の範
囲内とすることにより黒化膜のムラを抑制した、所要の
性能を有する黒化膜の形成を可能とすることができる。
化を指向した黒化処理の条件においても所定の範囲内の
Hの含有により黒化膜の密着性を高め、所定の範囲内の
Mn、Cr、Al、Ti、Siの含有により黒化膜の黒色度を高め
ることにより熱輻射率を高め、所定値の内のMo、W,N
b、V、Cuの含有により黒化膜の成長速度を高め、また
合金薄板表面への{210}結晶面の集積度を所定の範
囲内とすることにより黒化膜のムラを抑制した、所要の
性能を有する黒化膜の形成を可能とすることができる。
【0018】本発明は、上述した知見に基づいてなされ
たものである。即ち以下に、この発明のシャドウマスク
用Fe−Ni系合金薄板の化学組成および{210}結晶面
の集積度を上述した範囲内に限定した理由について述べ
ると以下の如くである。
たものである。即ち以下に、この発明のシャドウマスク
用Fe−Ni系合金薄板の化学組成および{210}結晶面
の集積度を上述した範囲内に限定した理由について述べ
ると以下の如くである。
【0019】(1)ニッケル: 色ずれの発生を防止するために、シャドウマスク用Fe−
Ni系合金薄板に要求される、30〜100℃の温度域に
おける平均熱膨張係数の上限値は、約2.0×10-6/℃
である。前記熱膨張係数は、前記合金薄板のニッケル含
有量に依存する。そして、上述した平均熱膨張係数の条
件を満たすニッケル含有量の範囲は、34〜38%の範
囲内である。従って、ニッケル含有量は、34〜38%
の範囲内に限定すべきである。なお、0.01〜6%のコ
バルトを含有する場合には、上述した平均熱膨張係数の
条件を満たすニッケル含有量の範囲は、30〜40%の
範囲内であるので、ニッケル含有量は、34〜38%の
範囲内であってもよい。
Ni系合金薄板に要求される、30〜100℃の温度域に
おける平均熱膨張係数の上限値は、約2.0×10-6/℃
である。前記熱膨張係数は、前記合金薄板のニッケル含
有量に依存する。そして、上述した平均熱膨張係数の条
件を満たすニッケル含有量の範囲は、34〜38%の範
囲内である。従って、ニッケル含有量は、34〜38%
の範囲内に限定すべきである。なお、0.01〜6%のコ
バルトを含有する場合には、上述した平均熱膨張係数の
条件を満たすニッケル含有量の範囲は、30〜40%の
範囲内であるので、ニッケル含有量は、34〜38%の
範囲内であってもよい。
【0020】(2)水素: 水素は、Fe−Ni系合金の溶製時に不可避的に混入する元
素である。特にFe−34〜38%Niのインバー合金にお
いては従来その溶製時の精錬工程で、CaO 系のスラグを
用い、このCaO は水分を吸収しやすく、メタル側への水
素の供給源となり、不可避的に1ppm を超える水素、場
合によっては4〜5ppm 程度の水素が混入する。この水
素ガスがこの合金に黒化膜が形成される時に、合金内よ
り放出されることによって黒化膜が多孔質となり、この
ため黒化膜の剛性が小さくなり、黒化膜の密着性が劣化
してしまうため有害な元素である。即ち、H量が1ppm
を越えると、上記した黒化膜の密着性の劣化が著しいた
め、1ppm を上限とした。Hによる黒化膜の密着性の劣
化は、従来よりも黒化処理が低温、短時間の条件が採ら
れる場合に形成される黒化膜において特に著しくなって
いた。
素である。特にFe−34〜38%Niのインバー合金にお
いては従来その溶製時の精錬工程で、CaO 系のスラグを
用い、このCaO は水分を吸収しやすく、メタル側への水
素の供給源となり、不可避的に1ppm を超える水素、場
合によっては4〜5ppm 程度の水素が混入する。この水
素ガスがこの合金に黒化膜が形成される時に、合金内よ
り放出されることによって黒化膜が多孔質となり、この
ため黒化膜の剛性が小さくなり、黒化膜の密着性が劣化
してしまうため有害な元素である。即ち、H量が1ppm
を越えると、上記した黒化膜の密着性の劣化が著しいた
め、1ppm を上限とした。Hによる黒化膜の密着性の劣
化は、従来よりも黒化処理が低温、短時間の条件が採ら
れる場合に形成される黒化膜において特に著しくなって
いた。
【0021】以下、本発明における黒化処理条件とは、
上記のような条件でのものを意味するもので、斯かる合
金に形成される黒化膜の熱輻射率を高めるには、まず黒
化膜の黒色度を高める必要があり、このためには、合金
中のMn、Cr、Al、Ti、Si量を特定値内に制御する必要が
ある。
上記のような条件でのものを意味するもので、斯かる合
金に形成される黒化膜の熱輻射率を高めるには、まず黒
化膜の黒色度を高める必要があり、このためには、合金
中のMn、Cr、Al、Ti、Si量を特定値内に制御する必要が
ある。
【0022】Mnは、高い黒色度を有する黒化膜の形成の
ためには有害な元素であり、低減することが好ましい。
Mn量が0.35%を超えると、Mnを含むスピネル酸化物が
生成され、本発明で意図する黒化処理条件で黒色度の優
れた黒化膜が形成ができないため、0.35%を上限とし
た。なお、このMn量は0.35%以下で低ければ、低いほ
ど黒色度は高まり、熱輻射率も高くすることができる。
ためには有害な元素であり、低減することが好ましい。
Mn量が0.35%を超えると、Mnを含むスピネル酸化物が
生成され、本発明で意図する黒化処理条件で黒色度の優
れた黒化膜が形成ができないため、0.35%を上限とし
た。なお、このMn量は0.35%以下で低ければ、低いほ
ど黒色度は高まり、熱輻射率も高くすることができる。
【0023】Crは、本合金中の溶製時に不可避的に混入
する元素であり、このCr量が多くなると黒化膜中にCrの
酸化物が形成され、本発明で意図する黒化処理条件での
黒色度の優れた黒化膜が形成できない。即ちCr量が0.0
5%を超えると、上記した黒化膜の黒色度が劣化するた
め、0.05%を上限とした。
する元素であり、このCr量が多くなると黒化膜中にCrの
酸化物が形成され、本発明で意図する黒化処理条件での
黒色度の優れた黒化膜が形成できない。即ちCr量が0.0
5%を超えると、上記した黒化膜の黒色度が劣化するた
め、0.05%を上限とした。
【0024】Alは、本合金の溶製時に脱酸元素として用
いられるものであるが、0.020%を超えると、Alの酸
化物が形成され、本発明で意図する黒化処理条件での黒
色度に優れた黒化膜が形成できない。従って、Al量の上
限は0.020%と定めた。
いられるものであるが、0.020%を超えると、Alの酸
化物が形成され、本発明で意図する黒化処理条件での黒
色度に優れた黒化膜が形成できない。従って、Al量の上
限は0.020%と定めた。
【0025】Tiは、本合金の溶製時に不可避的に混入す
る元素であり、0.02%を超えると、Tiの酸化物が形成
され、本発明で意図する黒化処理条件で黒色度の優れた
黒化膜が形成できない。従って、Tiの上限は0.02%と
した。
る元素であり、0.02%を超えると、Tiの酸化物が形成
され、本発明で意図する黒化処理条件で黒色度の優れた
黒化膜が形成できない。従って、Tiの上限は0.02%と
した。
【0026】Siは、本合金の溶製時に脱酸元素として用
いられるが、0.05%を超えると、Siの酸化物が形成さ
れ、本発明で意図する黒化処理条件における黒色度の優
れた黒化膜が形成できない。従ってSi量の上限は0.05
%と定めた。
いられるが、0.05%を超えると、Siの酸化物が形成さ
れ、本発明で意図する黒化処理条件における黒色度の優
れた黒化膜が形成できない。従ってSi量の上限は0.05
%と定めた。
【0027】なお、上記したCr、Al、Ti、Siの含有量
は、本発明規定値以下であっても、より低くすることに
より黒化膜の黒色度をより優れたレベルとすることが可
能である。また、黒化膜の黒色度を本発明で意図するレ
ベルとするためには、Cr、Al、Ti、Siの総量制御が重要
である。図1は、黒化膜の黒色度および熱輻射率とMn
量、〔Cr〕+〔Al〕+〔Ti〕+〔Si〕量の関係を示した
ものである。Mn量が0.35%以下で、しかも〔Cr+Al+
Ti+Si〕量が0.10%以下であると本発明で意図する黒
化膜の黒色度および熱輻射率が得られている。即ち、
〔Cr+Al+Ti+Si〕量の上限を0.10%に定めた。
は、本発明規定値以下であっても、より低くすることに
より黒化膜の黒色度をより優れたレベルとすることが可
能である。また、黒化膜の黒色度を本発明で意図するレ
ベルとするためには、Cr、Al、Ti、Siの総量制御が重要
である。図1は、黒化膜の黒色度および熱輻射率とMn
量、〔Cr〕+〔Al〕+〔Ti〕+〔Si〕量の関係を示した
ものである。Mn量が0.35%以下で、しかも〔Cr+Al+
Ti+Si〕量が0.10%以下であると本発明で意図する黒
化膜の黒色度および熱輻射率が得られている。即ち、
〔Cr+Al+Ti+Si〕量の上限を0.10%に定めた。
【0028】さて、本合金の黒化膜の熱輻射率を高める
ためには、黒化膜の黒色度を前記のように高めることに
加えて、所定の膜厚まで黒化膜を成長させねばならな
い。このためには、本発明で意図する黒化処理条件での
黒化膜の成長速度を高める必要がある。
ためには、黒化膜の黒色度を前記のように高めることに
加えて、所定の膜厚まで黒化膜を成長させねばならな
い。このためには、本発明で意図する黒化処理条件での
黒化膜の成長速度を高める必要がある。
【0029】前記のように黒化膜の成長速度を高めるに
は、Mo、W、Nb、V、Cu量の低減が必要である。即ちこ
れらの元素は、本合金を電気炉にて溶製、精錬する際
に、不可避的に混入する元素であって、Mo:0.05%、
W:0.02%、Nb:0.02%、V:0.02%、Cu:0.0
2%の各特定値を超えると黒化膜の成長速度が低くな
り、所定の黒化処理条件下でも十分な膜厚の黒化膜が形
成できない。従って、Mo:0.05%以下、W:0.02%
以下、Nb:0.02%以下、V:0.02%以下、Cu:0.0
2%以下と定めた。
は、Mo、W、Nb、V、Cu量の低減が必要である。即ちこ
れらの元素は、本合金を電気炉にて溶製、精錬する際
に、不可避的に混入する元素であって、Mo:0.05%、
W:0.02%、Nb:0.02%、V:0.02%、Cu:0.0
2%の各特定値を超えると黒化膜の成長速度が低くな
り、所定の黒化処理条件下でも十分な膜厚の黒化膜が形
成できない。従って、Mo:0.05%以下、W:0.02%
以下、Nb:0.02%以下、V:0.02%以下、Cu:0.0
2%以下と定めた。
【0030】Mo、W、Nb、V、Cuが黒化膜の成長速度を
阻害している原因については、必ずしも充分に解明され
ていないが、これら元素の含有量が本発明規定量を超え
るものでは、黒化膜と合金の界面に、これら元素の濃化
が認められていることから、これら元素の界面での濃化
により、鉄が外部に拡散し難くなるため、結果として、
黒化膜の成長速度が低くなってしまったのではないかと
推察される。
阻害している原因については、必ずしも充分に解明され
ていないが、これら元素の含有量が本発明規定量を超え
るものでは、黒化膜と合金の界面に、これら元素の濃化
が認められていることから、これら元素の界面での濃化
により、鉄が外部に拡散し難くなるため、結果として、
黒化膜の成長速度が低くなってしまったのではないかと
推察される。
【0031】なお、本発明においては、特に規定しない
が、C、N、O、S、P、B量を低減することにより黒
化膜の密着性をより向上させることが可能である。具体
的にはC:0.0050%以下、N:0.0015%以下、
O:0.0030%以下、S:0.0020%以下、P:0.
0040%以下とすることにより、黒化膜の密着性をよ
り優れたものとすることができる。
が、C、N、O、S、P、B量を低減することにより黒
化膜の密着性をより向上させることが可能である。具体
的にはC:0.0050%以下、N:0.0015%以下、
O:0.0030%以下、S:0.0020%以下、P:0.
0040%以下とすることにより、黒化膜の密着性をよ
り優れたものとすることができる。
【0032】また本発明においては希土類元素は黒化膜
の黒色度向上には有害であって、これらの元素の1種ま
たは2種以上が合計で0.0002%以下とすることが必
要である。
の黒色度向上には有害であって、これらの元素の1種ま
たは2種以上が合計で0.0002%以下とすることが必
要である。
【0033】上記したような成分の制御により、所要の
膜厚と黒色度を有する黒化膜は形成可能であるが、TV
用フラットマスクのサイズで見ると、依然として、黒化
膜にムラが発生するといった問題が残っており、シャド
ウマスクの品質上問題として残されていた。本発明者ら
は、このような問題を解決すべく、本発明規定内の成分
を有する合金板を用いて、本発明合金薄板の結晶方位を
様々に変えて黒化膜のムラ発生との関係を調べた。その
結果、本合金の黒化膜のムラを抑制するには、黒化処理
直前の合金板表面への{210}結晶面の集積度を特定
値以下に制御することが有効であることを見出した。
膜厚と黒色度を有する黒化膜は形成可能であるが、TV
用フラットマスクのサイズで見ると、依然として、黒化
膜にムラが発生するといった問題が残っており、シャド
ウマスクの品質上問題として残されていた。本発明者ら
は、このような問題を解決すべく、本発明規定内の成分
を有する合金板を用いて、本発明合金薄板の結晶方位を
様々に変えて黒化膜のムラ発生との関係を調べた。その
結果、本合金の黒化膜のムラを抑制するには、黒化処理
直前の合金板表面への{210}結晶面の集積度を特定
値以下に制御することが有効であることを見出した。
【0034】図2は、黒化膜のムラ発生状況と{21
0}結晶面の集積度の関係を示す。{210}結晶面の
集積度の測定は、黒化処理直前の合金板表面の(42
0)回折面の相対X線回折強度比を(111)、(20
0)、(220)、(311)、(331)、(42
0)および(422)の各回折面の相対X線回折強度比
の和で割ることにより求めた。
0}結晶面の集積度の関係を示す。{210}結晶面の
集積度の測定は、黒化処理直前の合金板表面の(42
0)回折面の相対X線回折強度比を(111)、(20
0)、(220)、(311)、(331)、(42
0)および(422)の各回折面の相対X線回折強度比
の和で割ることにより求めた。
【0035】ここで相対X線強度比とは各回折面で測定
されたX線回折強度を、その結晶面の理論X線回折強度
で割ったものである。たとえば、(111)回折面の相
対X線強度比とは、(111)回折面のX線回折強度を
(111)回折面のX線回折理論強度で割ったものであ
る。なお、{210}結晶面の集積度の測定に際しては
{210}結晶面と方位でみて等価な(420)回折面
のX線回折強度により測定した。
されたX線回折強度を、その結晶面の理論X線回折強度
で割ったものである。たとえば、(111)回折面の相
対X線強度比とは、(111)回折面のX線回折強度を
(111)回折面のX線回折理論強度で割ったものであ
る。なお、{210}結晶面の集積度の測定に際しては
{210}結晶面と方位でみて等価な(420)回折面
のX線回折強度により測定した。
【0036】この図より、{210}結晶面の集積度が
16%以下で黒化膜のムラはなく、本発明で意図した優
れた効果が得られていることがわかる。これらのことか
ら{210}結晶面の集積度を16%以下と定めた。
16%以下で黒化膜のムラはなく、本発明で意図した優
れた効果が得られていることがわかる。これらのことか
ら{210}結晶面の集積度を16%以下と定めた。
【0037】{210}結晶面が特定値を越えると黒化
膜のムラが著しくなる機構についてははっきりわかって
いないが、特にムラの部分の結晶方位は{210}結晶
面となっている頻度が高いため、この結晶面での酸化速
度や酸化物の性状が他の方位に比べて著しく異なるため
ではないかと推定される。
膜のムラが著しくなる機構についてははっきりわかって
いないが、特にムラの部分の結晶方位は{210}結晶
面となっている頻度が高いため、この結晶面での酸化速
度や酸化物の性状が他の方位に比べて著しく異なるため
ではないかと推定される。
【0038】{210}結晶面の集積度を本発明で規定
した値以下とするためには、合金薄板の製造にかかわ
る、凝固から熱間での加工、以降の冷間圧延・焼鈍工程
で極力この{210}結晶面を形成させない製造条件を
採ることにより達成される。例えば、本合金が、造塊ま
たは連続鋳造スラブを分塊圧延し、熱間圧延することに
よって得た熱延鋼帯により製造する場合は、熱間圧延後
で適正な熱延板焼鈍を施すことが{210}結晶面を形
成させないためには有効であり、この際熱延板焼鈍の温
度は、810〜890℃の範囲内で適切な温度を選択す
ることにより本発明で意図する{210}結晶面の集積
度を得ることが可能である。
した値以下とするためには、合金薄板の製造にかかわ
る、凝固から熱間での加工、以降の冷間圧延・焼鈍工程
で極力この{210}結晶面を形成させない製造条件を
採ることにより達成される。例えば、本合金が、造塊ま
たは連続鋳造スラブを分塊圧延し、熱間圧延することに
よって得た熱延鋼帯により製造する場合は、熱間圧延後
で適正な熱延板焼鈍を施すことが{210}結晶面を形
成させないためには有効であり、この際熱延板焼鈍の温
度は、810〜890℃の範囲内で適切な温度を選択す
ることにより本発明で意図する{210}結晶面の集積
度を得ることが可能である。
【0039】なお、このような熱延板焼鈍の効果は、本
合金の熱延鋼帯が熱延板焼鈍前で十分に再結晶している
時に発揮されるものである。また、本発明で意図する
{210}結晶面の集積度を得るには、本合金を製造す
るに際して分塊圧延後のスラブの均一化熱処理の実施は
好ましくない。たとえば、上記の均一化熱処理が120
0℃以上、10Hr以上の条件で行なわれる場合、{21
0}結晶面の集積度が本発明の規定値を超えてしまうの
で、このような処理は避けねばならない。
合金の熱延鋼帯が熱延板焼鈍前で十分に再結晶している
時に発揮されるものである。また、本発明で意図する
{210}結晶面の集積度を得るには、本合金を製造す
るに際して分塊圧延後のスラブの均一化熱処理の実施は
好ましくない。たとえば、上記の均一化熱処理が120
0℃以上、10Hr以上の条件で行なわれる場合、{21
0}結晶面の集積度が本発明の規定値を超えてしまうの
で、このような処理は避けねばならない。
【0040】
【実施例】上記した本発明を具体的実施例によって、更
に詳しく説明すると、以下の如くである。 (実施例) 取鍋精錬によって、次の表1および表2に示す化学成分
を有するNo1〜26からなる鋼塊をそれぞれ調製した。
いずれの合金もB量は0.0002%以下である。
に詳しく説明すると、以下の如くである。 (実施例) 取鍋精錬によって、次の表1および表2に示す化学成分
を有するNo1〜26からなる鋼塊をそれぞれ調製した。
いずれの合金もB量は0.0002%以下である。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】これらのインゴットの各々を手入れ後、分
塊圧延、表面疵取り、熱間圧延(熱延加熱は1100℃
×3時間)、疵取りして得られた熱延コイルを用いて次
の表3に示す条件にて、熱延板焼鈍を行なった。以降、
冷延−焼鈍−仕上げ冷延を行ない、板厚0.25mmの合金
板を得た。なおこれらの合金は熱間圧延後で十分再結晶
していた。
塊圧延、表面疵取り、熱間圧延(熱延加熱は1100℃
×3時間)、疵取りして得られた熱延コイルを用いて次
の表3に示す条件にて、熱延板焼鈍を行なった。以降、
冷延−焼鈍−仕上げ冷延を行ない、板厚0.25mmの合金
板を得た。なおこれらの合金は熱間圧延後で十分再結晶
していた。
【0044】
【表3】
【0045】これを、エッチングによりフラットマスク
にした後、マスクを810℃にてアニールし、プレス成
形ののち550℃×8min の条件にて黒化処理を行なっ
た。黒化処理直前の合金板の表面の{210}結晶面の
集積度は前記したX線回折による方法により求めた。こ
の結果を表4に示した。また黒化膜の密着性、膜厚、ム
ラ発生状況および熱輻射率も表4に併せて示す。黒化膜
の密着性は、黒化膜の上にテープをはり、180℃密着
曲げをしてからテープを剥がし、テープ上への黒化膜の
付着状況により評価した。
にした後、マスクを810℃にてアニールし、プレス成
形ののち550℃×8min の条件にて黒化処理を行なっ
た。黒化処理直前の合金板の表面の{210}結晶面の
集積度は前記したX線回折による方法により求めた。こ
の結果を表4に示した。また黒化膜の密着性、膜厚、ム
ラ発生状況および熱輻射率も表4に併せて示す。黒化膜
の密着性は、黒化膜の上にテープをはり、180℃密着
曲げをしてからテープを剥がし、テープ上への黒化膜の
付着状況により評価した。
【0046】
【表4】
【0047】前述した表4に示した結果から明らかなよ
うに、本発明の範囲内の成分組成を有し、且つ本発明の
範囲内の{210}結晶面の集積度を有する、合金No1
〜No13は黒化膜の密着性、黒色度、ムラ発生状況およ
び熱輻射率はいずれも、本発明で意図する優れたレベル
を示している。とくに、合金No1およびNo13はMn、A
l、Si、Cr、Tiがより好ましいレベルまで低減されてお
り、黒化膜の黒色度および熱輻射率は発明例の合金No2
〜No12より優れている。また合金No1,No4〜No10
の{210}結晶面の集積度もより好ましいレベルまで
制御されており、黒化膜のムラ発生状況も発明例の合金
No2,No3,No11〜No13より優れている。
うに、本発明の範囲内の成分組成を有し、且つ本発明の
範囲内の{210}結晶面の集積度を有する、合金No1
〜No13は黒化膜の密着性、黒色度、ムラ発生状況およ
び熱輻射率はいずれも、本発明で意図する優れたレベル
を示している。とくに、合金No1およびNo13はMn、A
l、Si、Cr、Tiがより好ましいレベルまで低減されてお
り、黒化膜の黒色度および熱輻射率は発明例の合金No2
〜No12より優れている。また合金No1,No4〜No10
の{210}結晶面の集積度もより好ましいレベルまで
制御されており、黒化膜のムラ発生状況も発明例の合金
No2,No3,No11〜No13より優れている。
【0048】これに対して、合金No14は、本発明範囲
外のHを含有しており、黒化膜の密着性は悪かった。合
金No15〜No20はそれぞれ本発明の範囲外のMn,Al,
Si,Cr,Ti,(Ti)+(Cr)+(Al)+(Si)を含有し
ているものであり、黒化膜の黒色度および熱輻射率は本
発明例に比べて劣っている。
外のHを含有しており、黒化膜の密着性は悪かった。合
金No15〜No20はそれぞれ本発明の範囲外のMn,Al,
Si,Cr,Ti,(Ti)+(Cr)+(Al)+(Si)を含有し
ているものであり、黒化膜の黒色度および熱輻射率は本
発明例に比べて劣っている。
【0049】また合金No21〜No25はそれぞれ、本発
明範囲外のMo,W,Nb,V,Cuを含有しているものであ
り、黒化膜の膜厚が本発明例に比べて薄く、黒化膜の黒
色度は本発明で意図するレベルを示しているが、熱輻射
率は本発明例に比べて小さくなっており、本発明で意図
する黒化処理条件にて所定の膜厚まで黒化膜を成長させ
ることが必要であることが理解される。
明範囲外のMo,W,Nb,V,Cuを含有しているものであ
り、黒化膜の膜厚が本発明例に比べて薄く、黒化膜の黒
色度は本発明で意図するレベルを示しているが、熱輻射
率は本発明例に比べて小さくなっており、本発明で意図
する黒化処理条件にて所定の膜厚まで黒化膜を成長させ
ることが必要であることが理解される。
【0050】更に、合金No17、No18、No21、No2
2およびNo26は{210}結晶面の集積度が本発明の
規定値を超えるものであり、黒化膜のムラ発生状況は本
発明例に比べて劣っている。
2およびNo26は{210}結晶面の集積度が本発明の
規定値を超えるものであり、黒化膜のムラ発生状況は本
発明例に比べて劣っている。
【0051】上記したところから明らかなように、本発
明範囲内の成分組成および本発明範囲内における{21
0}結晶面の集積度とすることにより、黒化膜の密着
性、黒色度、ムラ発生状況および熱輻射率ともに優れた
レベルを有するシャドウマスク用Fe−Ni系合金薄板が得
られることがわかる。
明範囲内の成分組成および本発明範囲内における{21
0}結晶面の集積度とすることにより、黒化膜の密着
性、黒色度、ムラ発生状況および熱輻射率ともに優れた
レベルを有するシャドウマスク用Fe−Ni系合金薄板が得
られることがわかる。
【0052】
【発明の効果】以上詳述したような、本発明によれば、
黒化処理性が優れ、優れた黒色度、ムラがなくて優れた
密着性、高い熱輻射率を有する黒化膜を従来よりも比較
的低温かつ短時間で形成可能なシャドウマスク用インバ
ー合金を提供することができるものであるから、工業的
に有利な効果がもたらされ、その効果の大きい発明であ
る。
黒化処理性が優れ、優れた黒色度、ムラがなくて優れた
密着性、高い熱輻射率を有する黒化膜を従来よりも比較
的低温かつ短時間で形成可能なシャドウマスク用インバ
ー合金を提供することができるものであるから、工業的
に有利な効果がもたらされ、その効果の大きい発明であ
る。
【図1】黒化膜の黒色度と、Mn量、(Ti)+(Cr)+
(Al)+(Si)量の関係を示した図表である。
(Al)+(Si)量の関係を示した図表である。
【図2】黒化膜のムラ発生状況と{210}結晶面の集
合度の関係を示した図表である。
合度の関係を示した図表である。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−218050(JP,A) 特開 平1−247558(JP,A) 特開 平4−341543(JP,A) 特開 平4−371550(JP,A)
Claims (2)
- 【請求項1】 wt%で、 Ni:34〜38%を含有し、 H:1ppm 以下、 Mn:0.35%以下、 Al:0.02
%以下、 Si:0.05%以下、 Cr:0.05%以下、 Ti:0.0
2%以下 であって、〔Ti〕+〔Cr〕+〔Al〕+〔Si〕≦0.10%
であり、 Mo:0.05%以下、 W:0.02%以下、 N
b:0.02%以下、 V:0.02%以下、 Cu:0.02%以下として黒
化処理前における合金板表面への{210}結晶面集積
度が16%以下であることを特徴とする黒化処理性に優
れたシャドウマスク用Fe−Ni合金。 - 【請求項2】 wt%で、 Ni:34〜38%を含有
し、 H:1ppm 以下、 Mn:0.35%以下、 Al:0.02
%以下、 Si:0.05%以下、 Cr:0.05%以下、 Ti:0.0
2%以下 であって、〔Ti〕+〔Cr〕+〔Al〕+〔Si〕≦0.10%
であり、 Mo:0.05%以下、 W:0.02%以下、 N
b:0.02%以下、 V:0.02%以下、 Cu:0.02%以下として、
熱延鋼帯を810〜890℃の範囲内で焼鈍し、以降、
冷延−焼鈍−仕上げ冷延を行い、エッチング後焼鈍する
ことにより、黒化処理前における合金表面への{21
0}結晶面集積度が16%以下であることを特徴とする
請求項1に記載の黒化処理性に優れたシャドウマスク用
Fe−Ni合金。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2902092A JPH08947B2 (ja) | 1992-01-21 | 1992-01-21 | 黒化処理性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni合金 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2902092A JPH08947B2 (ja) | 1992-01-21 | 1992-01-21 | 黒化処理性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni合金 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05195160A JPH05195160A (ja) | 1993-08-03 |
JPH08947B2 true JPH08947B2 (ja) | 1996-01-10 |
Family
ID=12264733
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2902092A Expired - Fee Related JPH08947B2 (ja) | 1992-01-21 | 1992-01-21 | 黒化処理性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni合金 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH08947B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2021132634A1 (ja) * | 2019-12-27 | 2021-07-01 | 日本製鉄株式会社 | 合金 |
-
1992
- 1992-01-21 JP JP2902092A patent/JPH08947B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH05195160A (ja) | 1993-08-03 |
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---|---|---|---|
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