JPH08921B2 - 圧縮性と磁気特性に優れた粉末冶金用純鉄粉 - Google Patents

圧縮性と磁気特性に優れた粉末冶金用純鉄粉

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JPH08921B2
JPH08921B2 JP4186159A JP18615992A JPH08921B2 JP H08921 B2 JPH08921 B2 JP H08921B2 JP 4186159 A JP4186159 A JP 4186159A JP 18615992 A JP18615992 A JP 18615992A JP H08921 B2 JPH08921 B2 JP H08921B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、圧縮性に優れ、かつ磁
性部品の製造に供する場合において優れた軟質磁気特性
を発現する粉末冶金用純鉄粉を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】粉末冶金法とは、物理的粉砕や化学的現
象を用いて所望の粒度構成に調整した粉末を原料として
金型を用いて圧縮成形した後、更に焼結を行って製品を
得るか、あるいは樹脂などの結合剤と混錬した後、金型
で成形を行って製品を得るものであって、各種備品につ
いての工業的生産性に優れた製造方法である。
【0003】こうして製造される粉末冶金製品が機械構
造用部品などの強度を要する部品、あるいは軟質磁性部
品に適用される場合には、製品密度がこれらの特性に重
要な影響を及ぼす因子の一つであることが知られてい
る。
【0004】このような部品の原料に供される粉末冶金
用鉄粉の一つとして例えば特公昭49-28101号が知られて
おり、溶融鉄の落下細流に高圧水を所定の角度で衝突さ
せることによって粉砕し鉄粉を得る、いわゆる水アトマ
イズ法による粉末冶金用鉄粉とその製造方法が開示され
ている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記特公昭49-28101に
開示されている粉末冶金用鉄粉は、確かに粉末冶金用の
原料として好適な特性を具備する。しかしながら成形用
金型の耐久性を考慮した経済的な焼結部品の製造行程と
いう観点から見た場合、圧縮性が未だ充分ではないた
め、焼結後の製品中に多量の空隙が残存し、それゆえ焼
結材の機械的特性は溶製材のそれに比較して一般に劣る
という問題がある。
【0006】さらには純鉄粉にステアリン酸亜鉛などの
潤滑剤のみを混合し、金型成形した後焼結していわゆる
焼結軟質磁性部品を製造する場合においても、製品中に
残存する空隙の影響により、同一組成からなる溶製材の
磁気特性と比較して充分でないという問題がある。
【0007】従来これらの問題を解決するためには、金
型成形した後600 〜900 ℃程度の比較的低温で焼結(仮
焼結)を行い、該仮焼結体を別の金型で2度目の圧縮を
行い、しかる後1100℃〜1250℃の焼結温度で焼結(本焼
結)を行う方法、つまり2回のプレス工程と2回の焼結
工程を伴う2P2S法を採用して密度の向上を図るか、
あるいはマトリックス改質効果のある合金元素を過剰に
添加して所望の特性値を得る方法が取られていた。しか
しこれらの方法では、製造コストの低さという、粉末冶
金法の利点を充分に活かすことが出来ない。
【0008】本発明はこのような事情に着目してなされ
たものであって、その目的は、圧縮性が未だ充分でない
という従来の粉末冶金用鋼粉の持つ欠点に起因する上記
問題を改善し、焼結部品を安価に製造し得ると共に圧縮
性と磁気特性に優れた製品を製造することのできる粉末
冶金用鉄粉を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、焼結部品
の密度を上げるためには、原料粉の圧縮性の向上を図る
ことが必要であるとの観点から、 (1) 純鉄粉中の化学成分量 (2) 純鉄粉の粒度構成、粒子形状 (3) 鉄粉粒子のフェライト結晶粒径 について研究した。その結果、 不純物元素であるC、Si、Mn、P、S、O、N等
の低減を図ること 鉄粉の粒度分布について、中密で不規則形状を示す粗
粒粉の活用を図ること 鉄粉粒子の成形時の組成変形を容易にするため、結晶
粒度を大きくすること 等が有効であることを見いだした。
【0010】本発明の具体的構成は次の通りである。す
なわち、不純物含有量が、C≦0.005 %、Si≦0.010
%、Mn≦0.050 %、P≦0.010 %、S≦0.010 %、O
≦0.10%、N≦0.0020%で残部が実質的にFeおよび不
可避不純物からなり、その粒度構成がJIS Z 8801
号に定める篩を用いた篩わけ重量比(%)で、−60/+
83メッシュが5%以下、−83/+100 メッシュが4%以
上10%以下、−100 /+140 メッシュが10%以上25%以
下、330 メッシュ通過分が10%以上30%以下であり、−
60/+200 メッシュの平均結晶粒径がJIS G 0052
号に規定されるフェライト結晶粒径測定法で6.0 以下の
粗大結晶粒であって、粉末冶金用潤滑剤としてステアリ
ン酸亜鉛を0.75%配合して5T/cm2 の成形圧力で金型
成形したときに7.05g /cm3 以上の圧粉体密度が得られ
るものであることを特徴とする圧縮と磁気特性に優れた
粉末冶金用純鉄粉である。
【0011】
【作用】ここで本発明における各構成要件の限定理由に
ついて説明する。 (1) 純鉄粉の組成:鉄粉中の不純物含有量をC≦0.005
%、Si≦0.010 %、Mn≦0.050 %、P≦0.010 %、
S≦0.010 %、O≦0.10%、N≦0.0020%と定め残部を
Feおよび不可避不純物からなるものと定めたのは優れ
た圧縮性を確保するためであり、各元素について説明す
ると下記の通りである。
【0012】Si、Mn:純鉄粉の製造過程において脱
酸目的で添加するが、酸素の親和力の強いこれらの元素
は水アトマイズ時に酸化され、酸化介在物として鉄粉中
に残存し、圧縮性を阻害する。従って、Si、Mnが多
くなると介在物も多くなり、次の還元工程においてもこ
れらの酸化介在物は還元されずに残存し圧縮性を低下さ
せる。そこでSiは0.010 %以下、Mnは0.050 %以下
と極力少なくすることが望ましいとの結論を得た。
【0013】P、S:溶鋼精錬時にP、Sが残存すると
鉄粉粒子を硬化させ、圧縮性を低下させる。また、P、
Sが多いと還元処理後においても粒子が軟らかくならな
い。これらから、粒子の硬化を防止するため、P、S共
に0.010 %以下と極力少なくした。
【0014】C、O、N:C、Oについては還元雰囲気
中の加熱還元工程において脱炭、脱酸反応により低減す
ることが可能であるが、還元後の鉄粉中にCが多量に残
存することは鉄粉の粒子を硬くし、圧縮性を著しく低下
させることから、0.005 %以下と極力少なくした。また
Oが多いと圧縮性を低下させるだけでなく粉末冶金法に
おいて混合使用される黒鉛粉の歩留まりを低下させた
り、組織のばらつきの原因にもなることから、Oは0.10
%以下とした。Nについても圧縮性を著しく低下させる
ため極力少なく0.0020%以下とした。またこれらC、
O、Nについては磁気特性の面からも極力少ないことが
望ましい。
【0015】(2) 粒度構成:−60/+83メッシュを5%
以下、−83/+100 メッシュ4%以上10%以下、−100
/+140 メッシュを10%以上25%以下、330 メッシュ通
過分を10%以上30%以下と定めたのは以下の理由によ
る。大きさの上限を60メッシュ以下と定めたのは、60メ
ッシュを通過しない粗粒が混入していると圧縮成形品の
均質性が損なわれ、かつ強度上の欠陥原因を内包するの
で好ましくない。
【0016】また、本発明らの各種実験結果から、粗粒
分はその特性として中密且つ不規則形状を示しており、
また結晶粒度も大きく軟らかいが為、圧縮性の向上に有
効であることを見いだした。−60/+83メッシュを5%
以下としたのは、該粒度範囲のものは圧縮性向上の為に
は有効であるが5%を超えて混在しているときは成形品
尖端部等にカケが発生して欠落した場合に、強度上の欠
陥原因となり、また製品内部において均質性を低下させ
強度上の欠陥原因となるので好ましくない。
【0017】−80/+100 メッシュを4%以上としたの
は、4%未満では圧縮向上の効果が充分得られず、また
10%以下としたのは粗粒粉が多くなりすぎて強度上の欠
陥原因となるためである。−100 /+140 メッシュにつ
いても同様で、10%以上としたのは、10%未満では圧縮
性向上の効果が不十分で、25%以下としたのは粗粒粉が
多くなりすぎると強度欠陥原因を内包する恐れが出てく
るためである。
【0018】また、微粉である−330 メッシュ通過分を
10%以上30%以下としたのは、10%未満の場合は、焼結
性が良好で従って焼結強度を向上せしめる微粉が少なく
なりすぎる為に強度の劣化をきたすからである。30%以
下としたのは、微粉が多くなると圧縮性が低下して本発
明の圧縮性向上の目的からはずれるためである。
【0019】(3) フェライト結晶粒径:結晶粒径につい
ては、結晶粒径が大きいほど単位面積あたりの結晶粒界
長さが短くなり、従って塑性変形力が加わった時の転位
の平均自由行程が長いこととあいまって、転位のパイル
アップに起因した変形抵抗が少なく圧縮性向上に有効で
ある。また、軟質磁気特性に対しても粒界が少ないこと
が磁区の形成の抑止と内部損失の面から有利に作用す
る。そしてこの特性は−60/+200 メッシュの鉄粉にお
いて強く発揮される。そこで上記粒度範囲のものを特に
とりあげた。そして上記特性を満足する純鉄粉は、5T
/cm2 の成形圧力で金型成形したときの圧粉体密度が7.
05g /cm3 以上を示し、且つ優れた磁気特性を得るため
に、結晶粒度をJISに定めるフェライト結晶粒度測定
法で6.0 以下の粗粒(数字の少ない方が結晶粒径が大き
い)とした。
【0020】
【実施例】以下、本発明を具体化した実施例を説明す
る。圧縮性、成形性は原料鉄粉に潤滑剤としてステアリ
ン酸亜鉛を0.75%配合し、成形圧力5T/cm3 で金型成
形した直径11.3mmφのタブレット試験片での成形密度(g
/cm3) で評価した。 実施例1 鉄粉中の不純物含有量をC≦0.005 %、Si≦0.010
%、Mn≦0.050 %、P≦0.010 %、S≦0.010 %、O
≦0.10%、N≦0.0020%に規定した理由を表1,表2を
用いて説明する。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】本発明で規定した不純物元素はいずれも鋼
粉の圧縮性を劣化させることが知られている。このうち
SiおよびPは軟質磁気特性を改善するために添加され
ることがあるが、ごく微量の範囲ではマトリックスの改
質効果よりもむしろ圧縮性の低下に起因に基づく焼結製
品特性の劣化が支配的となるため、他の不純物元素と同
様に理想的には完全に除去されることが望ましい。尚圧
縮性の評価は、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.75%
添加した純鉄粉を、直径11.3mmφの金型を用いて成形圧
力5T/cm2で成形したときの圧粉体密度(g/cm3)で評価
した。表中の発明例に示す如く、純鉄粉中の不純物元素
含有量をC≦0.005 %、Si≦0.010 %、Mn≦0.050
%、P≦0.010 %、S≦0.010 %、O≦0.10%、N≦0.
0020%に限定すれば圧粉体密度7.05g/cm3 以上を達成す
ることができた。
【0024】実施例2 粒度構成をJIS Z 8801号に定める篩を用いた篩わ
け重量比(%)で、−60/+83メッシュを5%以下、−
83/+100 メッシュを4%以上10%以下、−100 /+14
0 メッシュを10%以上25%以下、+330 メッシュ通過分
を10%以上30%以下に規定した理由を表3,表4,表5
を用いて説明する。
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】
【表5】
【0028】表3,表4は基準材の性状を、表5は特定
粒度の鋼粉全体に占める重量比を変化させたときの圧縮
性に及ぼす影響を示している。表中のMはメッシュを示
す。ここで変化させる特定粒度を除いた残部の粒度間の
重量比は一定の構成比を保っている。すなわち基礎とな
る鉄粉の粒度構成(%)が重量比で (-60M/+80M) :(-80M/+100M):(-100M/+140M) :・・・:(-330M) = a : b : c :・・・: g で表記されるとき、例えば−80M/+100 Mの重量比b
を変化させるとき、それ以外の粒度の重量比は の関係を保っている。なお、表中に表示した桁数以下の
数値は切り捨てて表示している。
【0029】圧縮性に与える粒度構成の影響は、−60/
+140 メッシュの範囲の粗粉および−330 メッシュの微
粉の全鋼粉中に占める各重量比の効果が顕著であって、
−140 /+330 メッシュの中間部分の重量比の効果は明
確でないとの知見が得られた。さらに詳しくは、−60/
+140 メッシュの範囲の粒度が増加すると、それに伴っ
て圧粉体密度も向上するが、−330 メッシュの粒度が増
加すると圧縮性は低下し、30%以上になると7.05g /cm
3 の圧粉体密度を達成できなくなる。従って圧縮性を改
善せしめる粒度構成の範囲は、−60/+83メッシュを5
%以下、−83/+100 メッシユを4%以上10%以下、−
100 /+140 メッシュを10%以上25%以下で、330 メッ
シュ通過分が10%以上30%以下でなければならない。
【0030】実施例3 鉄粉の粒度の軟質磁気特性に及ぼす影響を、粒度別に測
定した。磁気測定用の試験片は外径45mmφ−内径33mmφ
のリング状成形体を金型成形によって作成し、これをア
ンモニア分解ガス雰囲気下で1180℃×60分の焼結を行う
ことによって作成した。図1は粒度ごとの最大透磁率を
示している。最大透磁率は粗粉になるほど軟質磁性材料
として好適な性質を発現し、200 メッシュ以下の微粉で
は上記特性が悪化するとの知見を得た。この理由として
は、微粉であるほど比表面積が大きいため、焼結後も単
位面積あたりの結晶粒界長さが粗粉に比して大で、多数
の磁区を形成し損失を生じるためと考えられる。したが
って、鉄粉中に占める粗粉の重量比、特に−60/+200
メッシュの範囲の粗粉の重量比を増加させることが良好
な磁気特性を発現する上で肝要である。
【0031】実施例4 −60/+200 メッシュの平均結晶粒径がJIS G 00
52号に規定されるフェライト結晶粒径測定法で6.0 以下
の粗大結晶粒である規定した理由について、表6,7を
用いて説明する。表中、圧縮性は成形圧力5T/cm2の圧
粉体密度(g /cm3 )を、最大透磁率は焼結体密度7.1g
/cm3 での値を夫々表している。
【0032】
【表6】
【0033】
【表7】
【0034】軟質磁気特性に影響を及ぼす因子の一つと
して、結晶粒径の影響が知られており、結晶粒径の粗大
化と軟質磁気特性の向上には相関関係がある。実施例3
によって得られた知見に基づき、−60/+200 メッシュ
の範囲の粗粉の結晶粒径と軟質磁気特性の関係を検討し
たところ、該範囲の平均結晶粒径がJIS G 0052号
に規定されるフェライト結晶粒径測定法に従って6.0 以
下を示す粗大結晶粒を持つ鉄粉は、最大透磁率において
著しく改善が達成されることを発現した。
【0035】実施例5 上記実施例の1〜4を組み合わせることによって、従来
の市販粉に比して圧縮性と軟質磁気特性を著しく改善す
ることができる。本発明例と従来の市販粉の特性を表
8,表9に示す。
【0036】
【表8】
【0037】
【表9】
【0038】
【発明の効果】本発明の構成を有する粉末冶金用純鉄粉
によれば、従来の粉末冶金用鉄粉に比して以下の効果が
期待できる。 圧縮性に優れるため同一の金型成形圧力でも高密度を
達成することが出来るため、従来の鉄粉では複雑な工
程、あるいは過剰な合金元素の添加を必要とした高強度
部品の製造が、安価且つ容易となる。 圧縮性に優れるため同一加圧能力の粉末成形用プレス
を用いても大型の部品が製造可能である。 純鉄粉中に含有される不純物の低減と粒度構成および
結晶粒径を粗大化させることによって、優れた軟質磁気
特性を発現する焼結部品の製造が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】焼結体密度と最大透磁率の関係を示すグラフで
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 正昭 兵庫県神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会 社神戸製鋼所 神戸製鉄所内 (72)発明者 高井 伝栄 兵庫県神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会 社神戸製鋼所 神戸製鉄所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 不純物含有量が、C≦0.005 %、Si≦
    0.010 %、Mn≦0.050 %、P≦0.010 %、S≦0.010
    %、O≦0.10%、N≦0.0020%で残部が実質的にFeお
    よび不可避不純物からなり、その粒度構成がJIS Z
    8801号に定める篩を用いた篩わけ重量比(%)で、−
    60/+83メッシュが5%以下、−83/+100 メッシュが
    4%以上10%以下、−100 /+140 メッシュが10%以上
    25%以下、330 メッシュ通過分が10%以上30%以下であ
    り、−60/+200 メッシュの平均結晶粒径がJIS G
    0052号に規定されるフェライト結晶粒径測定法で6.0
    以下の粗大結晶粒であって、粉末冶金用潤滑剤としてス
    テアリン酸亜鉛を0.75%配合して5T/cm2 の成形圧力
    で金型成形したとき7.05g/cm3 以上の圧粉体密度が得ら
    れるものであることを特徴とする圧縮性と磁気特性に優
    れた粉末冶金用純鉄粉。
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