JPH0890258A - クラッドパイプの製造方法 - Google Patents

クラッドパイプの製造方法

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JPH0890258A
JPH0890258A JP22377394A JP22377394A JPH0890258A JP H0890258 A JPH0890258 A JP H0890258A JP 22377394 A JP22377394 A JP 22377394A JP 22377394 A JP22377394 A JP 22377394A JP H0890258 A JPH0890258 A JP H0890258A
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JP
Japan
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pipe
rolling
clad
auxiliary heating
preform
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JP22377394A
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English (en)
Inventor
Hideo Takizawa
英男 瀧澤
Toshiro Kimura
敏郎 木村
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Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 外皮割れや接合不良の発生を防止し得るクラ
ッドパイプの製造方法を提供する。 【構成】 内管12の外周面側に、圧延成形温度域にお
いて内管12の変形抵抗よりも高い変形抵抗を有する外
管11を嵌合させ、嵌合した内管12および外管11を
成形温度域まで加熱した後に、傾斜圧延装置13に搬入
して傾斜圧延するクラッドパイプの製造方法であって、
傾斜圧延装置13に設けた補助加熱手段18により、傾
斜圧延する直前の外管11を内管12に比べて高温とな
るように加熱する補助加熱工程が設けてある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、厚肉の内管の外周面側
に、成形温度域において内管の変形抵抗よりも高い変形
抵抗を有する薄肉の外管を接合したクラッドパイプの製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、化学プラント用の熱交換器や、高
温での耐食性が要求されるボイラなどにおいては、異種
金属を接合したクラッドパイプが多用されている。この
クラッドパイプは、厚肉の安価な金属を母材とし、その
外周面に薄肉の特殊な性質を持った合せ材を接合してあ
る。この種のクラッドパイプには、例えば、母材を鋼と
して強度を持たせ、外皮を薄肉のNi基合金として優れ
た耐食性を有するようにしたクラッドパイプがある。
【0003】クラッドパイプの製造方法には種々の方法
があるが、傾斜圧延法は、他のクラッド法(爆着、HI
P、拡散接合など)に比べて、容易に強い接合を得るこ
とができるという利点がある。この傾斜圧延法によるク
ラッドパイプの製造工程は、図8に示すように、脱スケ
ール工程、挿入工程、加熱工程および傾斜圧延工程から
なる。以下、各工程について概説する。
【0004】脱スケール工程では、接合表面の酸化膜は
良好な接合の妨げとなるため、接合表面の脱スケールを
行う。つまり、外管である例えばNi基合金パイプの内
周面と、内管である例えば鋼管の外周面とに、脱スケー
リングを施し、付着した汚れ及び酸化膜を除去する。
【0005】挿入工程では、脱スケール工程を終えたN
i基合金パイプの内側に、鋼管を挿入する。なお、挿入
工程が終了すると共に傾斜圧延処理が施される前のパイ
プ全体をプリフォームと称する。加熱工程では、前記プ
リフォームを、傾斜圧延処理を行う成形温度域まで加熱
炉内で加熱する。
【0006】傾斜圧延工程では、回転自在な成形ロール
を有しプリフォームを傾斜圧延してクラッドパイプを製
造する傾斜圧延装置が使用される。加熱工程を終え加熱
炉から取り出されたプリフォームが傾斜圧延装置に搬入
されると、プリフォームの一端から内管内にマンドレル
が挿入される。そして、プリフォームの他端を所定の張
力で送り方向に沿って引っ張りつつ、成形ロールを回転
駆動することにより、内管および外管に対して成形ロー
ルによる傾斜圧延が行われる。これにより、母材が鋼か
らなると共に外皮が薄肉のNi基合金からなるクラッド
パイプが製造される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た工程からなるクラッドパイプの製造方法にあっては、
クラッドパイプの外皮材を構成するNi基合金に外皮割
れが生じたり、母材と外皮との接合部に全面剥離や一部
剥離が生じたりするという問題があった。ここで、外皮
割れとは、クラッドパイプの成形中にらせん状のクラッ
クが外皮に発生して、外皮材のみが破断した状態をい
う。また、接合部の全面剥離とは、クラッドパイプの成
形後、接合部のほぼ全面に亘って、外皮が母材から浮き
上がった状態をいう。接合部の一部剥離とは、クラッド
パイプの成形後、超音波探傷による接合面の割合が98
%以下の状態をいう。
【0008】外皮割れが生じる理由は、加熱工程を終え
加熱炉から取り出したプリフォームを傾斜圧延装置に搬
入するときに、外管であるNi基合金パイプが内管であ
る鋼管に比べて大気放熱によって急速に冷却されてしま
い、その結果、Ni基合金の変形抵抗と炭素鋼の変形抵
抗との間に大きな差異が生じ、成形ロールによる圧延過
程において接合界面で材料流動が不連続になるからであ
る。
【0009】Ni基合金の変形抵抗および炭素鋼の変形
抵抗は、それぞれ図6(A)(B)に示すとおりであ
り、圧延加工中の温度域(900℃〜1000℃)にお
いて、Ni基合金は、炭素鋼に比べて、3倍〜4倍の変
形抵抗となっている。一方、接合部の全面剥離などを防
止するためには、接合性の向上を図るべく、延伸比を大
きくすることも考えられる。しかしながら、このように
延伸比を大きくしても、上述した圧延過程におけるNi
基合金および炭素鋼の変形抵抗が大きく異なることか
ら、外皮割れを抑制することができない。
【0010】本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決
するためになされたものであり、内管の外周面側に、成
形温度域において内管の変形抵抗よりも高い変形抵抗を
有する外管を接合したクラッドパイプを製造するにあた
り、外皮割れや接合不良の発生を防止し得るクラッドパ
イプの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係るクラッドパイプの製造方法は、内管の
外周面側に、圧延成形温度域において前記内管の変形抵
抗よりも高い変形抵抗を有する外管を嵌合させ、傾斜圧
延装置により傾斜圧延するクラッドパイプの製造方法に
おいて、前記傾斜圧延装置に設けた補助加熱手段によ
り、前記傾斜圧延する直前の前記外管を前記内管に比べ
て高温となるように加熱する補助加熱工程を有すること
を特徴とする。
【0012】前記外管の肉厚が、前記内管の肉厚よりも
薄肉である場合でも、本発明の方法を適用することがで
きる。。圧延成形温度域において内管の変形抵抗よりも
高い変形抵抗を有する外管と内管との組合せとしては、
たとえば内管が炭素鋼からなり、外管がNi基合金から
なる場合などである。
【0013】外管を内管に比べて高温となるように加熱
する補助加熱手段としては、特に限定されないが、たと
えば高周波誘導加熱手段が好ましく用いられる。
【0014】
【作用】成形温度域まで均一に加熱した内管および外管
を傾斜圧延装置に搬入したときには、外管が大気放熱に
より急速に冷却されるため、外管の変形抵抗と内管の変
形抵抗との差が大きくなっている。
【0015】補助加熱工程においては、傾斜圧延装置に
設けた高周波誘導加熱手段などの補助加熱手段により、
傾斜圧延する直前の外管が、内管に比べて高温となるよ
うに再度加熱される。この結果、外管の変形抵抗と内管
との変形抵抗の差が小さくなり、圧延過程における接合
界面の材料流動が良好となり、外皮割れ、接合部の全面
剥離や一部剥離という不具合が抑制される。
【0016】また、外管の補助加熱は、圧延成形直前の
オンラインでなされるため、クラッドパイプの製造工程
も複雑にならない。また、補助加熱を行うことによっ
て、高延伸比における成形においても、外皮割れが抑制
され、良好な接合がなされる。
【0017】また、外皮割れが抑制されることから、内
管の肉厚よりも薄肉の外皮を有するクラッドパイプを成
形する場合に適用して最適な製造方法となる。
【0018】
【実施例】以下、本発明に係るクラッドパイプの製造方
法を、これを具現化した傾斜圧延装置に基づいて説明す
る。なお、本実施例では、Ni基合金パイプの内側に鋼
管を接合してクラッドパイプを製造する傾斜圧延装置に
ついて説明する。
【0019】図1は、本発明に係るクラッドパイプの製
造方法を示す工程図、図2は、図1に示すクラッドパイ
プの製造工程において、Ni基合金パイプの内側に鋼管
を挿入したときの様子を示す図、図3は、図1に示され
る傾斜圧延工程で用いられる傾斜圧延装置の要部を示す
概略構成図、図4(A)は、図3に示される傾斜圧延装
置によるパイプ圧延中の状態をパイプの出側正面から見
た図、図4(B)は、同図(A)のB−B線に沿う断面
図、図4(C)は、同図(B)のC矢視図である。
【0020】傾斜圧延装置13は、図3に示すように、
加熱工程を終え加熱炉から取り出されたプリフォーム1
0が搬入されて所定位置に取り付けられるようになって
おり、プリフォーム10を傾斜圧延するための成形ロー
ル部14を有している。成形ロール部14の図中左手側
がプリフォーム10の搬入側となっており、内管(鋼
管)12内に挿入されるマンドレル15(図4参照)を
保持する図示しないマンドレル保持装置が設けられてい
る。また、成形ロール部14に対してマンドレル保持装
置と反対側には、圧延動作中にクラッドパイプ16を送
り方向に沿って所定の張力又は所定の引張速度で引っ張
る引張装置17が設けられている。さらに、本実施例の
傾斜圧延装置13には、傾斜圧延加工が行われる直前の
プリフォーム10を局所的に加熱する補助加熱手段18
が設けてある。
【0021】前記成形ロール部14には、図4(A)に
示すように、パスライン19を中心として3個の成形ロ
ール20a,20b,20cが120°間隔で回転自在
に設けられている。各成形ロール20(成形ロール20
a,20b,20cの総称)は図示しない駆動モータに
接続されており、成形ロール20の駆動軸は、同図
(B)および同図(C)に示すように、パスライン19
に対して交差角α、送り角βをもって傾いている。成形
ロール20の回転数および送り角βによって、パイプ送
り方向21に沿うクラッドパイプ16に推進力を与え
る。
【0022】成形ロール交差角αは、材料進行方向に向
かって収束する方向で例えば約45°に固定され、送り
角βは、例えば約0°〜約25°の範囲で可変自在とな
っている。なお、3個の成形ロール20は、全て同じ交
差角αおよび送り角βを有している。
【0023】成形ロール20は、2つの円錐台から構成
され、第1の円錘台である先端側リーリング部の円錐半
角は交差角αに等しく、リーリング部に連続して設けら
れた第2の円錘台の円錐半角は交差角αよりも小さく形
成されている。プリフォーム10が傾斜圧延されるとき
には、先ず、パスライン19に対して比較的大きく傾斜
した圧延面S1によって圧延され、次いで、パスライン
19に対して比較的小さく傾斜した圧延面S2によって
圧延される。なお、図4(B)の角度θは、成形ロール
20の噛み込み角を示している。
【0024】前記マンドレル15は、図4(B)(C)
に示されるように、成形ロール部14においてプリフォ
ーム10を傾斜圧延してクラッドパイプ16を製造する
際に、製造されたクラッドパイプ16の中空部の形状を
画定する役割を有する。マンドレル15が先端に取り付
けられたマンドレルシャフト22は、例えばプリフォー
ム10と同程度の長さを有し、プリフォーム10の中空
部に、プリフォーム10の端部から成形ロール部14に
よる圧延位置まで挿入される。
【0025】前記引張装置17は、成形ロール部14に
対して進退移動自在に設けられ、クラッドパイプ16を
把持するグリッパ23を有する。そして、圧延動作中に
は、クラッドパイプ16をグリッパ23によって把持し
ながら送り方向21に沿って所定の張力又は所定の引張
速度で引っ張るようになっている。また、グリッパ部は
回転自由である。
【0026】前記補助加熱手段18は、成形ロール部1
4においてプリフォーム10を傾斜圧延する直前に、外
管(Ni基合金パイプ)11を内管(鋼管)12に比べ
て高温となるように加熱するためのものであり、図3に
示すように、パイプ送り方向21に沿って成形ロール部
14よりも上流側位置で、かつ、成形ロール部14に近
接して設けられている。
【0027】補助加熱手段18の加熱方式は、特に限定
されるものではないが、図示する実施例にあっては、高
周波誘導加熱コイル30による高周波誘導加熱方式を採
用し、外管11を選択的に加熱するようにしてある。こ
の高周波誘導加熱コイル30は、成形ロール部14に近
接して設けられ、また、プリフォーム10がコイル30
内を挿通自在なように設けられている。
【0028】図3には、誘導加熱コイル30へ高周波電
流を流しプリフォーム10の局所温度を制御する回路の
概略ブロック図が示されている。誘導加熱コイル30へ
供給される高周波電流は商用周波交流31を整流回路3
2によって整流し、インバータ33で高周波に変換され
る。インバータ33より出力される高周波電流は整合盤
34を介して誘導加熱コイル30へと流れる。整合盤3
4は誘導加熱コイル30の力率改善を行うための力率改
善コンデンサ、整合変圧器などよりなる。誘導加熱コイ
ル30は銅管で形成され、内部には冷却水が循環する。
また、誘導加熱コイル30と成形ロール20の間に設け
られた非接触式温度センサ35(本実施例では放射温度
計を用いた。)によりプリフォーム10の外表面温度を
測定し、これと予め設定された温度を制御回路36にて
比較し、プリフォーム10の外表面温度が設定温度と等
しくなるようにインバータ出力を調整し、プリフォーム
10における傾斜圧延する直前の部分における温度制御
を行うようになっている。
【0029】図5は、本実施例におけるプリフォーム1
0の補助加熱の状態を、従来との比較において示す概念
図である。同図(A)はプリフォーム10の補助加熱を
行わない従来例を示し、同図(B)はプリフォーム10
の補助加熱を行う本実施例を示している。各図(A)
(B)には、上より、プリフォーム10の1/4断面概
念図、半径方向の温度分布図、半径方向の変形抵抗分布
図がそれぞれ表されている。
【0030】図5(A)に示すように、プリフォーム1
0の補助加熱を行わない場合には、加熱工程を終え加熱
炉から取り出したプリフォーム10を傾斜圧延装置13
に搬入するときに、外管11であるNi基合金パイプが
内管12である鋼管に比べて大気放熱によって急速に冷
却され、Ni基合金の平均変形抵抗と炭素鋼の平均変形
抵抗との間に大きな差異が生じている。
【0031】一方、図5(B)に示すように、プリフォ
ーム10の補助加熱を行った場合には、Ni基合金パイ
プ11が鋼管12に比べて高温となるように加熱されて
いるため、成形ロール部14においてプリフォーム10
を傾斜圧延する直前には、Ni基合金の平均変形抵抗と
炭素鋼の平均変形抵抗との間の差が極めて小さくなる。
【0032】以下、上述した傾斜圧延装置13を用いて
クラッドパイプ16を製造する工程について詳細に説明
する。図1に示すように、本実施例では、脱スケール工
程、挿入・引き抜き工程、加熱工程および補助加熱・傾
斜圧延工程を順に行ってクラッドパイプを製造する。
【0033】以下、図1に示す各工程について説明す
る。脱スケール工程 接合表面の酸化膜は良好な接合の妨げとなるため、接合
表面の脱スケールを行う。つまり、接合面となるNi基
合金パイプ11の内面と鋼管12の外面とに脱スケーリ
ングを施し、付着した汚れを除去する。かかる脱スケー
リングは、化学的手法や機械的手法など種々あるが、例
えば、酸洗、ウォータジェット、サンドブラスト、ワイ
ヤブラシなどによって行う。
【0034】挿入・引き抜き工程 図2に示すように、脱スケール工程を終えたNi基合金
パイプ11の内側に、鋼管12を挿入する。さらに、所
定の減面率で引き抜き加工を行って、外皮材の全域に塑
性変形を施し、両パイプ11,12の接合面を密着させ
る。引き抜き加工を行うことにより、熱間加工時におけ
る接合面の酸化が防止される。
【0035】加熱工程 挿入・引き抜き工程を終えたプリフォーム10は、加熱
炉に入れ、所定温度で、所定時間加熱する。加熱は、N
i基合金に析出を生じさせないように、相的に安定な温
度で加熱する。
【0036】補助加熱・傾斜圧延工程 加熱工程を終えたプリフォーム10は、傾斜圧延装置1
3に搬入される。プリフォーム10が傾斜圧延装置13
に搬入されると、プリフォーム10を構成する内管12
の中空部に一端からマンドレル15が挿入される。一
方、プリフォーム10の他端は、グリッパ23によって
把持され、所定の張力でパイプ送り方向21に沿って引
っ張られる。
【0037】そして、高周波誘導加熱コイル30によっ
て局所的に補助加熱されたプリフォーム10は、引張装
置17により引っ張られた状態で、回転する成形ロール
20に当接した部分において傾斜圧延され、圧延前のプ
リフォーム10および圧延され製造されたクラッドパイ
プ16は、パイプ送り方向21に送られる。プリフォー
ム10が傾斜圧延されるときには、先ず、パスライン1
9に対して比較的大きく傾斜した圧延面S1によって比
較的大きい減面率で圧延され、次いで、パスライン19
に対して比較的小さく傾斜した圧延面S2によって比較
的小さい減面率で圧延される。このため、圧延面S2に
よって圧延された後のクラッドパイプ16は良好な表面
特性を有する。
【0038】プリフォーム10のNi基合金パイプ11
は、大気放熱により急速に冷却されるものの、成形ロー
ル20による圧延が行われる直前に、高周波誘導加熱コ
イル30によってオンラインで再度加熱され、鋼管12
に比べて高温になっている。この結果、Ni基合金の平
均変形抵抗と炭素鋼の平均変形抵抗との比率Rが1〜2
程度と小さくなり、成形ロール20による圧延過程にお
ける接合界面の材料流動が良好となり、外皮割れ、接合
部の全面剥離や一部剥離という不具合が発生しない。
【0039】かかる傾斜圧延工程では、傾斜圧延装置1
3の成形ロール交差角α、送り角β、成形ロール20の
回転速度、引張装置17による引っ張りの張力および高
周波誘導加熱コイル30による加熱温度を適切に設定す
ることで、良好なクラッドパイプ16を製造することが
できる。
【0040】次に、本発明のさらに具体的な実施例につ
いて説明する。下記の表1に示すように、外管(外皮)
としては、外径70.0mm、肉厚が3種類(1.1m
m、2.0mm、3.0mm)のNi基合金製のパイプ
を用いた。Ni基合金としては、2.5%以下Co、2
0.0〜22.5%Cr、12.5〜14.5%Mo、
2.5〜3.5%W、2.0〜6.0%Fe、0.08
%以下Si、0.50%以下Mn、0.015%以下
C、残りがNiおよび不可避的不純物からなる高耐食性
Ni基合金を用いた。この種のNi基合金として、ハス
テロイC−22が例示できる。
【0041】一方、内管(母材)としては、外径60.
3mm、肉厚8.7mmのSTPT410炭素鋼製の鋼
管を用いた。外皮材の内周面および内管の外周面を酸洗
して脱スケールを行い、次いで、ダイス穴径58.0m
m、プラグ外径38.0mmで引き抜き加工を行い、3
種類のクラッド素管を製作した。各クラッド素管の寸法
を表2に示す。また、この表2には、クラッド素管の素
材肉厚比(内管肉厚ti/外皮肉厚to)をRtで表し
てある。
【0042】
【表1】 サンプル1 サンプル2 サンプル3 外皮:Ni基合金 φ70.0×1.1t φ70.0×2.0t φ70.0×3.0t 内管:STPT410 φ60.3×8.7t φ60.3×8.7t φ60.3×8.7t
【0043】
【表2】 サンプル1 サンプル2 サンプル3 クラッド素管の寸法 φ58.0×10t φ58.0×10t φ58.0×10t :外皮肉厚to 1.1 1.9 2.9 :内管肉厚ti 8.9 8.1 7.1 :Rt 8.09 4.26 2.45実施例−1 上述のように製作したクラッド素管を、ヘリカルロール
ミル(傾斜圧延装置)により次の条件でクラッドパイプ
を成形した。
【0044】送り角β: β=10° 引張速度v: v=40mm/sec 成形ロールの回転数Nr: Nr=150rpm 成形ロールの噛み込み角θ:θ=23.5° 成形ロールのコーナ部外径:φ95mm なお、成形ロールの交差角αは、材料進行方向に向かっ
て収束する方向でα=45°である。また、成形は、外
径34mmのマンドレルを用いて、外径48mmへの成
形、すなわち延伸比1.67の成形を行った。加熱工程
における加熱炉での加熱は、1050℃で、1時間行っ
た。
【0045】以下、これらの条件において、高周波誘導
加熱による補助加熱を行った場合と、行わなかった場合
との比較実験を行った。実験結果を表3に示す。また、
Ni基合金の変形抵抗および炭素鋼の変形抵抗は、それ
ぞれ図6(A)(B)に示したとおりである。さらに、
図7には、真ひずみε=0.4の場合に、圧延加工温度
が変化した際の各素材の変形抵抗の変化を示す。なお、
加熱条件Iでは36kWでクラッド素管を加熱し、加熱
条件IIでは48kWでクラッド素管を加熱した。
【0046】
【表3】 補助加熱なし 加熱条件I 加熱条件II サンプル1(Rt=8.09) 800 〜850 ℃ 1050〜1100℃ 1180〜1220℃ サンプル2(Rt=4.26) 800 〜850 ℃ 1050〜1100℃ 1180〜1220℃ サンプル3(Rt=2.45) 800 〜850 ℃ 1050〜1100℃ 1180〜1220℃ サンプル1(Rt=8.09) × × ○ サンプル2(Rt=4.26) ▲ △ ○ サンプル3(Rt=2.45) ▲ ○ ○ 但し、× 外皮割れ発生 ▲ 接合部全面剥離 △ 接合部一部剥離 ○ 接合良好 上記表3より明らかなように、高周波誘導加熱による補
助加熱を行うことによって、外皮割れを抑制することが
できることが判明した。また、外皮材を選択的に補助加
熱して、外皮材の変形抵抗を内管の変形抵抗に近付ける
ことにより、接合面での不連続変形を抑制して、接合面
の剥離を抑制することができることが判明した。このこ
とは、特に、薄肉外皮を有するクラッドパイプを成形す
るのに有効である。
【0047】なお、製造されたクラッドパイプの剪断接
合強度は、34.0〜37.4kgf/mm2であっ
た。実施例−2 次に、サンプル2のクラッド素管に対して、リダクショ
ンを変えて傾斜圧延を行った。なお、その他の成形条件
は、上述した実施例−1と同じである。実験結果を表4
に示す。
【0048】
【表4】 サンプル2に対する 補助加熱なし 加熱条件II 成形寸法(延伸比) (900〜950℃) (1180〜1220℃) φ48.0×8t(1.67) ▲ ○ φ46.0×6t(2.00) × ○ φ44.0×5t(2.46) × ○ 但し、× 外皮割れ発生 ▲ 接合部全面剥離 △ 接合部一部剥離 ○ 接合良好 上記表4より明らかなように、高周波誘導加熱による補
助加熱を行うことによって、高延伸比における成形にお
いても、外皮割れを抑制して、良好な接合を行い得るこ
とが判明した。
【0049】なお、外皮材がNi基合金の場合について
説明したが、本発明はこの場合に限定されるものではな
い。本発明は、圧延成形しようとする温度域において内
管の変形抵抗よりも外皮の変形抵抗が高く、かつ、外皮
材が内管の肉厚に対してRt(内管肉厚ti/外皮肉厚
to )≧2.5の関係を有する外皮薄肉クラッドパイプ
で、かつ、外皮材が割れ易い素材からなる場合に適用し
て有効な手法である。外皮材と内管との他の組み合わせ
は、例えば、外皮材としてはCo合金、Zr合金、Ti
合金、耐食Ni−Cr−Mo鋼、内管としてはSTB、
STBA等のボイラ用鋼管、SUS316等のステンレ
ス鋼管などを例示することができる。
【0050】また、補助加熱手段18の加熱方式は高周
波誘導加熱方式に限られるものではなく、適宜改変可能
である。例えば、直接通電方式で補助加熱を行っても良
い。
【0051】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のクラッド
パイプの製造方法によれば、傾斜圧延装置に設けた補助
加熱手段により、傾斜圧延する直前の外管が内管に比べ
て高温となるように再度加熱される結果、外管の変形抵
抗と内管の変形抵抗との差が小さくなり、外皮割れ、接
合部の全面剥離や一部剥離という不具合を抑制して、高
品位のクラッドパイプを製造することが可能となった。
【0052】また、外管の補助加熱は、圧延成形直前の
オンラインでなされるため、クラッドパイプの製造工程
も複雑にならない。また、補助加熱を行うことによっ
て、高延伸比における成形においても、外皮割れを抑制
して、高品位のクラッドパイプを製造することが可能と
なった。
【0053】また、外皮割れが抑制されることから、内
管の肉厚よりも薄肉の外皮を有するクラッドパイプを成
形する場合に適用して最適な製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に係るクラッドパイプの製造方法
を示す工程図である。
【図2】図2は図1に示すクラッドパイプの製造工程に
おいて、Ni基合金パイプの内側に鋼管を挿入したとき
の様子を示す図である。
【図3】図3は図1に示される傾斜圧延工程で用いられ
る傾斜圧延装置の要部を示す概略構成図である。
【図4】図4(A)は図3に示される傾斜圧延装置によ
るパイプ圧延中の状態をパイプの出側正面から見た図、
図4(B)は同図(A)のB−B線に沿う断面図、図4
(C)は同図(B)のC矢視図である。
【図5】図5は本実施例におけるプリフォームの補助加
熱の状態を、従来との比較において示す概念図であり、
同図(A)はプリフォームの補助加熱を行わない従来例
を示し、同図(B)はプリフォームの補助加熱を行う本
実施例を示している。
【図6】図6(A)(B)は、それぞれ、Ni基合金の
変形抵抗および炭素鋼の変形抵抗を示すグラフである。
【図7】図7は真ひずみε=0.4の場合に、圧延加工
温度が変化した際の各素材の変形抵抗の変化を示すグラ
フである。
【図8】図8は傾斜圧延法による従来のクラッドパイプ
の製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
10…プリフォーム 11…外管(Ni基合金パイプ) 12…内管(鋼管) 13…傾斜圧延装置 14…成形ロール部 16…クラッドパイプ 18…補助加熱手段 20(20a,20b,20c)…成形ロール 30…高周波誘導加熱コイル 35…制御回路
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B23K 20/00 D

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内管の外周面側に、圧延成形温度域にお
    いて前記内管の変形抵抗よりも高い変形抵抗を有する外
    管を嵌合させ、傾斜圧延装置により傾斜圧延するクラッ
    ドパイプの製造方法において、 前記傾斜圧延装置に設けた補助加熱手段により、前記傾
    斜圧延する直前の前記外管を前記内管に比べて高温とな
    るように加熱する補助加熱工程を有することを特徴とす
    るクラッドパイプの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記外管の肉厚は、前記内管の肉厚より
    も薄肉である請求項1記載のクラッドパイプの製造方
    法。
  3. 【請求項3】 前記内管は炭素鋼からなり、前記外管は
    Ni基合金からなる請求項1または請求項2に記載のク
    ラッドパイプの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記補助加熱手段が、高周波誘導加熱手
    段である請求項1〜3のいずれかに記載のクラッドパイ
    プの製造方法。
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