JPH0885046A - スクロール加工方法およびその装置ならびにスクロール圧縮機 - Google Patents

スクロール加工方法およびその装置ならびにスクロール圧縮機

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JPH0885046A
JPH0885046A JP32520094A JP32520094A JPH0885046A JP H0885046 A JPH0885046 A JP H0885046A JP 32520094 A JP32520094 A JP 32520094A JP 32520094 A JP32520094 A JP 32520094A JP H0885046 A JPH0885046 A JP H0885046A
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JP
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scroll
tool
machining
wrap
processing
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Application number
JP32520094A
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English (en)
Inventor
Kazuya Kato
和弥 加藤
Yukio Maeda
幸男 前田
Nobuo Abe
信雄 阿部
Toshio Yamanaka
敏夫 山中
Tatsuo Horie
辰雄 堀江
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 スクロールの形状精度を向上し、ラップ間の
溝底面、鏡板面およびラップ先端面の表面粗さを向上さ
せるスクロール加工方法およびその装置ならびにスクロ
ール圧縮機を提供する。 【構成】 スクロール加工装置により、ロータリテーブ
ル5に固定された工作物1とエンドミル工具2との相対
位置の変位とエンドミル工具2の振れ量とを機上測定
し、この測定データをNC制御装置へ入力し、エンドミ
ル工具2の軌跡データを補正するスクロールラップの加
工方法。底面加工用エンドミル工具2Bを、当該工具が
ラップ側面と接触しない範囲で、かつ、ラップ間の溝底
面の形状誤差が加工面の表面粗さ以下になる範囲で、当
該工具送り方向に傾斜角θ傾斜させて、前記スクロール
部品のラップ間の溝底面、ラップ周辺の鏡板面およびラ
ップ先端面を切削加工することを特徴とするスクロール
部品の加工方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スクロール加工方法お
よびその装置ならびにスクロール圧縮機に係り、冷凍機
器などに使用するスクロール圧縮機における旋回スクロ
ールおよび固定スクロールの直立部であるスクロールラ
ップの渦形状および底面部を、高精度に加工するための
スクロール加工方法およびその装置ならびにその加工方
法によって製作されたスクロール部品を用いたスクロー
ル圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のスクロール圧縮機の構造は、例え
ば、特開平1−262302号公報に記載されているよ
うに、円板状の鏡板と、この鏡板の一方の面に直立する
インボリュート曲線形状のスクロールラップ(以下単に
ラップという)とからなる旋回スクロールおよび固定ス
クロールを有し、これら両スクロールのラップを互いに
噛み合わせて、旋回スクロールを固定スクロールに対し
公転駆動させ、前記各ラップ間に形成される圧縮室で冷
媒等を圧縮するよう構成されている。
【0003】このスクロール圧縮機のラップ部の形状精
度が悪い場合には、運転時に圧縮室の形成が不完全とな
り、所望の圧縮機性能を得ることができない。このた
め、ラップ部の仕上げ加工では、一般に高い運動精度を
もつスクロールラップ加工専用のスクロール加工機が使
用されている。また、スクロールラップの量産加工にお
いては、長時間にわたり安定した加工精度が要求される
のに対し、スクロール加工機は熱変形により精度が劣化
するという問題がある。この対策として、従来、加工物
を定期的に測定し精度管理しているが、度々不良が発生
している。
【0004】一方、工具の外径、および刃長の測定方法
としては、例えば特開昭60−99548号公報に記載
されているように、自動工具交換装置により、工具を基
準収納部に収納した状態で、測定子により測定する方法
が試みられている。しかし、この測定法では、実際に加
工する主軸回転数で回転する工具の挙動を測定し、補正
することは考慮されていなかった。
【0005】ところで、例えば、特開昭62−5785
6号公報に記載されているように、旋回スクロールある
いは固定スクロールなど、ラップ部分がインボリュート
曲線で形成されるスクロール部品を加工するスクロール
加工機は、直進運動する移動テーブルと、該移動テーブ
ル上に積載された主軸部と、該主軸部に支持された回転
軸の先端部に取り付けられたエンドミル工具と、該エン
ドミル工具に対して鉛直に対面するように配置され、ス
クロール部品を支持して回転するロータリテーブルとに
より構成されている。
【0006】上記特開昭62−57856号公報記載の
インボリュート形状加工方法によれば、エンドミル工具
の刃面を被加工物(スクロール部品)のインボリュート
の基礎円の接線と直交するように被加工物の加工面に対
接させ、エンドミル工具の中心が前記インボリュートの
基礎円の接線上を移動させるように前記移動テーブルを
直進させるとともに、前記ロータリテーブルを、その回
転角度が前記移動テーブルの送り量と一定の比例関係で
連動するように回転させて切削加工している。
【0007】従来、この種のスクロール部品の加工にお
いては、スクロールラップの外側および内側壁面のイン
ボリュート曲線を側面加工用エンドミル工具により仕上
げ加工し、ラップ間の溝底面、ラップ外周の鏡板面およ
びラップ先端面は底面加工用エンドミル工具により仕上
げ加工していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】スクロール加工機を含
めた一般の工作機械の熱変形は、主に駆動モータからの
発熱、テーブルの摺動面からの摩擦熱、加工点から発生
する切削熱による。本発明に係るスクロールラップを切
削加工する際、これに使用するスクロール加工機が上記
熱源により熱変形を生じると、ラップの形状精度は劣化
する。このため、スクロールラップの加工作業を行う毎
日の立ち上げ時には、スクロール加工機をアイドリング
させ、熱変形が飽和したのちに、実際の加工が行われて
いる。しかし、その後も熱変形を生じ、加工精度は劣化
する。この熱変形は加工熱のほか、外気温の変化にも左
右されるため、スクロール加工機の温度測定による変形
補正では不十分で、加工物を定期的に抜き取り、精度管
理を行なっているのが実情であった。
【0009】また、工具が誤って主軸軸心に対し斜めに
チャッキングされたり、工具のチャック部分と切れ刃部
分の外径に偏心があったり、工具が偏心してチャッキン
グされたりした場合、工具が回転したときの切れ刃部分
の外径の包絡線は、工具の外径と振れ量の和となる。こ
のため、スクロール加工機の工具軌跡に工具の外径を入
力して溝加工を行なった際、加工される溝幅は工具の振
れ量に相当する加工誤差を生じることになる。
【0010】本発明は、上記従来技術の問題点を解決す
るためになされたもので、本発明の第一の目的は、スク
ロール加工装置の熱変形、および工具の振れ量を測定し
補正することにより、スクロールの形状精度を向上する
スクロール加工方法およびその装置を提供することにあ
る。
【0011】一方、スクロール部品の加工のうち、底面
加工においては、エンドミル工具による切削加工では良
好な表面粗さが得られず、旋回スクロールと固定スクロ
ールとの隙間面積が増加するため圧縮中の流体(例えば
冷媒)が洩れ、所望の圧縮機性能を得られないという問
題があった。この原因について以下に述べる。
【0012】従来のスクロール加工機は、スクロール部
品を支持するロータリテーブルの回転軸に対し、主軸部
の回転軸が平行に組み立てられ、これにエンドミル工具
が装着されている。この状態で、スクロール部品の底面
をエンドミル工具により切削加工すると、当該エンドミ
ル工具の進行方向に対し、当該エンドミル工具の先端部
と後端部とで2回の切削加工が行われることになる。こ
の際、エンドミル工具の先端部で発生した切り屑の一部
が、エンドミル工具の後端部で、切れ刃と被削材の間に
巻き込まれることがある。切り屑は加工硬化しているた
め、この場合には、被削材に傷が生じ、表面粗さが悪化
する。また、エンドミル工具の進行方向に対して、先端
部で加工した加工断面の凹凸面を再度後端部で加工する
と凸部を起点としたむしれが発生する。このむしれは穴
となるため、表面粗さが悪化する。
【0013】図28は、エンドミル工具を傾斜させず加
工した従来のスクロール加工方法によるスクロール底面
の組織を示す顕微鏡写真である。黒鉛組織部に欠損が見
られ、むしられたような加工面となっている。図28に
示す欠損は一般にむしれとも呼ばれ、加工面はこの欠損
部が穴となるため表面粗さが悪くなる。図30は、図2
8に示した加工面を触針式表面粗さ計により測定した結
果を示す線図である。表面粗さは約10μmRmaxと
なっている。
【0014】また、例えば、特開昭61−236442
号公報には、鏡板面の最外周部を研削加工する加工法が
開示されており、ラップ間の溝底面およびラップ周辺の
鏡板面をエンドミルにより加工し、そのエンドミル加工
面と鏡板面の未加工面との段差を計測し、この計測に基
づいて未加工面を研削加工するものである。この方法を
用いれば、鏡板面を良好な表面粗さに仕上げることが可
能である。しかし、従来の加工時間に、計測,研削加工
時間が加わるため、加工時間が長くなるという問題があ
った。また、ラップ間の溝底面の表面粗さについて考慮
されていなかった。
【0015】本発明は、上記従来技術の問題点を解決す
るためになされたもので、本発明の第二の目的は、研削
加工などの加工工程を追加することなしに、ラップ間の
溝底面、鏡板面およびラップ先端面の表面粗さを向上さ
せるスクロール部品の底面加工方法を提供することにあ
る。
【0016】さらに、本発明の第三の目的は、スクロー
ル部品の形状精度の向上と、ラップ間の溝底面、鏡板面
およびラップ先端面の表面粗さの向上と相俟って圧縮機
性能を向上したスクロール圧縮機を提供することにあ
る。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記第一の目的を達成す
るために、本発明のスクロール加工方法に係る第一の発
明の構成は、鏡板上に直立する渦巻状ラップを有し、該
ラップ部分がインボリュート曲線で形成されるスクロー
ル部品を、少なくとも、直進運動する複数の移動テーブ
ルと、前記スクロール部品を支持して回転運動するロー
タリテーブルとを備え、前記移動テーブルの一つに工具
を取付けた主軸部を有するスクロール加工装置を用いて
加工するスクロール加工方法において、前記スクロール
加工装置の熱変形により前記工具と前記スクロール部品
との間に生じた相対位置の誤差を測定する工程と、この
測定結果をNC制御装置に入力する工程と、このNC制
御装置により熱変形による誤差を補正して加工する工程
とからなるものである。
【0018】より詳しくは、主軸部に備えた工具とロー
タリテーブルに支持されたスクロール部品との熱変形に
よる相対位置の誤差を測定する方法として、回転中の工
具を停止させることなく、前記ロータリテーブルの近傍
に並置された測定器により該工具の位置の変化を測定
し、この工具の位置の変化を、スクロール部品を基準と
した工具の相対変位として前記NC制御装置に入力し、
当該NC制御装置内の工具座標値をインラインで補正す
るようにしたものである。
【0019】また、回転させた状態の工具の切れ刃の包
絡線を測定することにより、工具の取付け部に対する切
れ刃部の振れと、工具を取付けたときの姿勢誤差を含ん
だ見かけ上の工具の外径を測定するものである。さら
に、前記工具の外径を、加工時と同じ主軸回転数で測定
することにより、工具の振れ、取付け誤差のほか、熱変
位による誤差をも含んだ工具の外径を測定し、NC制御
装置内の工具座標値の補正を可能としたものである。
【0020】さらに、前記測定器により、工具の振れを
含んだ見かけ上の工具の外径と真の工具の外径との両者
を測定し、これら両者の差が設定した許容値を超える場
合は、前記測定器からNC制御装置へアラーム信号を出
力し、工具の心だし指令信号を発する、あるいは主軸の
回転を停止するようにしたものである。
【0021】また、上記第一の目的を達成するために、
第一の発明に係るスクロール加工装置の構成は、端板上
に直立する渦巻状ラップを有し、該ラップ部分がインボ
リュート曲線で形成されるスクロール部品を加工する装
置であって、少なくとも、直進運動する複数の移動テー
ブルと、前記移動テーブルの一つに積載された主軸部
と、この主軸部に取付けた工具と、この工具に対面する
ように配置され、前記スクロール部品を支持して回転運
動するロータリテーブルとを備えたスクロール加工装置
において、前記ロータリテーブルと並置され、前記スク
ロール加工装置の熱変形により前記工具とスクロール部
品との間に生じた相対位置の誤差を測定する測定器と、
この測定器の測定結果を入力し、熱変形による誤差を補
正して加工するNC制御装置とを備えたものである。
【0022】より詳しくは、スクロール加工装置におい
て、測定器は、レーザ光源と、回転させた状態の工具の
切れ刃の包絡線をレーザ光線の走査幅に置くようにする
光学系と、工具の位置座標および工具の外径の測定信号
を出力する受光素子とからなる非接触光学式測定器を用
いるものである。
【0023】また、上記第二の目的を達成するために、
本発明のスクロール加工方法に係る第二の発明の構成
は、鏡板上に直立する渦巻状ラップを有し、該ラップ部
分がインボリュート曲線で形成されるスクロール部品
を、少なくとも、直進運動する移動テーブルと、該移動
テーブル上に積載された主軸部と、該主軸部の回転軸に
取り付けた工具と、該工具と対面するように配置され前
記スクロール部品を支持して回転するロータリテーブル
とを有するスクロール加工装置を用いて加工するスクロ
ール加工方法において、上記主軸部の回転軸上の工具
を、当該工具がラップ側面と接触しない範囲で、かつ、
ラップ間の溝底面の形状誤差が加工面の表面粗さ以下に
なる範囲で、当該工具送り方向に傾斜させて、前記スク
ロール部品のラップ間の溝底面、ラップ周辺の鏡板面お
よびラップ先端面を切削加工するようにしたものであ
る。
【0024】なお、付記すれば、本発明のスクロールラ
ップ間の溝底面、ラップ外周の鏡板面およびラップ先端
面の加工方法の特徴は、スクロール加工機において、ス
クロール部品を回転支持するロータリテーブルの回転軸
に対し、底面加工用エンドミル工具を固定した主軸の回
転軸を工具送り方向、つまり、ロータリテーブルの回転
に対し接線方向、あるいはその反対方向に、ラップ側面
とエンドミル工具が接触しない範囲で、なおかつ、底面
の形状精度が許容値を満足する範囲内で傾斜させ、切削
加工するものである。
【0025】さらに、上記第三の目的を達成するため
に、本発明のスクロール圧縮機に係る第三の発明の構成
は、密閉容器内に、電動機と該電動機にクランク軸を介
して連結する圧縮機構部とを収納してなり、上記圧縮機
構部は、それぞれ鏡板上に直立する渦巻状のラップを備
えた固定スクロールおよび旋回スクロールを、互いに前
記ラップを内側に向けて噛み合わせ、前記旋回スクロー
ルを固定スクロールに対して公転駆動させて両スクロー
ルのラップ部に形成される空間容積を逐次減少して流体
を圧縮するものであるスクロール圧縮機において、前記
固定スクロールおよび旋回スクロールは、ラップ間の溝
底面、ラップ周辺の鏡板面およびラップ先端面が、半円
形状の切削条痕を残した表面粗さのものであり、ラップ
間の溝底面、ラップ周辺の鏡板面およびラップ先端面
が、断面形状の一様な凹凸を形成したスクロール部品を
用いたものである。
【0026】
【作用】上記第一の発明の技術的手段による働きは次の
とおりである。スクロールラップ部の加工において使用
されるスクロール加工装置の熱変形を、ロータリテーブ
ルが取り付けられたコラム上で、かつ該テーブル近傍の
測定器(たとえば非接触光学式変位計)により工具の位
置、つまり該テーブルに対する工具の相対変位量が測定
できる。これにより、スクロール加工装置において、コ
ラムなどの予想が困難な熱変形量の補正が可能となり、
スクロールラップの形状をスクロール加工装置の使用時
間、外気温の変化などによらず、常に高精度に加工でき
る。
【0027】また、上記測定器を用いて、工具の外径を
加工回転数で回転させた状態で測定することにより、従
来は加工物を測定する以外に手段のなかった、工具取り
付け不良や工具製作不良を測定でき、工具の振れ量を含
めた工具外径をNC制御装置に入力できるため、高い形
状精度でスクロール部品を加工できる。また、この工具
振れ量が許容値を超える場合には、工具の交換を行うこ
とで不良率の低減をはかることができる。
【0028】また、上記第二の発明の技術的手段による
働きは次のとおりである。上記の第二の発明の方法で
は、エンドミル工具によるカッタマークが工具先端部
か、あるいは後端部でのみ加工されたものとなる。この
ため、加工面は均一な凹凸のある面となる。また、切り
屑の巻き込みや加工面のむしれが減少し、従来の加工方
法に比べ表面粗さが良好となる。また、切削加工面には
一定方向に揃ったカッタマークが残る。このため、光が
乱反射せず、いわゆる虹面とよばれる見た目にも良好な
切削面となる。
【0029】さらに、上記第三の発明の技術的手段によ
る働きは次のとおりである。スクロール圧縮機は、スク
ロールの渦形状の精度を向上させてあるので、ラップ側
面間からの冷媒等のガス漏れ量が減り、圧縮機性能が向
上する。また、スクロール底面の表面粗さを向上させて
あるので、圧縮機性能の向上を図ることができるととも
に、加工面の断面形状が一様な凹凸形状であるため、圧
縮機運転時には、この凹部に潤滑油が溜められ、旋回ス
クロールと、固定スクロールとの間の摺動特性が向上
し、圧縮機起動時の負荷を小さくできる。また、摺動部
の摩耗の低減を図ることができ、スクロール圧縮機の寿
命を伸ばすことができる。
【0030】
【実施例】本発明の実施例の説明に先立ち、本発明の対
象となるスクロール圧縮機、スクロール部品、スクロー
ル加工装置、スクロール加工の一般的な技術事項を説明
する。図17は、一般的なスクロール圧縮機の圧縮機構
部を示す要部断面図である。図17に示すスクロール圧
縮機は、密閉容器内に電動機と該電動機にクランク軸を
介して連結する圧縮機構部とを収納してなるものであ
る。
【0031】図17において、70は密閉容器、71
は、密閉容器70に固定した固定スクロール、71aは
鏡板、71bは固定スクロールラップ(以下単にラップ
という)、71cは吸入口、71dは吐出口、72は旋
回スクロール、72aは鏡板、72bは旋回スクロール
ラップ(以下単にラップという)、72cは軸受、72
dはキー溝、73はフレーム、73aはベアリング、7
3bはキー溝、74はオルダムリング、74aは突起
部、75はクランク軸、75aは偏心部、76は、固定
スクロール71とフレーム73とを締結するボルト、7
7は吸入管である。
【0032】図17に示す圧縮機構部では、フレーム7
3の軸受73aでクランク軸75が支持されており、ク
ランク軸の偏心部75aは旋回スクロール72の軸受7
2aに嵌入されている。フレーム73に設けられたキー
溝73bと旋回スクロール72に設けられたキー溝72
dにはオルダムリング74の突起部74aが挿入されて
おり、クランク軸75に直結されたモータ(図示せず)
からの回転力を、旋回スクロールの旋回運動に変換す
る。固定スクロール71および旋回スクロール72は、
互いにラップ71b,72bを内側に向けて噛み合わさ
れ、それぞれのラップ71b,72bの側面間、歯先
面,底面間に微小な隙間を形成する状態になっている。
【0033】このようなスクロール圧縮機は、クランク
軸75の回転によって、旋回スクロール72のラップ7
2bが固定スクロール71のラップ71bに添って微小
間隙をもって公転する。このような動作によって、流体
(冷媒ガス)は、吸入管77から固定スクロール71の
吸入口71cに吸入され、両スクロールのラップ部に形
成される密閉空間を逐次、中心部に向かって圧縮され
る。圧縮されたガスは、固定スクロール71の吐出口7
1dから密閉容器70内に吐出され、さらに密閉容器7
0に接続された吐出管(図示せず)から、例えば冷凍サ
イクルの冷媒配管に吐出される。
【0034】次に、本発明の測定原理に関して、通常の
マシニングセンタとスクロール加工機(以下スクロール
加工装置という)との違いについて図5を参照して説明
する。図5は、切削加工方法の違いによる熱変形の表れ
かたの違いを示す説明図である。
【0035】スクロール加工装置は、一般にエンドミル
工具を用い、直進運動する移動テーブルと、回転運動す
るロータリテーブルにより加工を行う。一般に、通常の
マシンニングセンタのXYテーブル上に被加工物を取り
付け、インボリュート曲線などの円弧形状を加工する場
合、座標象限の切り替え時に送りねじのバックラッシュ
等に起因する反転誤差が生じ、加工面に突起ができる。
この反転誤差を減小させるためには、切削速度を下げる
必要があり、インボリュート曲線などの円弧形状を高速
高精度に加工することができなかった。これに対し、直
進運動する移動テーブルと回転運動するロータリテーブ
ルとにより円弧形状を加工する場合には、前記の反転誤
差が生じないため、高速高精度にインボリュート曲線な
どの円弧形状を加工できる。
【0036】次に、装置等の熱変形が加工精度へ及ぼす
影響を、通常のマシニングセンタとスクロール加工装置
とで比較した結果を示す。図5(a)は、通常のマシニ
ングセンタにおいて、XYテーブル上に被加工物を取り
付け、半径dの円柱を加工した場合の加工結果のモデル
を示したものである。図5(a)において、破線40は
マシニングセンタに熱変形が生じていない理想状態での
加工結果である。これにたいし実線41は、たとえばコ
ラム部の熱変形により、XYテーブルに対するエンドミ
ル工具の相対変位εが図中の矢印42の方向に生じた場
合の加工結果のモデルである。熱変形によりエンドミル
工具の位置誤差が生じても、円柱の形状精度(半径d)
は熱変形の影響を受けることはない。しかし、熱変形に
より円柱の中心位置が設計値に対し、42の方向に偏差
量εの誤差を生じる。
【0037】これに対し、図5(b)は、直進運動する
移動テーブルと回転運動するロータリテーブルとによ
り、半径dの円柱を加工した際の加工結果のモデルであ
る。この場合の偏差εは、エンドミル工具の中心座標と
ロータリテーブルの中心との相対変位となる。破線40
は偏差が生じていない理想的な状態での加工結果であ
る。これに対し、実線41はエンドミル工具の中心とロ
ータリテーブルの中心とに42方向に相対変位εが生じ
た状態の加工結果である。実線41に示した円柱の半径
は、移動テーブルの移動方向がX軸方向の場合、
【数1】 となり、熱変形により円柱の外径が大きくなる。
【0038】このように、スクロールのラップは直進運
動する移動テーブルと回転運動するロータリテーブルと
により加工することで、高速高精度に加工することが可
能であるが、スクロール加工装置が熱変形した場合、加
工精度が大きく劣化するため、熱変形対策が重要課題と
なる。スクロール加工装置やマシニングセンタの熱変形
は、上述したように、主に駆動モータからの発熱、テー
ブル摺動面からの摩擦熱、加工点から発生する切削熱に
より生ずる。また、テーブル駆動用のボールねじの熱変
形により位置決め誤差が発生するが、この誤差はリニア
スケールによるテーブルの絶対位置の測定によるフィー
ドバック制御によりほぼ解消されている。
【0039】本発明の対象とする熱変形は、例えばコラ
ム部の変形などであり、一般にアッベの誤差と呼ばれる
ものである。このような誤差は、図5(a)で示した如
く、従来のマシニングセンタでは無視されてきた誤差で
ある。
【0040】次に、本発明の対象であるスクロールラッ
プ部の加工において、スクロール加工装置の熱変形によ
る加工精度への影響を図2,3,4ならびに図6,7を
参照して具体的に検討する。図2は、スクロール渦形状
の加工部の斜視図、図3は、従来のスクロール圧縮機の
ラップ組み合わせ状態の一例を示す側断面図、図4は、
図3に示すスクロールラップの加工方法の一例を示す説
明図、図6は、スクロール渦形状加工において表れる熱
変形誤差を示す模式図、図7は、スクロール渦形状加工
において表れる熱変形誤差を示す線図である。
【0041】スクロール加工装置では、図2に示したよ
うに、直進運動する移動テーブル上のロータリテーブル
5に、工作物(被加工物)1をロータリテーブル5の中
心にチャック10で固定し、該ロータリテーブル面に鉛
直な回転主軸にエンドミル工具2を装着し、前記移動テ
ーブルを直進させるとともに、前記ロータリテーブル5
を前記移動テーブルの送り量と一定の比例関係で連動す
るように回転させ、切削加工している。図2において、
1は工作物で、固定もしくは旋回スクロール、2はエン
ドミル工具、5はロータリテーブル、10はチャック、
aは移動テーブルの移動方向、bはロータリテーブルの
回転方向である。
【0042】また、スクロール圧縮機において、前記方
法で加工されたラップを詳細に観察すると、図3に示す
ような形状をしているのが通例である。つまり、連続し
た渦巻溝31(ラップ間の凹み)を形成するラップ23
の根元部25は微小な段付き形状を呈している。ここ
で、21は固定スクロール、22は旋回スクロール、2
3は、両スクロールのラップ、24は、両スクロールの
鏡板、25はラップ根元部、26は段付き形状、27は
ラップ先端部、28は面取り形状、29はラップ側面、
30は底面、31は渦巻溝を示す。
【0043】このような、図3に示すラップ根元25の
段付き形状26は、渦巻溝31の加工方法に関連し、通
常、図4に示す加工方法をとることから発生する。図4
(a)は、側面加工用エンドミル工具32による加工を
示す正面図、図4(b)は、図4(a)の側面図、図4
(c)は、底面加工用エンドミル工具33による加工を
示す正面図、図4(d)は、図4(c)の側面図であ
る。
【0044】ラップ23のエンドミル工具による切削加
工は、あらかじめ、粗引き加工を終了している固定,旋
回スクロール21,22を用いて、まず、図4(a),
(b)に示すように、側面加工用エンドミル工具32に
より渦巻溝31を形成するラップ側面29を仕上げ加工
する。次に、図4(c),(d)に示すように底面加工
用エンドミル工具33を用いて、該エンドミル工具33
とラップ側面29が接触しない軌跡で底面30の加工を
行う。その結果、両エンドミル工具32,33の軌跡の
相違分が微小な段付き形状26となって残存する。この
微小な段差である段付き形状26と一方のスクロールの
ラップ先端27とが接触しないようにするため、微小な
段付き形状26に対し、ラップ先端27には面取り形状
28(図3参照)をつける。
【0045】このスクロールラップ部を、上述したスク
ロール加工装置にて切削加工したさいの、上記熱変形に
より生じる誤差を図6,7に示す。つまり、図6は、直
進移動する移動テーブルと回転運動するロータリテーブ
ルによりスクロール圧縮機のラップ形状の加工を行う際
に、エンドミル工具とロータリテーブルに相対変位εが
X軸の+方向(図示方向)に生じた場合の加工結果を示
したものである。側面加工用エンドミル工具32の軌跡
は、図示実線のようにεだけX軸+方向となり、一点鎖
線で示す理想工具軌跡に対して、実線のようにラップの
内側(内線35)では削り残し、ラップの外側(外線3
4)では削り過ぎとなる。
【0046】図7は、図6のような熱変形誤差が生じた
場合のスクロールのラップを3次元測定器により渦の外
側から一筆書き(測定順序:外線外側→外線中心部→内
線中心部→内線外側)に測定し、理想のインボリュート
曲線との偏差量をグラフ化したものである。理想形状に
対し、スクロールラップの内線側では削り残しとなり、
外線側では削りすぎる結果となっている事がわかる。こ
のようなラップの形状精度が悪い旋回スクロールと固定
スクロールとを噛み合わせて、圧縮機を組み立てると、
運転時に圧縮室に隙間が生じ、冷媒が漏れて圧縮機の性
能の低下をきたすか、両者のラップが接触して運転がで
きなくなる。
【0047】次に、エンドミル工具の振れについて検討
する。スクロールラップの加工法で述べたように、ラッ
プ溝部は底面加工用エンドミル工具を使用して加工す
る。このラップ溝加工において、エンドミル工具を傾け
て取り付けるか、またはエンドミル工具の切れ刃部とシ
ャンク部が偏心している場合、またはエンドミル工具の
重心がずれている場合に、主軸を回転させると、エンド
ミル工具の切れ刃部に振れが生じ、溝の加工幅はエンド
ミル工具の外径に、回転時の振れ幅を加えたものとな
る。
【0048】特に、加工時間の短縮を目的に、現在、ス
クロール加工装置を含めた、一般の工作機械の主軸回転
数は高くなっており、たとえエンドミル工具の偏心がわ
ずかであっても、高速回転時には振れ幅が大きく、所望
の溝幅を得られない。この溝幅が増加すると、スクロー
ルラップの段付き形状を小さくするため冷媒が漏れ、所
望の圧縮機性能が得られない。
【0049】主軸を切削加工時と同じ回転数で回転させ
た状態で、エンドミル工具の振れ量を測定する手段はな
く、従来、試加工を行い加工物の形状を測定することに
より判定していた。以上に、本発明に係る原理に関する
説明をした。本発明、特に第一の発明は、スクロール加
工装置の熱変形、およびエンドミル工具の振れ量を、工
具の回転状態のまま機上測定し、その測定データをNC
制御装置へ入力し、エンドミル工具の軌跡データを補正
し、高精度にスクロールラップを加工できるスクロール
加工方法とその加工装置に関するものである。
【0050】〔実施例 1〕次に、第一の発明の一実施
例を図1および図8ないし図15を参照して説明する。
図1は、第一の発明の一実施例に係るスクロール加工装
置の外観斜視図である。図1に示すスクロール加工装置
は、一般的な横軸マシニングセンタとほぼ同様の構成で
あり、ベッド9上に設けられ、NC制御装置からの位置
決め入力で移動可能な移動テーブルに係るX軸テーブル
4、Z軸テーブル8、コラム7に設けられ、NC制御装
置からの位置決め入力で移動可能な移動テーブルに係る
Y軸テーブル6、このY軸テーブル6に設けられた回転
運動するロータリテーブル5が配置されている。このロ
ータリテーブル5上に、工作物1である旋回もしくは固
定スクロールがチャック10により固定されている。
【0051】加工方法は、主軸3に取り付けられている
エンドミル工具2を用い、直進運動する移動テーブル4
の送り量と一定の比例関係で、回転運動するロータリテ
ーブル5の回転角度が連動するように回転せしめ切削加
工している。移動テーブル、およびロータリテーブルの
制御はすべてNC制御装置(図示せず)からの入力信号
により行われる。
【0052】さらに、非接触光学式の測定器11がY軸
テーブル6上で、かつ、ロータリテーブル5のチャック
10近傍に取り付けられており、エンドミル工具2を測
定する際には、エンドミル工具2の回転を停止させるこ
となく、この箱状の測定器11の中心にエンドミル工具
2を移動させて測定する。この測定は、全てNC制御装
置内のプログラムにより行われ、測定結果は自動的にN
C制御装置に取り込まれる。また、測定に要する時間
は、エンドミル工具2の回転を停止させる必要がないた
め、約20秒と非常に短い。
【0053】図8は、測定器の原理を示す系統図、図9
は、測定器内でエンドミル工具を測定するレーザ光線の
光路を示す斜視図、図10は、測定器の測定システムを
示すブロック図、図11は、回転中のエンドミル工具の
測定を示す模式図、図12は、回転中のエンドミル工具
を測定した際に得られる出力信号を示した線図である。
【0054】図8には、本実施例におけるエンドミル工
具2のx軸方向、およびy軸方向の非接触光学式測定器
による測定法を示す。測定原理は、レーザ外径測定器と
ほぼ同様である。つまり、半導体レーザ(波長780n
m)50からのレーザ光線をポリゴンミラー51、およ
び反射ミラー52で反射し、コリメータレンズ(Fθレ
ンズ)53により平行光線にする。この走査光をビーム
スプリッタ54でx軸方向とy軸方向に分け、さらにミ
ラー55に反射させ、エンドミル工具2の外径をx軸方
向とy軸方向に走査して測定する。この走査されたレー
ザ光線はx軸用およびy軸用の受光レンズ56で集光
し、受光素子57で光の明暗に応じた電気信号に変換す
る。
【0055】図9は、エンドミル工具2を走査するレー
ザ光線を模式的に示したものである。Lxは、x軸方向
の工具中心座標および工具径測定用レーザ光線、Ly
は、y軸方向の工具中心座標および工具径測定用レーザ
光線、Lzは、工具長測定用レーザ光線を示す。すなわ
ち、x軸方向およびy軸方向にお互いにレーザ光線L
x,Lyが直交するように前記ミラー55(図8参照)
を調整し取り付ける。さらに、本実施例では、もう1台
の光源を使用し、Z軸方向にもレーザ光線Lzを走査さ
せ、工具長も同時に測定するシステムとなっている。
【0056】図10は、本測定器の測定システムを示し
たものである。受光素子57により得られたアナログ入
力信号のエッジを検出(ステップ60)し、一方波形整
形(ステップ61)したのち、この入力信号とクロック
(ステップ62)信号との積をカウンタによりカウント
(ステップ63)する。このカウント数を演算(ステッ
プ64)し、距離に変換後NC制御装置にインライン入
力する。
【0057】図11に示すように、レーザ光源からのレ
ーザ光線の走査幅をLとする。レーザを1回走査するご
とに生じる明暗のうち、走査開始から最初にレーザを受
光しなくなる時間をl1、エンドミル工具により遮られ
たレーザ光線を再び受光し、走査を終了するまでの時間
をl2とする。つまり、l1およびl2は測定ボックス
に対するエンドミル工具の位置座標となる。また、レー
ザを受光していない時間dは、エンドミル工具の外径と
なる。すなわち、 L=l1+d+l2 である。ここ
で、レーザの走査回数は10000回/秒、受光素子5
7の最小分解能は0.1μmである。
【0058】次に、本測定器における回転中のエンドミ
ル工具2の測定原理を示す。エンドミル工具2を回転中
に測定すると、上記測定内容のl1、l2、およびdの
測定信号は、エンドミル工具2の1回転において刃数に
相当する振幅を持った波形となる。図12(a),
(b),(c)に測定例を示す。このとき測定したエン
ドミル工具2は、工具外径10mm、刃数4枚であり、
主軸回転数を10000回転/分とした。
【0059】図12の線図から、出力信号としてエンド
ミル工具1回転中に4回のエンドミル工具の刃数に相当
する振幅が認められる。レーザ光線の走査は0.000
1秒周期で行われるため、上記測定条件では、エンドミ
ル工具1回転中に60回の走査が行われる。このうち、
図12(a)に示すエンドミル工具の外径dは波形の最
大値、図12(b),(c)に示すl1,l2は振幅の
最小値を取り出すことにより所望のデータが得られる。
【0060】上記の測定システムにより、エンドミル工
具2の外径dのほか、x、y軸のl1、およびl2によ
りx軸方向、およびy軸方向のエンドミル工具位置が測
定できる。スクロール加工装置のコラム7やテーブルの
熱変形は、主軸3側とロータリテーブル5側の両者で生
じるため、本実施例では、この両者の変位をロータリテ
ーブル5を基準とした主軸3側、つまりエンドミル工具
2の相対変位として測定する。このため、ロータリテー
ブル5、測定器11間にも熱変形が生じた場合、ロータ
リテーブル5を基準としたエンドミル工具2の測定値に
誤差が生じる。このため、本実施例では、ロータリテー
ブル5と測定器11との両者を同じY軸テーブル6に取
付け、さらにできる限り近づけることで、両者の位置変
化による誤差を最小にしている。
【0061】また、測定したx、y、z軸方向の初期設
定値からの変位量は、NC制御装置の仮想原点を修正
し、この変位量を補正する。また、エンドミル工具2の
外径dはNC制御装置内の工具外径登録箇所に自動的に
再登録される。次に、エンドミル工具2の振れ量の測定
方法を説明する。エンドミル工具2を主軸軸心に対して
傾いて取り付けたか、あるいはエンドミル工具2自身が
振れを持っている場合、またはエンドミル工具2の重心
が偏心している場合に、主軸3を回転させるとエンドミ
ル工具2は振れ量を持って回転する。従来、この振れ量
を測定する手段はなかったが、エンドミル工具2を用い
て精密加工を行うためには、この振れ量を含めたエンド
ミル工具2の外径測定が必要である。
【0062】図13は、エンドミルが振れている状態を
示す説明図、図14は、図13のA−A´断面によりエ
ンドミルの振れを示す拡大図、図15は、図13のA−
A´断面における測定結果を示す出力信号の波形線図で
ある。図15(a),(b),(c)は、l1,エンド
ミル工具直径d,l2の波形である。図13には、エン
ドミル工具2が主軸軸心に対して角度θ゜傾いてホルダ
3aに取り付けられて回転している状態を示す。
【0063】図14,15に示すように、エンドミル工
具の座標を測定するl1、およびl2の出力信号は、図
15に示すように位相が180゜ずれた波形となる。図
中の0゜の位置、すなわちl1が最小(l1min)の
とき、l2は最大(l2max)となり、180゜の位
置のl1が最大(l1max)のとき、l2は最小(l
2min)になる。このときのエンドミル工具の真の外
径はdであるが、実際の切削加工はエンドミル工具の振
れ量を含めた外径はd´(図13,図14参照)とな
る。
【0064】エンドミル工具の振れ量を含めた工具外径
d´は次式で与えられる。ここでレーザ光線の走査幅を
Lとする。エンドミル工具の真実の外径
【数2】 d=L−(l1+l2) ……(2) 振れを含めたエンドミル工具の外径
【数3】 d´=L−(l1min+l2min)……(3) このエンドミル工具の外径測定は、刃先から軸方向切込
み長までを、設定された間隔で測定する。
【0065】また、エンドミル工具の振れ量をγとする
とγは次式(4)で与えられる。
【数4】 γ=(d´−d)/2 ……(4) このエンドミル工具の振れ量があらかじめ設定した許容
値を超えた場合には、不良と判断する。測定器からは、
NC制御装置にアラーム信号を送り、工作機械は自動停
止する。これにより、工具不良、工具取り付けミスによ
る不良品の発生を0にできる。つまり、本測定器の特徴
は、実際の加工と同じ主軸回転数でエンドミル工具を測
定し、実加工と同じエンドミル工具の振れ量を測定で
き、さらにこの値を加工に使用するため、加工精度の向
上が図れることである。
【0066】次に、この測定器を実際に使用して、スク
ロール加工装置の熱変形量を測定し、加工を行なった結
果を図16に示す。図16は、本実施例のスクロールラ
ップ部の測定結果を示す線図である。図16(a)は、
熱変形したスクロール加工装置によりスクロールラップ
部を加工したのち、これを3次元測定器で測定した結果
である。外線側では約10μmの削り残し、内線側では
逆に10μmの削りすぎとなった。
【0067】この熱変形を本実施例の測定手段で測定
し、自動的にNC制御装置の仮想原点を修正したのち、
加工を行なった結果を図16(b)に示す。加工したラ
ップの渦形状は理想のインボリュート曲線から±5μm
に加工できた。この結果から、本発明の有効性が証明で
きる。
【0068】本実施例によれば、直進運動する移動テー
ブルと、回転運動するロータリテーブルにより構成され
るスクロール加工装置を用いて、エンドミル工具により
スクロール圧縮機部品のラップ部を加工する際、加工精
度を劣化させる原因である熱変形およびエンドミル工具
の振れ量を測定し、この結果をインラインでNC制御装
置に入力し、スクロール加工装置の熱変形とエンドミル
工具の振れ量を補正することができる。これにより、イ
ンボリュート曲線の形状精度を±10μmから±5μm
と向上し、試加工に1時間要していた補正を約20秒に
短縮することができた。
【0069】なお、上記実施例では、測定器は非接触光
学式測定器の例を説明したが、本発明はこれに限らず、
測定器に接触式変位計を用いても、スクロール加工装置
の熱変形およびエンドミル工具の振れ量を測定し、上記
実施例と同様の効果を得ることができる。
【0070】次に、上記スクロール部品の加工方法とス
クロール圧縮機の性能との関係について説明する。スク
ロール圧縮機は、鏡板と、鏡板の一方の面に直立するイ
ンボリュート曲線形状のラップとからなる旋回スクロー
ルおよび固定スクロールを有し、これら両スクロールの
ラップを互いに噛み合わせて、旋回スクロールを固定ス
クロールに対し公転駆動させ、前記各ラップ間に形成さ
れる圧縮室で冷媒等を圧縮するよう構成されている。こ
のため、圧縮室を形成する際の隙間面積が大きいと圧縮
機の性能劣化を招く。これに対して、本実施例のスクロ
ール加工方法を用いることにより、スクロールの渦形状
の精度を向上させることができるため、ラップ側面間か
らの冷媒等のガス漏れ量が減り、圧縮機性能の向上を図
ることができる。
【0071】次に、第二の発明の各実施例を図18ない
し図33を参照して説明する。 〔実施例 2−1〕図18は、本発明の一実施例に係る
スクロール底面加工時の加工部の斜視図、図19は、図
18に示すスクロール底面加工時のY軸方向断面図、図
20は、本発明の一実施例を適用するスクロール加工機
の外観斜視図、図21は、工具を切削方向に傾斜させ底
面を切削加工した場合の工具送り方向に対して直角方向
の断面図、図22は、工具を傾斜させた際の工具送り方
向の加工を示す説明図である。
【0072】まず、図20に示すスクロール加工機は、
先に図1に示したスクロール加工機とほぼ同様の構成で
ある。図中、図1と同一符号のものは同等部分を示す。
図20に示すスクロール加工機による加工方法は、主軸
3に取り付けられているエンドミル工具、例えば、側面
加工用エンドミル工具2A、底面加工用エンドミル工具
2Bを用い、直進移動するx軸テーブル4の送り量と一
定の比例関係で、ロータリテーブル5の回転角度が連動
するように回転させてスクロール部品を切削加工してい
る。x軸テーブル4およびロータリテーブル5の制御は
すべてNC制御装置(図示せず)からの入力信号により
行われる。
【0073】ここで、底面加工用エンドミル工具2B
は、図18のY軸方向、つまりロータリテーブルの回転
に対し、接線方向にのみ角度θで傾斜している。すなわ
ち、底面加工用エンドミル工具2Bを取り付けた主軸部
3の回転軸は、その回転軸を、スクロール部品を支持し
て回転するロータリテーブル5の回転軸に対し工具送り
方向に調整可能に傾斜させる機構を備えたものである。
あるいは、スクロール部品を支持して回転するロータリ
テーブル5の回転軸は、その回転軸を、底面加工用エン
ドミル工具2Bを取り付けた主軸部3の回転軸に対し工
具送り方向に調整可能に傾斜させる機構を手段を備えた
ものである。図19は、エンドミル工具の中心を通るY
軸方向の断面図である。図中の矢印Fは工具送り方向を
示したものである。
【0074】工具送り方向Fに底面加工用エンドミル工
具2Bを傾斜角θ傾けて切削加工する本発明の加工法
を、通常のマシニングセンタで実現するためには、工具
送り方向に対し、常に工具の姿勢を制御する必要があ
る。このためには、通常のX,Y,Zの3軸に、工具姿
勢制御用の2軸を付加した、5軸制御マシニングセンタ
を用いなければならない
【0075】これに対し、本実施例のごとく直進運動す
る移動テーブルと回転運動するロータリテーブルとを持
つスクロール加工機では、工具を取り付けた主軸部の回
転軸は、その回転軸を、スクロール部品を支持して回転
するロータリテーブルの回転軸に対し工具送り方向に傾
斜させる機構を備え、あるいは、スクロール部品を支持
して回転するロータリテーブルの回転軸は、その回転軸
を、工具を取り付けた主軸部の回転軸に対し工具送り方
向に傾斜させる機構を備えたものであり、工具送り方向
に対し、工具姿勢が常にに一定となるため、本発明を容
易に実施できるものである。
【0076】ここで、エンドミル工具の傾斜角について
検討する。図19に示した底面加工用エンドミル工具2
Bの傾斜角θは、スクロールラップの側面にエンドミル
工具が接触する傾斜角θL以下にする必要がある。この
傾斜角θLは、エンドミル工具の外径をd、スクロール
ラップ間の溝幅をt、溝底面からのラップ高さをhとす
れば、式(5)により求められる。
【数5】
【0077】次に、エンドミル工具を切削方向に傾斜さ
せることによる形状誤差について検討する。図21は、
底面加工用エンドミル工具2Bを切削方向に傾斜させ底
面を切削加工した場合の工具送り方向に対して直角方向
の断面図である。図21に示すように底面加工用エンド
ミル工具2Bにより切削された断面は半楕円形状17と
なる。この半楕円形状17の凹凸の最大値δthは、エ
ンドミル工具の外径をd、傾斜角をθとすれば、式
(6)により求められる。
【数6】 δth=d/2・sinθ………………………………(6)
【0078】この底面加工用エンドミル工具2Bを切削
方向に傾斜させることにより生じる半楕円形状17は、
固定スクロールと旋回スクロールとの隙間面積を増加さ
せる。このため、圧縮中の冷媒が洩れ、所望の圧縮機性
能を得られないという問題が生じる。そこで、この半楕
円形状17が、加工面の表面粗さと同等以下になるよう
に底面加工用エンドミル工具2Bの傾斜角θを設定す
る。図22にエンドミル工具を傾斜させた際の工具送り
方向の加工断面図を示す。図22に示した加工面の表面
粗さRthは、底面加工用エンドミル工具2Bの正面切
れ刃角をα、工具送り量をf、切れ刃枚数をnとした場
合、式(7)により求められる。
【数7】 Rth=f/n・cosθ・sin(θ+α)/cosα……(7)
【0079】式(6)に示した半楕円形状の形状誤差
が、加工面の表面粗さ以下となるためには次式(8)に
示す不等式の成立が必要である。
【数8】 k(Rth)≧δth……………………………………(8) ここで、kは切れ刃の加工面への転写精度を示す係数
で、材料により変化するものである。以上から式
(5),(8)の範囲内で底面加工用エンドミル工具2
Bを傾斜させ、スクロール部品の底面を加工すれば、圧
縮機性能に影響を与える形状誤差は発生しない。また、
実際に底面加工用エンドミル工具2Bの傾斜角を決定す
るには係数kを実験により求める必要がある。
【0080】次に、工具傾斜角θの最大値の計算例を示
す。例えば、直径d=8mm、切れ刃枚数n=4、正面
切れ刃角α=3゜の底面加工用エンドミル工具を用い、
工具の1回転当たりの送り量をf=0.1mm/rev
とする。また、基礎実験の結果、鋳鉄材の切れ刃転写精
度を示す係数kはk=8である。この結果、数式4を満
足するエンドミル工具の最大傾斜角θはθ=0.158
°となる。さらに、式(5)に示したスクロールラップ
の側面にエンドミル工具が接触する傾斜角θLは、スク
ロールラップ間の溝幅tをt=8.2mm、溝底面から
のラップ高さhをh=16mmとすると、θL=0.3
58°となり、最大傾斜角は0.158°となる。
【0081】次に、底面加工用エンドミル工具を傾斜さ
せて切削加工した場合の効果について図23ないし図3
1を参照して説明する。図23は、従来のスクロール底
面加工により生じる切削条痕を示す説明図、図24は、
本実施例のスクロール底面加工により生じる切削条痕を
示す説明図、図25は、従来のスクロール底面加工によ
り生じる切削条痕を示す拡大図、図26は、本実施例の
スクロール底面加工により生じる切削条痕を示す拡大
図、図27は、エンドミル工具の切れ刃先端に生じる構
成刃先の一例を示す説明図、図28は、従来のスクロー
ル加工によるスクロール底面の組織を示す図、図29
は、本実施例のスクロール加工によるスクロール底面の
組織を示す図、図30は、従来のスクロール加工による
スクロール底面の工具送り方向の断面曲線を示す線図、
図31は、本実施例のスクロール加工によるスクロール
底面の工具送り方向の断面曲線を示す線図である。
【0082】図19に示したように傾斜角θで、底面加
工用エンドミル工具2Bを傾斜させると、該底面加工用
エンドミル工具2Bの工具送り方向Fに対して先端部1
5では底面切削を行うのに対し、後端部16は、底面と
接触しないため切削には関与しない。このため、従来の
加工方法である、ロータリテーブルの回転軸に対し、図
23(a)のように工具の回転軸が傾斜角ゼロに取り付
けられている場合、切削加工面のカッタマーク18は、
図23(b)に示すような円形状(あやめ状)になるの
に対し、図24(a)に示す本実施例の加工方法では、
切削加工面のカッタマーク19は、先端部15による切
削により、図24(b)のような半円状になる。
【0083】図25は、図23に示した底面加工用エン
ドミル工具2Bを傾斜させない従来の切削加工によるス
クロール溝底面(加工面)の顕微鏡写真である。また、
図26は、図24に示した底面加工用エンドミル工具2
Bを傾斜させた本実施例の加工方法によるスクロール溝
底面(加工面)の顕微鏡写真である。本実施例の加工方
法による加工面が従来の加工方法によるものに比べ、均
一であることがわかる。
【0084】また、図23に示す従来技術のようにに、
底面加工用エンドミル工具2Bを傾斜させず、底面加工
用エンドミル工具2Bの進行方向(矢印F)に対して先
端部15と後端部16との両方で切削加工すると、先端
部15で加工された加工面の凹凸形状の凸部を再度エン
ドミル工具2Bの後端部16で加工することになる。こ
の際の削除量は微小なため、切れ刃の丸みや、図27に
示すような切れ刃のすくい面上に発生した構成刃先のた
めに、切削できずにむしれが生じることが多い。すなわ
ち、この構成刃先により切削を行うと、工具の切れ味が
劣化するため、鋳鉄組織の黒鉛部分に欠損が生じる。
【0085】図28は、その鋳鉄材加工面の顕微鏡写真
であり、黒鉛組織部に欠損が見られ、むしられたような
加工面となっている。また、図30に示すように、触針
式表面粗さ計により加工面を測定すると、表面粗さは約
10μmRmaxとなっている。これに対し、図29
は、本実施例のスクロール加工方法により切削加工した
加工面を観察した顕微鏡写真である。加工面にはむしれ
(黒鉛欠損部)は見られない。また、図31の断面曲線
に示すように、表面粗さは約3μmRmaxと従来の加
工方法に比べて表面粗さが約1/3に減少している。
【0086】本実施例のスクロール部品の加工方法によ
れば、直進運動する移動テーブルと、回転運動するロー
タリテーブルとにより構成されたスクロール加工機にお
いて、底面加工用エンドミル工具をラップ側面に接触し
ない範囲で、工具送り方向に傾斜させ、ラップ間の溝底
面、ラップ外周の鏡板面、ラップ先端面を切削加工する
ことにより、スクロール部品の底面部を従来の加工法に
比べ約1/3の表面粗さに仕上げることができる。
【0087】次に、上記スクロール部品の加工方法とス
クロール圧縮機の性能との関係について説明する。スク
ロール圧縮機は、鏡板と、鏡板の一方の面に直立するイ
ンボリュート曲線形状のラップとからなる旋回スクロー
ルおよび固定スクロールを有し、これら両スクロールの
ラップを互いに噛み合わせて、旋回スクロールを固定ス
クロールに対し公転駆動させ、前記各ラップ間に形成さ
れる圧縮室で冷媒等を圧縮するよう構成されている。こ
のため、圧縮室を形成する際の隙間面積が大きいと圧縮
機の性能劣化を招く。これに対して、本実施例の加工方
法を用いることにより、底面の表面粗さを向上させるこ
とができ、圧縮機性能の向上を図ることができる。
【0088】また、本実施例の加工方法により、加工面
の断面形状が一様な凹凸形状となるため、圧縮機運転時
には、この凹部に潤滑油が溜められ、旋回スクロール
と、固定スクロールとの間の摺動特性が向上し、圧縮機
起動時の負荷を小さくできる。また、摺動部の摩耗の低
減を図ることができ、スクロール圧縮機の寿命を伸ばす
ことができる。
【0089】図33は、スクロール部品の面粗さとスク
ロール圧縮機の熱効率との関係を示す線図である。図3
3は、横軸に面粗さ(μmRmax)をとり、縦軸に熱
効率(%)をとり、従来のスクロール加工方法によるデ
ータ(黒丸)と本発明の加工方法によるデータ(白丸)
とをプロットして比較したものである。ここで、熱効率
とは、出力(冷力)と入力(電力)との比を百分率で表
わしたものである。図33から明らかなように、本発明
の加工方法によれば、加工面の面粗さは、従来の加工方
法によるものにくらべ1/2〜1/3になり、圧縮機の
熱効率は5〜10%向上しており、上述の圧縮機性能の
向上が裏付けられている。
【0090】〔実施例 2−2〕次に、図32は、スク
ロール部品を底面加工している際の、エンドミル工具の
中心を通るY軸方向の断面図である。ここで、底面加工
用エンドミル工具2Bは、工具送り方向に対し反対側に
傾斜させている。図中の太い矢印Fは工具送り方向を示
したものである。底面加工用エンドミル工具2Bを図3
2に示すように傾斜させると、該エンドミル工具2B
は、先端部15で切削加工したのち、後端部16で先端
部に比べ非常に小さな切り込みで再度切削加工を行うこ
とになる。工作物1に係るスクロール部品の材質が、被
削性が良好なアルミニウム材では、微小な切り込みによ
り仕上げ加工することで、良好な表面粗さを得ることが
できるため、図32に示す実施例の加工方法が適してい
る。
【0091】また、上記の説明では、第一の発明の実施
例と第二の発明の実施例とをそれぞれに説明したが、両
者のスクロール加工方法を併せて採用し、両者のスクロ
ール加工装置を用いて加工したスクロール部品を用いれ
ば、さらに優れた圧縮機性能を得ることは当然である。
【0092】すなわち、第一の発明によれば、スクロー
ルの渦形状の精度を向上させることができるため、ラッ
プ側面間からのガス漏れ量が減り、圧縮機性能が向上
し、第二の発明によれば、スクロール底面の表面粗さを
向上させることができ、圧縮機性能の向上を図ることが
できるとともに、加工面の断面形状が一様な凹凸形状と
なるため、圧縮機運転時には、この凹部に潤滑油が溜め
られ、旋回スクロールと、固定スクロールとの間の摺動
特性が向上し、圧縮機起動時の負荷を小さくできる。ま
た、摺動部の摩耗の低減を図ることができ、スクロール
圧縮機の寿命を伸ばすことができる。
【0093】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、第一の発明
によれば、スクロール加工装置の熱変形、および工具の
振れ量を測定し補正することにより、スクロールの形状
精度を向上するスクロール加工方法およびその装置を提
供することができる。
【0094】また、第二の発明によれば、研削加工など
の加工工程を追加することなしに、ラップ間の溝底面、
鏡板面およびラップ先端面の表面粗さを向上させるスク
ロール部品の底面加工方法を提供することができる。
【0095】さらに、第三の発明によれば、スクロール
部品の形状精度の向上と、ラップ間の溝底面、鏡板面お
よびラップ先端面の表面粗さの向上と相俟って圧縮機性
能を向上したスクロール圧縮機を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るスクロール加工装置の
外観斜視図である。
【図2】スクロール渦形状の加工部の斜視図である。
【図3】従来のスクロール圧縮機のラップ組み合わせ状
態の一例を示す側断面図である。
【図4】図3に示すスクロールラップの加工方法の一例
を示す説明図である。
【図5】切削加工方法の違いによる熱変形の表れかたの
違いを示す説明図である。
【図6】スクロール渦形状加工において表れる熱変形誤
差を示す模式図である。
【図7】スクロール渦形状加工において表れる熱変形誤
差を示す線図である。
【図8】測定器の原理を示す系統図である。
【図9】測定器内でエンドミル工具を測定するレーザ光
線の光路を示す斜視図である。
【図10】測定器の測定システムを示すブロック図であ
る。
【図11】回転中のエンドミル工具の測定を示す模式図
である。
【図12】回転中のエンドミル工具を測定した際に得ら
れる出力信号を示した線図である。
【図13】エンドミルが振れている状態を示す説明図で
ある。
【図14】図13のA−A´断面によりエンドミルの振
れを示す拡大図である。
【図15】図13のA−A´断面における測定結果を示
す出力信号の波形線図である。
【図16】本実施例のスクロールラップ部の測定結果を
示す線図である。
【図17】一般的なスクロール圧縮機の圧縮機構部を示
す要部断面図である。
【図18】本発明の一実施例に係るスクロール底面加工
時の加工部の斜視図である。
【図19】図1に示すスクロール底面加工時のY軸方向
断面図である。
【図20】第二の発明の実施例を適用するスクロール加
工機の外観斜視図である。
【図21】工具を切削方向に傾斜させ底面を切削加工し
た場合の工具送り方向に対して直角方向の断面図であ
る。
【図22】工具を傾斜させた際の工具送り方向の加工を
示す説明図である。
【図23】従来のスクロール底面加工により生じる切削
条痕を示す説明図である。
【図24】本実施例のスクロール底面加工により生じる
切削条痕を示す説明図である。
【図25】従来のスクロール底面加工により生じる切削
条痕を示す拡大図である。
【図26】本実施例のスクロール底面加工により生じる
切削条痕を示す拡大図である。
【図27】エンドミル工具の切れ刃先端に生じる構成刃
先の一例を示す説明図である。
【図28】従来のスクロール加工によるスクロール底面
の組織を示す図である。
【図29】本実施例のスクロール加工によるスクロール
底面の組織を示す図である。
【図30】従来のスクロール加工によるスクロール底面
の工具送り方向の断面曲線を示す線図である。
【図31】本実施例のスクロール加工によるスクロール
底面の工具送り方向の断面曲線を示す線図である。
【図32】スクロール部品を底面加工している際の、エ
ンドミル工具の中心を通るY軸方向の断面図である。
【図33】スクロール部品の面粗さとスクロール圧縮機
の熱効率との関係を示す線図である。
【符号の説明】
1…工作物、2…エンドミル工具、2A…側面加工用エ
ンドミル工具、2B…底面加工用エンドミル工具、3…
主軸、4…X軸テーブル、5…ロータリテーブル、6…
Y軸テーブル、7…コラム、8…Z軸テーブル、10…
チャック、11…測定器、15…切削中のエンドミル工
具の先端部、16…切削中のエンドミル工具の後端部、
17…半楕円形状、18,19…カッタマーク、21,
71…固定スクロール、22,72…旋回スクロール、
23,71b,72b…ラップ、24,71a,71b
…鏡板、31…渦巻溝。70…密閉容器、75…クラン
ク軸、75a…偏心部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山中 敏夫 栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地 株式会社日立製作所冷熱事業部栃木本部内 (72)発明者 堀江 辰雄 栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地 株式会社日立製作所冷熱事業部栃木本部内

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鏡板上に直立する渦巻状ラップを有し、
    該ラップ部分がインボリュート曲線で形成されるスクロ
    ール部品を、 少なくとも、直進運動する複数の移動テーブルと、前記
    スクロール部品を支持して回転運動するロータリテーブ
    ルとを備え、前記移動テーブルの一つに工具を取付けた
    主軸部を有するスクロール加工装置を用いて加工するス
    クロール加工方法において、 前記スクロール加工装置の熱変形により前記工具と前記
    スクロール部品との間に生じた相対位置の誤差を測定す
    る工程と、 この測定結果をNC制御装置に入力する工程と、 このNC制御装置により熱変形による誤差を補正して加
    工する工程とからなることを特徴とするスクロール加工
    方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のスクロール加工方法にお
    いて、 主軸部に備えた工具とロータリテーブルに支持されたス
    クロール部品との熱変形による相対位置の誤差を測定す
    る方法として、 回転中の工具を停止させることなく、前記ロータリテー
    ブルの近傍に並置された測定器により該工具の位置の変
    化を測定し、 この工具の位置の変化を、スクロール部品を基準とした
    工具の相対変位として前記NC制御装置に入力し、当該
    NC制御装置内の工具座標値をインラインで補正するこ
    とを特徴とするスクロール加工方法。
  3. 【請求項3】 請求項2記載のスクロール加工方法にお
    いて、回転させた状態の工具の切れ刃の包絡線を測定す
    ることにより、工具の取付け部に対する切れ刃部の振れ
    と、工具を取付けたときの姿勢誤差を含んだ見かけ上の
    工具の外径を測定することを特徴とするスクロール加工
    方法。
  4. 【請求項4】 請求項3記載のスクロール加工方法にお
    いて、前記工具の外径を、加工時と同じ主軸回転数で測
    定することにより、工具の振れ、取付け誤差のほか、熱
    変位による誤差をも含んだ工具の外径を測定し、NC制
    御装置内の工具座標値の補正を可能としたことを特徴と
    するスクロール加工方法。
  5. 【請求項5】 請求項2に記載のスクロール加工方法に
    おいて、前記測定器により、工具の振れを含んだ見かけ
    上の工具の外径と真の工具の外径との両者を測定し、こ
    れら両者の差が設定した許容値を超える場合は、前記測
    定器からNC制御装置へアラーム信号を出力し、工具の
    心だし指令信号を発する、あるいは主軸の回転を停止す
    るようにしたことを特徴とするスクロール加工方法。
  6. 【請求項6】 鏡板上に直立する渦巻状ラップを有し、
    該ラップ部分がインボリュート曲線で形成されるスクロ
    ール部品を加工する装置であって、 少なくとも、直進運動する複数の移動テーブルと、前記
    移動テーブルの一つに積載された主軸部と、この主軸部
    に取付けた工具と、この工具に対面するように配置さ
    れ、前記スクロール部品を支持して回転運動するロータ
    リテーブルとを備えたスクロール加工装置において、 前記ロータリテーブルと並置され、前記スクロール加工
    装置の熱変形により前記工具とスクロール部品との間に
    生じた相対位置の誤差を測定する測定器と、 この測定器の測定結果を入力し、熱変形による誤差を補
    正するNC制御装置とを備えたことを特徴とするスクロ
    ール加工装置。
  7. 【請求項7】 請求項6記載のスクロール加工装置にお
    いて、測定器は、レーザ光源と、回転させた状態の工具
    の切れ刃の包絡線をレーザ光線の走査幅に置くようにす
    る光学系と、工具の位置座標および工具の外径の測定信
    号を出力する受光素子とからなる非接触光学式測定器で
    あることを特徴とすスクロール加工装置。
  8. 【請求項8】 請求項6記載のスクロール加工装置にお
    いて、測定器は接触式変位計を用いたものであることを
    特徴とすスクロール加工装置。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし5記載のいずれかの加工
    方法によって、渦巻状ラップのインボリュート曲線を形
    成してなることを特徴とするスクロール部品。
  10. 【請求項10】 請求項6ないし8記載のいずれかのス
    クロール加工装置によって、渦巻状ラップのインボリュ
    ート曲線を形成してなることを特徴とするスクロール部
    品。
  11. 【請求項11】 鏡板上に直立する渦巻状ラップを有
    し、該ラップ部分がインボリュート曲線で形成されるス
    クロール部品を、 少なくとも、直進運動する移動テーブルと、該移動テー
    ブル上に積載された主軸部と、該主軸部の回転軸に取り
    付けた工具と、該工具と対面するように配置され前記ス
    クロール部品を支持して回転するロータリテーブルとを
    有するスクロール加工装置を用いて加工するスクロール
    加工方法において、 上記主軸部の回転軸上の工具を、当該工具がラップ側面
    と接触しない範囲で、かつ、ラップ間の溝底面の形状誤
    差が加工面の表面粗さ以下になる範囲で、当該工具送り
    方向に傾斜させて、 前記スクロール部品のラップ間の溝底面、ラップ周辺の
    鏡板面およびラップ先端面を切削加工することを特徴と
    するスクロール加工方法。
  12. 【請求項12】 請求項11記載のスクロール加工方法
    において、工具を取り付けた主軸部の回転軸を、スクロ
    ール部品を支持して回転するロータリテーブルの回転軸
    に対し、工具送り方向に傾斜させるようにしたことを特
    徴とするスクロール加工方法。
  13. 【請求項13】 請求項11記載のスクロール加工方法
    において、スクロール部品を支持して回転するロータリ
    テーブルの回転軸を、工具を取り付けた主軸部の回転軸
    に対し、工具送り方向に傾斜させるようにしたことを特
    徴とするスクロール加工方法。
  14. 【請求項14】 請求項11ないし13記載のいずれか
    のスクロール加工方法において、ラップ間の溝底面、ラ
    ップ周辺の鏡板面、およびラップ先端面を切削加工した
    ときに、工具の先端部もしくは後端部によってのみ切削
    加工し、その加工面に半円形状の切削条痕が残るように
    したことを特徴とするスクロール加工方法。
  15. 【請求項15】 鏡板上に直立する渦巻状ラップを有
    し、該ラップ部分がインボリュート曲線で形成されるス
    クロール部品を、 少なくとも、直進運動する移動テーブルと、該移動テー
    ブル上に積載された主軸部と、該主軸部の回転軸に取り
    付けた工具と、該工具と対面するように配置され前記ス
    クロール部品を支持して回転するロータリテーブルとを
    有するスクロール加工装置を用いて加工するスクロール
    加工方法において、 上記主軸部の回転軸上の工具を、当該工具がラップ側面
    と接触しない範囲で、かつ、ラップ間の溝底面の形状誤
    差が加工面の表面粗さ以下になる範囲で、当該工具送り
    方向の逆方向に傾斜させて、 前記スクロール部品のラップ間の溝底面、ラップ周辺の
    鏡板面およびラップ先端面を切削加工することを特徴と
    するスクロール加工方法。
  16. 【請求項16】 鏡板上に直立する渦巻状ラップを有
    し、該ラップ部分がインボリュート曲線で形成されるス
    クロール部品を加工する装置であって、 少なくとも、直進運動する複数の移動テーブルと、前記
    移動テーブルの一つに積載された主軸部と、この主軸部
    に取付けた工具と、この工具に対面するように配置さ
    れ、前記スクロール部品を支持して回転運動するロータ
    リテーブルとを備えたスクロール加工装置において、 工具を取り付けた主軸部の回転軸は、その回転軸を、ス
    クロール部品を支持して回転するロータリテーブルの回
    転軸に対し工具送り方向に傾斜させる手段を備えたこと
    を特徴とするスクロール加工装置。
  17. 【請求項17】 鏡板上に直立する渦巻状ラップを有
    し、該ラップ部分がインボリュート曲線で形成されるス
    クロール部品を加工する装置であって、 少なくとも、直進運動する複数の移動テーブルと、前記
    移動テーブルの一つに積載された主軸部と、この主軸部
    に取付けた工具と、この工具に対面するように配置さ
    れ、前記スクロール部品を支持して回転運動するロータ
    リテーブルとを備えたスクロール加工装置において、 スクロール部品を支持して回転するロータリテーブルの
    回転軸は、その回転軸を、工具を取り付けた主軸部の回
    転軸に対し工具送り方向に傾斜させる手段を備えたこと
    を特徴とするスクロール加工装置。
  18. 【請求項18】 請求項6ないし8記載のいずれかのス
    クロール加工装置において、工具を取り付けた主軸部の
    回転軸もしくはスクロール部品を支持して回転するロー
    タリテーブルの回転軸を、工具送り方向に傾斜させる手
    段を備えたことを特徴とするスクロール加工装置。
  19. 【請求項19】 請求項11ないし15記載のいずれか
    の加工方法によって、スクロール部品のラップ間の溝底
    面、ラップ周辺の鏡板面およびラップ先端面が、半円形
    状の切削条痕を残した表面粗さに加工されたものである
    ことを特徴とするスクロール部品。
  20. 【請求項20】 請求項11ないし15記載のいずれか
    の加工方法によって、スクロール部品のラップ間の溝底
    面、ラップ周辺の鏡板面およびラップ先端面が、断面形
    状の一様な凹凸を形成しているように加工されたもので
    あることを特徴とするスクロール部品。
  21. 【請求項21】 請求項11ないし15記載のいずれか
    の加工方法によって、スクロール部品のラップ間の溝底
    面、ラップ周辺の鏡板面およびラップ先端面が、潤滑油
    を溜めうる一様な凹凸面を有するように加工されたもの
    であることを特徴とするスクロール部品。
  22. 【請求項22】 密閉容器内に、電動機と該電動機にク
    ランク軸を介して連結する圧縮機構部とを収納してな
    り、 上記圧縮機構部は、それぞれ鏡板上に直立する渦巻状の
    ラップを備えた固定スクロールおよび旋回スクロール
    を、互いに前記ラップを内側に向けて噛み合わせ、前記
    旋回スクロールを固定スクロールに対して公転駆動させ
    て両スクロールのラップ部に形成される空間容積を逐次
    減少して流体を圧縮するものであるスクロール圧縮機に
    おいて、 前記固定スクロールおよび旋回スクロールは、請求項1
    9記載のように、ラップ間の溝底面、ラップ周辺の鏡板
    面およびラップ先端面が、半円形状の切削条痕を残した
    表面粗さのものであり、 請求項20および21記載のように、ラップ間の溝底
    面、ラップ周辺の鏡板面およびラップ先端面が、断面形
    状の一様な凹凸を形成したスクロール部品を用いたもの
    であることを特徴とするスクロール圧縮機。
  23. 【請求項23】 請求項22記載のスクロール圧縮機に
    おいて、固定スクロールおよび旋回スクロールは、請求
    項9および10記載のスクロール部品を用いたものであ
    ることを特徴とするスクロール圧縮機。
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