JPH088148Y2 - 筆 穂 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、書道用毛筆、ふでペンなどの筆穂に関す
る。

（従来の技術） 従来、書道用毛筆の筆穂は、馬、豚、鹿、いたち、
狸、テン、羊などの獣毛を使用しており、使用目的、使
用者の好みなどによって筆の硬さ、太さなどを調整する
ために、上記獣毛の種類や組み合わせ方を変えて製品と
している。一般的にはテーパー形状が長く繊細でかつ腰
の強い、弾性、復元力に富む獣毛のみで作った毛筆の品
質が良いとされ、特に、いたち毛、狸毛、テン毛がその
代表である。しかし、獣毛は天然物であるため、品質が
一定なものが得難い、任意の寸法性状のものとすること
が困難である、耐摩耗性が低いといった問題が有り、更
には、いたち、狸、テンの収穫量の減少による高価格化
といった問題がある。

そこで、筆穂を形成する獣毛の替わりに合成樹脂製筆
毛を用いることが行われており、この合成樹脂製筆毛の
先端をテーパー化し、獣毛のような品質となすために、
合成樹脂を溶解または分解する処理液に接触させる方法
などが提案されている（例えば、特公昭49-6159号公
報、特公昭60-30556号公報など）。

（考案が解決しようとする課題） ところで、先端をテーパー化した合成樹脂製筆毛を用
いた筆穂は、墨液など液の保持力が低いという問題を有
している。これを解決するために、獣毛と先端をテーパ
ー化した合成樹脂製筆毛とを混毛してなる筆穂（特開昭
63-102998号公報）や波状に皺曲（クリンプ）してその
波長が各々相違する多数の合成樹脂製筆毛よりなる筆穂
（実開昭62-114781号公報）が提案されている。

しかしながら、獣毛と先端をテーパー化した合成樹脂
製筆毛とを混毛したものの場合、獣毛ゆえの欠点を合わ
せ持たざるを得ず、合成樹脂製筆毛の長所を100％発揮
させるには至らず、クリンプの波長が各々相違する多数
の合成樹脂製筆毛よりなるものの場合、筆毛同志のズレ
が発生し易く、筆記性能、特に、ハライに劣るといった
問題を有していた。

本考案は、上記問題を解決することを課題とするもの
である。

（課題を解決するための手段） 本考案は、先端をテーパー化した合成樹脂製筆毛より
なる筆穂であって、ストレートな大径の筆毛と、クリン
プを有する中径の筆毛と、この中径の筆毛のクリンプよ
り高さの低いクリンプを有する小径の筆毛との混毛体よ
り構成されている筆穂を要旨とするものである。

以下、詳述する。

筆毛の材料である合成樹脂は、ポリアミド（6,6−ナ
イロン、６−ナイロン、12−ナイロン、6,10−ナイロ
ン、6,12−ナイロンなど）、ポリオレフイン（ポリエチ
レン、ポリプロピレンなど）、ポリエステル（ポリエチ
レンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートな
ど）、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、アクリロ
ニトリル−スチレン共重合物、アクリロニトリル−ブタ
ジエン−スチレン共重合物などといったものが挙げられ
る。

上記合成樹脂の先端をテーパー化し筆毛となすには、
前記、処理液による方法などが好ましく、具体的一例と
しては、ポリアミドに対するメタクレゾールと塩化カル
シウム−メタノール溶液との混和液、ポリエステルに対
する水酸化ナトリウム水溶液が挙げられるが、必ずしも
この方法に限定されるものではなく、他の、繊維に熱延
伸を与えてテーパー状に引き伸ばしたり、グラインダー
研磨など機械的にテーパー化する方法を採用しても良
い。

本考案の骨子は、筆穂を、上記先端をテーパー化した
合成樹脂製筆毛であって、ストレートな大径の筆毛と、
クリンプを有する中径の筆毛と、この中径の筆毛のクリ
ンプより高さの低いクリンプを有する小径の筆毛との混
毛体より構成することにある。

筆毛の径は、製造する筆穂の大きさ（太さ及び長さ）
によっても異なるが、大径としては0.15〜0.35mm、中径
としては0.08〜0.15mm、小径としては0.05〜0.08mmのも
のが好ましく、混毛体における割合は、大径の筆毛が20
〜40重量％、中径の筆毛が20〜40重量％、小径の筆毛が
40〜60重量％とすることが好ましい。尚、ここでいう筆
毛の径とは、テーパー加工されていない部分の径をいう
ものである。

クリンプとは、筆毛のもととなる合成樹脂繊維を噛み
合い状態に有る２つの歯車装置などに、適宜加熱処理下
で通すことによって得られる連続した波状の曲がりを示
し、波長をクリンプ長さ、振幅をクリンプ高さという。

（実施例） 第１図及び第２図に本考案の一実施例を示す。

参照符号１は、長さ5.2cm、太さ10.4mmの筆穂であ
り、２は軸筒である。

筆穂１は、後端を融着、接着、糸巻きなど適宜の固定
手段により筆毛の脱落を防止すると共に、軸筒２の前端
に挿入固定している。

10、20、30は筆穂を構成する6,12−ナイロン製の筆毛
である。筆毛10は直径0.2mmのストレート繊維より、筆
毛20は直径0.1mmのクリンプを有する繊維より、筆毛30
は直径0.07mmの、前記筆毛20よりクリンプ高さの小さい
クリンプを有する繊維より各々なっており、その使用割
合は、筆毛10が30重量％、筆毛20が30重量％、筆毛30が
40重量％である。

（考案の作用及び効果） 本考案の筆穂は、ストレートな大径の筆毛と、クリン
プを有する中径の筆毛と、この中径の筆毛のクリンプよ
り高さの小さなクリンプを有する小径の筆毛との混毛体
より構成している。従って、筆穂は、ストレートな大径
の筆毛により適度な弾性を有し、中径の筆毛がクリンプ
を有しているので液の保持性が良好であり、更に、小径
の筆毛が筆毛同志のズレの発生を防止しているので、合
成樹脂製筆毛の長所を100％発揮させることができ、筆
記時にはハライも良好にできる、筆記性能に優れたもの
である。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の一実施例を示すものであって、第１図は
筆穂を装着した筆の先端斜視図であり、第２図は筆穂の
構成要素である筆毛のテーパー加工されていない部分の
要部平面図である。 １……筆穂、２……軸筒、10,20,30……筆毛、Ｌ……筆
毛のクリンプの長さ、Ｈ……筆毛のクリンプの高さ

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】先端をテーパー化した合成樹脂製筆毛より
   なる筆穂であって、ストレートな大径の筆毛と、クリン
   プを有する中径の筆毛と、この中径の筆毛のクリンプよ
   り高さの低いクリンプを有する小径の筆毛との混毛体よ
   り構成されている筆穂。