JPH0866989A - 異形状繊維強化プラスチック及びその製造方法 - Google Patents

異形状繊維強化プラスチック及びその製造方法

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JPH0866989A
JPH0866989A JP14758795A JP14758795A JPH0866989A JP H0866989 A JPH0866989 A JP H0866989A JP 14758795 A JP14758795 A JP 14758795A JP 14758795 A JP14758795 A JP 14758795A JP H0866989 A JPH0866989 A JP H0866989A
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JP
Japan
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deformed
cfrp
fiber
reinforced plastic
thin metal
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JP14758795A
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Inventor
Morihiko Sugino
守彦 杉野
Keiko Tanaka
桂子 田中
Tomokazu Nakagawa
知和 中川
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Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 機械的性質に優れ、且つ、熱伝導性に優れて
局部的加熱による局部的温度上昇が小さく、又、熱が逃
げ易く、更に、炭素繊維が肉眼で見えなくて外観が良
く、又、厚さ:1mm以下の薄肉のものであっても表面に
起伏がなくて形状性及び外観が良く、従って電子機器ハ
ウジング材等に好適に用いることができる異形状繊維強
化プラスチック(異形状CFRP)及びその製造方法を提供
する。 【構成】 熱硬化性樹脂からなるマトリックス中に繊維
長:10〜100mm の炭素繊維が分布している薄肉の異形状
CFRPであって、その表面層に金属薄板をプレス成形によ
り一体に配しているもの、及び、異形状CFRPに成形する
と共に、その表面層に金属薄板を一体に配することを特
徴とする異形状CFRPの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、異形状繊維強化プラス
チック及びその製造方法に関し、詳細には、熱硬化性樹
脂からなるマトリックス中に強化材として炭素繊維を含
有し、表面層に金属薄板を有する異形状繊維強化プラス
チック及びその製造方法に関し、特に、CDプレーヤ、ヘ
ッドホンステレオ、ノート型パソコン等の電子機器や電
気機器等のハウジング材に用いて好適な異形状繊維強化
プラスチック及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電子機器や電気機器等のハウジング材と
しては金属のプレス加工品が用いられていたが、近年、
加工性、軽量化等の観点から、ハウジング材のプラスチ
ック化が進んでおり、これら機器のハウジング材として
異形状繊維強化プラスチックが使用されつつある。特
に、ノート型パソコン等のような携帯用電子機器におい
ては、小型軽量化が強く要求されており、その一環とし
てハウジング材への異形状繊維強化プラスチックの適用
が実用化されている。
【0003】かかる異形状繊維強化プラスチック及びそ
の製造方法として、特公平5-58371号公報に記載された
ものが公知である。この公報に記載の異形状繊維強化プ
ラスチック(以降、従来異形状CFRP-1という)は、熱硬
化性樹脂からなるマトリックス中に強化材として繊維
長:10〜100mm の炭素繊維が2次元的に且つ不規則的に
分布しており、平板部の厚さが1mm以下であることを特
徴とするものである。そして、このような構成、特に繊
維長:10〜100mm の炭素繊維の2次元的且つ不規則的分
布により、引張強度及び弾性率等の機械的性質が優れ且
つ均一である。
【0004】この公報に記載の異形状繊維強化プラスチ
ックの製造方法は、引張強度:300kgf/mm2(:2942MPa)
以上の炭素繊維からなる不織布に熱硬化性樹脂を含浸し
乾燥してプリプレグを得、このプリプレグを所定の異形
状のキャビティを有する成形型内に配置し、面圧:100k
gf/cm2(:9.8MPa)以上で加熱加圧してプリプレグ中の熱
硬化性樹脂と共に炭素繊維をキャビティ内で流動させ、
異形状繊維強化プラスチックに成形することを特徴とす
るものである。そして、このような構成、特に熱硬化性
樹脂と共に炭素繊維を流動させることにより、炭素繊維
がマトリックス中に均一に分布し、引張強度及び弾性率
等の機械的性質が均一で且つ優れた異形状繊維強化プラ
スチック(以降、従来異形状CFRP-2という)が得られ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記従来異形状CFRP-1
及び2 によれば、前記の如く引張強度及び弾性率等の機
械的性質が均一で且つ優れているので、電子機器や電気
機器等のハウジング材の軽量化が図れ、引いては、その
電子機器や電気機器等の軽量化が図れる。
【0006】ところが、今後、これら電子機器や電気機
器等のコンパクト化及び高容量化に伴い、その電子回路
や電気回路(以下、電子回路)、電子部品や電気部品
(以下、電子部品)からの発熱量が著しく増大し、且つ
熱が逃げ難いため、機器自体が高温になって、電子部品
の信頼性引いては機器としての信頼性が低下し、又、電
子部品からの熱によりハウジング(ケース)の温度が局
部的に上昇して、直接身体に接すると低温火傷等の障害
が発生する可能性があり、ユーザに不安感を与えるとい
う問題点が生じるおそれがある。そのため、従来異形状
CFRPでは、電子機器や電気機器等のコンパクト化及び高
容量化が制限され、充分なコンパクト化及び高容量化が
図れないというおそれがある。
【0007】又、従来異形状CFRPでは、その表面及び表
面近傍に存在する炭素繊維が肉眼で見えて外観が良くな
く、又、厚さ:1mm以下の薄肉のものでは、炭素繊維特
有のうねりに起因して表面に起伏があり、形状性及び外
観が良くないという問題点がある。
【0008】本発明はこの様な事情に着目してなされた
ものであって、その目的は、前記した従来異形状CFRPの
有する問題点を解消し、その優れた機械的性質を低下さ
せることなく、熱伝導性に優れて局部的加熱による局部
的温度上昇が小さく、又、熱が逃げ易く、更に、炭素繊
維による表面のみだれが少なくて(炭素繊維が肉眼で見
えなくて)外観が良く、又、厚さ:1mm以下の薄肉のも
のであっても表面に起伏がなくて形状性及び外観が良い
異形状繊維強化プラスチック及びその製造方法を提供し
ようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明に係る異形状繊維強化プラスチック(以
降、異形状CFRPという)及びその製造方法は次のような
構成としている。即ち、請求項1記載の異形状CFRPは、
熱硬化性樹脂からなるマトリックス中に強化材として繊
維長:10〜100mm の炭素繊維が2次元的に且つ不規則的
に分布している異形状CFRPであって、その表面層に金属
薄板をプレス成形により一体に配していることを特徴と
する異形状CFRPである。
【0010】請求項2記載の異形状CFRPは、前記金属薄
板の厚みが 0.5mm以下である請求項1記載の異形状CFRP
である。請求項3記載の異形状CFRPは、前記金属薄板が
Al、Al合金、Cu又はCu合金からなる請求項1又は2記載
の異形状CFRPである。請求項4記載の異形状CFRPは、前
記金属薄板がスリット状の空隙を有し、その空隙の金属
薄板に占める面積の割合である空隙率が50%以下である
請求項1、2又は3記載の異形状CFRPである。請求項5
記載の異形状CFRPは、前記熱硬化性樹脂がフェノール樹
脂:30wt%以上を含有する熱硬化性樹脂である請求項
1、2、3又は4記載の異形状CFRPである。請求項6記
載の異形状CFRPは、前記炭素繊維の繊維長が20〜30mmで
ある請求項1、2、3、4又は5記載の異形状CFRPであ
る。請求項7記載の異形状CFRPは、前記炭素繊維のマト
リックスに対する体積比率が15〜35%である請求項1、
2、3、4、5又は6記載の異形状CFRPである。請求項
8記載の異形状CFRPは、平板部と凸状の異形形状部とを
有する異形形状の一体成形体であって、該異形形状部の
付け根における炭素繊維が、平板部と異形形状部とを繋
ぐ方向に配向している請求項1、2、3、4、5、6又
は7記載の異形状CFRPである。
【0011】請求項9記載の異形状CFRPの製造方法は、
引張強度:2450MPa 以上の炭素繊維からなる不織布に熱
硬化性樹脂を含浸し乾燥してプリプレグを得、異形状の
キャビティを有する成形型内に前記プリプレグ及び該プ
リプレグと接触する側の表面に樹脂を塗布した金属薄板
を配置し、面圧:9.8MPa以上、温度:140 〜220 ℃で加
熱加圧してプリプレグ中の熱硬化性樹脂と共に炭素繊維
をキャビティ内で流動させ、異形状CFRPに成形すると共
に、その表面層に金属薄板を一体に配することを特徴と
する異形状CFRPの製造方法である。請求項10記載の異形
状CFRPの製造方法は、前記金属薄板に塗布する樹脂が、
エポキシ樹脂である請求項9記載の異形状CFRPである。
【0012】
【作用】本発明に係る異形状CFRP(異形状繊維強化プラ
スチック)は、前記の如く、熱硬化性樹脂からなるマト
リックス中に強化材として繊維長:10〜100mm の炭素繊
維が2次元的に且つ不規則的に分布している異形状CFRP
であって、その表面層に金属薄板をプレス成形により一
体に配しており、従って、この金属薄板に起因して従来
異形状CFRPよりも熱伝導性が向上して局部的加熱による
局部的温度上昇が小さく、又、熱が逃げ易くなる。
【0013】即ち、従来異形状CFRPにおいては、CFRPが
金属に比較して著しく熱伝導性が劣る(熱伝導率が小さ
い)ので、局部的加熱を受けた場合、その熱がCFRP板の
面方向に拡がり難く、そのため局部的加熱部の温度が上
昇し易く、局部的温度上昇が大きくなり易い。又、その
熱は局部的加熱部のCFRP板の板厚方向に伝わり、到達し
たCFRP板表面を放熱面として外部へ逃げるが、この放熱
面の面積は局部的加熱部の面積と略同等であって小さい
ので、この放熱面からの放熱量が小さく、そのため極め
て熱が逃げ難い。
【0014】これに対し、本発明に係る異形状CFRPにお
いては、前記の如く表面層に金属薄板を配しており、金
属はCFRPに比較して著しく熱伝導性が優れている(熱伝
導率が大きい)ので、局部的加熱を受けた場合、その熱
が金属薄板の面方向に拡がり易く、そのため局部的加熱
部の温度が上昇し難く、局部的温度上昇が小さくなり易
い。そして、この金属薄板の面方向に拡散した熱は、異
形状CFRP部に伝わり、到達したCFRP板表面を放熱面とし
て外部へ逃げる。このとき、この放熱面の面積は金属薄
板の表面積と略同等であって大きいので、この放熱面か
らの放熱量が大きく、そのため熱が逃げ易くなる。
【0015】又、本発明に係る異形状CFRPにおいては、
前記の如く表面層に金属薄板をプレス成形により一体に
配しているので、厚さ:1mm以下の薄肉のものであって
も表面に起伏がなくて形状性及び外観が良い。即ち、従
来異形状CFRPにおいてはマトリックスの熱硬化性樹脂と
炭素繊維との成形時の収縮率の差によって炭素繊維特有
のうねりが生じるために表面に起伏を起こすが、本発明
に係る異形状CFRPにおいては表面層の金属薄板により外
観被覆されるために表面起伏が起こらなくなり、形状性
及び外観が良いものとなる。
【0016】更に、上記表面層の金属薄板により外観に
CFRPが露出しなくなるために炭素繊維が肉眼で見えなく
て外観が良い。
【0017】同時に、本発明に係る異形状CFRPにおいて
は、上記金属薄板が配される基材であるCFRP部は、熱硬
化性樹脂からなるマトリックス中に強化材として繊維
長:10〜100mm の炭素繊維が2次元的に且つ不規則的に
分布したCFRPよりなり、このCFRPは従来異形状CFRP-1と
同様であるので、従来異形状CFRP-1と同様に優れた機械
的性質を有する。又、上記金属薄板は薄いので、かかる
優れた機械的性質を損なう(低下させる)ものではな
い。
【0018】従って、本発明に係る異形状CFRPは、従来
異形状CFRPと同様に優れた機械的性質を有すると共に、
従来異形状CFRPに比べ、熱伝導性に優れて局部的加熱に
よる局部的温度上昇が小さく、又、熱が逃げ易く、更
に、炭素繊維が肉眼で見えなくて外観が良く、又、厚
さ:1mm以下の薄肉のものであっても表面に起伏がなく
て形状性及び外観が良い。
【0019】ここで、炭素繊維の繊維長を10〜100mm と
しているのは、10mm未満では炭素繊維同士の絡みが少な
くなり、部分的に炭素繊維の含有量が少ない個所が存在
するため、強度及び弾性率が低下して不充分となり、一
方100mm 超では炭素繊維がカール状となるため、強度及
び弾性率が低下して不充分となるからである。尚、かか
る点から炭素繊維の繊維長は20〜30mmにすることが望ま
しく、そうすると確実に高度の強度及び弾性率を確保し
得てよい(請求項6記載の異形状CFRP)。
【0020】前記金属薄板としては、軽量化の点から比
重が小さく、又、加工性が良好であるものが好ましく、
かかる点からAl、Al合金、Cu又はCu合金からなるものが
望ましい(請求項3記載の異形状CFRP)。これら金属薄
板表面にアルマイト処理、めっき、塗装等の表面処理を
施してもよい。
【0021】前記金属薄板の厚みとしては、 0.5mm以下
とすることが望ましい(請求項2記載の異形状CFRP)。
金属薄板の厚みを 0.5mm超にすると、CFRP部の厚みが相
対的に薄くなるために強度の低下及び軽量性の低下を来
して好ましくなく、 0.5mm以下では高水準の強度及び軽
量性を有することができるからである。尚、金属薄板を
以上の如くCFRP表面層に設けることに加えて、金属薄板
をCFRPの内部にも設けることができ、その場合には成形
性が低下するが、更に放熱特性が向上する。
【0022】前記金属薄板がスリット状の空隙を有し、
その空隙の金属薄板に占める面積の割合である空隙率が
50%以下であるようにすることが望ましい(請求項4記
載の異形状CFRP)。このようにすると、金属薄板とCFRP
部との線膨張係数の相違による反りの発生を抑制できる
ようになるからである。即ち、金属の種類及びCFRPの種
類によって異なるが、通常、金属とCFRPとは線膨張係数
が比較的大幅に相違するので、金属薄板が空隙を有して
いない場合には、製造(成形)の際の加熱後の冷却過程
における金属薄板とCFRP部との収縮量が相違し、その結
果、製造後のもの(成形品)に反りが発生する可能性が
あり、又、成形品使用の際に受ける熱によっても成形品
に反りが発生する可能性がある。これに対し、金属薄板
がスリット状の空隙を有している場合には、金属とCFRP
とは線膨張係数が相違するものの、製造(成形)の際の
加熱後の冷却過程における金属薄板とCFRP部との収縮量
があまり相違せず、同等となるか、もしくは近似し、そ
の結果、上記の如き反りが発生し難くなり、発生したと
しても極めて微量の反りにとどめることができる。この
とき、空隙率が大きいほど反りの程度を小さくできる
が、それに伴って放熱特性が少しずつ低くなる傾向にあ
り、空隙率50%超では放熱特性が比較的大きく低下する
ので、空隙率は50%以下にするのがよい。又、空隙の総
面積についても、放熱特性に対して上記空隙率と同様の
影響を及ぼし、空隙の総面積500mm2超では放熱特性が比
較的大きく低下するので、500mm2以下にするのがよい。
【0023】前記熱硬化性樹脂としては、例えばフェノ
ール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、及び、これ
らの混合物があるが、特にはフェノール樹脂:30wt%以
上を含有する熱硬化性樹脂とすることが望ましい(請求
項5記載の異形状CFRP)。それは、異形状CFRPは曲げ強
度:147MPa以上、曲げ弾性率:12 GPa以上、アイゾット
衝撃値:98J/m(:10kgfcm/cm2)以上の機械的物性を
有し、又、難燃性に優れていることが望ましく、これら
の特性を充たすことができるからである。
【0024】前記炭素繊維のマトリックスに対する体積
比率を15〜35%にすることが望ましい。そうすると確実
に高度の強度及び弾性率を確保し得てよい(請求項7記
載の異形状CFRP)。この体積比率を15%未満にすると強
度及び弾性率が低下し、35%超にするとマトリックスの
樹脂となじまない部分が生じて強度が低下する傾向にあ
る。
【0025】本発明に係る異形状CFRPが平板部と凸状の
異形形状部とを有する場合、該異形形状部の付け根にお
ける炭素繊維が、平板部と異形形状部とを繋ぐ方向に配
向していることが望ましい(請求項8記載の異形状CFR
P)。そうすると該異形形状部は強度に優れ、平板部と
の強度差が小さくなるからである。
【0026】本発明に係る異形状CFRPの製造方法は、前
述の如く、引張強度:2450MPa 以上の炭素繊維からなる
不織布に熱硬化性樹脂を含浸し乾燥してプリプレグを
得、異形状のキャビティを有する成形型内に前記プリプ
レグ及び該プリプレグと接触する側の表面に樹脂を塗布
した金属薄板を配置し、面圧:9.8MPa以上、温度:140
〜220 ℃で加熱加圧してプリプレグ中の熱硬化性樹脂と
共に炭素繊維をキャビティ内で流動させ、異形状CFRPに
成形すると共に、その表面層に金属薄板を一体に配する
ようにしている。従って、従来異形状CFRP-2の場合と同
様もしくはそれ以上に炭素繊維がマトリックス中に均一
に分布し、引張強度及び弾性率等の機械的性質に優れ且
つその均一性に優れた異形状CFRPであって、同時に、表
面層に金属薄板を配してなる異形状CFRPを製造し得る。
そのため、従来異形状CFRP-2の場合と同様もしくはそれ
以上に機械的性質に優れ且つその均一性に優れると共
に、上記表面層の金属薄板に起因して従来異形状CFRPよ
りも熱伝導性に優れて局部的加熱による局部的温度上昇
が小さく、又、熱が逃げ易く、更に、炭素繊維が肉眼で
見えなくて外観が良く、又、厚さ:1mm以下の薄肉のも
のであっても表面に起伏がなくて形状性及び外観が良い
異形状CFRPが得られる。
【0027】ここで、炭素繊維の引張強度を2450MPa 以
上としているのは、異形状CFRPの引張強度を49MPa 以上
に充分高くするためである。成形型内にプリプレグ及び
金属薄板を配置するに際し、金属薄板のプリプレグと接
触する側の表面(金属薄板表面)に樹脂を塗布するよう
にしているのは、成形後の異形状CFRPでの金属薄板と基
材のCFRPとの密着性を高め、充分なものとするためであ
る。
【0028】成形の際の成形圧を面圧で9.8MPa以上とし
ているのは、9.8MPa未満にすると熱硬化性樹脂と共に炭
素繊維が流動することが困難になり、マトリックス中で
の炭素繊維分布の均一性が低下し、機械的性質が不均質
になるからである。又、成形温度を140 〜220 ℃として
いるのは、140 ℃未満にすると硬化時間に10分以上必要
とするようになり、所要硬化時間が長くなり過ぎ、引い
ては成形品の生産性が低くなって不充分となり、220 ℃
超にすると硬化時間が短くなり過ぎ、そのため成形(ふ
形)が困難になるからである。
【0029】前記金属薄板に塗布する樹脂としては、エ
ポキシ樹脂を使用することが望ましい(請求項10記載の
異形状CFRPの製造方法)。そうすると、金属薄板と基材
のCFRPとの密着性をより高めることができるからであ
る。又、金属薄板とともに配置するプリプレグは積層し
て配置し、そして成形するようにすると、炭素繊維の方
向性が緩和され、成形品の強度をより均一にし得る。
【0030】
【実施例】
(実施例1)先ず、引張強度:2942MPa 、繊維長:25mm
の炭素繊維からなる不織布にフェノール樹脂(熱硬化性
樹脂の一種)を含浸し乾燥機により120 ℃で10分間加熱
乾燥してプリプレグ(厚さ:1.0mm)を得た。一方、純Al
よりなる厚み:0.3mmの金属薄板の上面(後記プリプレグ
2と接触する側の面)にエポキシ樹脂を塗布した。次
に、図1に示す如く、下型4内に前記金属薄板3を配置
し、この上に前記プリプレグ2を5枚積層して配置した
後、図2に示す如く、上型1を閉じ、成形圧(面圧):
39MPa 、温度:150℃の成形条件で加圧して異形状CFRPに
成形すると共に、その表面層に金属薄板を一体に配し
た。そして、図3に示す如き形状を有する実施例1に係
る異形状CFRP5を得た。尚、この異形状CFRP5の平板部
の厚さ(金属薄板とCFRP部との合計厚み)は 0.9mmであ
る。CFRPのマトリックスの樹脂に対する炭素繊維の体積
率は25%である。図3において6はボス部を示すもので
ある。
【0031】この実施例1に係る異形状CFRP5につい
て、クリア塗装を行い、目視検査を行った後、局部的加
熱試験を行った。又、曲げ試験片及びアイゾット衝撃試
験片を採取し、曲げ試験及び衝撃試験を行った。ここ
で、局部的加熱試験は、異形状CFRP5がハウジングとし
て使用された場合に電子部品からの熱により局部的に加
熱される状態を模擬して局部的に加熱し、そのときの異
形状CFRP5の表面(加熱される側の面と反対側の面)の
温度を測定することにより行った。その結果、表面に炭
素繊維が肉眼で見えなくて外観が良く、更に、表面に起
伏がなくて形状性及び外観が良かった。アイゾット衝撃
値は291 J/m 、曲げ弾性率は16GPa 、曲げ強度は246MPa
であり、下記比較例1と同様に優れた機械的性質を有し
ていた。局部的加熱試験による異形状CFRP5の表面の最
高到達温度は60℃であり、下記比較例1の場合に比して
著しく低かった。
【0032】比較のため、上記実施例1と同様のプリプ
レグを用い、金属薄板3を配置せずに、上記実施例1と
同様の条件で同様の方法により成形して比較例1に係る
異形状CFRPを得、このCFRPについて上記実施例1と同様
の検査、試験を行った。その結果、表面に炭素繊維が目
視で見え、更に、表面起伏(うねり)が認めらた。尚、
このうねりはクリア塗装後の方が塗装前よりも顕著であ
った。アイゾット衝撃値は250 J/m 、曲げ弾性率は15GP
a 、曲げ強度は240MPaであった。局部的加熱試験による
表面の最高到達温度は95℃であり、極めて高かった。
【0033】(実施例2)本発明に係る異形状CFRPでの
金属薄板としてCu薄板を使用した場合の局部的加熱によ
る局部的温度上昇抑制効果についての基本的データを得
るため、図4に示す如く、表面層に純Cu製金属薄板8を
配したCFRP板7(即ち、CFRP板7の表面層に純Cu製金属
薄板8を配した複合板)をプレス成形により成形し、こ
れについて局部的加熱試験を行った。ここで、CFRPのマ
トリックスの樹脂としてはフェノール樹脂を用い、強化
材の炭素繊維としては繊維長:30mmのものを用いた。複
合板の寸法は、幅90mm、長さ140mm 、総厚さ0.83mmであ
り、そのCFRP板部7の厚さは0.63mm、純Cu製金属薄板8
の厚さは0.2mm である。局部的加熱試験は、図4に示す
如く、4.81Wの正方形板形状(辺長48mm)の発熱体9を
加熱源として、C系樹脂製スペーサを介して複合板の上
(純Cu製金属薄板8の上)に置き、一方CC(銅・コンス
タンタン)熱電対を複合板の下側(CFRP板7の表面)の
温度測定点10に貼付け、これらを紙箱(図示していな
い)で被った後、発熱体9に通電して複合板を加熱する
と共に温度測定点10での温度を測定することにより行っ
た。
【0034】上記加熱開始1時間後における温度測定点
10(即ち、複合板において発熱体9がある側と反対の側
の表面)での最高温度は、64.2℃であった。又、比較の
ために、上記複合板に代えて、上記複合板と同一寸法の
Mg合金板、或いはCFRP単体の板(CFRP板のみよりなる)
を用い、上記と同様の方法により同様の局部的加熱試験
を行ったところ、加熱開始1時間後の温度測定点10での
最高温度は、Mg合金板の場合で62.0℃、CFRP単体の板の
場合で95.7℃であった。これらのことから、CFRP単体で
はMg合金板に比べて局部的上昇最高温度が30℃以上高い
が、CFRPの表面層に純Cu製金属薄板を配して複合化する
と局部的上昇最高温度がMg合金板のそれと同等になり、
放熱特性がCFRP単体に比べて大幅に改善されることがわ
かる。
【0035】(実施例3)本発明に係る異形状CFRPより
なるノート型パソコンの下部ケースを作った。この下部
ケースの要部を図5に示す。ここで、CFRP12,13のマト
リックスの樹脂としてはフェノール樹脂を用い、強化材
の炭素繊維としては繊維長:30mmのものを用いた。表面
層の金属薄板15としては厚さ0.20mmのCu薄板を用いた。
ケース(異形状CFRP)11の総厚さは0.83mmであり、表面
層に金属薄板15がある個所でのCFRP板部13の厚さは0.63
mmである。
【0036】このケース11の内側に図5に示す如く発熱
体(中央演算装置)14を配置し、ケース11をスぺーサを
介して台17の上に乗せ、該発熱体14を働かせ、ケース11
の外側表面の温度上昇の程度を調べた。その結果、ケー
ス11の外側表面での温度上昇の程度は、発熱体14の下部
中央位置で最も大きいが、46.5℃までしか温度上昇せ
ず、充分手で触れる程度であり、前記実施例2の場合の
温度測定点10での温度上昇の程度に比べて小さかった。
これは、金属薄板15をケース11の立壁16まで延長して設
けているため、発熱体14から受けた熱がケース立壁16の
金属薄板15まで拡散し、更に熱がCFRP板部13を伝わりケ
ース11の外側表面を放熱面として外部へ逃げるときの放
熱面面積が大きいために放熱量が大きく、引いては熱が
逃げ易くなったからである。
【0037】特に、下部ケースの場合には常に机や膝等
に接しているので、上部ケースの如く他の外気に充分触
れる部分に比べて表面から熱が逃げ難く、そのため上記
実施例3の如く金属薄板15をケース11の立壁16まで延長
して設けると、より放熱特性を向上し、ケース外側表面
での温度上昇がより効果的に抑制される。
【0038】(実施例4)前記実施例1での厚み:0.3mm
の純Al製金属薄板に代えて、厚み:0.2mm,幅:100mm,長
さ:150mmの純Al板にスリット加工を施し、空隙として
幅:2mm, 長さ:20mmのスリットを交差して配置させた
後、表面酸化処理を施して表面層をあらした金属薄板を
使用した。かかる点を除き、実施例1の場合と同様の方
法により成形を行い、図6に示す如き形状を有する実施
例4に係る異形状CFRP5を得た。尚、平板部の厚さは実
施例1の場合と同様の 0.9mmである。このようにして得
られた異形状CFRP5(成形品)を常盤上に置き、四隅み
よりスペーサーをあてて成形品の反り量を測定したとこ
ろ、反り量:1.0mm以下であった。
【0039】比較のため、上記スリットを有する金属薄
板に代えてスリットの無い金属薄板を使用し、上記と同
様の成形を行い、得られた成形品について同様の測定を
したところ、反り量は3mmであった。
【0040】(実施例5)前記実施例2の場合と同様法
により、図4に示したものと同様形状で、表面層に下記
純Cu製金属薄板8A,8B又は8Cを配したCFRP板7(即ち、
複合板)を成形した。尚、CFRPの樹脂としてはフェノー
ル樹脂、炭素繊維としては繊維長:25mmのものを用い
た。複合板の寸法は、幅:100mm, 長さ:140mm, CFRP板部
7の厚さ:0.7mm, 金属薄板の厚さ:0.2mmである。 金属薄板8A:スリット無し 金属薄板8B:幅:1mm, 長さ:10mm のスリット有り(空隙
率10%) 金属薄板8C:幅:2mm, 長さ:20mm のスリット有り(空隙
率10%)
【0041】上記複合板について実施例2の場合と同様
の方法により局部的加熱試験を行った。実施例2の場合
と同様の加熱開始1時間後における温度測定点10での最
高温度は、純Cu製金属薄板として金属薄板8Aを用いた複
合板Aの場合で64.0℃、金属薄板8Bを用いた複合板Bの
場合で67.2℃、金属薄板8Cを用いた複合板Cの場合で7
0.4℃であった。尚、比較のためCFRP単体(厚み0.9mm)
でのもので同様の試験を行ったところ、95.7℃であっ
た。
【0042】上記実施例4及び5から、CFRP表面層に設
ける金属薄板にスリット等の空隙をを設けることによ
り、若干放熱特性が低下するものの、成形品の反り量を
軽減できることがわかる。
【0043】
【発明の効果】本発明は以上のような構成を有し作用を
なすものであり、本発明に係る異形状繊維強化プラスチ
ック(異形状CFRP)は、従来異形状CFRP(特公平5-5837
1 号公報に記載の異形状CFRP)と同様に優れた機械的性
質を有すると共に、従来異形状CFRPに比べ、熱伝導性に
優れて局部的加熱による局部的温度上昇が小さく、又、
熱が逃げ易く、更に、炭素繊維が肉眼で見えなくて外観
が良く、又、厚さ:1mm以下の薄肉のものであっても表
面に起伏がなくて形状性及び外観が良く、従って、電子
機器や電気機器のハウジング材等に好適に用いることが
でき、機器が高温になり難くて機器としての信頼性が向
上し、又、ハウジングの局部的温度上昇が少なくてユー
ザに安心感を与えられ、引いては電子機器等のコンパク
ト化及び高容量化に寄与し得、更に、美観を向上し得る
という効果を奏する。又、本発明に係る異形状CFRPの製
造方法によれば、かかる優れた作用効果を奏する異形状
繊維強化プラスチックを製造し得るようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1に係る成形型への異形状繊維強化プ
ラスチック(CFRP)成形用材料の配置状況の概要を示す
側断面図である。
【図2】 実施例1に係る異形状CFRPの成形状況の概要
を示す側断面図である。
【図3】 実施例1に係る異形状CFRP成形品の概要を示
す斜視図であり、図3(A) は成形品の外側を示す図、図
3(B) は成形品の内側を示す図である。
【図4】 実施例2に係る成形品の局部的加熱試験状況
の概要を示す側断面図である。
【図5】 実施例3に係る異形状CFRPよりなるノート型
パソコン下部ケースについての局部的加熱試験の概要を
示す側断面図である。
【図6】 実施例4に係る異形状CFRP成形品の概要を示
す斜視図であり、図6(A) は成形品の外側を示す図、図
6(B) は成形品の内側を示す図である。
【符号の説明】
1--上型、2--プリプレグ、3--金属薄板、4--下型、
5--異形状CFRP、6--ボス部、7--CFRP板、8--純Cu製
金属薄板、9--発熱体、10--温度測定点、11--ケース、
12--CFRP、13--CFRP、14--発熱体、15--金属薄板、16--
ケースの立壁、17--台。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B32B 27/42 101 9349−4F // B29K 105:08 105:22 B29L 9:00

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱硬化性樹脂からなるマトリックス中に
    強化材として繊維長:10〜100mm の炭素繊維が2次元的
    に且つ不規則的に分布している異形状繊維強化プラスチ
    ックであって、その表面層に金属薄板をプレス成形によ
    り一体に配していることを特徴とする異形状繊維強化プ
    ラスチック。
  2. 【請求項2】 前記金属薄板の厚みが 0.5mm以下である
    請求項1記載の異形状繊維強化プラスチック。
  3. 【請求項3】 前記金属薄板がAl、Al合金、Cu又はCu合
    金からなる請求項1又は2記載の異形状繊維強化プラス
    チック。
  4. 【請求項4】 前記金属薄板がスリット状の空隙を有
    し、その空隙の金属薄板に占める面積の割合である空隙
    率が50%以下である請求項1、2又は3記載の異形状繊
    維強化プラスチック。
  5. 【請求項5】 前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂:30
    wt%以上を含有する熱硬化性樹脂である請求項1、2、
    3又は4記載の異形状繊維強化プラスチック。
  6. 【請求項6】 前記炭素繊維の繊維長が20〜30mmである
    請求項1、2、3、4又は5記載の異形状繊維強化プラ
    スチック。
  7. 【請求項7】 前記炭素繊維のマトリックスに対する体
    積比率が15〜35%である請求項1、2、3、4、5又は
    6記載の異形状繊維強化プラスチック。
  8. 【請求項8】 平板部と凸状の異形形状部とを有する異
    形形状の一体成形体であって、該異形形状部の付け根に
    おける炭素繊維が、平板部と異形形状部とを繋ぐ方向に
    配向している請求項1、2、3、4、5、6又は7記載
    の異形状繊維強化プラスチック。
  9. 【請求項9】 引張強度:2450MPa 以上の炭素繊維から
    なる不織布に熱硬化性樹脂を含浸し乾燥してプリプレグ
    を得、異形状のキャビティを有する成形型内に前記プリ
    プレグ及び該プリプレグと接触する側の表面に樹脂を塗
    布した金属薄板を配置し、面圧:9.8MPa以上、温度:14
    0 〜220 ℃で加熱加圧してプリプレグ中の熱硬化性樹脂
    と共に炭素繊維をキャビティ内で流動させ、異形状繊維
    強化プラスチックに成形すると共に、その表面層に金属
    薄板を一体に配することを特徴とする異形状繊維強化プ
    ラスチックの製造方法。
  10. 【請求項10】 前記金属薄板に塗布する樹脂が、エポ
    キシ樹脂である請求項9記載の異形状繊維強化プラスチ
    ックの製造方法。
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