JPH0860593A - 紙力増強剤およびその製造方法 - Google Patents

紙力増強剤およびその製造方法

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JPH0860593A
JPH0860593A JP19662394A JP19662394A JPH0860593A JP H0860593 A JPH0860593 A JP H0860593A JP 19662394 A JP19662394 A JP 19662394A JP 19662394 A JP19662394 A JP 19662394A JP H0860593 A JPH0860593 A JP H0860593A
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JP
Japan
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acrylamide
meth
polymer
glyoxal
reaction
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Application number
JP19662394A
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English (en)
Inventor
Masayoshi Ueda
政良 植田
Akira Tanikawa
顕 谷河
Shigeto Makino
重人 牧野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Carlit Co Ltd
Sumitomo Chemical Co Ltd
Original Assignee
Japan Carlit Co Ltd
Sumitomo Chemical Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 (メタ)アクリルアミド系のポリマーにグリ
オキザールを付加させてなり、製造時にゲル化せず、保
存安定性にも優れる紙力増強剤を提供する。 【構成】 1N−NaNO3 中、 30℃における極限
粘度が0.1〜0.4である(メタ)アクリルアミド系ポリ
マーをベースポリマーとし、その中の(メタ)アクリル
アミドモノマー1モルに対して、その(メタ)アクリル
アミド系ポリマーがノニオン性、アニオン性または両イ
オン性である場合は2.1〜6モルのグリオキザールを、
またその(メタ)アクリルアミド系ポリマーがカチオン
性である場合は2.1〜2.9モルのグリオキザールを付加
反応させることによって、紙力増強剤を得る。 【効果】 一時的な湿潤紙力を発現する乾燥紙力増強剤
が安定的に製造でき、その水溶液の保存安定性も改良さ
れる。この紙力増強剤を用いることにより、抄紙機の作
業性も改良される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、抄紙の際パルプに添加
することにより、あるいは成形された紙の二次加工に使
用することにより、紙に対して高い強度を与えるのに有
効な紙力増強剤およびその製造方法に関するものであ
る。さらに詳しくは、乾燥紙力の増強に有効であるとと
もに、一時的な湿潤紙力を与え、損紙などの離解も容易
である紙力増強剤およびその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来から知られている紙力増強剤には、
ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カチオン
化デンプン、酸化デンプン、尿素・ホルムアルデヒド樹
脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリ
アミン・エピクロロヒドリン樹脂、ジアルデヒドデンプ
ンなどがある。
【0003】これらのうち、ポリアクリルアミド、ポリ
ビニルアルコール、カチオン化デンプンおよび酸化デン
プンは、乾燥紙力の増強には有効であるが、湿潤紙力に
はほとんど影響を与えない。尿素・ホルムアルデヒド樹
脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂およびポリアミド
ポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂は、代表的なパー
マネント型湿潤紙力増強剤である。ジアルデヒドデンプ
ンは、乾燥紙力および一時的な湿潤紙力を同時に発現す
る薬剤であり、天然デンプンを原料とするものの、高価
な過ヨウ素酸ナトリウムを使用するため、他の薬剤に比
べて価格的に難があった。
【0004】一方、ある種の(メタ)アクリルアミド系
ポリマーにグリオキザールを付加反応させることによっ
て、一時的な湿潤紙力をも与える乾燥紙力増強剤を製造
できることが報告されている。例えば、特公昭 54-4476
2 号公報、特公昭 54-24485号公報、特公昭 56-43157
号公報、特開昭 56-157403号公報などに、このような記
載がある。
【0005】これらのうち、特公昭 54-44762 号公報、
特公昭 54-24485 号公報および特公昭 56-43157 号公報
に記載のポリマーは、乾燥紙力および一時的な湿潤紙力
において優れた効果を示すものの、付加反応時にゲル化
しやすいほか、保存安定性にも難があるため、必ずしも
実用的とはいえなかった。
【0006】特開昭 56-157403号公報に記載の熱硬化性
樹脂水溶液は、保存安定性を改善しているものの、製造
時のグリオキザール付加反応工程において、反応終点に
至るまでに40〜50℃付近で長時間を要するため、生
産効率の点で問題があった。熱硬化性樹脂の製造を短時
間で行うために、反応温度を上げたり反応pHを上げた
りすると、反応時にゲル化を起こすことがある。また、
たとえうまく反応が進んだとしても、得られた製品の保
存安定性が十分とはいえず、例えば50℃では30日間
程度の安定性しか示さず、特に夏期の保存安定性に問題
があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、(メ
タ)アクリルアミド系のポリマーに付加反応を行うにあ
たって、生産性を向上させ、製造時にゲル化などのトラ
ブルの恐れがないようなグリオキザールの反応モル比お
よび反応条件を検討し、乾燥強度のほか、一時的な湿潤
強度をも発現するとともに、夏期の保存安定性にも優れ
る紙力増強剤を得ることを課題として、研究を行ってき
た。
【0008】ここで、ベースポリマーは(メタ)アクリ
ルアミド系のものであるが、その重合度が高い場合に
は、グリオキザールを付加反応させる段階で即座に架橋
が進行し、ゲル化を起こす。また、ベースポリマー中の
(メタ)アクリルアミドモノマーに対するグリオキザー
ルの反応モル比を0.1から2.0の間とした場合、50℃
前後での付加反応中にゲル化を起こすことはないもの
の、得られる水溶液の保存安定性に難があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは、上
記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ある種の
(メタ)アクリルアミド系ポリマーに、特定の割合でグ
リオキザールを付加反応させることにより、安定かつ容
易に、所期の目的を達成する紙力増強剤が得られること
を見いだし、本発明に至った。
【0010】すなわち本発明は、 1N−NaNO
3 中、30℃における極限粘度が0.1〜0.4である(メ
タ)アクリルアミド系ポリマーをベースポリマーとし、
そのベースポリマー中の(メタ)アクリルアミドモノマ
ー1モルに対して、その(メタ)アクリルアミド系ポリ
マーがノニオン性、アニオン性または両イオン性である
場合は2.1〜6モルの、そしてその(メタ)アクリルア
ミド系ポリマーがカチオン性である場合は2.1〜2.9モ
ルのグリオキザールを付加反応させてなる紙力増強剤を
提供するものである。かかる紙力増強剤は、上記ベース
ポリマーに、グリオキザールを上記特定の割合で付加反
応させることによって製造される。
【0011】このように特定の割合でグリオキザールを
付加反応させることにより、製造時間が短くなり、ゲル
化もしないので、付加反応物の製造が容易となる。ま
た、こうして得られる紙力増強剤は、乾燥紙力とともに
一時的な湿潤紙力も付与することができ、さらには夏期
における長期間の保存安定性にも優れたものとなる。
【0012】本発明に用いる(メタ)アクリルアミド系
ポリマーは、アクリルアミドもしくはメタクリルアミド
の単独重合体、またはアクリルアミドもしくはメタクリ
ルアミドを主体とし、これとビニルコモノマーとの共重
合体であることができる。共重合体の場合は、通常モノ
マー成分の50モル%以上、好ましくは65モル%以上
がアクリルアミドまたはメタクリルアミドであり、ビニ
ルコモノマーは、モノマー全量に対し、通常5モル%以
上、好ましくは5〜35モル%の範囲で用いられる。こ
の(メタ)アクリルアミド系ポリマーのイオン性に特別
な制約はなく、ノニオン性であっても、またカチオン
性、アニオン性または両イオン性であってもよい。
【0013】ノニオン性の(メタ)アクリルアミド系ポ
リマーは、例えばアクリルアミドまたはメタクリルアミ
ドの単独重合体であることができ、下式(I)
【0014】
【0015】(式中、Rは水素またはメチルを表す)で
示される(メタ)アクリルアミド由来の繰り返し単位か
ら構成される。
【0016】カチオン性の(メタ)アクリルアミド系ポ
リマーは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドとカ
チオン性ビニルモノマーとの共重合体であることがで
き、前記式(I)で示される(メタ)アクリルアミド由
来の繰り返し単位および、例えば下式(II)
【0017】
【0018】(式中、R1 は水素またはメチルを表し、
2 、R3 およびR4 はそれぞれ独立にメチルまたはエ
チルを表し、 nは2〜6の整数を表し、X- はアニオ
ンを表す)で示されるカチオン性ビニルモノマー由来の
繰り返し単位から構成される。X- で表されるアニオン
としては、例えば、塩化物イオン(Cl- )、臭化物イオ
ン(Br- )、硝酸イオン(NO3 -)、メトサルフェートイ
オン(CH3SO4 - )、硫酸イオン(1/2 SO4 2- )などが挙
げられる。式(I)の繰り返し単位と式(II)の繰り返
し単位との割合は、通常モル比で(I):(II)=95
〜85:5〜15の範囲が好ましい。
【0019】アニオン性の(メタ)アクリルアミド系ポ
リマーは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドとア
ニオン性ビニルモノマーとの共重合体であることがで
き、前記式(I)で示される(メタ)アクリルアミド由
来の繰り返し単位および、例えば下式(III)
【0020】
【0021】(式中、R5 は水素またはメチルを表す)
で示されるアニオン性ビニルモノマー由来の繰り返し単
位から構成される。式(I)の繰り返し単位と式(III)
の繰り返し単位との割合は、通常モル比で(I):(II
I)=95〜80:5〜20の範囲が好ましい。
【0022】両イオン性の(メタ)アクリルアミド系ポ
リマーは、アクリルアミドまたはメタクリルアミド、カ
チオン性ビニルモノマーおよびアニオン性ビニルモノマ
ーの三元共重合体であることができ、前記式(I)で示
される(メタ)アクリルアミド由来の繰り返し単位、例
えば前記式(II)で示されるカチオン性ビニルモノマー
由来の繰り返し単位、および例えば前記式(III) で示さ
れるアニオン性ビニルモノマー由来の繰り返し単位から
構成される。 それぞれの繰り返し単位の割合は、通常
モル比で(I):(II):(III)=90〜65:5〜1
5:5〜20の範囲が好ましい。
【0023】以上のような(メタ)アクリルアミド系ポ
リマーは、下式(Ia)
【0024】
【0025】(式中、Rは前記の意味を表す)で示され
る(メタ)アクリルアミドを単独で重合させることによ
り、あるいはその(メタ)アクリルアミドと、下式(II
a)
【0026】
【0027】(式中、R1 、R2 、R3 、R4 、nおよ
びX- は前記の意味を表す)で示されるカチオン性ビニ
ルモノマー、および/または下式(IIIa)
【0028】
【0029】(式中、R5 は前記の意味を表す)で示さ
れるアニオン性ビニルモノマーとを共重合させることに
より、製造できる。
【0030】式(Ia)の(メタ)アクリルアミドは、ア
クリルアミドまたはメタクリルアミドである。式(IIa)
のカチオン性ビニルモノマーの例としては、2−メタク
リロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、
2−アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムメ
トサルフェート、2−メタクリロイロキシエチルトリエ
チルアンモニウムクロリド、3−メタクリロイロキシプ
ロピルトリメチルアンモニウムサルフェートなどが挙げ
られる。また式(IIIa)のアニオン性ビニルモノマーは、
アクリル酸またはメタクリル酸である。
【0031】本発明に用いる(メタ)アクリルアミド系
ポリマーは、いずれの場合も、1N−NaNO3 中、3
0℃における極限粘度が0.1〜0.4となるように、重合
条件を選択する必要がある。このような極限粘度は、モ
ノマーの仕込み方法、重合開始剤の量、連鎖移動剤の
量、重合温度、重合の際のモノマー濃度などを適宜調整
することにより、容易に達成することができる。例え
ば、このような極限粘度を有するカチオン性ポリマー
は、特開昭 56-157403号公報に記載の方法によって製造
することができる。
【0032】(メタ)アクリルアミド系ポリマーの製造
に用いる重合開始剤は、過硫酸カリウムや過硫酸アンモ
ニウムのような水溶性ラジカル重合開始剤であればよ
い。また連鎖移動剤は、メルカプタンやアルコール、ア
ミンのような有機化合物、チオ硫酸ナトリウムや重亜硫
酸ナトリウム、次亜燐酸ナトリウムのような無機化合物
など、通常のものであることができる。
【0033】本発明においては、以上説明したような特
定の極限粘度を有する(メタ)アクリルアミド系ポリマ
ーに、グリオキザールを付加反応させる。この際の(メ
タ)アクリルアミド系ポリマーのイオン性とそれに反応
させるグリオキザールのモル比との関係は重要であっ
て、(メタ)アクリルアミド系ポリマーがノニオン性、
アニオン性または両イオン性である場合は、(メタ)ア
クリルアミド系ポリマー中の(メタ)アクリルアミドモ
ノマー1モルに対して2.1〜6モルのグリオキザール
を、そして(メタ)アクリルアミド系ポリマーがカチオ
ン性である場合は、(メタ)アクリルアミド系ポリマー
中の(メタ)アクリルアミドモノマー1モルに対して
2.1〜2.9モルのグリオキザールを反応させる。 ここ
でいう(メタ)アクリルアミド系ポリマー中の(メタ)
アクリルアミドモノマーのモル数とは、(メタ)アクリ
ルアミドに由来する繰り返し単位、すなわち前記式
(I)で示される繰り返し単位のモル数を意味する。
【0034】グリオキザールの付加反応にあたり、ベー
スの(メタ)アクリルアミド系ポリマーとして、1N−
NaNO3 中、30℃で測定した極限粘度が0.4を超え
るものを用いると、付加反応中にゲル化しやすく、生成
物が溶液の形で得られにくくなる。一方、この極限粘度
が0.1を下回るものを用いると、紙力増強効果が弱くな
る。
【0035】ベースの(メタ)アクリルアミド系ポリマ
ーとグリオキザールの反応モル比について説明すると、
(メタ)アクリルアミド系ポリマー中の(メタ)アクリ
ルアミドモノマー1モルに対し0.1〜1.5倍のモル比で
グリオキザールを反応させても、付加反応は進行するも
のの、増粘した段階からゲル化に進行するまでの時間が
短いため、反応の制御が困難となる。そこで、こうした
モル比でゲル化しないように反応を進行させるために
は、40〜50℃の温度で7〜10時間を費やす必要が
あり、生産性に劣るとともに、たとえゲル化しない製品
が得られても、その保存安定性は50℃で30日程度と
なり、必ずしも十分とはいえなかった。
【0036】そこで、ベースポリマー中の(メタ)アク
リルアミドモノマーに対するグリオキザールのモル比を
2.1以上に上げ、特に(メタ)アクリルアミド系ポリマ
ーがカチオン性である場合には、そのモル比を2.1〜
2.9とし、そして(メタ)アクリルアミド系ポリマーが
ノニオン性、アニオン性または両イオン性である場合に
は、そのモル比を2.1〜6として反応を行ったところ、
架橋反応に特有の増粘やゲル化の傾向がみられず、50
〜80℃で1〜3時間の反応によっても安定的に付加反
応が進行することが分かった。こうして得られる付加反
応物は、紙力増強剤としての効果も十分であり、また例
えば50℃で保存しても、90日以上安定した状態を保
つことが分かった。
【0037】グリオキザールの付加反応は通常、(メ
タ)アクリルアミド系ポリマーとグリオキザールを含む
水溶液中で行われる。この際、固形分濃度が6〜15重
量%、さらには6〜10重量%となるよう調整するのが
好ましい。反応pHは、通常5〜9の範囲であることが
できるが、なかでも5〜7の範囲が好ましく、とりわけ
5.5〜7、さらには5.5〜6.5の範囲が一層好ましい。
水溶液のpHが5を下回ると、付加反応が進行しにくく
なり、一方pHがあまり高くなると、ゲル化の進行が速
くなるため、反応の制御が困難になりやすい。特に、p
Hが7.5を上回るとゲル化の傾向が現れやすくなるの
で、可能なかぎりpHを7.5以下に維持するのが好まし
い。こうしたpH範囲に調整された水溶液中、50〜8
0℃の温度、好ましくは60〜70℃の温度にて、0.5
時間以上、好ましくは1〜3時間反応が行われる。とり
わけ、pHを5.5〜6.5の範囲に保ち、60〜70℃の
温度で1〜2時間反応させるのが、能率もよく、製造上
のトラブルも少ないので、好ましい。
【0038】例えば40重量%程度の濃度のグリオキザ
ール水溶液を用いる場合、そのpHは通常2〜2.5程度
であるが、このグリオキザール水溶液を、1N−NaN
3中、30℃における極限粘度が0.1〜0.4である
(メタ)アクリルアミド系ポリマーの水溶液に所定量添
加する。そこに水を加えて、固形分濃度が6〜15重量
%、好ましくは6〜10重量%となるよう調整し、この
混合水溶液を50〜80℃、好ましくは60〜70℃に
昇温する。そして昇温の前または後に、アルカリ水溶
液、例えば10重量%程度の濃度の炭酸ナトリウム水溶
液を少量添加して、系のpHを5〜9、好ましくは5〜
7の範囲に調整し、このpH範囲で0.5〜3時間反応さ
せる。反応終了後冷却し、塩酸や硫酸のような鉱酸で系
のpHを2〜4の範囲に下げて安定化させることによ
り、やや青みを帯びた透明な樹脂水溶液が得られる。
【0039】付加反応の進行に伴い、通常反応水溶液の
pHが低下してくるので、pHが5を下回る前、好まし
くは5.5を下回る前に、炭酸ナトリウム水溶液のような
アルカリ水溶液を添加して、pHを戻してやるのが好ま
しい。 例えば、(メタ)アクリルアミド系ポリマーの
水溶液にグリオキザールを添加し、固形分濃度を調整
し、さらにpHを6〜7の範囲に調整したあと、50〜
80℃、好ましくは60〜70℃の温度まで昇温して反
応を進行させ、pHが5を下回る前、好ましくは5.5を
下回る前に、アルカリ水溶液を添加してpHを6〜7の
範囲に戻し、さらに反応を進行させる。こうしたpH調
整を、反応開始後4〜16回繰り返して反応を終了させ
るのが好ましい。
【0040】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく
説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定され
るものではない。例中、含有量または添加量を表す%
は、特にことわらないかぎり重量%を意味する。
【0041】実施例1 40%濃度で、1N−NaNO3 中、30℃における極
限粘度が0.2であるカチオン性ポリアクリルアミド(モ
ノマーのうち約74%がアクリルアミドである共重合
体)の水溶液21.6 kg と40%グリオキザール水溶液
38kg(カチオン性ポリアクリルアミド中のアクリルア
ミドモノマーに対するグリオキザールのモル比2.9:
1)の混合物に、水を加えて総固形分が10%となるよ
う希釈し、この溶液を攪拌しながら、10%炭酸ナトリ
ウム水溶液を滴下してpH6.5に調整し、70℃に昇温
した。70℃に達してから20分後にはpHが5.5まで
下がったので、10%炭酸ナトリウム水溶液を加えて再
度pHを6.5まで上げ、その後10分ごとにこのpH調
整を繰り返した。2時間後に塩酸を加えてpHを3.0に
下げたあと冷却して、固形分10%、ガードナー粘度<
Aで、青みを帯びた透明なポリマー水溶液約240kgを
得た。
【0042】実施例2 ティッシュペーパー製造工場において、配合ポーチャー
に340kgのパルプを仕込み、実施例1で得られたポリ
マー水溶液5リットルを100倍希釈したあと20分間
でシャワーし、円網式抄紙機を用いて340m/分のス
ピードで抄紙して、坪量12.8g/m2のティッシュペー
パーを製造した。 この抄紙工程において、バットでの
発泡状態および湿紙のドライヤーへの接着状態を目視観
察し、結果を表1に示した。
【0043】得られたティッシュペーパーから幅10mm
の紙片を切り出し、 JIS P 8113 および JIS P 8135 に
準じて乾燥強度および湿潤強度を測定し、結果を表1に
示した。また、各紙片を水中に浸漬したまま5時間、1
0時間および24時間放置したあとの強度(湿潤強度)
を測定し、結果を表2に示した。さらに、各紙片につ
き、通常の室内に製造から1週間、2週間および3週間
放置したあとの湿潤強度を測定し、結果を表3に示し
た。
【0044】比較例1 ティッシュペーパー製造時に、変性ポリアクリルアミド
を用いる代わりに、ポリアミドポリアミン・エピクロロ
ヒドリン樹脂(日本ピー・エム・シー株式会社製の WS-
525 )を固形分で対パルプ0.2%内添した以外は、実施
例2と同様の方法で抄紙して、坪量12.8g/m2のティ
ッシュペーパーを製造した。抄紙時の操作性および得ら
れたティッシュペーパーの引張強度について、実施例2
と同様の観察および測定を行い、結果を表1〜3に示し
た。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】 ( )内=(その時の強度/3週間後の強度)×100
【0048】これらの結果から、代表的な湿潤紙力増強
剤であるポリアミドポリアミン・エピクロロヒドリン樹
脂を用いた比較例1では、発泡が生じやすいこと、乾燥
強度を必要とする用途には必ずしも十分な性能を与えな
いこと、湿潤紙力が長時間にわたって持続することなど
がわかる。これに対し、本発明に従って特定モル比のグ
リオキザールで変性したアクリルアミド系ポリマーを紙
力増強剤とした実施例2では、バットでの発泡がなく、
作業性が改善されるとともに、ドライヤーへの接着がよ
く、クレープのかかりがよくなる。そして、一液の添加
で湿潤強度と乾燥強度が同時に得られ(表1参照)、し
かも湿潤強度は一時的なので、損紙の離解もしやすい
(表2参照)。また紙力は、抄紙直後でほぼ完全に立ち
上がる(表3参照)。
【0049】実施例3 40%濃度で、1N−NaNO3 中、30℃における極
限粘度が0.3であるアニオン性ポリアクリルアミド(モ
ノマーのうち約87%がアクリルアミドである共重合
体)の水溶液21.6 kg と40%グリオキザール水溶液
58kg(アニオン性ポリアクリルアミド中のアクリルア
ミドモノマーに対するグリオキザールのモル比3.8:
1)の混合物に、水を加えて総固形分が10%となるよ
う希釈し、この溶液を攪拌しながら、10%炭酸ナトリ
ウム水溶液を滴下してpH6.5に調整し、70℃に昇温
した。70℃に達してから20分後にはpHが5.5まで
下がったので、10%炭酸ナトリウム水溶液を加えて再
度pHを6.5まで上げ、その後10分ごとにこのpH調
整を繰り返した。2時間後に塩酸を加えてpHを3.0に
下げたあと冷却して、固形分10%、ガードナー粘度<
Aで、青みを帯びた透明なポリマー水溶液約320kgを
得た。
【0050】実施例4 40%濃度で、1N−NaNO3 中、30℃における極
限粘度が0.15である両イオン性ポリアクリルアミド
(モノマーのうち約80%がアクリルアミドである共重
合体)の水溶液21.6 kg と40%グリオキザール水溶
液67kg(両イオン性ポリアクリルアミド中のアクリル
アミドモノマーに対するグリオキザールのモル比4.7:
1)の混合物に、水を加えて総固形分が10%となるよ
う希釈し、この溶液を攪拌しながら、10%炭酸ナトリ
ウム水溶液を滴下してpH6.5に調整し、70℃に昇温
した。70℃に達してから20分後にはpHが5.5まで
下がったので、10%炭酸ナトリウム水溶液を加えて再
度pHを6.5まで上げ、その後10分ごとにこのpH調
整を繰り返した。2時間後に塩酸を加えてpHを3.0に
下げたあと冷却して、固形分10%、ガードナー粘度<
Aで、青みを帯びた透明なポリマー水溶液約350kgを
得た。
【0051】比較例2 40%濃度で、1N−NaNO3 中、30℃における極
限粘度が0.5である両イオン性ポリアクリルアミド(モ
ノマーのうち約80%がアクリルアミドである共重合
体)の水溶液21.6 kg と40%グリオキザール水溶液
8.7 kg (両イオン性ポリアクリルアミド中のアクリル
アミドモノマーに対するグリオキザールのモル比0.6:
1)の混合物に、水を加えて総固形分が10%となるよ
う希釈し、この溶液を攪拌しながら、10%炭酸ナトリ
ウム水溶液を滴下してpH6.5に調整し、70℃で反応
を始めた。反応開始から20分後にはpHが5.5まで下
がったので、10%炭酸ナトリウム水溶液を加えて再度
pHを6.5まで上げ、反応を継続したところ、それから
7分後に激しく増粘し、ゲル化を起こした。
【0052】比較例3 40%濃度で、1N−NaNO3 中、30℃における極
限粘度が0.15である両イオン性ポリアクリルアミド
(モノマーのうち約80%がアクリルアミドである共重
合体)の水溶液21.6 kg と40%グリオキザール水溶
液4.4 kg (両イオン性ポリアクリルアミド中のアクリ
ルアミドモノマーに対するグリオキザールのモル比0.
3:1)の混合物に、水を加えて総固形分が10%とな
るように希釈し、この溶液を攪拌しながら、10%炭酸
ナトリウム水溶液を滴下してpH6.5に調整し、70℃
で反応を始めた。反応開始から20分後にはpHが5.5
まで下がったので、10%炭酸ナトリウム水溶液を加え
て再度pHを6.5まで上げ、反応を継続したところ、そ
れから10分後に激しく増粘し、ゲル化を起こした。
【0053】比較例4 40%濃度で、1N−NaNO3 中、30℃における極
限粘度が0.15である両イオン性ポリアクリルアミド
(モノマーのうち約80%がアクリルアミドである共重
合体)の水溶液21.6 kg と40%グリオキザール水溶
液17.4 kg (両イオン性ポリアクリルアミド中のアク
リルアミドモノマーに対するグリオキザールのモル比
1.2:1)の混合物に、水を加えて総固形分が10%と
なるよう希釈し、この溶液を攪拌しながら、10%炭酸
ナトリウム水溶液を滴下してpH6.5に調整し、70℃
で反応を始めた。反応開始から20分後にはpHが5.5
まで下がったので、10%炭酸ナトリウム水溶液を加え
て再度pHを6.5まで上げ、そのまま60分攪拌した。
この後塩酸を加えてpHを3.0に下げ、冷却して、固形
分10%、ガードナー粘度<Aで、青みを帯びた透明な
ポリマー水溶液約156kgを得た。
【0054】実施例5 200mlのガラス瓶に、実施例1、3および4、ならび
に比較例4で得られたそれぞれのポリマー水溶液100
mlを入れ、密栓して、40℃の恒温槽中で所定期間保存
したあとの状態を目視観察し、次の3段階で評価した。 ○:変化なし、 ×:増粘、 ××:ゲル化 結果を表4に示す。
【0055】
【表4】
【0056】実施例6 実施例1、3および4、ならびに比較例4で得られたそ
れぞれのポリマー水溶液を水で10倍に希釈して固形分
濃度1%とした。 No.2濾紙をこの1%溶液に1分間浸
漬したあと、余分な水を吸い取り、120℃のドラムド
ライヤーにて3分間乾燥して、試験片を調製した。各々
の試験片の湿潤引張強度を、水中1分間浸漬後および2
4時間浸漬後、それぞれスパン10cmで測定した。また
各々の試験片の乾燥引張強度は、温度20℃、相対湿度
65%で24時間調湿したあと測定した。
【0057】以上の試験を、調製直後のポリマー水溶液
および調製してから50℃で3か月保存後のポリマー水
溶液について行った。ただし、比較例4で得られたポリ
マー水溶液は、50℃で3か月保存後にはゲル化してい
たため、希釈および濾紙の浸漬ができなかった。またコ
ントロールとして、水に No.2濾紙を浸漬したあと上と
同様の処理を施した試験片につき、湿潤引張強度および
乾燥引張強度を測定した。それぞれの結果を表5に示
す。
【0058】
【表5】
【0059】
【発明の効果】本発明によれば、反応中にゲル化を起こ
すことなく安定的に、一時的な湿潤紙力を発現する乾燥
紙力増強剤が製造でき、得られる紙力増強剤含有水溶液
の保存安定性も大幅に改良される。この紙力増強剤を内
添で用いることにより、一液で二種類の薬剤効果を発現
し、発泡による毛布汚れもなく、抄紙機の作業性を良好
に保つことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 牧野 重人 大阪市此花区春日出中3丁目1番98号 住 友化学工業株式会社内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1N−NaNO3 中、30℃における極限
    粘度が0.1〜0.4である(メタ)アクリルアミド系ポリ
    マーをベースポリマーとし、該ベースポリマー中の(メ
    タ)アクリルアミドモノマー1モルに対して、該(メ
    タ)アクリルアミド系ポリマーがノニオン性、アニオン
    性または両イオン性である場合は2.1〜6モルのグリオ
    キザールを、そして該(メタ)アクリルアミド系ポリマ
    ーがカチオン性である場合は2.1〜2.9モルのグリオキ
    ザールを付加反応させてなる紙力増強剤。
  2. 【請求項2】(メタ)アクリルアミド系ポリマーが、
    (メタ)アクリルアミドとビニルコモノマーとの共重合
    体であって、モノマー全量のうちの5〜35モル%が該
    ビニルコモノマーである請求項1記載の紙力増強剤。
  3. 【請求項3】(メタ)アクリルアミド系ポリマーが、
    (メタ)アクリルアミドとカチオン性ビニルコモノマー
    との共重合体であって、モノマー全量のうちの5〜15
    モル%が該カチオン性ビニルコモノマーである請求項2
    記載の紙力増強剤。
  4. 【請求項4】(メタ)アクリルアミド系ポリマーが、
    (メタ)アクリルアミドとアニオン性ビニルコモノマー
    との共重合体であって、モノマー全量のうちの5〜20
    モル%が該アニオン性ビニルコモノマーである請求項2
    記載の紙力増強剤。
  5. 【請求項5】1N−NaNO3 中、30℃における極限
    粘度が0.1〜0.4である(メタ)アクリルアミド系ポリ
    マーに、該ポリマー中の(メタ)アクリルアミドモノマ
    ー1モルを基準として、該(メタ)アクリルアミド系ポ
    リマーがノニオン性、アニオン性または両イオン性であ
    る場合は2.1〜6モルのグリオキザールを、そして該
    (メタ)アクリルアミド系ポリマーがカチオン性である
    場合は2.1〜2.9モルのグリオキザールを付加反応させ
    ることを特徴とする紙力増強剤の製造方法。
  6. 【請求項6】グリオキザールの付加反応を、固形分濃度
    6〜15重量%およびpH5〜9の水溶液中、50〜8
    0℃の温度で1〜3時間行う請求項5記載の方法。
  7. 【請求項7】pH5〜7の範囲で反応を行う請求項6記
    載の方法。
  8. 【請求項8】(メタ)アクリルアミド系ポリマーの水溶
    液にグリオキザールを添加し、固形分濃度を調整し、さ
    らにpHを6〜7の範囲に調整し、所定の温度で反応を
    進行させ、pHが5を下回る前にアルカリ水溶液を添加
    してpHを6〜7の範囲に戻す請求項7記載の方法。
  9. 【請求項9】pH調整を4〜16回繰り返して反応を終
    了させる請求項8記載の方法。
  10. 【請求項10】pH調整に炭酸ナトリウム水溶液を用い
    る請求項8または9記載の方法。
  11. 【請求項11】pH5.5〜7の範囲および温度60〜7
    0℃で反応を行う請求項6〜10のいずれかに記載の方
    法。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005281921A (ja) * 2004-03-30 2005-10-13 Kohjin Co Ltd クリーンペーパー
JP2008524427A (ja) * 2004-12-21 2008-07-10 ハーキュリーズ・インコーポレーテッド 亜硫酸イオンを含む製紙系において乾燥および湿潤紙力増強剤として使用するための反応性を有するカチオン性樹脂
WO2008113934A3 (fr) * 2007-02-19 2009-01-22 Snf Sas Copolymeres cationiques derives d'acrylamide et leurs utilisations
JP2011503271A (ja) * 2007-11-05 2011-01-27 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア グリオキサル化n−ビニルアミン
JP2019515123A (ja) * 2016-04-25 2019-06-06 アプライド・ケミカルズ・ハンデルス−ゲー・エム・ベー・ハー グリオキサール化ポリアクリルアミドからなる乾燥強化剤を製造するための方法

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