JPH0852474A - 電極及びイオン水生成器 - Google Patents

電極及びイオン水生成器

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JPH0852474A
JPH0852474A JP6187485A JP18748594A JPH0852474A JP H0852474 A JPH0852474 A JP H0852474A JP 6187485 A JP6187485 A JP 6187485A JP 18748594 A JP18748594 A JP 18748594A JP H0852474 A JPH0852474 A JP H0852474A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 電解液の異常温度上昇を防ぎ、機械的強度が
大きく、耐触性に優れ、アルカリ性・酸性水中に電極成
分の溶出のなく、電極寿命が長く、製造コストが安価な
電極及びそれを用いたイオン水生成器を提供することを
目的とするものである。 【構成】 本発明の電極は、正特性サーミスタ特性を有
する半導体セラミックで電極基板部10を形成し、その
上に接合層11を介して貴金属電極部12を積層し、貴
金属電極部12とは離隔した位置に電源印加部13を設
けたことを特徴とする。さらに本発明のイオン水生成器
は、貴金属電極部12が互いに対向するように一対の電
極を設けているから、半導体セラミックを介して電源を
入力でき、セルフスイッチ機能を有した安全なイオン水
生成器が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は水の電気分解処理によっ
てアルカリ性または酸性の水を得る水改質装置などに用
いられるセルフスイッチ機能を有する電極及びイオン水
生成器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近の「健康ブーム」を反映してアルカ
リイオン水に関心が集まっている。同様に酸性水はアス
トリンゼン水として美容に用いることができるため女性
を中心に多くの関心を呼んでいる。酸性水にはこのほか
殺菌効果もあるため、これが着目されて医療用または精
密工業用などの用途も脚光を浴びている。そこでこのア
ルカリイオン水と酸性水を生成することができる従来の
水改質装置とその電極について図3を参照しながら説明
する。
【0003】すなわち、図3は従来の水改質装置の構造
を示す概略図で、原水1を満たした液槽2内にイオン透
過性隔壁5を介して電極端子3−aおよび電極端子4−
aでそれぞれ固定された陽極3と陰極4が対向配置さ
れ、両電極間に電源6より直流電源を印加することによ
って、陽極3の付近では水素イオンH+が増加して酸性
水が生成され、陰極4の付近では水酸イオンOH-が増
加して、アルカリ性水が生成される。
【0004】ところでこの方式による水改質装置は原水
1として水道水を電気分解するのが一般的である。水道
水のような導電率の低い電解液の電気分解では通常2な
いし3Aの大きな電流を印加する必要があることから、
ジュール熱によって急激に電解液の液温が上昇する。通
常、水道水は2.5リットル/分程度の流量で連続して
流入させながら電気分解するので、発生した熱は液槽2
内で生成するアルカリ性水または酸性水に吸収されて外
部に放熱される。しかしながら断水などによって水道水
の供給が止まった場合や、高濃度のアルカリ性水を得る
ために水改質装置の出口流量を絞る場合には液槽2内で
発生する熱が外部に十分放熱できなくなる。従来の水改
質装置はこのような対策が十分とられていないものであ
った。
【0005】また原水1が温水器などから供給され熱湯
が流入することも考えられ、この場合も同様に液槽2に
影響がでるものである。この熱湯に対する問題を解決す
るため従来次のような技術(特開平6−15274号公
報)が提案されている。図4は従来のイオン水生成器の
制御装置の構成図である。図4において浄水器21の直
前に熱湯センサ22を載置し、その下流に測定槽23を
設け、この中に温度センサ24を設けている。さらにそ
の下流に電解槽25を設けている。すなわちこの従来技
術は電解槽25の上流に熱湯センサ22や温度センサ2
4を設けることによって、熱湯などの流入を防ぐことが
できるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、断水対
策などをとっていない従来技術は、電解液が沸騰した
り、液槽が溶融破損したりするという問題があるもので
あった。また特開平6−15274号公報に記載された
温度センサを設けたイオン水生成器は、電解槽の上流に
温度センサを設けているから電解槽内で発生する熱は検
知できず、温度制御できないという問題がある。また、
電解槽とは別に温度センサを設けた測定槽を設置し、こ
れによって制御部で制御するからイオン水生成器が大型
になり制御が複雑でコストが高くなるという問題があ
る。
【0007】そこで本発明はこのような従来の問題点を
解決するもので、電解液の異常温度上昇を防ぎ、機械的
強度が大きく、耐触性に優れ、アルカリ性・酸性水中に
電極成分の溶出がなく、電極寿命が長く、製造コストが
安価な電極及びその電極を設けたイオン水生成器を提供
することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明の電極は、正特性サーミスタ特性を有する半導
体セラミックからなる電極基板部と、この電極基板部の
表面に接合層を介して積層した貴金属電極部と、電極基
板部の表面上で貴金属電極部と離隔した位置に電源印加
部を設けたことを特徴とする。
【0009】また、半導体セラミックの組成がBa
(1- x)SrxTiy3−αM1−βM2(ただし0.1
≦x≦0.5、0.9≦y≦1.1、0<α≦0.0
6、0<β≦0.03、M1:Nb、Nd、Sm、P
r、Ce、La、Y、Dyの1種以上、M2:Mn、C
r、Bの1種以上の酸化物)であるのが望ましい。
【0010】さらに、接合層がNi、Al、Zn、およ
びCrの一種以上の成分から形成されているのが好まし
い。
【0011】さらに、貴金属層電極部が白金族元素の一
種以上の成分から形成されていることを特徴とする。
【0012】さらに、本発明のイオン水生成器は、貴金
属電極部が対向するように電極を一対にして設けている
ことを特徴とする。
【0013】
【作用】本発明の電極は、正特性サーミスタ特性を有す
る半導体セラミックを電極基板部とし接合層を設けてい
るから、エネルギー障壁を生じさせずに、固有抵抗の温
度依存性を急峻なものとし、セルフスイッチ機能を電極
に付与することができ、貴金属電極部の積層強度を高め
ることができる。また貴金属電極部を備えているから、
導電性が良くなり、耐触性が向上する。さらに貴金属電
極部と離隔した位置に電源印加部を設けているから、電
流密度の集中を低下することができ半導体セラミックの
特性を十分引き出すことができる。
【0014】また、半導体セラミックの組成がBa
(1- x)SrxTiy3−αM1−βM2(ただし0.1
≦x≦0.5、0.9≦y≦1.1、0<α≦0.0
6、0<β≦0.03、M1:Nb、Nd、Sm、P
r、Ce、La、Y、Dyの1種以上、M2:Mn、C
r、Bの1種以上の酸化物)であるから、30℃〜70
℃の温度範囲で固有抵抗が10Ωcmから107Ωcm
まで変化させることができる。
【0015】さらに、接合層がNi、Al、Zn、およ
びCrの一種以上の成分から形成されているから、半導
体セラミックと貴金属電極部の接合境界のエネルギ障壁
を抑え正特性のサーミスタ特性を得ることができる。
【0016】さらに、貴金属電極部が白金族元素の一種
以上の成分から形成されているから、耐触性を大きくで
き、金属の溶出を少なくできる。
【0017】さらに、本発明のイオン水生成器は、貴金
属電極部が互いに対向するように一対の電極を設けてい
るから、半導体セラミックを介して電源を入力でき、液
槽温度の上昇を防いでイオン水を生成することができ
る。
【0018】
【実施例】以下本発明の実施例の詳細を図面に基づいて
説明する。
【0019】図1(a)は本発明の一実施例における電
極の拡大斜視図であり、図1(b)は本発明の一実施例
における電極の側面図である。図1(a)、図1(b)
において、10は半導体セラミックからなる電極基板部
であって平板状であり、11は接合層、12は貴金属電
極部、13は電源印加部である。14は電極端子、15
は入力線である。そこで先ず電極基板部10について説
明する。半導体セラミックからなる電極基板部10は一
般式Ba(1- x)SrxTiy3− αM1−βM2で表さ
れるBaSrTiO3系酸化物からなり、以下説明する
製造方法で製造され、正特性のサーミスタ特性を持つも
のである。ここで正特性のサーミスタ特性とは温度上昇
とともに固有抵抗が急激に高くなる特性のことである。
組成を選ぶことによって、例えば30℃〜60℃の温度
範囲で固有抵抗が10Ωcm程度であったものが60℃
〜80℃の近傍で急激に107Ωcmまで変化させるよ
うにすることができるのである。このことは、例えば3
0℃近傍で導通していたものが温度上昇して80℃近傍
になると不導体に変化して導通を遮断し、再び温度が低
下して30℃近傍になると導通状態に戻るということを
意味する。つまり特定の温度の近傍で電流を増減すると
導通が断たれたり回復する現象をセルフスイッチ機能と
呼べば、この半導体セラミックによってセルフスイッチ
機能が実現されることになる。
【0020】そこでこの実施例の半導体セラミックの代
表的製造方法について述べる。すなわちその方法は、炭
酸ストロンチウム(SrCO3)、炭酸バリウム(Ba
CO3)、及び酸化チタン(TiO3)を主成分とし、酸
化ランタン(La23)、酸化ニオブ(Nb25)、酸
化ネオジウムNd23、酸化サマリウム(Sm25)、
酸化プラセオジウム(Pr23)、酸化セリウム(Ce
23)、酸化イットリウム(Y23)、酸化ジスプロジ
ウム(Dy25)、炭酸マンガン(MnCO3)、酸化
クロム(Cr25)、及び酸化ホウ素(B23)などを
添加助剤として、(表1)、(表2)に示したように組
成比と添加助剤の種類を変えて25種類の配合原料(サ
ンプル番号3〜7、10、11、16、17、19〜2
1、23〜33、35、36)を作成した。同時に比較
例として12種類(サンプル番号1、2、8、9、12
〜15、18、22、34、37)を別途作成した。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】この25種類の配合原料は一般式Ba
(1- x)SrxTiy3− αM1−βM2(ただし0.1
≦x≦0.5、0.9≦y≦1.1、0<α≦0.0
6、0<β≦0.03、M1:Nb、Nd、Sm、P
r、Ce、La、Y、Dyの1種以上、M2:Mn、C
r、Bの1種以上の酸化物)で表すことができる(以下
これをBaSrTiO3 系酸化物と略称する)。(表
1)、(表2)においてサンプル番号1〜30までは添
加助剤(M1、M2)のそれぞれ1種類を加えたもので
あり、サンプル番号31〜34は添加助剤(M1)を1
1種類等量同時に添加したもので、サンプル番号35〜
37は添加助剤(M2)を3種類を同時に添加したもの
である。これらサンプル1〜37を20時間湿式混合
し、乾燥、成形後1000℃〜1200℃にて空気中で
仮焼して後、粉砕、成型し、1250℃〜1350℃の
間で10%〜20%水素を含む窒素ガス中で4時間焼成
し、20%〜30%の酸素を含む窒素ガス中で冷却する
ことにより、空孔率が15%以下で正特性のサーミスタ
特性を持つn型の半導体セラミックからなる電極基板部
10が得られる。ところでこのようにn型の半導体セラ
ミックで電極基板部10を形成していることから、これ
らの材料はいずれも導電性が良く、固有抵抗の温度依存
性が急峻で、化学的に安定で、機械的強度が高くでき
る。
【0024】つぎに、本実施例の接合層11について説
明する。半導体セラミックに直接貴金属を接合すると、
接合界面では互いのエネルギー準位の差によってエネル
ギー障壁(ショットキー・バリアー)ができ、あたかも
高抵抗層が生じたような現象を示し半導体セラミックの
導電性が妨げられる。この現象を抑えるにはNi、A
l、Zn、およびCr金属などで接合層11を形成し、
この接合層11を介して貴金属電極部12を積層すれば
よい。これが接合層11が設けられた理由である。この
接合層11の代表的な形成方法は、半導体セラミックの
表面にNi、Al、Zn、およびCr金属などを電気メ
ッキすることであり0.1〜0.3ミクロン程度の厚み
の接合層11を形成すれば上記のエネルギー障壁を抑え
ることができる。本実施例ではNiを含むメッキ液のp
Hを6に調整し、電流密度1A/cm2 で電気メッキし
た。Ni、Al、Zn、およびCr金属などは高温で酸
化して酸化物絶縁体をつくり易いので、接合層11の形
成には主にメッキ法を用いるのが良い。本実施例では接
合層11はNiで形成されているがそれ以外に、Al、
Zn、およびCrの一種以上の成分で形成しても本発明
の効果に何等影響するものではない。
【0025】さらに、本実施例の貴金属電極部12につ
いて説明する。この貴金属電極部12の代表的な積層方
法は、半導体セラミックの表面にNi、Al、Zn、お
よびCrの金属の一種以上で形成した接合層11を形成
し、その表面に白金(Pt)等の貴金属を電気メッキす
ることで1ミクロン程度の厚みの貴金属電極部12を積
層するものである。白金のほかに白金族元素に属すイリ
ジウム、ロジウム、パラジウムなどであっても同様であ
る。ところで接合層11の表面に貴金属電極部12を形
成する際電気メッキで形成するのは、これが貴金属電極
部12の厚みを厚く積層するのに優れた方法であるから
である。電気メッキ法の他にも、別の被覆方法としてイ
オンプレーティング法、スパッタリング法、または焼成
による方法などでも貴金属電極部12を形成することが
できる。このイオンプレーティング法は蒸発源から気化
した金属原子をイオン化してプラズマを形成し、基板上
に衝突させて膜を形成するもので、厚みの薄く緻密な貴
金属電極部12を積層できる特徴がある。またスパッタ
リング法は加速したイオンで固体を構成する原子をスパ
ッタしスパッタされた原子で基板上に成膜するもので、
多種類の緻密な化合物膜を成膜できる特徴がある。また
焼成による方法は、金属化合物溶液を基板上に塗布し高
温で熱処理して成膜するもので、貴金属電極部12が厚
く被覆強度を高くできる特徴がある。従って必要とする
貴金属電極部12の厚みや緻密度、さらには積層強度に
応じてその積層方法を選べばよい。
【0026】つぎに、本実施例の電源印加部13につい
て説明する。この電源印加部13の代表的な形成方法
は、貴金属電極部12の積層方法と同様であって、まず
Ni、Al、Zn、Cr等で接合層を形成した後、その
上に白金等の貴金属を電気メッキすることで1ミクロン
程度の厚みの電源印加部13を形成するものである。白
金のほかに白金族元素に属すイリジウム、ロジウム、パ
ラジウムなどであってもよい。ここで電源印加部13か
ら入力された電流は半導体セラミックからなる電極基板
部10を導通して貴金属電極部12に達し電気分解に共
せられるが、この際電流密度の分布にできるだけムラが
ないようにするのが望ましい。このためには貴金属電極
部12と直接導通する位置以外の位置、すなわち貴金属
電極部12と離隔した位置に相当の大きさの電源印加部
13を形成する必要がある。望ましくは電極基板部10
を鋏むように離隔して貴金属電極部12を設けるのがよ
い。
【0027】このように半導体セラミックを電極基板部
10としその表面に接合層11を設け、さらに貴金属電
極部12を積層し、電源印加部13を設けているから、
導電性が良く、固有抵抗の温度依存性が急峻で、化学的
に安定で、機械的強度が高く、耐触性に優れ、食品衛生
上安全性の高いセルフスイッチ機能を有する電極が実現
できる。なお、本実施例では半導体セラミックからなる
電極基板部10の形状を平板状としているが、用途によ
って円柱、円筒、角柱、円板状などを選択しても、本発
明の効果に何等影響するものではない。
【0028】(表1)、(表2)に示した25種類の半
導体セラミックで形成した電極の固有抵抗の最小値(R
min.Ωcm)、キュリー温度(Tc℃)、温度係数
(α T%/deg)、電極消耗速度(Vmg/A・H
r)、酸素過電圧(ηmV)を測定し、極寿命評価及び
過電圧を測定し、比較例の12種類および従来電極2種
類と対比して(表3)、(表4)に示した。
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】この(表3)、(表4)でサンプル番号1
〜37は(表1)、(表2)のサンプル番号と対応して
いる。またここではNiを接合層11とし貴金属電極部
はメッキ法で積層した白金を用いた。このうち*印を付
加したのは本実施例の比較例であり、また一般に多用さ
れる代表的な電極として2つを選んでフェライト電極を
従来例1とし、白金−チタン電極を従来例2とした。こ
こで電極消耗速度の測定は本実施例及び比較例の電極を
陽極に、白金を陰極とし1000ppmの濃度のNaC
l溶液を定電流電気分解した。この時の液温は30 〜
40℃で加速試験を目的として通常より高い温度に設定
し、陽極電流密度は2A/cm2である。そして電極消
耗速度の測定は通電500時間後の重量変化で求めた。
また実際に電気分解に必要な電圧と物質固有の電圧との
差で表される過電圧の測定は、塩化銀電極を標準(参照
電極)として、電解液に1モル%の水酸化ナトリウム水
溶液を使用し、平均的には−0.25Vから+1.6V
の電位まで1mV/秒で陽電極として作用させ、酸素発
生反応の過電圧を測定して従来例2を基準としその差で
表した。また電極の固有抵抗の最小値、キュリー温度、
温度係数の測定は図2の電極の固有抵抗の温度依存性曲
線から求めた。図2は本発明の一実施例における代表的
な電極の固有抵抗の温度依存性曲線図である。ここでは
代表例として(表1)のサンプル番号28の半導体セラ
ミックを選んでいる。図2においてキュリー温度(T
c)は固有抵抗の最低値(Rmin.)1.5×10Ω
cmの2倍の固有抵抗3×10Ωcmを示す温度でここ
では68℃である。温度係数は直線部分の最小温度(T
1 )70℃、最大温度(T2 )100℃とそれぞれに対
応する固有抵抗値(R1 )5×10Ωcm、(R2 )1
×1010Ωcmを用いて次式から算出した。
【0032】αT=2.3×{log(R2/R1/T2
1)}×100 図2で半導体セラミックからなる電極基板部10のセル
フスイッチ機能について説明する。既に述べたとおり、
セルフスイッチ機能とは所定の温度の上下で導通を開閉
するものである。すなわちキュリー温度(Tc)68℃
より低い温度では固有抵抗値が10Ωcm程度で十分小
さく導電性の良い電極として動作しているが、電解槽の
異常発生によって電解液の温度が上昇しキュリー温度
(Tc)を越えてさらに上昇すると固有抵抗は急峻な曲
線に沿って高くなり導通を示さなくなる。この間の固有
抵抗値は50℃前後の10Ωcmから100℃近傍で1
10Ωcmにも達するのである。このためこの状態では
電気分解が中断し、再び電解液の温度が下がりキュリー
温度(Tc)68℃に近ずくと固有抵抗値が小さくなっ
て導通し始め電気分解を再開する。このように半導体セ
ラミックを用いるとセルフスイッチ機能を有した電極が
実現できる。水の電気分解でのセルフスイッチ機能とし
て適当な諸元をあげると、半導体セラミックの固有抵抗
の最小値(Rmin.)は3×102 Ωcm以下、望ま
しくは10Ωcm、キュリー温度(Tc)は90℃以
下、望ましくは70℃以下、温度係数(αT)は12%
/deg以下、望ましくは10%/deg以下である。
この半導体セラミックで電極基板部10を形成した電極
の電極消耗速度(V)は、0.02mg/A・Hr以
下、酸素過電圧(η)は−150mV以下望ましくは−
120mV以下が適当である。(表4)に示したように
従来例1としてあげたフェライト電極は、電極消耗速度
(V)が0.122と大きくまた酸素過電圧(η)も2
00と高い。さらに従来例2の白金チタン電極は電極消
耗速度(V)が0.04を示している。これらと比較す
ると本実施例による半導体セラミックからなる電極基板
部10は、寿命が長く消費電力が少ない電極であること
が分かる。そしてBaSrTiO3 系酸化物の組成のB
(1- x)SrxTiy3 −αM1−βM2の諸元x、
y、α、βは次のような値であることが望ましい。0.
1≦x≦0.5、0.9≦y≦1.1、0<α≦0.0
6、0<β≦0.03である。すなわちxが0.1未満
あるいは0.5を越えるとキュリー温度(Tc)が30
℃〜70℃の範囲で設定できないし、yが0.9未満ま
たは1.1を越えると固有抵抗が3×102 Ωcm以上
となり抵抗が大きすぎ電極基板部10としては適当でな
いからである。さらにαが0では半導体化しないし0.
06以上では半導体セラミックの焼成時に変形が生じて
実用的でなくなる。さらにβが0及び0.03以上では
抵抗変化の急峻性が無くなりセルフスイッチ機能が緩慢
になるからである。
【0033】ところでセルフスイッチ機能が実際の水改
質装置で作用するか否か確かめるため、(表3)のサン
プル番号11の半導体セラミックからなる電極基板部1
0を選んでNiで接合層11を形成し、貴金属電極部1
2として白金を積層した電極を作成し、図3に示したよ
うなアルカリイオン水生成器を構成して断水時を想定し
た実験を行った。ここでは貴金属電極部12が互いに対
向するように一対の電極を配置した。このように配置す
れば電源印加部13に印加された電源は、半導体セラミ
ックからなる電極基板部10に導通して貴金属電極部1
2から電解液に通電されることになる。これによって半
導体セラミックの正特性サーミスタ特性を有効に利用で
きセルフスイッチ機能を付加することができる。通常ア
ルカリイオン水生成器は電解液である水道水を流水させ
ながら電気分解操作を続けるのであるが、水道水の供給
を止め電解槽に貯水したままで電気分解操作を続けた。
水道水のような導電率の低い電解液の電気分解では2.
3A程度通常は2ないし3Aの大きな電流が流れるた
め、ジュール熱によって30分後には液温が75℃に上
昇した。このとき半導体セラミックも温度上昇して、キ
ュリー温度70℃を超える温度で急激に印加電流が減少
し実質的に0Aとなって電気分解が事実上中断された。
つぎに水道水の供給を再開すると液温の低下に伴ってキ
ュリー温度に近くなって再び2.3Aの印加電流が流れ
電気分解操作が再開できた。
【0034】このようにして半導体セラミックで電極基
板部10を構成し、その表面に接合層11を介して貴金
属電極部12を積層し、貴金属電極部12と独立して電
源印加部13を設けたため、アルカリイオン水生成器の
異常温度上昇を防止することができるセルフスイッチ機
能を有する電極を得ることができるものである。
【0035】
【発明の効果】以上の実施例から明らかなように本発明
によれば、正特性サーミスタ特性を有する半導体セラミ
ックを電極基板部とし接合層を設けているから、導電性
が良く、化学的に安定で、機械的強度が高く、また空孔
率を自由に選ぶことができるセルフスイッチ機能を有す
る電極を得ることができる。また貴金属電極部を備えて
いるから、導電性が良くなり、耐触性が向上する。さら
に電源印加部を貴金属電極部と離隔した位置に設けてい
るから、電流密度を均一化でき半導体セラミックの特性
を十分引き出すことができる。
【0036】また、半導体セラミックの組成がBa
(1- x)SrxTiy3−αM1−βM2(ただし0.1
≦x≦0.5、0.9≦y≦1.1、0<α≦0.0
6、0<β≦0.03、M1:Nb、Nd、Sm、P
r、Ce、La、Y、Dyの一種以上、M2:Mn、C
r、Bの1種以上の酸化物)であるから、電解液の温度
上昇を抑え温度調整部や流量センサを必要としない安全
でコストの安い水改質装置が得られる。
【0037】さらに、接合層がNi、Al、Zn、およ
びCrの一種以上の成分から形成されているから、半導
体セラミックに貴金属電極部の積層を容易にでき低抵抗
の電極を得ることができる。
【0038】さらに、貴金属層電極部が白金族元素の一
種以上の成分から形成されているから、食品衛生上安全
で寿命の長い電極を得ることができる。
【0039】さらに、貴金属電極部が互いに対向するよ
うに一対の電極を設けているから、液槽温度の上限を任
意に設定でき、過熱を防いで安全にイオン水を生成する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の一実施例における電極の拡大斜
視図 (b)本発明の一実施例における電極の側面図
【図2】本発明の一実施例における代表的な電極の固有
抵抗の温度依存性曲線図
【図3】従来の水改質装置の構造を示す概略図断面図
【図4】従来のイオン水生成器の制御装置の構成図
【符号の説明】
1 原水 2 液槽 3 陽極 4 陰極 10 電極基板部 11 接合層 12 貴金属電極部 13 電源印加部 14 電極端子 15 入力線 21 浄水器 22 熱湯センサ 23 側定槽 24 温度センサ 25 電解槽

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】正特性サーミスタ特性を有する半導体セラ
    ミックからなる電極基板部と、前記電極基板部の表面に
    接合層を介して積層した貴金属電極部と、前記電極基板
    部の表面上で前記貴金属電極部とは離隔した位置に電源
    印加部を設けたことを特徴とする電極。
  2. 【請求項2】前記半導体セラミックの組成がBa(1- x)
    SrxTiy3 −αM1−βM2(ただし0.1≦x≦
    0.5、0.9≦y≦1.1、0<α≦0.06、0<
    β≦0.03、M1:Nb、Nd、Sm、Pr、Ce、
    La、Y、Dyの1種以上、M2:Mn、Cr、Bの1
    種以上の酸化物)であることを特徴とする請求項1記載
    の電極。
  3. 【請求項3】前記接合層がNi、Al、Zn、およびC
    rの一種以上の成分からから形成されていることを特徴
    とする請求項1記載の電極。
  4. 【請求項4】前記貴金属電極部が白金族元素の一種以上
    の成分から形成されていることを特徴とする請求項1記
    載の電極。
  5. 【請求項5】前記貴金属電極部が対向するように前記電
    極を一対にして設けたことを特徴とするイオン水生成
    器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2002126737A (ja) * 2000-10-18 2002-05-08 Showa:Kk 電解槽用電極板への電極端子の接合構造
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