【発明の詳細な説明】
蛭ヒルド・メディシナリスの組換えXA因子
インヒビターの作製発明の背景
止血は、哺乳類血管系を含む閉じた高圧の循環系を通しての適切な血流を確保
することを目的とした、複雑な一連のプロセスの相互作用である。止血の一つの
側面は、損傷後の血管の一体性維持に関与する凝血カスケードである。この凝血
カスケードは、血管損傷部位でのフィブリン塊の形成に至る複雑な一連のプロセ
スである。凝血塊の異常形成は、血栓および塞栓のような病理学的症状の原因で
ある。
凝血カスケードは、内因性経路(全てのタンパク成分が血液中に存在している
)または外因性経路(組織因子、細胞膜タンパクが重要な役割を果たす)の何れ
かを介して開始され得る。凝血塊の形成に至る凝血カスケードの最後の二つのス
テップは、両方の経路に共通している。これら二つのステップのうちの最初のス
テップは、血小板膜表面上のプロトロンビン(トロンビンの酵素前駆体)、Xa
因子(FXa)およびVa因子で構成される「プロトロンビナーゼ複合体」の形
成である。FXaは、プロトロンビンのトロンビンへの変換を触媒する酵素であ
る。続いて、トロンビンはフィブリノーゲンのフィブリン(凝血塊の主成分であ
る不溶性ポリマー)への変換を触媒する。
例えば深静脈血栓症(DVT;venous thrombosis)のよ
うな血栓症、播種性血管内凝固(DIC)、並びに心臓血管系および脳血管系疾
患のような広範の臨床症状において、抗凝血剤を用いた治療が指示されている。
他の適用症には、術後トラウマに伴う病態生理学的症状、肥満、妊娠、経口避妊
薬の副作用、特に老齢者における持続性運動抑制[prolonged immobilization]
、並びに血液凝固を含む他の公知の臨床症状が含まれる。
種々の参照文献が、括弧内のアラビア数字によって参照される。これらの参照
文献は請求の範囲の前の明細書末尾に数字の順序で列記されており、その内容は
、本件出願に関連する技術の状態を更に説明するための参考として、本願明細書
に組み込まれる。
抗凝血剤の使用は、DVTおよびDICにおいて生じるような静脈血栓症(14
)、および血栓溶解後の再閉塞の際に生じるような動脈血栓症(15)の治療に有
益であり得る。急性冠動脈血栓症における抗凝血剤の使用は、血小板に富む動脈
性血栓においても、凝血カスケードが血栓発生の主要な原因であるという確立さ
れた事実(16)に基づいている。
過剰な凝血塊形成の病的症状において、凝血は、ヘパリン(その作用は血漿性
インヒビターの抗トロンビンIII、すなわちヒルジンに媒介される)によりトロ
ンビンの触媒活性をブロックすること、或いは凝血カスケードの初期ステップを
阻害することによって阻害され得る。例えば、ヘパリノイド類(ヘパリンの低分
子量誘導体)は、トロンビンに先立つ工程の選択的インヒビターであること、即
ち、これらはFXaへ
の抗トロンビンIIIの結合を優先的に高めて、FXaに触媒されたプロトロンビ
ンのトロンビンへの変換を阻害することが知られている。X因子の血中濃度はプ
ロトロンビンの血中濃度よりも略10倍低いので、凝血を阻害するために必要と
されるFXaインヒビターの量は、トロンビンインヒビターよりも著しく少量で
ある。しかしながら、FXaは通常はプロトロンビナーゼ複合体中に存在し、そ
の活性は該複合体中で阻害されなければならないであろう。これら抗トロンビン
のヘパリン誘導体との複合体による阻害は、血漿中の遊離のFXaに対してのみ
有効であり、FXaがプロトロンビナーゼ複合体中に組み込まれているとき(こ
れは血栓形成の際のFXaの存在部位である)には有効でないように思える。こ
れは、プロトロンビナーゼ複合体中のFXaがヘパリン/抗トロンビンIII複合
体による阻害に影響され得ないとの開示(6)と類似している。
現在のところ、ヘパリンは最も広範に使用されている抗凝血剤および抗血栓性
薬剤であるが、これには二つの欠点がある、第一は、これがトロンビン阻害のレ
ベルで作用するので、比較的大量のインヒビターの投与を必要とすることである
。また、第二には、正常な止血に必要なトロンビンの全身的な阻害による過剰出
血を生じ易いことである(7)。ヒルジンおよびその低分子量類縁体(ヒルロー
グ)の使用には、おそらく同様の欠点が伴う。
これらの欠点によって、治療的使用に適した新たな抗凝血剤および抗血栓性物
質についての研究が促進された。FXa
の選択的インヒビターの抗凝血剤としての使用は、ヘパリン、ヒルジンおよびそ
の類縁体のような、現在使用されている抗血栓性薬剤により生じる出血の問題を
軽減するかもしれない。この予想される利点は、FXaインヒビターは既に存在
するトロンビンには影響せず、従って正常な止血を完全には中和しないため、凝
血の調節因子として作用するとの事実に起因するものである。これは、現存する
トロンビンはフィブリン塊中に活性形でトラップされ、血栓溶解の際に放出され
るからである(17)。
メキシコ蛭のヘメンテリア・オフィシナリス[Haementeria officinalis](
アンチスタシン[antistasin]−参照文献1および2)およびジャイアントアマ
ゾン蛭[giant Amazonian leech]のヘメンテリア・ジリアーニ[Haementeria g
hiliani](3,4)から、二つの密接に関連したXaインヒビターが単離され
た。
ダニのオルニトドラス・ムバタ[Ornithodorous moubata]から単離された、
ダニ抗凝血剤ペプチドと称する第三のFXaインヒビター(5,9)がクローン
化され、発現され、精製され、特性が調べられた(10)。黒蠅のシムリウム・ビ
ッタツム[Simulium vittatum]から単離された、第四の強力なFXaインヒビ
ターもまた特徴が調べられている(11)。
イン・ビトロでの研究およびイン・ビボでの研究の両者によって、これら二つ
のインヒビター(アンチスタシンおよびTAP)を用いたFXa媒介性の凝血阻
害は、静脈血栓症の予防においてヘパリンと同様に有効であることが示されてい
る(12)。
リグビ[Rigbi]等(13)は、ヨーロッパ蛭のヒルド・メディシナリス[Hirud
o medicinalis]の唾液から単離されたXa因子インヒビターを開示している。
しかしながら、リグビ等はこのFXaインヒビターのアミノ酸およびDNA配列
は開示していない。さらに、リグビ等は、生物学的に活性なポリペプチドを得る
ために、バクテリア中で、ヨーロッパ蛭ヒルド・メディシナリスの唾液から単離
されたFXaインヒビターをクローニングし、発現させることは教示も示唆もし
ていない。
この出願は、ヒルド・メディシナリス由来のFXaインヒビター(ここでは“
FXaI”)をコードするDNA配列および対応するアミノ酸配列を開示する。
この発明はまた、バクテリア中で組換えFXaIをクローニングし、かつ発現さ
せ、生物学的に活性な組換えポリペプチドを得ることを開示する。発明の概要
この発明は、tyr26−gly110が図10に示される配列と同一であるアミノ
酸配列X−tyr26−gly110を有する組換えポリペプチドであって、Xがメ
チオニンであるか、もしくは存在せず、およびasn72がproによって置換さ
れていてもよい組換えポリペプチドを提供する。
この発明は、さらに、前記ポリペプチドをコードする発現プラスミドで細胞を
形質転換し、この形質転換された細胞を、
細胞がプラスミドによってコードされるポリペプチドを産生するように培養する
ことを包含する前記組換えポリペプチドの作製方法、およびそのように作製され
たポリペプチドの回収方法を提供する。
さらなる側面において、この発明は、前記ポリペプチドに対する抗体を提供す
る図面の簡単な説明 図1
:FXaIの精製および同定
この図は、DLSからアミノ酸配列決定のためのFXaインヒビター(ここで
は“FXaI”)の精製に用いられる2つの異なるプロトコル、並びに得られた
調製品の同一性および均一性を確認するために行われる種々の実験を要約する。
ランIIにおいては、Q−セファロースの代わりにモノ−Q[Mono-Q]を用いた。図2
:FXaIイソフォームの説明
この図面は、モノ−SカラムでのDLSのクロマトグラフィーによるFXaI
のイソフォームの精製を示す。DLS(100ml)を等量のカラム等張バッファ
ー(20mMトリス−HCl pH7.0)で希釈し、室温において1ml/分の流速
で5x50mmモノ−Sカラムにかけた。このカラムを、同じバッファーで形成し
たNaClの0-1M直線勾配(60ml)で溶出させ、さらに同じバッファーの1M
NaCl溶液10mlで洗浄した。溶出液の吸光度を280nmでモニターし、1m
lの画分を集め、(例2に記述した通りに)
FXa阻害活性について検定した。このクロマトグラムは集められた画分におけ
るFXaI(pmol/ml)の濃度を示し、明らかに2つのイソフォームの存
在を示している。図3
:活性アッセイにおけるFXaIの用量応答効果
この図は、例2に記述される色素原アッセイにおける、部分的に精製されたF
XaIによるFXa阻害の用量応答を示す。量が増加した、モノ−Qで精製され
たFXaIを、2pmolのウシFXaと共に1mlキュベット中で3分間プレ
インキュベートした。基質CHGの加水分解の初期速度を405nmでモニターし
た(例2を参照)。画分47は、特定の精製実験のピーク画分であった。図4
:APTTアッセイにおけるFXaIの用量応答効果
新鮮なネズミもしくはヒト血漿のAPTT(活性化された部分的なトロンボプ
ラスチン時間[activated partial thromboplastin time])を、様々な量のF
XaIの存在もしくは不在下におけるその凝血の視覚的な評価によりモニターし
た。簡単に述べると、(50μlまでの)FXaI、血漿100μlおよび部分的な
トロンボプラスチン(アクチン−FS)を37℃で3分間インキュベートした。10
0μlの20mMCaCl2を添加することにより凝血カスケードを活性化した。横
軸のFXaI濃度は、1mu=1pmolであるという仮定に基づいている。ネ
ズミ血清−●;ヒト血清=◆。矢印は、APTTが2倍となるFXaI濃度を示
す。図5
:マウスにおけるFXaIの薬物動力学
メスのマウスの血液に由来するFXaIのクリアランスを、
示された時点で半ビボ[ex vivo]APTTを評価する(図4を参照)ことによ
り、30分間にわたってモニターした。FXaIの量はμgFXaIで表わされ[
Macart and Gerbaut,Clin.Chem.ACta 122:93-101(1982)]、添付の図面に
示されるようにイン・ビトロAPTT時間対インヒビター濃度からなる検量線よ
り決定される。図6
:FXaI単一離体およびアンチスタシンのアミノ酸配列の比較
この図は、cDNAであるクローンPCR4によって表わされる天然のFXa
Iとアンチスタシンとのアミノ酸配列を比較する。これらの配列は、“Simplifi
cation of Progressive Alignment Method”、Feng & Doolittle,J.Mol.Evol
.35:351-360(1987)に基づく整列プログラム、パイルアップ[Pileup]により
並べた。
PCR4は、DLS中に存在するFXaインヒビターをコードするPCR誘導
DNA配列の配列であり、天然のFXaインヒビターの配列に相当する。(4位
のメチオニンは明らかにPCR反応の誤りであり、これが、どうして天然の蛋白
質について得られたN−末端アミノ酸配列の4位のイソロイシンと異なるのかを
説明している)。PCR4は、例3に記述されるように、PCR−誘導クローン
と蛭の唾液から単離された天然FXaインヒビターの最初の9個のアミノ酸をコ
ードするヌクレオチド配列とをハイブリダイズさせることにより得た。11はcD
NAライブラリーに由来するクローン11の配列を表わし、リーダーおよびシグナ
ルペプチドを誘発する
(例4を参照)。ASはアンチスタシンの配列を表わす。“<E”はピログルタ
メート[pyroglutamate]を表わす。番号付けはPCR4の配列に従う。最良の
並び方を得るために、ギャップが導入された。並べられたシステイン残基は強調
されている。図7
:PCRによるFXaI cDNAのクローニング
例3に記述されるように、ポリA+mRNAを、120匹の蛭から抽出された全R
NAより単離した。このようにして得られたポリA+mRNAのアリコート(5μ
g)を、合成プライマーA
および4種のdNTPの存在下における逆転写酵素反応において、テンプレート
として用いた。一本鎖相補DNA(ss−cDNA)の合成に続いて、0.3M N
aOHを含むオーバーナイト・アルカリ処理により室温でmRNAを分解した。
中和したss−cDNAに、Taqポリメラーゼ、4種のdNTPおよび、逆転
写プライマーとして、合成し、分解したDNAオリゴマーB
を用いるPCR増幅を施した。
PCR増幅産物をEcoRIおよびHindIIIで消化した。その後、ゲル精
製断片をプラスミドpSP65のEcoR
I−HindIII大断片にサブクローニングした。その結合体混合物[ligation
mixture]を大腸菌[E.coli]MC1061の形質転換に用いた。得られた形質転換
体を、天然FXaIのN−末端アミノ酸14ないし19に相当する放射標識合成プロ
ーブC(例3に記載)を用いる、本来の位置でのハイブリダイゼーションにより
スクリーニングした。図8
:クローンpSP65−XaI−4のDNA配列および推定アミノ酸配列
放射標識プローブCを用いる本来の位置でのハイブリダイゼーションによって
同定された陽性クローンから、プラスミドDNAを調製した。クローンpSP65
−XaI−4の精製プラスミドDNAの配列を、ザンガー・ジデオキシ法[Sang
er dideoxy method]により決定した。得られた配列を、LKB 2020 DNAS
ISソフトウェアシステムを用いて処理した。図9
:cDNAライブラリーからのFXaI cDNAのクローニング
例4に記述されるように、120匹の蛭から抽出した全RNAより得られたポリ
A+mRNAを、ストラタジーンZAPTM cDNA合成キット[Stratagene ZAPTM
cDNA synthesis kit]を用いる二本鎖相補DNA(ds−cDNA)の合成
に用いた。そのようにして得られたds−cDNAを、XhoIおよびEcoR
Iを用いて消化し、ピーブルースクリプトSK[pBluescript]と呼ばれる、X
hoI−EcoRI消化ユニZAP[Uni-ZAP]ベクターにサブクローニングし
た。得られたcDNAライブラリーを、高ストリンジェンシーおよび低ストリン
ジェンシーのハイブリダイゼーション条件下において、プローブとしてプラスミ
ドpSP65−XaI−4の放射標識DNAを用いて、FXaI cDNAクロー
ンについてスクリーニングした。高ストリンジェンンーには、フィルターを、6
xSSC(1xSSC:0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム)、0.1%
SDS、5xデンハルト[Denhardt](0.1%フィコール400[Ficoll 400]、0.
1%ポリビニルピロリドン、0.1%BSA、0.5%SDS)および100μg/mlサ
ケ精子DNA中において60℃で8時間プレハイブリダイズし、次いで、60℃で48
時間放射性プローブとハイブリダイズさせることが含まれる。一つの陽性クロー
ンのプラスミドをpSK−XaI−11と命名した。図10
:cDNAクローンpSP65−XaI−11のDNA配列および推定アミノ酸 配列
プラスミドpSP65−XaI−4に由来する放射標識DNA断片を用いるハイ
ブリダイゼーションによって同定された陽性cDNAクローンから、プラスミド
DNAを調製した。プラスミドpSP65−XaI−11の精製DNAの配列を、ザ
ンガー・ジデオキシ法によって決定した。得られた配列をLKB 2020 DNAS
ISソフトウェアシステムを用いて処理した。図11
:FXaIをコードするcDNAのサブクローニング
この図は、プラスミドpSP65由来のベクターへのFXaIをコードするcD
NAのサブクローニングを示す。プラス
ミドpSK−XaI−11をXhoIおよびEcoRIで消化した。FXaIコー
ディング領域を含むXhoI−EcoRI断片を単離し、SalI−EcoRI
消化プラスミドpSP65にサブクローニングした。得られたプラスミドをpSP
65−XaI−11と命名した。図12
:ヒトCu/Zn−SODの断片に融合しているFXaIの発現のためのプ ラスミドpDeo−S−XaI−11“f”の構築
この図は、クローン11によって産生され、修飾Cu/Zn−SOD配列のN末
端断片に融合している組換えFXaIの発現のための、deoP1P2の制御の下
でのプラスミドの構築を示す。
クローン11のcDNAを有するプラスミドDNApSP65−Xal−11をRs
aIで消化した。FXaIをコードするRsaI−RsaI DNA断片を単離
し、2組の合成リンカー:
の存在下において、プラスミドpBAST−RのAatII−PpuMI大断片に
結合させた。得られたプラスミドは消化されたpDeo−S−XaI−11“f”
であり、大腸菌に入
れてATCC受託番号69136として寄託された。図13
:プラスミドpFSHI−6
この図は、ATCC受託番号69583としてATCCに寄託され、
をコードする発現プラスミドである、プラスミドpFSHI−6の構造を示す。図14
:プラスミドpFSOH−11
この図は、ATCC受託番号69582としてATCCに寄託され、
をコードする発現プラスミドである、プラスミドpFSOH−11の構造を示す。図15
:プラスミドpMLK−XaI−D−11“m”
この図は、ATCC受託番号69591としてATCCに寄託され、FXaIダイ
マーをコードする発現プラスミドである、プラスミドpMLK−XaI−D−11
“m”の構造を示す。発明の詳細な説明 略語
以下の略語をアミノ酸の呼称として用いる。
A Ala アラニン
C Cys システイン
D Asp アスパラギン酸
E Glu グルタミン酸
F Phe フェニルアラニン
G Gly グリシン
H His ヒスチジン
I Ile イソロイシン
K Lys リシン
L Leu ロイシン
M Met メチオニン
N Asn アスパラギン
P Pro プロリン
Q Gln グルタミン
R Arg アルギニン
S Ser セリン
T Thr トレオニン
V Val バリン
W Trp トリプトファン
Y Tyr チロシン
この発明は、アミノ酸配列X−try26−gly110を有する組換えポリペプ
チド(蛋白質)であって、try26−gly110が図10に示される配列と同一で
あり、Xはメチオニンであるか、あるいは存在せず、かつasn72がproによ
って置換されていてもよい組換えポリペプチドを提供する。
この組換えポリペプチドは、Xa因子に対する阻害活性を
示す。
この主題発明の組換えポリペプチドは、上述のポリペプチドの類縁体であるポ
リペプチドを包含することが期待される。
ここで用いられる場合には、ポリペプチドの類縁体は、そのポリペプチドと実
質的に同じアミノ酸配列、および生物学的活性を有する。
したがって、類縁体は、得られるポリペプチドがこの発明のポリペプチドの生
物学的活性を保持するという条件の下で、1以上の非必須アミノ酸残基の付加、
除去、または置換によってこの発明のポリペプチドと相違することがある。当該
分野における熟練者は、例えば、この主題のポリペプチドのポリペプチド類縁体
のバクテリア発現をコードするDNA配列を設計し、かつ作製する通常の方法、
部位特異的突然変異技術によるcDNAおよびゲノム配列の修飾、組換え蛋白質
および発現ベクターの構築、ポリペプチドのバクテリア発現、および通常の生化
学アッセイを用いるポリペプチドの生化学的活性の決定を含む、確立された周知
の手順を用いて、どのアミノ酸残基を付加し、除去し、もしくは置換することが
できるかを(どのアミノ酸でそのような置換ができるのかを含めて)容易に決定
することが可能である。
この主題発明の組換えポリペプチドの類縁体の例は、主題のポリペプチドで特
定される全ての残基よりも残基が少ない欠失類縁体、特定される残基の1以上が
他の残基によって置き換えられている置換類縁体、およびこの発明のポリペプチ
ドに1以上のアミノ酸残基が加えられている付加類縁体であ
る。これらの類縁体の全ては、この発明によって提供される組換えポリペプチド
の生物学的活性を共有している。
ここでは、実質的に同じアミノ酸配列を、この発明のポリペプチドのアミノ酸
配列のN末端での4個未満のアミノ酸の追加または欠失を含むものと定義する。
さらに、配列中に、この発明の蛋白質の生物学的活性を排除しない置換および/
または欠失があってもよい。このような置換は、当業者には周知である。置換は
、例えば、Lehninger,Biochemistry,2nd ed.Worth Pub.,N.Y.(1975);Cr
eighton,Protein Structure,a Practical Approach,IRL Press at Oxford Un
iv.Press,Oxford,England(1989);およびDayhoff,Atlas of Protein Sequ
ence and Structure 1972,National Biomedical Research Foundation,Maryla
nd(1972)に記述されている類縁体または同等群に従って、10残基まで含むこと
ができる。
さらなる面において、この主題発明は、生物学的に活性な組換えFXaIを提
供する。
ここで用いられる場合には、生物学的に活性なFXaIは、例2に記述される
生化学的活性アッセイによって測定されるようなFXaの酵素活性に対する阻害
活性を有するFXaIであると定義される。阻害活性は、上記生化学的活性アッ
セイによって測定されるXa因子の酵素活性を低下させる活性であると定義され
る。
ここで用いられる場合には、酵素活性は、上記生化学的活性アッセイによって
測定されるFXaの蛋白質分解活性を指
す。
この出願は、ヒルド・メディシナリス由来のFXaインヒビター(ここでは“
FXaI”)の精製、部分的な配列決定、および特徴付けを開示する。他の面に
おいて、この出願は、ヒルド・メディシナリス由来のFXaIの推定アミノ酸配
列の他に完全な遺伝子配列を開示する。
好ましい態様において、この発明は、1992年12月1日にATCC受託番号69138
寄託された、pSP65−XaI−11と命名されたFXaIをコードするcDNA
を含むプラスミドを包含する。プラスミドpSP65−XaI−11は、適切な調節
要素を欠いているために、いかなる蛋白質も発現しない;しかしながら、組換え
FXaIの発現を獲得するために、プラスミドpSP65−XaI−11のDNAを
どのように操作すればよいかは、当業者には周知である。
より好ましい態様において、この発明は、組換えFXaIの発現のための発現
プラスミドを提供する。このような発現プラスミドの構築は、以下の段落および
実施例に記載されている。
ポリペプチド類をコードする核酸の発現に用いることができるベクターの例は
、バクテリアのウイルスのようなウイルス類、例えば(ラムダファージのような
)バクテリオファージ、コスミド、プラスミド、および他のベクターである。関
連ポリペプチド類をコードする遺伝子は、当該分野において公知の方法によって
適当なベクターに挿入される。例えば、通常の制限エンドヌクレアーゼ酵素部位
を用いてインサート
およびベクターDNAの両者を開裂させ、互いに対をなす相補的末端を作製し、
その後、DNAリガーゼで一体に結合させることができる。あるいは、ベクター
DNAの制限部位に相補的な塩基配列を有する合成リンカーをインサートDNA
に結合させ、次いで、その部位を切断する制限酵素で消化することもできる。他
の手段もまた、利用可能である。
この発明のポリペプチドをコードする配列を有するベクターは、原核および真
核ホスト細胞、例えば、バクテリア、真菌、酵母、昆虫、植物、または、CHO
、ニワトリ胚、線維芽細胞、腎臓および他の細胞系のような哺乳動物細胞、の範
囲における発現に適合している。これらのベクターは、さらに、ホスト細胞にお
けるクローン化遺伝子の発現に必要な調節要素を、ポリペプチドをコードする核
酸に対してポリペプチドの発現を遂行する位置に含む。発現に必要な調節要素に
は、プロモーターおよびオペレーター、並びにリボソーム結合部位が含まれる。
例えば、バクテリア発現ベクターは、λPLOLまたはdeoプロモーターのよう
なプロモーター−オペレーター配列を有することがある。翻訳を開始するために
、λCTTまたはdeoリボソーム結合部位が用いられることがある。このような
ベクターは、市販品を購入し、あるいは記述された配列から当該分野において周
知の方法、例えばλPLプロモーターに関する方法を開示する、1989年5月16日に
発行された米国特許4,831,120号および1992年9月1日に発行された米国特許5,143
,836号、並びにdeoプロモーターに関する方法を開示する、1989年2月22日に
公開された
欧州特許出願公開303,972号、で組み立てることで得ることができる。リプレッ
サーおよびエンハンサーのようなさらなる適切な要素が存在してもよい。当該分
野における熟練者には、種々の発現システムに適切な調節要素をいかにして用い
るかは周知である。
この発明の発現プラスミドは、プラスミド内で、適切なホスト細胞において当
該ポリペプチドを発現させるように当該ポリペプチドをコードするDNAに対し
て位置する適切な調節要素、例えば、プロモーターおよびオペレーター(例えば
、deoP1P2およびλPL)、リボソーム結合部位(例えばdeoおよびCTT
)、リプレッサーおよびエンハンサーを含む。
調節要素は、プラスミド内で、当該蛋白質をコードするDNAに対して、適切
なホスト細胞中における当該蛋白質の発現が達成されるように配置される。この
発明の好ましい態様においては、調節要素は当該蛋白質をコードするDNAの近
傍かつ上流に位置する。他の適切な調節要素は、当該分野の熟練者には周知であ
る。
一つの態様においては、発現プラスミドは、1992年12月1日にATCC受託番
号69136として寄託されたプラスミドpDeo−S−XaI−11“f”である。
他の態様においては、発現プラスミドは、1994年3月11日にATCC受託番号695
83として寄託されたプラスミドpFSHI−6である。さらに別の態様において
は、発現プラスミドは、1994年3月11日にATCC受託番号69582として寄託され
たプラスミド
pFSOH−11である。さらにまた別の態様においては、発現プラスミドは、19
94年3月22日にATCC受託番号69591として寄託されたプラスミドpMLK−X
aI−D−11“m”である。
当該分野における熟練者は、この出願に関連して寄託されているプラスミドを
、公知の技術(例えば、部位特異的突然変異もしくはリンカーの挿入)によって
、関連ペプチドの発現をコードするように容易に変更できることを理解するであ
ろう。そのような技術は、例えば、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.およびManiat
is,T.(1989)Molecular Clonning:A Laboratory Manual,2nd edition,Col
d Spring Harbor Laboratory Pressに記述されている。
この発明の発現プラスミドは、適切なホスト細胞、好ましくはバクテリアホス
ト細胞に導入することができる。しかしながら、当該分野における熟練者は、こ
の発明の発現プラスミドを上記範囲の原核および真核ホスト細胞に導入するため
に適切に修飾できることを理解するであろう。
好ましいバクテリアホスト細胞は大腸菌[Escherichia coli]細胞である。適
切な大腸菌の例は、deoプロモーターの制御の下にあるプラスミドのための73
3株およびλPLプロモーターの制御の下にあるプラスミドのための4300もしくは
4300(F)株であるが、他の適切な大腸菌株および他のバクテリアもプラスミド
のホストとして用いることができる。真核細胞の例は昆虫細胞である。好ましい
昆虫細胞は、バキュロウイルス発現系を有するSf−9細胞である。ホストとし
て用いられるバクテリアは、(A1645のような)栄養要求株、(A4255のような
)原栄養株、および溶菌株;F+およびF-株;A1645およびA4255のようなλプ
ロファージのcI857リプレッサー配列を有する株;並びにdeoリプレッサー
および/またはdeo遺伝子を欠く株(1989年2月22日に公開された欧州特許出
願公開0303972を参照)を含むいかなる株であってもよい。大腸菌A4255株はA
TCC受託番号53468として寄託され、大腸菌Sφ930株はATCC受託番号6770
6として寄託されている。好ましい態様においては、λPLの制御の下にある発現
プラスミドのホストとして大腸菌4300が用いられ、deoプロモーターの制御の
下にある発現プラスミドのホストとして大腸菌733が用いられる。
この発明は、これらの発現プラスミドを有するバクテリア細胞を提供する。一
つの態様においては、バクテリア細胞は大腸菌細胞である。好ましい態様におい
て、この発明は、ATCC受託番号69136としてATCCに寄託されているプラ
スミドpDeo−S−XaI−11“f”を有する大腸菌733株を提供する。別の
好ましい態様において、この発明は、ATCC受託番号69582としてATCCに
寄託されているプラスミドpFSOH−11を有する大腸菌4300株を提供する。さ
らに別の好ましい態様において、この発明は、ATCC受託番号69583としてA
TCCに寄託されているプラスミドpFSHI−6を有する大腸菌4300株を提供
する。
上述の大腸菌ホスト株の全ては、当該分野において公知の方法、例えば、R.P
.NovickによってBacteriol.Reviews,
33:210n(1969)に記載されたエチジウムブロマイド法によって、それらが有す
るプラスミドを“除去[cure]”することができる。
別の面において、この出願は、天然FXaIの新規かつ従来知られていないイ
ソフォーム(ここではイソフォームBと称する)の存在を開示する。FXaIの
イソフォームBは、SDS−PAGEおよびカラムクロマトグラフィーでいくら
か異なる挙動を示すように思われるが、イソフォームA(従来開示されているF
XaIのイソフォーム)と同じN末端アミノ酸配列を有している。
この出願の蛋白質は、“成熟”蛋白質、すなわち延長[extension]および融
合ペプチドのない蛋白質として、延長ペプチド(例えば、リーダーペプチド)を
含むプレペプチド、または他の蛋白質もしくはポリペプチドの全てもしくは一部
を含む融合ペプチドとして得ることができる。。
一つの態様において、FXaIおよび修飾されたCu/Zn−SOD配列の63
N末端アミノ酸を含む融合蛋白質が作製される。Cu/Zn−SODは、共に譲
渡された[coassigned]米国特許4,742,004号に記載され、かつSteinman,H.M.
,Superoxide Dismutase,(Oberley,ed.)CRC Press,Florida,page 11-68,
(1982)によって記述されている。
組換えFXaIの他の前駆体も、他の蛋白質と融合させることにより得ること
ができる(例えば、Nilsson et al.,Current Opinion in Structural Biology
2:569-575(1992)
およびHopp et al.,Biotechnology 6:1204-1210(1988))。
成熟蛋白質は、直接発現によって、または融合蛋白質もしくはペプチドの開裂
によって得ることができる。成熟組換えFXaIを得るさらなる方法は、当該分
野における熟練者には周知である。
加えて、この発明は、上記組換え蛋白質をコードする発現プラスミドを提供す
る。好ましい態様において、この発明は、1992年12月1日にATCC受託番号691
36として寄託された、pDeo−S−XaI−11“f”と称する発現プラスミド
を提供する。別の態様においては、発現プラスミドは、1994年3月11日にATC
C受託番号69583として寄託されたプラスミドpFSHI−6である。さらに別の
態様においては、発現プラスミドは、1994年3月1日にATCC受託番号69582と
して寄託されたプラスミドpFSOH−11である。さらに別の態様においては、
発現プラスミドは、1994年3月22日にATCC受託番号69591として寄託されたプ
ラスミドpMLK−XaI−D−11“m”である。
さらに好ましい態様において、この発明は、ホスト細胞およびFXaIをコー
ドするDNAを有する発現プラスミドを含むホスト−プラスミド系を提供する。
好ましい態様においては、ホスト細胞は大腸菌細胞であり、プラスミドはpD
eo−S−XaI−11“f”である。より好ましい態様においては、ホスト細胞
は大腸菌733である。
他の好ましい態様においては、ホスト細胞は大腸菌細胞で
あり、プラスミドはpFSHI−6、もしくはプラスミドpFSOH−11、もし
くはプラスミドpMLK−XaI−D−11“m”である。より好ましい態様にお
いては、ホスト細胞は大腸菌4300である。
当該分野における熟練者には、いかにして、異なるプラスミドおよび/または
遺伝子暗号の変質によって同じアミノ酸配列をコードする異なるヌクレオチド配
列から、ここに開示されるポリペプチドを作製するかは周知である。当該分野に
おける熟練者はまた、ポリペプチドの構造もしくは特定の生物学的活性に影響を
及ぼすことのない小さな変化をアミノ酸配列中に有する、実質的に同等の類縁体
を作製することもできる。そのような類縁体もまた、この発明に包含される。
他の面において、この出願は、バクテリア中でのヒルド・メディシナリス由来
のFXaIの作製、および天然のFXaIと同等かもしくは類似した、FXaの
酵素活性に対する阻害活性を有する活性蛋白質を得るためのそれらの再折り畳み
[refolding]を開示する。ここで用いられる場合には、FXaIは、蛭ヒルド
・メディシナリスの希釈した蛭の唾液(DLS)から単離された蛋白質およびこ
れに対応する、FXaを阻害する活性を有する組換え蛋白質を指す。
この発明は、当該ポリペプチドをコードする発現プラスミドでホスト細胞を形
質転換し、この形質転換されたホスト細胞を、この細胞がプラスミドによってコ
ードされたポリペプチドを産生するように培養することを包含する当該ポリペプ
チドの作製方法、およびそのように作製されたポリペプチド
の回収方法を提供する。
好ましい態様において、この発明は、ホスト細胞がバクテリア細胞である精製
された生物学的に活性な組換えFXaIポリペプチドの作製および回収方法であ
って、
(a)細胞を破壊してポリペプチドを含む溶解物を作製し、
(b)この溶解物を処理してポリペプチドを含む包含体を得、
(c)この包含体を処理して可溶性形態のポリペプチドを得、
(d)得られた可溶性ポリペプチドを処理して生物学的に活性なポリペプチド
を形成し、
(e)そのように形成された生物学的に活性なポリペプチドを回収し、および
(f)そのように回収された生物学的に活性なポリペプチドを精製する、
ことを包含する作製および回収方法を提供する。
好ましい態様においては、工程(c)の処理には変性剤の添加が含まれ、工程
(d)の処理にはポリペプチドをチオール含有化合物およびジスルフィドの混合
物と接触させることが含まれ、かつ工程(f)の精製にはカラムクロマトグラフ
ィーが含まれる。
より好ましい態様においては、変性剤はグアニジウムクロライドもしくは尿素
であり、チオール含有化合物はグルタチオン、チオレドキシン、β−メルカプト
エタノール、もしくはシステインであり、ジスルフィドは酸化グルタチオン、シ
ステイン、もしくはメルカプトエタノールの空気酸化生成物であり、カラムクロ
マトグラフィーにはQ−セファロースクロマトグラフィーおよびヘパリン−セフ
ァロースクロマトグラフィーのいずれか一方もしくは両者が含まれる。
一つの態様においては、工程(a)のポリペプチドはダイマーである。
別の態様においては、工程(c)に続いて、ポリペプチドを酵素的に開裂させ
て組換えFXaIを生成させる。
さらに別の態様においては、工程(d)に続いて、ポリペプチドを酵素的に開
裂させて組換えFXaIを生成させる。
好ましい態様においては、酵素的開裂はCNBr開裂を包含する。
この発明は、組換えFXaIの作製方法であって、
(a)延長ペプチドに結合したFXaIをコードするDNAを含むプラスミド
を有するホスト細胞を処理し、DNAを発現させてFXaIプレペプチドを得、
(b)そのように発現したFXaIプレペプチドを細胞から回収し、
(c)FXaIプレペプチドを酵素的に開裂させて組換えFXaIを生成させ
、
(d)組換えFXaIを精製する、
ことを包含する作製方法をさらに提供する。
好ましい態様においては、工程(b)は、
(i)ホスト細胞を破壊して細胞残査および蛋白質上清溶液を含有する懸濁液
を形成し、
(ii)可溶性蛋白質上清溶液から前記細胞残査を分離し、
(iii)カラムクロマトグラフィーによって上清からFXaIプレペプチドを
精製する、
ことをさらに包含する。
さらに別の態様においては、工程(c)は、エンテロキナーゼもしくはヒドロ
キシアミンでFXaIプレペプチドを開裂させることをさらに包含する。
別の態様において、工程(iii)は、DEAE−セファロースもしくはQ−セ
ファロースクロマトグラフィーをさらに包含する。
さらに別の態様においては、クロマトグラフィーに続いて、金属アフィニティ
ークロマトグラフィーおよび透析が行なわれる。
この発明は、さらに、その生物学的活性から生じる所望の治療効果を得るに有
効なこの発明のポリペプチド、および適切な担体を含有する組成物を提供する。
好ましい態様においては、好ましい治療効果は血液凝固の程度の低減である。
血液凝固の程度は、ATPPのようなイン・ビトロ凝血アッセイによって表わす
ことができる。
この発明はまた、血液を、血液凝固の程度を低減させるに有効な量のポリペプ
チドと接触させることを包含する血液凝固の程度を低減させる方法をも提供する
。
好ましい態様においては、接触は被検体においてイン・ビボで行なわれる。よ
り好ましい態様においては、被検体は過剰血液凝固を患っている。
特定の態様において、過剰血液凝固を患う被検体は、血管障害、術後トラウマ
、肥満に関連する静脈血栓塞栓症の傾向、妊娠、経口避妊薬の使用、および持続
性運動抑制からなる群より選択される状態を有している。
したがって、この発明は、発作もしくは他の脳血管障害のような脳血管疾患に
おける血液凝固の程度を低減させる方法を提供する。
この発明は、血栓症、より詳しくは静脈血栓症、さらに詳しくは深静脈血栓症
において生じるような過剰血液凝固の状態、または播種性血管内凝固症における
血液凝固の程度を低減する方法を提供する。
この発明は、さらに、動脈血栓症、例えば冠状動脈の血栓症、において生じる
ような過剰血液凝固の状態における血液凝固の程度を低減させる方法を提供する
。
上述のように、血栓は血栓溶解の後にしばしば再発する。したがって、この発
明は、血栓溶解の後の血液凝固の程度を低減させる方法を提供する。好ましい態
様においては、血栓溶解は線維素溶解剤によって行なわれる。特定の態様におい
ては、線維素溶解剤は組織プラスミノーゲン活性化剤もしくはストレプトキナー
ゼである。ポリペプチドは、線維素溶解剤の投与前、投与中、もしくは投与後に
投与され、あるいは線維素溶解剤に結合させて投与される。
この発明はまた、Xa因子を、Xa因子の活性を阻害するに有効な量のポリペ
プチドと接触させることを包含する、Xa因子の活性を阻害する方法をも提供す
る。
さらなる態様において、この発明のポリペプチドは、インフルエンザ感染の再
発の防止に用いることができる。、インフルエンザ感染は、ウイルスによる細胞
の感染および再感染を含む動的なプロセスである。A型インフルエンザ感染に関
連する活性化酵素は、ニワトリ血液凝固Xa因子に非常に類似することが示され
ている(Gotoh B.et al.(1990),EMBO J.9:4185-4190およびOgasawara T.
et al.(1992),EMBO J.11:467-472)。したがって、対応するヒトFXaが
ヒトに生じるインフルエンザ感染に関ることもあり得る。
FXaのインヒビターがインフルエンザ感染の再発の防止に有用でありうるこ
とが予想される。特定の態様において、FXaインヒビターはこの発明のポリペ
プチドである。このポリペプチドが、さらなる治療薬と一緒に投与し得ることも
期待される。特定の態様において、さらなる治療薬は酸素非含有ラジカルスカベ
ンジャーを含む。好ましい態様においては、酸素非含有ラジカルスカベンジャー
はスーパーオキサイドジスムターゼである。より好ましい態様においては、スー
パージスムターゼはCu/Zn−SOD(共に譲渡されている米国特許4,742,00
4号)もしくはMnSOD(1992年2月27日出願の、共に譲渡されている米国出願
842,740号、および共に譲渡されている英国特許GB 2,183,658、1990年4月25日
)である。
このような治療は、現在利用可能な、インフルエンザ感染を扱う治療および予
防法に対して膨大な利点を有するであろう。現在利用されているインフルエンザ
予防の方法は、イン
フルエンザウイルスに対する免疫に基づいている。この方法は、ウイルス株の多
さの他に、インフルエンザウイルスの突然変異の頻度の高さのために、不確実で
あることが立証されている。
このため、感染機構の阻害物を用いることが、ウイルス体の免疫学的特性に基
づいておらず、したがって特定のウイルス株に限定されないことにより、現在利
用可能なワクチンと比較して一般に有利である。
さらに、インフルエンザは気管支肺疾患であるので、治療はエアロゾルとして
投与されることが好ましく、それにより簡便な投与方法が提供される。
さらなる面において、この発明は、当該ポリペプチドのエピトープと特異的に
反応する抗体が提供される。特定の態様において、抗体はモノクローナル抗体で
ある。この発明はまた、この抗体の特異的な反応を競合的に阻害するポリペプチ
ドを包含する。この出願に関連して寄託されたプラスミドおよび株
特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約の要求に準じ
、かつこれを満足するように、この発明の方法の実施に有用な様々なプラスミド
および大腸菌株が、1992年12月1日に、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレ
クション、12301パークローンドライブ、ロックビル、メリーランド20852に寄託
された。
1992年12月1日に寄託されたプラスミドおよび株には、大腸菌MC1061中に導
入されてATCC受託番号69138として
寄託された、クローン11のFXaIをコードするcDNAを有するプラスミドp
SP65−XaI−11;大腸菌733中に導入されてATCC受託番号69136として寄
託され、ヒトCu/Zn−SODの変性配列の63N末端アミノ酸に融合したFX
aIをdeoプロモーターの制御下において発現するプラスミドpDeo−S−
XaI−11“f”;およびdeoプロモーターによって制御されるプラスミドの
ホスト細胞であり、上記の通りATCC受託番号69136として寄託された大腸菌7
33が含まれる。
加えて、λPLプロモーターを有するベクターであるプラスミドpMLK−100
が、ATCC受託番号68605として1991年2月6日に寄託された。
さらに、プラスミドFSHI−6およびpFSOH−11が、大腸菌4300中に導
入されて、それぞれATCC受託番号69583および69582として1994年3月11日に
寄託された。
加えて、プラスミドpMLK−XaI−D−11“m”が、大腸菌4300中に導入
されてATCC受託番号69591として1994年3月22日に寄託された。
以下の段落に記述されるように、天然のポリペプチドのN末端配列、この発明
のポリペプチドをコードするクローン、バクテリア中でのポリペプチドの発現、
および天然の蛋白質の生物学的活性および特異性を有する組換え蛋白質を得るた
めに、多くの困難が解消されなければならなかった。
第1に、精製および特徴付けに十分な蛋白質をヒルド・メディシナリスから得
ることが、(a)この生物の小さなサイ
ズ;(b)この蛭が微量の蛋白質のみを必要とすることによる、蛭中の微量の蛋
白質;(c)大量のヘモグロビン(これは精製プロセスの大きな障害となる)に
よって汚染されていない十分な量のDLSを得ることの困難性;および(d)単
離された蛋白質で観察される、アミノ酸配列の多様性、すなわちイソフォーム、
および翻訳後の変性の両者の点での重大な不均一性の程度のために、非常に困難
であった。この最後の面は、一部は、それらのサイズが小さいために多くの生物
から蛋白質を単離する必要性があり、それにより天然の遺伝学的多様性の因子が
導入されることによるものである。
例えば、N末端配列決定に要する量(すなわち、約100pmol)の精製FX
aIを得るためには、300匹の蛭を“搾り”、僅かに約0.14μg/mlのFXa
Iを含有する1-2リットルの希釈蛭唾液(DLS)を処理する(収率は10-25%)
必要があった。
対照的に、メキシコ蛭のヘメンテリア・オフィシナリスの唾液腺抽出物から得
られた精製Xa因子インヒビター(アンチスタチン)の量は、唾液腺抽出物の12
μg/ml(25mL当り0.3mg)のオーダーであった(1)。これは、ヒルド
・メディシナリスのDLS中に存在する蛋白質の濃度よりも100倍近く多い。同
様に、メキシコ蛭の少なくとも2倍の大きさのジャイアントアマゾン蛭、ヘメン
テリア・ジリアーニ(3)から単離されるXa因子インヒビターが、僅か14個体
の唾液腺抽出物から大量に得られた。
第2に、粗製蛋白質を精製して配列決定し、かつ得られた
蛋白質の均一性および同一性を立証しなければならなかった。
第3に、アンチスタチンに対する抗体がH.メディシナリスからの抽出物中の
交差反応性分子を認識できない(3)としても、依然としてFXaIが実際にア
ンチスタチンとは異なるということを明白に確立しなければならなかった。
最後に、“隠された”N末端がブロックされたアンチスタチン様汚染物を含ま
ず、トリシンSDS−PAGE上でFXalと同じ位置まで移動する精製された
FXa阻害画分を確立する必要があった。実施例
以下の実施例はこの発明の理解を助けるために示されているが、いかなる意味
においてもその範囲を制限することを意図するものではなく、そのように解釈さ
れるべきではない。これらの実施例は、cDNAの単離、ベクターの構築、その
ようなベクターへの目的のポリペプチドをコードする遺伝子の挿入、またはバク
テリアホストへの得られたプラスミドの導入に用いられる通常の方法の詳細な説
明は含まない。そのような方法は当該分野の熟練者には公知であり、かつSambro
ok,Fritsch,and Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd E
dition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,USA,(1989)を含む多くの刊
行物に記述されている。例1
: H.メディシナリスのFXaIの精製
ヒルド・メディシナリスの希釈ヒル唾液(DLS)よりF
XaIを精製した。DLSはRigbiら(Comp.Biochem.Physiol.87B:567-573,
(1987))の記述に従って得た。
簡単に説明すると、37℃に保持した食欲刺激性の溶液である0.001Mアルギニ
ン含有生理食塩水を、両端が開放された筒に広げられた洗浄された膜(ソーセー
ジ皮、ニッピ・ゼラチン・ケーシング[Nippi Gelatin Casing]、東京、日本よ
り入手)の上に置いた。飢餓状態のヒルにそのうが満たされるまでその溶液を吸
い込ませた。餌液は撹袢していなかったので餌液中に排出された唾液の大部分は
再び吸い込まれたと仮定される。給餌を中止し、ヒルを後ろから前へ搾ることに
よって唾液を含む摂取溶液を口から搾り出した。
希釈ヒル唾液(DLS)と名付けられた無色の液体を集めた。
DLSから蛋白質を精製する2つの方法を以下に述べる。
これらの方法は類似しており、第四アミノメチルカラム(モノ−QまたはQ−
セファロース)上での陰イオン交換クロマトグラフィーと、それに続いて行なう
スパロース12上でのゲル濾過クロマトグラフィーまたはヘパリン−セファロース
でのアフィニティクロマトグラフィーとから構成されている。どちらの場合にも
、調製品の同定と均一性はトリシンSDS−PAGEおよび少なくとも1つの補
足法によって確認した。これらの精製プロトコルを図1にまとめた。
1. モノ−Qとそれに続くスパロース12による精製
約25匹のヒルから調製したDLS(150ml)を同容量の20mMトリス塩酸緩
衝液(pH8.9)で希釈し、FPLCモ
ノ−Qカラム(5×50mm)に添加した。カラムは同緩衝液中0〜0.5MのNaC
l直線濃度勾配(80ml)、流速1ml/分で溶出した。280nmの吸光度をモニタ
ーした。そしてカラムを同緩衝液中0.5M〜1M NaCl(20ml)の第2の直線
濃度勾配、同一流速で洗浄し、さらに5mlの1MNaClにて洗浄した。溶出液
は1mlずつ分取し、FXaI活性およびヒルジン活性を測定した。FXaI活性
のピークは0.35MNaCl付近で溶出され、ヒルジン活性のピークとは分離した
。FXa阻害活性を含む画分をプールし、10×900mm(3連にした10×300mm
カラム)のスパロース12カラムにかけた。溶出は室温で150mMNaCl含有20
mMトリス塩酸緩衝液(pH8)、流速0.3ml/分で行った。280nmの吸光度
をモニターした。FXaIはこの条件下でみかけの分子量4kDの単独ピークと
して溶出した。それに対して、精製されたFXaIはトリシンSDS−PAGE
上で分子量約14kDの単一バンドを示した。例2で述べるように、この分子量決
定の差異は、FXaIとスパロース12との非特異的相互作用によりFXaIのカ
ラムからの溶出が遅れることによるのであろう。
精製された蛋白は以下のとおり、逆相HPLC(RP−HPLC)でも分析し
た。スパロース12で精製したFXaIを水で透析し、凍結乾燥し、1mlの0.1%
トリフルオロ酢酸(TFA)に再溶解し、Kontron Model 420/422SHPLCに
取り付けた7μRP−300カラム(Aquapore,Brownlee Labs製)に注入した。溶出
は、0.01%TFA中0〜100%のアセ
トニトリル直線濃度勾配(60ml)、 流速1ml/分で行なった。220mlの吸光
度をモニターした。保持時間38.51分の単一のピークが観察され、よってFXa
Iが均一に精製されたことが示された。
2. Q−セファロースとそれに続くヘパリン−セファロースによる精製
約50匹のヒルから得たDLS(320ml)を同容量の20mMトリス塩酸緩衝液(
pH8.9)で希釈し、Q−セファロースカラム(10×50mm)に添加した。カラ
ムは同緩衝液中0−0.5MNaCl直線濃度勾配(70ml)、流速1ml/分にて溶
出し、280nmの吸光度をモニターした。その後、カラムを1MNaCl含有同緩
衝液で同流速にて洗浄した。溶出液は1mlずつ分取し、FXaI活性とヒルジン
活性を測定した。
これによりFXaI活性は実際にヒルジン活性と分離していることが確認され
た。FXaIは0.35MNaCl付近に単一のピークとして溶出し、これは前述の
モノ−Qからの溶出と似ていた。FXaI活性を含む画分をプールし、20mMト
リス塩酸緩衝液(pH8.9)で透析した。そのうち7mlをヘパリン−セファロー
スカラム(10×50mm)に添加した。
溶出は同緩衝液中0〜0.5MNaCl直線濃度勾配(70ml)、流速1ml/分に
て行い、280nmの吸光度をモニターした。
そしてカラムを1MNaCl含有同緩衝液で同流速にて洗浄した。溶出液を1m
lずつ分取し、FXaI活性を測定した。精製FXaIは0.30MNaCl付近に
単一のピークとして溶出した。このプロトコルによって、FXaIは約600
倍に精製され、全体の収量は14%であった。以下に述べるように、この調製品は
トリシン/SDS−PAGE分析で分子量14kDの単一バンドを示した。この方
法で精製したFXaIの均一性はさらにスパロース12を用いた変性条件下でのゲ
ル浸透クロマトグラフィーにて確認した。例2
:DLSから単離された精製下FXaIの特徴付け
1.分子量
1.1 トリシンSDSPAGE
例1で述べた方法で調製された種々のFXaIの調製品を、均一性の程度とこ
の蛋白質の分子量を評価するために分析した。用いた工程はSchaggerらの方法(
Anal.Biochem.166:368-379,(1987))の修正法を用いた。FXaIのバンド
はほぼ14kDに泳動し、いくつかの場合には、約12〜14kDの広いバンドとなっ
た。12〜14kDのバンドの意味については以下に述べる。
1.2 バイオゲルP−60でのゲル侵透クロマトグラフィー
分子量は、FXaIの粗調製品のバイオゲルP−60によるゲル浸透クロマトグ
ラフィーによっても決定された。FXaI活性は分子量14kDに相当する保持時
間に溶出した。前述のように、トリシンSDS−PAGE上の変性条件下での電
気泳動によって決定されたFXaIの分子量もまた14kDであり、FXaIは14
kDの単量体であることを示している。
1.3 変性条件下および非変性条件下におけるFXaIの挙動
前述のように、この精製過程において、FXaIを変性条件下、スパロース12
でのゲル浸透クロマトグラフィーにより夾雑蛋白質から精製した。これらの条件
下では、FXaI活性は、みかけの分子量4kDに相当する保持時間で単一のピ
ークとして溶出することが見出された。しかしながら、同一の試料を6Mグアニ
ジン塩酸塩(GuCl)の存在下、変性条件でスパロース12に流したところ、F
XaI活性は、約13kDに相当する保持時間に単一のピークとして溶出した。
透析により変性剤を除去すると、このピークが生物学的活性を回復することが
見出され、トリシンSDS−PAGEで通常の14kDの単一バンドを示した。こ
れらの結果は、非変性条件下では、カラム上で蛋白質の多少の遅滞を招くFXa
Iとスパロース12の間の非特異的相互作用が存在することを示唆している。
2.FXaIのN末端配列
2.1 精製された天然FXaIのN末端配列
例1で述べた2つの方法で精製されたFXaIの試料をさらにトリシンSDS
−PAGEで分解し、PVDF膜に電気的に転写した。FXaIを含む膜断片を
自動配列解析(Applied Biosystems製 Microsequencer,Model 475A)に20サイ
クルかけた。どちらの場合にも以下の配列が得られた。
* システインはこの方法のアミノ酸配列解析では検出されず、後に、DNA
配列から推定した。
2.2 ピログルタミン酸アミノペプチターゼで処理した天然FXaIのN末端 配列
FXaIのN末端配列はまたピログルタミン酸アミノペプチターゼで処理した
天然蛋白質についても決定した。
以下の手順でFXaIにピログルタミン酸アミノペプチターゼ処理を行なった
。FXaI(20μg)をピログルタミン酸アミノペプチターゼ(2μgを、5mM
DTT、10mM EDTAおよび5%グリセロール含有100mMリン酸ナトリウム
緩衝液(pH8)100μlに溶解した)と6時間、4℃に保った。その後、更にピ
ログルタミン酸アミノペプチターゼ(2μg)を追加し、反応を更に15時間室温
で進行させた。
ピログルタミン酸アミノペプチターゼ処理後に得られたN端末配列は、ピログ
ルタミン酸アミノペプチターゼ処理なしで得られた結果と同一であった。これは
、アンチスタチンとは異なり、FXaIにはN末端がピログルタミン酸で保護さ
れたアイソフォームはないということを示している。
3. FXaI多様性
3.1 Q−セファロースによるFXaIアイソフォームの精製
数リットルのDLSからのFXaI大量精製の間に、Q−セファロースカラム
からの溶出で、活性のピークが2つ得られた。例えば、2450mlのDLSを二倍
量の20mMトリス
塩酸緩衝液(pH8.9)に希釈し、60mlのQ−セファロースカラム(2.5×12.2
cm)にかけた。溶出は0〜0.5M NaCl直線濃度勾配を有する同緩衝液(360
ml)、流速3ml/分で行ない、更に0.5M〜2M NaClの第2の直線濃度勾配
を有する同緩衝液(360ml)、同流速で溶出した。第1の濃度勾配(0〜0,5M
NaCl)によって活性は広いピークとして溶出し、カラムに流した全FXaI
活性の約30%が第2の濃度勾配(0.5〜2MNaCl)によってより狭い活性ピー
クとして溶出した。それぞれのピークの活性画分を別々にプールし、低塩濃度勾
配および高塩濃度勾配での溶出に相当するピークをそれぞれアイソフォームA、
アイソフォームBと命名した。アイソフォームAとアイソフォームBに相当する
ピークを集めたものをそれぞれ別に10mlのヘパリン−セファロースカラムに添
加し、上記と同様の2つのNaCl直線濃度勾配(それぞれ40ml)によって溶
出した。アイソフォームAはヘパリン−セファロースカラムから第1の濃度勾配
、すなわち0ないし0.5M NaClで溶出し、一方、アイソフォームBは第2の
濃度勾配、すなわち0.5ないし1M NaClで溶出した。これはQ−セファロー
スからの溶出プロフィールと似ている。アイソフォームAはトリシンSDS−P
AGE上でみかけの分子量13〜14kDを示したが、アイソフォームBはみかけの
分子量11〜12kDを示した。これらの結果は、先に1.1項で述べたFXaIの
均一調製品の電気泳動の際に観察される、広い分子量12〜14kDのバンドに対応
する。
アイソフォームAとアイソフォームBの分子量の相違は、6M GuCl/20m
Mトリス塩酸緩衝液(pH7.8)で平衡化した(1.3項に述べたように)スパロー
ス12ゲル浸透カラムによるクロマトグラフィー(流速0.4ml/分)により確かめ
られた。2つのアイソフォームの位置は、変性剤を透析により除去した後、分画
のFXaI活性を測定することにより検出した。加えて、アイソフォームBを、
これが分子量11〜12kD相当の位置まで移動するトリシンSDS−PAGEでの
検出を可能にするに十分な量、スバロース12カラムから分離した。これはヘパリ
ン−セファロースから溶出したアイソフォームBについて得られた結果と同様で
あった。
3.2 モノ−SによるFXaIアイソフォームの精製
DLS(100ml)を同容量の20mMトリス塩酸緩衝液(pH7)で希釈し、F
PLCに取り付けたモノ−S陽イオン交換カラム(5×50mm)に流した。溶出
は、室温で、同緩衝液中0〜1M NaCl直線濃度勾配(60ml)、流速1ml/
分にて行い、更に10mlの1M NaClを含む同緩衝液で洗浄した、280nmの吸
光度をモニターした.溶出液を1mlずつ分取し、FXaI活性を測定した。活
性のピークが2つ検出され(図2)、これは先に示した結果に更に確証を与えた
。
3.3 アイソフォームBの特徴付け
アイソフォームBと命名したピークが実際にFXaIのアイソフォームである
ことを確かめるために、前述(3.1項)の通りにQ−セファロースおよびヘパ
リン−セファロースで
精製したアイソフォームBの一部を、モノ−Qカラムにかけた。FXaI活性は
、前にQ−セファロースにおいて観察されたように、高塩濃度(約0.6M NaC
l)で溶出した。
精製された蛋白質をトリシンSDS−PAGEで電気泳動し、PVDF膜に電
気的に転写して、9サイクルのN末端アミノ酸配列解析を行なった(例1、2.
1項参照)。その結果得られた9個のアミノ酸の配列はアイソフォームAで得ら
れたものと同一であった。これはアイソフォームAとアイソフォームBが同一の
アミノ酸配列を持つことを示すと考えられる。
アイソフォームBとアイソフォームAが同じアミノ酸配列を持つと思われるの
で、カラムクロマトグラフィーとSDS−PAGEにおける両者の挙動の相違は
、おそらくグリコシル化のような翻訳後修飾によるものであろう。
4.グリコシル化と糖分析
過ヨウ素酸修飾された糖に結合したアルカリホファターゼ−ヒドラジンの基質
染色に基づく方法(Gershoniら,Anal.Biochem.146:59,(1985))を用いた
ドットプロット解析により、FXaIは糖蛋白質として染色されることが示され
た。
FXaIの2つのアイソフォームのグリコシル化の差異を、既知の方法(Egge
r and Jones,J.Chromat.33:123-131,(1985))に従って分析した。DLSか
ら精製したFXaIのアイソフォームAおよびBを、2Mトリフルオロ酢酸(T
FA)を用いて、密封容器中、105℃で8時間加水分解した
その後、TFAは凍結乾燥により除去した。そして、加水分解物および糖標準
品をダンシルヒドラジンにより誘導体とした。TCAの代わりに0.1M酢酸含有0
.1%TFAを溶媒として用いたので、セプパック[Sep−Pak]カートリッジによ
る部分精製の必要はなかった。誘導体化に引き続いて試料を凍結乾燥し、20%ア
セトニトリルに溶解して、スベルコ[Supelco]LC-8カラム(250×4.6mm,
粒子径5μ)を用いてHPLC分析(Beckman製,model ll0A,またはKontron製
,model 420/422S)を行なった。流出液は、UV検出器(Jasco製model 875UVま
たはKontron製HPLCdetector,model 430)を用い、254nmの吸光度でモニター
した
結果は表1に示したが、アイソフォームAとBとではグリコシル化の程度と様
式が異なっていた。これがイオン交換カラムでの両者の挙動の差異を説明するも
のであろう。
5.FXaIの定量とアッセイ
5.1生化学的活性のアッセイ
FXa阻害活性のアッセイは、上記のFXaで媒介される色素産生基質メトキ
シカルボニル−D−シクロヘキシルグリシル−グリシルp−ニトロアニリド(C
HG)の阻害を基にしている。
FXa活性は、p−ニトロアニリンの放出に起因する405nm(εM=992
0M-1cm-1)の吸光度の増加として測定した。FXaによるこの基質の加水分解
の動力学的パラメータは、以下の通りである。触媒定数=130sec-1及びKm=
15μM。適切な基質濃度を342nmにおいて8210である分子吸光度から決
定した。この反応混合物は、50mMトリス−HCl pH8.2、5mM CaC
l2、200mM NaCl、0.1%PEG、40μMの基質、および約2nMの
FXaを含有する。FXaの濃度は、上記の動力学的データを基にした阻害の消
失について、40μMでのCHG加水分解の初期速度(最初の20秒)からより
正確に決定した。
吸光度の増加の阻害は、本発明のFXaのようなFXa阻害剤によるFXa阻
害活性の存在下で測定されうる。阻害剤の濃度は、FXaの濃度によって倍加さ
れる阻害剤の存在下での反応と非存在下での反応との吸光度の差である。
この決定は、1:1酵素−阻害剤複合体の形成を仮定しており、更に解離定数
が、阻害剤(FXaI)を酵素(FXa)へ実質的に完全に結合することができ
る程度に十分低い(即ち密に結合している)ことを仮定している。実際に、投与
量
依存曲線の飽和形(図3)は、有限であり、無視できない阻害剤−酵素複合体の
解離がこれらの条件下で起こっている証拠を表している。この投与量応答曲線は
、阻害の程度とFXaI濃度の間で表され、これをセクション5.2で更に説明
する。
FXa−FXaI複合体の解離の程度は、阻害定数(Ki)によって特徴づけ
られ、色素産生基質CHGの加水分解の阻害速度から決定されうる。これらの結
果は、酵素−阻害剤複合体に対する競争的阻害の速度論的スキーム、特にDixon
and Webb,Enzymes(3rd ed.),Academic Press,New York,(1979)に開示さ
れたものに従って分析されうる。色素産生アッセイにおける天然に存在するFX
aのKiは約9nMである。
従って、上記の方法で決定される阻害剤濃度の決定は、おそらく低く評価され
る。一定の程度の阻害、通常50%を得るため、及びこれらの反応条件で50%
の阻害を起こす量が1ミリユニット(mu)または1pmolになるように定義するた
めに必要なタンパク濃度(IC50)としてFXaIを定義することは有効である
ことがわかった。IC50は一般にKiより高く、阻害のタイプに依存して、基質
濃度、Ki、Km及び他のファクターに様々に依存することが示されうる(Segal
,I.(1974)”Enzyme Kinetics”Wiley Interscience)。実際に、IC50の
値の範囲は、約10〜20nMであると決定された。
精製及び特徴付けの間に濃度を決定するために使用されるFXaI活性のアッ
セイを、Elisa Titertek Twin Reader,
Type 380(EF LAB)によって行った。精製されたタンパクの最終活性測定もフィ
リップス(モデルPU8720)UV/Visスキャンニング分光計で行った。
5.2 阻害のタイプ及び投与量−応答曲線
色素産生アッセイでの阻害の程度によりほとんど完全な飽和が、部分的に精製
された天然に存在するFXaIの量を増加させて得られた(図3)。しかし、達
成された阻害の程度は時間依存性であり、ほとんどの阻害は、室温において数分
間(3〜5分)のFXaとFXaIの予備インキュベーションがないと観測され
なかった。この挙動は、ゆっくり結合する阻害剤の典型であり、アンチスタシン
に対して先に開示した(参照文献8)。高い阻害剤の濃度でさえもFXa活性の
完全な阻害が達成されるようには思われない。これは、酵素−阻害剤複合体の解
離の傍らで、複合体が、酵素、阻害剤および基質間でも混合タイプの阻害として
形成されることを示している。混合タイプの阻害は、天然に存在するFXaI(
13)及びアンチスタシン(8)に対して先に報告されている。
5.3 凝固アッセイ
FXaIの阻害活性もまた、活性化された部分的トロンボプラスチン時間(A
PTT)の増加として、基本的にSpaethe,Haemostasis,AHS/Deutschland GmbH
,Munich(1984)に開示されたように試薬としてアクチンFS(Actin FS)(D
ade)(これは、ファクターXII及びファクタXIを活性化する
ためのエラグ酸、並びに大豆リン脂質を含有する。)を使用してアッセイした。
これらの条件化及び20mMCaCl2の存在下で、凝固の本来備わっている経路
のみが活性化される。
アイソフォーム(isoform)A(DLSから単離された天然に存在するFXa
Iの主フラクション)をこれらの実験に使用した。色素産生アッセイにおけるこ
の活性は、164mu/mlであり、これはFXaと阻害剤との間の密な結合を仮定
すると(上記セクション5.1参照)、164pmol/mlと等しい。このバッチの
タンパク濃度を、SDS-Bradford(Macart and Gerbaut,Clin.Chim.Acta 122:9
3-101(1982))によってアッセイし、〜20μg/mlであると決定した。
APTTをヒトおよびネズミ血漿(両方とも新鮮なものと凍結させたもの)に
対して評価した。ヒト血漿において、10mu/mlの濃度でAPTTを二倍にした
が、ネズミ血漿では、3.5mu/mlで同じ効果を達成するのに十分であった(図
4)。タンパク濃度を基にして、これ価は、87および30nMにそれぞれ等しい
。両種類の新鮮な血漿と凍結させた血漿の間で差は観測されなかった。
5.4 プロトロンビナーゼ複合体のFXa阻害活性のアッセイ
FXaIの阻害活性をプロトロンビナーゼ複合体のFXaに関するその影響で
もアッセイした。使用したリン脂質は、ウサギ脳セファリン(シグマ)であった
。1つのバイアルの内容物は、1ml中に懸濁された0.15MのNaClを反応
混合物中に1:40(即ち2.5μl/100μl)に希釈した。他の成分の濃
度は、FXa250pM、プロトロンビン2.67μM、FVa4.2nM及び20
mMトリス−HClpH7.4/150mM NaCl/0.1%ポリエチレングリ
コール6000中のCa++1mMであった。37℃での予備インキュベーションに
続いて、反応をプロトロンビンを添加することによって開始した。アリコートを
種々の時間間隔で採取した。反応を10mM EDTAで停止し、アリコートをア
ッセイするまで氷上に保存した。FXa阻害剤(例えば本発明のFXaI)によ
るFXaの阻害は、37℃でのプロトロンビンからのトロンビンの生成に関する
FXaIの影響として観測される。精製されたトロンビンの量は、80μgの合
成トロンビンp−ニトロアニリド基質S−2238(Kabi-Vitrum,Sweden)を
用いて23℃でアッセイした。
天然に存在するFXaIに対して得られた結果は72pMのKiと190pMのI
C50であった。IC50は、上述したように、阻害剤−酵素複合体の解離を計算に
入れていないのでより高くなる。
後のいくつかの実験で、プロとろんビなせ複合体アッセイのプロトコールにい
くつかの僅かな修飾を施した。即ち、アッセイ混合物には、250pM FXaお
よび2.67μMプロトロンビンの代わりに50pM FXa及び1.35μMプ
ロトロンビンが含まれる。
6. FXaIの阻害活性
(i)FXaの阻害
天然に存在するFXaIの阻害定数は、上記の色素産生アッセイ及び再構成さ
れたプロトロンビナーゼ複合体アッセイで決定した。
(ii)トリプシンの阻害
天然に存在するFXaによるウシトリプシンの阻害を古典的な投与量応答法に
従って算出した。Ki値を、阻害剤及び酵素の濃度の比に対してFXaIの活性
のパーセンテージ(以下に開示された比色アツセイ(colorimetric assey)によ
って決定した)をプロットすることによって得た。比色アッセイは、10mMトリ
ス−HCl、10mMHepes(pH7.8)、100mM NaCl、0.1%PEG60
00中の基質として80μMのChromozyme TH(ペンタファーム、スイス)を用
い、3.83または4.27nMのトリプリンの存在下、25℃で行った。阻害剤
及び酵素を、基質を加える前に25℃で10分間予備インキュベートした。この
アッセイで、天然に存在するFXaIのKiは47.3nMであることが見いださ
れた。
(iii)プラスミンとトロンビンの阻害
プラスミン及びトロンビンは、トリプシンに対するのと同様のアッセイで天然
に存在するFXaIによって阻害されない。トロンビンの場合、使用される基質
は、トリプシンに対して使用されるものと同様であり、プラスミンの場合にはS
2251を基質として使用した。
7. FXaI薬動力学的(Pharmacokinetic)研究
予備の薬動力学的実験は、循環系からのFXaIの排泄速度を評価するために
行われた。メスBalb/cマウス(20〜25gm体重)に精製したFXaI(
アイソフォームA;0.2ml生理食塩水中5.25μgタンパク/マウス)を静
脈内的に注射した。注射後、1、3、10及び30分に血液サンプルを、1/1
0v/v3.8%クエン酸中に採った。各マウスから1つの血液サンプルのみを得
ることができ、従って、各時間点のサンプルは、異なったマウスのものである。
次に血漿を分離し、APTTに対してアッセイした。FXaIの濃度をAPTT
とFXaI濃度(これは未処理のマウスから集めた血漿に種々の量のFXaIを
加えることによってin vitroで構築した。)の間の検定曲線から計算した(図5
の差し込み)。
in vivo試験の結果を表2と図5にまとめた。特定の種々の時間点で測定され
た実際のAPTT値は表2に示されている。図5では、これらのデータは、各時
間点でのサンプル中に存在する阻害剤の量として表されている。血液の凝固の十
分な阻害が、FXaIの静脈投与後すぐに観測され、阻害剤の活性の血漿レベル
が迅速に低下し、薬7.5分の半減期を有していた。
例3: PCRによるFXaIのクローニング
以下の手順は図7に概略的に示されている。全RNAを120のヒルから抽出
した。全RNAから、35μgのポリA+mRNAが単離された(Fast TrackTM
mRNA単離キット、Invitrogenを使用)。このようにして得られたポリA+m
RNAのアリコート(5μg)を、以下の合成プライマーの存在下で逆転写反応
のテンプレートとして使用した。
15−merオリゴ−dT配列は、種々のmRNAのポリA
配列に相補性を提供する。
一本鎖相補性DNA(ss−cDNA)の合成に続いて、mRNAをアルカリ
処理(0.3M NaOH、室温で一夜)によって分解した。中和したss−c
DNAのアリコートを次に、以下の合成により切断したDNAオリゴマーを逆プ
ライマー(reverse primer)としてPCR増幅にかけた。
この合成プライマーは、FXaIの最初の9つのN−末端アミノ酸に関して調
製され(例2)、以下の配列をコードする。
PCR増幅の条件は以下の通りである。
1. プライマーA 0.2μg
2. プライマーB 0.2μg
3. ss−cDNA 5μl(全体の5%)
4. 5mM dNTP 4μl
5. 10XPCRバッファー 10μl
6. Taqポリメラーゼ 0.2μl(8U/μl
(USB))
7. H2O 81μl
8. 40回×[94℃で1’;37℃で3’、72℃で4’]
PCR増幅生成物を分析するために、100μの反応物から10μlを1%ア
ガロースゲルに導入した。増幅されていない対照とサイズマーカーも含まれてい
る。約350bp、450bp及び700bpの3つの明瞭なバンドが観測され
た。3つのバンドをニトロセルロース紙にブロットし、次に例2で説明したNH
2末端配列のN−末端アミノ酸14から19に対応し、以下の配列を有する合成
的に放射性標識されたDNAプローブ(プローブC)とハイブリダイズした。
3つのPCR生成物は、非常に厳重なハイブリダイズ条件下でプローブCとハ
イブリダイズすることが見いだされた。しかし、700bpのフラグメントに対
応するバンドは、350bpおよび450bpフラグメントと相対的に弱くハイ
ブリダイズすることが見いだされた。
PCR増幅に続いて、DNAをクロロホルム及びフェノール抽出並びにEtO
H沈殿によって反応混合物から精製した。次に、このDNAをEcoRI及びHindIII
で消化し、ついでゲル精製を行い、フラグメントをプラスミドpSP65の大き
なEcoRI-HindIIIフラグメントにサブクローニングした(図7)。結紮混合物を
使用し、E.coli 株MC1061を形質転換した。形質転換物を、上記の放射性
標識された合成プローブCを用いてin situでのハイブリダイズによってスクリ
ーニングした。
プラスミドDNAを陽性のクローンから調製した。予想したサイズのEcoRIお
よびHindIIIフラグメントを含有するこれらのプラスミドは、Sangerのジデオキ
シシーケンシング法を用いてDNAシーケンシングにかけた。この方法で、以下
の2組のクローンを得た:(A)約290bpの挿入物を有するもの(クローン
3、8及び12)及び(B)約450bpの挿入物を有するもの(クローン1、
4、5及び16)。クローン3及び4のプラスミドは、それぞれpSP65−X
aI−3及びpSP65−XaI−4と命名した。
pSP65−XaI−4(クローン4)のDNA配列と推測されるアミノ酸配
列を図8に示した。図8のmet5は、上記のN−末端配列の4番目の配列であ
るile4とは異なっているFXaIポリペプチドの第4番目のアミノ酸である
(met1はバクテリアホスト細胞によって添加される開始メチオニンである。
)。この差異は、PCR反応の進行におけるDNAポリメラーゼによる誤りに起
因するようである。
麦芽溶解物を用いたinvitroでの翻訳により、クローン4がクローン3と同じ
サイズのタンパクをコードすることが示された。従って、クローン3のより短い
ヌクレオチド配列(290bp)が、クローン4(これを、この例のはじめで開
示された逆転写反応でテンプレートとして使用した。)の450bpヌクレオチ
ド配列によって例示されたDNAでコードされるmRNAの3’−非翻訳領域に
おいてポリ−Aに富んだ配列による内部的プライミングに原因があることがあり
得
る。
例4: Hirudo medicinalis cDNAライブラリーからのFXaIをコー
ドするDNAの単離とクローニング
例3で説明したPCRで誘導されたcDNA(クローン3及び4)を精製され
た天然に存在するタンパクのN−末端配列に対応するプローブとハイブリダイズ
することによって単離した。PCR誘導された配列を更に確認及び証明するため
に、Hirudo medicinalisのcDNAライブラリーを構築した。得られたクローン
を、クローン4の全FXaIコード配列をDNAとして用いてスクリーニングし
た。手順を図9に図式的に示した。
全RNAを120のヒルから抽出した。全RNAから、Fast TrackTMmRNA
単離キットを使用してポリA+mRNAを単離した。このようにして得られたポ
リA+mRNAのアリコートを、ZAPTMcDNA合成キット(Stratagene)を用い
るds−cDNA(二本鎖cDNA)合成に使用した。
得られたds−cDNAをXhoI及びEcoRIで消化し、XhoI及びEcoRIで消化され
たUni-ZAPTMファージ中の(phagemid)ベクターにサブクローニングした。E.co
li XL1-BlueTM(Stratagene)上の得られた組換えファージをプレート化して、
約1.5×105のプラークのcDNAライブラリーを得た(図9)。
このcDNAライブラリーを、厳密性の低いハイブリダイ
ズ条件及び厳密性の高いハイブリダイズ条件の両方で、PCR誘導されたプラス
ミド、pSP65−XaI−4(例3)から得た放射性標識されたDNAをプロ
ーブとして使用して、FXaIDNAを含有するクローンに対してスクリーニン
グした。
厳密性の高い条件には、6X SSC(1X SSC:0.15M NaCl
、0.0015M Na−クエン酸塩)、0.1%SDS、5X Denhardt(0
.1%Ficoll400、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%BSA、0.5%
SDS)及び100μg/mlサケ精子DNA中、60℃で8時間フィルターを予
備ハイブリダイズし、ついで60℃で48時間放射性プローブとハイブリダイズ
することが含まれる。フイルターを、オートラジオグラフイーにかける前に、2
X SSC−0.2%SDSを用いて60℃で2時間で、数回洗浄した。
陽性のプラークを選択し、単離し、同様のハイブリダイズ条件下で再スクリー
ニングした。次に、いくつかのよう性クローンのプラスミドを、ヘルパーファー
ジの助けを借りて回収し、Sangerジデオキシ法によってシーケンシングした。
クローンの1つのプラスミドをpSK−XaI−11(ここでは「クローン1
1」または「11」)と命名し、更に操作と分析を行うために選別した。いくつ
かの他のcDNAクローンもシーケンシングしたが、全て5’−末端で切形され
ているか(truncated)、異なった配列を有していた。
クローン11は、先に得られたPCR誘導配列と本質的に
同一であることが見いだされた684bpDNA挿入物(図10)を含有するが
、その5’−末端で78の追加の塩基対を含有する。この追加の配列は、リーダ
ーペプチドの典型的成分である13の疎水性残基と2の性に荷電した残基を有す
るペプチドをコードする。
我々は、推定のリーダー配列の存在に対してクローン11の生成物のN−末端
アミノ酸配列を分析した。分析をVon Heijne(Nucleic Acids Res.14:4683-91
,1986)のアルゴリズムを用いて行った。このアルゴリズムは、与えられたアミ
ノ酸がリーダー配列内の特定の位置を占める蓋然性を予想し、これによってペプ
チド配列がリーダー配列のものと一致するか否かを決定することができる。更に
、ペプチドに沿った「組み合わせアミノ酸スコア(combined amino acid score
)」を決定することによって、リーダー配列と成熟したペプチドの間の開裂部位
も予想される。プラスミドpSP65−XaI−11の生成物のN−末端配列の
分析に適用した場合(図10)、このアルゴリズムで、リーダー配列のパターン
と一致したアミノ酸パターン、即ちmet1で始まり、ser25まで続くパター
ンが同定され、開裂部位がser25とtyr26の間に見いだされた。上記の分析
を基にすれば、図10に示した配列は、前ペプチド(prepeptide)をコードする
。即ちmet1からser25までの配列は、リーダーペプチドをコードし、ty
r26からglu110までの配列は天然に存在するFXaIと同一の成長したペプ
チドをコードする。
従って、クローン11のDNAは、15のシステイン残基
(この1つは25のアミノ酸シグナルまたはリーダーペプチドに位置する。)を
含有するmet1からgly110まで広がった110のアミノ酸(N−末端メチオ
ニンを含有する)の前ペプチドをコードする。これまでのパラグラフで説明した
ように、クローン11の1から25までのアミノ酸は、リーダー配列を構成する
ようである。この発見は、DLSから単離された天然に存在するタンパクに対し
て決定された公知のN−末端配列がtyr26から始まるという事実(例2)によ
って更に支持される。従って、クローン11(組換えFXaI)によってコード
される成熟したタンパクが、tyr26からgly110まで広がった85のア
ミノ酸を含有することを仮定することは妥当である。
クローニングされたcDNA内のオープンリードフレームの存在を確認するた
め、及びコードされたタンパクの大きさを確認するために、cDNA挿入物をプ
ラスミドSP65にクローニングし、SP6RNAをStratageneのin vitroにお
ける翻訳キットを用いて調製した。このようにして得られた該RNAを、in vit ro
での翻訳にかけ、タンパク生成物を変性条件下、SDS−PAGE上で分析し
た。
クローン11によってコードされるmRNAのin vitroでの翻訳のタンパク生
成物は、ゲル上で約15kDに対応する位置に移動した。
先に説明したように、クローン4は天然に存在するポリペプチドのN−末端配
列を基にして単離され、従って、天然に存在するポリペプチドをコードすると考
えられる。クローン
11は、クローン4の推定アミノ酸配列は図8に、また、クローン11の推定ア
ミノ酸配列は図10に示されている。クローン4及び11のアミノ酸配列も図6
に並べて示した。
クローン4の配列tyr26−gly86(図8)は、クローン11の配列tyr26
−gly110(図10)に等しい。2つの配列を比較すると、これらの間にわ
ずか2つの違いがあることが明らかになる。クローン4のmet5がクローン1
1のile29に対応し、ser65がクローン11のpro89に対応する。クロー
ン4のmet5は、DLSから単離される天然に存在するポリペプチドから得ら
れるN−末端配列中の残基に対応するイソロイシンの代わりに、PCR反応の誤
りによって挿入されるようである。これらの差はまた、図6の位置4及び70で
より明確に観測される。従って、クローン11でコードされるポリペプチドと天
然に存在するポリペプチドの間の差は多くて僅かに1つであり、従って、これら
は相同であると考えられ得る。従って、クローン11で発現されたポリペプチド
は、組換えFXaIと解釈される。
例5: 推定アミノ酸配列の比較
PCRで誘導されたFXaIcDNAの推定アミノ酸配列、ライブラリーで誘
導されたFXaIDNA(リーダー配列を含有する)及びアンチスタシンを異な
った方法、即ち最大相同性、同一相同性(identical homology)、及び整列(al
igment)によって比較した。
5.1 相同性
最大相同性(表3においてパーセントで表した)を、表3の脚注に記載した等
価基(equivalence groups)を用いて、2020PROSISプログラム(LK
B)、バージョン6.00(これは、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:
443(1970)に基づく)を用いて見いだした。比較された配列はリーダーペプチ
ドを含有する。
表4は、同一相同性の程度(パーセントで表した)、即ち等価基なしでの程度
を示す。
5.2 整列(aliment)
配列の類似性を分析する他の方法は、相同性を犠牲にしてもシステイン残基を
整列させることである。Feng and Doolittle,J.Mol.Evol.35:351-360(1987
)の仕事を基にしたコンピュータプログラムPileupでこのような整列を行
った。先に比較した同じ配列に対するギャップウエイト(gap weight)3.00
及びギャップ長さウエイト(gap length weight)0.10のパラメータを使用
した結果を図6に示した。図6は3つの全ての配列の14のシステインが、いず
れの配列においても考慮されうるギャップを導入することなく整列されたことを
示す。Pileupプログラムは、配列の類似性の程度を表す0〜1.5のスケ
ールで価を割り当てる。得られた考慮中の配列の類似性の程度は1.5のパーセ
ントとして表5に示した。
アミノ酸配列を比較するこれら3つの方法から、アンチスタシンと、クローン
4及びクローン11の間にほんの僅かな類似性があることがわかる。アンチスタ
シンは、クローン4及び11でそれぞれ僅かに50%と45%の最大相同性を示
し、それぞれ僅かに32%と30%の同一相同性を示し、更に、クローン4とク
ローン11に対して41%と32%の類似性指数をそれぞれ示した。
例6: 組換えFXaIの発現
E.coliの中の組換えFXaIの発現のためのプラスミドを得るために、FXaIたんぱ
く質をコードするDNAフラグメントのそれ以上の操作が必要であった。プラスミ
ドpSK-XaI-11(例4)をXhoIおよびEcoRIで消化した。
FXaIをコード化する配列を含むXhoI-EcoRIフラグメントを分離し、プラスミド
pSP65のSalI-EcoRI消化物にサブクローンした。結果として生じたプラスミドを
、pSP65-xaI-11と命名した(図11)。このプラスミドは適当な制御要素を欠き
、それゆえにコードされた蛋白質を発現しない。しかしながら、このプラスミド
は発現プラスミドの組立に使用できる。
クローン11によりコードされた組換えFXaIの細菌を使った発現を、ヒトCu/Z
n-SODの63個のN末端アミノ酸に融合されたFXaIの発現のためのプラスミドを組
み立てるためのcDNAフラグメントを使って行った。
クローン11のcDNAを含むプラスミドpSP65-XaI-11を、RsaIにより消化した。
FXaIをコードするRsaI-RsaIフラグメントを分離し、以下の合成オリゴマーの2
セットの存在下でプラスミドpBAST-Rの大きなAatII-PpuMIフラグメントに結合し
た。
E.coli733の成長の後に来る細胞ペレットの溶解の後に得られる不溶性のフラク
ション中に、予想されているサイズの蛋白質が得られた。成熟したFXaIは、公知
の方法により融合蛋白質を切断することにより得ることができる。
例7: プラスミドpDeo-S-XaI-11”f”によって生産された組換えFXaIのリフ ォールディングと精製
プラスミドpDeo-S-XaI-11”f”を含むE.coli 733を、deoプロモーターの支配
下の発現プラスミドに関する方法を開示する、共同譲受された欧州特許出願公開
番号第303,972号(1989年2月22日)に記載されたような当業者に知られ
ている手順に従って増殖させた。増殖後、E.coliをペレット化し、蓄えられた固
まりを処理まで凍らせておいた。細菌の固まりの処理および組換えFXaIポリペプ
チドのリフォールディングの詳細は次の通りである。
1.包含体の分離
上記細菌の固まりを10倍容量のバッファー1(10mM EDTAを含有する50mMト
リス塩酸PH 8)に懸濁させた。
細胞の崩壊は、懸濁液にリゾチーム(2500U/ml)を添加し、時々撹拌しながら
室温で2時間インキュベートして行った。次いで、懸濁液を超音波処理(3x10
分)し、4℃で30分間遠心(12,000 rpm)した。ペレットを界面活性剤と共に
1%ノニデット(Nonidet)P-40(Np-40)を含む10倍容量のバッファー1中に
再び懸濁して洗浄し、時々撹拌しながら室温で1時間インキュベートした。次に
、懸濁液を4℃での30分間の遠心(12,000 rpm)により浄化し、さらにペレッ
トを蒸留水で洗浄し、時々撹拌しながら室温で15分間インキュベートした。ペ
レットの洗浄の結果、たくさんのE.coli蛋白質が除去された。最後に、洗浄した
ペレットを4℃で45分間遠心(15,000 rpm)した。上述の洗浄条件下では組換
えFXaI融合蛋白質がペレットに残されることがSDS-PAGEにより立証された。
2.可溶化および還元
組換えFXaIのほとんどが、包含体の中、すなわち、細菌の超音波処理により得
られた不溶性ペレットの中に現れた。分離および洗浄の後、包含体を48倍容量
のバッファー2(1mM EDTAおよび100mM NaClを含有する6M塩化グアニジン(GuCl
)の20mMトリス塩酸(PH8)中溶液に溶解した。還元は、窒素気流下で還元グル
タチオン(GSH)を追加してから15分後に開始し、1時間行った。次いで、蛋
白質の濃度を、GSH含有バッファー2を添加して1mq/mlに調節し、さらに1〜3
時間窒素下でインキュベートした。
3.リフォールディング/再酸化
還元された組換えFXaIを含有する得られた粗混合物を、バッファー2で10倍
まで100μg/ml蛋白質の蛋白質濃度に希釈した(GuClおよびGSHの最終濃度は
夫々0.6Mおよび1mM)。酸化グルタチオン(GSSG)を最終濃度0.1mMまで添加し、
この溶液を4℃で16時間インキュベートした。免疫学的アッセイで阻害活性を
アッセイする前に、酸化された蛋白質を、EDTAを欠いたバッファー2で3回バッ
ファーを交換して透析した。
結果として生じるプラスミドは、pDeo-S-XaI-11”f”(図12)と命名し、E.co
li菌株733に導入し、ATCC受託番号69136という番号で寄託された。
プラスミドPBAST-Rは、deoP1P2プロモーター、deo RBSおよび修飾されたCu/Zn
-SOD配列のN末端領域を含む。SOD部分とFXaI部分の間にある合成リンカーEによ
ってコードされた3つの追加のアミノ酸酸met-phe-valが、臭化シアン切断部位
を構成する。
すなわち、プラスミドpDeo-S-XaI-11”f”は、修飾されたCu/Zn-SOD配列の63
個のN末端アミノ酸を含む約19kD分子量の融合蛋白質、リンカーEによってコー
ドされたトリペプチドmet-phe-valからなる2つ融合蛋白質の間の切断領域また
はリンカー領域、および、図10に示すtyr26〜gly110の配列を有するFXaIをコ
ード化する。
この修飾されたSOD部分は、次のアミノ酸配列を有する。
プラスミドpDeo-S-XaI11”f”により形質転換された
4.リフォールドされた組換えFXaIの様々なバッチの阻害活性
リフォールドおよび透析された蛋白質を、例2で説明した生化学・免疫学的ア
ッセイによりFXa阻害活性についてアッセイした。この結果を、蛋白質1mgあ
たりのミリユニット(mu/mg)として表6に示す。2nM FXaを含有するアッセイ混
合物で50%阻害を引き起こす蛋白質の量を1muと規定する。さらに、リフォー
ルドされた蛋白質を、トロンビン、その他の凝血カスケードのタンパク質分解酵
素への阻害効果についても試験した。このアッセイは、Lottenbergらの方法(En
zymol.80:341-361(1981))に従って行った。表6からわかるように、FXaIによ
るトロンビンの阻害の有意でないレベルが観察された(<1mu/mg)。
要約すると、生化学的に活性な組換えFXaIは、クローン11”f”により生産さ
れたFXaI融合蛋白質をリフォールディングすることにより既に生産されている。
得られた組換え蛋白質は、DLSから分離された自然に生じたFXaIと同じ範囲内の
比活性を有する。
組換え蛋白質は、トロンビンよりも80倍以上高いFXaに対する特異性を示す
。
例8: 抗FXaI抗体の惹起
抗体は、DLSから分離された自然に生じたFXaIについて作った。
A. 抗原の調製
免疫のための抗原は、例1に記載したようなQ−セファロースおよびヘパリン
セファロースクロマトグラフィーによりDLSから精製した。一定分量の蛋白質を
同容量のSDS-PAGEサンプルバッファー(30%グリセロール、0.19Mトリス塩酸pH6.
8、10%SDS、15%β−メルカプトエタノール、および、0.004%プロムフェノールブ
ルー)で希釈した。次いで、サンプルを15%SDS-PAGEゲル上で電気泳動し、ニト
ロセルロース膜上で電子伝達し、リバーシブルポンソー染料で染料した。約14kD
のみかけ上の分子量を有する蛋白質を膜から抽出し、免疫のための抗体として使
用した。
B. 抗体の誘導
1ml DMSOに溶解し、完全フロインドアジュバントと混合した、精製された抗体
(20-60μg)を1.8〜2.3kqの兎の足蹠に注射した。3週間後、再び兎に注射し
た。今回は、同量の、不完全フロインドアジュバントを混合した抗原を皮下注射
した。この操作を同じ間隔で2階以上繰り返した。
C. ウエスタンブロット分析による抗体の立証
抗体を、12%SDS-PAGE上で減圧下にて行なわれた、種々の蛋白質のウエスタン
ブロットで証明した。抗血清との反応後、ウエスタンブロットを、125I標識プ
ロティンAを用いて展開した。
D.結果
抗FXaIは、DLSから精製された自然に生じたFXaI、および、クローン11”f”に
より生産され、リフォールドおよび部分的に精製された組換えFXaI融合ペプチド
の両方と反応した。自然に生じたFXaIおよび組換えFXaI融合ペプチド(11”f”
)は、夫々、ゲル上で16kDおよび23kDの分子量に相当する移動を行った。これら
のバンドは、全く同様の分子量を有する抗FXaIとの反応の後での、同じ蛋白質の
ウエスタンブロットで得られた。このことは、組換えFXaIが自然に生じたFXaIと
交差反応することを明らかに示している。
例9: 真核生物細胞での組換えFXaIの生産
FXaIのような多くのシステインを含む分子を生化学的に活性なポリペプチドを
得るためにリフォールドすることの固有の複雑さのために、真核生物細胞での当
該ポリペプチドの生産が、幾つかの困難を排除できることが推定される。また、
大量の適当にリフォールドされた、生化学的に活性な組換え蛋白質の製造を可能
にし得ることが予想される。
予備実験では、成熟したFXaIポリペプチドの発現を、Sf-9昆虫細胞におけるバ
キュロウイルス発現系を用いて得た(18)。この細胞は、11”l”蛋白質をコー
ド化したDNA、すなわち、(プラスミドpSK-XaI-11(図9)に含まれるような)
リーダー配列を含むFXaIプレペプチドをコード化したDNAで形質変換されている
。
ウエスタンブロット分析は、培地中に分泌された、その結果として得られたポ
リペプチドが、宿主細胞中での翻訳後の処理、すなわち、リーダー配列の除去、
言い換えれば、リフォールドされた、生化学的に活性な成熟したFXaIポリペプチ
ドの回復を可能にする処理を受けたことを示した。
生産されたポリペプチドは例8に記載した抗FXaI抗体と反応した。
例10: 組換えFXaIおよびプレペプチドを発現する追加のプラスミド
組換えFXaIのE.coliでの改良された発現を得るために、FXaIをコードするDNA
フラグメントの追加の操作が必要とされた。
FXaIをコード化するDNAを包含し、且つ、異なる制御要素の次の組み合わせを
包含するプラスミドの系を組み立てた。この系は、FXaIの検出可能な発現を生じ
ないか、または、ウエスタンブロット分析によってのみ検出可能なFXaIの発現を
生じた。
(a)λPLプロモーター、λCIIリボソーム結合部位およびATGコドンの後ろ
の8つのHis残基
(b)λPLプロモーター、修飾されたλCIIリボソーム結合部位(12のか
わりに9つのヌクレオチド)および細菌周縁質中に発現された蛋白質を分泌する
試みでのDsbAリーダー配列(19)と同等のリーダー配列
(c)λPLプロモーター、修飾されたλCIIリボソーム結合部位(9つのヌ
クレオチド)、細菌周縁質中に発現された蛋白質を分泌する試みでのDsbAリーダ
ー配列(19)と同等のリーダー配列、T1T2転写端末配列およびcI857リプレッ
サー
(d)deoプロモーター、deoリボソーム結合部位、転写エンハンサー、および
、DsbAリーダー配列と同等のリーダー配列
(e)λPLプロモーター、deoリボソーム結合部位、転写エンハンサー、細菌
周縁質中に発現された蛋白質を分泌する試みでのDsbAリーダー配列(19)と同
等のリーダー配列、T1T2転写端末配列およびCI857リプレッサー
FXaIをコード化するDNAを包含するプラスミドと、異なる制御要素の組み合わ
せを夫々包含するプラスミドの2つのプラスミドが、FXaIの検出可能な発現の結
果として組み立てられた。
I. プラスミドpFSHI-6
プラスミドpFSHI-6(図13)に達するプラスミドの系を組み立てた。プラス
ミドpFSHI-6は、適当なE.coli宿主
細胞の形質転換で、拡張ペプチド(FXaIプレペプチド)に付着したFXaIの検出可
能な発現を可能にした。拡張ペプチドは、FXaI生産に有用な14個のアミノ酸[一
つのMeT残基、6個のHis残基、一つのGly残基、一つのThr残基およびエンドプロ
ティンナーゼ切断部位のために必要なアミノ酸(すなわち、エンテロキナーゼで
認識されるAsp-Asp-Asp-Asp-Lys)]を含んでいる。
Met-His-His-His-His- His-His-Gly-Thr-Asp-Asp-Asp-Asp-Lys-FXaIをコード
化するプラスミドPFSHI-6の構造を図13に示す。FXaIのアミノ酸配列を図10
に示す。このアミノ酸配列は26位のアミノ酸Tyrから始まる。
アンピシリン耐性を与え、且つ、Met-His-His-His-His-His-His-Gly-Thr-Asp-
Asp-Asp-Asp-Lys-FXaIをコード化するプラスミドpFSHI-6を、E.coli菌株4300に
導入し、ATCCにATCC受託番号第69583号として1994年3月11日に寄託した。
この宿主−プラスミド系を100μ/mlのアンピシリンでO.D.660=0.8まで懸濁
したLB培地中で増殖させた。蛋白質の生産を、温度を15分間で42℃まで変化
させることにより誘発した。次いで、この温度を40℃まで低下させ、さらに系
を2時間培養した。
SDS-PAGE分析およびウエスタンブロット分析は、プラスミドを含まないコント
ロールの培養株ではなかった、約17kDaの新しい蛋白質バンドを示した。
細胞抽出液中でのFXaIの局在化を決定するために、誘発
された培養株を集め、50mMトリス塩酸(pH8.0)、10mM EDTAで洗浄し、超音波処
理を施して細胞を崩壊させた。15,000rpmで遠心(ソーバル・セントリフュージ
,sorval centrifuqe)した後、上澄みをペレットから分離した。ペレットを8M
尿素に懸濁し、粒子および膜を溶解した。両フラクションのSDS-PAGE分析は、発
現されたFXaIが上澄み中に存在すること、すなわち、FXaIが可溶な形であること
を示した。
可溶な形のプラスミドPFSHI-6により発現されたポリペプチドを次の手順で分
離した。1リットルの培地から誘発された培養株を集め、50mMトリス塩酸(PH8.
0)、10mM EDTA、20μg/mlのリソゾームで最終的な容量が50mlになるまで懸濁し
た。細胞崩壊の後、懸濁液をH2Oで1:1に希釈し、25mMトリス塩酸(pH8.0)で
平衡化したDEAE-セファロースカラムにかけた。この工程は、Q-セファロースカ
ラムを代えて行うこともできる。蛋白質を、同じバッファー中のNaCl溶液の0-0.
5Mの濃度勾配により溶出させた。17kDaの蛋白質を含むフラクションを蓄え、そ
のPHを酢酸で6.8に調節した。金属親和性カラムクロマトグラフイー(インビト
ロゲン、Invitorogen)を、Ni++カラムを0.3-0.5Mの濃度のNaClの25mMトリス塩
酸(pH 8.0)中溶液で平衡化することにより行った。蛋白質をカラム(3mlのベ
ッド容量)にかけ、同じバッファーで洗浄し、結合したFXaIを、0.3Mイミダゾー
ルの同じバッファー中溶液で溶出させた。SDS-PAGE分析は、17kDaの蛋白質バン
ドが、発現された主な蛋白質であること
を示した。蛋白質の純度は、約70-80%であると評価された。
この部分的に純粋な蛋白質を、20mM NaPiバッファー、100mM NaCl、0.1%の界
面活性剤(商標;Hecameg)(Vegatec,Ville-Juife,France),pH 6.6中で、エン
テロキナーゼ(Biozyme,Great Britain)で37℃、40時間切断にかけた。蛋白質
のエンテロキナーゼに対する比率は夫々200μg:1μgであった。切断の効率
は、SDS-PAGE分析により95%と決定した。17kDaの蛋白質バンドは、クマシンブル
ー染色により視覚化された約15kDの分子量に対応する新しい蛋白質バンドをカバ
ーした。切断後、切断された蛋白質を、20mM NaPi,10OmM NaCl,pH 6.6に対して
透析し、界面活性剤および切断された拡張ペプチドを除去した。
FXa阻害比活性を、エンテロキナーゼによる切断の前および後に色素生産性ア
ッセイ(例2に記載)でアッセイした。切断前の比活性は、1000-1200 mu/mq蛋
白質であり、切断後の比活性は、4000-4500 mu/mg蛋白質であった。切断された
蛋白質を含む溶液から拡張ペプチドをクロマトグラフィーにより除去した後の比
活性は、8000mu/mg蛋白質と同じくらい高かった。
切断された蛋白質について行われたN末端アミノ酸の配列決定により、切断さ
れた蛋白質の最初の9つのアミノ酸が、図10に示したFXaIの最初の9つのアミ
ノ酸(Tyr26からpro34まで)と全く同一であることが確認された。
APTTを2倍にする原因となった成熟したFXaIの濃度は、12.2μg/mlであっ
た。
II. プラスミドpHSOH-11
(エンテロキナーゼに代えて)ヒドロキシルアミンを使用して成熟したFXaIを
得るために、プラスミドPHSHI-6中に存在するFXaIをコード化するDNA配列を、As
n-Glyをコードする2つの追加のトリプレットを拡張ペプチド中のLys残基(拡張
ペプチドのC末端残基)の後ろに導入することにより操作した。引き続き、FXaI
の47位のAsn残基(図10の72位)をpro残基で置換し、FXaIコード領域内の
ヒドロキシルアミン感受性部位を除去した。
さらに、以下のヌクレオチドの、FXaIのアミノ酸配列に影響しない変更を行っ
た(図10に示す塩基配列と比較)。
結果として生じたプラスミドをプラスミドpFSOH-11と命名した(図14)。新
しく導入されたAsn-Gly部位を、ヒドロキシルアミンで切断して、Gly-Tyr1-Glu2
で始まる成熟したFXaIを得ることができる。
アンピシリン耐性が確認され、Met-His-His-His-His-
His-His-Gly-Thr-Asp-Asp-Asp-Asp-Lys-Asn-Gly-FXaIをコード化するpFS0H-11を
、E.coli菌株4300に導入し、ATCCにATCC受託番号第69582号として1994年3月11日
に寄託した。
この宿主−プラスミド系を100μ/mlのアンピシリンでO.D.660=0.8まで懸濁
したLB培地中で増殖させた。蛋白質の生産を、温度を15分間で42℃まで変化
させることにより誘発した。次いで、この温度を40℃まで低下させ、さらに系
を90分間培養した。
SDS-PAGE分析は、コントロールの培養株ではなかった、新しい14-16kDa新しい
蛋白質バンドを示した。
例11: FxaI二量体蛋白質の発現
プラスミドpMLK-XaI-D-11”m”(図15)に達するプラスミドの系を組み立て
た。プラスミドpMLK-XaI-D-11”m”は、適当なE.coli宿主細胞の形質転換で、
成熟したFXaI生産に有用なFXaI二量体蛋白質の検出可能な発現を可能にした。
自己相補性のために変異(または欠失)を防止することを目的として、cDNA合
成(図4)により調製したFXaIフラグメント中に存在する代替のコドンを用いた
合成オリゴヌクレオチドの構築により、FXaIをコード化するDNAフラグメントを
組み立てた。例4で説明したように調製したFXaIフラグメントはFXaI-11”m”と
命名したのに対して、この合成FXaIフラグメントをFXaI-11”m”-Syと命名した
。
FXaI二量体をコード化するプラスミドpMLK-XaI-D-11”m”の構造を図15に示
す。
アンピシリン耐性が確認され、且つ、FXaI二量体をコード化するプラスミドpM
LK-Xal-D-11”m”を、E.coli菌株4300に導入し、ATCCにATCC受託番号第69581号
として1994年3月11日に寄託した。
プラスミドpMLK-XaI-D-11”m”を、易熱性リプレッサーCI857を含むE.coli菌
株4300を形質転換するために使用した。42℃での誘発で、形質変換された細胞は
、コントロールの培養株では見られない、約28kDの分子量を有するポリペプチド
の発現により見出された。約28kDのポリペプチドは、細胞ペレットの溶解の後に
得られた不溶性フラクションから得られた。この約28kDのポリペプチドは、組換
え細菌の細胞抽出物中の主な蛋白質であり、クマシンブリリアントブルー染色に
より視覚化された。この二量体を、臭化シアン(CNBr)により切断し、成熟した
FXaIを得た(例12参照)。
例12: FxaI二量体を含む包含体からの活性な組換えFXaIの回収
プラスミドpMLK-XaI-D-11”m”(図15)はFXaIの二量体バージョンをコード
化する(例11)。この二量体からの活性なFXaIの回収には2つのルートがある
。
I.CNBrにより二量体を切断し、次いで得られた分子をリフォールディングす
る。
II.二量体をリフォールデイングし、次いで、臭化シアン(CNBr)により二量
体を切断する。
ルートI
A.CNBrによる切断
濡れた包含体(IB)-0.3g-を6M塩化グアニジン(GuCl)10倍容量、100mMトリ
ス塩酸(PH 8.5)に溶解し、1時間撹拌し、水に1:10に希釈し、遠心した(So
rvall,12,000rpm,30分)。ペレットを水で洗浄し、遠心(Sorvall Hi-speed cen
trifuge,12,000 rpm,30分)し、10mg/mlの蛋白質濃度で85%フマル酸6ml中に溶
解させた(超音波処理を均一な溶液を得るために使用した)。100モルCNBr/モル
のMet残基、すなわち、400モルCNBr/モル蛋白質を覆いの下で添加した。一晩室
温でインキュベートした後、フマル酸をロトバップ(Rotovap)中でエバポレー
トし、乾燥された蛋白質をメタノールで5回洗浄し、再びエバポレートした。残
渣を水に溶解し、凍結乾燥した。
B.リフォールデイング
切断した蛋白質(重量23mg)を6M GuClの20mMトリス塩酸(PH 8)中溶液2.3ml
(100倍容量)、50mM NaCl、1mM EDTA(バッファーTNE)を溶解し、40mM GSHを
添加し、PHを8.0に調製した。一晩インキュベートし、10mM GSHを補充し、追加
のインキュベート(1時間)を行い、TNE/6M GUClに1:2.5に希釈した後、溶液を
さらに0.2mM GSSGのバッファーTNE中溶液(GSH最終濃度1mM)に希釈し、リホー
ルディング/再酸化を開始した。4℃でのインキュベーションを66時間行い、20
mMトリス塩酸(PH8.0)に対しての最後の透析の後、結果として得られた成熟し
たFXaI(75μg/ml)を、FXa阻害活性について試験した。同時に、サンプル
を、SDS-PAGE分析のために減圧下でのエバポレーション
(Speed-Vac concentration,Savant)により濃縮した。
C.結果
減圧条件下でのSDS-PAGEによれば、切断の効率は70%を超え、二量体を表す約2
8kDのバンドは2つに分かれ、約14kDのシングルバンドが得られた。その他の不
純物が、ゲル上の全ての蛋白質の<10%に相当した。結果として得られた、切断さ
れ、リフォールドされた生成物を、特異的FXa阻害活性について色素生産性アッ
セイ(例2で説明した)で試験して、その活性を1900mU/mgと決定した。
リフォールディング後の切断された二量体について行われたN末端アミノ酸の
配列決定を行い、切断された生成物の最初の5つのアミノ酸が、FXaIの最初の5
つのアミノ酸(図10に示したTyr26からpro30まで)と全く同一であることが確
認された。
ルートII
A.リフォールディング
濡れた包含体(重量100mg)を、6M GuCl(バッファーTNE)3mlに溶解した。還
元のため、20mM GSHを添加し、PHを8.0に調節した。1時間のインキュベーショ
ンの後、リフォールディング/再酸化を、0.2 mM GSSGのTNEバッファー中溶液(
最終濃度GSH 1mM,GuCl 0.6M)で(A)1:167または(B)1:100の希釈度に希釈
して開始した。
4℃で一晩インキュベートし、20mMトリス塩酸(pH8.0)、20mM NaClに対して
透析し、遠心(sorvall Hi-speed centrifuge,12,000rpm,30分)した後、リフ
ォールドさ
れた蛋白質を上澄み中に検出した。リフォールドされた蛋白質を、例2で説明し
た色素生産性アッセイでFXa阻害活性についてアッセイした。リフォールドされ
たFXaIの蛋白質濃度は(A)15μg/mlおよび(B)32μg/mlであり、それらの特異
的FXa阻害活性は(A)1720mu/mgおよび(B)1572mu/mgであった。
B.CNBr切断
リフォールドされた両方の蛋白質(AおよびB)を水に対して透析し、凍結乾燥
した。400モルのCNBr/モル蛋白質を、85%フマル酸に溶解した135μgのAおよび2
88μgのBに添加した(すなわち、夫々CNBr 325μgおよび654μg)。一晩室温
でインキュベートした後、フマル酸をロトバップ中でエバポレートし、乾燥され
た蛋白質をメタノールで5回洗浄し、再びエバポレートした。残渣を水に溶解し
、例2で説明した色素生産性アッセイでFXa阻害活性についてアッセイした。
C.結果
FXaIの特異的活性の結果は次の通りであった。
A:2470 mu/mg;蛋白質濃度85μg/ml
B:4700 mu/mg;蛋白質濃度83μg/ml
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C07K 14/815 9358−4B C12P 21/08
C12N 1/21 9152−4B C12N 9/99
C12P 21/02 9455−4C A61K 37/02 ACB
21/08 9455−4C 37/54 AGA
// C12N 9/99 9455−4C 37/52 ADY
(C12N 1/21
C12R 1:19)
(C12P 21/02
C12R 1:19)
(72)発明者 ワーバー、モシェ・エム
イスラエル国、テル・アビブ、バーラ・ス
トリート 36
(72)発明者 ジーロン、エリシャ・ピー
イスラエル国、ベット・ダガン、ミッシュ
マー・ハシバ、エリヤフ・シャミア・スト
リート 7
(72)発明者 レバノン、アビグドア
イスラエル国、レホボット、モーリバー・
ストリート 8
(72)発明者 ガイ、レイチェル
イスラエル国、レホボット、ミラー・スト
リート 23
(72)発明者 ゴールドラスト、アリー
イスラエル国、ネズ ― ジオナ、ヒミン
ヤン・ハリション・ストリート 21
(72)発明者 リグビ、メイアー
イスラエル国、レホボット、ハバロン・ハ
ーシュ・ストリート 18
(72)発明者 パネット、アモス
イスラエル国、エルサレム、ハラブ・シュ
リム・ストリート 11
(72)発明者 フィシャー、メイアー
イスラエル国、レホボット、ゴロデスキ・
ストリート 12