【発明の詳細な説明】
エチレン−プロピレン共重合体およびその製造方法
この発明は、エチレンとプロピレンとの共重合体により形成されたエラストマ
ー、及び、メタロセン化合物及びアルモキサン(alumoxane)触媒によりこれを
製造する方法に関する。
エラストマーの特性すなわちゴム様の弾性特性を有する共重合体が、エチレン
とプロピレンとから製造されてきた。
エラストマーの重要で特徴的な特性は、そのゴム様の挙動であり、特にそのよ
うな特性の作業温度範囲が広いこと、あるいは別に、作業条件における及びその
エラストマーの原料物質すなわちモノマーにおける変化と共にエラストマー特性
の制御されかつ所望された変動が広いことである。エラストマーの添加剤を変え
ることの他に、主成分すなわちエラストマーの特性を制御することによっても、
所望の目的が達成される。そして、そのエラストマーの特性の制御は、反応条件
(温度、圧力、媒体、反応器のタイプ等々)を変化させることの外に特に、重合
プロセスにおいて使用される触媒を変えることにより、達成されることができる
。
共重合体は異なる触媒系を用いて製造されることができる。例えば、周期律表
のIV-V1亜族(subgroup)に属する遷移金属、特にチタン、ジルコニウム及び/
又はバナジウムの化合物からなる主触媒と、周期律表I−III主族(major group
)に属する金属の有機化合物、特に有機アルミニウム化合物により形成される共
触媒とにより形成された触媒系を使用することによって、エチレンとプロピレン
とが共重合されてエラストマーの生成物となる。いくつかの他の触媒系成分例え
ば電子供与性化合物、及び異なる種類の媒体のように重合反応において要求され
た他の添加剤が使用されることもできる。
(塊状重合における)モノマーに加えて、反応媒体が、そっくりそのままある
いは部分的に反応生成物中に組み込まれるであろう化合物、あるいは分子量調整
剤(連鎖移動剤)となり得る。分子量及びその分布を調整するのに適していたの
で、水素は、生成したポリマー中に好ましくないいかなる原子をも導入しないと
いう重要な利点の故に、重合反応に導入されることのできる連鎖移動剤である。
明らかに、非常に多くの他の添加剤が、生成物の種々の特性を改善するという目
的に、使用され得る。
エチレン−プロピレンエラストマーの製造が、主として二成分の触媒系を使用
して通常に行われている一方、非常に多くのそのような成分が今日実際的に知ら
れており、又、その触媒組成物が時には複数の段階及び複雑な手順を含む広範な
方法により調製されることができる。チーグラーナッタ触媒の典型的な組成は、
公開された特許US3,789,036及びDE2,505,825に、開示さ
れている。
主触媒組成物の本質的な成分は、メタロセンと称される遷移金属の化合物であ
り得る。そのメタロセンにおいては、金属が、それに結合された複数の芳香環を
、典型的にはハロゲン基と同様に置換されることのできる炭化水素を有する。置
換基は、又、ヘテロ原子を含んでいても良い。金属に結合するハロゲン基は、典
型的には、単純なハロゲン原子、好適には塩素であり、ハロゲン原子の数は、そ
の遷移金属が四価の状態であるならば2である。典型的には、遷移金属は、チタ
ニウム又はジルコニウムであり、芳香環は、5員環であり、二つの環が一つの遷
移金属に結合する。最も普通には、前記環は、ビス−ペンタジエニル誘導体又は
ビス−インデニル誘導体であり、それらは、上述したように置換されることがで
きる。そのような主触媒と共に使用される共触媒は、2又はそれ以上の数のアル
ミニウム原子が酸素原子を介して互いに結合し、かつ複数のアルミニウム原子が
典型的には炭化水素基、有利にはアルキル基である種々の置換基を有するところ
の、アルモキサン化合物である。
共重合体は、原理的には、エチレンとプロピレンとから製造されるが、付加的
に、複数の不飽和結合を有する化合物、主にポリエン炭化水素、特にジオレフィ
ンが使用されることができる。そして、不飽和結合がポリマー鎖内に残存する。
その不飽和結合を有するポリマーは、所望に応じて化学作用のある他の基が化学
結合によりポリマーに結合されているとき、あるいは、所望に応じて架橋し又は
加硫しているときに、より増大した、あるいはより低下した反応性を有していて
有益であり得る。なお、後者は、種々の応用ないし適用に最も好適な構造にする
ことを目的とするゴムの処理のための、従来からの伝統的かつ典型的なプロセス
である。ポリエンの割合は、少なくて0.5〜2モル%である。
一般に、ゴム弾性のエチレン−プロピレン共重合体中のエチレン単位の割合は
、比較的に高く、とはいっても80%を越えることはまれであり、95%を越え
ることは極めてまれである。共重合体の分子量は典型的にはむしろ低く、共重合
体のゴム弾性特性が望ましく維持されているならば、約10,000g/モルの
場合に理論的な最大を以てしても数千を越えることはない。
EP特許出願第223,394号は、ビス−シクロペンタジエニル−Zr−ジ
クロリド及びメチルアルモキサンにより形成された触媒系を使用することによる
、低分子量(数平均分子量が1800〜4400g/モル)であるゴム弾性のエ
チレン−プロピレン共重合体の製造を開示する。そのようなポリマーの極限粘度
は、135℃のテトラリン中で決定された0.025〜0.6dl/gである。
該生成物中のエチレン含量は20〜80%であり、実施例では54〜69%であ
る。
EP特許出願第273,654号は、エチレンと非共役ジエンとから形成され
た不飽和共重合体に関する。この不飽和共重合体の製造方法においては、プロピ
レンも可能なコモノマーであるとされている。が、実験的な裏付けは存在しない
。使用された触媒系は、ビス−シクロペンタジエニル−Zr−ジクロリド及び
メチルアルモキサンとにより形成された組成物である。生成物中のエチレン含量
は高く、96〜99%の範囲である。そして残部は本質的には少なくともジエン
である。生成物の分子量範囲は、少なくとも500、有利には10,000以上
、さらには2,000,000g/モルにまで及ぶというように、広く開示され
、そして、実施例によると60,000〜120,000g/モルの範囲である
。生成物の粘度値は与えられていない。
最近、ビス−シクロペンタジエニル−Zr−ジクロリドとメチルアルモキサン
とから形成された触媒系を使用すると、エチレンとプロピレンと任意成分である
ジエンとの共重合体が製造されることができ、その共重合体は、低溶融粘度値及
び膨潤を起こさせる脂肪族炭化水素溶媒に対する溶解性に起因するそのゴム弾性
特性、易流動性、優れた成形加工性を有し、該生成物は高分子量であることによ
って特徴付けられる、という予想外の知見が得られた。重量平均分子量は、10
,000〜250,000g/モル、有利には40,000〜90,000g/
モルである。該生成物は狭い分子量分布MWD=Mw/Mnを有し、有利にはほん
の2.0〜2.5である。その極限粘度は、共重合体中のエチレン含量が約65
重量%であるときには、デカリン中135℃で、0.8dl/gである。その極
限粘度数は、例えばロウダUD15加熱浴(Lauda UD 15 heating bath)及びシ
ョットタイマ(Schott timer)からなる装置及びウベローデキャピラリーを使用
して決定される。極限粘度数を決定しようとされる試料が30mg秤量され、5
0mlのデカリンに135℃で溶解され、極限粘度数が、Solomon,O.F.,I.Z.,J.
Appl.Polym.Sci.,6(1962),p.683で提案された一点測定法に基づいて計算され
た。
生成物の特性を特徴付ける重要な因子は、ムーニー粘度MV、ガラス転移点T
g、及び誘電損率tanδmaxであり、ムーニー粘度MVは生成物の成形加工性
を特徴付け、ポリマー溶融から決定される。低温衝撃力のような低温特性に相関
するガラス転移点Tg及び誘電損率tanδmaxは、DTMAのような熱分析法
により決定されることができる。以下の実施例及び比較例により、この発明に
よるエラストマーのこれらの値が比較例における値と釣り合い、この点において
該生成物の特性が他のタイプの触媒系を使用することにより得られたエラストマ
ーの特性と完全に等価であることが、示される。
生成物中のエチレン含量は高くて、65%以上であり、有利には80〜90重
量%である。まだその上に、生成物はゴム弾性であり、種々のモノマーが分子鎖
中に均一に分散している。すなわち、エチレンのみからなるブロックが形成され
ず、共重合体ブロックと混合されている。この均質性は、少なくとも三個の同じ
モノマー単位からなるホモポリマーブロック中に組み込まれていないモノマー単
位の割合を特徴付けるランダムインデックス(Random Index,RI)値から理解さ
れることができる。このインデックスは、C13NMRスペクトル:
(PPE+EPE+PEP+EEP)/(PPP+PPE+EPE+PEP+EEP+EEE)
(ただし、E及びPはそれぞれエチレンモノマー単位及びプロピレンモノマー単
位であり、PPE、EPE等はポリマー生成物中のトライアッドモル分率を示す
。)から得られるトライアッド分布から計算される。チタニウムやバナジウムを
ベースにした触媒により得られたエラストマーにおいては、コモノマー単位のこ
の分布は、比較例の表中にRI値により示されるようにホモポリマーブロックの
数が大きいということで示されるように、明らかにより不均一である。
共重合体は、媒体が液状ポリマーすなわち液状プロピレンあるいは炭化水素溶
媒、有利にはヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族パラフィンのいずれかであり得る
スラリープロセスにより製造される。重合温度は、むしろ低くて、典型的には5
0℃以下であり、有利には0〜30℃である。気相法重合が採用されることもで
きる。その気相法重合によると、所望量のプロピレン及び任意成分であるジエン
がガス状のエチレンと、例えば流動床反応器中で、液状小滴の形で、混合される
。というのは、比較的に低い温度がここで使用されなければならないからである
。
使用される触媒は、ビス−シクロアルカジエン化合物と遷移金属とである。該
遷移金属は、有利にはチタン又はジルコニウムである。該シクロアルカジエンは
、有利には5員環化合物、すなわち、メチル基、エチル基、プロピル基などのア
ルキル基のような炭化水素基で置換されることのできるシクロペンタジエン、あ
るいは、例えばシリル基あるいはシラニレン基のようなヘテロ原子を含有する炭
化水素基で置換されることのできるシクロペンタジエンである。シクロアルカジ
エンとしてインデンも含められる。
使用される共触媒は、アルモキサン化合物である。メチルアルモキサンが好適
であるとされてきたが、一方、他のより複雑なアルモキサン化合物、例えばアル
キルアルモキサン及びそれらの重合した化合物も使用されることができる。
メタロセン化合物及びアルモキサンが、ジルコニウムに対するアルミニウムの
比が1,500〜5,000、有利には3,000〜4,200になる量で触媒
を調製するために、使用された。
以下においては、例は、この発明による触媒の使用について与えられ、同様に
、比較例は従来のTiベースの触媒系あるいはVベースの触媒系で得られたエチ
レン−プロピレンエラストマーに関する。
例1
6.9mgのビス−シクロペンタジエニル−Zr−ジクロリド触媒が秤量され
て酸素含量が15ppm以下に調製された窒素チャンバー中のフラスコ内に装入
され、トルエンに溶解された。該溶液はそのフラスコから金属漏斗に移し替えら
れ、その金属漏斗中に4,200mgのメチルアルモキサン(MAO)が、窒素
雰囲気の小室内に約半年間貯蔵された後に、移された。そのアルモキサンはSche
ring AGによる30重量%トルエン溶液であった。混合の結果、Zrに対するA
lのモル比(Al-to-Zr mole ratio)は3,000になった。漏斗が、永久的に
(per-manently)2lの重合反応器に取り付けられた。反応器は、窒素でパージ
する前に、真空引きされた。そして、碇型の攪拌機が取り付けられた。反応器が
−5.0℃に冷却され、430gの液状プロピレンが、真空にされた反応器内に
導入された。反応温度が次に15℃に上昇され、そして触媒と共触媒が互いに7
分間接触し続けていたところの触媒系が、圧縮窒素ガスと共に漏斗から反応器へ
、フラッシュされた。エチレンが、反応器内に10.7バール(ゲージ圧)の圧
力で、導入された。攪拌機の回転速度は、一貫して500r/分であった。反応
温度が、反応器の加熱ジャケット中で水−エタノール混合物を循環させることに
よって、調整された。一方、反応圧力は、ソレノイドバルブで自動的に調整され
た。30分間の反応の後に、未反応プロピレンが蒸発除去され、74gの生成物
すなわちエチレン−プロピレン共重合体が得られた。この生成物の特性が表1に
示される。
例2
6.0mgの触媒が使用され、460gのプロピレンが反応器に導入された外
は、前記例1と同様にして、重合が行われた。反応器における絶対圧は11.1
バールであり、58gの生成物が得られた。この生成物の特性が表1に示される
。
例3
7.9mgの触媒が使用され、470gのプロピレンが反応器に導入された外
は、前記例1と同様にして、重合が行われた。反応器における絶対圧は11.4
バールであり、50gの生成物が得られた。この生成物の特性が表1に示される
。
例4
6.4mgの触媒が使用され、5,600mgの共触媒が添加され、これによ
ってZrに対するAlのモル比(Al-to-Zr mole ratio)が4,200にされた
外は、前記例1と同様にして、重合が行われた。反応器における絶対圧は11.
4バールであり、49gの生成物が得られた。この生成物の特性が表1に示され
る。
例5
3.0mgの触媒が使用され、1,400mgの共触媒(10重量%のMAO
溶液として)が添加され、これによってZrに対するAlのモル比(Al-to-Zr m
ole ratio)が3,300にされ、350gのプロピレンが反応器に添加された
外は、前記例1と同様にして、重合が行われた。その容積がこの例では1lであ
るところの反応器中の絶対圧は15.0バールであり、32gの生成物が得られ
た。この生成物の特性が表1に示される。
例6
反応器の容積が0.5lであり、200gのプロピレンがその反応器内に導入
され、1mgの触媒が使用され、290mgの共触媒(10重量%のMAO溶液
として)が添加され、これによってZrに対するAlのモル比(Al-to-Zr mole
ratio)が2,000にされた外は、前記例1と同様にして、重合が行われた。
反応器内の温度が29℃にされ、その絶対圧は18.9バールであり、25分間
の処理後に10gの生成物が得られた。この生成物の特性が表1に示される。
例7
反応器の容積が1lであり、350gのプロピレンがその反応器内に導入され
、3mgの触媒が使用され、1,400mgの共触媒(10重量%のMAO溶液
として)が添加され、これによってZrに対するAlのモル比(Al-to-Zr mole
ratio)が2,000にされた外は、前記例1と同様にして、重合が行われた。
反応器内の温度が14℃にされ、その絶対圧は19.0バールであり、20分間
の処理後に10gの生成物が得られた。この生成物の特性が表1に示される。
例8
プロペラ型攪拌機を取り付けた0.5l重合反応器が真空引きされ、窒素でパ
ージされた。次いで、207gのヘプタンが反応器内に導入され、220mgの
MAO溶液(Schering AGによる10重量%のトルエン溶液であり、窒素雰囲
気下の小室内に約半年間貯蔵されていたもの)が反応器内に添加され、反応器へ
のモノマー供給が開始された。エチレンの流速は2.0l/分であり、プロピレ
ンの流速は0.2l/分であった(ガス流速はNTPと参照される)。いわゆる
半流動法と称される方法に従った全重合プロセス中において、ガス流速が一定に
保持された。反応開始後5分が経過した後に、0.6mgのビス−シクロペンタ
ジエニル−Zr−ジクロリドが添加され、これによってZrに対するAlのモル
比(Al-to-Zr mole ratio)が2,000になった。反応器中の温度は50℃で
あり、絶対圧は5.0バールであった。反応圧力が、ソレノイドバルブで自動的
に調整され、温度が、反応器の加熱ジャケット中で、温度調節された水を循環す
ることにより、調整された。攪拌器の攪拌速度は800r/分であった。重合時
間は10分であり、その重合時間後に、8,8gの生成物が得られた。この生成
物の特性が表1に示される。
例9
プロピレンの流速が0.05l/分であることの外は、前記例8と同様にして
、重合が行われた。生成物の収量は7.9gであった。その生成物の特性が表1
に示される。
例10
プロピレンの流速が0.4l/分であることの外は、前記例8と同様にして、
重合が行われた。生成物の収量は9.7gであった。その生成物の特性が表1に
示される。
比較結果を得るために、チタンベースの触媒系及びバナジウムベースの触媒系
を使用して一連の反応を行い、エチレンとプロピレンとの共重合によりゴム弾性
の生成物を得た。連鎖移動剤として作用する水素が重合中に反応混合物に添加さ
れることの外は、上記例におけるのと同様の重合手順及び装置が使用された。水
素を添加する段階はこの発明に従った触媒系を使用して行われた反応には含めら
れなかった。
チタン触媒系は、MgCl2担体上のTiCl4主触媒とトリエチルアルミニウ
ム共触媒とからなり、その触媒系においては、Zrに対するAlのモル比(Al-t
o-Zr mole ratio)が200であり、チタン含量が7.2重量%であった。バナ
ジウム触媒系は、VOCl3とジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)とか
らなり、その触媒系においては、塩素に対するバナジウムのモル比(V-to-cl mo
le ratio)は4,200であった。比較例の結果は表2に示される。