JPH0841744A - ポリアミド異収縮混繊糸 - Google Patents

ポリアミド異収縮混繊糸

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JPH0841744A
JPH0841744A JP14311694A JP14311694A JPH0841744A JP H0841744 A JPH0841744 A JP H0841744A JP 14311694 A JP14311694 A JP 14311694A JP 14311694 A JP14311694 A JP 14311694A JP H0841744 A JPH0841744 A JP H0841744A
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shrinkage
yarn
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fiber
polyamide
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JP14311694A
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Kenji Kanekiyo
健治 兼清
Kenji Sonoda
健二 薗田
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 布帛製造工程における熱セットによる風合の
硬化がなく柔軟でまろやかな風合と良好なふくらみ感を
有する編織物を得ることを可能とする。 【構成】 高収縮繊維成分がポリヘキサメチレンアジパ
ミドをベースとし、ポリカプラミドを15〜40モル%
共重合した共重合ポリアミドからなるマルチフィラメン
ト糸であって、低収縮繊維成分が単糸繊度1.0デニー
ル以下の極細繊維であって、力学的損失正接(tan δ)
のピーク高さ(tan δ)max とピーク温度(Tmax
〔℃〕)がTmax ≦−320(tan δ)max +132を
満足し、且つ、20℃,60%RHにおける初期モジュ
ラスが15〜40g/dであるポリアミド異収縮混繊
糸。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は衣料用のポリアミド繊維
に関し、更に詳しくは、本発明はスキーウェアなどのス
ポーツファション向けの織物に適したポリアミド高級素
材に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリアミド繊維(ナイロン繊維)はその
力学特性が優れていること、特に摩擦や屈曲に対する耐
久特性が優れていること、染色後の発色性が優れている
ことから、衣料においては女性用のインナーウェア、パ
ンティーストッキング、水着、スキーウェアなどの比較
的耐久性を要する分野に多く使用されている。近年のフ
ァッションの高度化に伴い、衣料用ポリエステル繊維お
よびポリアミド繊維の風合や発色性に様々な要請が起こ
り、「新合繊」という分野が形成されている。
【0003】この新合繊の主流をなすものに異収縮混繊
糸がある。これは熱に対する収縮の異なる複数の成分か
らなるマルチフィラメント糸のことで、例えば、特開昭
55−57045号公報や、特開昭55−76136号
公報に示されるような、ふくらみ感のあるシルキーな布
帛が得られるのが特徴である。近年では、ポリエステル
異収縮混繊糸の一成分に極細糸が用いられ、ピーチスキ
ンと呼ばれる柔軟で、まろやかなタッチの布帛が出現し
て好評を博している。このようなポリエステルの「新合
繊」は婦人のブラウスに代表されるアウター分野に向け
られている。このような新合繊時代の中で、ポリアミド
繊維の強い分野では、ファッション性が重視されるスキ
ーウェアを中心とするスポーツ衣料用途に、このような
異収縮混繊糸の出現が強く望まれている。
【0004】特公平1−23577号公報には、ポリカ
プラミド(ナイロン6)からなり従来の製法、すなわち
低速紡糸−延伸法で得られる単糸1デニール以下の低収
縮成分と、ポリカプラミド(ナイロン6)にポリヘキサ
メチレンアジパミド(ナイロン66)を一部共重合した
ポリアミドからなる高収縮成分とからなるポリアミド異
収縮混繊糸が提案されている。しかし、この先行技術に
記載の異収縮混繊糸は、高収縮成分に使用されている共
重合ポリアミドの融点が通常のポリカプラミドより更に
低い175〜190℃(例えば、以下の実施例に示し
た、ε−カプロラクタムに対してモル比0.17でナイ
ロン66塩を共重合したナイロン6共重合ポリマーの融
点は、175℃)であるために、布帛とした後に必ず通
過する170〜180℃での熱セット工程で融着を起こ
し、せっかくの風合が硬化しやすいという欠点を有す
る。そのために実用的な使用には、極めて大きな制約が
ある。
【0005】また、低収縮糸が、従来の製法によって得
られるポリカプラミド(ナイロン6)マルチフィラメン
ト糸であり、実施例からも明らかなように沸水収縮率が
11.2%と高いものである。このことのために、編織
物の染色工程などの加工工程における熱収縮によって、
原糸の柔軟性がその分失われ、布帛の風合が損なわれて
しまう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、編織
物にした時に柔軟でまろやかな風合と良好なふくらみ感
を示し、美しい発色性と優れた耐久的特性を有し、且
つ、布帛製造工程での熱セットによって風合硬化を引き
起こすことのないポリアミド異収縮混繊糸を提供するこ
とにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、本発明の
目的達成のために、鋭意検討した結果、低収縮繊維成分
として柔軟なポリヘキサメチレンアジパミドの極細繊維
を用い、高収縮繊維成分として、ポリヘキサメチレンア
ジパミドにポリカプラミドを一部共重合したポリアミド
糸を使用することが有効であることを見出し、本発明を
完成した。
【0008】すなわち、本発明に従えば、低収縮成分と
高収縮繊維成分とからなるポリアミドマルチフィラメン
ト糸であって、該低収縮繊維成分が、単糸繊度が1.0
デニール以下の繊維であり、かつ、力学的損失正接(ta
n δ) のピーク高さ(tan δ)max 、とピーク温度Tma
x (℃)が Tmax ≦−320(tan δ)max +132 80≦Tmax ≦95 の両方の関係を満足し、20℃及び60%RHにおける
初期モジュラスが15〜45g/dであり、繊維の中心
部における複屈折率(Δn)が37×10-3〜50×1
-3であって、しかも沸水収縮率が5.5%以下という
性質を有し、該高収縮繊維成分が、カプラミド繰返し単
位を15〜40モル%共重合したポリヘキサメチレンア
ジパミドからなり、複屈折率が45×10-3〜60×1
-3でかつ沸水収縮率が15〜30%であることを特徴
とするポリアミド異収縮性混繊糸が提供される。
【0009】本発明の低収縮繊維成分は、単糸繊度が
1.0デニール以下の極細糸でなければならない。単糸
繊度が1.0デニールを越えると編織物にした時に、柔
軟性でまろやかな風合を高度に発現させることがしにく
い。また、単糸デニールが0.3デニール未満である
と、あまりに細いために鮮明な発色が損なわれる。
【0010】更に、本発明の低収縮繊維成分は、20℃
及び60%RHにおける初期モジュラスは15〜45g
/dの繊維である。該初期モジュラスが15g/d以上
であるためには、繊維の中心部における複屈折率(Δ
n)が37×10-3以上であることが必要である。該屈
折率(Δn)が37×10-3未満であると、温度上昇あ
るいは吸湿に伴う微細構造の変化が大きくなる傾向があ
り、強度の低下や寸法安定性の低下を生じる。
【0011】一方、初期モジュラスが45g/dを越え
ると繊維が剛直になる傾向があり、本発明混繊糸の特徴
である柔軟性が損なわれてしまう。
【0012】上記に加えて、本発明の低収縮繊維成分
は、沸水収縮率が5.5%以下でなければならない。沸
水収縮率が5.5%を越えると、編織物の染色などの後
工程において収縮による風合の変化によって、得られる
布帛のまろやかな風合が損なわれてしまう。
【0013】一般にナイロン繊維の染色性は、酸性染料
による染色の場合は、アミノ末端基、および、微細構造
によって、また分散染料による染色の場合は、繊維微細
構造によって左右され、特に均染性については微細構造
およびそのばらつきの影響が大きく、染斑を生じ易い。
【0014】ナイロン66の均染性を向上させ、製品に
染斑を生じさせないために、本発明の低収縮成分におい
ては、(tan δ)max とTmax が 80≦Tmax ≦−320(tan δ)max +132 なる関係を満足することが必要である。
【0015】通常の紡糸−延伸法によって得られる従来
のナイロン66繊維の微細構造は、例えば延伸倍率等の
違いによってかなり変化するがその変化は(tan δ)ma
x とTmax の両特性値の関係で表わすと Tmax ≧−320(tan δ)max +140 の範囲に限られる。
【0016】なお、従来の実用的な衣料用ナイロン66
繊維のTmax は110〜140℃の間にあり、(tan
δ)max は0.09〜0.15の間にある。これに対し
て Tmax ≦−320(tan δ)max +132 を満足させると、微細構造の経時変化が少なく、かつ均
染性が著しく向上するほか、より低い温度でも十分な染
色性が得られる。
【0017】本発明の低収縮成分フィラメント糸の(ta
n δ)max の値は大きいほど染色性や柔軟性が向上する
が、寸法安定性や微細構造の熱安定性が低下する。従っ
て(tan δ)max は0.15以下であることが好まし
い。またTmax については、染色温度を低下させるため
には低いほど良く一般には、Tmax ≦95℃であること
が好ましい。Tmax の下限は特に設ける必要はないが、
本発明では80℃以上である。本発明の高収縮繊維成分
は、カプラミド繰返し単位を15〜40モル共重合した
ポリアミド繊維を用いる。該共重合比が15モル%未満
であると、いかなる紡糸延伸方法を採用したとしても、
沸水収縮率を15%以上とすることが出来ず、このこと
のために上記低収縮成分との混繊糸は編織物とした後の
染色などの加工工程における熱処理によって、両成分の
熱収縮差に基づく良好なふくらみ感を損なう傾向があ
る。
【0018】また前記共重合比が40モル%を越える
と、染色時にタンニン処理などのフィックス処理を施し
ても染色堅牢度が悪く、実用的用途上適さなくなる。共
重合ポリアミドの融点もポリカプラミドよりも低くなる
ため、編織物を製品布帛とするための最終の仕上げセッ
トで布帛が風合硬化を引き起こしてしまう。また、本発
明の高収縮成分の繊維の、複屈折率は45×10-3〜6
0×10-3である。この複屈折率が45×10-3未満で
あると、伸度が60%を越え、沸水収縮率15%以上を
満足できなくなる。また、複屈折率が60×10-3を越
えると延伸過多となり、初期モジュラスが大きく、混繊
糸とした時に風合いが悪くなる上に、延伸工程での糸切
れ、毛羽が多発を引き起こす。
【0019】さらに、本発明の高収縮繊維成分は、その
沸水収縮率が15〜30%でなければならない。この沸
水収縮率が15%未満であると、沸水収縮率が5.5%
以下である本発明の低収縮繊維成分との混繊糸が、編織
物とした後の染色などの加工工程における熱処理によっ
て両成分の熱収縮特性の差に基づく良好なふくらみ感を
生じ得ない。また沸水収縮率が30%を越えると、低収
縮糸との混繊糸を用いて得た編織物を染色などの加工工
程で熱処理して高度なふくらみ感を発現させた時に製品
布帛に表面のむらが発生し、商品規格に適合しなくな
る。
【0020】本発明のポリアミド異収縮混繊糸は、低収
縮繊維成分が特異な繊維微細構造を有する上に極細繊維
で構成されているために、編織物とした後、染色などの
加工工程での熱処理によって、製品布帛に、柔軟でまろ
やかな風合と良好なふくらみ感を発現する。
【0021】また、本発明に係るポリアミド異収縮混繊
糸はその高収縮繊維成分がポリヘキサメチレンアジパミ
ドをベースとし、ポリカプラミドよりも高い融点を有す
る共重合ポリアミドからなるマルチフィラメント糸であ
ることによって、製品布帛の製造工程における熱セット
によって風合の硬化を起こすことがないし、消費者のア
イロンがけによる風合の硬化もない。
【0022】本発明の低収縮成分のマルチフィラメント
糸条はポリヘキサメチレンアジパミドからなり、通常の
溶融重合によって製造されるもので重合方式は、バッチ
重合方式でも連続重合方式でも良い。例えば、バッチ重
合法としてはヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の塩
であるヘキサメチレンジアンモニウムアジペート(AH
塩)の50重量%水溶液に重合度調整剤などの添加剤を
混合して濃縮槽に仕込み、150℃前後に加熱して約8
0重量%の濃度にまで濃縮する。この濃縮液を重合槽へ
供給し、さらに加熱を続ける。この時、重合槽内の圧力
を圧力調節弁で約18kg/cm2 にコントロールしながら
縮合水を除去し、内温を250℃にまで昇温する。次
に、加熱を続けながら重合槽の圧力を徐々に放圧して常
圧にまで戻し、内温を280℃に昇温してそのまま数十
分間保ち、重縮合を完了させる。生成したポリマー融解
液を不活性ガスで加圧して吐出口金から押し出し、冷却
してペレットチップとすることができる。
【0023】また、連続重合法としては、Brit.P. 67
4,954(1949)やAdv.Poly.Tech.,
(3),267(1986)等に示された方法によって
重合を行うことができる。
【0024】上記ポリアミドは、公知の艶消し剤、熱安
定剤、光安定剤、帯電防止剤などの添加剤を含んでいて
も良い。
【0025】さらに、上記の重合方法で得られたポリマ
ーチップを、融点よりも20〜80℃低い温度におい
て、減圧真空中もしくは不活性ガス中で加熱して固相重
合を行い、重合度をさらに高めても良い。
【0026】本発明の低収縮繊維成分のVR(蟻酸相対
粘度)は、用途に応じて適宜設定すれば良いが通常衣料
に用いる場合30〜60である。
【0027】本発明の低収縮繊維成分フィラメント糸
は、例えば実施例に示すように、上記、ポリヘキサメチ
レンアジパミドポリマーを引取速度4000m/分以上
の高速で紡糸することによって得ることができる。紡糸
に際しては、ポリマー粘度紡糸温度、紡糸口金下の雰囲
気状態、紡糸速度を適宜コントロールし、紡糸口金より
溶融紡出されたポリマー流の冷却固化、および細化変形
を制御して、紡糸性よくかつ所望の特性を有するフィラ
メント糸を得ることができる。なお、ここで紡糸速度と
は、冷却固化された糸条を必要な場合は、さらに集束、
仕上剤処理された後に所定の速度で引取る第1駆動ロー
ルの速度を言う。図1に、本発明で用いる装置の一例を
示す。溶融されたポリヘキサメチレンアジパミドは、所
定の温度に加熱された紡糸ヘッド2の中に取付けた紡糸
口金(図示せず)より紡出され、大気中で冷却されて糸
条1となる。本装置においては、紡糸口金直下に紡出糸
条1を取り囲む管状加熱域3が設けられており、さらに
該加熱域の下方に糸条を吸引、冷却するための流体吸引
装置4が設置されている。管状加熱域3、及び流体吸引
装置4を通過した糸条1は、仕上剤付与装置5、集束装
置6を経て引取ロール7によって引取られる。
【0028】一方、本発明の高収縮繊維成分のマルチフ
ィラメント糸は、カプラミド繰返し単位を、15〜40
モル%共重合したポリヘキサメチレンアジパミドからな
り、通常の溶融重縮合によって製造可能であるが、主と
して、バッチ重合方式を用いる。
【0029】ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の塩
であるヘキサメチレンアジペート(AH塩)の50%水
溶液に、所定量のε−カプロラクタムを添加し、重合度
調整剤などの添加物を混合して、濃縮槽に仕込み、15
0℃前後に加熱して約80%の濃度まで濃縮する。この
濃縮液を重合槽へ供給し、さらに加熱を続ける。この
時、重合槽内の圧力を圧力調節弁で約18kg/cm2 にコ
ントロールしながら縮合水を除去し、内温を250℃に
まで昇温する。次に、加熱を続けながら重合槽の圧力を
徐々に放圧して常圧にまで戻し、内温を280℃に昇温
してそのまま数十分間保ち、重縮合を完了させる。生成
したポリマー融解液を不活性ガスで加圧して吐出口金か
ら押し出し、冷却してペレットチップとする。
【0030】上記共重合ポリアミドは、熱収縮特性に悪
い影響を与えない範囲で艶消し剤、熱安定剤、光安定剤
などの一般的な添加剤を含んでいても良い。
【0031】さらに、上記の重合方法で得られた共重合
ポリアミドチップを融点より20〜50℃低い温度にお
いて、減圧真空中もくしは不活性ガス中で加熱して固相
重合を行い、重合度をさらに高めても良い。
【0032】本発明の高収縮成分マルチフィラメント糸
のVR(蟻酸相対粘度)は、用途に応じて適宜設定すれ
ば良いが、通常、衣料に用いる場合、30〜60であ
る。
【0033】上のようにして、得られた共重合ポリアミ
ドを、スクリュー式押出機等を用いて再溶融して紡糸す
る。例えば、実施例に示すように、上記共重合ポリアミ
ドを引取速度1000m/分にて紡糸し、一旦未延伸糸
として巻き取り、次いで延伸工程にて、冷延伸を行って
延伸糸を得る。
【0034】上記共重合ポリアミドを、紡糸−延伸を二
工程で得る場合、溶融紡糸時にマルチフィラメント糸を
一旦冷却した後、引取る以前に加熱筒などを用いたスチ
ームなどによる熱処理を施すことが望ましい。該熱処理
により、引取った未延伸糸パッケージの吸湿によるフオ
ーム崩れを抑制することが出来る。
【0035】また、共重合ポリアミドの融点に応じ、紡
糸温度はポリマーの融点の20〜50℃高い温度に設定
すれば良い。
【0036】さらに、共重合ポリアミドは、結晶性が低
く、結晶化速度が遅いために、マルチフィラメント糸の
紡糸工程における冷却・固化の際、フィラメント同士の
密着を生じ易い。このことを抑制するために共重合ポリ
アミドには、エチレンビス、ステアリルアミドのような
ジアミド化合物を結晶核剤として配合することが好まし
い。
【0037】本発明の低収縮繊維成分、高収縮繊維成分
それぞれのマルチフィラメント糸の単糸断面の形状は、
円形、多葉形、中空その他いずれの形状でも良いが、本
発明の柔軟でまろやかな風合と、良好なふくらみ感を高
めるためには製品布帛において主として布帛表面に存在
する低収縮成分マルチフィラメントの単糸断面形状を三
葉形などの多葉形にすることが好ましい。
【0038】混織する2種のマルチフィラメント糸の比
率は、任意に変え得るが、7:3〜3:7(重量比)で
あることが好ましい。高収縮成分の比率が、低すぎる
と、編織物の染色などの加工工程における熱処理時に編
織物中のマルチフィラメント糸の拘束のため、高収縮成
分の充分な熱収縮が妨まれて製品布帛に良好なふくらみ
感を発現させにくくなる。
【0039】また、該比率が高すぎると、上記熱処理時
に高収縮成分の充分な熱収縮を発現させうるものの、製
品布帛の主として表面部に存在する低収縮成分マルチフ
ィラメント糸が少なく、柔軟でまろやかな風合と良好な
ふくらみ感を得ることが難しくなる。
【0040】低収縮成分マルチフィラメント糸と高収縮
成分マルチフィラメント糸とを混織する方法は、公知の
いかなる方法を用いても良い。例えば、低収縮成分のマ
ルチフィラメント糸と高収縮成分のマルチフィラメント
糸をそのまま引揃えて空気噴射ノズルに通し、交絡処理
を施す方法が用いられる。
【0041】また、高収縮成分マルチフィラメント糸の
延伸工程で、延伸後の高収縮成分の捲き上げ前に、別
途、紡糸しておいた低収縮成分マルチフィラメント糸を
合糸混繊することもできる。
【0042】あるいは、低収縮成分のマルチフィラメン
ト糸に若干のオーバーフィードを与えながらいわゆるタ
スラン加工を行うこともできる。但し、該オーバーフィ
ードを大きくとりすぎると、混繊糸に大きなタルミやル
ープを生じ、編織物とする工程で編針にループが引っか
かるなどの不都合を生じてしまう。なお、ここで言う
「タスラン加工」とは、2種のマルチフィラメント糸を
異なった速度で乱流処理ノズルへ供給し、ループやタル
ミを付与したバルキー混繊糸である。
【0043】本発明の異収縮性混繊糸を用いて編織した
布帛は熱水などによる湿熱処理を施すことによって極め
て良好なふくらみ感を有する布帛となるが、この場合、
湿熱処理の温度は90℃以上が好ましく、通常の染色と
同時にこれを行っても良い。
【0044】また、湿熱処理時の張力は製品布帛のふく
らみ感に影響するため、できるだけ張力をかけないこと
が好ましい。そして上記布帛は染色加工後に編織物のシ
ワを除き、布帛の幅を揃えるために180〜190℃で
30〜50秒間僅かの緊張下で仕上げセットを行って製
品布帛とする。
【0045】該仕上げセット工程において、本発明の異
収縮性混繊糸を用いた布帛は、共重合ポリアミドがポリ
カプラミドよりも高い融点を有することのために、風合
い硬化を決して引起こすことがない。
【0046】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に具体的に説
明するが、本発明をこれらの実施例に限定するものでな
いことはいうまでもない。なお、本発明に用いられたフ
ィラメント糸の構造特性およびその他特性の測定方法は
以下の通りである。
【0047】(1)力学的損失正接(tan δ) 力学的損失正接(tan δ)の測定には、オリエンテック
社製VIBRON DDV-IIc型を用いる。測定周波数110Hz、
昇温速度10℃/分、乾燥空気中で、tan δ−温度
(T)特性を測定する。tan δ−温度曲線からtan δピ
ーク高さ(tan δ)max と、tan δピーク温度Tmax
(℃)が得られる。図2に、本発明のフィラメント糸の
tan δ−T曲線を模式的に示す。
【0048】(2)複屈折率(Δn) 複屈折の測定には、旧東独カールツアイスイエナ社製の
透過型干渉顕微鏡を用いる。波長549mμ、温度25
℃において、フィラメント軸に対して平行に振動してい
る光に対する屈折率n(平行)と、フィラメント軸に対
し垂直に振動している光に対する屈折率n(垂直)の値
から Δn=n(平行)−n(垂直) で表わされる。なお、フィラメントの中心部とは、円型
断面および異型断面フィラメントとも、フィラメント断
面を一平面と考えた際の重心部分と定義する。
【0049】(3)強伸度、初期モジュラス オリエンテック社製、TENSIRON UTM−II−20型引張試
験機を用い、常法により測定した。なお、測定雰囲気は
20℃、RH60%である。
【0050】(4)沸水収縮率 0.1g/dの荷重下での試料長をLo とし、無荷重で
沸水中で30分間処理した後、再度0.1g/dの荷重
下で長さLを測定する。沸水収縮率BWS(%)は BWS(%)=(Lo −L)/Lo ×100 で表わされる。
【0051】(5)VR(蟻酸相対粘度) 90%蟻酸溶液に8.4重量%のナイロン66を溶解
し、25℃において常法により測定する。
【0052】実施例1 ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート(AH塩)の
50重量%の水溶液270リットル、酸化チタンの8重
量%水溶液0.4リットルを400リットルのオートク
レーブに仕込み、バッチ重合を行った。仕込み原料水溶
液を、まず濃縮槽において、150℃の温度で80重量
%にまで濃縮を行った。次に重合槽に送り、加熱を続け
て内圧を17.5kg/cm2 にコントロールしながら縮合
水を取除いて250℃まで昇温し、1.5時間重合を進
めた。その後、内温を280℃に昇温し、次いで1時間
をかけて、徐々に常圧にまで戻して、さらに30分間保
持して重合を完了し、VR45のポリヘキサメチレンア
ジパミドポリマーを得た。一方、AH塩の50重量%水
溶液(240)リットル、ε−カプロラクタム(10)
kgをオートクレーブに仕込み上記と同様にして共重合ポ
リアミドポリマーを得た。得られたポリマーのVRは、
48であった。
【0053】ポリヘキサメチレンアジパミドポリマー
は、減圧真空乾燥機に投入し、130℃で乾燥した後、
図1に示した装置を用いて溶融紡糸した。すなわち、紡
糸温度300℃にて、孔径0.20φ、孔数96の紡糸
口金より溶融吐出し、直径100mm長さ20cm、雰囲気
温度200℃の加熱筒を通した後、紡糸口金下80cmに
設置した流体吸引装置(流体圧0.5kg/cm2 G)によ
って、糸条を吸引、冷却し、さらに仕上剤処理した後、
引取速度5000m/分で引取り50d/96fの低収
縮繊維成分であるマルチフィラメント糸(A)を得た。
得られたマルチフィラメント糸(A)の沸水収縮性は
3.6%であった。
【0054】一方、共重合ポリアミドポリマーは乾燥
後、図3に示す紡糸装置および図4に示す延伸装置を用
いて溶融紡糸した後、延伸を行った。すなわち、280
℃の溶融紡糸温度にて、0.20φ、孔数10の紡糸口
金より吐出し、横吹きの冷風にて冷却固化後、スチーム
処理を施し1000m/分の速度で未延伸糸を引取っ
た。次いで3.0倍の延伸倍率で冷延伸を行い30d/
10fの高収縮成分であるマルチフィラメント糸(B)
を得た。得られたマルチフィラメント糸(B)の沸水収
縮率は17.3%であった。得られた(A)及び(B)
の2種のマルチフィラメント糸の繊維特性を表1および
表2に示す。
【0055】上記(A)及び(B)の2種のマルチフィ
ラメント糸を合糸し、空気噴射ノズルを通し、交絡処理
を施した後、80d/106fの混繊糸を得た。得られ
た混繊糸の沸水収縮率は17.0%であり、低収縮繊維
成分マルチフィラメント糸(B)の沸水収縮率と同等の
値を有していた。上記混繊糸を用いて、縦105本/イ
ンチ、横90本/インチの平織物を織成し、98℃の熱
水で30分間張力をかけないように処理してふくらみ感
を発現させた。
【0056】その後、酸性染料Kayanol Red RS 125
(日本化薬社製)2%owfを用い、98℃にて40分
間染色処理を施し、次いで、タンニン酸フィックス処理
を行い最後に180℃で45秒間僅かの緊張下で加熱し
仕上げセットを行った。得られた布帛の各種堅牢度を表
2に示す。また、得られた布帛は、上記仕上げセットに
よる風合の硬化がなく、柔軟でまろやかな風合と良好な
ふくらみ感を有し、美しい発色の布帛であった。
【0057】実施例2〜3および比較例1〜3 実施例2〜3は、低収縮成分のポリヘキサメチレンアジ
パミドマルチフィラメント糸の引取速度を表1のように
変えた以外は実施例1と同様にして混繊糸による製品布
帛を得た。得られたマルチフィラメント糸の繊維特性お
よびこれらを用いた混繊糸織物の風合いを表1に示す。
比較例1は、単糸デニールを2.0デニールとする以外
は実施例1と同様にして低収縮成分としたものの例であ
り、比較例2は高速紡糸ではなく、図2に示すような紡
糸および延伸装置を用いて一旦900m/分の速度で未
延伸糸を巻取った後、延伸倍率2.8倍にて延伸を施し
たマルチフィラメント糸を低収縮繊維成分として用いた
例である。
【0058】実施例4〜6および比較例4〜5 高収縮成分の共重合ポリアミドの重合の際に、オートク
レーブに仕込むAH塩と、ε−カプロラクタムの比率を
表2のように変えた以外は、実施例1と同様にして混繊
糸織物布帛を得た。これら共重合ポリアミドのマルチフ
ィラメント糸の繊維特性およびこれらを用いた混繊糸織
物の染色堅牢度を表2に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【発明の効果】本発明のポリアミド異収縮混繊糸の高収
縮繊維成分には、ポリヘキサメチレンアジパミドをベー
スとし、ポリカプラミドよりも融点の高い共重合ポリア
ミドからなるマルチフィラメント糸を用いることによ
り、編織物とした後の、湿熱処理などによって、まろや
かな風合と良好なふくらみ感が得られ、且つ、布帛製造
工程における熱セットによる風合の硬化を引き起こすこ
とがない。更に、本発明のポリアミド異収縮混繊糸は、
消費者の手に渡ってからのアイロンがけによる風合の硬
化を引き起こすこともない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の低収縮成分マルチフィラメン
ト糸の製造に用いた紡糸装置の概略図である。
【図2】本発明のフィラメント糸のtan δ−T曲線を模
式的に示す。
【図3】本発明の実施例の高収縮成分マルチフィラメン
ト糸の製造に用いた紡糸装置の概略図である。
【図4】本発明の実施例の高収縮成分マルチフィラメン
ト糸の製造に用いた延伸装置の概略図である。
【符号の説明】
1…糸条 2…紡糸ヘッド 3…筒状加熱域 4…流体吸引装置 5…仕上剤付与装置 6…集束装置 7…引取ロール 8…押出機 9…紡糸ヘッド 10…冷却風装置 11…スチーム処理装置 12…仕上剤付与装置 13…ゴデットロール 14…巻取装置 15…巻取糸(未延伸糸) 16…供給ロール 17…延伸ロール 18…延伸糸

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 低収縮繊維成分と高収縮繊維成分とから
    成るポリアミドマルチフィラメント糸であって、該低収
    縮繊維成分が単糸繊度1.0デニール以下の繊維であ
    り、かつ力学的損失正接(tan δ)のピーク高さ(tan
    δ)max とピーク温度(Tmax〔℃〕)が Tmax ≦−320(tan δ)max +132 80≦Tmax ≦95 の両方の関係を満足し、 20℃及び60%RHにおける初期モジュラスが15〜
    45g/dであり、 繊維の中心部における複屈折率が37×10-3〜50×
    10-3であって、しかも沸水収縮率が5.5%以下とい
    う性質を有し、 該高収縮繊維成分が、カプラミド繰返し単位を15〜4
    0モル%を共重合したポリヘキサメチレンアジパミドか
    らなり、 複屈折率(Δn)が45×10-3〜60×10-3で且つ
    沸水収縮率が15〜30%であることを特徴とするポリ
    アミド異収縮性混繊糸。
JP14311694A 1994-05-25 1994-06-24 ポリアミド異収縮混繊糸 Withdrawn JPH0841744A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004204386A (ja) * 2002-12-25 2004-07-22 Unitica Fibers Ltd 解舒性に優れたホットメルト型接着性繊維及びその製造方法

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JP2004204386A (ja) * 2002-12-25 2004-07-22 Unitica Fibers Ltd 解舒性に優れたホットメルト型接着性繊維及びその製造方法

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