JPH0840818A - プライマー溶液組成物 - Google Patents

プライマー溶液組成物

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JPH0840818A
JPH0840818A JP7125056A JP12505695A JPH0840818A JP H0840818 A JPH0840818 A JP H0840818A JP 7125056 A JP7125056 A JP 7125056A JP 12505695 A JP12505695 A JP 12505695A JP H0840818 A JPH0840818 A JP H0840818A
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維平 曽
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 a)鉄化合物、銅化合物およびコバルト化合
物よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の金属化合
物およびb)オレフィン性二重結合を持たない酸性化合
物を含有する歯科用プライマー溶液組成物並びにこのプ
ライマー溶液組成物を歯質表面に塗布し次いでトリアル
キルホウ素またはその部分酸化物と重合性モノマーを含
有する硬化性組成物を塗布して歯質表面に接着剤を形成
する方法。 【効果】 本発明によれば、歯の象牙質を損傷させるこ
となく、象牙質と各種材料との間に優れた接着力を得る
ことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、歯質表面塗布用プライマ
ー溶液組成物およびそれと硬化性組成物とを歯質表面に
順次塗布して歯質表面に接着層を形成することに関す
る。さらに詳しくは、特定の金属化合物と酸性化合物を
含有するプライマー溶液組成物およびこのプライマーを
用いることにより、特に歯の象牙質を損傷させることな
く、優れた接着性能を示す接着剤層を付与することに関
する。
【0002】
【従来の技術】歯科治療の分野では、歯質、特に象牙質
とこの歯質を修復するための材料(例えば高分子物質、
金属、陶材など)とを強く接着する必要があり、そのた
めの接着剤がすでに種々提案されている。
【0003】このような接着剤は、(1)重合性モノマ
ー、(2)重合触媒あるいは重合開始剤および(3)充
填剤の3成分構成であるのが一般的である。このような
接着剤の代表的な例としては、(1)重合性モノマーと
しての(メタ)アクリル酸エステルと、(2)重合触媒
としての過酸化ベンゾイルと芳香族第3級アミン系との
混合物、あるいはこの混合物にスルフィン酸塩を添加し
た触媒成分と、(3)ポリマー、シリカなどの充填剤と
からなる接着剤組成物、あるいは(1)重合性モノマー
としての(メタ)アクリル酸エステルと、(2)光増感
剤としてのカンファーキノンと、還元剤としてのN,N
−ジメチルアミノエチルメタクリレートとからなる光重
合開始剤と、(3)ポリマー、シリカなどの充填剤とか
らなる接着剤組成物、さらには(1)重合性モノマーと
しての(メタ)アクリル酸エステルと、(2)重合触媒
としてのトリブチルボラン部分酸化物(TBBO)と、
(3)ポリマー、シリカなどの充填剤とからなる接着剤
組成物などが提案されている。
【0004】このような接着剤の歯質への接着性を改善
するために、接着促進モノマーあるいは歯質と親和性を
有するモノマーを使用することが提案されている。この
接着促進モノマーあるいは歯質と親和性を有するモノマ
ーとしては、例えば4−メタクリロイルオキシエトキシ
カルボニルフタル酸(4−MET)あるいはその酸無水
物(4−META)および10−メタクリロイルオキシ
デシルマロン酸(MAC−10)のようなカルボキシル
基(あるいはカルボキシル基に変換しうる基)を有する
モノマー、10−メタクリロイルオキシデシルジハイド
ロジェンホスフェートのようにリン酸基を有するモノマ
ーなどを挙げることができる。
【0005】このような接着剤の歯質への強固な接着性
能を得るには、歯質表面の酸エッチングによる前処理が
要求されている。例えば歯質のエナメル質表面をリン酸
などでエッチングし前記の接着剤を用いることにより、
実用上問題がない程度の接着強度および接着耐久性が得
られている。
【0006】また、象牙質に対しては、塩化第二鉄を含
むクエン酸溶液でエッチングし、TBBOを重合開始剤
として用いる接着剤で接着する場合に高い接着力が発現
するが、その他の接着剤を用いた場合には良好な接着力
が発現しないことが多い。
【0007】このように、従来技術の中では、TBBO
を用いる接着剤は最も優れたものではあるが、その塩化
第二鉄(3重量部)を含むクエン酸(10重量部)溶液
(10−3溶液)によるエッチング前処理は、多量の酸
処理であるため、処理後充分に水洗して余分の酸を除去
する必要があり、修復作業の煩雑と長作業時間の問題点
が指摘されている。
【0008】また、10−3溶液の処理により象牙細管
が開口し、接着部分の刺激(圧力、温度の変動やモノマ
ーなどの化学物質)が直接歯髄に到達し、患者が強い痛
みを感じるなどの問題点がさらに指摘される。
【0009】プライマーの使用については、Journal of
Dental Research 63 1087-1089 (1984)においてMunksg
ard and Asmussen, E.らはEDTA(pH7.4)によ
ってエッチング処理を施こした後に水溶性の重合性単量
体である2−ヒドロキシエチルメタクリレートの水溶液
からなるプライマーによって象牙質表面を処理し、接着
材を適用する方法を報告している。また、特開昭62−
223289号公報において酸と水溶性の重合性単量体
から構成されるプライマー組成物を提案している。該酸
はpKaが−10と+10の間にあり、該水溶性の重合
単量体は水に少なくとも5重量%溶解する水溶性を有す
ることを特徴としている。
【0010】また、金属化合物を含有するプライマーは
特開平5−339118号公報、特開平6−24928
号公報、特開平5−310524号公報および特開平7
−89821号公報に開示されている。
【0011】
【発明が解決すべき課題】本発明の目的は、新規な歯質
表面処理プライマー溶液組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、象牙質を損傷させることなく、安
定した高い接着強度を発現しうるプライマー溶液組成物
を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、本
発明のプライマー溶液組成物および硬化性組成物を順次
歯質表面に適用することにより、歯質表面に接着剤層を
形成する歯科用接着剤を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、本発明
の上記目的および利点は、第1に、 a)鉄化合物、銅化合物およびコバルト化合物よりなる
群から選ばれる少なくとも一種類の金属化合物および
b)オレフィン性二重結合を持たない酸性化合物を含有
することを特徴とする、歯科用プライマー溶液組成物に
よって達成される。
【0013】本発明においては、上記金属化合物a)
は、鉄化合物、銅化合物およびコバルト化合物の中から
選択される。具体的には、上記金属の塩化物、フッ化物
などのハロゲン化物;硝酸塩および硫酸塩など無機酸の
塩;酢酸塩、アクリル酸塩、メタクリル酸塩およびその
他の有機酸の塩;アセチルアセトンとの錯体のような有
機錯体が好ましいものとして挙げられる。これら金属化
合物はいずれの価数のものでもあってもよい。鉄化合物
の例としては、塩化鉄、硝酸鉄および硫酸鉄のような無
機酸の塩、酢酸鉄、アクリル酸鉄およびメタクリル酸鉄
のような有機酸の塩、ならびにアセチルアセトン鉄のよ
うな錯塩を挙げることができる。銅化合物の例として
は、塩化銅、フッ化銅、硝酸銅および硫酸銅のような無
機酸の塩、酢酸銅、アクリル酸銅およびメタクリル酸銅
のような有機酸の塩、ならびにアセチルアセトン銅のよ
うな錯塩を挙げることができる。コバルト化合物の例と
しては、塩化コバルト、硝酸コバルトおよび硫酸コバル
トのような無機酸の塩、酢酸コバルト、アクリル酸コバ
ルトおよびメタクリル酸コバルトのような有機酸の塩、
ならびにアセチルアセトンコバルトのような錯塩を挙げ
ることができる。
【0014】これらの金属化合物は単独であるいは組み
合わせて使用することができる。プライマー中における
金属化合物の配合量は、好ましくは0.0001〜1重
量%の範囲内にある。
【0015】本発明においては、上記酸性化合物b)
は、オレフィン性二重結合を持たない無機酸および有機
酸の中から選択される。
【0016】無機酸としては、例えばBHr、HCl、
HF、HNO3などが用いられる。
【0017】有機酸としては、例えば蟻酸、酢酸、クロ
ロ酢酸、トリフロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢
酸、ブロム酢酸、ジブロム酢酸、トリブロム酢酸、プロ
ピオン酸、ピバリック酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、
シュウセキ酸および安息香酸を挙げることができる。ま
た、その他、例えばマレイン酸およびその酸無水物、
(メタ)アクリル酸およびその無水物、p−ビニル安息
香酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−
(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)ア
クリロイルオキシ安息香酸、1,4−ジ(メタ)アクリ
ロキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロキ
シエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、N−
(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メ
タ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、N−(メタ)
アクリロイル−m−アミノ安息香酸、N−(メタ)アク
リロイル−5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリ
ロイル−4−アミノサリチル酸、4−(メタ)アクリロ
キシエチルトリメリット酸およびその無水物、4−(メ
タ)アクリロキシブチルトリメリット酸およびその無水
物、4−(メタ)アクリロキシヘキシルトリメリット酸
およびその無水物、4−(メタ)アクリロキシデシルト
リメリット酸およびその無水物、β−(メタ)アクリロ
イルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、β−
(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレ
エート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイド
ロジェンフタレート、11−(メタ)アクリロイルオキ
シ−1,1−ウンデカンジカルボン酸などの不飽和化合
物を単独重合または共重合したポリ(オリゴ)カルボン
酸などのカルボン酸化合物も用いられる。
【0018】また、アルキルホスホリック酸、アルキル
ポリエトキシホスホリック酸、フェニルホスホリック酸
などのリン化合物を例示できる。
【0019】さらに、ベンゼンスルホン酸、トルエンス
ルホン酸、カンファスルホン酸、カンファキノンスルホ
ン酸などのスルホン酸化合物を例示できる。
【0020】これらのb)酸性化合物は単独でもしくは
2種類以上を組み合わせて用いることができる。プライ
マー溶液組成物における当該化合物の配合量は、通常は
0.01〜10重量%の範囲内にある。
【0021】上記のようなa)特定の金属化合物、b)
酸性化合物は、溶媒に溶解もしくは分散させて使用され
る。かかる溶媒としては、人体に対して高い毒性が無け
れば随意に使用できるが、例えば水、エタノール、イソ
プロパノール、ブタノール、アセトン、テトラヒドロフ
ランなどを例示することができ、これらは単独でもしく
は組み合わせて使用することができる。
【0022】本発明の上記の如きプライマー溶液組成物
は歯質表面に塗布される。乾燥後、その上に硬化性組成
物を塗布して接着層を形成して種々の材料を歯質に接着
せしめることができる。その際、硬化性組成物を塗設し
た後、必要により、この組成物が硬化する前に充填材あ
るいは補修剤などを積層してこの硬化剤の接着力を利用
して歯質に接着させることができる。硬化性組成物とし
ては、当該技術分野において、それ自体公知の種々の硬
化性組成物が使用できるが、とりわけトリアルキルホウ
素またはその部分酸化物を含有するものが好ましく用い
られる。
【0023】本発明によれば、それ故、さらに歯質表面
に本発明のプライマー溶液組成物を塗布し次いでトリア
ルキルホウ素またはその部分酸化物と重合性モノマーを
含有する硬化性組成物を塗布することを特徴とする歯質
表面に接着層を形成する方法が同様に提供される。
【0024】上記のように、プライマー上に塗設される
硬化性組成物は、トリアルキルホウ素(TBBなど)あ
るいはその部分酸化物(TBBOなど)と重合性モノマ
ーまたは重合性モノマーおよび充填剤を含有してなる。
重合性モノマーとしては、(メタ)アクリロイル系モノ
マーなどが好ましいものとして例示できる。(メタ)ア
クリロイル系モノマーとしては、例えばメチル(メタ)
アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヘキシル
(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メ
タ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アク
リレートなどの単官能(メタ)アクリレート、エチレン
グリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリ
コールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコ
ールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−メタ
クリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビ
ス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)
プロパンなどの2官能(メタ)アクリレート、トリメチ
ロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリ
スリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの3官能以
上の(メタ)アクリレート、4−メタクリロイルオキシ
エトキシカルボニルフタル酸およびその無水物、5−メ
タクリロイルアミノサリチル酸、10−メタクリロイル
オキシデシルジハイドロジェンホスフェートなどの酸性
基含有(メタ)アクリロイル化合物を挙げることができ
る。
【0025】硬化性組成物に用いられる充填剤として
は、例えばポリメチルメタクリレートのようなポリマー
粉末、ガラス粉末、酸化ジルコニウムのような金属酸化
物粉末などを挙げることができ、これらは単独で、ある
いは組み合わせて使用することができる。
【0026】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本
発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0027】[実施例1〜12]牛前歯の唇面側を切削
して象牙質面を出し、600番のエメリー紙で研磨して
接着面を形成した。
【0028】この接着面を、水洗、乾燥した後、表1記
載の各種金属塩、酸化合物の溶液をプライマーとして塗
布し、20秒後に気銃にてエアーブローして乾燥した。
ついで、直径5mmの孔のあいたセロハンテープを接着面
に貼付して接着面積を規定した。
【0029】次いで、このプライマーの上に、5重量%
の4−メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物(以
下、4−META:サンメディカル(株)製)を含むメ
チルメタクリレート(以下、MMA:和光純薬(株)
製、和光特級)に10重量部のトリブチルホウ素部分酸
化物(以下、TBBO:サンメディカル(株)製)を重
合開始剤として添加した液およびポリメチルメタクリレ
ート粉末の混合物(硬化性組成物)を塗設して、アクリ
ル棒を接着し、接着試験用サンプルとした。
【0030】接着試験用サンプルを30分間室温に放置
し、さらに37℃の蒸留水中に24時間浸漬した後、引
張り試験を行い、アクリル棒と歯質(象牙質)との接着
強さを測定した。接着強さは5個の試験片で測定した値
の平均値である。
【0031】上記のようにして測定した接着強さを表1
に示す。
【0032】
【表1】
【0033】[実施例13〜21]実施例1において、
プライマーに次いで塗設される硬化性組成物の組成を、
バリウムガラス45重量部(SCHOTT社製、平均粒
径:3μm)、スチレン・ブタジエン・MMA共重合体
15重量部、2,2−ビス〔4−メタクリロキシエトキ
シ)フェニル〕プロパン(新中村化学(株)製NKエス
テルD−2.6E)15重量部、2−ヒドロキシエチル
メタクリレート(和光純薬(株)製、 和光特級)7重
量部、4−META3重量部、MMA15重量部、TB
BO 5重量部とした以外は同様にして、アクリル棒と
牛歯象牙質との接着を行った。
【0034】上記のようにして測定した接着強さを表2
に示す。
【0035】
【表2】
【0036】[比較例1]実施例1において、プライマ
ーを塗布せずに硬化性組成物を直接塗設した以外は同様
にして、牛歯象牙質塗アクリル棒を接着した。
【0037】この場合の接着強さは1.1MPaであっ
た。
【0038】[比較例2]実施例2において、プライマ
ーを塗布せずに硬化性組成物を直接塗設した以外は同様
にして、牛歯象牙質塗アクリル棒を接着した。
【0039】この場合の接着強さは0.9MPaであっ
た。
【0040】
【発明の効果】本発明によれば、象牙質を損傷させるこ
となく、象牙質と各種材料との間に優れた接着力を得る
ことができる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 a)鉄化合物、銅化合物およびコバルト
    化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の金属
    化合物およびb)オレフィン性二重結合を持たない酸性
    化合物を含有することを特徴とする、歯科用プライマー
    溶液組成物。
  2. 【請求項2】 金属化合物の濃度が0.0001〜1重
    量%の範囲内にある請求項1のプライマー溶液組成物。
  3. 【請求項3】 酸性化合物の濃度が0.01〜10重量
    %の範囲内にある請求項1のプライマー溶液組成物。
  4. 【請求項4】 水、有機溶媒または水と水混和性有機溶
    媒の組み合せを溶媒とする請求項1のプライマー溶液組
    成物。
  5. 【請求項5】 請求項1のプライマー溶液組成物(A)
    とトリアルキルホウ素またはその部分酸化物と重合性組
    成物を含有する硬化性組成物(B)との組合せからなる
    ことを特徴とする、歯科用接着剤。
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