JPH0840642A - 溶接用ワイヤの装填物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ペイル容器から高速度で溶接用ワイヤを取り
出す時にからみ、もつれがなく円滑に溶接用ワイヤを取
り出して溶接部へと送給することを可能とする、溶接用
ワイヤの装填物を提供する。 【構成】 ペイル容器の中央部に円柱状空洞を形成する
ごとく積層収納した溶接用ワイヤの装填物において、収
納容器内ワイヤの上部に押え板を配置し、該押え板はド
ーナツ状円盤部とこれの内周に接続され逆円錐状をなす
テーパ状円筒部とを有し、前記ドーナツ状円盤部内径が
前記円柱状空洞の径よりも小さく、かつ該テーパ状円筒
部の先端部に少なくとも３箇所積層体の内径部方向に向
けた弾性部材および該ドーナツ状円盤部の外周部に少な
くとも２箇所ペイル容器の内壁に当接する弾性部材を備
える。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ペイル容器に捩り入り
のソリッドワイヤ、フラックス入りワイヤ等の溶接用ワ
イヤをループ状に巻装して積層収納した溶接ワイヤの装
填物に関する。

【０００２】

【従来の技術】大容量の溶接用ワイヤ（以下、ワイヤと
いう）の収納容器としてペイル容器が使用される。ペイ
ル容器のワイヤ取り出しは、ワイヤ積層体の上部のもの
から順にペイル容器上方へ取り出し、コンジットチュー
ブを経て溶接トーチへワイヤ供給装置により導くという
順序で行う。

【０００３】ペイル容器として、内筒と外筒を備え、該
内外筒間の空間にワイヤを収納する二重円筒状のもの、
あるいは内筒を具備せず外筒にワイヤを収納する単筒状
のものにリング状の押え板が載置されている。また、ワ
イヤの取り出し位置として、リング状押え板の内孔から
と押え板の外側からペイル容器の内壁に沿って取り出す
方法とがある。

【０００４】この内、単筒状のペイル容器、かつ容器の
内壁に沿ってワイヤを取り出す技術として、例えば特公
昭６１−４２７０６号公報がある。図２によりこれを説
明すると、外筒部２と底部３からなるペイルパック１の
内部の空間にワイヤがループ状にして積層収容され、該
ワイヤの積層体４の上面にはワイヤの跳ね上がり防止用
の押え板５が載置されている。すなわち、ペイル容器１
に収納されたワイヤは弾性限界の範囲内で捩じり、例え
ば１ループ当たり３６０°の捩じりを与えて収納されて
いるので、ペイル容器内でワイヤに復元力が内在し上方
に跳ね上がろうとする傾向を有するため、ワイヤの積層
体４上面に剛体からなる押え板５を載置してワイヤを上
方から押さえる。

【０００５】ワイヤＷは押え板５の外周とペイルパック
の内壁との隙間から上方へ引き上げられるが、この隙間
からペイル容器の内壁に沿って後続のワイヤループが無
秩序に跳ね上がる恐れがあり、押え板５にペイル容器の
内壁に接触する跳ね上がり防止用弾性体６を設け１ルー
プずつ上方へと引き上げられるようにしている。

【０００６】ワイヤＷをペイル容器１から取り出す際、
押え板５の直下のワイヤＷは引き上げ力によりそのルー
プをほぐされて広がり、押え板５と外筒部２の内壁との
隙間から、旋回しながら上昇する。通常はワイヤが内周
方向へ絞られてワイヤ積層体４内部の円柱状空洞７には
み出すことはないが、積層体４の上面はワイヤループが
密層した複雑な凸凹状態にあるので、引き上げられよう
とするワイヤが後続のワイヤに引かかる場合がある。そ
うするとワイヤループ外周への広がりはストップし、逆
に内周へと絞られる。ある程度絞られてループ径が小さ
くなると該ループは立ち上がり、押え板５を持ち上げ空
間を生じる。こうなると押え板５のワイヤを押さえる効
果はなくなるから積層体４の上面後続ワイヤループが自
由に跳ねてあばれるようになり、ループが中央部の円柱
状空洞７に落ち込みからみ、もつれが生じて円滑なワイ
ヤ取り出しは不可能になる。

【０００７】実公昭６３−２０６８０号公報に、前記問
題点を解決した技術の記載がある。図３にその記載技術
例を示すが、押え板５を逆円錐状としてワイヤループが
中央部の円柱状空洞７に落ち込むのを防止している。し
かし、この方法ではワイヤループは円柱状空洞７への落
ち込みはなくなるものの、積層体４の上面のワイヤルー
プが逆円錐状の押え板５にむりに押さえられて複雑な凸
凹状態となり、特に高能率溶接に対応させ高速で取り出
しを行うと、引き上げられようとするワイヤＷが後続の
ワイヤと押え板５の下でからみ、押え板５と外筒部２内
壁との隙間から複数ループが同時に引き上げられてから
み、もつれが生じる。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来技術
の欠点を解消するためになされたものであって、ペイル
パックから特に高速度でワイヤ取り出す時において、ル
ープが円柱状空洞に落ち込んだり、押え板とペイル容器
内壁との隙間から複数ループが同時に引き上げられるこ
とからくるからみ、もつれの発生がなく円滑に取り出し
て溶接部へと送給することを可能とする、溶接用ワイヤ
の装填物を提供することを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は前記課題を解決
するものであって、ペイル容器の中央部に円柱状空洞を
形成するごとく溶接用ワイヤに捩りを与えてループ状に
積層収納した溶接用ワイヤの装填物において、収納容器
内ワイヤの上部に押え板を配置し、該押え板はドーナツ
状円盤部とこれの内周に接続され前記円柱状空洞内に向
かって逆円錐状をなすテーパ状円筒部とを有し、前記ド
ーナツ状円盤部内径が前記円柱状空洞の径よりも小さ
く、かつ該テーパ状円筒部の先端部に少なくとも３箇所
積層体の内径部方向に向けた弾性部材および該ドーナツ
状円盤部の外周部に少なくとも２箇所ペイル容器の内壁
に当接する弾性部材を備えたことを特徴とする溶接用ワ
イヤの装填物である。

【００１０】

【作用】本発明の溶接用ワイヤのペイルパック装填物を
図１に示す。図１はペイル容器に収容されたワイヤの取
り出し状態を示す断面図で、ペイル容器１の内部に捩じ
り入りワイヤがループ状に積層収納されている。４はこ
のワイヤの積層体、７は積層体４に形成された円柱状の
空洞を示す。該積層体４の上端には押え板１０が載置さ
れ、ワイヤの跳ね上がりを防止している。本発明におけ
る押え板１０はドーナツ状円盤部１１と、これの内周に
接続され円柱状空洞７内に向かって逆円錐状をなすテー
パ円筒部１２とを有する。

【００１１】押え板１０のドーナツ状円盤部１１は平面
状であり、かつその内径ａは積層体４により形成された
円柱状空洞７の内径ｂよりも小さくなっているので、積
層体４上面のワイヤループを乱すことがなく、積層体４
上面でワイヤがからむことがない。押え板１０のドーナ
ツ状円盤部１１の内径ａが円柱状空洞７の内径ｂよりも
大きいと、テーパ状円筒部１２が積層体４の上面のワイ
ヤループをむりに押えて積層体４上面のワイヤループが
複雑な凸凹状態となり、ワイヤを高速で取り出すと引き
上げられようとするワイヤＷが後続のワイヤと押え板１
０の下でからみ、押え板１０と外筒部２内壁との隙間か
ら複数ループが同時に引き上げられてからみ、もつれが
生じる。

【００１２】押え板１０は、ドーナツ状円盤部１１の内
周から円柱状空洞７に向かって逆円錐状をなすテーパ状
円筒部１２が形成されているから、ワイヤ取り出し時に
積層体４上面のワイヤループが後続のワイヤに引かかっ
て円周方向に絞られても、絞られたワイヤループはテー
パ状円筒部１２の上方（大径）から下方（小径）へと移
動でき、移動中に押え板１０を旋回しながら上昇してい
るワイヤＷによりほどかれて定常状態となる。押え板１
０がドーナツ状円盤部の内周から円柱状空洞に向かって
円柱状であると、ワイヤループが円周方向に絞られた場
合、該円柱状部にワイヤがからんで押え板１０を持ち上
げ、積層体４の上面後続ワイヤループが跳ねてからみ、
もつれが生じる。なお、テーパ状円筒部１２はその全長
がすべてテーパ状になっていなくてもよい。たとえば図
１に示したように先端部がストレートの円筒状になって
いるなど、本発明の目的の範囲内で適宜変形できる。

【００１３】また、テーパ状円筒部１２の先端部に少な
くとも３箇所積層体４の内径部方向に向かって弾性部材
８を設けているので、ワイヤループが複数ターン押え板
１０のテーパ状円筒部１２へ移動しても円柱状空洞に落
ち込むことがない。テーパ状円筒部の先端部の弾性部材
が３箇所未満であると、移動してきたワイヤループを支
えきれず円柱状空洞７へと落ち込みからみ、もつれが生
じる。

【００１４】ドーナツ状円盤部１１の外周部には少なく
とも２箇所ペイル容器の内壁に当接する弾性部材６が備
えられているので、ワイヤＷがペイルパック内壁に沿っ
て引き上げられる時に後続のワイヤループが跳ね上がる
ことはない。弾性部材６が２箇所未満であると、後続の
ワイヤループが跳ね上がりからみ、もつれが生じる。

【００１５】なお、テーパ状円筒部１２の先端部の弾性
部材８およびドーナツ状円盤部１１の外周部の弾性部材
６としてはスポンジ、合成ゴム、天然ゴム、弾性プラス
チック等を用いるが他の可撓性材を用いても同様に実施
できる。

【００１６】

【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明する。内径５００ｍｍと６５０ｍｍのペイル容器内
に、ワイヤ径１．２ｍｍと１．６ｍｍのソリッドワイヤ
およびフラックス入りワイヤを、円柱状空洞径を容器ご
とに変えながらループ状に１周回当たり約３００°捩じ
って積層し、種々の押え板を積層体の上に載置した。こ
れらを表１に示す。表１中、Ｎｏ．１〜４が本発明例
で、Ｎｏ．５〜８が比較例である。また、それぞれの試
験例について、ワイヤを取り出した時のからみ、もつれ
の発生回数を調べた。試験方法はペイル容器から３時間
ワイヤを１２ｍ／分で連続的に取り出して行った。それ
らの結果を同じく表１に示す。

【００１７】

【表１】

【００１８】表１の結果から明らかなように、本発明例
であるＮｏ．１〜４は、いずれも押え板のドーナツ状円
盤部の内径が円柱状空洞部内径よりも小さく、かつドー
ナツ状円盤部内周から円柱状空洞部に向かって逆円錐状
のテーパ状円筒部が形成されており、さらにテーパ状円
筒部の先端部に３箇所以上、ドーナツ状円盤部外周に２
箇所以上の弾性部材を備えているので、ワイヤ引き出し
時にからみ、もつれの発生がなく極めて満足し得る結果
であった。

【００１９】比較例中Ｎｏ．５は、押え板のドーナツ状
円盤部内径ａが円柱状空洞部内径ｂよりも大きいので、
テーパ状円筒部が積層体の上面のワイヤループをむりに
押えて、積層体上面のワイヤループが複雑な凸凹状態と
なり、引き上げられようとするワイヤが後続のワイヤと
押え板の下でからんだ状態になった。このため押え板と
外筒部内壁との隙間から複数ループが同時に引き上げら
れてからみ、もつれが１回生じた。

【００２０】Ｎｏ．６は、押え板ドーナツ状円盤部内周
から円柱状空洞部に向かって円筒部がストレート円柱状
に形成されているから、ワイヤループが円周方向に絞ら
れた時、該円筒部にワイヤがからんで押え板を持ち上
げ、積層体の上面後続ワイヤループが跳ねてからみ、も
つれが２回生じた。

【００２１】Ｎｏ．７は、テーパ状円筒部先端部の弾性
部材が２箇所しかないので、該弾性部材に移動してきた
ワイヤループを支えきれず円柱状空洞部に落ち込みから
み、もつれが１回発生した。またＮｏ．８は、ドーナツ
状円盤部外周部の弾性部材がないので、引き出されるワ
イヤの後続ワイヤが跳ね上がりからみ、もつれが３回生
じた。

【００２２】

【発明の効果】本発明の溶接用ワイヤの装填物によれ
ば、高能率溶接に対応させ溶接用ワイヤを高速で取り出
してもからみ、もつれが発生せず円滑に溶接用ワイヤを
取り出して溶接部へと送給することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明におけるペイル容器に収納された溶接用
ワイヤの取り出し状態を示した断面図

【図２】従来技術のペイル容器に収納された溶接用ワイ
ヤの取り出し状態を示した断面図

【図３】従来技術のペイル容器に収納された溶接用ワイ
ヤの取り出し状態を示した部分拡大図

【符号の説明】

１ ペイル容器 ２ 外筒部 ３ 底部 ４ 積層体 ５ 押え板（従来技術における） ６ 弾性部材 ７ 円柱状空洞 ８ 弾性部材 １０ 押え板（本発明における） １１ ドーナツ状円盤部 １２ テーパ状円筒部 ａ ドーナツ状円盤部の内径 ｂ 円柱状空洞部の内径 Ｗ ワイヤ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ペイル容器の中央部に円柱状空洞を形成
   するごとく溶接用ワイヤに捩りを与えてループ状に積層
   収納した溶接用ワイヤの装填物において、収納容器内ワ
   イヤの上部に押え板を配置し、該押え板はドーナツ状円
   盤部とこれの内周に接続され前記円柱状空洞内に向かっ
   て逆円錐状をなすテーパ状円筒部とを有し、前記ドーナ
   ツ状円盤部内径が前記円柱状空洞の径よりも小さく、か
   つ該テーパ状円筒部の先端部に少なくとも３箇所積層体
   の内径部方向に向けた弾性部材および該ドーナツ状円盤
   部の外周部に少なくとも２箇所ペイル容器の内壁に当接
   する弾性部材を備えたことを特徴とする溶接用ワイヤの
   装填物。