JPH0838187A - 水溶性メラニン色素の製法 - Google Patents

水溶性メラニン色素の製法

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JPH0838187A
JPH0838187A JP20151394A JP20151394A JPH0838187A JP H0838187 A JPH0838187 A JP H0838187A JP 20151394 A JP20151394 A JP 20151394A JP 20151394 A JP20151394 A JP 20151394A JP H0838187 A JPH0838187 A JP H0838187A
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JP
Japan
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polysaccharide
water
polysaccharide fraction
melanin pigment
tyrosinase
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JP20151394A
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English (en)
Inventor
Hidemitsu Uchisawa
秀光 内沢
Tetsushi Naraoka
哲志 奈良岡
Yoshiaki Takatani
芳明 高谷
Kaoru Abe
馨 阿部
Shinya Yamaguchi
信哉 山口
Junji Ichida
淳治 市田
Hajime Matsue
一 松江
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AOMORI PREF GOV
Aomori Prefecture
Original Assignee
AOMORI PREF GOV
Aomori Prefecture
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 チロシナーゼを用いて酵素的にメラニン色素
を合成する際に、多糖を添加することにより、水溶性メ
ラニン色素を製造する。 【構成】 チロシナーゼを用いて酵素的にメラニン色素
を合成する際に、多糖を添加することにより水溶性メラ
ニン色素の製造が可能となる。用いる多糖としては、イ
カ墨汁から抽出された多糖画分、ムコ多糖、フコイダ
ン、アルギン酸、ペクチン、グリコーゲン及びこれら多
糖より生成し得る塩である。また、イカ墨汁からの多糖
画分は、イカ墨汁を脱脂乾燥後、タンパク質分解酵素に
より消化し、エタノール沈殿により得られたものをイオ
ン交換クロマトグラフィ等を用いて分離精製したもので
ある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、医薬及び試薬として有
用な水溶性メラニン色素の製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年オゾン層の破壊により、地上にふり
そそぐ紫外線量が増大しつつあると言われている。現在
紫外線を吸収、反射する物質を利用した化粧品などが注
目を集めているが、生物はメラニン色素による天然の防
護機構をもっている。たとえば白人に皮膚癌が多く黒人
には少ないといわれているが、その原因はメラニン色素
の多少によるとされている。しかし、このメラニン色素
を産業的に利用する時に大きな障壁となっているのが可
溶化の問題である。メラニン色素は主に動物の皮膚等に
存在する黒色色素でヘテロなポリマーであり、中性また
は酸性の水溶液やほとんどの有機溶剤には全く溶解しな
い。メラニン色素は自然界において極めて重要な役割を
はたしているにも拘わらず産業界への利用は著しく制限
されている理由はここに起因する。そのため、目下、メ
ラニン色素を可溶化する研究が盛んに行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的
は前記の欠点を除き、チロシンあるいは3,4−ジヒド
ロキシフェニルアラニンを基質としてチロシナーゼを用
いて酵素的にメラニン色素を合成する際に、多糖を添加
することにより、水溶性のメラニン色素を合成すること
にある。即ち、本来水に対して不溶性のメラニン色素を
合成後に可溶化するのではなく、酵素的に合成する段階
で多糖を添加した溶液を用いることにより、水溶性のメ
ラニン色素を合成するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】細菌、真菌、植物、動物
の生成する黒褐色の色素を総称してメラニン色素と呼ぶ
が、生体内においてメラニン色素は、メラニン生成酵素
であるチロシナーゼが、基質であるチロシンあるいは
3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンの酸化を触媒
し、ドーパキノンを経て重合し生合成される。このメラ
ニン色素は動植物中に広く分布し、皮膚や髪その他組織
内に小粒となって存在しており、水に不溶で、熱濃硫酸
や強アルカリに可溶の高分子化合物でその組成はまだ明
かになっていない現状にある。
【0005】しかし、メラニン色素及びチロシナーゼに
関する研究は多く行われており、植物性チロシナーゼと
してはキノコ(マッシュルームなど)から精製された標
品が市販されており、動物のチロシナーゼ標品として
は、マウスまたはハムスターの移殖性黒色腫から分離さ
れたメラノソームまたは溶性チロシナーゼがある。これ
らのチロシナーゼを用いて、チロシンあるいは3,4−
ジヒドロキシフェニルアラニンを基質にメラニン色素を
合成した場合、得られたメラニン色素は水に不溶であ
り、すみやかに沈殿する。また、人工的にはチロシンを
過酸化水素中において酸化させる方法にて合成されてい
るが、この方法により得られたメラニン色素も同様に水
に対して不溶である。
【0006】このように通常、植物性及び動物性いずれ
のチロシナーゼを用いても、あるいは人工的にであって
も、合成されたメラニン色素は水に対して不溶である
が、本発明者は、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニ
ンを基質に、チロシナーゼを用いて酵素的にメラニン色
素を合成する際に、多糖を添加することにより水溶性メ
ラニン色素を製造することに成功した。添加する多糖と
しては、イカ墨汁から抽出された多糖画分、ムコ多糖、
フコイダン、アルギン酸、ペクチン、グリコーゲンが有
効であったが、多糖の添加濃度を変化させて比較検討し
た結果、イカ墨汁中の多糖画分が最も低濃度で高い活性
を示した。ここで使用するチロシナーゼについては、イ
カ墨汁由来あるいはマッシュルーム由来など、いずれの
チロシナーゼを用いても、多糖を添加することにより得
られたメラニン色素は水溶性を示し、本法においてはチ
ロシナーゼの起源を問わないのが特徴である。
【0007】本発明において、添加する多糖の中で最も
高い活性を示したイカ墨汁から抽出された多糖画分は、
以下の方法により得られた。即ち、新鮮なイカ(あるい
は冷凍したイカでもよい)から墨汁を採取し、−30℃
程度に冷却されたアセトン等の親水性有機溶剤と共に攪
拌あるいはホモジナイズし、ロ過後、減圧乾燥により脱
脂乾燥粉末を得ることができる。上記処理を施した試料
を、次に行う酵素反応に最適な緩衝液に分散させ、トリ
プシンなどのタンパク質分解酵素によりタンパク質を分
解した後、エタノール沈殿により、多糖画分が得られ
る。さらに、多糖画分は陰イオン交換カラムクロマトグ
ラフィ及びゲルロ過等により精製することができる。
【0008】チロシナーゼを用いて酵素的にメラニン色
素を合成する際に、イカ墨汁から抽出された多糖画分を
はじめとする多糖を添加することによって、合成された
メラニン色素は水溶性を示す。多糖の添加濃度は、基質
となる3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニンの
濃度にも依存し、多糖の種類によっても異なるが、最も
低濃度で高い効果を示したイカ墨汁から抽出された多糖
画分においては、0.1%3,4−ジヒドロキシ−L−
フェニルアラニン溶液に、多糖画分をわずかに0.01
%になるように添加するだけで合成されたメラニン色素
は十分な水溶性を示す。
【0009】本発明の方法によって低濃度で最も効果の
高かったイカ墨汁から抽出された多糖画分の性質は次の
とおりである。
【0010】「イオン交換カラムクロマトグラフィによ
る分離精製」多糖画分をDEAEセファデックスA−5
0ゲル(商品名、ファルマシア社製)を用いたイオン交
換カラムクロマトグラフィにより精製を行ったところ、
食塩濃度0.25Mの位置に対称なピークとして溶出さ
れた(図1)。
【0011】「組成分析」イカ墨汁から抽出された多糖
画分の組成分析を行ったところ、グルクロン酸1モルに
対してN−アセチルガラクトサミン及びフコースが等モ
ルずつ存在しており、また、ペプチドを21%含有して
いた。結果を表1に示した。
【0012】
【表1】
【0013】「プロトンNMR」図1で得られたイカ墨
汁から抽出された多糖画分の、270MHz、重水中、
70℃の条件下でのプロトンNMRスペクトルを測定し
たところ、グルクロン酸、N−アセチルガラクトサミン
及びフコースの3つの糖に由来するアノメリックプロト
ンのシグナルが4.540ppm、5.197ppm及
び5.260ppmに観測され、また、N−アセチルガ
ラクトサミンのアセチル基のプロトンが2.043pp
mに、フコースのメチル基のプロトンが1.296pp
mに観測された(図2)。
【0014】本発明の方法によって合成された水溶性メ
ラニン色素の性質は次のとおりである。
【0015】「水溶性メラニン色素の溶解性」添加する
多糖にはイカ墨汁から抽出した多糖画分と、ムコ多糖と
してコンドロイチン4硫酸(生化学工業社製)及びコン
ドロイチン6硫酸(生化学工業社製)、フコイダン(S
IGMA社製)、アルギン酸ナトリウム(和光純薬社
製)、ペクチン(SIGMA社製)、グリコーゲン(ホ
タテ由来、青森県産業技術開発センターにて調製)につ
いて検討した。0.1%3,4−ジヒドロキシ−L−フ
ェニルアラニンを含む100mMリン酸緩衝液(pH
6.8)1mlに、これらの多糖を、0.1%、0.0
1%及び0.001%になるように添加しておき、マッ
シュルームチロシナーゼ(SIGMA社製)溶液を10
μl(0.01ユニット)加え、37℃、24時間放置
後、1000×gで10分間遠心し、光路長1cmのセ
ルを用いて上清の420nmにおける吸光度を測定し
た。0.1%添加区分においては、いずれの糖について
も効果がみられたが、コンドロイチン4硫酸及びコンド
ロイチン6硫酸の活性は低かった。0.01%添加区分
においてはイカ墨汁から抽出された多糖画分、フコイダ
ン、ペクチンを添加した区分に高い水溶性が見られ、
0.001%添加区分ではイカ墨汁から抽出された多糖
画分を添加したものが最も良好な結果を示した(表
2)。ここで酵素量を示すユニットは、0.1%3,4
−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニンを含む100m
M リン酸緩衝液(pH6.8)3mlにチロシナーゼ
溶液10μl加え、37℃保温下、光路長1cmのセル
を用いた420nmの吸光度の測定において、吸光度を
1分間に1増加させる活性を1ユニットとした。
【0016】
【表2】
【0017】以下に本発明において行った水溶性メラニ
ン色素の合成に用いた多糖の中で最も低濃度で効果があ
ったイカ墨汁から抽出された多糖画分の調製例、及び水
溶性メラニン色素の製法例を更に詳しく説明する。
【0018】
【実施例1】(イカ墨汁からの多糖画分の抽出) 新鮮なイカから墨汁を採取し、−30℃のアセトンを加
えホモジナイザーにより処理し、ガラスフィルターで濾
過し、減圧下で乾燥させる。得られたイカ墨汁の脱脂乾
燥粉末100gに50mMトリス−塩酸緩衝液(pH
7.8)を1000ml加え、トリプシン(和光純薬社
製)を1g添加し、37℃で24時間攪拌し、さらにト
リプシンを1g追加し、37℃で24時間攪拌後、沸騰
水中10分間加熱し酵素を失活させてから、10000
×gで30分間遠心分離することにより不溶物を除去す
る。得られた上清に酢酸カルシウムが5%、酢酸が0.
5Nになるように加えた後、2倍量のエタノールを加
え、4℃、12時間攪拌後、10000×gで30分間
遠心分離することにより沈殿部に多糖画分を1.1g得
た。
【0019】
【実施例2】(イカ墨汁から抽出された多糖画分の分離
精製) 実施例1により得られた多糖画分を50mMトリス−塩
酸緩衝液(pH8.7)で平衡化したDEAE セファ
デックス A−50(商品名、ファルマシア社製)イオ
ン交換カラムクロマトグラフィで分離精製する。溶出は
50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.7)を用いて0
Mから0.5Mの食塩による直線濃度勾配で行った。そ
の結果、食塩濃度0.25Mに多糖画分が対称なピーク
として溶出された(図1)。
【0020】
【実施例3】(水溶性メラニン色素の製造) 0.1%3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン
を基質とし、マッシュルームチロシナーゼ(SIGMA
社製)によりメラニン色素を合成する過程において、多
糖(イカ墨汁から抽出された多糖画分、ムコ多糖、フコ
イダン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、グリコーゲ
ン)を含む100mMリン酸緩衝液(pH6.8)1m
lにチロシナーゼ溶液を10μl(0.01ユニット)
加え、37℃、15時間放置後、1000×gで10分
間遠心し、光路長1cmのセルを用いて上清の420n
mにおける吸光度を測定した。その結果、多糖濃度0.
1%ではイカ墨汁から抽出された多糖画分、フコイダ
ン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、グリコーゲンに
効果が見られ、0.01%ではイカ墨汁から抽出された
多糖画分、フコイダン、ペクチンの添加区分が水溶性を
示した。さらに低濃度の0.001%添加ではイカ墨汁
から抽出された多糖画分が最も強い効果を示した。この
ことから、イカ墨汁から抽出した多糖画分を添加するこ
とにより最も効率よく水溶性メラニン色素を合成するこ
とが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】イカ墨汁から抽出した多糖画分を50mMトリ
ス−塩酸緩衝液(pH8.7)で平衡化したDEAE
セファデックスA−50イオン交換カラムクロマトグラ
フィを用いて、溶出は50mMトリス−塩酸緩衝液(p
H8.7)の食塩濃度0Mから0.5Mの直線濃度勾配
で行った結果、多糖画分が食塩濃度0.25Mに多糖が
対称なピークとして溶出されたことを示す図である。な
お検出は、ウロン酸の比色に用いられるカルバゾール−
硫酸法により行った。
【図2】図1におけるイカ墨汁から抽出された多糖画分
の、270MHz、重水中、70℃の条件下でのプロト
ンNMRスペクトルを表す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 阿部 馨 青森県青森市大字八ッ役字芦谷202番地4 青森県産業技術開発センター内 (72)発明者 山口 信哉 青森県青森市大字八ッ役字芦谷202番地4 青森県産業技術開発センター内 (72)発明者 市田 淳治 青森県青森市大字八ッ役字芦谷202番地4 青森県産業技術開発センター内 (72)発明者 松江 一 青森県青森市大字八ッ役字芦谷202番地4 青森県産業技術開発センター内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チロシナーゼを用いて酵素的にメラニン
    色素を合成する際に、多糖を添加することを特徴とす
    る、水溶性メラニン色素の製法
  2. 【請求項2】 請求項1において用いる多糖としては、
    イカ墨汁から抽出された多糖画分、ムコ多糖、フコイダ
    ン、アルギン酸、ペクチン、グリコーゲン及びこれら多
    糖より生成し得る塩であることを特徴とする
  3. 【請求項3】 請求項2におけるイカ墨汁から抽出され
    た多糖画分の調製法
JP20151394A 1994-08-03 1994-08-03 水溶性メラニン色素の製法 Pending JPH0838187A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009046621A (ja) * 2007-08-22 2009-03-05 Hakodate Chiiki Sangyo Shinko Zaidan イカ墨色素粒子の製造方法及び有機顔料又は染料並びにこれらを用いた複写機用トナー、水性インク、油性インク又は頭髪用染料
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