JPH0833493A - L−アスパラギン酸の製造方法 - Google Patents

L−アスパラギン酸の製造方法

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JPH0833493A
JPH0833493A JP12164895A JP12164895A JPH0833493A JP H0833493 A JPH0833493 A JP H0833493A JP 12164895 A JP12164895 A JP 12164895A JP 12164895 A JP12164895 A JP 12164895A JP H0833493 A JPH0833493 A JP H0833493A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 工業的に有利なL−アスパラギン酸の製造方
法の提供。 【構成】 フマル酸とアンモニア及び/又はフマル酸ア
ンモニウムからL−アスパラギン酸を生成せしめ、それ
を採取することによるアスパラギン酸の製造方法におい
て、反応前のフマル酸濃度を15〜25重量%とし、反
応後、L−アスパラギン酸に対して0.85〜1.2倍
モルのフマル酸を添加してL−アスパラギン酸を晶析せ
しめ、40℃以上の温度でL−アスパラギン酸の結晶を
採取し、母液を再利用することを特徴とする方法。 【効果】 純度の高いL−アスパラギン酸結晶を高回収
率で得ることができ、しかも多量のアンモニウム塩を含
有する廃液を副生しない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フマル酸とアンモニア
又はフマル酸アンモニウムからL−アスパラギン酸を生
産する際に、反応済媒体からの母液をリサイクル使用す
ることによって、大量の硫酸アンモニウムなど鉱酸のア
ンモニウム塩を含んだ廃水が排出されないように改良さ
れた方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】L−アスパラギン酸はフマル酸とアンモ
ニア又はフマル酸アンモニウムを含有する基質媒体にア
スパルターゼ活性を有する酵素含有物を接触させること
によって生産されている。通常、この反応済み媒体から
L−アスパラギン酸を回収するためには、硫酸などの鉱
酸を用いて、反応済み媒体のpHをL−アスパラギン酸の
等電点であるpH2.7程度に調節後、冷却することによ
ってL−アスパラギン酸の結晶を析出させ、これを濾別
する方法がとられている。
【0003】この方法は安価な鉱酸を用いること、生産
物であるL−アスパラギン酸の結晶としての回収率が高
いこと、得られるL−アスパラギン酸の純度が高いこと
から工業的に用いられている有用な方法である。しかし
ながら、原料としてのアンモニアのロスが大きいこと、
高濃度の硫酸アンモニウムなど鉱酸のアンモニウム塩を
含有した廃水が大量に排出されるという問題点を有して
いる。水溶液中のアンモニウム塩の除去は廃水処理の面
でも非常に困難であり、湖沼や瀬戸内海などの内湾では
アンモニウム塩を含む窒素濃度が上昇することによる水
質汚染など問題が生じてきている。
【0004】米国特許4560653ではL−アスパラ
ギン酸の生産の際に反応済媒体にマレイン酸を添加して
酸性にすることによってL−アスパラギン酸を晶析さ
せ、濾液中のマレイン酸を異性化することによって反応
液のリサイクルを行う方法が提案されている。しかしな
がらこの方法では晶析に用いたマレイン酸を、臭素イオ
ンを含んだ触媒を用いて、アスパルターゼが作用できる
フマル酸に異性化し、異性化後、触媒を除去する工程が
含まれているため、工程が煩雑になっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、工程
が簡単であり、且つ多量のアンモニウム塩を排出しな
い、L−アスパラギン酸の製造方法を提供しようとする
ものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らはこのような
高濃度のアンモニウム塩を含有した廃水が大量に排出さ
れない、簡易なL−アスパラギン酸の製造方法について
鋭意検討を行った結果、意外にもL−アスパラギン酸の
原料であるフマル酸を硫酸などの鉱酸のかわりに用いて
L−アスパラギン酸の晶析を行うと、L−アスパラギン
酸モノアンモニウム塩とフマル酸との間で塩の交換が起
こり、L−アスパラギン酸とフマル酸モノアンモニウム
塩になり、酸性下で溶解度の低いL−アスパラギン酸が
結晶として分離できること、添加するフマル酸の量はL
−アスパラギン酸と大体当量用いると回収率が高くなる
こと、またフマル酸モノアンモニウム塩は低温では溶解
度がそれほど大きくないが、塩の交換、結晶の分離精製
の操作を加温下で行い、フマル酸モノアンモニウム塩の
溶解度が大きい条件下で操作することによって、フマル
酸モノアンモニウム塩のL−アスパラギン酸結晶への混
入を少なくすることができることを見いだし本発明を完
成させるに至った。
【0007】従って本発明はフマル酸とアンモニア及び
/またはフマル酸アンモニウムを含有する基質媒体にア
スパルターゼ活性を有する酵素含有物を作用せしめる反
応をフマル酸濃度15〜25重量%で行うことによりL
−アスパラギン酸を生成せしめ、次に該反応済み媒体に
含まれるL−アスパラギン酸に対して0.85〜1.2
倍モルのフマル酸を該反応済み媒体に添加することによ
りL−アスパラギン酸を析出させ、40℃以上の温度条
件下で、折出したL−アスパラギン酸の結晶を濾過、洗
浄することによってL−アスパラギン酸を採取し、次い
で母液と洗液にアンモニアを添加して基質媒体として再
使用することを特徴とするL−アスパラギン酸の製造方
法を提供する。
【0008】
【発明の効果】本発明によれば、L−アスパラギン酸の
製造に際して、アンモニウム塩を含有する大量の廃水を
排出せず、また反応済み媒体からの母液をリサイクルす
るため、結晶を分離した濾液中に溶解しているL−アス
パラギン酸も次のサイクルで回収できるので、原料基質
の有効利用が図られ、環境面でも経済面でも従来法より
有利なL−アスパラギン酸の製造方法を提供できる。
【0009】
【具体的な説明】以下本発明の方法について実施態様を
説明するが、本発明はかかる実施態様のみに限定される
ものではない。本発明に用いるアスパルターゼ活性を有
する酵素含有物は、例えば、高アスパルターゼ活性を有
することが知られている大腸菌やBrevibacte
rium属の微生物などの菌体、あるいは超音波、摩
砕、凍結融解、酵素処理、界面活性剤処理などを施して
破砕した菌体破砕物、さらに硫酸アンモニウム塩析、ア
セトン沈澱等常法により得られる部分精製したもの、あ
るいはクロマトカラム等常法で得られる精製したもので
あり、そのいずれでも反応に使用できる。
【0010】これらのアスパルターゼ活性含有微生物菌
体、あるいはその処理物または酵素を担体に固定化して
用いることもできる。固定化の担体としては、セルロー
ス、アルギン酸、カラギーナン、マンナンゲルなどの天
然系高分子、あるいはイオン交換樹脂やポリビニルアル
コール、ポリアクリルアミドなどの適当な合成系高分子
を常法により用いることができる。固定化することによ
り、アスパルターゼ、またはアスパルターゼ含有物と生
産物との分離が容易になり、反応済み媒体からの母液の
循環使用の操作をより容易に行うことが可能である。
【0011】また、反応に用いるアスパルターゼ活性を
有する酵素含有物中に含まれるフマラーゼ活性など、該
反応の妨げになりうるアスパルターゼ活性以外の酵素活
性を予め失活させた後に反応に用いることも可能であ
る。例えば、酵素含有物を、予め、L−アスパラギン酸
およびアンモニウムイオン存在下、アルカリ域で40〜
60℃に加熱処理を行うことでフマラーゼ活性を予め失
活させておくこともできる。
【0012】本発明に用いられるフマル酸あるいはフマ
ル酸塩から選ばれるものであって、これらの混合物でも
よい。また本発明に用いられるアンモニアはガス状アン
モニア、アンモニア水溶液等が使用可能であるが、取扱
上アンモニア水溶液が有利である。アンモニア水の濃度
としては特に限定されるものではないが、工業的には1
0〜35重量%が利用するのに好ましい。
【0013】使用されるアンモニアの量は反応に供され
るフマル酸に対して1.0倍モル以上3倍モル以下が好
ましい。アンモニアの量が1倍モル未満ではL−アスパ
ラギン酸の収率が低下する結果を招いてしまい好ましく
ない。またアンモニア量が3倍モル以上では反応に関与
する酵素又は酵素含有物の安定性が悪くなる可能性が高
く好ましくない。また必要に応じて上記のアンモニア量
の範囲で水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムなど
のアルカリ金属水酸化物を併用することもできる。な
お、反応液のpHは5〜10の範囲、好ましくは7.0〜
9.0の範囲、さらに好ましくはアスパルターゼの至適
pHである8.0〜9.0にするのが好ましい。
【0014】フマル酸とアンモニアを混合する場合、混
合はどのように行ってもよいが、両者の全量を一度に混
合するのではなく、一方の全量に対して他方を徐々に添
加するのが好ましく、特にフマル酸の懸濁液に対してア
ンモニアまたはアンモニア水を徐々に添加するのが好ま
しい。本発明の方法において基質媒体の調製に用いる反
応媒体は、水性のものであれば特に限定されず、最も典
型的なものは水である。さらに緩衝液、例えばリン酸緩
衝液等の常用の緩衝液を用いることもできる。反応の際
のフマル酸濃度は、フマル酸塩の溶解度と生産性の面か
ら特に15〜25重量%の範囲の水溶液、好ましくは1
5〜20重量%の範囲である。
【0015】また基質媒体にはさらに塩化マンガン、硫
酸マンガンなどのマンガン塩、または塩化マグネシウ
ム、硫酸マグネシウムなどのマグネシウム塩、または亜
鉛塩、カルシウム塩、ニッケル塩、コバルト塩、鉄塩な
どの2価金属塩を0.1〜50mM、好ましくは1〜10
mMの濃度で添加することが望ましい。本発明における反
応槽の態様は特に限定されないが、例えばバッチ型反応
装置、カラム型反応装置など従来から知られている反応
槽で反応を行うことができる。反応槽は1つでも複数で
も差し支えない。反応の際の温度は低温では反応速度が
低下するため通常20℃程度を下限とし、高温下ではア
スパルターゼの失活を招くため50℃程度を上限とする
のが好ましく、より好ましくは25〜40℃の範囲で行
うのがよい。
【0016】上記のような条件でフマル酸とアンモニア
を反応させた後、得られた反応済み媒体中にフマル酸を
添加することにより、L−アスパラギン酸を析出させ
る。また、母液の循環使用の妨げにならない範囲でフマ
ル酸塩の添加も可能である。フマル酸塩としては、フマ
ル酸アンモニウム、フマル酸ナトリウム、フマル酸カリ
ウムなどが使用される。前記フマル酸などを用いてL−
アスパラギン酸の析出を行うことにより母液の循環使用
が可能になる。析出に鉱酸を用いると鉱酸のアンモニウ
ム塩が蓄積し、母液を循環使用するためには脱塩工程が
必要になり好ましくない。ここでL−アスパラギン酸の
析出のために添加されるフマル酸は固体のままでもよ
く、またフマル酸を水でスラリーとして添加することも
可能である。
【0017】L−アスパラギン酸の析出のために反応済
み媒体に添加されるフマル酸の量は、反応済み媒体中に
存在しているL−アスパラギン酸とほぼ当量用いるのが
よい。例えば反応済み媒体中に含まれているL−アスパ
ラギン酸に対して0.85〜1.2倍モル、好ましくは
0.85〜1.1倍モル添加してL−アスパラギン酸を
析出させることができる。
【0018】この範囲より少ないと結晶として分離でき
るL−アスパラギン酸の量が少なくなり、回収率が低く
なり好ましくない。またこの範囲より多いとL−アスパ
ラギン酸の結晶にフマル酸塩が大量に混入してくるため
好ましくない。L−アスパラギン酸を析出せしめる際に
は反応済み媒体にフマル酸を徐々に添加していくほうが
好ましい。この方法であれば、析出したL−アスパラギ
ン酸の結晶は大きく、遠心濾過などによる母液からの分
離が容易になり、また結晶の取り扱いも容易になる。
【0019】フマル酸を添加した反応済み媒体は0〜1
00℃で10分間〜4時間、好ましくは、20〜80℃
で30〜120分間攪はんして塩の交換、晶析を完了さ
せる。析出したL−アスパラギン酸の濾過方法について
は、吸引濾過や遠心濾過など通常の方法で行うことがで
きるが、含液率を低くすることができる遠心濾過などの
方法がより好ましい。濾過温度は40〜70℃、好まし
くは、40〜60℃である。この範囲より高いとL−ア
スパラギン酸の溶解度が大きくなるためL−アスパラギ
ン酸の回収率が低くなり、この範囲より低いとフマル酸
モノアンモニウム塩の溶解度が低くなり、L−アスパラ
ギン酸結晶にフマル酸塩が大量に混入してくるため好ま
しくない。
【0020】濾過した結晶は水で洗浄を行う。洗浄水の
温度が低いと純度の高いL−アスパラギン酸製品を得る
のに大量の洗浄水が必要となり、洗液を再利用するため
には好ましくない。洗浄水の温度を40〜70℃、好ま
しくは40〜60℃にすることによって、少量の洗浄水
で高純度のL−アスパラギン酸結晶を得ることができ
る。使用する洗浄水の量は、L−アスパラギン酸結晶の
量に対して5〜500重量%、好ましくは10〜200
重量%の範囲で用いるのがよい。
【0021】このようにして極めて簡単な方法で少量
の、例えば0.1〜3重量%、好ましくは0.1〜1重
量%のフマル酸及び/またはフマル酸塩を含有するL−
アスパラギン酸の結晶を得ることができる。こうして得
られるL−アスパラギン酸の結晶のサイズは晶析の方法
を変えることにより所望の平均サイズにすることができ
るが、特に取扱やすい結晶の平均サイズとして50〜5
00μmの範囲の結晶を得ることも可能である。このL
−アスパラギン酸は工業用アスパラギン酸として極めて
有用である。またこのL−アスパラギン酸はさらに精製
を繰り返すことにより、食品添加物、医薬品用などに用
いることも可能である。
【0022】L−アスパラギン酸の結晶を分離した母液
は前記洗液と混合し、アンモニアを添加して、L−アス
パラギン酸製造用の基質媒体として再使用する。必要に
応じてフマル酸を添加したり、母液あるいは洗液を濃縮
したりして適宜調整を行う。例えば、L−アスパラギン
酸を析出させるために加えたフマル酸のモル数に対し
て、結晶として分離されたL−アスパラギン酸のモル数
が多いと、その後のフマル酸とアンモニアの反応で得ら
れるL−アスパラギン酸の量が少なくなっていくため、
必要に応じてフマル酸を追加することによって、L−ア
スパラギン酸を析出せしめる前の反応済み媒体中に含ま
れていたL−アスパラギン酸の量に対して、それを析出
せしめる際に添加したフマル酸と追加するフマル酸の合
計の量が0.85倍モルから1.2倍モルになるように
調整する。
【0023】また必要に応じて母液を濃縮することによ
って容量を初期基質媒体と同じ容積とするなど調整し、
フマル酸に対するアンモニアの比が1〜3倍モルになる
ように調節したのち、フマル酸とアンモニアのアスパル
ターゼ活性を有する酵素含有物との反応、フマル酸の添
加によるL−アスパラギン酸の析出、L−アスパラギン
酸結晶の分離、洗浄、母液の調整を繰り返すことによ
り、母液が基質媒体として循環使用される。本発明によ
れば、母液の循環は10回以上可能である。
【0024】母液へのアンモニアの添加は、例えば、次
の点を考慮して行うのが、母液の循環使用を繰り返すた
めに、また微生物菌体あるいはその破砕物のアスパルタ
ーゼ活性を長く保つためには好ましい。すなわち、循環
使用される母液中に含まれるアンモニア量が該母液に含
まれるフマル酸に対して1〜3倍モル、好ましくは1.
5〜2.5倍モルになるように、アンモニアを添加す
る。
【0025】本発明では、フマル酸とアンモニアあるい
はフマル酸アンモニウム塩を、フマル酸に対してアンモ
ニアの量が1〜3倍モルとなる量で用い、アスパルター
ゼ活性を有する酵素含有物と20〜50℃で反応させ
る。この反応によりL−アスパラギン酸アンモニウムが
生成するが、得られた反応済み媒体に、フマル酸を添加
してL−アスパラギン酸を析出させる。析出したL−ア
スパラギン酸を40℃以上の温度条件下で母液から分離
して、さらに洗浄することによりフマル酸及び/または
その塩を少量含んだL−アスパラギン酸を得ることがで
き、このL−アスパラギン酸は、工業用アスパラギン酸
として極めて有用である。L−アスパラギン酸結晶を分
離した母液は、L−アスパラギン酸結晶を洗浄した液と
ともにL−アスパラギン酸の製造用基質媒体として循環
使用を繰り返すことができる。これにより、原料の効率
的利用、及び、廃棄物の減少が図られる。
【0026】
【実施例】次に実施例をあげて説明するが、本発明はか
かる実施例のみに限定されるものではない。
【0027】実施例1.5Lジャーファーメンターに1
L当りフマル酸20g、リン酸1カリウム1g、硫酸マ
グネシウム7水塩0.5g、酵母エキス20g、コーン
スティープリカー20gを水に溶解し、pHをアンモニア
で6.8に調節した培地3Lを仕込み滅菌したのち、別
に500ml振とうフラスコに同上の培地50mlを入れて
培養しておいたエッシェリヒア・コリ(Escherichia col
i)(ATCC 11303)を接種し、37℃で通気攪拌培養し
た。培地中のフマル酸が消失した時点で、菌体培養液に
酢酸を加え、pHを約5にして45℃、1時間放置後、培
養液を遠心分離にかけ、菌体を分離した。この菌体を3
0等分し、−80℃で凍結して冷蔵した。
【0028】フマル酸100g、硫酸マグネシウム7水
塩0.125gを水300mlに加えた後、25%アンモ
ニア水で中和してpHを8.3に調節後、水を追加して
0.5Lの基質媒体とした。この基質媒体に先に30等
分した凍結菌体の一つをいれ、37℃で穏やかに振とう
しながら5時間反応させた。反応済み媒体の分析の結
果、初期仕込みフマル酸に対して99.0モル%のL−
アスパラギン酸アンモニウムが生成していた。
【0029】この反応済み媒体を遠心分離して菌体を除
いた後、フマル酸110gを添加し、60℃に加熱して
30分保った後50℃まで冷却した。冷却後、吸引濾過
器で濾過し、母液約370mlを得た。一方、濾別したL
−アスパラギン酸を含む結晶約200gを約500mlの
50℃の温水で洗浄し、乾燥した。得られた結晶の重
量、純度を調べたところ、重量105g、純度96.2
重量%(水分除く)(フマル酸3.0重量%)(結晶平
均サイズ250μm)であった。
【0030】ついで、先の母液と洗液をあわせて、減圧
下で濃縮し、25%アンモニア水を加えてpHを8.3に
調節し、水を加えて0.5Lの基質媒体とした。この基
質媒体に先と同様に凍結菌体の一つをいれ37℃で5時
間反応させた。先と同様に遠心分離して菌体を除いた
後、フマル酸110gを添加して加熱、冷却を行った。
析出したL−アスパラギン酸を吸引濾過し、約0.5L
の50℃の温水で2回結晶を洗浄し、充分に水分をきっ
た後、乾燥した。得られた結晶の重量は114.5g、
純度は99.0重量%(水分除く)(フマル酸0.73
重量%)(結晶平均サイズ150μm)であった。
【0031】以下、上記の2回目の操作を繰り返し、フ
マル酸とアンモニアの反応を合計10回行った(母液の
循環使用回数は9回)。10回の操作により、得られた
L−アスパラギン酸は、9回目の操作において晶析のた
めに添加されたフマル酸に対して収率99.1モル%、
純度99.1重量%(水分除く)(フマル酸0.61重
量%)(結晶平均サイズ100μm)であった。10回
目の繰り返し操作により得られた結晶に50℃の温水3
00mlを加えてよく混合した後、再度吸引濾過し、充分
に水分をきり、乾燥する操作を繰り返し3回行ったとこ
ろ、結晶の純度は99.5重量%(水分除く)(フマル
酸0.15重量%)(結晶平均サイズ90μm)になっ
た。
【0032】実施例2.実施例1と同様にして、0.5
Lの基質媒体に凍結菌体の一つをいれ反応を行った。反
応済み媒体を分析したところ、仕込フマル酸に対して9
9.1モル%のL−アスパラギン酸が生成していた。こ
の反応済み媒体を遠心分離して菌体を除いた後、フマル
酸85gを添加し、60℃に加熱して30分保った後5
0℃まで冷却した。冷却後、吸引濾過器で吸引濾過し、
母液約370mlを得た。一方、濾別したL−アスパラギ
ン酸を含む結晶を約0.5Lの50℃の温水で洗浄、乾
燥したところ、得られた結晶の重量は106g、純度は
92.7重量%(水分除く)(フマル酸6.1重量%)
(結晶平均サイズ200μm)であった。
【0033】ついで、先の母液と洗液をあわせて、減圧
下で濃縮し、フマル酸15gと25%アンモニア水を加
えてpHを8.3に調節し、水を加えて0.5Lの基質媒
体とした。この基質媒体に先と同様に、凍結菌体の一つ
を加えて37℃で5時間反応させた。先と同様に遠心分
離して菌体を除いた後、フマル酸85gを添加して加
熱、冷却を行った。析出したL−アスパラギン酸を吸引
濾過し、約0.5Lの50℃の温水で2回結晶を洗浄
し、充分に水分をきった後、乾燥した。得られた結晶の
重量は113.5g、純度は99.0重量%(水分除
く)(フマル酸0.73重量%)(結晶平均サイズ15
0μm)であった。
【0034】比較例1.実施例1と同様にして、0.5
Lの基質媒体に凍結菌体の一つをいれ反応を行った。反
応済み媒体を分析したところ、仕込フマル酸に対して9
9.0モル%のL−アスパラギン酸が生成していた。こ
の反応済み媒体を遠心分離して菌体を除いた後、フマル
酸50gを添加し、60℃に加熱して30分保った後5
0℃まで冷却した。冷却後、吸引濾過器で吸引濾過し、
母液約400mlを得た。一方、濾別したL−アスパラギ
ン酸を含む結晶を約0.5Lの50℃の温水で洗浄、乾
燥したところ、得られた結晶の重量は80.7g、純度
は98.4重量%(水分除く)(フマル酸1.2重量
%)(結晶平均サイズ200μm)であった。
【0035】比較例2.実施例1と同様にして、0.5
Lの基質媒体に凍結菌体の一つをいれ反応を行った。反
応済み媒体を分析したところ、仕込フマル酸に対して9
9.0モル%のL−アスパラギン酸が生成していた。こ
の反応済み媒体を遠心分離して菌体を除いた後、フマル
酸85gを添加し、30℃で30分攪拌後、吸引濾過器
で吸引濾過し、母液約350mlを得た。一方、濾別した
L−アスパラギン酸を含む結晶に約0.5Lの30℃の
水を加えてよく混合したのちに吸引濾過を行い、乾燥し
たところ、得られた結晶の重量は153.0g、純度は
60.3重量%(水分除く)(フマル酸33.2重量
%)(結晶平均サイズ200μm)であった。
【0036】実施例3.フマル酸75g及び硫酸マグネ
シウム7水塩0.125gを水300mlに加えた後、2
5%アンモニア水で中和してpHを8.3に調節後、水を
追加して0.5Lの基質媒体とした。この基質媒体に先
に30等分した凍結菌体の一つをいれ、37℃で穏やか
に振とうしながら5時間反応させた。反応済み媒体を分
析したところ、仕込フマル酸に対して99.1モル%の
L−アスパラギン酸が生成していた。
【0037】この反応済み媒体を遠心分離して菌体を除
いた後、フマル酸67.5gを添加し、60℃に加熱し
て30分保った後50℃まで冷却した。冷却後、吸引濾
過器で吸引濾過し、母液約410mlを得た。一方、濾別
したL−アスパラギン酸を含む結晶を約0.5Lの50
℃の温水で洗浄、乾燥したところ、得られた結晶の重量
は67.1g、純度は96.8重量%(水分除く)(フ
マル酸3.1重量%)(結晶平均サイズ200μm)で
あった。
【0038】ついで、先の母液と洗液をあわせて、減圧
下で濃縮し、フマル酸7.5gと25%アンモニア水を
加えてpHを8.3に調節し、水を加えて0.5Lの基質
媒体とした。この基質媒体に先と同様に、凍結菌体の一
つを加えて37℃で5時間反応させた。先と同様に遠心
分離して菌体を除いた後、フマル酸67.5gを添加し
て加熱、冷却を行った。析出したL−アスパラギン酸を
吸引濾過し、約0.5Lの50℃の温水で2回結晶を洗
浄し、充分に水分をきった後、乾燥した。得られた結晶
の重量は75.9g、純度は99.0重量%(水分除
く)(フマル酸0.73重量%)(結晶平均サイズ15
0μm)であった。
【0039】比較例3.実施例3と同様にして、0.5
Lの基質媒体に凍結菌体の一つをいれ反応を行った。反
応済み媒体を分析したところ、仕込フマル酸に対して9
9.0モル%のL−アスパラギン酸が生成していた。こ
の反応済み媒体を遠心分離して菌体を除いた後、フマル
酸52.5gを添加し、60℃に加熱して30分保った
後50℃まで冷却した。冷却後、吸引濾過器で吸引濾過
し、母液約450mlを得た。一方、濾別したL−アスパ
ラギン酸を含む結晶を約0.5Lの50℃の温水で洗
浄、乾燥したところ、得られた結晶の重量は46.2
g、純度は98.1重量%(水分除く)(フマル酸1.
6重量%)(結晶平均サイズ200μm)であった。以
上の実施例、比較例の結果を以下の表にまとめた。
【0040】
【表1】 表に示されるとおり、添加するフマル酸のモル比が小さ
いと、結晶として分離できるL−アスパラギン酸の回収
率が低くなったが、モル比が大きいと回収率が高くなっ
た。50℃で精製操作を行った場合には、いずれの条件
においても純度90重量%以上の値が得られた。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フマル酸とアンモニア及び/またはフマ
    ル酸アンモニウムを含有する基質媒体にアスパルターゼ
    活性を有する酵素含有物を作用せしめることによりL−
    アスパラギン酸を生成せしめる反応をフマル酸濃度15
    〜25重量%で行い、次に反応済み媒体中に存在してい
    るL−アスパラギン酸に対して0.85〜1.2倍モル
    のフマル酸を該反応済み媒体に添加することによりL−
    アスパラギン酸を析出させ、40℃以上の温度条件下
    で、折出したL−アスパラギン酸の結晶を濾過、洗浄す
    ることによってL−アスパラギン酸を採取し、次いで母
    液と洗液にアンモニアを添加して基質媒体として再使用
    することを特徴とするL−アスパラギン酸の製造方法。
  2. 【請求項2】 フマル酸及び/またはその塩が0.1〜
    3重量%随伴しており、且つ結晶の平均サイズが50〜
    500μmであるL−アスパラギン酸を最終製品として
    採取する、請求項1に記載の方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0959137A2 (de) * 1998-05-22 1999-11-24 DSM Fine Chemicals Austria GmbH Verfahren zur Herstellung von L-Asparaginsäure
EP0931838A3 (de) * 1997-12-29 1999-11-24 DSM Fine Chemicals Austria GmbH Verfahren zur Herstellung von L-Asparaginsäure
EP0994189A1 (en) * 1998-09-30 2000-04-19 Nippon Shokubai Co., Ltd. Methods for producing L-aspartic acid crystals

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