JPH08333534A - 水性インク及びこれを用いたインクジェット記録方法及びかかるインクを用いた機器 - Google Patents

水性インク及びこれを用いたインクジェット記録方法及びかかるインクを用いた機器

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JPH08333534A
JPH08333534A JP16153295A JP16153295A JPH08333534A JP H08333534 A JPH08333534 A JP H08333534A JP 16153295 A JP16153295 A JP 16153295A JP 16153295 A JP16153295 A JP 16153295A JP H08333534 A JPH08333534 A JP H08333534A
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JP
Japan
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ink
recording
polymer
monomer
temperature
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Application number
JP16153295A
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Inventor
Isao Kimura
勲 木村
Hiroyuki Maeda
浩行 前田
Hidemi Kubota
秀美 久保田
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Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
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Publication date
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  • Ink Jet (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高画質とともに、画像の滲み(フェザリン
グ)及び混色滲み(ブリーディング)を解消し、且つ高
発色を実現する水性インク、これを用いたインクジェッ
ト記録方法、及びかかるインクを用いた機器を提供する
こと。 【構成】 色材と液媒体とを含む液組成物からなるイン
クにおいて、一般式(I)で表す単量体の1種以上を5
0重量%以上含有する単量体組成物を重合して得られる
熱可逆型増粘性を示す高分子を含むことを特徴とする水
性インク、これを用いたインクジェット記録方法、及び
かかるインクを用いた機器。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インクを吐出口(オリ
フィス)から小液滴として吐出及び飛翔させ、この小液
滴を被記録材表面へ付着させて記録を行うインクジェッ
ト記録において使用する水性インク、これを用いたイン
クジェット記録方法、及びかかるインクを用いた機器に
関し、特に、滲み(フェザリング)及び混色滲み(ブリ
ーディング)を解消し、且つ高発色を実現する水性イン
ク、これを用いたインクジェット記録方法、及びかかる
インクを用いた機器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、筆記具等は安全性、臭気等の
点で水性インクが主流であり、各種の水溶性有機溶剤、
水溶性染料又は顔料等で構成されている。又、インクジ
ェット記録用インクとしては、吐出容易性、安全性、臭
気等の面から水性インクが主流であり、各種の水溶性染
料又は顔料を水又は水と水溶性有機溶媒に溶解又は分散
させ、必要に応じて保湿剤、染料溶解助剤、防かび剤等
を添加したインクが知られている。これらのインクを用
いるインクジェット記録は、インクを毎秒数千滴以上吐
出可能で高速記録が容易であること、騒音が少ないこ
と、カラー化が容易であること、高解像度化が可能であ
ること、普通紙記録が可能であること等の多くの長所を
持っており、数年来普及が目覚ましい。
【0003】更に近年パソコンの低価格化、高性能化、
GUI環境の標準化により、プリンタ等の画像記録も、
高発色、高品位、高堅牢性、高解像度記録及び高速記録
の要求が高まり、使用するインク中の色材成分を出来る
だけ紙の表面へ残し、記録ドットのエッジを鮮明にし、
形成される画像の滲み(フェザリング)や混色滲み(ブ
リーディング)等を少なくするという技術思想が提案さ
れつつある。
【0004】その第1の例として、特開昭58−136
75号公報には、ポリビニルピロリドンをインク中に添
加し、記録ドットの紙への吸収と広がりを制御する方
法、又、第2の例として特開平3−172362号公報
には、特定のマイクロエマルションをインク中に添加し
てインクの吸収とドットの広がりを制御する方法が開示
されている。
【0005】更に、ゾル−ゲル転移現象をインクに適用
した第3の例として、特開昭62−181372号公報
及び特開平1−272673号公報等に記載のインクが
あり、該インクは、室温でゲル状態、加熱によりゾル状
態となり、そのゾル状態で被記録材に記録し、インクの
冷却によりゲル状態へ戻る為、インクの紙への浸透を抑
制することが出来るとしている。
【0006】又、最近第4の例として特開平6−493
99号公報には、可逆的熱ゲル化特性を有する化合物を
インクに添加し、良好な発色性、定着性、滲みが少な
く、且つ印字物の保存性が優れ、信頼性も優れたイン
ク、かかるインクを用いたインクジェット記録方法及び
機器が開示されている。この技術的背景は、特定の水溶
性高分子の水溶液を加熱してゆくと水溶性が低下して溶
液が白濁する(この温度を曇点という。)現象に基づく
ものである。これらの高分子の代表例はポリN−イソプ
ロピルアクリルアミド、ポリビニルメチルエーテル、ポ
リエチレンオキシド及びヒドロキシプロピルセルロース
等である。
【0007】これらの高分子はその溶解度が負の温度係
数を持っている為に、曇点以上では溶液からの分離析出
状態となる。その析出状態では疎水的なミクロゲルが生
成し溶液の粘度が低下する。析出状態で被記録材上へ記
録を行うと、被記録材表面での温度降下により元の粘度
に戻る;即ち、増粘してインクの浸透を抑制することが
出来るものである。
【0008】一方、第5の例として、特開平3−240
586号公報には、分散媒に膨潤する樹脂により被覆さ
れた着色粒子をケロシン等に分散させた非水性インクが
提案されている。この提案では特に画像の滲み防止及び
液滴吐出用ノズルの目詰まり防止に効果があるとしてい
る。
【0009】第6の例として、特公平6−23375号
公報には、下式で示される単量体と他のエチレン性不飽
和単量体との共重合体が開示され、広い温度範囲で作動
する有用な感温性組成物が述べられている。 (式中、R1は水素又はメチル基、R2は炭素数1〜4の
アルキル基又はフェニル基、nは2〜50の整数であ
る。)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】以上に述べた従来の第
1及び第2の例は、インクの紙への浸透を抑制する為
に、インクが紙上で浸透せずに残る時間が長く、インク
の定着性に問題がある。又、カラー画像を形成する場合
には異なる色間の混色(ブリード)が発生するという問
題がある。第3の例のゾル−ゲル転移インクは、印字物
の保存温度変化で流動性が出ることがあり、インクの流
れ出しによる画像の混色汚損及び転写汚損の問題があ
る。
【0011】第4の例の可逆的熱ゲル化化合物含有イン
クでは、水溶性セルロースエーテル類を使用する為に、
温度降下による粘度上昇が緩慢で、インクジェット記録
の様に1画素を数10msec以下で高速に記録する方
法には不向きである。又、このインクをインクジェット
記録に使用するとインク吐出時の粘度の上限が20mP
a・s以下と低い為に、低濃度で用いなければならず、
十分な増粘効果を得ることが困難である。
【0012】又、第5の従来例においては、分散媒にケ
ロシンを用いるので臭気や安全性等の問題がある。第6
の例の感温性組成物をインクに適用した場合では、染料
が共存すると、いわゆる耐塩性が低い為に感温性を示さ
なくなる。同様に、N−イソプロピルアクリルアミドの
重合体の様な曇点を持つ水溶性高分子は、NaCl等の
電解質(塩)が多量に共存すると、水素結合の基点とな
るカルボニル基(C=O)の酸素がナトリウムイオンに
優先して結合してしまう為に、熱可逆的な溶解状態の変
化を起こさなくなってしまう。これは、例えば、インク
の様にナトリウム塩である染料分子が共存することで、
熱可逆挙動を示さないことになり、該高分子をインクに
添加する意味がなくなる。
【0013】水性インク、特にインクジェット用インク
として小液滴吐出に必要な物性は、表面張力;>20d
yne/cm(リフィル速度に関係する。)、粘度;1
〜20mPa・s、pH;3〜10、又、定着時間は<
20sec(出来るだけ短いほうが良い。)等であり、
被記録材への着色はインクの浸透と蒸発に依存している
為に、記録装置から噴射されたインクはその物性変化を
制御することは出来ない。
【0014】従って、本発明の目的は、高画質ととも
に、画像の滲み(フェザリング)及び混色滲み(ブリー
ディング)を解消し、且つ高発色を実現する水性イン
ク、これを用いたインクジェット記録方法、及びかかる
インクを用いた機器を提供することにある。
【0015】
【課題を解決する為の手段】上記目的は以下の本発明に
よって達成される。即ち、本発明は、色材と液媒体とを
含む液組成物からなるインクにおいて、一般式(I)で
表される単量体の1種以上を50重量%以上含有する単
量体組成物を重合して得られる熱可逆型増粘性を示す高
分子を含むことを特徴とする水性インク、これを用いた
インクジェット記録方法、及びかかるインクを用いた機
器である。
【0016】(但し、上記一般式(I)において、R1
はH又はCH3、R2はH、炭素数1〜30のアルキル
基、(アルキル)フェニル基又は(アルキル置換)アミ
ノアルキル基を表し、nは2〜4、mは2〜4、lは2
〜4、xは2〜50、yは1〜50、zは0〜50の各
々整数を表し、nとmとlとが同じ数であるもの、及び
nとm又はmとlとが同じ数であるものを除く。)
【0017】
【作用】本発明は、従来技術の様な制約はインクが温度
によらず色材と溶媒とが均一な状態の液体であることに
起因するとして、温度をトリガーにしてインクに状態変
化を起こし、被記録材の上では色材と溶媒が分離して挙
動するインクを考案した。即ち、その状態変化とは、室
温におけるインク状態では、溶解解離している高分子
が、一定の温度以上に上がった状態で該高分子同士が会
合を起こして濃厚な高粘度液体となり、且つ色材が該高
分子に結合している状態を形成させ、その状態で被記録
材上へ記録することにより、濃厚な色材相は被記録材表
面に残り、希薄な溶媒相は被記録材中へ浸透するもので
ある。
【0018】又、上記変化は記録するときの広範囲な環
境温度に対応させる為に、可逆的であることが条件とな
る。実際には、記録ヘッドからの小液滴吐出時は低粘度
の方が高速記録に有利である為に、動作時は粘度が低い
状態で吐出させ、転移温度以上に加熱しておいた被記録
材上に記録することで上述の現象は実現される。
【0019】上記の条件では、インク滴の温度<被記録
材の温度である為に、インク滴が被記録材表面に付着し
た瞬間は、被記録材の表面が冷却されてインク滴が転移
温度に上昇するのに僅かな時間後れが出る。その粘度上
昇するまでの時間は低粘度を保つ為に、Lucas-Washburn
の式に従って被記録材へインクが浸透する。これは色材
すべてを被記録材表面に残すと、記録画像としては擦過
性に問題が出ることの解消手段でもある。
【0020】又、転移温度で吐出が可能な温度(又は粘
度)になる様にインクを加熱して、部分的に高分子の会
合を予め起こさせ、その様な小液滴を被記録材へ記録し
ても滲み抑制の効果が見られる。転移温度は、インクジ
ェット記録装置の様な据え置き型の記録装置では、通常
使用される環境温度(室温)より高く、且つ温度による
増粘を効果的にする(状態変化の前後の温度差を大きく
する)為に10℃以上85℃以下が望ましい。85℃を
越えるととインク中の水分の蒸発による著しい増粘を引
き起こすので好ましくない。10℃未満ではインクを使
用する環境温度から著しく離れる為に好ましいものでは
ない。尚、本発明において、曇点とは、高分子水溶液が
白濁する温度と定義し、転移温度とは、高分子水溶液の
溶解状態が変化する(白濁は必須ではない)温度と定義
する。
【0021】
【好ましい実施態様】次に好ましい実施態様を挙げて本
発明を更に詳しく説明する。先ず本発明のインクに用い
る温度で解離溶解・会合増粘する熱可逆型増粘性を示す
高分子について述べる。熱可逆型増粘性を示す高分子と
は、その水溶液又は水懸濁液等が一定の温度(転移温
度)以上で増粘し、且つ温度−粘度の関係が可逆的であ
る高分子である。本発明で使用する高分子は、下記一般
式(I)で表される単量体(I)の1種以上を50重量
%以上含有する単量体組成物を重合して得られる。
【0022】 (但し、上記一般式(I)において、R1はH又はC
3、R2はH、炭素数1〜30のアルキル基、(アルキ
ル)フェニル基又は(アルキル置換)アミノアルキル基
を表し、nは2〜4、mは2〜4、lは2〜4、xは2
〜50、yはl〜50、zは0〜50の各々整数を表
し、nとmとlとが同じ数であるもの、及びnとm又は
mとlとが同じ数であるものを除く。)
【0023】上記単量体(I)からなる高分子の機能と
しては、その直鎖上の分子に多数のエーテル酸素を有す
る為に、塩が共存しても塩の正電荷の部分がエーテル酸
素に優先的に配位することにより、該高分子の耐塩性を
飛躍的に向上させ、且つ熱可逆型増粘性を示すことが出
来る。
【0024】上記単量体(I)の例としては、例えば、
ビニル系(メタ)アクリル酸モノマーにアルキレンオキ
シドが付加した構造のもの、更にはその側鎖末端に(ア
ルキル置換)アミノアルキル基が付加した構造のもので
あり、例えば、ω−メトキシポリエチレングリコール−
(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート、ω−
メトキシポリエチレングリコール−(ポリ)プロピレン
グリコールモノメタクリレート、ω−エトキシポリエチ
レングリコール−(ポリ)プロピレングリコールモノア
クリレート、
【0025】ω−エトキシポリエチレングリコール−
(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、ω
−n−プロピルポリエチレングリコール−(ポリ)プロ
ピレングリコールモノアクリレート、ω−n−プロピル
ポリエチレングリコール−(ポリ)プロピレングリコー
ルモノメタクリレート、ω−iso−プロピルポリエチ
レングリコール−(ポリ)プロピレングリコールモノア
クリレート、
【0026】ω−iso−プロピルポリエチレングリコ
ール−(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレー
ト、ω−n−ブチルポリエチレングリコール−(ポリ)
プロピレングリコールモノアクリレート、ω−n−ブチ
ルポリエチレングリコール−(ポリ)プロピレングリコ
ールモノメタクリレート、ω−iso−ブチルポリエチ
レングリコール−(ポリ)プロピレングリコールモノア
クリレート、
【0027】ω−iso−ブチルポリエチレングリコー
ル−(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレー
ト、ω−tert−ブチルポリエチレングリコール−
(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート、ω−
tert−ブチルポリエチレングリコール−(ポリ)プ
ロピレングリコールモノメタクリレート、ω−フェノキ
シポリエチレングリコール−(ポリ)プロピレングリコ
ールモノアクリレート、ω−フェノキシポリエチレング
リコール−(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリ
レート、
【0028】(ポリ)プロピレングリコール−ポリエチ
レングリコールモノアクリレート、(ポリ)プロピレン
グリコール−ポリエチレングリコールモノメタクリレー
ト、ω−メトキシ(ポリ)プロピレングリコール−ポリ
エチレングリコールモノアクリレート、ω−メチキシ
(ポリ)プロピレングリコール−ポリエチレングリコー
ルモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコール−
ポリエチレングリコールモノアクリレート、(ポリ)ブ
チレングリコール−ポリエチレングリコールモノメタク
リレート、ω−メトキシ(ポリ)ブチレングリコール−
ポリエチレングリコールモノアクリレート、
【0029】ω−メトキシ(ポリ)ブチレングリコール
−ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ω−メ
トキシ(ポリ)エチレングリコール−(ポリ)プロピレ
ングリコール−ポリエチレングリコールモノアクリレー
ト、ω−メトキシ(ポリ)エチレングリコール−(ポ
リ)プロピレングリコール−ポリエチレングリコールモ
ノメタクリレート、ω−ヘキシルオキシポリエチレング
リコール−(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)
アクリレート、
【0030】オクタデシルオキシポリエチレングリコー
ル−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレー
ト、ω−オクチルフェニル(ポリ)エチレングリコール
−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレー
ト、ノニルフェニルオキシ(ポリ)エチレングリコール
−(ポリ)プロピレングリコール−ポリエチレングリコ
ールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコ
ール−ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレー
ト、ω−ジメチルアミノエチルポリエチレングリコール
−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート
等が挙げられる。
【0031】上記単量体の合成方法としては、例えば、
(1)メタクリル酸又はアクリル酸にアルカリ金属触媒
(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)の存在下、5
0〜200℃、1〜10気圧でアルキレンオキシド(エ
チレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレ
ンオキシド)を順次付加する方法、(2)炭素数1〜4
のアルコール又はフェノールにアルカリ金属触媒の存在
下、50〜200℃、1〜10気圧でアルキレンオキシ
ド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又は
ブチレンオキシド)を順次付加して得られるポリエーテ
ルモノオールとメタクリル酸又はアクリル酸とを酸性触
媒(硫酸、パラトルエンスルホン酸等)の存在下、50
〜200℃、1〜10気圧でエステル化するか又エステ
ル化試薬(ジンクロヘキシルカルボジイミド等)ととも
に−10〜50℃、常圧で反応させる方法を挙げること
が出来る。
【0032】更に上記単量体(I)に他のビニル系単量
体を共重合させると、転移温度や増粘の程度の調節が可
能となり、単量体(I)のアルキレンオキシド鎖がかな
り長い場合でも転移温度を100℃以下に制御すること
が出来る。他のビニル系単量体としては、例えば、ヒド
ロキシエル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルア
ミド、(メタ)アクリル酸、マイレン酸、メチル(メ
タ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メ
タ)アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビ
ニル、ブタジエン、イソプレン等が好適である。本発明
で使用する高分子を構成する単量体(I)の含有量は5
0重量%以上が好ましく、より好ましくは70重量%以
上である。50重量%未満では十分な感温性が得られ
ず、熱可逆型増粘の程度が低い。
【0033】上記高分子を水溶液とした場合、一定の転
移温度までは温度上昇に伴って粘度は低下するが、転移
温度を越えると高い勾配で粘度は上昇する。更に、温度
・粘度関係がヒステリシスを殆ど持たない特徴がある。
例えば、その5重量%水溶液を1℃/minの昇温速度
で加熱したとき、その粘度の温度勾配が転移温度以上で
50mPa・s/℃以上である為に、インクの成分とし
て使用した場合に被記録材上での十分な増粘効果が得ら
れる。又、転移温度はインク中の塩、界面活性剤、溶剤
等の添加成分の種類や量によって変化するので、適用す
るインク組成での転移温度を用いる必要がある。
【0034】前記高分子5重量%水溶液の温度・粘度関
係の一例を図1に示す。用いた高分子は下記構造の単量
体90部とメタクリル酸10部とをトルエンを溶媒とし
て撹拌しながら窒素置換し、触媒として2,2’−アゾ
ビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1部とを
加え、60℃で8時間重合させて得たものである。
【0035】図1のデータは高分子5重量%水溶液を1
℃/minで昇温させた場合であり、1℃/minで降
温させた場合にも殆ど昇温と同じ経過で粘度−温度曲線
が得られた。この転移温度は55℃である。尚、液粘度
は超音波の減衰により測定した。又、液を観察したとこ
ろ転移温度以上では溶液が半透明の粘調液体となってい
た。
【0036】本発明においては、インクに添加する高分
子の分子量及び添加量は、インクジェット記録用インク
では、インク粘度の許容範囲内(20mPa・s以下)
に納める必要があり、分子量は2,000以上50万以
下の範囲が良い。ここで、分子量が50万を越えると分
子鎖が長くなりすぎ、再溶解速度が低下したり、曳糸性
が出るので好ましくない。分子量が2,000付近の場
合は増粘効果が弱いので添加量を多くする必要があり、
その添加量は好ましくは2〜10重量%である。又、分
子量が50万付近の場合は少量の添加で十分な増粘性効
果を示し、その好ましい添加量は0.005〜3重量%
である。又、分子量が異なる高分子を混合使用しても本
発明の効果は十分に得られる。
【0037】次に、本発明のインクに用いる色材につい
て説明する。初めに、使用可能な染料は、本発明で使用
する熱可逆型増粘性を示す高分子と相互作用を起こし、
転移温度以上で高分子鎖の会合を促進するものであれば
よく、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反
応性染料等が挙げられる。これらの染料は大部分の疎水
性色素骨格と数個のスルホン酸塩(−SO3M)、カル
ボン酸塩(−COOM)、アンモニウム塩(−NH
3X)等の可溶化基及び水素結合性の水酸基(−O
H)、アミノ基(−NH2)、イミノ基(−NH−)等
をもち、本発明で使用する高分子と複合体を形成するこ
とが出来る。
【0038】分散染料はそれ自体は水不溶性であるが、
分散剤としてナフタレンスルホン酸塩等の多環系アニオ
ン活性剤と併用する為に、染料のみかけのイオン性は直
接染料と同じくアニオン性であり、上記染料と同様に使
用可能である。
【0039】染料の具体例として、C.I.Direc
t Black 17、C.i.Direct Bla
ck 19、C.I.Direct Black 6
2、C.I.Direct Black 154、C.
I.Food Black 2、C.I.Reacti
ve Black 5、C.I.Acid Black
52、I.C.I.Projet Fast Bla
ck 2等のブラック染料、
【0040】C.I.Direct Yellow 1
1、C.I.Direct Yellow 44、C.
I.Direct Yellow 86、C.I.Di
rect Yellow 142、C.I.Direc
t Yellow 330、C.I.Acid Yel
low 3、C.I.Acid Yellow 38、
C.I.Basic Yellow 11、C.I.B
asic Yellow 51、C.I.Disper
se Yellow 3、C.I.Disperse
Yellow 5、C.I.Reactive Yel
low 2等のイエロー染料、
【0041】C.I.Direct Red 227、
C.I.Direct Red 23、C.I.Aci
d Red 18、C.I.Acid Red 52、
C.I.Basic Red 14、C.I.Basi
c Red 39、C.I.Disperse Red
60等のマゼンタ染料、
【0042】C.I.Direct Blue 15、
C.I.Direct Blue 199、C.I.D
irect Blue 168、C.I.Acid B
lue 9、C.I.Acid Blue 40、C.
I.Basic Blue 41、C.I.Acid
Blue 74、C.I.Reacitive Blu
e 15等のシアン染料を挙げることが出来る。
【0043】これらの染料以外でも、可溶化基を減らし
て耐水性を高めたもの、溶解度をpH敏感にした特殊な
グレードのもの等いずれも使用可能である。染料のイン
ク中における濃度としては溶解度の範囲以内で自由に選
択可能で、通常1〜8重量%が好ましく、布、金属(ア
ルマイト)等への記録には3〜10重量%が好ましく、
更に記録画像に濃淡が必要な場合は0.1〜10重量%
が好ましい。
【0044】第二の色材としては、カーボンブラック及
び有機顔料が使用可能である。これらの色材は前記分散
染料と同様に分散剤を併用する為に、本発明で使用する
高分子化合物と分散剤を介して相互作用をなし得るもの
である。この様な顔料はインクジェット記録用に適合し
たものであれば使用することが出来、中でも黒色インク
に用いるカーボンブラックは、ファーネス法又はチャネ
ル法で製造されたものであって、1次粒子径が10〜4
0mμ、BET法による比表面積が50〜300m2
g、DBP吸油量が40〜150ml/100gのもの
が望ましい。
【0045】カーボンブラックの具体例としては、例え
ば、三菱化成製のNo.2300、No.900、MC
F88、No.33、NO.40、No.45、No.
52、MA7、MA8、#2200B、コロンビヤカー
ボン社製のRaven1255、Raven1060、
キャボット社製のReba1330R、Rega166
0R、Mogul L、DEGUSSA社製のColo
r Black FW18、Printex 35、P
rintex U等が挙げられる。
【0046】その他、カーボンブラックの表面を酸化処
理したもの、プラズマ処理したもの、不溶性アゾ顔料、
溶性アゾ顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリノ
ン系高級顔料、キナクリドン系高級顔料、ジオキサジン
バイオレット、ペリノン・ペリレン系高級顔料等の有機
顔料も使用することが出来る。更に、上記顔料に分類さ
れる色材として、染料を体質顔料に染めつけた、いわゆ
る染色レーキも本発明の色材として使用可能である。
【0047】さて、以上の様な構成の本発明のインク
に、信頼性、保存安定性或はインクの浸透性の調節等、
よりインクジェット適性を付与する為に、次に挙げる様
な保湿剤、溶解助剤を含有させてもよい。その様な材料
として、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プ
ロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−
ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブ
タンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペン
タンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル
−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘ
キサンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、
トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、
ポリエチレングリコール200、ジプロピレングリコー
ル、2,2’−チオジエタノール、1,2,6−ヘキサ
ントリオール等のアルキレングリコール類、
【0048】モノエタノールアミン、ジエタノールアミ
ン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、ジ
メチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチル
スルホキシド、スルホラン、1,3−プロパンスルトン
等の非プロトン性極性溶媒、
【0049】1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエ
トキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレン
グリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジ
エチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテ
ル、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノー
ル、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキ
シエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテ
ル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチ
レングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリ
コールモノメチルエチルエーテル、1−メトキシ−2−
プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプ
ロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチ
ルエーテル、ジプロピレングルコールモノエチルエーテ
ル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の
多価アルコールの低級アルキルエーテル類、
【0050】ホルムアミド、2−ピロリドン、N−メチ
ル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノ
ン、ソルビトール、ソルビット、ウレア、1,3−ビス
(β−ヒドロキシエチル)ウレア等が挙げられる。これ
らのインク中の含有量は、インク全重量の1〜40重量
%の範囲が好ましい。
【0051】又、インクジェット記録に本発明のインク
を使用する際に、メタノール、エタノール、プロパノー
ル、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノー
ル等のアルキルアルコールを含有させるとインクの吐出
性が向上し、更に効果的である。これらのアルコール類
はインク全重量の1〜10重量%の範囲で含有すること
が好ましい。更に必要に応じて、界面活性剤、防錆剤、
防かび剤、酸化防止剤、pH調整剤等の添加剤を含有す
ることも可能である。
【0052】以上の様に本発明のインクは、インクジェ
ット記録で用いられる際に特に効果的である。インクジ
ェット記録方法としては、インクに力学的エネルギーを
作用させて液滴を吐出する記録方法及びインクに熱エネ
ルギーを加えてインクの発泡により液滴を吐出する記録
方法があり、それらの記録方法に本発明のインクは特に
好適である。又、本発明で使用する高分子はその構造の
一部がアルキレンオキシドである為にインク流路の様に
細管内の乱流摩擦抵抗を低減する効果(参考文献;村山
和雄、三井 中、別冊「化学工業」、Vol34、p
117(1990))があるので、インクジェット記録
等の如くインク流路が存在する記録方式にはスムーズな
インクの供給が実現される。
【0053】インクジェット記録装置として、第一に、
熱エネルギーを利用した装置の主要部であるヘッド構成
例を図2、図3及び図4に示す。ヘッド1は、インクを
通す流路(ノズル)2を有するガラス、セラミック、シ
リコン又はプラスチック板等と発熱素子基板3とを接着
して得られる。発熱素子基板3は酸化シリコン、窒素シ
リコン、炭化シリコン等で形成される保護層4、アルミ
ニウム、金、アルミニウム−銅合金等で形成される電極
5、HfB2、TaN、TaAl等の高融点材料から形
成される発熱抵抗体層6、酸化シリコン、酸化アルミニ
ウム等で形成される蓄熱層7、シリコン、アルミニウ
ム、窒化アルミニウム等の放熱性の良い材料で形成され
る基板8より成り立っている。
【0054】上記ヘッドの電極5にパルス状の電気信号
が印加されると、発熱素子基板3のhで示される領域が
急速に発熱し、この表面に接しているインクに気泡が発
生し、その発生する圧力でメニスカス10が突出し、イ
ンクがヘッドのノズル2を通して吐出し、オリフィス1
1より記録小液滴12となり、被記録材13に向かって
飛翔する。図4には図2に示したヘッドを多数並べたマ
ルチヘッドの外観図を示す。尚、図2は、インク流路に
添ったヘッドの断面図であり、図3は図2のX−Y線で
の断面図である。
【0055】図5に、かかるヘッドを組み込んだインク
ジェット記録装置の一例を示す。図5において、61は
ワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブ
レード保持部材によって保持固定されており、カンチレ
バーの形態をなす。ブレード61は、記録ヘッド65に
よる記録領域に隣接した位置に配置され、又、本例の場
合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した状態で保持
される。62は記録ヘッド65の吐出口面のキャップで
あり、ブレード61に隣接するホームポジションに配設
され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動し
て吐出口面と接し、キャッピングを行う構成を備える。
更に63はブレード61に隣接して設けられるインク吸
収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移
動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード6
1、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回
復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体6
3によって吐出口面に水分、塵埃等の除去が行われる。
【0056】65は、吐出エネルギー発生手段を有し、
吐出口を配した吐出口面に対向する被記録材にインクを
吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65
を搭載して記録ヘッド65の移動を行う為のキャリッジ
である。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係
合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆
動されるベルト69と接続(不図示)している。これに
よりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能
となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接し
た領域の移動が可能となる。
【0057】51は被記録材を挿入する為の給紙部、5
2は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラー
である。これらの構成により記録ヘッド65の吐出口面
と対向する位置へ被記録材が給紙され、記録が進行する
につれて排紙ローラー53を配した排紙部へ排紙され
る。以上の構成において記録ヘッド65が記録終了して
ホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ
62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、
ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、
記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
【0058】尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出
面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は
記録ヘッドの移動経路中に突出する様に移動する。記録
ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動
する場合、キャップ62及びブレード61は上記したワ
イピングの時の位置と同一の位置にある。この結果、こ
の移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピン
グされる。
【0059】上述の記録ヘッドのホームポジションへの
移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘ
ッドが記録の為に記録領域を移動する間に所定の間隔で
記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移
動に伴って上記ワイピングが行われる。図6は、記録ヘ
ッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給
されるインクを収容したインクカートリッジ45の一例
を示す図である。
【0060】ここで40は供給用インクを収納したイン
ク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム
製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図
示)を挿入することにより、インク袋40中のインクを
ヘッドに供給可能にならしめる。44は廃インクを受容
するインク吸収体である。インク収容部としてはインク
との接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成
されているものが好ましい。
【0061】本発明で使用されるインクジェット記録装
置としては、上述の様にヘッドとインクカートリッジと
が別体となったものに限らず、図7に示す様にそれらが
一体になったものにも好適に用いられる。図7におい
て、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収
容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納され
ており、かかるインク吸収体中のインクが複数のオリフ
ィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出され
る構成になっている。
【0062】インク吸収体の材料としてはポリウレタン
を用いることが本発明にとって好ましい。又、インク吸
収体を用いずに、インク収容部が内部にバネ等を仕込ん
だインク袋である様な構造でもよい。72はカートリッ
ジ内部を大気に連通させる為の大気連通口である。この
記録ユニット70は図5に示す記録ヘッドに代えて用い
られるものであって、キャリッジ66に対し着脱自在に
なっている。
【0063】次に、第二のインクジェット記録装置の形
態として、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノ
ズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる
圧力発生素子と、前記圧力発生素子の周囲を満たすイン
クを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させてイ
ンクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドイン
クジェット記録ヘッドを挙げることが出来る。
【0064】その記録装置の主要部分である記録ヘッド
の構成図を図8に示す。ヘッドはインク室(不図示)に
連通したインク流路80と所望の体積のインク滴を吐出
する為のオリフィスプレート81と、インクに直接圧力
を作用させる振動板82と、その振動板82に接合さ
れ、電気信号により変位する圧電素子83と、圧電素子
83、オリフィスプレート81、振動板等82を支持固
定する為の基体84とから構成されている。
【0065】図8において、インク流路80は、感光性
樹脂等で形成され、オリフィスプレート81は、ステン
レス、ニッケル等の金属を電鋳やプレス加工による穴あ
け等により吐出口85が形成され、振動板82は、ステ
ンレス、ニッケル、チタン等の金属フィルム及び高弾性
樹脂フィルム等で形成され、圧電素子83は、チタン酸
バリウム、PZT等の誘電体材料で形成される。
【0066】以上の様な構成の記録ヘッドは、圧電素子
83にパルス状の電圧を与え、ひずみ応力を発生させ、
そのエネルギーが圧電素子に接合された振動板を変形さ
せ、インキ流路内のインクを垂直に加圧し、インク滴を
オリフィスプレートの吐出口85より吐出させて記録を
行う様に動作する。かかる記録ヘッドは図5に示したも
のと同様な記録装置に組み込んで使用される。記録装置
の細部の動作は先述と同様に行うもので差し支えない。
【0067】
【実施例】次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具
体的に説明する。尚、文中組成比は、特に断りがない限
り重量%である。初めに本発明の各種インクの作製につ
いて述べる。尚、本実施例に使用する熱可逆型増粘性高
分子は表1に示した単量体組成物を共重合して得た。
【0068】表1 本発明に用いた熱可逆型増粘性高分
【0069】注)表1中、各高分子を形成する単量体の
アルキレンオキシド(アルキレングリコール)の付加モ
ル数は以下の通りである。 高分子A:プロピレンオキシド=3、エチレンオキシド
=7 高分子B:プロピレンオキシド=2、エチレンオキシド
=10 高分子C:プロピレンオキシド=10、エチレンオキシ
ド=5 高分子D:ブチレンオキシド=15、エチレンオキシド
=5 高分子E:エチレンオキシド=10、プロピレンオキシ
ド=22、エチレンオキシド=10 高分子F:エチレンオキシド=15、プロピレンオキシ
ド=34、エチレンオキシド=15 高分子G:エチレンオキシド=5、プロピレンオキシド
=1 高分子H:プロピレンオキシド=3、エチレンオキシド
=15/ブチレンオキシド=5、エチレンオキシド=1
【0070】インクの作製手順は、予め適切な濃度(1
0〜20%)の熱可逆型増粘性を示す高分子のイオン交
換水水溶液をそれぞれ調製しておいて、以下に述べる方
法で作製する。
【0071】実施例1〜9(ブラックインク)、実施例
10〜12(カラーインク) [1]初めに色材が染料の場合について説明する。高分
子水溶液にイオン交換水、溶剤、染料水溶液、必要に応
じて界面活性剤の順に撹拌しながら添加し、各組成物の
所定の濃度に調整する。3時間撹拌した後、ポアサイズ
0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、本発明
の実施例1〜9のブラックインク、及び実施例10〜1
2のカラーインクを作製した。
【0072】表2−1 実施例1〜6(ブラックイ
ンク)
【0073】表2−2 実施例7〜9(ブラックイ
ンク)
【0074】表2−3 実施例10〜12(カ
ラーインク) **アセチノールEHは川研ファインケミカル(株)製
界面活性剤である。
【0075】比較例1〜2(ブラックインク)、比較例
3〜5(カラーインク) 更に比較例として、熱可逆型増粘性高分子を添加しなか
った以外は、実施例1〜2と同様の組成のインクを作製
し、比較例1〜2のブラックインクとした。同様に熱可
逆型増粘性高分子を使用しなかった以外は実施例10〜
12と同じ組成インクを作製し、比較例3〜5のカラー
インクとした。尚、比較例で熱可逆性高分子の分は水で
置き換えた。
【0076】実施例13、比較例6 次に、第二の色材である顔料を使用するインクについて
説明する。初めに顔料分散液を作製する。
【0077】(顔料分散液の作製)
【0078】上記成分を混合し、ウォターバス上で70
℃に加温して樹脂分を完全に溶解させる。この溶液にカ
ーボンブラック(商品名:MCF88;三菱化成(株)
製)10部及び1−プロパノール1部を加え、30分間
プレミキシングした後、分散処理を行った。分散機には
サンドグライダー(五十嵐機械社製)を使用し、粉砕メ
ディアとしてジルコニウムビーズ(1mmφ)を用い、
粉砕メディアの充填率50vol%で5時間粉砕処理を
行う。更に遠心分離処理(12,000rpm、20分
間)を行い、粗大粒子を除去して顔料分散液とした。
【0079】(インクの作製)次に、上記分散液に高分
子水溶液を加え、以下の組成になる様に各成分を添加
し、2時間混合して実施例13の顔料ブラックインクを
作製した。
【0080】実施例13
【0081】更に比較例6として、熱可逆性増粘性高分
子を使用しなかった以外は、実施例15と同様の組成の
インクを作製し、比較例6のインクとした。尚、熱可逆
型増粘性高分子の分は水で置き換えた。以上に挙げた実
施例1〜13のインク及び比較例1〜6インクの各々に
ついてインクとしての性能評価を行った。性能評価項目
はインクジェット記録用として、1.光学濃度(OD
値)、2.フェザリング、3.ブリーディングの3項目
とした。いずれの評価も温度23℃湿度60%の恒温試
験室で行った。
【0082】1.光学濃度(OD値) A4サイズの用紙に5mm四方の正方形のベタ部が5箇
所あるパターンをプリントし、30分間以上経過後のプ
リントサンプルについて光学濃度の測定を行う。プリン
ト画像内5箇所のベタ部の濃度をマクベス反射濃度計R
D914にて測定し、その平均値をOD値とした。尚、
ベタ部のインク打ち込み量は12nl/mm2である。
【0083】2.フェザリング A4サイズの用紙に記録ヘッドのノズルの1本おきに間
引いたドットを記録し、30分間以上経過したプリント
サンプルのドットを拡大鏡で観察し、真円のドットを
5、円周の1/4に滲みがみられるか変形しているも
の;4、円周の1/2に滲みがみられるか変形している
もの;3、円周の3/4に滲みがみられるか変形してい
るもの;2、円弧の部分がまったくないドットを1とし
て5段階評価した。
【0084】3.ブリーディング 図9に示した評価パターンを用意した。ブリーディング
のレベルを5段階に分け、2色境界部(矢印の線)から
混色滲みがどの線の位置まで発生するかをブリーディン
グのレベルとし、5段階評価した(境界線から1ドット
ライン以内でブリーディングが止まっている場合を5、
以下どのラインまでブリーディングが発生したかによ
り、4、3、2、1とする。)。図中のA部は色A、B
部は色Bの印字パターンであり、2色の境界を両端矢印
の線で示し、1ドットライン/1ドットスペースの間隔
で5ライン記録してある。
【0085】[評価機]上記1〜3のインクジェット記
録の評価用記録装置としてキャノン(株)製BJC60
0(360dpi)を使用した。インクの供給は専用イ
ンク容器に目的のインクを充填する方法を用いた。尚、
BJC600は記録中に用紙を加熱する機構を組み込ん
である。その概要を図10に示した。図10の記録装置
は図5の基本的な記録装置に加熱素子100を設置した
ものである。加熱素子100は日本陶器製P−8010
サーマルヘッド101をA4横軸に20個並べたもの
で、印加電圧19V、印加電力56W/mm2であり、
駆動パルス幅、駆動周波数を調節することにより、紙表
面温度を20℃の環境温度において、25℃から140
℃の範囲で加熱することが可能である。
【0086】尚、被記録材の加熱機構は本実施例におい
ては上記サーマルヘッドを用いて説明しているが、加熱
機構は本例に限定されることはなく、赤外線ヒータ、ラ
ンプヒータ等、被記録材を所望の温度に昇温することが
出来ればいずれも使用可能である。評価にあたっては、
紙表面温度が各実施例のインク中に含まれる熱可逆型増
粘性を示す高分子の転移温度+10℃に記録装置の加熱
素子を調節して行った(加熱素子表面と用紙表面との距
離は0.5mm)。又、対応する比較例のインクの評価
も実施例のインクで記録する条件と同じに設定して評価
を行った。以上の評価項目1〜6の評価用の用紙として
電子写真用NP−SK紙(LotNo.OKK10)を
用いた。
【0087】[評価結果」表3にBJC600を用いて
本発明のインクの性能評価結果を示した。又、比較例の
インクについても同様に評価し、結果を表3下部に示し
た。更に評価項目3.のブリーディングについては、図
10の評価パターンを使用してその結果を表4に示し
た。同様に比較例についてのブリーディング評価結果を
表5に示した。
【0088】表3 実施例及び比較例のOD、フェザリ
ング及び耐水性評価結果
【0089】表4 実施例のブリーディング評価結果 *図9の評価パターンで色Aはカラーインク、色Bはブ
ラックインクである。
【0090】表5 比較例のブリーディング評価結果
【0091】
【発明の効果】表1から表5の結果より、本発明のイン
クは高いODを維持しつつ、フェザリング性が従来イン
クより優れていることが分かった。又、ブリーディング
については紙表面での急速な増粘による混色防止効果が
大きいといえる。特に本発明のインクは電子写真用紙の
様な事務用普通紙に対するカラー記録における高発色、
フェザリング防止及びブリーディング防止に優れた効果
を得るものである。
【0092】尚、本発明のインクは温度変化でのみで状
態変化するので、普通紙以外のトランスペアレンシーフ
ィルム、布、金属板、等種々の被記録材に対しても、被
記録材の表面pHや凹凸等の影響を受けない為に有用で
ある。以上説明した様に本発明のインクは、画像形成手
段が蒸発と浸透のみに依存していない為に、高いODを
得ながら高品位記録に欠かすことの出来ないフェザリン
グ、混色滲み(ブリーディング)の問題も同時に解決す
ることが出来る。本発明のインクは又インクジェット記
録装置と組み合わせて使用するとより効果が顕著に現れ
る。
【0093】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する高分子水溶液の温度・粘度関
係図
【図2】インクジェット記録装置のヘッド部の縦断面図
【図3】インクジェット記録装置のヘッド部の横断面図
【図4】インクジェット記録装置の複数のノズルを有す
るヘッドの一例
【図5】インクジェット記録装置の一例を示す斜視図
【図6】インクカートリッジの一例を示す縦断面図
【図7】インクジェット記録ヘッドとインクカートリッ
ジが一体である仕様の斜視図
【図8】圧電素子を用いたインクジェット記録ヘッドの
縦面図
【図9】ブリーディング評価パターン
【図10】加熱素子を設けたインクジェット記録装置の
一例を示す斜視図
【符号の説明】
51 給紙部 52 紙送りローラー 53 排紙ローラー 61 ワイピング部材 62 キャップ 63 インク吸収体 64 吐出回復部 65 インクジェット記録ヘッド 66 キャリッジ 67 キャリッジガイド軸 68 キャリッジ駆動部 69 駆動用ベルト部 90 インクカートリッジ 100 加熱素子 101 サーマルヘッド

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 色材と液媒体とを含む液組成物からなる
    インクにおいて、一般式(I)で表される単量体の1種
    以上を50重量%以上含有する単量体組成物を重合して
    得られる熱可逆型増粘性を示す高分子を含むことを特徴
    とする水性インク。 (但し、上記一般式(I)において、R1はH又はC
    3、R2はH、炭素数1〜30のアルキル基、(アルキ
    ル)フェニル基又は(アルキル置換)アミノアルキル基
    を表し、nは2〜4、mは2〜4、lは2〜4、xは2
    〜50、yはl〜50、zは0〜50の各々整数を表
    し、nとmとlとが同じ数であるもの、及びnとm又は
    mとlとが同じ数であるものを除く。)
  2. 【請求項2】 更に単量体(I)と他のビニル系単量体
    とを共重合して得た高分子を含む請求項1に記載の水性
    インク。
  3. 【請求項3】 一般式(I)において、nとl及びxと
    zが同数である請求項1〜2に記載の水性インク。
  4. 【請求項4】 高分子が、インク中に0.005〜20
    重量%含有されている請求項1〜3に記載の水性イン
    ク。
  5. 【請求項5】 高分子の増粘を開始する転移温度が、1
    0℃〜85℃の範囲である請求項1〜3に記載の水性イ
    ンク。
  6. 【請求項6】 色材が染料であり、インク中に0.1〜
    10重量%含む請求項1〜5に記載のインク。
  7. 【請求項7】 色材がカーボンブラック及び/又は有機
    顔料である請求項1〜5に記載の水性インク。
  8. 【請求項8】 色材と液媒体とを含むインクの液滴を記
    録信号に応じて記録ヘッドのオリフィスから吐出させて
    被記録材に記録を行うインクジェット記録方法におい
    て、前記インクが、請求項1〜7に記載の水性インクで
    あることを特徴とするインクジェット記録方法。
  9. 【請求項9】 記録時に記録ヘッドの温度を該インクの
    転移温度以下に保持して記録を行う請求項8に記載のイ
    ンクジェット記録方法。
  10. 【請求項10】 インクに熱エネルギーを作用させ液滴
    を吐出させて記録を行う請求項8又は9に記載のインク
    ジェット記録方法。
  11. 【請求項11】 インクに力学的エネルギーを作用させ
    液滴を吐出させて記録を行う請求項8又は9に記載のイ
    ンクジェット記録方法。
  12. 【請求項12】 インクを収容したインク収容部、イン
    クをインク滴として吐出させる為の記録ヘッド部を備え
    た記録ユニットにおいて、該インクが請求項1〜7のい
    ずれかに記載のインクである記録ユニット。
  13. 【請求項13】 インクを収容したインク収容部、イン
    クをインク滴として吐出させる為の記録ヘッド部を備え
    た記録ユニットにおいて、該インクが請求項1〜7のい
    ずれかに記載のインクであり、該記録ヘッドの温度制御
    機構を有する記録ユニット。
  14. 【請求項14】 インクを収容したインク収容部、イン
    クをインク滴として吐出させる為の記録ヘッド部を備え
    たインクジェット記録装置において、該装置で用いる記
    録ユニットが請求項12に記載の記録ユニットであるこ
    とを特徴とするインクジェット記録装置。
  15. 【請求項15】 インクを収容したインク収容部、イン
    クをインク滴として吐出させる為の記録ヘッド部を備え
    たインクジェット記録装置において、該装置で用いる記
    録ユニットが請求項13に記載の記録ユニットであるこ
    とを特徴とするインクジェット記録装置。
  16. 【請求項16】 記録動作と連動して被記録材を30℃
    以上に加熱する機構を有する請求項14又は15に記載
    のインクジェット記録装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH09183926A (ja) * 1995-12-28 1997-07-15 Kao Corp 水系顔料インク
US6379443B1 (en) 1999-03-12 2002-04-30 Seiko Epson Corporation Ink jet recording method and ink composition for use in said method
US6511147B2 (en) 1996-12-03 2003-01-28 Canon Kabushiki Kaisha Ink-jet printer having heating control for print medium

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