JPH08328289A - 電子写真用転写紙 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 複写機やプリンタにおける重送トラブルを防
止し、充分なサイズ性を有する。 【構成】 カオリンを主成分とするとともにタルクを併
用した填料、中性ロジン系サイズ剤およびサイズ定着剤
を含有する中性紙において、表面にサイズプレス工程に
おいて防滑剤を塗布する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、電子写真式の複写機や
プリンタなどに用いられる電子写真用転写紙に関するも
のである。

【０００２】

【従来の技術】近年、電子式の複写機やプリンタへの要
求は高くなっており、高品質の画像再現のみならず、コ
ピー業務の効率のため処理速度の高速化が要求され、更
に、コンパクト化、機能性向上のため、機内の構造も複
雑化している。これに伴い、紙の給紙方法、機内の紙の
運送方法も複雑になっており、紙の物性に対する要求は
ますます過酷なものとなっている。

【０００３】このような状況の中で、中・高速の複写機
及びプリンタに用いられる電子写真用転写紙においてジ
ャムトラブルを誘因する紙詰まりや重送等の走行トラブ
ルは最も嫌われる項目であるが、紙の物性に起因する要
素が多いと考えられている。

【０００４】従来、重送については紙の摩擦係数が重要
な特性とされているが、紙の摩擦係数と重送発生率との
間には必ずしも高い相関性があるとは言えない状況であ
り、この重送トラブルを予防する意味において、その前
兆現象であるつれ出し現象を把握することにより、重送
トラブルの予測と予防を目的とした管理方法が提案され
ている。

【０００５】ここで言うつれ出し現象とは、複写機など
において給紙装置から用紙が複数枚重なって給紙される
状況を指し、この現象の発生頻度、つれ出し枚数の解析
により重送ジャムトラブルを解決しようとするものであ
る。つれ出し現象の評価方法としてはつれ出し枚数とそ
の頻度による度数分布を考え、その分布の片寄りを出来
る限り２枚以下のつれ出し数側に分布させることによ
り、重送を抑制し得ることが確認されている。

【０００６】また、つれ出し現象の片寄りを制御する因
子としては、多々考えられるが、紙の物性として捉える
場合、種々の断裁方法（例えば、ギロチン断裁、自動断
裁機）による断裁面の形状と断裁時での破断面（カエ
リ）の影響及び紙表面の摩擦係数などが考えられる。

【０００７】紙の断裁面を制御する方法としては、断裁
刃の再研磨、断裁刃間の調整などの設備的な対応、及び
紙水分等の調整による対応法が従来行われているが、紙
の諸性質による影響も大きいと考えられる。特に紙に充
填される填料の影響の占める割合が大きく、充填填料の
硬度、粒子形状、粒径分布などによりその性質が決定さ
れる。

【０００８】また、電子写真用転写紙には、通常筆記特
性を目的としたサイズ性が要求されるが、主なサイズ性
の付与として内添サイズ剤添加による方法が挙げられ
る。従来、酸性抄紙においては酸性ロジンサイズ剤が使
用されるが、中性域ではロジンのカルボン酸解離による
可溶化のため、ロジン系サイズ剤の使用は難しいものと
なっていた。そのため一般的には中性抄紙における内添
サイズ剤としてはアルキルケテンダイマー（以下ＡＫＤ
と略す）やアルケニルコハク酸無水物（以下、ＡＳＡと
略す）に代表される反応性合成サイズやスチレン−ジメ
チルアミノエーテル（メタ）アクリレート−エピハロヒ
ドリン変成物に代表されるカチオンポリマー型の中性サ
イズ剤が使用されてきた。

【０００９】ＡＳＡは高い反応性を持ち、繊維基質であ
るセルロースと強固な結合をしていると考えられている
が、その反応性の高さのためエマルジョン活性は数時間
で消失し、また系内を汚す原因ともなる。ＡＫＤは、前
記ＡＳＡと比較すると反応性は低く、従って比較的取扱
いは容易であり、少量の添加でサイズ性を付与する高い
サイズ性に富んでいるが、ＡＫＤ特有のサイズ性の立ち
上がり性が悪いとされている。また、一方で電子写真用
転写紙のサイズ剤にＡＫＤ、またはＡＳＡを使用した場
合において、より高いサイズ性を付与する意味でサイズ
剤を増量すると、複写機で転写したトナーの定着性が悪
化する傾向にある。ＡＫＤによるサイズ性付与において
は一定量の添加臨界値を越えて使用すると、極端に紙の
摩擦係数が低下し、状況によっては重送などの走行性不
良を起こす場合があった。

【００１０】この点を考慮し、中性サイズ剤としてＡＫ
Ｄ、ＡＳＡに替えてカチオンポリマー型の中性サイズ剤
を用いる対策も試みられているが、この場合においては
損紙として利用する際、離解性が悪く、結果的に未離解
繊維等によるトラブルの原因ともなる。伴せて、同サイ
ズ剤を添加した系では増白剤と添加している直接染料の
変色を起こすことが知られており、紙の白色度を下げる
恐れがある。

【００１１】一方、中性紙抄造においては従来よりサイ
ズ剤に起因した抄紙機系内の汚れが問題となっている
が、この問題への対処として、中性ロジン系サイズ剤が
中性域ではカルボン酸の解離による可溶化がすすみ、サ
イズ発現が極端に低下する点を、特殊疎水化変性を行う
ことにより、中性域からアルカリ域でも安定的にサイズ
効果を発揮するものである。

【００１２】しかしながら、填料に炭酸カルシウムを使
用した中性抄紙系では、炭酸カルシウムが水溶液中でア
ルカリとして作用するため、抄紙原料の水素イオン濃度
がｐＨ７〜９となり、特にｐＨ７．５を越える範囲では
前述の中性ロジン系サイズ剤のサイズ効果が低下し、サ
イズ添加量が増加することが確認されている。

【００１３】以上の如く、中性抄紙において電子写真用
転写紙を製造する場合において、重送トラブルの予知現
象としてのつれ出し現象を抑制し、かつ適正なサイズ性
を付与することは難しいものとなっていた。

【００１４】

【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、従来のサイズ剤としてＡＫＤを使用した中
性紙からなる電子写真用転写紙は、紙の表面摩擦係数の
低下による滑りの欠点があり、複写機などにおける走行
性に劣っており、また、ＡＳＡを使用した場合において
は、系内の汚れトラブルを誘発し操業性を損なうばかり
か紙特性にも影響を与えるものであり、また、その他の
中性サイズ剤を使用した場合については、サイズ剤に起
因する摩擦係数の低下や操業性の低下は見られなかった
が、反面充分なサイズ性が得られず、一方、填料として
炭酸カルシウムを使用した紙は、断裁面のカエリが大き
く摩擦係数が低い為に複写機などにおける走行性に劣っ
ている、という点である。

【００１５】

【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解
決して重送トラブルを誘発するようなつれ出しのない優
れた断裁適性、滑り特性を有するとともに、かつ充分な
サイズ性が付与された中性抄紙である電子写真用転写紙
を提供するものであり、カオリンを主成分とするととも
にタルクを併用した填料、中性ロジン系サイズ剤および
サイズ定着剤とを含有する中性紙であって、その表面に
サイズプレス工程において防滑剤が塗布されていること
を特徴とする。

【００１６】本発明に使用される填料の主成分であるカ
オリンは、カオリナイト属鉱物からなる粘土鉱物であ
り、モース硬度は２．５である。また、タルクはケイ酸
マグネシウムの水和物でありモース硬度は１．５であ
る。このため、炭酸カルシウムなど一般的に中性紙に充
填される填料の硬度より低く、従って填料による断裁刃
の耐磨耗性は向上し、断裁刃の交換または再研磨の周期
が延びるため、炭酸カルシウムを充填した紙に比べて、
断裁面のカエリの少ない紙が得られており、断裁適性に
優れ、さらに摩擦係数が高く、滑り特性に優れた紙が得
られることが確認された。

【００１７】また、本発明で使用する中性ロジン系サイ
ズ剤は、通常の酸性ロジン系サイズ剤が中性域ではカル
ボン酸が解離して可溶化となるのを防ぐため、特殊疎水
化変性を施しており、そのためｐＨ６以上（特に抄紙時
のｐＨ６．７〜７．５）のいわゆる中性域でも充分なサ
イズ性が得られるものとなっている。このロジンとして
は内添サイズ剤として広く使われているものであって、
主な原料源としては松の樹幹を傷つけて得られる分泌液
から蒸留して得られるガム・ロジン、松の古株から溶剤
抽出して得られるウッド・ロジン、及び針葉樹クラフト
廃液から分離されるトール油ロジンに大別される。この
ロジンを界面活性剤もしくは水溶性高分子で乳化された
ものを用い、疎水化処理を施している。元来、ロジン系
サイズ剤によるサイジングではロジンの定着とサイズ発
現のため、アルミニウムイオンを使用しており、その添
加物質としては硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、ア
ルミン酸ナトリウムなどを用いる。主にロジンの定着剤
としては硫酸バンドが使用されるが、従来硫酸バンドは
中性域ではカチオン性が低下し、ロジン等の定着効果が
低下する傾向にあることが知られている。一方、サイズ
剤に中性ロジン系サイズ剤を使用し、填料に炭酸カルシ
ウムを使用した場合、炭酸カルシウムの解離により溶液
はｐＨ７．５〜９．０のアルカリ性となり、このｐＨ域
においては中性ロジン系サイズ剤のサイズ効果が低下す
ることが知られており、紙に充分なサイズ性を付与する
ためにはサイズ剤の増量が必要となるが、これに対しカ
オリン使用時の抄造ｐＨ値は５．５〜６．２であり、前
述したようなサイズ低下の問題もなく、サイズ性付与に
優れた処方となる。更に、分子当りのカチオン価の高い
カチオン樹脂を中性ロジン系サイズ剤の定着剤に用いる
ことにより、効率良く、適性なサイズ性を付与すること
ができる。

【００１８】更に本発明において、サイズプレス工程で
紙表面に塗布する防滑剤としては、スチレン−アクリル
系の合成物が最も有効で紙表面に適性な滑り特性を与え
ることができる。また、防滑剤と併用して澱粉、酸変性
澱粉、酸化澱粉などの表面紙力剤、スチレンアクリル酸
系、無水マイレン酸系、α−オレフィン系などの表面サ
イズ剤、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの無機系静
電気防止剤、スチレン系樹脂などの有機系静電気防止剤
を塗布してもよい。

【００１９】尚、紙へのサイズ性の付与としては、内添
法、表面塗布法の２通りがあり、紙に要求されるサイズ
性の種類により、その添加比率を変更して製造が可能で
あるが、電子写真用転写紙の場合、サイズプレスでの吸
液量が多くなるとそのカール性に影響を与えるため、内
添法重視型のサイズ性付与が好ましい。

【００２０】

【実施例】次に、本発明の実施例ならびに比較例を示す
が、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。

【００２１】尚、実施例および比較例において使用する
比率（％）は、殊にことわらない限り、重量比率（重量
％）を示すものとする。

【００２２】（実施例１）下記第１表の実施例１に示す
とおり、原料配合は広葉樹晒クラフトパルプ（ＬＢＫ
Ｐ：ろ水度３８０ｍｌＣＳＦ）９０％針葉樹晒クラフト
パルプ（ＮＢＫｐ：ろ水度４３０ｍｌＣＳＦ）１０％配
合した。中性ロジン系サイズ剤（ハリマ化成製：Ｎｅｕ
ｓｉｚｅ ＫＳ．アニオン性）を０．６％、サイズ定着
剤（スミレッズレジンＥＸ−７８４Ｓ）を０．４１％、
精製カオリン（勝光山鉱業所：ＢＲＵ−５０）を７％、
タルク３％、硫酸バンド１．０％、カチオン澱粉（松谷
化学：アミロファックス００）１．０％及び歩留向上剤
としてカチオン性ポリアクリルアミド（アライド・コロ
イド社製：パーコール１６２）０．００８％、変性ベン
トナイト（アライド・コロイド社製：ハイドロコール
０）０．０６％を添加した。さらに、表面紙力向上及び
補助的サイズ性の付与のため、サイズプレス処理により
ＴＣ変性澱粉を１．５ｇ／−、塩化ナトリウム０．０６
ｇ／−、スチレン・アクリル酸系表面サイズ剤（近代化
学：ケイコートＳＡ−９０１）０．１６ｇ／−となるよ
う塗布し、抄造時のｐＨはｐＨ７．２として試料を作成
した。

【００２３】（実施例２）実施例１の中性ロジン系サイ
ズ剤の添加量を０．８％とした以外は、実施例１と同様
の原料配合・薬品添加で試料を作成した。

【００２４】（実施例３）実施例１の充填填料を全量カ
オリンとし、全填料重量を１０％とした以外は、実施例
１と同様の原料配合・薬品添加で試料を作成した。

【００２５】（実施例４）下記第１表の実施例４に示す
とおり、ＬＢＫＰ２０％、ＮＢＫＰ１０％配合し、それ
以外の原料としてＧＰ分として新聞古紙ＤＩＰ７％、上
質紙古紙ＤＩＰ・模造紙古紙ＤＩＰ・上質電子写真用転
写紙古紙ＤＩＰを合わせて６３％とし、古紙ＤＩＰ合計
で７０％配合した。その他の薬品・添加物等は実施例１
と同等にして、試料を作成した。

【００２６】（実施例５）実施例１の原料配合・薬品添
加に加えて、サイズプレス工程にてスチレン・アクリル
樹脂系の防滑剤（日本ＰＭＣ：ＡＴ９４３Ａ）を０．２
％塗布し、実施例５として試料を作成した。

【００２７】（比較例１）実施例１のカオリンから炭酸
カルシウム（奥多摩工業：タマパールＴＰ−１２１−６
Ｓ）７％とした以外は実施例１の原料配合・薬品添加で
試料を作成した。但し、抄造時の配合原料はｐＨ７．７
となった。

【００２８】（比較例２）実施例１のカオリンからタル
ク（勝光山鉱業所：ＲＫタルク）とし、全充填填料をタ
ルクで１０％とした以外は、実施例１の原料配合・薬品
添加で試料を作成した。

【００２９】（比較例３）実施例１の中性ロジン系サイ
ズ剤からＡＫＤ０．３５％とした以外は、実施例１の原
料配合・薬品添加で試料を作成し、比較例３とした。

【００３０】（比較例４）実施例１の中性ロジン系サイ
ズ剤からＡＫＤ０．５０％とした以外は、実施例１の原
料配合・薬品添加で試料を作成し、比較例４とした。

【００３１】（比較例５）実施例１の中性ロジン系サイ
ズ剤からＡＫＤ０．２０％、カチオン性ポリマー型中性
サイズ剤（荒川化学：ＮＰＰＳ）０．７７％とした以外
は、実施例１の原料配合・薬品添加で試料を作成し、比
較例５とした。

【００３２】（比較例６）実施例１の中性ロジン系サイ
ズ剤からＡＫＤ０．２５％とした以外は、実施例１の原
料配合・薬品添加で試料を作成し、比較例６とした。

【００３３】次に、前記実施例１〜５及び実施例１〜６
で製造した電子写真用転写紙の性能を表１および表２に
示す。

【００３４】尚、表中のステキヒトサイズ度は、ＪＩＳ
Ｐ８１２２に拠り、摩擦係数は、ＪＩＳ Ｐ８１４７
における水平法にて行い、紙の縦目、横目で測定した。
また、重送率は、それぞれの方法で製造した電子写真用
転写紙をギロチン断裁機、または自動断裁機で断裁した
試料を使用した。評価はテストチャート紙を複写機で複
写した際、重送回数を複写枚数に対する割合を複写枚数
１０００枚当たりの数に換算して示した。更に、つれ出
し率は、上記の試料においてテストチャート紙を複写す
る際に、発生したつれ出しをその発生した枚数別にカウ
ントし、１０００枚当たりの発生回数として換算した。

【００３５】

【表１】

【００３６】

【表２】

【００３７】表１及び表２から、内添サイズ剤に中性ロ
ジン系サイズ剤、及びサイズ定着剤、填料にカオリンを
主成分としてタルクを併用した電子写真用転写紙は、摩
擦係数及び重送、つれ出し率において顕著な差異が見ら
れることが明らかである。更に、スチレン−アクリル系
の防滑剤を紙表面に塗布した実施例５の処方でつれ出し
率において最も効果の高い電子写真用転写紙を得たこと
が確認される。また、実施例における紙のサイズ性とし
ては、２０〜２５秒の範囲にあり、電子写真用転写紙と
しては充分なサイズ性となっている。この点からも同処
方においては、電子写真特性、サイズ性の付与に有効な
手段であることが見受けられる。

【００３８】

【発明の効果】以上のように、本発明である電子写真用
転写紙は、充填填料にカオリンを使用し、また内添サイ
ズ剤として中性ロジン系サイズ剤及びサイズ定着剤を使
用することにより、従来成し得なかったような優れたサ
イズ性を発現させることができ、モース硬度の低いカオ
リンを主成分としてタルクを併用した充填填料を使用し
た為、断裁面のカエリの少ない紙を得て、加えて、紙表
面に防滑剤を塗布することにより適性な滑り特性を付与
し、重送・つれ出しの少ない電子写真用転写紙を提供す
ることができるものである。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 カオリンを主成分とするとともにタルク
   を併用した填料、中性ロジン系サイズ剤およびサイズ定
   着剤を含有する中性紙であって、その表面にサイズプレ
   ス工程において防滑剤が塗布されていることを特徴とす
   る電子写真用転写紙。