JPH08314122A - カラー複製画像の色調の管理調整法 - Google Patents

カラー複製画像の色調の管理調整法

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JPH08314122A
JPH08314122A JP7146935A JP14693595A JPH08314122A JP H08314122 A JPH08314122 A JP H08314122A JP 7146935 A JP7146935 A JP 7146935A JP 14693595 A JP14693595 A JP 14693595A JP H08314122 A JPH08314122 A JP H08314122A
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JP7146935A
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Takashi Numakura
孝 沼倉
Iwao Numakura
巌 沼倉
Susumu Kitazawa
進 北沢
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Yamatoya and Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 カラー複製画像の製作において、階調と色調
の調整を統合(融合)化した新しい色分解技術を提供す
る。 【構成】 記録媒体に記録されたカラー原稿画像から記
録媒体に入射する光量値と記録媒体上に形成される濃度
値との相関曲線を介して得た各画素の光量値を網点階調
に変換してカラー複製画像を製作するときの色調の管理
調整法が、カラー原稿画像の最明部と最暗部の間の所望
部位に、色調管理ポイントを設定し、前記色調管理ポイ
ントにおいて、色調の調整条件を所望する色版(C版、
M版、Y版、及びBL版)の網点%値で規定し、前記各
色版用に求められた一定の<階調変換式>を用いて、各
色版用の各画素の光量値を階調変換するとともに色調を
管理調整する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種の記録媒体に記録
されたカラー原稿画像から入取される画像情報、例えば
写真感光乳剤層に記録撮影された連続階調のカラーフィ
ルム(透過型)原稿画像から入取される画像情報、を階
調変換して網点階調(ハーフ・トーン)のカラー複製画
像(印刷画像)を製作するときなどに適用される新規な
色調の管理調整法に関する。
【0002】更に詳しくは、カラー原稿画像の画像情報
として従来の濃度情報値を利用するのではなく、記録媒
体の特性曲線(記録媒体に入射される光量値と記録媒体
上に形成される濃度値により規定される特性曲線)の影
響を排除するために光量値を使用するとともに、特定の
階調変換式を用いてカラー原稿画像の前記光量値を階調
変換する際に、色調を調整する機能を組込むことによ
り、階調(濃度階調またはグラデーションともいう。)
はもとより色調(カラー・トーン)が定量的、合理的に
コントロールされたカラー複製画像を製作するための新
しい階調変換技術を提供するものである。
【0003】本発明は前記したように階調と色調のコン
トロールを統合化した新しい階調変換技術に関するもの
である。しかしながら、本発明の以下の説明は、従来技
術の色調調整法を合理化、定量化したという意味におい
て、特に色調の管理調整法に力点が置かれて説明され
る。従って、本発明の利用分野は、ハーフ・トーンのカ
ラー複製画像を製作するときの色調の管理調整に限定さ
れず、同時的に階調のコントロールを合理的に行なう上
でも重要なものであるということに留意されるべきであ
る。
【0004】
【従来技術】周知のように各種の記録媒体上に記録され
たカラー原稿画像から各種の複製技術により、印刷画
像、複写画像(コピー画像)、プリンター出力画像さら
にはTV(ビデオ)画像などの各種のカラー複製画像
(本発明において、「複製画像」とは、前記した意味に
おいて最広義に解釈されるべきである。)が製作されて
いる。これらカラー複製画像の製作において、第一にカ
ラー原稿画像のもつ濃度階調(グラデーション)と色調
(カラー・トーン)をカラー複製画像上にHi−Fiカ
ラー(High-Fidelity ,高い忠実度のカラー)で再現す
ること、第二に所望の調子(階調と色調の両者を含
む。)をもったものに調整すること、は極めて重要な課
題である。
【0005】しかしながら、従来技術においては、前記
した課題を合理的に、作業規則性をもって遂行すること
ができないでいるのが現状である。これは、前記したカ
ラー原稿画像の調子(階調と色調)をカラー複製画像上
に忠実に再現させる技術、さらにはカラー原稿画像の調
子を所望する調子に調整(修正または変更)するという
技術において、その基本となるカラー原稿画像の画像情
報、特に濃度領域における画像情報をハーフ・トーン階
調へ変換するための非線形変換処理技術(以下、画像の
階調変換技術あるいは画像の階調変換法という。)に、
合理的な理論の裏付けを持たず、画像の階調変換を人間
の経験と勘に大きく依存し非科学的、非合理的に行なっ
ているからである。
【0006】これを代表的かつ具体的な技術分野として
カラー印刷画像の製作技術を引用して説明する。従来技
術においては、カラーフィルム原稿(カラーフィルム原
稿のうち、約90%が透過型、透過タイプのものであ
る。)から複製画像であるカラー印刷画像を製作する場
合、カラーフィルム原稿の最明部(H部)から最暗部
(S部)に至る濃度特性を合理的に把握する着意をもた
ず、さらに連続階調のカラーフィルム原稿画像と複製画
像である網点階調のカラー印刷画像の相関関係を決定す
る『色分解カーブ(色分解作業特性曲線、網点階調特性
曲線などともいわれている。)』の設定が、全く人間の
経験と勘に依存しているといえる。
【0007】一般に、カラー印刷画像の製作は、カラー
フィルム原稿画像(以下、単にカラー原稿画像とい
う。)をカラースキャナにより色分解を行ない、かつ多
色製版(一般にはC版,M版,Y版,BL版の4版が1
組とされている。)を行なって網点階調のカラー印刷画
像が複製される。なお、周知のように前記C版(シア
ン)、M版(マゼンタ)、及びY版(イエロー)は、加
色法のR(レッド)、G(グリーン)、及びB(ブル
ー)に対応する減色法での補色関係をなすものであり、
BL版はブラックまたは墨版といわれるものである。前
記したカラースキャナあるいはトータルスキャナはメカ
トロニクス化された極めて高価な装置であるが、当業界
において大きな問題点の一つは、その稼働率が平均して
約30%という極めて低い水準にあることである。高価
なカラースキャナー等が前記した低い稼働率にある主た
る理由は、カラースキャナを操作するためのセットアッ
プ時間(scanner setup time)が長いこと、色分解作業
により得られる製品の品質が不安定かつ不十分なため再
スキャン(rescan, remake)が多いことなどである。
【0008】これを少し技術的観点から考察してみる
と、前述したように色分解作業の用具としては、一見し
て高度かつ高価なメカトロニクス化されたカラースキャ
ナ等が使用されているものの、色分解作業の複数の要素
技術、例えば色再現・色補正・色修正(Color Reproduc
tion, Color Correction )の技術と濃度階調(Gradat
ion )の変換技術が整合性をもって体系づけられておら
ず、このことがカラースキャナの低稼働率の主原因をな
しているということができる。
【0009】周知の通り、前記した二つの要素技術のう
ち、色再現等の技術については、マスキング方程式(Ma
sking equation)やノイゲバウアー方程式(Neugebauer
equation )などの適用により科学的に追求されてきて
いる。しかしながら、後者の画像の濃度階調の変換技術
(これは、カラー原稿画像中の全ての画素に、どのよう
な大きさの網点を設定すべきかという問題に帰する。)
については、合理的な理論の裏付けを行なうことがない
ままおきざりにされてきており、この部分は人間の経験
や勘に大きく依存している状態である。
【0010】このような状態のもとで色分解用の各種の
機器が開発されているため、色調と階調の統一的調整の
もとに色分解を実践するという観点からみると、機器自
体の基本設計技術が未熟であることに加えて、実作業に
おいては高価な高度化された電子的色分解装置(カラー
スキャナ)を使用しながらオペレーターの推測作業、オ
ペレーターの経験と勘を排除することができず(withou
t operator evalution, without operator's guess wor
k )、常に安定した高品質のカラー印刷画像を製作する
ことができないでいる。
【0011】特に、カラー原稿画像が適切な撮影および
露光条件、適切な現像条件で製作された標準的な原稿で
ない場合、例えば露光オーバーの明るすぎる原稿、露光
アンダーの暗すぎる原稿、ハイキーやローキーの原稿、
更には色カブリ(color cast)のある原稿や退色原稿
(faded original)などの非標準的な原稿である場合、
色分解作業を合理的、効率的に実施することができな
い。即ち、これら非標準的なカラー原稿画像に対して合
理的に色分解作業を行なうことができず、前記したカラ
ースキャナの低稼働率、製品の品質の不安定性、再スキ
ャン率の増大などの問題をかかえている。
【0012】
【発明が解決しようとする問題点】本発明者らは、カラ
ー原稿画像の画質(階調と色調の両者により評価される
品質のこと。)を忠実に再現することはもとより、さら
に進んで前記した各種のカラー原稿画像から所望の調子
(階調と色調)をもつハーフ・トーン階調のカラー複製
画像を合理的に製作するためには、色再現・色補正(修
正)技術の向上に先立ち、カラー原稿画像の各画素の濃
度階調の変換技術を合理的なものにしなければならな
い、という基本認識をもっている。なお、カラー原稿画
像の濃度階調は、所定大きさの画素(スクリーン線数に
より規定される一つの画素の大きさともいえる。)にお
いて、網点などのドットの大きさをかえることによって
(面積階調法)、または規定ドットの配列状態をかえる
ことによって(多値面積階調法)、あるいは画素自体の
濃度を変えることによって(直接濃度階調法)、原稿画
素の濃度階調をハーフ・トーンのカラー複製画像上に再
現させることは周知のことである。前記したように、ハ
ーフ・トーン階調の表現法として各種のものがあるが、
以下、説明の便宜上、ハーフ・トーン階調のことを網点
階調という。
【0013】前記本発明者らの基本認識のもとに、本発
明者らは先に新規な階調変換式のもとでカラー原稿画像
の階調を合理的に階調変換する方法を提案し、一定の成
果を収めた(例えば、特願昭63−114599号,U
SP4,924,323;特願平 1−135825
号,USP5,313,310;特願平 1−2121
18号,USP5,057,931;特願平 3−78
668号,USP5,134,494などを参照)。
【0014】本発明者が先に提案した新規な階調変換法
は、本発明と深い関係を有することから、ここで前記階
調変換法の概略を説明し、かつその改良点を説明する。
いうまでもなく、前記改良点が本発明の必須の技術的構
成要件となるものである。引き続き、カラー複製画像の
製作技術として、カラー印刷画像の製作を例にとり説明
することとする。
【0015】従来技術において、カラー原稿画像の色分
解は、文字通りの原稿画像(被写体、実体画像、actual
sceneのことで、例えば被写体がリンゴならばリンゴそ
れ自体のこと。)から写真感光材料(写真感光乳剤)と
いう「記録媒体」に入射される被写体を所定の露光条件
(周知のごとく、入射光の強さIと入射時間tの条件の
とき、露光量EはE=Itで表される。)で記録したカ
ラー写真画像の濃度情報を基礎として色分解作業(カラ
ーセパレーション作業とは、前記したように階調の再現
と色調の再現の両者を含むものである。)を行なってい
る。周知のように静物や人物などの被写体が撮影された
写真感光材料には現像により写真濃度(photographic d
ensity)が形成され、これが媒体画像となるものであ
る。前記した写真濃度(黒化度)と写真用感光材料の露
光量Eの相関関係を表わす曲線が、写真濃度特性曲線
(photographic dencity characteristic curve)であ
る。これは、縦軸に写真濃度(D)(D=logIo/
I)、横軸に露光量Eの対数値(logE)をとって表
示されるものである。なお、フィルムや乾板(透過原
稿)では透過光の強さIと入射光の強さIoとの比が、
また印画紙(反射原稿)では反射光の強さIと完全反射
光の強さIoとの比が用いられることはいうまでもない
ことである。
【0016】前記した写真濃度特性曲線(以下、単に濃
度特性曲線という。)は、典型的には下に凸形状の足
部、略直線状の直線部(直線状中間部)、上に凸形状の
肩部を有する複雑な曲線(この点は、後述する図1を参
照のこと。)である。そして、従来技術において、色分
解作業は、カラー原稿画像の各画素の濃度情報値をベー
スにして行なわれるものである。別言すれば、従来技術
の色分解技術は、前記濃度特性曲線の縦軸(濃度値)の
立場から組み立てられたものである。そして従来技術が
色分解作業の基礎とするカラー原稿画像(媒体画像)の
画像情報値(濃度情報値)は、原稿画像(実体画像、被
写体、実景)の画像情報値とは比例関係に無く、記録媒
体である写真用感光材料(写真感光乳剤)の感光特性
(濃度特性曲線)に大きく影響されたものである。即
ち、媒体画像であるカラー原稿画像の写真濃度は、被写
体(実体画像、実景)からの画像情報値である露光量
(対数値)に直線関係(1:1の45°の直線関係)で
相関したものではない。なお、人間の視覚における明暗
に対する弁別特性が、対数的であることは周知のことで
あり、人間は被写体(実体画像)から視覚系に入射され
る光量を前記した弁別特性に基づいてその明暗を評価し
ている。ここでは、濃度変化の勾配が直線的(リニア)
であるものを自然なものとして感じているのである。
【0017】前記したことから明らかのように、カラー
印刷画像の製作において、写真感光材料に記録された媒
体画像の濃度値(D=logIo/I)を手掛かりに色
分解作業を進めると、それは写真用感光材料の感光特性
に影響されたあとの濃度情報値を使用していることにな
り、複製の真の対象となる被写体(実体画像、実景)か
ら得られる画像情報値(光量値)を利用していることに
はならない。本発明者らは、前記した状況を踏まえて、
カラー印刷画像を製作するときの画像情報として、記録
媒体(写真用感光材料)の感光特性(濃度特性曲線)に
よって非直線的に変更された媒体画像の画像情報値、即
ち濃度値を使用するアプローチではなく、被写体(実体
画像、実景)から得られる第1次の(生の、原初的な)
露光量などの光量に関係した画像情報値を基礎として印
刷画像を製作する方法について鋭意検討を加えた。
【0018】その結果、色分解作業において第一義的に
重要な濃度階調の変換作業において、(1) カラー原稿画
像が撮影記録されている写真感光材料の濃度特性曲線
(写真濃度特性曲線)の縦軸(D=logIo/I)の
濃度値から横軸(logE)の値を求め(以下、縦軸を
D軸、横軸をx軸ともいう。)、別言すればカラー原稿
画像(媒体画像)のD軸上の濃度値からx軸上の光量値
を求め、(2) より具体的にはカラー原稿画像上の任意の
画素点(n点)のD軸上の濃度情報値(Dn )を前記濃
度特性曲線を介してx軸上に投影し、対応する画素の露
光量に関する画像情報値(xn )を求め、次いで、(3)
前記のようにして得られたxn 値(光量値)を基礎と
し、かつ本発明者らが先に提案した階調変換式(これ
は、後述する本発明で採用している階調変換式と全く同
じものである。しかし、本発明は、前記階調変換式の利
用面、応用面において全く異なるものである。)のもと
で画像の階調変換を行なった場合、被写体(実体画像、
実写)に忠実な画像特性を有する優れた画質のカラー印
刷画像が製作されることを見出だした。
【0019】前記した本発明者らの先に提案した階調変
換技術は、前記したことから明らかのように、網点階調
(ハーフ・トーン)のカラー印刷画像を製作する上で第
一義的に重要な階調変換のために応用されるものであ
る。即ち、前記した本発明者らの提案した階調変換技術
は、第一義的にはカラー原稿画像を含めて各種の原稿画
像の濃度階調を1:1の忠実度をもち、人間の視覚にと
って自然な階調のカラー複製画像を製作するために使用
されるものである。なお、前記した階調変換技術は、カ
ラー原稿画像が標準的なものだけでなく、非標準原稿
(露光オーバーや露光アンダーのもの、ハイキーやロー
キーのもの、更には色カブリや退色したものなど)であ
っても、被写体(実体画像)が持っていたと認められる
濃度階調を再現する上で有用なものである。また、前記
した階調変換技術において、濃度階調の忠実な再現のも
とに色調(カラー・トーン)も豊かな内容で再現できる
ことが確かめられた。
【0020】しかしながら、前記したように本発明者ら
の先に提案した階調変換技術は、 ・ 第一義的には色分解作業において、階調の変換を重
視したものであり、即ち、 ・ 濃度階調のHi−Fi変換(連続階調の原稿画像と
網点階調の複製画像の間において1:1の高忠実度で階
調を変換すること)を実現することを重視したものであ
り、 ・ 前記階調変換技術により高忠実度でかつ合理的に階
調変換ができること、かつ前記階調変換に伴なって色調
も豊かに再現されることが確かめられた。
【0021】ところで、カラー印刷画像の品質に対する
市場ニーズは、カラー原稿画像通りの調子(階調と色
調)をもったカラー印刷画像の複製というニーズにとど
まらず、ますます高度、複雑、多様化して来ている。例
えば、カラー原稿画像中の特定部分(人物、陶磁器類、
衣服類、家具、木工製品類、絵画など)あるいは特定部
位(領域)などの色を強調再現してほしいとか、全体的
な色調をブルー調、ダークグリーン調、ライトグリーン
調、ピンク調、セピア調などの所望のものに変更してほ
しいなどというニーズがある。これらのニーズに対応す
る場合、例えば従来の色補正(カラー・コレクション)
技術により対応する場合、特定部分の色調を要求通りに
再現できたとしても画像全体の調子が歪んで画質劣化が
ひどく、前記ニーズに満足に答えられないという問題に
直面する。いうまでもなく、前記ニーズに対応するため
には、特定部分あるいは特定部位(領域)の色調と画像
全体の調子の双方を人間の視覚にとって自然な感じを与
える階調と色調の変換技術を確立することが重要であ
る。
【0022】前記した市場ニーズの高度化、複雑化に対
応するためには、色分解技術において、階調変換技術と
色調の調整技術の統一化(融合化)が求められているこ
とを意味するものである。その場合、注目しなければな
らない点は、カラー印刷画像を形成している網点は、常
に、階調(グラデーション)と色調(カラー・トーン)
または濃度と色の双方に直接的な関係をもっているとい
う点である。このことは、画質を決定するのは網点の大
きさ(濃度階調を規定する。)と前記網点に塗布される
着色インキ(色調を規定する。)であることから当然の
ことである。そして、本発明者らは、先に提案した階調
変換技術において、網点の大きさ(網点%値)を合理的
に調整管理する手段を確立している。従って、本発明者
らは、前記した階調調整技術と色調調整技術の統合化
は、本発明者らの先に提案した階調変換技術の延長線上
にあるという認識にもとに、鋭意、検討を加えた。
【0023】その結果、本発明者らは、先に提案した階
調変換技術の中核である階調変換式を採用しつつ、これ
に色調調整という考え方を融合したとき、色分解作業に
おいて色調と階調の両者を合理的に調整管理することが
できるという知見を得た。本発明は、前記知見をベース
にして完成されたものであり、本発明により色調と階調
の両者を合理的に調整管理する色分解技術、特に従来技
術では困難視された豊かな階調の再現性の中に色調を所
望なものに調整することができるという色調の管理調整
技術を提供するものである。なお、本発明は、前記した
ように階調と色調の両者を統合化した色分解技術を提供
するものである。しかしながら、本発明の以下の説明に
おいては、従来技術が合理的、定量的に色調を管理でき
ないでいる現状に鑑み、特に色調の管理調整法に力点が
置かれる。
【0024】
【問題点を解決するための手段】本発明を概説すれば、
本発明は、所定の記録媒体に記録されたカラー原稿画像
から前記記録媒体の特性曲線(記録媒体に入射する光量
値と記録媒体上に形成される濃度値との相関曲線)を介
して得た各画素の光量値をハーフトーン階調(以下、網
点階調という。)に階調変換してカラー複製画像を製作
するときの色調の管理調整法において、前記色調の管理
調整法が、 1.カラー原稿画像のH部(最明部)〜S部(最暗部)
の間の所望部位に、カラー複製画像の色調を管理するた
めの色調管理ポイント(M1 )を設定すること、 2.前記色調管理ポイント(M1 )において、色調の調
整条件を所望する色版(C版、M版、Y版、及びBL
版)の網点%値で規定すること、 3.前記色調管理ポイント(M1 )における光量値と前
記色調の調整条件を反映する色版の網点%値、及びH部
とS部に設定する所望の網点%値を下記<階調変換式>
に代入してγ値を決定し、前記色版のH部〜S部に至る
全画素の光量値を網点%値に変換するため<階調変換式
>を準備すること、 4.前記γ値が決定された各色版用の<階調変換式>を
用いて、各色版用の各画素の光量値を階調変換するとと
もに色調を管理調整すること、の工程から成ることを特
徴とする網点階調のカラー複製画像を製作するときの色
調の管理調整法に関するものである。 <階調変換式> yn =yH +[α(1−10-kx )(yS −yH )/
(α−β)] 上記<階調変換式>において、各記号の意味は、以下の
通りである; x: (xn −xH )を示す。即ち、前記記録媒体の特
性曲線を利用して求めたカラー原稿画像の任意の画素点
(n点)の濃度情報値(Dn )に対応する光量値
(xn )から、同様に求めたカラー原稿画像のH部の濃
度情報値(DH )に対応する光量値(xH )を差し引い
て得られる基礎光量値を示す。 yn : カラー原稿画像上の任意の画素点(n点)に対
応したカラー複製画像上の画素に設定される網点%値。 yH : カラー原稿画像上のH部に対応したカラー複製
画像上のH部に予め設定される網点%値。 yS : カラー原稿画像上のS部に対応したカラー複製
画像上のS部に予め設定される網点%値。 α: カラー複製画像を記録するための画像表現媒体の
表面反射率。 β: β=10により決められる数値。 k: k=γ/(xS −xH )により決められる数値。
但し、xS は、前記記録媒体の特性曲線を利用して求め
たカラー原稿画像のS部の濃度情報値(DS )に対応す
る光量値(xS )を示す。 γ: 任意の係数。
【0025】以下、本発明の技術的構成について詳しく
説明する。なお、説明の便宜上、ここで画像情報値と原
稿画像について説明しておく。本発明において、カラー
原稿画像からカラー複製画像を製作する上で使用する画
像情報として、従来技術のように濃度に相関した画像情
報値を使用するのではなく、光量に相関した画像情報を
用いる点に大きな特徴点がある。また、本発明において
カラー原稿画像は、所定の記録媒体に記録や蓄積された
ものをいい、媒体画像ともいう。これに対して、前記記
録媒体に記録や蓄積される前の画像、即ち複製の真に対
象となるものを実体画像(被写体、実物、実景)とい
う。以下、引きつづき、本発明の色調の管理調整法を、
カラー複製画像としてカラー印刷画像を製作する例を引
用して説明することにする。従って、これは説明の便宜
のためであり、本発明の色調の管理調整法は、カラー印
刷画像の複製の場合だけに適用されることを意味するも
のではない。
【0026】まずはじめに、本発明の理解を得るため
に、色調の調整法については後で詳述するとして、前記
<階調変換式>を利用した階調変換技術について概略、
説明する。前述したように、現在、カラー印刷画像の複
製作業において、カラースキャナ色分解装置が極く一般
的に使用されており、前記装置による色分解作業はカラ
ー原稿画像(媒体画像で透過原稿と反射原稿を含む。)
から得られる濃度情報値を基礎にして行なわれている。
より具体的にはカラー印刷画像の製作は常法として、一
般にカラー原稿画像(媒体画像)からR,G,Bの各フ
ィルターを通して得られる濃度情報値に基づきC版(シ
アン),M版(マゼンタ),Y版(イエロー)、BL版
(ブラック)を製作している。しかしながら、このよう
に写真用感光材料という記録媒体に記録されたカラー原
稿画像(媒体画像)の濃度情報値を利用する方法は、前
述した通りの限界(欠点)を有するものである。
【0027】これに対して、本発明は前記したように、
複製の真の対象が記録媒体に記録された画像(媒体画
像)ではなく、あくまでも媒体画像の元をなす文字通り
のカラー原稿画像、即ち被写体(実体画像)それ自体で
あり、複製時に使用すべき画像情報値は被写体から記録
媒体に入射される光量に相関した画像情報値を基礎とす
べきであるという考え方に立脚している。前記した点
が、本発明の階調変換技術と従来技術の基本的な相違点
である。
【0028】これを別の角度から説明すると次のように
なる。色分解技術においては、連続階調のカラー原稿画
像(例えば透過型のカラーフィルム原稿)を網点階調の
カラー印刷画像に階調変換しなければならないが、前記
の通り、連続階調画像と網点階調画像の相関関係を規定
するものが色分解カーブ(階調変換カーブ)である。そ
して、従来の色分解カーブは記録媒体である写真用感光
材料の感光特性曲線(D軸−X軸直交座標系で規定され
る写真濃度特性曲線)のD軸(濃度軸)上に形成された
濃度情報値を基礎として設定されている。これに対して
本発明の色分解カーブは、前述したように写真濃度特性
曲線のX軸上の被写体(実体画像)の光量に相関した画
像情報値に基づいて設定される。即ち、従来の色分解技
術においてはD軸色分解カーブを用いているのに対し、
本発明はX軸色分解カーブを用いているということがで
き、両者は基本的に異なるものである。
【0029】次に、本発明の前記<階調変換式>を用い
た画像の階調変換法において、カラー原稿画像の各画素
の画像情報値、即ち光量値の求め方について説明する。
まずカラー原稿画像(媒体画像)の撮影に使用された記
録媒体である写真用感光材料の特性曲線、具体的には写
真濃度値(D=logIo/I)と被写体(実体画像、
実景)から前記記録媒体である写真用感光材料に入射さ
れる光量に相関した画像情報値、即ち露光量(E=I
t)の対数値との関係を示す濃度特性曲線を準備する。
次に、カラー原稿画像中の任意の画素(n点)の濃度値
(Dn )から前記濃度特性曲線を介して光量値(xn
を求めるために、前記濃度特性曲線を関数化する。これ
には、例えば写真感材メーカーから技術資料として提供
している前記記録媒体に対応する濃度特性曲線を関数化
すればよい。合理的に関数化できれば、D軸上のDn
をx軸上のxn 値に容易に変換することができる。図1
に濃度特性曲線(F社製、フジクローム)を示す。ま
た、表1に前記図1の濃度特性曲線を数式化した結果を
示す。なお、表1に示されるように、可能な限り正確に
濃度特性曲線を数式化するために、数式化区分を8区分
として、各区分において数式化を試みている。数式化区
分を多くすればするほど、正確な関数式が得られること
はいうまでもないことである。
【0030】
【表1】
【0031】前記濃度特性曲線の数式化において、カラ
ー原稿画像(媒体画像)の濃度値を示すD軸の目盛(ス
ケール)と、被写体(実体画像)のlogEで示される
光量に相関した画像情報値を示すX軸の目盛(スケー
ル)が同一であるとして、DとXの相関を規定する関数
を求めた。これは、次の観点から行なった一種の擬制で
あり、本発明者らにおいて合理的なものと考えている。
この意味において、図1のX軸上に擬制値という用語が
使用されている。即ち、本来、写真濃度特性曲線におい
ては、X軸に露光量Eの対数値logE=logI×
t)が位置づけられるが、これは視覚の明暗に対する弁
別特性がD軸の濃度の認知(視感)と同じように対数的
であることに対応していること、従って上記スケールに
関する擬制は合理的なものであると考える。なお、本発
明において前記した目盛(スケール)づけは一種の簡便
法であり、これに限定されないことはいうまでもないこ
とである。
【0032】本発明は、前記したように被写体(実体画
像)が記録媒体(写真用感光材料)に撮影記録されて形
成されたカラー原稿画像(媒体画像)の濃度値(D
n 値)を基礎とするのではなく、被写体(実体画像)か
ら記録媒体に入射されるx軸で表わされる光量に相関し
た画像情報値(xn 値)を基礎とするものである。前記
した如く、濃度特性曲線が表1に示されるようにDn
とxn 値は、X=f(D)の関数式により相関されてい
るため、容易にDn 値からxn 値を求めることができ
る。
【0033】前記したカラー原稿画像の濃度値(D
n 値)から光量値(xn 値)を求める方法は、典型的に
はカラー原稿画像としてカラーフィルム(透過型)の原
稿画像、即ち記録媒体として特定の写真濃度特性曲線を
有する写真感光乳剤層からなる透過型のカラー原稿画像
に適用されるものである。一方、絵画などの反射型カラ
ー原稿画像の場合、その濃度特性曲線がリニアなものと
して、即ち濃度値(Dn 値)と光量値(xn 値)が1:
1で相関しているものとして取扱えばよい。より具体的
には測定される濃度値(Dn 値)をそのまま光量値(x
n 値)として利用すればよい。
【0034】次いで、本発明の階調変換技術は、前記の
ようにして求めた光量値(xn 値)と前記<階調変換式
>を使用して、色分解カーブ(階調変換カーブ)、即ち
従来のD軸色分解カーブにかわるx軸色分解カーブを求
め、画像の階調変換を行なえばよいだけである。即ち、
所定の濃度特性曲線のもとで、原稿画像上の任意の画素
(n点)における濃度値(Dn )から対応する画素の光
量に相関する画像情報値(xn )を求め、該(xn )値
を前記<階調変換式>に代入することにより階調強度値
(yn )、即ち網点面積%値(以下、単に網点%値とい
う。)(yn )が計算される。この網点%値(yn )を
カラースキャナの網点発生器(ドットジェネレータ)に
入力し所望のスクリーンを形成すればよい。
【0035】本発明の前記した<階調変換式>の誘導過
程を、ここで簡単に説明する。前記した網点階調である
カラー印刷画像の製作時に用いられる網点%値(yn
を求める<階調変換式>は、一般に認められる濃度公式
(写真濃度、光学濃度)、即ち D=logIo/I=log1/T Io=入射光量 I =反射光量又は透過光量 T =I/Io=反射率又は透過光量 から誘導したものである。前記した濃度Dに関する一般
公式を、製版・印刷に適用すると次のようになる。 製版・印刷における濃度(D' )= log(Io/I)=log 単位面積 ×紙の反射率/[(単位面積−網点面積)×紙の反射率)+網点面積×インキ の表面反射率] =log αA/[α{A−(d1+d2+……dn)}+β(d1+d2 +……dn)] ここで、 A:単位面積 dn:単位面積内にある夫々の網点の面積 α:印刷用紙の反射率 β:印刷インキの表面反射率 である。
【0036】本発明はこの製版・印刷に関する濃度式
(D' )を基本として、連続階調のカラー原稿画像上の
任意の標本点(画素)(n点)における基礎濃度値
(x)と、これに対応した網点階調のカラー印刷画像上
の標本点における網点の網点%値(yn )との関連づけ
が理論値と実測値が合致するように、前記<階調変換式
>を誘導したものである。
【0037】本発明の前記<階調変換式>の運用におい
て、カラー印刷画像などの複製画像を製作する場合、一
般にC版ではyH に5%,yS に95%,M版およびY
版ではyH に3%,yS に90%という網点%値が使用
される。なお、前記<階調変換式>の運用において、濃
度値に濃度計測定値を使用し、yH とyS に前記したよ
うな百分率数値(%値)を用いると、y値も百分率数値
で算出される。
【0038】本発明の前記<階調変換式>の運用におい
て、次のように変形して利用することはもとより、任意
の加工、変形、誘導するなどして使用することも自由で
ある。 yn =yH +E(1−10-kx )・(yS −yH ) 但し、E=1/(1−β)=1/(1−10) 前記の変形例は、α=1としたものである。これは、例
えばカラー印刷画像を表現するために用いられる印刷用
紙(基材)の表面反射率を100%としたものである。
αの値としては、任意の値を取り得るが、実務上1.0
として構わない。このことはビデオ画像などの輝度画像
においても同じである。
【0039】また、前記変形例(α=1.0)によれ
ば、カラー印刷画像上の最明部(H部)にyH 値を、最
暗部(S部)にyS 値を予定した通りに設定することが
でき、この点は本発明の大きな特徴点をなすものであ
る。前記した点は、カラー印刷画像上のH部において
は、定義によりx=0となること、またS部においては
x=xS −xH となること、即ち、 −k・x=γ・(xS −xH )/(xS −xH )=−γ となることから明らかである。このように、本発明の<
階調変換式>(a=1の変形例)を利用することによ
り、常に予定した通りのyH 値とyS 値をカラー印刷画
像上のH部とS部に設定することができる。この点は、
利用者が作業結果を評価したり考察する上で極めて重要
な点である。例えば、カラー印刷画像におけるyH とy
S に所望する値を設定しγ値を変化させると(但し、α
=1.0)、各種のX軸色分解カーブ(階調変換カー
ブ)が得られる。そして、これらのX軸色分解カーブの
もとで製作されたカラー印刷画像の画質内容をγ値との
関係で容易に評価することができる。
【0040】本発明の前記<階調変換式>を利用して多
色製版(一般に、C版/M版/Y版/BL版の四版が使
用されている。)用の各色版のx軸色分解カーブ(階調
変換カーブ)を設定するには、次のようにすればよい。
当業界においては、まず基準となるC版用の色分解カー
ブ(階調変換カーブ)が設定され、次いで他の色版がグ
レーバランスやカラーバランスが維持されるように設定
されるのが常法である。前記したグレーバランスの維持
とは、三つの色版(C/M/Y版)により中性濃度(グ
レー)が再現されるための条件であり、重要な要件であ
る。当業界においては、グレーバランスを維持するため
に、一般に下記表2に示される標準値が採用されてい
る。表2においてM1 は、H部〜S部のダイナミックレ
ンジ(濃度域)中間部に設定されるグレーバランス管理
点(以下、中間ポイントともいう。)である。当業界に
おいて、前記M1 点は、表2に示されるようにC版の網
点%値が50%のところに設定されるのが常法である。
1 点が、C版の網点50%値に設定される主たる理由
は、該網点%値の領域が階調の豊かな再現域であること
が広く認められているからである。表2から、当業界に
おいては、M1 点(中間調)において、C版の網点%値
を50%ととし、他の色版(M/Y版)の網点%値を4
0%にセットしてグレーバランスを維持していることが
理解される。
【0041】
【表2】
【0042】前記したように本発明の階調変換技術は、
カラー印刷画像の製作において、カラー原稿画像(媒体
画像)から入手される濃度情報値(Dn )を使用するの
ではなく、被写体(実体画像)から媒体画像を形成する
ための記録媒体に入射される光量に相関した画像情報値
(xn )を使用し、かつ前記<階調変換式>を使用する
ことを前提とするものであり、被写体(実体画像)に忠
実な階調特性を有するカラー印刷画像、更には階調特性
を所望のものに変更したカラー印刷画像を作業規則性を
もって、普遍性と弾力性をもって製作することができ
る。
【0043】次に、本発明の中核的な技術的構成、即ち
前記した階調変換技術に対して色調の調整技術を組込む
こと、別言すれば階調変換技術と色調の管理調整技術の
統合化について説明する。前記した階調と色調の統合化
の契機は、次の点にあった。 (1) 本発明者らの先に提案し、かつ本発明においても使
用する前記<階調変換式>は、前記したようにカラー印
刷画像のH部〜S部に至る全ての画素の網点(ドット)
の網点%値(別言すれば網点の大きさ)を、第一義的に
はカラー原稿画像の有する階調特性を忠実に再現し、か
つ人間の視覚にとって自然な階調特性のものに調整する
うえで重要なツールである。 (2) 各画素に設定される網点%値は、常に、階調と色調
(または濃度と色)の双方に直接的な関係、影響力を持
っている。 (3) 市場ニーズとして、カラー原稿画像の1:1再現
(Hi−Fi再現)のみでなく、画像の特定部分、H部
〜S部のダイナミックレンジの特定部位の色調の強調、
変更、修正をせまる(要求する)ケースが増大してい
る。なお、前記要求において、顧客やデザイナー等は、
それらが所有するカラーチャート(color chart ,な
お、これについては後で詳述する。)により要求内容を
網点%値で提示、指定することが行なわれている。 (4) 従来の色分解技術、特に従来のカラーコレクション
(色修正)により前記ニーズに対応する場合、例えば特
定部分の色調を要求された内容に近似させたとしても、
画像全体の調子(階調と色調)が歪んでしまい、製品と
しての価値を失うケースが多い。
【0044】前記カラーチャート(color chart )と
は、印刷用プロセス4原色インキを使用し、あらゆる色
彩を網点の濃度階調で表現した色再現のための基本スケ
ール(参照テーブル)である。例えば、大日本インキ化
学工業株式会社発行の「DIC GRAF-Gカラーチャート」
(1991年3月)などがある。前記カラーチャートに
おいて、色彩再現のための各色版の組合わせとして下記
に示すような種々の組合わせがある。 1.基本的な組合わせ:C(シアン)とM(マゼンタ)
の組合わせを基本としたチャートがある。例えば、縦軸
に(C)を、また横軸に(M)を、それぞれ網点%値が
0〜100%までの12の階調で印刷して基本パターン
とし、この基本パターンに一定網点%値のY(イエロ
ー)、BL(スミ)が刷り重ねられて構成されたものが
ある。前記一定網点%値のYやBLとして、Y=10
%、BL=10%としたもの、Y=10%、BL=30
%としたもの、Y=50%、BL=10%としたもの、
などがある。 2.他の組合わせ: (1) 縦軸に(Y)、横軸に(M)を組合わせたもの、
(2) 縦軸に(C)、横軸に(Y)を組合わせたもの、
(3) 縦軸に(BL)、横軸に(Y)を組合わせたもの、
(4) 縦軸に(BL)、横軸に(M)を組合わせたもの、
(5) 縦軸に(C)、横軸に(BL)を組合わせたもの。
【0045】前記したように、カラーチャート上の色調
は、各色版(C/M/Y/BL)の網点%値で指定され
ることになる。従って、前記カラーチャートに基づく顧
客やグラフィックデザイナーなどからの色調変更の要求
に対しては、色分解技術として各画素の全ての網点%値
を定量的かつ合理的に管理し、調整する技術を確保して
おかなければならないことはいうまでもないことであ
る。
【0046】前記した背景から、本発明者らは、前記<
階調変換式>が、H点〜S点に至る全画素の網点%値を
完全に定量的かつ合理的に管理調整できる能力を有して
いること、従って色調の調整に対しても有力なツールに
なるものと考えた。これが、前記<階調変換式>を主要
なツールとして階調と色調を統合する色分解技術の開発
の契機である。
【0047】本発明の階調の調整と色調の調整を統合化
した色分解技術、特に色調の管理調整を組込んだ色分解
技術の概要は、次の通りである。
【0048】1.まず、カラー原稿のH部〜S部の間の
所望部位において、カラー複製画像の色調を管理するた
めの色調管理ポイント(M1 )を設定する。なお、本発
明において、前記色調管理ポイント(M1 )の記号とし
て、前述した表2のグレーバランスを維持するための中
間調ポイント(M1 )と同じ記号(M1 )を使用してい
る。これは、色分解技術において中間調領域の階調再現
が重要な点であること、従って色調再現においても重要
であることを反映したものである。なお、色調管理ポイ
ント(M1 )は前記したグレーバランス維持のための中
間調ポイントに限定されず、H部〜S部の間の所望のポ
イントであってよいことはいうまでもないことである。
前記色調管理ポイント(M1 )は、後述の実施例及び図
2で示されるように、縦軸(y軸:網点%値を表示す
る。)と横軸(x軸:光量値を表示する。)の直交座標
において、横軸の光量値で表示される。なお、前記光量
値はカラー原稿画像の濃度値に相関しているので、濃度
値で表示されてもよいものである。
【0049】2.次いで、前記のようにして指定された
色調管理ポイント(M1 )において、色調の調整条件
を、所望する色版(C版、M版、Y版、及びBL版)の
網点%値で決定する。前記色調の調整(変更)条件の具
体的な内容は、前記カラーチャートの説明で述べた通り
である。
【0050】3.次のステップは、前記した条件及び与
件条件を利用して、各色版(C版、M版、Y版、BL
版)の色版画像を製作するために使用される色分解カー
ブ(階調変換カーブ)の準備、より具体的には各色版用
の色分解カーブを設定するための<階調変換式>の準備
である。前記工程(1〜2)により、 ・ 色調管理ポイント(M1 )の光量値、例えば、M1
=0.400、 ・ 色調の調整条件、例えばC版網点%値(50%)、
M版網点%値(20%)、Y版網点%値(10%)、B
L版網点%値(10%)、が設定される。また、各色版
のH部とS部に設定される網点%値(yH ,yS )は、
予め与件として与えられた値あるいは所望する値を設定
する。なお、前記した与件として与えられたyH 値、y
S 値は、本発明の<階調変換式>の運用に関する説明の
ところで述べたように、C版に対してはそれぞれ5%と
95%、M版とY版に対してはそれぞれ3%と90%を
意味する(表2参照)。前記条件のもとに、各色版用の
色分解カーブを決定するために使用される前記<階調変
換式>のγ値が決定される。例えば、C版用の色分解カ
ーブを決定するための前記<階調変換式>のγ値は、次
のようにして決定される。前記<階調変換式>に、xH
=0.00,xS =1.00,xn =M1 =0.40,
α=1.00,yH =0(%),yS =95(%),y
n =50%を代入して解くと、γ=0.45の値が得ら
れる。これにより、C版用の色分解カーブを設定する<
階調変換式>が準備される。他の色版についても同様で
ある。
【0051】4.次のステップは、前記したγ値(0.
45)を有する<階調変換式>を用いて、H部〜SH部
に至る全ての画素点(n点)の光量値(xn )を階調変
換し、C版用の色分解カーブ(階調変換カーブ)を求め
る工程である。別言すれば、C版の色版画像を製作する
ために前記C版用の<階調変換式>を用いて色分解作業
を行なうことである。他の色版についても同様である。
【0052】前記した本発明の階調の調整技術と色調の
調整技術を統合化した色分解技術の有効性は、後述する
実施例において実証される。ここで、本発明の色分解技
術、特に階調と色調の調整機能を組込んだ色分解技術の
他の特徴及び応用分野について説明する。本発明の色調
の管理調整を組込んだ色分解技術は、その応用面として
前記したカラー印刷画像の製作にのみ限定されず、その
応用範囲は広い。本発明の色分解技術は、光、電磁波な
どの情報伝達メディアを利用し被写体(実体画像)を所
望の記録媒体へ記録、撮影または撮像変換したカラー原
稿画像(媒体画像)より、カラー複製画像を製作しよう
とする全ての分野に適用することができる。従って、そ
れぞれのカラー複製画像を製作するシステムに適合する
ように、本発明の色分解技術を運用しなければならない
ことはいうまでもないことである。
【0053】まず、記録媒体の特性曲線、即ち被写体
(実体画像)から所定の記録媒体に入射する光量に相関
する画像情報値(光量値)と記録媒体上に形成される濃
度情報値との相関を示す濃度特性曲線の規定において、
前記特性曲線の規定変数(因子)は、カラー原稿画像に
おいて説明したような露光量の対数値(光量値)と濃度
情報値の組合わせに限定されない。それぞれのカラー複
製画像の製作システムにおいて、被写体(実体画像)の
画像情報の入力媒体(記録媒体)であるセンサーの特性
曲線としては、最広義に解釈して濃度に相関した濃度情
報値(Dn 値)と光量に相関した画像情報値(xn )が
相関する濃度特性曲線(光電変換特性曲線)を規定すれ
ばよい。この種の濃度に相関した画像情報値を示す物理
量としては、最広義に解されるべきであり、例えば同義
語としては、反射濃度、透過濃度、輝度、明度、周波
数、電流・電圧値、などがある。また、被写体(実体画
像)が記録される記録媒体としては、写真用感光材料、
あるいは二次元CCD、光ディスク、磁気ディスク、磁
気テープ、フォトダイオード、などの光電変換素子など
のいずれであってもよい。前記した記録媒体との関係
で、記録媒体の特性である前記濃度特性曲線が、写真濃
度特性曲線(写真用感光材料の場合)、光電変換特性曲
線(光電変換素子の場合)などといわれることはいうま
でもないことである。なお、カラー原稿画像が反射原稿
の場合、前記濃度特性曲線は、直交座標系の45°
(度)の直線で規定されることはいうまでもないことで
ある。
【0054】次に、本発明の色調の管理調整を組込んだ
色分解技術の応用分野について説明する。本発明を、こ
れまで特にカラー印刷画像の製作との関連で説明してき
たが、その応用面は、ことカラー印刷画像の製作に限定
されるものではない。即ち、本発明の色分解技術の応用
例としては、(i) 既に詳しく説明した凸版、平版、網点
グラビヤ、シルク・スクリーンなどのカラー印刷画像、
あるいは、ドットの大きさを変える(多値化する)こと
ができる溶融転写型感熱転写画像などにみられる網点
(ドット)の大きさでカラー複製画像の階調や色調を表
現しようとする場合(これは面積階調法あるいは多値面
積階調法ともいわれている。)に限らず、以下の応用分
野がある。(ii)昇華転写型感熱転写画像、(銀塩利用)
熱現象転写画像、コンベンショナル・グラビヤ画像など
にみられる一定面積の画素自体の濃度を変える場合、例
えば画素を被覆する顔料や染料(色素)などの濃度を変
化させて階調や色調を表現しようとする場合(これは濃
度階調法あるいは直接濃度階調法ともいわれてい
る。)、(iii)デジタル式の複写機(カラーコピーな
ど)、プリンター(インキジェット式、バブルジェット
式など)、ファクシミリなどにみられる一定面積当りの
記録密度、例えばドットの数、インキの粒の数などを変
化させることにより階調を表現しようとする場合(これ
は、前記(i) の面積階調と類似したもので、密度階調法
あるいは疑似階調法、2値面積階調法ともいわれてい
る。)、(iv)ビデオ信号、テレビ信号、ハイビジョン信
号などの画像情報に関する電気信号より、単位面積の輝
度の強弱を調整して画像を表現するCRT画像や液晶テ
レビ画像、あるいはこれらの画像表現からカラー印刷物
やカラーハードコピーなどを得ようとする場合、(v) X
線写真などの検査のための医療用精密画像として、被写
体(患部、病巣など)に忠実なカラー複製画像を製作し
たい場合、(vi)この他、濃度表示とともに網点%値など
をも表示させるようにした濃度・階調変換機構つき濃度
計、色分解事前点検用機器(例えば構成用カラープルー
フ)や色分解教育用シミュレータなどの印刷関連機器な
ど、に応用することができる。
【0055】次に、本発明の色調の管理調整技術を組込
んだ色分解技術において、これをカラー複製画像を製作
するために利用する各種の機器(画像形成装置)への適
用法について説明する。別言すれば、これら画像形成装
置における本発明の色分解技術の利用法について説明す
る。本発明の色調の管理調整技術を組込んだ色分解技術
を、前記した各種の応用分野に適用するには、以下のよ
うにすればよい。 1.それぞれの応用分野において、それぞれの機器の画
像情報処理部、例えば階調変換部の構成を、(1) 所定の
記録媒体(センサー)に記録されたカラー原稿画像から
入手される濃度情報値と、前記記録媒体(センサー)に
被写体(実態画像)から入射される光量に相関した画像
情報値との間の相関を規定する濃度特性曲線をベースに
して、カラー原稿画像(ハードな原稿もソフトな原稿も
含む。)の濃度に関する画像情報値及び/又は画像情報
電気信号値(アナログでもディジタルでもいずれでも良
い。)に対応する光量に相関した画像情報値を求める機
構(ソフト対応)、及び、(2) 前記<階調変換式>を運
用する機構(ソフト対応)、を具備するように構成す
る。
【0056】2.また、出力部の構成は、前記<階調変
換式>による計算値、即ちyn 値(網点%値などの階調
強度値)に対応させて機器の記録部(記録ヘッド)の電
流値や電圧値、あるいはその印加時間などを制御し、網
点の大きさ(網点%値)、一定面積(1画素)当りのド
ット数、一定面積のドット自体の濃度などを変化させて
(即ち、サイズ変調法、密度変調法、濃度変調法などの
階調表現方法を用いて)、階調と色調が所望に調整され
たハーフ・トーン(網点階調、中間調)のカラー複製画
像が出力されるように構成すれば良い。
【0057】例えば、本発明の色分解技術を用いて、網
点階調画像であるカラー印刷画像の原版、すなわち印刷
用原版(色版画像)を製作するには、当業界において周
知の既存システムを利用すれば良く、市販の電子的色分
解装置(カラー・スキャナー、トータル・スキャナー)
等の色分解機構部に、本発明の色分解技術を組込むこと
により達成される。より具体的には、カラーフィルム原
稿画像(透過型の媒体画像)に対して小さなスポット光
を照射し、この透過光(画像情報信号)を光電変換部
(フォトマル)で受光し、光の強弱を電圧の強弱に変換
し、得られた画像情報電気信号(電圧値)をコンピュー
タによって所要の整理・加工を行ない、コンピュータか
らアウトプットされる加工した画像情報電気信号(電圧
値)に基づいて露出用光源光の制御を行ない、次いで生
フィルムにレーザーのスポット光をあて印刷用原版(色
版画像)を作成する周知の既存システムを利用すればよ
い。
【0058】その際、カラー原稿画像(媒体画像)の画
像情報電気信号を整理・加工するためのコンピュータの
計算処理機構部において、カラーフィルム(記録媒体)
に記録されたカラー原稿画像(媒体画像)の濃度情報値
から前記カラーフィルム(記録媒体)の濃度特性曲線を
介して光量に相関した画像情報値を求めるとともに、前
記<階調変換式>を利用して網点%値(yn 値)を出力
させるソフトを組み込めば良いだけである。
【0059】前記した説明からわかるように、カラー原
稿画像(写真感光材料という記録媒体に撮影記録された
媒体画像)は、スキャナーの画像情報入手機構、具体的
には光電変換部(フォトマル)で処理されて濃度に相関
した画像情報値が入手される。そして、厳密にいえば前
記光電変換部は、それ自体の特性曲線(光電変換特性曲
線)を有しているため、前記光電変換部において、前記
カラー原稿画像の画像情報は、前記光電変換部の光電変
換特性曲線により影響(変質、劣化)を受けることにな
る。従って、前記光電変換特性曲線の影響を排除する方
が好ましいが、これを無視してもよい。別言すれば、前
記カラー原稿画像の画像情報は、前記光電変換部の光電
変換特性曲線により影響(変質、劣化)を受けるもので
ある。従って、前記光電変換特性曲線の影響を排除する
方が好ましいが、前記光電変換部の特性などを勘案して
これを無視してもよい。
【0060】前記したソフトとしては、カラー原稿画像
の濃度に相関する濃度情報値(Dn)を所定の濃度特性
曲線のもとで対応する光量に相関する画像情報値
(xn )に変換するとともに、前記<階調変換式>のア
ルゴリズムをソフトウェアとして保有しかつA/D(ア
ナログ−デジタル変換)、D/AのI/F(インターフ
ェース)を有する汎用コンピュータ、アルゴリズムをロ
ジックとして汎用ICにより具体化した電気回路、アル
ゴリズム演算結果を保持したROMを含む電気回路、ア
ルゴリズムを内部ロジックとして具現化したPAL、ゲ
ートアレイ、カスタムIC等々種々の形態をとることが
できる。特に最近においては、モジュール化が発達して
おり、本発明の前記<階調変換式>をベースとして画像
の階調変換を行なうことができる演算機構は、専用のI
C、LSI、マイクロプロセッサー、マイクロコンピュ
ーターなどのモジュールとして容易に製作することがで
きる。そして、光電走査用のスポット光を順次、点に分
割しながら走査させ、一方、生フィルムにレーザー光を
照射するレーザー露光部もこれと同期するように行なえ
ば、前記<階調変換式>により導き出される網点%値
(yn )を持つ網点階調の階調と色調が所望に調整され
た印刷用原版(色版画像)が合理的に製作される。
【0061】
【実施例】以下、本発明の階調の調整と色調の調整を統
合化した色分解技術を実施例により更に詳しく説明す
る。なお、以下の実施例は、カラー原稿画像(媒体画
像)からカラー印刷画像(複製画像)を製作するもので
あるが、本発明の応用分野は、これに限定されない。
【0062】本発明の前記<階調変換式>を重要なツー
ルとして、カラー印刷画像の階調と色調を合理的に管理
調整することができるか否かを検討するために、次の3
段階の実験を行なった。 (1) 基礎実験 (2) 応用実験 (3) 実務適用実験
【0063】階調の変換技術として有用なツールである
<階調変換式>に、色調の調整管理を組込むことによる
影響と効果を慎重に検討するため、前記した3段階の実
験について、それぞれ次の二つの方法をとり入れて実験
した。 (1) 実験A: 3つの色版画像(C版/M版/Y版)の
色調管理ポイント(M1 )及びS部の両方の網点%値を
調整する実験。 (2) 実験B: 3つの色版画像(C版/M版/Y版)の
1 点のみを調整する実験。
【0064】<M1 点、M1 点の光量値、及び各色版用
γ値の決定法> (1) 色調管理ポイント(M1 ) 色調の管理ポイント(M1 )(図2参照)は、従来技術
において階調の調製のために広く採用されている中間
調、より厳密にはC版網点階調画像(色版画像)の網点
%値が50%となる点に設定した。これは、当業界で一
般に採用されている適性なグレーバランスを維持するた
めの標準値に合致するものである。なお、いうまでもな
いことであるが、本発明において色調管理ポイント(M
1 )は、C版の網点%値50%の部位に限定されないこ
とはいうまでもないことである。
【0065】(2) 色調管理ポイント(M1 )の光量値 色調管理ポイント(M1 )の光量値の値は、C版用色分
解カーブ(階調変換カーブ)より決定した。即ちC版用
色分解カーブを決める<階調変換式>において、 ・ 網点使用範囲:0〜95%(yH =0%,yS =9
5%) ・ γ値 :0.45 ・ xS =1.00,xH =0.00(xS −xH
1.00)(注) ・ yn =50(%)(これは、前記色調管理ポイント
(M1 )の網点%値である) の条件を<階調変換式>に代入し、x(色調管理ポイン
トにおける光量値)を求めた。即ち、前記条件を<階調
変換式>に代入し、下式を解いて求めた。この結果、x
=0.40である。 50=0+[(1−10-0.45x)(95−0)/(1−
10-0.45 )] (注)一般に、カラー原稿画像(媒体画像)から求めた
光量値のダイナミックレンジ(xS −xH )は、1.0
0ではないが、ここでは前記ダイナミックレンジを1.
00に正規化した値を用いている。なお、いうまでもな
いことであるが、所々のダイナミックレンジを1.00
に正規化しても画質内容は相対化されて変化するため、
画像処理においては、何等の問題もない。
【0066】(3) 各色版(C/M/Y/BL)用色分解
カーブを決定するためのγ値の決定法 以下の実験例では、C版用色分解カーブを設定するため
の値は、前記したようにγ=0.45の値を用いてい
る。他の色版については、色調の調整条件の内容に応じ
て、それぞれの色分解カーブ(階調変換カーブ)を設定
するためのγ値を求めなければならない。例えば、M版
の場合、色調管理ポイント(M1 )において(この光量
値は0.40である)、M版の網点%値が20%、かつ
網点使用範囲が0〜68%のとき、以下の式を解いて求
めればよい。なお、下記の解はγ=0.20である。 20=0+[(1−10 -γ(0.40))(68−0)/
(1−10)] 本実験において、前記した色調管理ポイント(M1 )の
光量値や各色版用のγ値が自動的に算出され、かつ所望
する色分解カーブを自動的に準備するソフトを使用し
た。
【0067】<実験に使用した機器、資材> (1) カラー原稿画像としてE.K.社製4″×5″ポジ
カラーフィルムで撮影した標準品質の褐色の陶器壺の画
像を選んだ。 (2) カラー・スキャナとして、 ・ 濃度値から写真濃度特性曲線(フジクローム、アグ
ファクローム、エクタクロームなどの代表的な写真感光
材料の特性曲線を12本準備した。)を介して光量値
(正規化光量値)を求めるソフト、 ・ <階調変換式>を利用して色調管理を行なうソフ
ト、及び色分解カーブを計算するソフト、を組込んだ階
調変換部を有するISOMET社製デジタルカラースキ
ャナ445型を使用した。 (3) 色分解用フィルムとして、AGFA S712Pを
使用した。 (4) 色校正には、DUPON社クロマリン・システムを
採用した。
【0068】<基礎実験>本実験は、本発明<階調変換
式>というツールが、カラー印刷画像の色調を合理的に
調整する機能を備えているかどうかを確かめることが目
的である。特に、階調を維持しながら、色調の調製を合
理的に行なうことができるかとかを確かめた。表3に、
基礎実験用の色調の管理調整のための各色版の製版設計
資料を示す。 (注1) 実験Aは、先にS部の網点%値を指定し、次
いで下式(1)によりM1 点(色調管理ポイント)の網
点%値を求めて実験したものである。なお、下式(2)
の標準網点%値は、表2に示されている。 M1 点の網点%値=(M1 点の標準網点%値)×(S部に指定し た網点%値)/(S部の標準網点%値) ………(1) (注2) 実験Bは、M1 点の網点%値として実験Aの
値を採用し、S部の網点%値として標準値(表2)を採
用した。 (注3) カラー原稿画像(壺)のH部として、キャッ
チライト部を選んでいるため、全ての色版画像のH部の
網点%値は「0」(ゼロ)である。
【0069】
【表3】
【0070】前記基礎実験の4つの実験結果は、製版実
務(経験)に照して、何れも予想通りのものであった。
このことは、本発明の<階調変換式>を利用した色調管
理法は合理性を持っていることを示すものである。な
お、基礎実験から得られた4つの色校正画像の内容は次
の通りである。 (1) 4点とも、H部〜S部の全ダイナミックレンジにお
いて、階調(濃度階調)がよく再現されており、かつ中
間調のボリュウム感も人間の視覚にとって適切なもので
ある。 (2) 壺の色調は、実験A(No.1〜No.2)では青色系
であり、実験B(No.1〜No.2)では中間調領域にお
いて青色系、S部においては原稿画像通りの褐色系であ
った。なお、これらの色調は、製版実務と全く符号する
ものである。
【0071】因みに、実験A(No.1〜No.2)の各色
版用色分解カーブを設定するためのγ値、及びM1 点で
の網点%値(計算値)は、以下の通りである; (1) 実験A(No.1)C版 γ= 0.45,M1 点の網点%値=50.0000 % M版 γ=−0.20,M1 点の網点%値=30.9878 % Y版 γ=−0.18,M1 点の網点%値=35.8678 % (2) 実験B(No.2)C版 γ= 0.45,M1 点の網点%値=50.0000 % M版 γ=−0.18,M1 点の網点%値=26.9006 % Y版 γ=−0.20,M1 点の網点%値=30.9878 % なお、BL版のγ値はγ=−0.25である。
【0072】また、前記基礎実験の概要及び実験A(N
o.1)と実施B(No.1)で使用した各色版用の色分
解カーブ(階調変換カーブ)を図2に示す。図中(a)
は、グレーバランス維持のために当業界において標準と
して採用されている色分解カーブの組合わせである。そ
の製版設計資料は、表2に与えられている。図中(A)
は実験A(No.1)の各色版の色分解カーブ(階調変換
カーブ)の組合わせを、また図中(B)は実験B(No.
1)の各色版の色分解カーブ(階調変換カーブ)の組合
わせを示す。
【0073】<応用実験>本実験は、より日常の色分解
作業に近い方法で色分解実験を行ない、本発明の<階調
変換式>を利用した色調管理法が、カラー印刷画像の色
調を合理的に調整管理する機能を備えているかどうかを
確かめることを目的とする。本実験においては、色調の
管理ポイント(M1 )をC版画像の網点%値が50%と
なるポイントとした。また、前記色調管理ポイント(M
1 )における色調の調整内容(ユーザー等から要求され
る色調の修正、変更の具体的な内容)を、各色版画像の
C/M/Yの各色の網点%値で指定する基本スケールと
して、大日本インキ化学工業社製「DIC GRAF−
G カラーチャート」(1991年3月、第2版)を採
用した。本実験では、前記カラーチャートの中から6種
類の色を選択した。表4に、前記「DIC GRAF−
G カラーチャート」から選択した6種の色と色調調整
のための指定網点%値を示す。
【0074】前記カラーチャートにおいて、前記6種の
色は、C/Mの網点濃度として0〜100の間に12段
階で表示されており、これにY/BL(一定の網点濃
度、例えば表4に示されるように10%とか50%の網
点濃度を有するもの)が刷り重ねられた色として示され
ている。従って、色調調整のための指定網点%値は、同
チャートにおいて容易に指定することができ、表4に
は、この指定網点%値が示されている。なお、いうまで
もないことであるが、前記した網点%値で指定された色
が、階調の劣化を招くことなく色版画像上に忠実に再現
されるか否かを検討することが、本実験の目的である。
【0075】
【表4】
【0076】前記表4の資料に基づいて作成した本実験
用の製版設計資料を下記表5に示す。 (注1)本実験において、M1 点の指定網点%値は、い
うまでもなく表4の色調調整のための指定網点%値を採
用した。 (注2)本実験の実験Aにおいて、S部のM/Y版用網
点%値は、下記(2)式により求めた。C版については、
表2(グレーバランス維持標準値)の値(95%)を採
用した。なお、下記(2) 式の標準網点%値は、表2に示
されている。また、下式(2) 式による計算結果が標準網
点%値を越える時は、標準網点%値を採用することとし
た。 S部の網点%値=(S部の標準網点%値)×(M1 に指定した網% 値)/(M1 の標準網点%値) ……… (2) (注3)カラー原稿画像(壺)のH部として、キャッチ
ライト部を選んでいるため、全ての色版画像のH部の網
点%値は「0」(ゼロ)である。 (注4)BL版(墨)版は、常法に従いスケルトン・タ
イプ、即ち墨入れの始点(starting point,SP)をM
1 点とし、終点(end point ,EP)をS部とした。ま
た、S部に入れるBL版の最大網点%値は、実験Aは8
0%、実験Bは70%とした。
【0077】
【表5】
【0078】前記応用実験の結果は、前記基礎実験と同
様、全て予想した通りであった。カラー印刷画像で得ら
れた色調管理ポイント(M1 )での色調は、基本スケー
ルとしてのカラーチャート上の色調と全く整合してお
り、かつH部〜S部の全ダイナミックレンジにわたり階
調はもとより色調も人間の視感にとって自然なものであ
った。即ち、前記応用実験の結果から、本発明の<階調
変換式>をツールとした色分解技術は、色調の管理調整
を行なう上で、更には階調の調整と色調の調整を統合化
する上で、合理性を持っていることが確かめられた。
【0079】<実務適用実験>本実務適用実験では、最
近、印刷デザイナーなどが標準のカラー原稿画像を使用
しながら、敢えて複製されるカラー印刷画像の仕上り調
子を、全体的にブルー調、ダークグリーン調、ライトグ
リーン調、ピンク調、セピア調などの色調に変更する作
業が増加していることに鑑み、かつ前記した画像の色調
を全体的に変更する上で、、従来技術においては全く経
験的技能に基づく繁雑な複数の作業工程を経なければな
らないという現状に鑑み、これらの作業に対する本発明
の階調及び色調の管理調整法の有効性を実験した。即
ち、本発明の階調及び色調の管理調整法を応用して、前
記画像の色調を全体的に変更するとともに、画像の階調
をも合理的に管理することができるか否かを確かめるこ
ととした。
【0080】前記実験用のカラー原稿画像は、当業界に
おいて標準カラー原稿として認められているF社製4”
×5”サイズの透過型カラー原稿の中から選ばれた。具
体的には、標準カラー原稿画像として、赤、ブルー、
緑、黄、紫など多様な色彩を含む若い女性像と数種類の
帯材(金属、布、紙など)を有するものが選択された。
一方、当業界において参照用ターゲットとして広く使用
されているAGFA社製4”×5”の透過型ターゲット
(ISO標準によって作成されたカラー原稿画像)につ
いても同時に実験を行なった。
【0081】複製されるカラー印刷画像の仕上りの色調
は、全体をブルー調に変更することとした。具体的に
は、DIC GRAF−Gカラーチャート第29頁にお
いて、C版50%、M版30%、Y版10%、及びBL
版30%の指定色で色調を管理することとした。なお、
本実験で使用した機器や資材などは、前記したものと同
じである。
【0082】本実験用製版設計資料を下記表6に示す。
また、表7にC版用色調カーブ設定データを示す。な
お、表6の製版設計資料を作成する上で、前記<応用実
験>の結果を参考にしながら次の点を考慮した。 カラー原稿画像の中の赤、グレー、緑、黄、紫など
の色を自然なものに押えながら、画像全体のブルー調の
仕上り調子に力強さを与えるために、BL版の持ってい
る画像表現能力や効果を、十分に活用するように配慮し
た。 このため、BL版のSP(スタート・ポイント)を
C版の網点%値が10%である部位に決め、管理ポイン
ト(M1 )に10%、かつS部における最大網点%値を
95%とした。また、BL版色分解カーブの設定用γ
値、即ち<階調変換式>のγ値を0.10とした。
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】実験結果は、画像の色調及び階調の両者と
も、製版設計で予定した通りのカラー印刷画像が得られ
た。即ち、カラー原稿画像の中の若い女性の人物画像
は、視感に感じる画像全体の仕上り調子はブルーの色調
であり、かつ極めて自然のものであった。そして、女性
人物像の全体的な色調は、ブルーでありながら、本来の
肌色のもつデリケートな階調は、ブルーの色調のもとで
も本来の肌色をしのばせるに十分なものであった。な
お、前記実験結果をより精密に記述すれば、H部〜中間
調にかけての色調は、カラーチャート上で指定した色調
と同じブルー調であり、S部領域ではマゼンダ(M)色
が残った感じのものであった。これは表6の製版設計資
料(データ)からみて明らかのように、M版のS部に多
くの網点%値を指定(68%)したためであり、実験結
果は、これと全く符号するものであった。また、赤、
緑、黄、紫などの色も柔らかく押えられており、画像全
体の調子と違和感をもつものではなかった。更に、H部
〜S部に至る全体の階調は、少しも損なわれることがな
く、全体的なブルーの色調を通じて金属、布、花などの
素材が持つ特有の階調の変化を表現しているため、これ
ら素材を明確に識別できるとともに、それらのディテー
ルも良く再現されたものであった。
【0086】また、AGFAの標準ターゲットから得ら
れたブルー調のカラー印刷画像も、全体的なブルー色の
画像にも拘らず、豊かな階調を持つものであった。即
ち、画像全体から受けるブルー調の調子の視感は、自然
の景色をブルーフィルターを通して見たのと同様に極め
て自然で調和のとれたものであった。これは、色調の全
体的な変換過程においても階調の変換が合理的に行なわ
れたことを実証するものである。
【0087】
【発明の効果】本発明の色分解技術は、特定の<階調変
換式>を利用するものであるが、従来技術において困難
視された階調の調整と色調の調製を統合化することがで
きるものである。従来技術においては、市場ニーズの高
い(要求度の高い)特定部位、特定部分、更には画像全
体の色調の調整(色調の修正、変更)を行なおうとする
場合、色調の調整を定量的に行なうことができないばか
りか、当該部位と他の部位との色調のアンバランス、画
像合体の調子(階調と色調)が歪んでしまい、高品質の
カラー複製画像を製作することができないでいるのが現
状である。
【0088】これに対して、本発明の色分解技術は、特
定の<階調変換式>の採用と、その運用により、階調の
調整と色調の調整を完全に定量化することができ、合目
的にカラー原稿画像を色分解することができ、階調の再
現性はもとより色調が調整された高品質のカラー複製画
像を効率よく製作することができる。
【0089】即ち、本発明の色分解技術は、次のような
優れた効果を奏するものである。 (1) 高度、複雑、多様化した市場のカラー印刷画像など
のカラー複製画像の品質に対するニーズに、合理的に対
処することができる。 (2) カラー複製画像の製作、特に色分解作業が定量的、
合理的に実践されるため、生産性の向上、作業時間の短
縮、設備の効率的な活用、消耗資材の節約、低減化など
に著しい効果をもたらす。 (3) カラー印刷画像などのカラー複製画像の製作におい
て、感性や芸術性を合理的に活かす道を開くことができ
る。これらは、印刷産業などにおいて要求されている工
業生産方式への感性と芸術性の結合を可能とするもので
あり、印刷産業などの画像関連産業の活性化に資するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 カラーフィルムの濃度特性曲線(F社製)を
示す図である。
【図2】 本発明の基礎実験の概要と使用した色分解カ
ーブを説明する図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年7月23日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 カラー複製画像の色調の管理調整法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種の記録媒体に記録
されたカラー原稿画像から入取される画像情報、例えば
写真感光乳剤層に記録撮影された連続階調のカラーフィ
ルム(透過型)原稿画像から入取される画像情報、を階
調変換して網点階調(ハーフ・トーン)のカラー複製画
像(印刷画像)を製作するときなどに適用される新規な
色調の管理調整法に関する。
【0002】更に詳しくは、本発明は、第一にカラー原
稿画像の画像情報として従来の濃度情報を利用するので
はなく、カラー原稿画像を記録している記録媒体の特性
曲線(記録媒体に入射される光量値と記録媒体上に形成
される濃度値により規定される特性曲線)により画像情
報が影響されるのを排除するために光量値を使用する点
に特徴があり、第二にカラー原稿画像の前記光量値を階
調変換する際に、特定の階調変換式を用いるとともに、
前記階調変換式の運用時に色調を調整する機能を組込む
ことにより、階調(濃度階調またはグラデーションとも
いう。)はもとより色調(カラー・トーン)を定量的、
合理的にコントロールする点に特徴があるカラー複製画
像を製作するときの新しい階調変換技術を提供するもの
である。
【0003】本発明は、前記したように階調(グラデー
ション)と色調(カラー・トーン)のコントロールを統
合化した新しい階調変換技術に関するものである。な
お、以下の本発明に関する説明は、従来技術の色調(カ
ラー・トーン)調整法を合理化、定量化したという意味
において、特に色調(カラー・トーン)の管理調整法に
力点が置かれて説明される。従って、本発明の利用分野
は、ハーフ・トーンのカラー複製画像を製作するときの
色調(カラー・トーン)の管理調整に限定されず、同時
的に階調(グラデーション)のコントロールを定量的、
合理的に行なう上でも重要なものである、ということに
留意されるべきである。
【0004】
【従来技術】周知のように各種の記録媒体上に記録され
たカラー原稿画像から各種の複製技術により、印刷画
像、複写画像(コピー画像)、プリンター出力画像さら
にはTV(ビデオ)画像などの各種のカラー複製画像
(本発明において、「複製画像」とは、前記した意味に
おいて最広義に解釈されるべきである。)が製作されて
いる。これらカラー複製画像の製作において、第一にカ
ラー原稿画像のもつ濃度階調(グラデーション)と色調
(カラー・トーン)をカラー複製画像上にHi−Fiカ
ラー(High−Fidelity,高い忠実度のカラ
ー)で再現すること、第二に所望の調子(階調と色調の
両者を含む。)をもったものに調整すること、は極めて
重要な課題である。
【0005】しかしながら、従来技術においては、前記
した課題を合理的に、作業規則性をもって遂行すること
ができないでいるのが現状である。これは、前記したカ
ラー原稿画像の調子(階調と色調)をカラー複製画像上
に忠実に再現させる技術、さらにはカラー原稿画像の調
子を所望する調子に調整(修正または変更)するという
技術において、その基本となるカラー原稿画像の画像情
報、特に濃度領域における画像情報をハーフ・トーン階
調へ変換するための非線形変換処理技術(以下、画像の
階調変換技術あるいは画像の階調変換法という。)に、
合理的な理論の裏付けを持たず、画像の階調変換を人間
の経験と勘に大きく依存し非科学的、非合理的に行なっ
ているからである。
【0006】これを代表的かつ具体的な技術分野として
カラー印刷画像の製作技術を引用して説明する。従来技
術においては、カラーフィルム原稿(カラー原稿のう
ち、約90%が透過型、透過タイプのものである。)か
ら複製画像であるカラー印刷画像を製作する場合、カラ
ーフィルム原稿の最明部(H部)から最暗部(S部)に
至る濃度特性を合理的に把握する着意をもたず、さらに
連続階調のカラーフィルム原稿画像と複製画像である網
点階調のカラー印刷画像の相関関係を決定する『色分解
カーブ(色分解作業特性曲線、網点階調特性曲線などと
もいわれている。)』の設定が、全く人間の経験と勘に
依存しているといえる。
【0007】一般に、カラー印刷画像の製作は、カラー
フィルム原稿画像(以下、単にカラー原稿画像とい
う。)をカラースキャナにより色分解を行ない、かつ多
色製版(一般にはC版,M版,Y版,BL版の4版が1
組とされている。)を行なって網点階調のカラー印刷画
像が複製される。なお、周知のように前記C版(シア
ン)、M版(マゼンタ)、及びY版(イエロー)は、加
色法のR(レッド)、G(グリーン)、及びB(ブル
ー)に対応する減色法での補色関係をなすものであり、
BL版はブラックまたは墨版といわれるものである。前
記したカラースキャナあるいはトータルスキャナはメカ
トロニクス化された極めて高価な装置であるが、当業界
において大きな問題点の一つは、その稼働率が平均して
約30%という極めて低い水準にあることである。高価
なカラースキャナー等が前記した低い稼働率にある主た
る理由は、カラースキャナを操作するためのセットアッ
プ時間(scanner setup time)が長
いこと、色分解作業により得られる製品の品質が不安定
かつ不十分なため再スキャン(rescan,rema
ke)が多いことなどである。
【0008】これを少し技術的観点から考察してみる
と、前述したように色分解作業の用具としては、一見し
て高度かつ高価なメカトロニクス化されたカラースキャ
ナ等が使用されているものの、色分解作業の複数の要素
技術、例えば色再現・色補正・色修正(Color R
eproduction, Color Correc
tion)の技術と濃度階調(Gradation)の
変換技術が整合性をもって体系づけられておらず、この
ことがカラースキャナの低稼働率の主原因をなしている
ということができる。
【0009】周知の通り、前記した二つの要素技術のう
ち、色再現等の技術については、マスキング方程式(M
asking equation)やノイゲバウアー方
程式(Neugebauer equation)など
の適用により科学的に追求されてきている。しかしなが
ら、後者の画像の濃度階調の変換技術(これは、カラー
原稿画像中の全ての画素に、どのような大きさの網点を
設定すべきかという問題に帰する。)については、合理
的な理論の裏付けを行なうことがないままおきざりにさ
れてきており、この部分は人間の経験や勘に大きく依存
している状態である。
【0010】このような状態のもとで色分解用の各種の
機器が開発されているため、色調と階調の統一的調整の
もとに色分解を実践するという観点からみると、機器自
体の基本設計技術が未熟であることに加えて、実作業に
おいては高価な高度化された電子的色分解装置(カラー
スキャナ)を使用しながらオペレーターの推測作業、オ
ペレーターの経験と勘を排除することができず(wit
hout operator evalution,w
ithout operator´s guess w
ork)、常に安定した高品質のカラー印刷画像を製作
することができないでいる。
【0011】特に、カラー原稿画像が適切な撮影および
露光条件、適切な現像条件で製作された標準的な原稿で
ない場合、例えば露光オーバーの明るすぎる原稿、露光
アンダーの暗すぎる原稿、ハイキーやローキー(hig
h key or lowkey)の原稿、更には色カ
ブリ(color cast)のある原稿や退色原稿
(faded original)などの非標準的な原
稿である場合、色分解作業を合理的、効率的に実施する
ことができない。即ち、これら非標準的なカラー原稿画
像に対しては合理的に色分解作業を行なうことができ
ず、前記したカラースキャナの低稼働率、製品の品質の
不安定性、再スキャン率の増大などの問題をかかえてい
る。
【0012】
【発明が解決しようとする問題点】本発明者らは、カラ
ー原稿画像の画質(階調と色調の両者により評価される
品質のこと。)を忠実に再現すること(faithfu
l reproduction)はもとより、さらに進
んで前記した各種のカラー原稿画像から所望の調子(階
調と色調)をもつハーフ・トーン階調のカラー複製画像
を合理的に製作するためには、色再現・色補正(修正)
技術の向上に先立ち、カラー原稿画像の各画素の濃度階
調の変換技術を合理的なものにしなければならない、と
いう基本認識をもっている。なお、カラー原稿画像の濃
度階調は、所定大きさの画素(スクリーン線数により規
定される一つの画素の大きさともいえる。)において、
網点などのドットの大きさをかえることによって(面積
階調法)、または規定ドットの配列状態をかえることに
よって(多値面積階調法)、あるいは画素自体の濃度を
変えることによって(直接濃度階調法)、原稿画素の濃
度階調をハーフ・トーンのカラー複製画像上に再現させ
ることは周知のことである。前記したように、ハーフ・
トーン階調の表現方式として各種のものがあるが、以
下、説明の便宜上、ハーフ・トーン階調のことを網点階
調という。
【0013】前記本発明者らの基本認識のもとに、本発
明者らは先に新規な階調変換式のもとでカラー原稿画像
の階調を合理的に階調変換する方法を提案し、一定の成
果を収めた(例えば、USP4,924,323;US
P5,313,310;USP5,057,931;U
SP5,134,494などを参照)。
【0014】本発明者らが先に提案した新規な階調変換
法は、本発明と深い関係を有するものである。このた
め、ここで本発明者らが先に提案した新規な前記階調変
換法の概略を説明し、かつその改良点を説明する。いう
までもなく、前記改良点が本発明の必須の技術的構成要
件となっているものである。引き続き、カラー複製画像
の製作技術としてカラー印刷画像の製作を例にとり、本
発明を説明することとする。
【0015】従来技術において、カラー原稿画像の色分
解は、文字通りの原稿画像(被写体、実体画像、act
ual sceneのことで、例えば被写体がリンゴな
らばリンゴそれ自体のこと。)から写真感光材料(写真
感光乳剤)という「記録媒体」に入射され、かつ、被写
体を所定の露光条件(周知のごとく、入射光の強さIと
入射時間tにより、露光量EはE=I×tで表され
る。)で記録したカラー写真画像(カラー原稿画像)を
ベースにして、その濃度情報を基礎として色分解作業
(カラーセパレーション作業とは、前記したように階調
の再現と色調の再現の両者を含むものである。)を行な
っている。周知のように静物や人物などの被写体が撮影
された写真感光材料には現像により写真濃度(phot
ographic density)が形成され、これ
が媒体画像となるものである。前記した写真濃度(黒化
度)と写真用感光材料の露光量Eの相関関係を表わす曲
線が、写真濃度特性曲線(photographic
dencity characteristic cu
rve)である。これは、縦軸に写真濃度(D)(D=
logIo/I)、横軸に露光量Eの対数値(log
E)をとって表示されるものである。なお、前記写真濃
度(D)において、フィルムや乾板(透過原稿)では透
過光の強さIと入射光の強さIoとの比が、また印画紙
(反射原稿)では反射光の強さIと完全反射光の強さI
oとの比が、用いられることはいうまでもないことであ
る。
【0016】前記した写真濃度特性曲線(以下、単に濃
度特性曲線という。)は、典型的には下に凸形状の足
部、略直線状の直線部(直線状中間部)、上に凸形状の
肩部を有する複雑な曲線(この点は、後述する図1を参
照のこと。)である。そして、従来技術において、色分
解作業は、カラー原稿画像の各画素の濃度情報値をベー
スにして行なわれるものである。別言すれば、従来技術
の色分解技術は、前記濃度特性曲線の縦軸(濃度値)の
立場から組み立てられたものである。しかしながら、従
来技術が色分解作業の基礎とするカラー原稿画像(媒体
画像)の画像情報値(濃度情報値)は、原稿画像(実体
画像、被写体、実景)の画像情報値とは比例関係に無
く、記録媒体である写真用感光材料(写真感光乳剤)の
感光特性(濃度特性曲線)に大きく影響されたものであ
る。即ち、媒体画像であるカラー原稿画像の写真濃度
は、被写体(実体画像、実景)からの画像情報値である
露光量(対数値)に直線関係(1:1の45゜の直線関
係)で相関したものではない。なお、人間の視覚におけ
る明暗に対する弁別特性が、対数的であることは周知の
ことであり、人間は被写体(実体画像)から視覚系に入
射される光量を前記した弁別特性に基づいてその明暗を
評価している。ここでは、濃度変化の勾配が直線的(リ
ニア)であるものを自然なものとして感じているのであ
る。
【0017】前記したことから明らかのように、カラー
印刷画像の製作において、写真感光材料に記録された媒
体画像の濃度値(D=logIo/I)を手掛かりに色
分解作業を進めると、それは写真用感光材料の感光特性
に影響されたあとの濃度情報値を使用していることにな
り、複製の真の対象となる被写体(実体画像、実景)か
ら得られる画像情報値(光量値)を利用していることに
はならない。本発明者らは、前記した状況を踏まえて、
カラー印刷画像を製作するときの画像情報として、記録
媒体(写真用感光材料)の感光特性(濃度特性曲線)に
よって非直線的に変更された(影響された)媒体画像の
画像情報値、即ち濃度情報値を使用するアプローチでは
なく、被写体(実体画像、実景)から得られる第1次の
(生の、原初的な)露光量などの光量に関係した画像情
報値を基礎として印刷画像を製作する方法について鋭意
検討を加えた。
【0018】その結果、色分解作業において第一義的に
重要な濃度階調の変換作業において、(1)カラー原稿
画像が撮影記録されている写真感光材料の濃度特性曲線
(写真濃度特性曲線)の縦軸(D=logIo/I)の
濃度値から横軸(logE=logI×t)の値を求め
(以下、縦軸をD軸、横軸をX軸ともいう。)、別言す
ればカラー原稿画像(媒体画像)のD軸上の濃度値から
X軸上の光量値を求め、(2)より具体的にはカラー原
稿画像上の任意の画素点(n点)のD軸上の濃度情報値
(D)を前記濃度特性曲線を介してX軸上に投影し、
対応する画素の露光量に関する画像情報値(x)を求
め、次いで、(3)前記のようにして得られたx
(光量値)を基礎とし、かつ本発明者らが先に提案した
階調変換式(これは、後述する本発明で採用している階
調変換式と全く同じものである。しかし、本発明は、前
記階調変換式の利用面、応用面において全く異なるもの
である。)のもとで画像の階調変換を行なった場合、被
写体(実体画像、実写)に忠実な画像特性を有する優れ
た画質のカラー印刷画像が製作されることを見出だし
た。
【0019】前記した本発明者らの先に提案した階調変
換技術は、前記したことから明らかのように、網点階調
(ハーフ・トーン)のカラー印刷画像を製作する上で第
一義的に重要な階調変換のために応用されるものであ
る。即ち、前記した本発明者らの提案した階調変換技術
は、第一義的にはカラー原稿画像を含めて各種の原稿画
像の濃度階調を1:1の忠実度をもち、人間の視覚にと
って自然な階調のカラー複製画像を製作するために使用
されるものである。なお、前記した階調変換技術は、カ
ラー原稿画像が標準的なものだけでなく、非標準原稿
(露光オーバーや露光アンダーのもの、ハイキーやロー
キーのもの、更には色カブリや退色したものなど)であ
っても、被写体(実体画像)が持っていたと認められる
(本来的に持っていたと認められる)濃度階調を再現す
る上で有用なものである。また、前記した階調変換技術
において、濃度階調の忠実な再現のもとに色調(カラー
・トーン)も豊かな内容で再現できることが確かめられ
た。
【0020】しかしながら、前記したように本発明者ら
の先に提案した階調変換技術は、 ・ 第一義的には色分解作業において、階調の変換を重
視したものであり、即ち、 ・ 濃度階調のHi−Fi変換(連続階調の原稿画像と
網点階調の複製画像の間において1:1の高忠実度で階
調を変換すること)を実現することを重視したものであ
り、 ・ 前記階調変換技術により高忠実度でかつ合理的に階
調変換ができること、かつ前記階調変換に伴なって色調
も豊かに再現されることが確かめられた。
【0021】ところで、カラー印刷画像の品質に対する
市場ニーズは、カラー原稿画像通りの調子(階調と色
調)をもったカラー印刷画像の複製というニーズにとど
まらず、ますます高度、複雑、多様化して来ている。例
えば、カラー原稿画像中の特定部分(人物、陶磁器類、
衣服類、家具、木工製品類、絵画など)あるいは特定部
位(領域)などの色(カラー、及びカラー・トーン)を
強調再現してほしいとか、全体的な色調をブルー調、ダ
ークグリーン調、ライトグリーン調、ピンク調、セピア
調などの所望のものに変更してほしいなどというニーズ
がある。これらのニーズに対応する場合、例えば従来の
色補正(カラー・コレクション)技術により対応する場
合、特定部分あるいは特定部位(領域)の色調を要求通
りに再現できたとしても画像全体の調子が歪んで画質劣
化がひどく、前記ニーズに満足に答えられないという問
題に直面する。いうまでもなく、前記ニーズに対応する
ためには、特定部分あるいは特定部位(領域)の色調と
画像全体の調子の双方を人間の視覚にとって自然な感じ
のものにする階調と色調の変換技術を確立することが重
要である。
【0022】前記した市場ニーズの高度化、複雑化に対
応するためには、色分解技術において、階調変換技術と
色調の調整技術の統一化(融合化)が求められているこ
とを意味するものである。その場合、注目しなければな
らない点は、カラー印刷画像を形成している網点(画像
表現のための基本要素)は、常に、階調(グラデーショ
ン)と色調(カラー・トーン)または濃度と色の双方に
直接的な関係をもっているという点である。このこと
は、画質を決定するのは網点の大きさ(濃度階調を規定
する。)と前記網点に塗布される着色インキ(色調を規
定する。)であることから当然のことである。そして、
本発明者らは、先に提案した階調変換技術において、網
点の大きさ(網点%値)を合理的に調整管理する手段を
確立している。従って、本発明者らは、前記した階調調
整技術と色調調整技術の統合化は、本発明者らの先に提
案した階調変換技術の延長線上にあるという認識にもと
に、鋭意、検討を加えた。
【0023】その結果、本発明者らは、先に提案した階
調変換技術の中核である階調変換式を採用しつつ、これ
に色調調整という考え方を融合したとき、色分解作業に
おいて色調と階調の両者を合理的に調整管理することが
できるという知見を得た。本発明は、前記知見をベース
にして完成されたものであり、本発明により色調と階調
の両者を合理的に調整管理する色分解技術、特に従来技
術では困難視された豊かな階調の再現性の中に色調を所
望なものに調整することができるという色調の管理調整
技術が提供されるものである。
【0024】
【問題点を解決するための手段】本発明を概説すれば、
本発明は、所定の記録媒体に記録されたカラー原稿画像
から前記記録媒体の特性曲線(記録媒体に入射する光量
値と記録媒体上に形成される濃度値との相関曲線)を介
して得た各画素の光量値をハーフトーン階調(以下、網
点階調という。)に階調変換してカラー複製画像を製作
するときの色調の管理調整法において、前記色調の管理
調整法が、 1.カラー原稿画像のH部(最明部)〜S部(最暗部)
の間の所望部位に、カラー複製画像の色調を管理するた
めの色調管理ポイント(M)を設定すること、 2.前記色調管理ポイント(M)において、色調の調
整条件を、カラー複製画像を製作するために使用する所
望する色版(C版、M版、Y版、及びBL版)の網点%
値で規定すること、 3.前記色調管理ポイント(M)における光量値、前
記色調管理ポイント(M)の色調の調整条件を反映す
る色版の網点%値、及び色版のH部とS部に予め設定す
る所望の網点%値、を下記<階調変換式>に代入してγ
値を決定し、前記各色版のH部〜S部に至る全画素の光
量値を網点%値に変換するため<階調変換式>を準備す
ること、 4.前記γ値が決定された各色版用の<階調変換式>を
用いて、各色版用の各画素の光量値を階調変換するとと
もに色調を管理調整すること、の工程から成ることを特
徴とする網点階調のカラー複製画像を製作するときの色
調の管理調整法に関するものである。 <階調変換式> y=y+[α(1−10−kx)(y−y)/
(α−β)] 上記<階調変換式>において、各記号の意味は、以下の
通りである; x: (x−x)を示す。即ち、前記記録媒体の特
性曲線を利用して求めたカラー原稿画像の任意の画素点
(n点)の濃度情報値(D)に対応する光量値
(x)から、同様に求めたカラー原稿画像のH部の濃
度情報値(D)に対応する光量値(x)を差し引い
て得られる基礎光量値を示す。 y: カラー原稿画像上の任意の画素点(n点)に対
応したカラー複製画像上の画素に設定される網点%値。 y: カラー原稿画像上のH部に対応したカラー複製
画像上のH部に予め設定される網点%値。 y: カラー原稿画像上のS部に対応したカラー複製
画像上のS部に予め設定される網点%値。 α: カラー複製画像を記録するための画像表現媒体の
表面反射率。 β: β=10−γにより決められる数値。 k: k=γ/(x−x)により決められる数値。
但し、xは、前記記録媒体の特性曲線を利用して求め
たカラー原稿画像のS部の濃度情報値(D)に対応す
る光量値(x)を示す。 γ: 任意の係数。
【0025】以下、本発明の技術的構成及び実施態様を
詳しく説明する。本発明は、前記したように階調(グラ
デーション)と色調(カラー・トーン)の両者を結合化
した新しい色分解技術を提供するものである。しかしな
がら、以下の説明においては、従来技術が合理的、定量
的に色調(カラー・トーン)を調整、管理することがで
きないでいる現状に鑑み、特に色調(カラー・トーン)
の管理調整法に力点が置かれる。まず、説明の便宜上、
画像情報とカラー原稿画像について説明しておく。本発
明において、カラー原稿画像からカラー複製画像を製作
する上で使用する画像情報として、従来技術のように濃
度に相関した画像情報を採用するのではなく、光量に相
関した画像情報を採用する点に大きな特徴点がある。ま
た、本発明においてカラー原稿画像は、所定の記録媒体
に記録や蓄積されたものをいい、媒体画像ともいう。こ
れに対して、前記記録媒体に記録や蓄積される前の画
像、即ち複製の真に対象となるものを実体画像(被写
体、実物、実景)という。以下、引きつづき、本発明の
色調の管理調整法を、カラー複製画像としてカラー印刷
画像を製作する例を引用して説明することにする。従っ
て、これは説明の便宜のためであり、本発明の色調の管
理調整法は、カラー印刷画像の複製の場合だけに適用さ
れることを意味するものではない。
【0026】本発明の理解を得るために、具体的な色調
の調整法については後で詳述するとして、前記<階調変
換式>を利用した階調変換技術について概略、説明す
る。前述したように、現在、カラー印刷画像の複製作業
において、カラースキャナ(色分解装置)が極く一般的
に使用されており、前記色分解装置による色分解作業は
カラー原稿画像(媒体画像で透過原稿と反射原稿を含
む。)から得られる濃度情報値を基礎にして行なわれて
いる。より具体的にはカラー印刷画像の製作は常法とし
て、一般にカラー原稿画像(媒体画像)からR,G,B
の各フィルターを通して得られる濃度情報値に基づきC
版(シアン),M版(マゼンタ),Y版(イエロー)、
BL版(ブラック)を製作している。しかしながら、こ
のように写真用感光材料という記録媒体に記録されたカ
ラー原稿画像(媒体画像)の濃度情報値を利用する方法
は、前述した通りの限界(欠点)を有するものである。
【0027】これに対して、本発明は前記したように、
複製の真の対象が記録媒体に記録された画像(媒体画
像)ではなく、あくまでも媒体画像の元をなす文字通り
のカラー原稿画像、即ち被写体(実体画像)それ自体で
あり、複製時に使用すべき画像情報値は被写体から記録
媒体に入射される光量に相関した画像情報値を基礎とす
べきである、という考え方に立脚している。前記した点
が、本発明の階調変換技術と従来技術の基本的な相違点
である。
【0028】これを別の角度から説明すると次のように
なる。色分解技術においては、連続階調のカラー原稿画
像(例えば透過型のカラーフィルム原稿)を網点階調の
カラー印刷画像に階調変換しなければならないが、前記
の通り、連続階調画像と網点階調画像の相関関係を規定
するものが色分解カーブ(階調変換カーブ)である。そ
して、従来の色分解カーブは記録媒体である写真用感光
材料の感光特性曲線(D軸−X軸直交座標系で規定され
る写真濃度特性曲線)のD軸(濃度軸)上に形成された
濃度情報値を基礎として設定されている。これに対して
本発明の色分解カーブは、前述したように写真濃度特性
曲線のX軸上の被写体(実体画像)の光量に相関した画
像情報値に基づいて設定される。即ち、従来の色分解技
術においてはD軸色分解カーブを用いているのに対し、
本発明はX軸色分解カーブを用いているということがで
き、両者は基本的に異なるものである。
【0029】次に、本発明の前記<階調変換式>を用い
た画像の階調変換法において、カラー原稿画像の各画素
の画像情報値、即ち光量値の求め方について説明する。
まずカラー原稿画像(媒体画像)の撮影に使用された記
録媒体である写真用感光材料の特性曲線、具体的には写
真濃度値(D=logIo/I)と被写体(実体画像、
実景)から前記記録媒体である写真用感光材料に入射さ
れる光量に相関した画像情報値、即ち露光量(E=I
t)の対数値との関係を示す濃度特性曲線を準備する。
次に、カラー原稿画像中の任意の画素(n点)の濃度値
(D)から前記濃度特性曲線を介して光量値(x
を求めるために、前記濃度特性曲線を関数化する。これ
には、例えば写真感材メーカーから技術資料として提供
している前記記録媒体に対応する濃度特性曲線を関数化
すればよい。合理的に関数化できれば、D軸上のD
をx軸上のx値に容易に変換することができる。図1
に濃度特性曲線(F社製、フジクローム)を示す。ま
た、表1に前記図1の濃度特性曲線を数式化した結果を
示す。なお、表1に示されるように、可能な限り正確に
濃度特性曲線を数式化するために、数式化区分を8区分
として、各区分において数式化を試みている。数式化区
分を多くすればするほど、正確な関数式が得られること
はいうまでもないことである。
【0030】
【表1】
【0031】前記濃度特性曲線の数式化において、カラ
ー原稿画像(媒体画像)の濃度値を示すD軸の目盛(ス
ケール)と、被写体(実体画像)のlogEで示される
光量に相関した画像情報値を示すX軸の目盛(スケー
ル)が同一であるとして、DとXの相関を規定する関数
を求めた。これは、次の観点から行なった一種の擬制で
あり、本発明者らにおいて合理的なものと考えている。
この意味において、図1のX軸上に擬制値という用語が
使用されている。即ち、本来、写真濃度特性曲線におい
ては、X軸に露光量Eの対数値logE=logI×
t)が位置づけられるが、これは視覚の明暗に対する弁
別特性がD軸の濃度の認知(視感)と同じように対数的
であることに対応していること、従って上記スケールに
関する擬制は合理的なものであると考える。なお、本発
明において前記した目盛(スケール)づけは一種の簡便
法であり、これに限定されないことはいうまでもないこ
とである。
【0032】本発明は、前記したように被写体(実体画
像)が記録媒体(写真用感光材料)に撮影記録されて形
成されたカラー原稿画像(媒体画像)の濃度値(D
値)を基礎とするのではなく、被写体(実体画像)か
ら記録媒体に入射されるX軸で表わされる光量に相関し
た画像情報値(x値)を基礎とするものである。前記
した如く、濃度特性曲線が表1に示されるようにD
とx値は、X=f(D)の関数式により相関されてい
るため、容易にD値からx値を求めることができ
る。
【0033】前記したカラー原稿画像の濃度値(D
値)から光量値(x値)を求める方法は、典型的に
はカラー原稿画像としてカラーフィルム(透過型)の原
稿画像、即ち記録媒体として特定の写真濃度特性曲線を
有する写真感光乳剤層からなる透過型のカラー原稿画像
に適用されるものである。一方、絵画などの反射型カラ
ー原稿画像の場合、その濃度特性曲線がリニアなものと
して、即ち濃度値(D値)と光量値(x値)が1:
1で相関しているものとして取扱えばよい。より具体的
には測定される濃度値(D値)をそのまま光量値(x
値)として利用すればよい。
【0034】次いで、本発明の階調変換技術は、前記の
ようにして求めた光量値(x値)と前記<階調変換式
>を使用して、色分解カーブ(階調変換カーブ)、即ち
従来のD軸色分解カーブにかわるx軸色分解カーブを求
め、画像の階調変換を行なえばよいだけである。即ち、
所定の濃度特性曲線のもとで、原稿画像上の任意の画素
(n点)における濃度値(D)から対応する画素の光
量に相関する画像情報値(x)を求め、該(x)値
を前記<階調変換式>に代入することにより階調強度値
(y)、即ち網点面積%値(以下、単に網点%値とい
う。)(y)が計算される。この網点%値(y)を
カラースキャナの網点発生器(ドットジェネレータ)に
入力し所望のスクリーンを形成すればよい。
【0035】本発明の前記した<階調変換式>の誘導過
程を、ここで簡単に説明する。前記した網点階調である
カラー印刷画像の製作時に用いられる網点%値(y
を求める<階調変換式>は、一般に認められる濃度公式
(写真濃度、光学濃度)、即ち、 D=logIo/I=log1/T Io=入射光量 I=反射光量又は透過光量 T =I/Io=反射率又は透過光量 から誘導したものである。前記した濃度Dに関する一般
公式を、製版・印刷に適用すると次のようになる。 製版・印刷における濃度(D´)= log(Io/I)=log 単位面積 ×紙の反射率/[(単位面積−網点面積)×紙の反射率)十網点面積×インキ の表面反射率] =log αA/[α{A−(d1+d2+……dn)}+β(d1+d2+ ……dn)] ここで、 A:単位面積 dn:単位面積内にある夫々の網点の面積 α:印刷用紙の反射率 β:印刷インキの表面反射率 である。
【0036】本発明はこの製版・印刷に関する濃度式
(D´)を基本として、連続階調のカラー原稿画像上の
任意の標本点(画素)(n点)における基礎濃度値
(x)と、これに対応した網点階調のカラー印刷画像上
の標本点における網点の網点%値(y)との関連づけ
が理論値と実測値が合致するように、前記<階調変換式
>を誘導したものである。
【0037】本発明の前記<階調変換式>の運用におい
て、カラー印刷画像などの複製画像を製作する場合、一
般に、C版ではyに5%,yに95%,M版および
Y版ではyに3%,yに90%という網点%値が使
用される。なお、前記<階調変換式>の運用において、
濃度値に濃度計測定値を使用し、yとyに前記した
ような百分率数値(%値)を用いると、y値も百分率数
値で算出される。
【0038】本発明の前記<階調変換式>の運用におい
て、次のように変形して利用することはもとより、任意
の加工、変形、誘導するなどして使用することも自由で
ある。 y=y+E(1−10−kx)・(y−y) 但し、E=1/(1−β)=1/(1−10−γ) 前記の変形例は、α=1としたものである。これは、例
えばカラー印刷画像を表現するために用いられる印刷用
紙(基材)の表面反射率を100%としたものである。
αの値としては、任意の値を取り得るが、実務上1.0
として構わない。このことはビデオ画像などの輝度画像
においても同じである。
【0039】また、前記変形例(α=1.0)によれ
ば、カラー印刷画像上の最明部(H部)にy値を、最
暗部(S部)にy値を予定した通りに設定することが
でき、この点は本発明の大きな特徴点をなすものであ
る。前記した点は、カラー印刷画像上のH部において
は、定義によりx=0となること、またS部においては
x=x−xとなること、即ち、 −k・x=γ・(x−x)/(x−x)=−γ となることから明らかである。このように、本発明の<
階調変換式>(a=1の変形例)を利用することによ
り、常に予定した通りのy値とy値をカラー印刷画
像上のH部とS部に設定することができる。この点は、
利用者が作業結果を評価したり考察する上で極めて重要
な点である。例えば、カラー印刷画像におけるyとy
に所望する値を設定しγ値を変化させると(但し、α
=1.0)、各種のX軸色分解カーブ(階調変換カー
ブ)が得られる。そして、これらのX軸色分解カーブの
もとで製作されたカラー印刷画像の画質内容をγ値との
関係で容易に評価することができる。
【0040】本発明の前記<階調変換式>を利用して多
色製版(一般に、C版/M版/Y版/BL版の四版が使
用されている。)用の各色版のx軸色分解カーブ(階調
変換カーブ)を設定するには、次のようにすればよい。
当業界においては、まず基準となるC版用の色分解カー
ブ(階調変換カーブ)が設定され、次いで他の色版がグ
レーバランスやカラーバランスが維持されるように設定
されるのが常法である。前記したグレーバランスの維持
とは、三つの色版(C/M/Y版)により中性濃度(グ
レー)が再現されるための条件であり、重要な要件であ
る。当業界においては、グレーバランスを維持するため
に、一般に下記表2に示される標準値が採用されてい
る。表2においてMは、H部〜S部のダイナミックレ
ンジ(濃度域)中間部に設定されるグレーバランス管理
点(以下、中間ポイントともいう。)である。当業界に
おいて、前記M点は、表2に示されるようにC版の網
点%値が50%のところに設定されるのが常法である。
点が、C版の網点50%値に設定される主たる理由
は、該網点%値の領域が階調の豊かな再現域であること
が広く認められているからである。表2から、当業界に
おいては、M点(中間調)において、C版の網点%値
を50%に設定し、他の色版(M/Y版)の網点%値を
40%に設定してグレーバランス(中性濃度)を維持し
ていることが理解される。なお、いうまでもないことで
あるが、採用するインキの特性などにより前記標準値が
変更され得ることはいうまでもないことである。
【0041】
【表2】
【0042】前記したように本発明の階調変換技術は、
カラー印刷画像の製作において、カラー原稿画像(媒体
画像)から入手される濃度情報値(D)を使用するの
ではなく、被写体(実体画像)から媒体画像を形成する
ための記録媒体に入射される光量に相関した画像情報値
(x)を使用し、かつ前記<階調変換式>を使用する
ことを前提とするものであり、被写体(実体画像)に忠
実な階調特性を有するカラー印刷画像、更には階調特性
を所望のものに変更したカラー印刷画像を作業規則性を
もって、かつ普遍性と弾力性をもって製作することがで
きる。
【0043】次に、本発明の中核的な技術的構成、即ち
前記した階調変換技術に対して色調の調整技術を組込む
こと、別言すれば階調変換技術と色調の管理調整技術の
統合化について説明する。前記した階調(グラデーショ
ン)と色調(カラー・トーン)の統合化の契機は、次の
点にあった。 (1)本発明者らの先に提案し、かつ本発明においても
使用する前記<階調変換式>は、前記したようにカラー
印刷画像のH部〜S部に至る全ての画素の網点(ドッ
ト)の網点%値(別言すれば網点の大きさ)を、第一義
的にはカラー原稿画像の有する階調特性を忠実に再現
し、かつ人間の視覚にとって自然な階調特性のものに調
整するうえで重要なツールである。 (2)各画素に設定される網点%値は、常に、階調と色
調(または濃度と色)の双方に直接的な関係、影響力を
持っている。 (3)市場ニーズとして、カラー原稿画像の1:1再現
(Hi−Fi再現)のみでなく、画像の特定部分、ある
いは特定部位(領域)の色調(カラー・トーン)の強
調、変更、修正をせまる(要求する)ケースが増大して
いる。なお、前記要求において、顧客やデザイナー等
は、それらが所有するカラーチャート(color c
hart,なお、これについては後で詳述する。)によ
り要求内容を網点%値で提示、指定することが行なわれ
ている。 (4)従来の色分解技術、特に従来のカラーコレクショ
ン(色修正)により前記ニーズに対応する場合、例えば
特定部分の色調を要求された内容に近似させたとして
も、画像全体の調子(階調と色調)が歪んでしまい、製
品としての価値を失うケースが多い。
【0044】前記カラーチャート(color cha
rt)とは、印刷用プロセス4原色インキを使用し、あ
らゆる色彩を網点の濃度階調で表現した色再現のための
基本スケール(参照テーブル)である。例えば、大日本
インキ化学工業株式会社発行の「DIC GRAF−G
カラーチャート」(1991年3月)などがある。前記
カラーチャートにおいて、色彩再現のための各色版の組
合わせとして下記に示すような種々の組合わせがある。 1.基本的な組合わせ:C(シアン)とM(マゼンタ)
の組合わせを基本としたチャートがある。例えば、縦軸
に(C)を、また横軸に(M)を、それぞれ網点%値が
0〜100%までの12の階調で印刷して基本パターン
とし、この基本パターンに一定網点%値のY(イエロ
ー)、BL(スミ)が刷り重ねられて構成されたものが
ある。前記一定網点%値のYやBLとして、Y=10
%、BL=10%としたもの、Y=10%、BL=30
%としたもの、Y=50%、BL=10%としたもの、
などがある。 2.他の組合わせ: (1)縦軸に(Y)、横軸に(M)を組合わせたもの、
(2)縦軸に(C)、横軸に(Y)を組合わせたもの、
(3)縦軸に(BL)、横軸に(Y)を組合わせたも
の、(4)縦軸に(BL)、横軸に(M)を組合わせた
もの、(5)縦軸に(C)、横軸に(BL)を組合わせ
たもの。
【0045】前記したように、カラーチャート上の色調
は、各色版(C/M/Y/BL)の網点%値で指定され
ることになる。従って、前記カラーチャートに基づく顧
客やグラフィックデザイナーなどからの色調変更の要求
に対しては、色分解技術として各画素の全ての網点%値
を定量的かつ合理的に管理し、調整する技術を確保して
おかなければならないことはいうまでもないことであ
る。
【0046】前記した背景から、本発明者らは、前記<
階調変換式>が、H点〜S点に至る全画素の網点%値を
完全に定量的かつ合理的に管理調整できる能力を有して
いること、従って色調の調整に対しても有力なツールに
なるものと考えた。これが、前記<階調変換式>を主要
なツールとして階調と色調を統合する色分解技術の開発
の契機である。
【0047】本発明の階調の調整と色調の調整を統合化
した色分解技術、特に色調の管理調整を組込んだ色分解
技術の概要は、次の通りである。
【0048】1.まず、カラー原稿のH部〜S部の間の
所望部位において、カラー複製画像の色調を管理するた
めの色調管理ポイント(M)を設定する。なお、本発
明において、前記色調管理ポイント(M)の記号とし
て、前述した表2のグレーバランスを維持するための中
間調ポイント(M)と同じ記号(M)を使用してい
る。これは、色分解技術において中間調領域の階調再現
が重要な点であること、従って色調再現においても重要
であることを反映したものである。なお、色調管理ポイ
ント(M)は前記したグレーバランス維持のための中
間調ポイントに限定されず、H部〜S部の間の所望のポ
イントであってもよいことはいうまでもないことであ
る。前記色調管理ポイント(M)は、後述の実施例及
び図2で示されるように、縦軸(y軸:網点%値を表示
する。)と横軸(X軸:光量値を表示する。)の直交座
標において、横軸(X軸)の光量値で表示される。な
お、前記光量値はカラー原稿画像の濃度値に相関してい
るので、濃度値で表示されてもよいものである。
【0049】2.次いで、前記のようにして指定された
色調管理ポイント(M)において、色調の調整条件
を、所望する色版(C版、M版、Y版、及びBL版)の
網点%値で決定する。前記色調の調整(変更)条件の具
体的な内容は、前記カラーチャートの説明で述べた通り
である。
【0050】3.次のステップは、前記した条件及び与
件条件を利用して、各色版(C版、M版、Y版、BL
版)の色版画像を製作するために使用される色分解カー
ブ(階調変換カーブ)の準備、より具体的には各色版用
の色分解カーブを設定するための<階調変換式>の準備
である。前記工程(1〜2)により、 ・ 色調管理ポイント(M)の光量値、例えば、M
=0.400、 ・ 色調の調整条件、例えば、前記色調管理ポイント
(M)において、C版網点%値(50%)、M版網点
%値(20%)、Y版網点%値(10%)、BL版網点
%値(10%)、が設定される。また、各色版のH部と
S部に設定される網点%値(y,y)は、予め与件
として与えられた値あるいは所望する値を設定する。な
お、前記した与件として与えられるy値、y値は、
本発明の<階調変換式>の運用に関する説明のところで
述べたように、例えばC版に対してはそれぞれ5%と9
5%、M版とY版に対してはそれぞれ3%と90%の標
準値を意味する(表2参照)。前記条件のもとに、各色
版用の色分解カーブを設定するために使用される前記<
階調変換式>の運用条件、即ち前記<階調変換式>のγ
値が決定される。例えば、C版用の色分解カーブを設定
するための前記<階調変換式>のγ値は、次のようにし
て決定される。前記<階調変換式>に、x=0.0
0,x=1.00,x=M=0.40,α=1.
00,y=0(%),y=95(%),y=50
%を代入して解くと、γ=0.45の値が得られる。こ
れにより、C版用の色分解カーブを設定する<階調変換
式>が準備される。他の色版についても同様である。
【0051】4.次のステップは、前記したγ値(γ=
0.45)を有する<階調変換式>を用いて、H部〜S
H部に至る全ての画素点(n点)の光量値(x)を階
調変換し、C版用の色分解カーブ(階調変換カーブ)を
求める工程である。別言すれば、C版の色版画像を製作
するために前記C版用の<階調変換式>を用いて色分解
作業を行なうことである。他の色版についても同様であ
る。
【0052】前記した本発明の階調の調整技術と色調の
調整技術を統合化した色分解技術の有効性は、後述する
実施例において実証される。ここで、本発明の色分解技
術、特に階調(グラデーション)と色調(カラー・トー
ン)の調整機能を組込んだ色分解技術の他の特徴及び応
用分野について説明する。本発明の色調の管理調整を組
込んだ色分解技術は、その応用面として前記したカラー
印刷画像の製作にのみ限定されず、その応用範囲は広
い。本発明の色分解技術は、光、電磁波などの情報伝達
メディアを利用し被写体(実体画像)を所望の記録媒体
へ記録、撮影または撮像変換したカラー原稿画像(媒体
画像)より、カラー複製画像を製作しようとする全ての
分野に適用することができる。従って、それぞれのカラ
ー複製画像を製作するシステムに適合するように、本発
明の色分解技術を運用しなければならないことはいうま
でもないことである。
【0053】まず、記録媒体の特性曲線、即ち被写体
(実体画像)から所定の記録媒体に入射する光量に相関
する画像情報値(光量値)と記録媒体上に形成される濃
度情報値との相関を示す濃度特性曲線の規定において、
前記特性曲線の規定変数(因子)は、カラー原稿画像に
おいて説明したような露光量の対数値(光量値)と濃度
値の組合わせに限定されない。それぞれのカラー複製画
像の製作システムにおいて、被写体(実体画像)の画像
情報の入力媒体(記録媒体)であるセンサーの特性曲線
としては、最広義に解釈して濃度に相関した濃度情報値
(D値)と光量に相関した画像情報値(x)が相関
する濃度特性曲線(光電変換特性曲線)を規定すればよ
い。この種の濃度に相関した画像情報値を示す物理量と
しては、最広義に解されるべきであり、例えば同義語と
しては、反射濃度、透過濃度、輝度、明度、周波数、電
流・電圧値、などがある。また、被写体(実体画像)が
記録される記録媒体としては、写真用感光材料、あるい
は二次元CCD、光ディスク、磁気ディスク、磁気テー
プ、フォトダイオード、などの光電変換素子などのいず
れであってもよい。前記した記録媒体との関係におい
て、記録媒体の特性である前記濃度特性曲線が、写真濃
度特性曲線(写真用感光材料の場合)、光電変換特性曲
線(光電変換素子の場合)などといわれることはいうま
でもないことである。なお、カラー原稿画像が反射原稿
の場合(反射原稿が実体画像、実景となる。)、前記濃
度特性曲線は、直交座標系の45゜(度)の直線で規定
(F(D)=F(X))されることはいうまでもないこ
とである。
【0054】次に、本発明の色調の管理調整を組込んだ
色分解技術の応用分野について説明する。本発明を、こ
れまで特にカラー印刷画像の製作との関連で説明してき
たが、その応用面は、ことカラー印刷画像の製作に限定
されるものではない。即ち、本発明の色分解技術の応用
例としては、(i)既に詳しく説明した凸版、平版、網
点グラビヤ、シルク・スクリーンなどのカラー印刷画
像、あるいは、ドットの大きさを変える(多値化する)
ことができる溶融転写型感熱転写画像などにみられる網
点(ドット)の大きさでカラー複製画像の階調や色調を
表現しようとする場合(これは面積階調法あるいは多値
面積階調法ともいわれている。)に限らず、以下の応用
分野がある。(ii)昇華転写型感熱転写画像、(銀塩
利用)熱現象転写画像、コンベンショナル・グラビヤ画
像などにみられる一定面積の画素自体の濃度を変える場
合、例えば画素を被覆する顔料や染料(色素)などの濃
度を変化させて階調や色調を表現しようとする場合(こ
れは濃度階調法あるいは直接濃度階調法ともいわれてい
る。)、(iii)デジタル式の複写機(カラーコピー
など)、プリンター(インキジェット式、バブルジェッ
ト式など)、ファクシミリなどにみられる一定面積当り
の記録密度、例えばドットの数、インキの粒の数などを
変化させることにより階調を表現しようとする場合(こ
れは、前記(i)の面積階調と類似したもので、密度階
調法あるいは疑似階調法、2値面積階調法ともいわれて
いる。)、(iv)ビデオ信号、テレビ信号、ハイビジ
ョン信号などの画像情報に関する電気信号より、単位面
積の輝度の強弱を調整して画像を表現するCRT画像や
液晶テレビ画像、あるいはこれらの画像表現からカラー
印刷物やカラーハードコピーなどを得ようとする場合、
(v)X線写真などの検査のための医療用精密画像とし
て、被写体(患部、病巣など)に忠実なカラー複製画像
を製作したい場合、(vi)この他、濃度表示とともに
網点%値などをも表示させるようにした濃度・階調変換
機構つき濃度計、色分解事前点検用機器(例えば校正用
カラープルーフ)や色分解教育用シミュレータなどの印
刷関連機器など、に応用することができる。
【0055】次に、本発明の色調の管理調整技術を組込
んだ色分解技術において、これをカラー複製画像を製作
するために利用する各種の機器(画像形成装置)への適
用法について説明する。別言すれば、これら画像形成装
置における本発明の色分解技術の利用法について説明す
る。本発明の色調の管理調整技術を組込んだ色分解技術
を、前記した各種の応用分野に適用するには、以下のよ
うにすればよい。 1.それぞれの応用分野において、それぞれの機器の画
像情報処理部、例えば階調変換部の構成を、(1)所定
の記録媒体(センサー)に記録されたカラー原稿画像か
ら入手される濃度情報値と、前記記録媒体(センサー)
に被写体(実体画像、実景)から入射される光量値に相
関した画像情報値、との間の相関を規定する濃度特性曲
線をベースにして、カラー原稿画像(ハードな原稿もソ
フトな原稿も含む。)の濃度に関する画像情報値及び/
又は画像情報電気信号値(アナログでもディジタルでも
いずれでも良い。)に対応する光量に相関した画像情報
値を求める機構(ソフト対応)、及び、(2)前記<階
調変換式>を運用する機構(ソフト対応)、を具備する
ように構成する。
【0056】2.また、出力部の構成は、前記<階調変
換式>による計算値、即ちy値(網点%値などの階調
強度値)に対応させて機器の記録部(記録ヘッド)の電
流値や電圧値、あるいはその印加時間などを制御し、網
点の大きさ(網点%値)、一定面積(1画素)当りのド
ット数、一定面積のドット自体の濃度などを変化させて
(即ち、サイズ変調法、密度変調法、濃度変調法などの
階調表現方法を用いて)、階調と色調が所望に調整され
たハーフ・トーン(網点階調、中間調)のカラー複製画
像が出力されるように構成すれば良い。
【0057】例えば、本発明の色分解技術を用いて、網
点階調画像であるカラー印刷画像の原版、すなわち印刷
用原版(色版画像)を製作する場合、当業界において周
知の既存システムを利用すれば良く、市販の電子的色分
解装置(カラー・スキャナー、トータル・スキャナー)
等の色分解機構部に、本発明の色分解技術を組込むこと
により達成される。より具体的には、本発明の色分解技
術は、カラーフィルム原稿画像(透過型の媒体画像)に
対して小さなスポット光を照射し、この透過光(画像情
報信号)を光電変換部(フォトマル)で受光し、光の強
弱を電圧の強弱に変換し、得られた画像情報電気信号
(電圧値)を画像情報処理部にあるコンピュータによっ
て所要の整理・加工を行ない、コンピュータからアウト
プットされる加工した画像情報電気信号(電圧値)に基
づいて露出用光源光の制御を行ない、次いで生フィルム
にレーザーのスポット光をあて印刷用原版(色版画像)
を作成する周知の既存システムに応用されるものであ
る。
【0058】その際、画像情報処理部、即ち、カラー原
稿画像(媒体画像)の画像情報である電気信号を整理・
加工するためのコンピュータの計算処理部において、カ
ラーフィルム(記録媒体)に記録されたカラー原稿画像
(媒体画像)の濃度情報値から前記カラーフィルム(記
録媒体)の濃度特性曲線を介して光量に相関した画像情
報値を求めるとともに、前記<階調変換式>を利用して
網点%値(y値)を出力させるソフトを組み込めば良
いだけである。
【0059】前記した説明からわかるように、前記シス
テムにおいて、カラー原稿画像(写真感光材料という記
録媒体に撮影記録された媒体画像)は、スキャナーの画
像情報入手機構、具体的には光電変換部(フォトマル)
で処理されて濃度に相関した画像情報値が入手される。
そして、厳密にいえば前記光電変換部は、それ自体の特
性曲線(光電変換特性曲線)を有しているため、前記光
電変換部において、前記カラー原稿画像の画像情報は、
前記光電変換部の光電変換特性曲線により影響(変質、
劣化)を受けることになる。従って、前記光電変換特性
曲線の影響を排除する方が好ましいが、これを無視して
もよい。
【0060】前記したソフトとしては、カラー原稿画像
の濃度に相関する濃度情報値(D)を所定の濃度特性
曲線のもとで対応する光量に相関する画像情報値
(x)に変換するとともに、前記<階調変換式>のア
ルゴリズムをソフトウェアとして保有しかつA/D(ア
ナログーデジタル変換)、D/AのI/F(インターフ
ェース)を有する汎用コンピュータ、アルゴリズムをロ
ジックとして汎用ICにより具体化した電気回路、アル
ゴリズム演算結果を保持したROMを含む電気回路、ア
ルゴリズムを内部ロジックとして具現化したPAL、ゲ
ートアレイ、カスタムIC等々種々の形態をとることが
できる。特に最近においては、モジュール化が発達して
おり、本発明の前記<階調変換式>をベースとして画像
の階調変換を行なうことができる演算機構は、専用のI
C、LSI、マイクロプロセッサー、マイクロコンピュ
ーターなどのモジュールとして容易に製作することがで
きる。そして、光電走査用のスポット光を順次、点に分
割しながら走査させ、一方、生フィルムにレーザー光を
照射するレーザー露光部もこれと同期するように行なえ
ば、前記<階調変換式>により導き出される網点%値
(y)を持つ網点階調の階調と色調が所望に調整され
た印刷用原版(色版画像)が合理的に製作される。
【0061】
【実施例】以下、本発明の階調(グラデーション)の調
整と色調(カラー・トーン)の調整を統合化した色分解
技術について、実施例により更に詳しく説明する。な
お、以下の実施例は、カラー原稿画像(媒体画像)から
カラー印刷画像(複製画像)を製作するものであるが、
本発明の応用分野は、これに限定されない。
【0062】本発明の前記<階調変換式>を重要なツー
ルとして、カラー印刷画像の階調と色調を合理的に管理
調整することができるか否かを検討するために、次の3
段階の実験を行なった。 (1)基礎実験 (2)応用実験 (3)実務適用実験
【0063】階調の変換技術として有用なツールである
<階調変換式>に、色調の調整管理を組込むことによる
影響と効果を慎重に検討するため、前記した3段階の実
験について、それぞれ次の二つの方法をとり入れて実験
した。 (1)実験A: 3つの色版画像(C版/M版/Y版)
の色調管理ポイント(M)及びS部の両方の網点%値
を調整する実験。 (2)実験B: 3つの色版画像(C版/M版/Y版)
のM点のみを調整する実験。
【0064】<M点、M点の光量値、及び各色版用
γ値の決定法> (1)色調管理ポイント(M) 色調の管理ポイント(M)(図2参照)は、従来技術
において階調の調整のために広く採用されている中間
調、より厳密にはC版網点階調画像(色版画像)の網点
%値が50%となる点に設定した。これは、当業界で一
般に採用しているグレーバランスを管理するための管理
ポイントに合致するものである。なお、いうまでもない
ことであるが、本発明において色調管理ポイント
(M)は、C版の網点%値が50%の部位に限定され
ないことはいうまでもないことである。
【0065】(2)色調管理ポイント(M)の光量値 色調管理ポイント(M)の光量値の値は、C版用色分
解カーブ(階調変換カーブ)を設定する<階調変換式>
より決定した。即ち、C版用色分解カーブを設定する<
階調変換式>において、 ・ 網点使用範囲:0〜95%(y=0%,y=9
5%) ・ γ値 :0.45 ・ x=1.00,x=0.00(x−x
1.00)(注) ・ y=50(%)(これは、前記色調管理ポイント
(M)の網点%値である) の条件を<階調変換式>に代入し、x値(色調管理ポイ
ントにおける光量値)を求めた。即ち、前記条件を<階
調変換式>に代入し、下式を解いて求めた。この結果、
x=0.40である。 50=0+[(1−10−0.45x)(95−0)/
(1−10−0.45)] (注)一般に、カラー原稿画像(媒体画像)から求めた
光量値のダイナミックレンジ(x−x)は、1.0
0ではないが、ここでは前記ダイナミックレンジを1.
00に正規化した値を用いている。なお、いうまでもな
いことであるが、ダイナミックレンジを1.00に正規
化しても画質内容は相対化されて変化するため、画像処
理においては、何等の問題もない。
【0066】(3)各色版(C/M/Y/BL)用色分
解カーブを決定するためのγ値の決定法 以下の実験例では、C版用色分解カーブを設定するため
のγ値は、前記したようにγ=0.45の値を用いてい
る。他の色版については、色調の調整条件の内容に応じ
て、それぞれの色分解カーブ(階調変換カーブ)を設定
するためのγ値を求めなければならない。例えば、M版
の場合、色調管理ポイント(M)において(なお、前
記色調管理ポイントにおける光量値はx=0.40であ
る)、M版の網点%値が20%、かつ網点使用範囲が0
〜68%のとき、以下の式を解いて求めればよい。な
お、下記の解はγ=0.20である。 20=0+[(1−10−γ(0.40))(68−
0)/(1−10−γ)] 本実験において、前記した色調管理ポイント(M)の
光量値や各色版用のγ値が自動的に算出され、かつ所望
する色分解カーブを自動的に準備するソフトを使用し
た。
【0067】<実験に使用した機器、資材> (1)カラー原稿画像としてE.K.社製4″×5″ポ
ジカラーフィルムで撮影した標準品質の褐色の陶器壺の
画像を選んだ。 (2)カラー・スキャナとして、 ・ 写真濃度特性曲線(フジクローム、アグファクロー
ム、エクタクロームなどの代表的な写真感光材料の特性
曲線を12本準備した。)を介して濃度値から光量値
(正規化光量値)を求めるソフト、 ・ <階調変換式>を利用して色調管理を行なうソフ
ト、及び色分解カーブを計算するソフト、を組込んだ階
調変換部を有するISOMET社製デジタルカラースキ
ャナ445型を使用した。 (3)色分解用フィルムとして、AGFA S712P
を使用した。 (4)色校正には、DUPON社クロマリン・システム
を採用した。
【0068】<基礎実験>本実験は、本発明<階調変換
式>というツールが、カラー印刷画像の色調を合理的に
調整する機能を備えているかどうかを確かめることが目
的である。特に、階調を維持しながら、色調の調整を合
理的に行なうことができるかどうかについて確かめた。
表3に、基礎実験用の色調の管理調整のための各色版の
製版設計資料を示す。 (注1) 実験Aは、先にS部の網点%値を指定し、次
いで下式(1)によりM点(色調管理ポイント)の網
点%値を求めて実験したものである。なお、下式(2)
の標準網点%値は、表2に示されている。 M点の網点%値=(M点の標準網点%値)×(S部に指定し た網点%値)/(S部の標準網点%値) ………(1) (注2) 実験Bは、M点の網点%値として実験Aの
値を採用し、S部の網点%値として標準値(表2)を採
用した。 (注3) カラー原稿画像(壺)のH部として、キャッ
チライト部を選んでいるため、全ての色版画像のH部の
網点%値は「0」(ゼロ)である。
【0069】
【表3】
【0070】前記基礎実験の4つの実験[実験A(N
o.1〜No.2)及び実験B(No.1〜No.
2)]の結果は、製版実務(経験)に照して、何れも予
想通りのものであった。このことは、本発明の<階調変
換式>を利用した色調管理法は合理性を持っていること
を示すものである。なお、基礎実験から得られた4つの
色校正画像の内容は次の通りである。 (1)4点とも、H部〜S部の全ダイナミックレンジに
おいて、階調(濃度階調)がよく再現されており、かつ
中間調のボリュウム感も人間の視覚にとって適切なもの
である。 (2)壺の色調は、実験A(No.1〜No.2)では
青色系であり、実験B(No.1〜No.2)では中間
調領域において青色系、S部においては原稿画像通りの
褐色系であった。なお、これらの色調は、製版実務と全
く符号するものである。
【0071】因みに、実験A(No.1〜No.2)の
各色版用色分解カーブを設定するためのγ値、及びM
点での網点%値(計算値)は、以下の通りである; (1)実験A(No.1)C版 γ= 0.45,M
点の網点%値=50.0000%M版 γ=−0.2
0,M点の網点%値=30.9878%Y版 γ=−
0.18,M点の網点%値=35.8678% (2)実験B(No.2)C版 γ= 0.45,M
点の網点%値=50.0000%M版 γ=−0.1
8,M点の網点%値=26.9006%Y版 γ=−
0.20,M点の網点%値=30.9878% なお、BL版のγ値はγ=−0.25である。
【0072】また、前記基礎実験の概要及び実験A(N
o.1)と実施B(No.1)で使用した各色版用の色
分解カーブ(階調変換カーブ)を図2に示す。図中
(a)は、グレーバランス維持のために当業界において
標準として採用されている色分解カーブの組合わせであ
る。その製版設計資料は、表2に与えられている。図中
(A)は実験A(No.1)の各色版の色分解カーブ
(階調変換カーブ)の組合わせを、また図中(B)は実
験B(No.1)の各色版の色分解カーブ(階調変換カ
ーブ)の組合わせを示す。
【0073】<応用実験>本実験は、より日常の色分解
作業に近い方法で色分解実験を行ない、本発明の<階調
変換式>を利用した色調管理法が、カラー印刷画像の色
調を合理的に調整管理する能力を備えているかどうかを
確かめることを目的とする。本実験においては、色調の
管理ポイント(M)をC版画像の網点%値が50%と
なるポイントとした。また、前記色調管理ポイント(M
)における色調の調整内容(ユーザー等から要求され
る色調の修正、変更の具体的な内容)を、各色版画像の
C/M/Yの各色の網点%値で指定する基本スケールと
して、大日本インキ化学工業社製「DIC GRAF−
G カラーチャート」(1991年3月、第2版)を採
用した。本実験では、前記カラーチャートの中から6種
類の色を選択した。表4に、前記「DIC GRAF−
G カラーチャート」から選択した6種の色と色調調整
のための指定網点%値を示す。
【0074】前記カラーチャートにおいて、前記6種の
色は、C/Mの網点濃度として0〜100の間に12段
階で表示されており、これにY/BL(一定の網点濃
度、例えば表4に示されるように10%とか50%の網
点濃度を有するもの)が刷り重ねられた色として示され
ている。従って、色調調整のための指定網点%値は、同
チャートにおいて容易に指定することができ、表4に
は、この指定網点%値が示されている。なお、いうまで
もないことであるが、前記した網点%値で指定された色
調が、階調の劣化を招くことなく色版画像上に忠実に再
現されるか否かを検討することが、本実験の目的であ
る。
【0075】
【表4】
【0076】前記表4の資料に基づいて作成した本実験
用の製版設計資料を下記表5に示す。 (注1)本実験において、M点の指定網点%値は、い
うまでもなく表4の色調調整のための指定網点%値を採
用した。 (注2)本実験の実験Aにおいて、S部のM/Y版用網
点%値は、下記(2)式により求めた。C版のS部につ
いては、表2(グレーバランス維持標準値)の値(95
%)を採用した。なお、下記(2)式の標準網点%値
は、表2に示されている。また、下式(2)式による計
算結果が標準網点%値を越える時は、標準網点%値を採
用することとした。 S部の網点%値=(S部の標準網点%値)×(Mに指定した網% 値)/(Mの標準網点%値) ………(2) (注3)カラー原稿画像(壺)のH部として、キャッチ
ライト部を選んでいるため、全ての色版画像のH部の網
点%値は「0」(ゼロ)である。 (注4)BL版(墨)版は、常法に従いスケルトン・タ
イプ、即ち墨入れの始点(starting poin
t,SP)をM点とし、終点(end point,
EP)をS部とした。また、S部に入れるBL版の最大
網点%値は、実験Aは80%、実験Bは70%とした。
【0077】
【表5】
【0078】前記応用実験の結果は、前記基礎実験と同
様、全て予想した通りであった。カラー印刷画像で得ら
れた色調管理ポイント(M)での色調は、基本スケー
ルとしてのカラーチャート上の色調と全く整合してお
り、かつH部〜S部の全ダイナミックレンジにわたり階
調はもとより色調も人間の視感にとって自然なものであ
った。即ち、前記応用実験の結果から、本発明の<階調
変換式>をツールとした色分解技術は、色調の管理調整
を行なう上で、更には階調の調整と色調の調整を統合化
する上で、合理性を持っていることが確かめられた。
【0079】<実務適用実験>本実務適用実験では、最
近、印刷デザイナーなどが標準のカラー原稿画像を使用
しながら、敢えて複製されるカラー印刷画像の仕上り調
子を、全体的にブルー調、ダークグリーン調、ライトグ
リーン調、ピンク調、セピア調などの色調に変更する作
業が増加していることに鑑み、かつ前記した全体的に画
像の色調を変更する上で、従来技術においては全く経験
的技能に基づく繁雑な複数の作業工程を経なければなら
ないという現状に鑑み、これらの作業に対する本発明の
階調及び色調の管理調整法の有効性を実験した。即ち、
本発明の階調及び色調の管理調整法を応用して、前記画
像の色調を全体的に変更するとともに、画像の階調をも
合理的に管理することができるか否かを確かめることと
した。
【0080】前記実験用のカラー原稿画像は、当業界に
おいて標準カラー原稿として認められているF社製4”
×5”サイズの透過型カラー原稿の中から選ばれた。具
体的には、標準カラー原稿画像として、赤、ブルー、
緑、黄、紫など多様な色彩を含む若い女性像と数種類の
素材(金属、布、花、紙など)を有するものが選択され
た。一方、当業界において参照用ターゲットとして広く
使用されているAGFA社製4”×5”の透過型ターゲ
ット(ISO標準によって作成されたカラー原稿画像)
についても同時に実験を行なった。
【0081】複製されるカラー印刷画像の仕上りの色調
は、全体をブルー調に変更することとした。具体的に
は、DIC GRAF−Gカラーチャート第29頁にお
いて、C版50%、M版30%、Y版10%、及びBL
版30%の指定色で色調を管理することとした。なお、
本実験で使用した機器や資材などは、前記したものと同
じである。
【0082】本実験用製版設計資料を下記表6に示す。
また、表7にC版用色調カーブ設定データを示す。な
お、表6の製版設計資料を作成する上で、前記<応用実
験>の結果を参考にしながら次の点を考慮した。 カラー原稿画像の中の赤、グレー、緑、黄、紫など
の色を自然なものに押えながら、画像全体のブルー調の
仕上り調子に力強さを与えるために、BL版の持ってい
る画像表現能力や効果を、十分に活用するように配慮し
た。 このため、BL版のSP(スタート・ポイント=0
%)をC版の網点%値が10%である部位に決め、管理
ポイント(M)に30%、かつS部における最大網点
%値を95%とした。また、BL版色分解カーブの設定
用γ値、即ち<階調変換式>のγ値を0.10とした。
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】実験結果は、画像の色調及び階調の両者と
も、製版設計で予定した通りのカラー印刷画像が得られ
た。即ち、カラー原稿画像の中の若い女性の人物画像
は、視感に感じる画像全体の仕上り調子はブルーの色調
であり、かつ極めて自然のものであった。そして、女性
人物像の全体的な色調はブルーでありながら、本来の肌
色のもつデリケートな階調は、ブルーの色調のもとでも
本来の肌色をしのばせるに十分なものであった。なお、
前記実験結果をより厳密に記述すれば、H部〜中間調に
かけての色調は、カラーチャート上で指定した色調と同
じブルー調であり、S部領域ではマゼンダ(M)色が残
った感じのものであった。これは表6の製版設計資料
(データ)からみて明らかのように、M版のS部に多く
の網点%値を指定(68%)したためであり、実験結果
は、これと全く符号するものであった。また、赤、緑、
黄、紫などの色も柔らかく押えられており、画像全体の
調子と違和感をもつものではなかった。更に、H部〜S
部に至る全体の階調は、少しも損なわれることがなく、
全体的なブルーの色調を通じて金属、布、花などの素材
が持つ特有の階調の変化を表現しているため、これら素
材を明確に識別できるとともに、それらのディテール
(細部の構造)も良く再現されたものであった。
【0086】また、AGFAの標準ターゲットから得ら
れたブルー調のカラー印刷画像も、全体的なブルー色調
の画像にも拘らず、豊かな階調を持つものであった。即
ち、画像全体から受けるブルー調の調子の視感は、自然
の景色をブルーフィルターを通して見たのと同様に極め
て自然で調和のとれたものであった。これは、色調の全
体的な変換過程においても階調の変換が合理的に行なわ
れたことを実証するものである。
【0087】
【発明の効果】本発明の色分解技術は、特定の<階調変
換式>を利用するものであるが、従来技術において困難
視された階調(グラデーション)の調整と色調(カラー
・トーン)の調整を統合化することができるものであ
る。従来技術においては、市場ニーズの高い(要求度の
高い)特定部位、特定部分(領域)、更には画像全体の
色調の調整(色調の修正、変更)を行なおうとする場
合、色調の調整を定量的に行なうことができないばかり
か、当該部位と他の部位との色調のアンバランス、画像
合体の調子(階調と色調)が歪んでしまい、高品質のカ
ラー複製画像を製作することができないでいるのが現状
である。
【0088】これに対して、本発明の色分解技術は、特
定の<階調変換式>の採用と、その運用により、階調の
調整と色調の調整を完全に定量化することができ、合目
的にカラー原稿画像を色分解することができ、階調の再
現性はもとより色調が調整された高品質のカラー複製画
像を効率よく製作することができる。
【0089】即ち、本発明の色分解技術は、次のような
優れた効果を奏するものである。 (1)高度、複雑、多様化した市場のカラー印刷画像な
どのカラー複製画像の品質に対するニーズに、合理的に
対処することができる。 (2)カラー複製画像の製作、特に色分解作業が定量
的、合理的に実践されるため、生産性の向上、作業時間
の短縮、設備の効率的な活用、消耗資材の節約、低減化
などに著しい効果をもたらす。 (3)カラー印刷画像などのカラー複製画像の製作にお
いて、感性や芸術性を合理的に活かす道を開くことがで
きる。これらは、印刷産業などにおいて要求されている
工業的生産方式への感性と芸術性の結合を可能とするも
のであり、印刷産業などの画像関連産業の活性化に資す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 カラーフィルムの濃度特性曲線(F社製)を
示す図である。
【図2】 本発明の基礎実験の概要と使用した色分解カ
ーブを説明する図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H04N 1/407 H04N 1/40 101E 1/405 104 1/52 1/46 B

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定の記録媒体に記録されたカラー原稿
    画像から前記記録媒体の特性曲線(記録媒体に入射する
    光量値と記録媒体上に形成される濃度値との相関曲線)
    を介して得た各画素の光量値をハーフトーン階調(以
    下、網点階調という。)に階調変換してカラー複製画像
    を製作するときの色調の管理調製法において、前記色調
    の管理調製法が、 1.カラー原稿画像のH部(最明部)〜S部(最暗部)
    の間の所望部位に、カラー複製画像の色調を管理するた
    めの色調管理ポイント(M1 )を設定すること、 2.前記色調管理ポイント(M1 )において、色調の調
    整条件を所望する色版(C版、M版、Y版、及びBL
    版)の網点%値で規定すること、 3.前記色調管理ポイント(M1 )における光量値と前
    記色調の調整条件を反映する色版の網点%値、及びH部
    とS部に設定する所望の網点%値を下記<階調変換式>
    に代入してγ値を決定し、前記色版のH部〜S部に至る
    全画素の光量値を網点%値に変換するため<階調変換式
    >を準備すること、 4.前記γ値が決定された各色版用の<階調変換式>を
    用いて、各色版用の各画素の光量値を階調変換するとと
    もに色調を管理調整すること、の工程から成ることを特
    徴とする網点階調のカラー複製画像を製作するときの色
    調の管理調整法。 <階調変換式> yn =yH +[α(1−10-kx )(yS −yH )/
    (α−β)] 上記<階調変換式>において、各記号の意味は、以下の
    通りである; x: (xn −xH )を示す。即ち、前記記録媒体の特
    性曲線を利用して求めたカラー原稿画像の任意の画素点
    (n点)の濃度情報値(Dn )に対応する光量値
    (xn )から、同様に求めたカラー原稿画像のH部の濃
    度情報値(DH )に対応する光量値(xH )を差し引い
    て得られる基礎光量値を示す。 yn : カラー原稿画像上の任意の画素点(n点)に対
    応したカラー複製画像上の画素に設定される網点%値。 yH : カラー原稿画像上のH部に対応したカラー複製
    画像上のH部に予め設定される網点%値。 yS : カラー原稿画像上のS部に対応したカラー複製
    画像上のS部に予め設定される網点%値。 α: カラー複製画像を記録するための画像表現媒体の
    表面反射率。 β: β=10により決められる数値。 k: k=γ/(xS −xH )により決められる数値。
    但し、xS は、前記記録媒体の特性曲線を利用して求め
    たカラー原稿画像のS部の濃度情報値(DS )に対応す
    る光量値(xS )を示す。 γ: 任意の係数。
  2. 【請求項2】 カラー原稿画像が、カラーフィルム(透
    過型)原稿である請求項1に記載の色調の管理調整法。
  3. 【請求項3】 カラーフィルム原稿の記録媒体の特性曲
    線が、写真濃度特性曲線(縦軸:濃度値,横軸:露光量
    の直交座標系で規定される曲線)である請求項2に記載
    の色調の管理調整法。
  4. 【請求項4】 色調の調整が、Y版、BL(墨)版の網
    点%値を固定し、C版とM版の網点%値をもって行なわ
    れるものである請求項1に記載の色調の管理調整法。
  5. 【請求項5】 色調管理ポイント(M1 )が、xS −x
    H =1.0(正規化された光量値レンジ),yH =0
    %,yS =95%,γ=0.45の初期条件のもとで決
    定されたC版用階調変換曲線において、網点%値が50
    %となる部位に設定されたものである請求項1に記載の
    色調の管理調整法。
  6. 【請求項6】 色調管理ポイント(M1 )が、M1
    0.400(正規化光量値)の部位に設定されたもので
    ある請求項5に記載の色調の管理調整法。
JP7146935A 1995-05-23 1995-05-23 カラー複製画像の色調の管理調整法 Pending JPH08314122A (ja)

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US08/651,607 US5841897A (en) 1995-05-23 1996-05-22 Method for the tonal control or adjustment of reproduced color image and picture producing system making use of said method
DE19620860A DE19620860A1 (de) 1995-05-23 1996-05-23 Verfahren und Anlage zur Farbtonsteuerung oder -einstellung in Farbbildreproduktionen und Anlage zur Bildherstellung die diese einsetzt

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