JPH08311697A - メッキ装置の通電搬送用吊具及びハンガー - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 掛止位置の若干のずれ、あるいは、掛止状態
に多少の傾きがあっても、常に正常な電気的接触の状態
を維持できる通電搬送用吊具を得る。 【構成】 メッキ装置の電源に接続された母線５に一端
のスライド部１ａが掛止されると共に、他端のハンガー
受け部１ｂに被メッキ物４を吊るしたハンガー２が掛止
されるように形成された通電搬送用吊具１において、通
電搬送用吊具１のハンガー受け部１ｂに可とう性導電部
材１０を装着し、母線５から通電搬送用吊具１に供給さ
れた電流を可とう性導電部材１０を介してハンガー２に
通電するように構成した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、自動静止メッキ装置
等のメッキ装置において、給電用母線に掛止される通電
搬送用吊具と、この通電搬送用吊具に被メッキ物を吊る
すためのハンガーに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】図５は従来の自動静止メッキ装置の通電
搬送用吊具を示す斜視図である。図において、１は一般
にキャリアと呼ばれている通電搬送用吊具であり、銅ま
たは銅合金材料を用いて、一端にコ字状のスライド部１
ａが形成され、他端には複数のＶ字状のハンガー受け部
１ｂが形成されている。２はハンガーであり、銅または
銅合金材料を用いて、一端にコ字状のハンガー部２ａが
形成され、他端はハンガー部２ａから垂れ下がるように
形成された主軸部２ｂになっており、この主軸部２ｂに
フック部３が設けられている。フック部３は例えば図示
のようにステンレス鋼線を用いて形成されたもので、中
央部が主軸部２ｂに固着され、両端は被メッキ物４を吊
るすための吊下げ部３ａになっている。なお、この実施
例のフック部３はステンレス鋼線を用いて形成したもの
を示したが、フック部３が主軸部２ｂと一体的に形成さ
れたものであってもよい。５は一般にブスバーと呼ばれ
ている母線であり、直流電源装置（図示せず）に接続さ
れている。この母線５に通電搬送用吊具１のスライド部
１ａが掛止され、ハンガー受け部１ｂに掛止されたハン
ガー２を介して被メッキ物４に通電するように構成され
ている。

【０００３】図６は上記通電搬送用吊具１を用いた自動
静止メッキ装置の一部分を示す概略説明図である。図に
おいて、６は搬送装置、７，８，９はメッキ槽あるいは
複数の処理工程の処理槽である。被メッキ物４はハンガ
ー２に吊るされ、ハンガー２は通電搬送用吊具１に掛止
されている。通電搬送用吊具１は母線５に掛止され、搬
送装置６によりあらかじめ定められたメッキ工程に応じ
て上下方向及び矢印Ａ方向に移動される。即ち、搬送装
置６が母線５に掛止された通電搬送用吊具１に係合して
通電搬送用吊具１を移動させる。この移動により被メッ
キ物４は、メッキ槽あるいは処理槽７，８，９に順次浸
漬されて自動的にメッキ処理が行われる。このメッキ処
理に必要な電流は、直流電源（図示せず）の一方の極か
ら→メッキ槽の中に設置された電極（図示せず）→メッ
キ液→被メッキ物４→ハンガー２→通電搬送用吊具１→
母線５→直流電源（図示せず）の他方の極に流れ、被メ
ッキ物４の表面に周知の金属メッキが施される。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の自
動静止メッキ装置の通電搬送用吊具では、長期間使用し
ている間にハンガー受け部１ｂとハンガー部２ａとの間
の電気的接触が悪くなることがある。即ち、通電搬送用
吊具１に対するハンガー２の掛止・取り外しを何度も繰
り返している場合、正常な掛止位置では電気的接触が良
好であっても、正常な接触点以外の部分では、ハンガー
受け部１ｂやハンガー部２ａの酸化あるいは腐食が進行
している。従って、掛止位置の僅かなずれ、あるいは、
僅かな掛止状態の傾きがあっても電気的接触の状態が悪
くなり、良好なメッキ膜の形成が阻害されるという問題
点があった。殊に、被メッキ物４が軽量の場合にこの問
題点が発生し易かった。

【０００５】この発明は、上述のような課題を解決する
ためになされたもので、第１の目的は、掛止位置の若干
のずれ、あるいは、掛止状態に多少の傾きがあっても、
常に正常な電気的接触の状態を維持できる通電搬送用吊
具を得るものである。また、第２の目的は、正常な電気
的接触の状態を維持できる手段を、更に長期間継続でき
るょうにした手段を得るものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】この発明に係るメッキ装
置の通電搬送用吊具は、一端が電源に接続された母線に
掛止されると共に、他端に設けられたハンガー受け部に
被メッキ物を吊るしたハンガーが掛止されるよう構成さ
れたメッキ装置の通電搬送用吊具において、通電搬送用
吊具のハンガー受け部に可とう性導電部材を装着し、母
線から通電搬送用吊具に供給された電流を可とう性導電
部材を介して上記ハンガーに通電するように構成したも
のである。

【０００７】また、可とう性導電部材を通電搬送用吊具
のハンガー受け部に対して着脱自在に装着したものであ
る。

【０００８】さらに、可とう性導電部材の装着方向を変
えることができるようにすると共に、可とう性導電部材
の装着方向を変えたとき、変える前に可とう性導電部材
のハンガーが掛止されていた位置と同一位置にハンガー
が掛止されないようにしたものである。

【０００９】さらにまた、母線に掛止された通電搬送用
吊具のハンガー受け部に掛止されると共に、自体に吊る
された被メッキ物に通電するように構成されたハンガー
において、上記ハンガー受け部に掛止される部分に可と
う性導電部材を着脱自在に装着し、可とう性導電部材を
介して被メッキ物に通電するように構成したものであ
る。

【００１０】

【作用】上記のように構成されたメッキ装置の通電搬送
用吊具においては、通電搬送用吊具のハンガー受け部に
装着した可とう性導電部材が、ハンガーの掛止位置の若
干のずれ、あるいは、掛止状態に多少の傾きがあって
も、常に正常な電気的接触の状態を維持するように働
く。

【００１１】また、可とう性導電部材を通電搬送用吊具
のハンガー受け部に対して着脱自在に装着する手段、及
び、可とう性導電部材の装着方向を変えることができる
ようにすると共に可とう性導電部材の装着方向を変えた
とき、変える前に可とう性導電部材のハンガーが掛止さ
れていた位置と同一位置にハンガーが掛止されないよう
にした手段が、正常な電気的接触の状態を長期間維持す
るように働く。

【００１２】

【実施例】

実施例１．図１はこの発明の一実施例である自動静止メ
ッキ装置の通電搬送用吊具であり、図において、１は通
電搬送用吊具、１ａはスライド部、１ｂはハンガー受け
部で、これらは上記従来の通電搬送用吊具と同様のもの
であるためその説明を省略する。１０は可とう性導電部
材であり、例えば、日本電線工業規格ＪＣＳ２２２号に
規定された可とう軟銅より線または平編銅線を用いて形
成されたシャント部１０ａと、その両端に設けられた端
子部１０ｂにより構成されている。なお、シャント部１
０ａは、通電搬送用吊具１の大きさに対応して素線径が
０．０８ｍｍ〜０．４５ｍｍのものから選択して形成さ
れる。この可とう性導電部材１０は、Ｖ字状のハンガー
受け部１ｂの上に沿わせて取付ねじ１２により通電搬送
用吊具１の側面に螺着されている。１３はシャント部１
０ａの浮き上がり防止用のバンドで、例えば、合成樹脂
材のテープを用いて束縛するようになされている。

【００１３】このように構成された自動静止メッキ装置
の通電搬送用吊具においては、通電搬送用吊具１に装着
された可とう性導電部材１０のシャント部１０ａが可と
う性を有している。従って、図２に示すようにシャント
部１０ａを沿わせたＶ字状のハンガー受け部１ｂの上に
被メッキ物４を吊るしたハンガー２を掛止すると、被メ
ッキ物４が小さくて軽量の場合においても、ハンガー部
２ａがシャント部１０ａに広い面積で接触して導通性が
良くなる。また、ハンガー部２ａの掛止位置の若干のず
れ、あるいは、掛止状態に多少の傾きがあっても、ハン
ガー部２ａにシャント部１０ａが添うようにして接触す
るので導通性が維持される。

【００１４】この発明は上記のように可とう性導電部材
１０により導通性を良くしているが、通電搬送用吊具１
に対するハンガー２の掛止・取り外しを何度も繰り返し
ているうちに、シャント部１０ａがつぶれて可とう性が
無くなったり、シャント部１０ａの素線の一部が切れる
などに起因してハンガー部２ａとの接触が悪くなること
がある。この場合、可とう性導電部材１０は通電搬送用
吊具１に螺着されているので、取付ねじ１２を外して新
しい可とう性導電部材１０と交換することができる。な
お、上記構成において、可とう性導電部材１０は螺着に
より着脱自在にしたものを示したが、プラグイン方式に
より着脱自在にしてもよい。

【００１５】さらに、図２に示すように、可とう性導電
部材１０の一方の取付ねじ１２の位置から一方のハンガ
ー受け部１ｂまでの長さＬ1 と、他方の取付ねじ１２の
位置から他方のハンガー受け部１ｂまでの長さＬ2 とが
異なる長さになるように、ハンガー受け部１ｂの位置を
設定することにより、ハンガー部２ａとの接触が悪くな
った場合、新しい可とう性導電部材１０と交換しなくて
も良好な導通性が得られる。即ち、シャント部１０ａが
つぶれて可とう性が無くなったり、シャント部１０ａの
素線の一部が切れるなどに起因してハンガー部２ａとの
接触が悪くなった場合、可とう性導電部材１０の装着方
向を取り替えることにより、ハンガー部２ａとの接触位
置が変わり、良好な導通性が得られるような可とう性の
ある部分と接触させることができる。

【００１６】実施例２．なお、上記実施例１では、通電
搬送用吊具１に可とう性導電部材１０を装着するように
構成したが、図３及び図４に示すように、ハンガー部２
ａに可とう性導電部材１０を装着するように構成しても
よい。即ち、ハンガー部２ａに可とう性導電部材１０の
シャント部１０ａを巻き付け、押え板１３とハンガー部
２ａとの間にシャント部１０ａの端部を挟み付けて取付
ねじ１２により固着したものである。なお、ハンガー
２，ハンガー部２ａ，主軸部２ｂ，フック部３，吊り下
げ部３ａは図５に示す従来のものと同様のものである。
このような構成によっても実施例１と同様に良好な導通
性が得られる。

【００１７】

【発明の効果】この発明は、以上説明したように構成さ
れているので、以下に示すような効果を奏する。

【００１８】通電搬送用吊具のハンガー受け部、また
は、被メッキ物を吊るすハンガー部に可とう性導電部材
を装着することにより、ハンガーの掛止位置の若干のず
れ、あるいは、掛止状態に多少の傾きがあっても、常に
正常な電気的接触の状態が維持され、良好なメッキ膜を
形成することができる。

【００１９】また、通電搬送用吊具に対するハンガーの
掛止・取り外しを何度も繰り返しているうちに、シャン
ト部がつぶれて可とう性が無くなったり、シャント部の
素線の一部が切れることがあるが、このような場合、可
とう性導電部材を通電搬送用吊具のハンガー受け部に対
して着脱自在に装着しておくことにより、簡単に取り替
えができて、常に正常な電気的接触の状態が維持され、
良好なメッキ膜を形成することができる。

【００２０】さらに、可とう性導電部材の装着方向を変
えたとき、変える前に可とう性導電部材に対しハンガー
が掛止されていた位置と同一位置にハンガーが掛止され
ないようにすることにより、シャント部がつぶれて可と
う性が無くなった場合、可とう性導電部材を取り替える
ことなく再使用できるので経済的である。

【図面の簡単な説明】

【図１】 この発明の実施例１を示す通電搬送用吊具の
斜視図である。

【図２】 この発明の実施例１を示す通電搬送用吊具の
部分断面図である。

【図３】 この発明の実施例２であるハンガーの部分断
面図である。

【図４】 この発明の実施例２であるハンガーの斜視図
である。

【図５】 従来の通電搬送用吊具及びハンガーを示す斜
視図である。

【図６】 従来の自動静止メッキ装置の一部分を示す概
略説明図である。

【符号の説明】

１ 通電搬送用吊具、１ａ スライド部、１ｂ ハンガ
ー受け部、２ ハンガー、２ａ ハンガー部、５ 母
線、１０ 可とう性導電部材、１０ａ シャント部。

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 一端が電源に接続された母線に掛止され
   ると共に、他端に設けられたハンガー受け部に被メッキ
   物を吊るしたハンガーが掛止されるよう構成された自動
   静止メッキ装置の通電搬送用吊具において、上記通電搬
   送用吊具のハンガー受け部に可とう性導電部材を装着
   し、上記母線から上記通電搬送用吊具に供給された電流
   を上記可とう性導電部材を介して上記ハンガーに通電す
   るように構成したことを特徴とするメッキ装置の通電搬
   送用吊具。
2. 【請求項２】 ハンガー受け部には、可とう性導電部材
   が着脱自在に装着されていることを特徴とする請求項１
   記載のメッキ装置の通電搬送用吊具。
3. 【請求項３】 ハンガー受け部には、可とう性導電部材
   が一端からハンガーが掛止される位置までの長さと、他
   端から上記ハンガーが掛止される位置までの長さが異な
   るよう着脱自在に装着されると共に、ハンガー受け部に
   対して装着方向を変えて可とう性導電部材を装着できる
   よう構成したことを特徴とする請求項１記載のメッキ装
   置の通電搬送用吊具。
4. 【請求項４】 電源に接続された母線に掛止された通電
   搬送用吊具のハンガー受け部に掛止されると共に、自体
   に吊るされた被メッキ物に通電するように構成されたハ
   ンガーにおいて、上記ハンガー受け部に掛止される部分
   に可とう性導電部材を着脱自在に装着し、上記可とう性
   導電部材を介して上記被メッキ物に通電するように構成
   したことを特徴とするメッキ装置のハンガー。