JPH08311380A - 水性インク及びインクジェット記録方法 - Google Patents

水性インク及びインクジェット記録方法

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JPH08311380A
JPH08311380A JP12116795A JP12116795A JPH08311380A JP H08311380 A JPH08311380 A JP H08311380A JP 12116795 A JP12116795 A JP 12116795A JP 12116795 A JP12116795 A JP 12116795A JP H08311380 A JPH08311380 A JP H08311380A
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ink
water
barium
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JP12116795A
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Masaya Fujioka
昌也 藤岡
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Brother Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 使用時及び長期保存時、温度環境の変化によ
ってもノズル、オリフィスの目詰まりや、ジェット曲が
り、インク滴量変化、飛翔速度変化による印字不良を起
こすことがなく、良好な印字が可能であるような水性イ
ンク及びインクジェット記録方法を提供する。 【構成】 染料においては、まず、所望濃度の染料水溶
液に硫酸ナトリウムを添加し、染料を塩析する。次に析
出した沈殿物を濾取し、これを硫酸ナトリウムの飽和水
溶液にて洗浄した後、乾燥する。得られた乾燥固形物の
所定量を、水溶性有機溶剤中に溶解した後、その水溶液
を濾過して、濾液を得る。顔料の場合、顔料自体に含ま
れるバリウムを包含する不純物は、顔料を純水と共に攪
拌後濾過することを数回繰り返すことにより、ほとんど
取り除くことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水性インクの改良に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来、インクジェット記録方式は、静電
吸引方式、圧電素子を用いてインクに機械的振動または
変位を与える方式、インクを加熱させることにより気泡
を発生させ、その時の圧力を利用する方法等のインク吐
出方式が知られている。これらの吐出方式によりインク
小滴を形成し、それらの一部もしくは全部を紙等の被記
録材に付着させて記録を行うものである。また、万年
筆、フエルトペン、ボールペン等の筆記具を用いる場合
には、周知のように毛細管からインクを吐出して、それ
を被記録材に受容させて記録を行う。このようなインク
ジェット記録方式または筆記具に使用するインクとして
は、各種の水溶性染料または顔料を、水または水と水溶
性有機溶剤からなる液媒体に溶解または分散させたもの
が知られ、使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来のイ
ンクにおいては種々の性能が要求されるのは当然である
が、中でも最も要求される性能は、インクを用いて記録
を行っている際、記録を中断した際、さらに長期間記録
を行わなかった際における記録装置のノズル、オリフィ
スまたはペン先での目詰まり及び沈殿物の発生がないと
いう液安定性である。特にインクジェット方式において
は、前記筆記具に比べて高価であり、インクジェットノ
ズル、オリフィスの目詰まりを防止することは重要であ
る。さらに、インクジェット方式では、ノズル、オリフ
ィスの目詰まりを起こさないまでも、沈殿物の発生に起
因するジェット曲がり、インク滴量変化、飛翔速度変化
等による印字不良もまた大きな問題となっている。さら
に、インクジェット方式の中でも熱エネルギーを用いる
熱インクジェット方式においては、温度変化によって発
熱素子の表面に異物の沈着が生じやすいために加えて問
題は重要である。
【0004】上記の問題に対して、インク中の沈殿発生
の原因となり得る不純物の量を規定することによって解
決しようとする試みがなされてきている。
【0005】例えば、特公平3−48951号公報で
は、インクジェット記録方式に使用する水溶性染料を含
む液組成物中に含まれる鉄及び珪素の含有量の合計を9
ppm以下とした液組成物が開示されており、また、特
公平2−2906号公報では、カチオン交換樹脂によっ
てイオン交換処理した水溶性酸性染料もしくは水溶性直
接染料を含有する水溶液を主成分としてなるインクジェ
ット記録用インクが開示されている。
【0006】しかしながら、従来の不純物量の規定によ
るインクは、不純物が過剰に含まれるインクに比べれば
改善されてはいるが、例えばインクの長期間の保存や、
温度環境の変化まで考慮した場合、必ずしも十分な効果
が得られるものではなかった。
【0007】本発明は、上述した問題点を解決するため
になされたものであり、使用時及び長期保存時、温度環
境の変化によってもノズル、オリフィスの目詰まりや、
ジェット曲がり、インク滴量変化、飛翔速度変化による
印字不良を起こすことのないインクを提供することを目
的としている。
【0008】インクの材料である市販の染料、顔料中に
は多くの不純物(例えば分散剤、均染剤等種々の有機物
及び無機物)が含有されており、さらに染料顔料以外の
インク成分、例えば水や水溶性有機溶剤中にも少なから
ずの有機、無機不純物が含まれ、また、さらに、インク
の製造調製の際にも、使用する容器や器具、環境によっ
て各種不純物が混入することは周知の事実である。本発
明者は上述の目的を達成するべく、鋭意研究の結果、こ
れらの不純物が原因となって前述の問題を生じることか
ら、これらの不純物による種々の影響を研究したとこ
ろ、ノズル、オリフィスを目詰まりさせたり、ジェット
曲がり、インク滴量変化、飛翔速度変化を起こしたり、
インク貯蔵中に沈殿物を生じたりする大きな原因はイン
ク中に包含されるバリウム分であり、この不純物を含有
しないインクを使用することによって、上記の種々の問
題点が解決されることを見いだし本発明を完成するに至
ったものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に本発明の請求項1の水性インクでは、水溶性染料また
は顔料を着色剤として含有する水性インクにおいて、該
インク中に含まれるバリウムの含有量が4ppm以下で
あることを特徴としている。
【0010】また、請求項2は、前記インク中に含まれ
るバリウムの含有量が0.01ppm以下であることを
特徴とする。
【0011】また、請求項3の水性インクは、その製造
工程中において、陽イオン交換樹脂による処理が為され
ることを特徴とする。
【0012】また、請求項4では、水溶性染料または顔
料を着色剤として含有する水性インクを記録液として用
いるインクジェト記録方法において、該インク中に含ま
れるバリウムの含有量が4ppm以下であることを特徴
とする。
【0013】また、請求項5では、前記インク中に含ま
れるバリウムの含有量が0.01ppm以下であること
を特徴とする。
【0014】また、請求項6では、インク室内に設けら
れた発熱素子からの熱エネルギーを用いてインクを噴射
する熱インクジェット方式であることを特徴とする。
【0015】
【作用】本発明をさらに詳細に説明すると、本発明に用
いるインクの基本成分それ自体はすでに公知であり、染
料としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性
染料等に代表される水溶性染料であり、特にインクジェ
ット記録方式のインクとして好適で、鮮明性、水溶性、
安定性、耐光性その他の要求される性能を満たすものと
しては、例えばC.I.ダイレクトブラック17、1
9、32、51、71、108、146、154、16
8;C.I.ダイレクトブルー6、22、25、71、
86、90、106、199;C.I.ダイレクトレッ
ド1、4、17、28、83、227;C.I.ダイレ
クトイエロー12、24、26、86、98、142;
C.I.ダイレクトオレンジ34、39、44、46、
60;C.I.ダイレクトバイオレット47、48;
C.I.ダイレクトブラウン109;C.I.ダイレク
トグリーン59;C.I.アシッドブラック2、7、2
4、26、31、52、63、112、118;C.
I.アシッドブルー9、22、40、59、93、10
2、104、113、117、120、167、22
9、234;C.I.アシッドレッド1、6、32、3
7、51、52、80、85、87、92、94、11
5、181、256、289、315、317;C.
I.アシッドイエロー11、17、23、25、29、
42、61、71;C.I.アシッドオレンジ7、1
9;C.I.アシッドバイオレット49;C.I.ベー
シックブラック2;C.I.ベーシックブルー1、3、
5、7、9、24、25、26、28、29;C.I.
ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、3
7;C.I.ベーシックバイオレット7、14、27;
C.I.フードブラック1、2等が挙げられる。
【0016】上記の染料例は、本発明のインクに対して
特に好ましいものであるが、本発明は、これらの染料に
限定されるものではない。
【0017】また、顔料としては、カーボンブラックの
他、多くの無機顔料、有機顔料が使用できる。例えば、
アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレート
アゾ顔料などのアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリ
レン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリ
ドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソ
インドリノン顔料、キノフタロン顔料などの多環式顔料
や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキなどの染料
レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラッ
ク昼光蛍光顔料などの有機顔料、酸化チタン、酸化鉄
系、カーボンブラック系等の無機顔料を挙げることがで
きる。また、その他の顔料であっても水相に分散可能な
ものであれば使用できる。さらに、上記顔料を界面活性
剤や高分子分散剤等で表面処理したもの、例えばグラフ
トカーボン等も使用可能である。
【0018】上記の顔料例は、本発明のインクに対して
特に好ましいものであるが、本発明は、これらの顔料に
限定されるものではない。
【0019】上記顔料を本発明の着色剤として使用する
場合、適当な分散剤、溶剤、純水及び必要に応じて他の
添加剤とともに、従来知られている方法により分散処理
される。
【0020】分散剤としては、例えば特開昭62−10
1672号公報に記載されている顔料分散に用いられる
高分子分散剤や界面活性剤が使用でき、高分子分散剤と
しては、ゼラチン、アルブミン等の蛋白質、アラビアゴ
ム、トラガントゴム等の天然ゴム類、サポニン等のグル
コシド類、メチルセルロース、カルボキシセルロース、
ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、リ
グニンスルホン酸塩、セラック等の天然高分子、ポリア
クリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合物の塩、ビニ
ルナフタレン−アクリル酸共重合物の塩、スチレン−マ
レイン酸共重合物の塩、ビニルナフタレン−マレイン酸
共重合物の塩、β−ナフタレンスルホン酸ホリマリン縮
合物のナトリウム塩、リン酸塩等の陰イオン性高分子や
ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエ
チレングリコール等の非イオン性高分子等の高分子分散
剤、界面活性剤としては脂肪酸塩類、高級アルコール硫
酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、アルキ
ルアリルスルホン酸塩類等の陰イオン界面活性剤、ポリ
オキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレ
ンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル
類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類
等の非イオン性界面活性剤があり、これらの1種または
2種以上を適宜選択して使用できる。その使用量は、一
般的にインク全量に対して1〜20重量%が望ましい。
【0021】一方、上記顔料の分散に用いる分散機は、
一般的な分散機ならどんなものでもよいが、例えば、ボ
ールミル、ロールミル、サンドミル等が挙げられる。そ
の中でも特に高速型のサンドミルが好ましい。
【0022】前記染料及び顔料は、それぞれ単独で用い
てもよいし、染料同士、顔料同士、また、染料と顔料を
2種以上混合して用いることも可能である。
【0023】また、前記染料及び顔料は、本発明のイン
クに対して一般に0.1〜20重量%の割合で用いら
れ、望ましくは0.3〜15重量%の範囲で用いられ
る。
【0024】本発明の及び本発明に用いるインクに使用
する溶媒は、水または水と水溶性有機溶剤との混合溶媒
であり、特に好適なものは水と水溶性有機溶剤との混合
溶媒であって、水溶性有機溶剤としてインクの乾燥防止
(湿潤)効果を有するものである。また、水としては、
種々のイオンを含有する一般の水ではなく、脱イオン水
を使用するのが好ましい。
【0025】水と混合して使用される水溶性有機溶剤と
しては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコー
ル、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコー
ル、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコー
ル、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコー
ル等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチル
ホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ア
セトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトア
ルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエー
テル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリ
コール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリ
コール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、
ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリ
エチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,
2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,
3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキ
シレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原
子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレ
ングリコールメチル(またはエチルまたはn−プロピル
またはイソプロピルまたはn−ブチルまたはイソブチ
ル)エーテル、プロピレングリコールメチル(またはエ
チルまたはn−プロピルまたはイソプロピルまたはn−
ブチルまたはイソブチル)エーテル、ジエチレングリコ
ールメチル(またはエチルまたはn−プロピルまたはイ
ソプロピルまたはn−ブチルまたはイソブチル)エーテ
ル、ジプロピレングリコールメチル(またはエチルまた
はn−プロピルまたはイソプロピルまたはn−ブチルま
たはイソブチル)エーテル、トリエチレングリコールメ
チル(またはエチルまたはn−プロピルまたはイソプロ
ピルまたはn−ブチルまたはイソブチル)エーテル、ト
リプロピレングリコールメチル(またはエチルまたはn
−プロピルまたはイソプロピルまたはn−ブチルまたは
イソブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキ
ルエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロ
リドン等のピロリドン類;1,3−ジメチル−2−イミ
ダゾリジノン等が挙げられる。これら多くの水溶性有機
溶剤の中でも、ジエチレングリコール、グリセリン等の
多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチル
(またはエチルまたはn−プロピルまたはイソプロピル
またはn−ブチルまたはイソブチル)エーテル等の多価
アルコールの低級アルキルエーテルは好ましいものであ
る。
【0026】インク中の上記水溶性有機溶剤の含有量
は、一般にはインク全量に対して重量%で0〜95重量
%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20
〜50重量%である。
【0027】この時の水の含有量は、上記水溶性有機溶
剤成分の種類、その組成あるいは所望されるインクの特
性に依存して広い範囲で決定されるが、インクの全重量
に対して一般に10〜100重量%、好ましくは10〜
75重量%、より好ましくは20〜70重量%の範囲内
とされる。
【0028】本発明で使用するインクの基本成分につい
ては上述の通りであるが、本発明の主たる特徴は、上記
インク中に含有されるバリウムの含有量を4ppm以下
としたことである。さらに上記のバリウムの含有量は
0.01ppm以下に制御することが望ましい。
【0029】本発明者は、インクの安定性について鋭意
研究したところ、従来のインクに使用されている染料
は、元来、繊維の着色用に製造されたものであるため、
各種の添加剤、例えば界面活性剤、均染剤を始め、塩化
ナトリウム、硫酸ナトリウム、アルカリ土類金属の塩等
非常に多くの不純物を含有していることが判明した。ま
た、従来のインクに用いられる顔料においても、顔料自
体に含まれる不純物、分散剤に含まれる不純物等多くの
不純物を含有している。これらの不純物がインクジェッ
ト記録及び筆記具において種々の問題を生じることは知
られており、本発明者もこれらの不純物を鋭意除去して
純度の高い染料、顔料とし、これによってインクとした
ところ、かなりの程度問題が解決されるものであった
が、インクジェット方式におけるジェット曲がり、イン
ク滴量変化、飛翔速度変化等を完全に解決するものでは
なく、また、熱エネルギーを使用するインクジェット方
式においては、発熱素子上への異物の沈着を必ずしも十
分には防止できなかった。
【0030】本発明者はさらに詳細な研究を続けた結
果、ジェット曲がり等を起こしたインクジェットヘッド
ノズル、オリフィスの表面分析や発熱素子上への沈着物
の分析から、これら問題を起こす主たる原因物質がバリ
ウムであることを見いだした。さらに、インクジェット
方式におけるジェット曲がり、インク適量変化、飛翔速
度変化の発生頻度及び熱エネルギーを使用するインクジ
ェット方式における発熱素子への沈着物の発生量と、イ
ンク中のバリウム量が良い相関を示すことが明らかとな
り、本発明に至ったものである。
【0031】以下インク中のバリウム含有量の調整方法
を具体的に説明する。
【0032】すなわち、染料においては、まず、所望濃
度の染料水溶液に硫酸ナトリウムを添加し、染料を塩析
する。次に析出した沈殿物を濾取し、これを硫酸ナトリ
ウムの飽和水溶液にて洗浄した後、乾燥する。得られた
乾燥固形物の所定量を、水溶性有機溶剤中に溶解した
後、その水溶液を濾過して、濾液を得る。この場合の水
溶性有機溶剤は、硫酸ナトリウムに対する貧溶媒で、且
つ染料に対して良溶媒であればいかなるものでもよく、
溶媒の選択は、処理する染料の構造で最適なものを任意
に選ぶことができる。通常、アルコール類、グリコール
類、グリコールエーテル類を好ましく用いることができ
る。このようにして得られた濾液は、1〜3日間放置し
て再濾過する。
【0033】次いで得られた濾液に所定量の水を添加し
て攪拌後、陽イオン交換樹脂層を通過させる。その後、
必要に応じて添加剤を加えて攪拌し、インクが調製され
る。そしてインク中のバリウム含有量をプラズマ発光分
光分析装置により測定して、含まれるバリウム量が4p
pm以下、好ましくは0.01ppm以下であるか否か
を確認し、使用に供する。
【0034】以上述べた染料の処理手順において、最初
の塩析処理は、通常の市販染料中に多く含まれる代表的
な不純物である塩化ナトリウムの除去を主たる目的とし
たものであり、次の水溶性有機溶剤による処理は、染料
中の不純物として、もともと含まれていた硫酸ナトリウ
ム及び前記塩析処理で多量に添加された硫酸ナトリウム
の両者を除去する目的で行われる。次に濾過後の濾液を
長時間静置後、濾過処理するのは、溶液中に含まれてい
るバリウムを含むコロイド状物の除去を主たる目的とし
たものである。引き続き行われる陽イオン交換樹脂によ
る処理は、含まれるバリウムイオンの除去を目的として
いる。
【0035】以上、インク中のバリウム分の含有量を調
整するための1方法を示したが、調整法はこの方法に限
定されることなく、イオン化されたバリウムまたはコロ
イド状のバリウム化合物等を除去できる方法であればす
べて有効に利用することができる。
【0036】ここで、上記染料塩析工程、インク調製工
程において使用する容器、器具類はバリウムをはじめと
する各種不純物種の汚染のないように材質を選定し、し
かるべき洗浄と純水によるすすぎを行い、外部環境から
のゴミの混入等を防ぐことも考慮すべきである。
【0037】また、顔料の場合、顔料自体に含まれるバ
リウムを包含する不純物は、顔料を純水と共に攪拌後濾
過することを数回繰り返すことにより、ほとんど取り除
くことができる。また、顔料分散工程を含むインク調製
工程においても、上記染料の場合と同様に、使用する容
器、器具類はバリウムをはじめとする各種不純物種の汚
染のないように材質を選定し、しかるべき洗浄と純水に
よるすすぎを行い、外部環境からのゴミの混入等を防ぐ
ことも考慮すべきである。このようにして得られたイン
ク中のバリウム量が4ppm以下、好ましくは0.01
ppm以下であるか否かを確認し、使用に供する。
【0038】不純物としてバリウムが混入される源は、
使用する染料、顔料、容器、器具、外部環境の他は、使
用する水が考えられるが、インク用の水として蒸留水、
イオン交換水またはこれらの併用等の処理水を用いるこ
とでバリウムの混入を防ぐことができる。最大のバリウ
ム混入源は、使用する染料、顔料であり、特に、市販品
の場合は、その含有量が非常に多量になる場合が多い。
【0039】以上、インク中に含有されるバリウム分の
除去について主に説明したが、実際上は、バリウム分の
除去と共に、食塩、硫酸、ナトリウム等の種々の無機塩
の除去、あるいはカルシウム、マグネシウム等の除去も
行うのが好ましい。
【0040】本発明の及び本発明に使用するインクの基
本構成は以上の通りであるが、その他従来公知の各種分
散剤、界面活性剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、pH
調整剤、防腐防カビ剤等を必要に応じて添加することが
できる。
【0041】また、記録液を帯電させるタイプのインク
ジェット記録方法に使用されるインクを調合する場合に
は、塩化リチウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム
等の無機塩類等の比抵抗調整剤が添加される。
【0042】尚、熱エネルギーの作用によってインクを
吐出させるタイプのインクジェット方式に適用する場合
には、熱的な物性値(例えば比熱、熱膨張係数、熱電導
率等)が調整されることもある。
【0043】以上のようにして得られる本発明で使用す
るインクは、従来技術の問題点が十分に解決されてお
り、そのままでインクジェット方式における記録特性
(信号応答性、液滴形成の安定性、吐出安定性、長時間
の連続記録性、長時間の動作休止後のインク吐出安定
性)、保存安定性、被記録材への定着性、あるいは記録
画像の耐光性、耐水性等いずれもバランスのとれた優れ
たものであり、各種の方式のインクジェット記録用のイ
ンクとして有用であり、沈着物の発生を最も嫌う熱エネ
ルギーを使用するインクジェット記録方式のインクとし
ても好適であり、優れた記録を与えることができる。
【0044】
【実施例】以下、本発明を具体化した実施例について説
明する。
【0045】尚、文中%とあるのは重量基準である。
【0046】<実施例1>市販染料「サイラススープラ
レッドF3B」(バイエル社製)の10%水溶液を作成
し、次いで該水溶液中に硫酸ナトリウムを添加し、攪拌
を行い染料を塩析した。析出物を濾取し、これを硫酸ナ
トリウムの飽和純水溶液にて洗浄し、乾燥した。得られ
るインク中の染料濃度が3%になるように所定量の前記
乾燥固形物を計量し、これをエチレングリコールとN−
メチル−2−ピロリドンの3:1混合液中に溶解した。
次にこの水溶液を平均孔径0.8μmのメンブランフィ
ルタにて加圧濾過した後、濾液をプラスチック容器中に
密閉し、冷暗所で3日間静置した後、再度0.8μmの
メンブランフィルタにて濾過する。得られた濾液の40
部に60部の水を加えて攪拌してインクとした。次い
で、前記インクを住友化学工業(株)製陽イオン交換樹
脂「C−464」の層を通過させた。その後、通過液を
0.1N苛性ソーダ水溶液によりpH9.8に調整し
た。尚、インクの調製に使用したすべての容器及び器具
類は、ガラス、テフロン、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン等を用い、洗浄水で十分な洗浄後、純水ですすぎ、完
全に乾燥させてから使用した。このインク中のバリウム
含有量を島津製作所製プラズマ発光分光分析装置「IC
PS−1000−4」にて測定したところ0.008p
pmであった。
【0047】このインクを用いて、記録ヘッド内のイン
クに熱エネルギーを与えて液滴を発生させ、記録を行う
オンデマンドタイプのマルチヘッド(吐出オリフィス径
35μm、発熱抵抗体抵抗値150オーム、駆動電圧3
0ボルト、周波数2KHz)を有する記録装置、及び記
録ヘッド内のインクにピエゾ素子振動による圧力を与え
て液滴を発生させ、記録を行うオンデマンドタイプのマ
ルチヘッド(吐出オリフィス径40μm、駆動電圧30
ボルト、周波数10KHz)を有する記録装置により、
以下のT1〜T5の検討を行ったところ、いずれにおい
ても良好な結果を得た。
【0048】(T1)長期安定性;インクをプラスチッ
クフィルムの袋に密閉し、−30℃と60℃で6カ月間
保存した後でも不溶分の析出は認められず、液の物性や
色調にも変化はなかった。
【0049】(T2)吐出安定性;室温、5℃、40℃
の雰囲気下でそれぞれ24時間の連続吐出を行ったが、
いずれの条件でも終始安定した高品質の記録が行えた。
【0050】(T3)吐出応答性;2秒間の間欠吐出と
2カ月間放置後の吐出について調べたが、いずれの場合
にもオリフィス先端での目詰まりはなく、安定で均一に
記録された。
【0051】(T4)記録画像の品質;以下に示す被記
録材に記録された画像は、濃度が高く鮮明であった。室
内光に6カ月さらした後の濃度の低下率は1%以下であ
った。
【0052】 被記録材;山陽パルプ(株)製上質紙「銀環」 北越製紙(株)製上質紙「セブンスター」 本州製紙(株)製中質紙「白牡丹」 東洋濾紙(株)製ノンサイズ紙「東洋濾紙No4」。
【0053】(T5)各種被記録材に対する定着性;上
記(T4)に示した被記録材に印字15秒後、印字部を
指で擦り、画像ずれ、滲みの有無を判定した結果、いず
れも画像ずれ、滲み等がなく、優れた定着性を示した。
【0054】<実施例2〜4>実施例1と同様の方法に
より下記の市販染料を用いてインクを調整し、ぞれぞれ
について実施例1と同様にT1〜T5の検討を行った。
これらはいずれも実施例1と同様に優れた結果を示し
た。
【0055】実施例2 ウオーターイエロー6(オリエ
ント化学工業(株)製)→インク中のバリウム含有量
0.003ppm 実施例3 ラバセルファストブルーKS6GLL(バイ
エル社製)→インク中のバリウム含有量0.005pp
m 実施例4 スペシャルブラック7984(バイエル社
製)→インク中のバリウム含有量0.007ppm。
【0056】<実施例5>マゼンタインクとして実施例
1のインク、イエローインクとして実施例2のインク、
シアンインクとして実施例3のインク、ブラックインク
として実施例4のインクをそれぞれ用いて実施例1〜4
において利用したものと同様のインクジェット記録装置
にてフルカラーの写真を再現した。得られた画像は極め
て鮮明で色再現も良好であった。
【0057】<実施例6〜8>実施例1〜4と同様の市
販染料を用いて、実施例1のインク調製方法における濾
過及び再濾過を3μmのメンブランフィルタにて行い、
インクを調製した。調製したインクぞれぞれについて実
施例1と同様にT1〜T5の検討を行った結果、T1、
T2、T4、T5ではいずれも実施例1と同様に優れた
結果を示した。T3では2カ月放置後の吐出においてジ
ェト曲がり、飛翔速度変化等がわずかに観察されたが印
字開始後すぐに回復した。
【0058】実施例6 ウオーターイエロー6(オリエ
ント化学工業(株)製)→インク中のバリウム含有量1
ppm 実施例7 ラバセルファストブルーKS6GLL(バイ
エル社製)→インク中のバリウム含有量2ppm 実施例8 スペシャルブラック7984(バイエル社
製)→インク中のバリウム含有量3ppm。
【0059】<実施例9>顔料カーボンブラックと10
0倍量の純水とを1時間攪拌し、濾過することを3回行
った後、乾燥した。これを用いて下記組成の液組成物を
調製し、パールミル(商品名、アシザワ(株)製)にて
分散処理を行い、分散液を得た。
【0060】尚、ミルに充填する粉砕メディアとして
は、ジルコニアを用いた。また、分散装置の接液部はセ
ラミック加工されたものを使用した。また、その他の容
器、器具類は実施例1と同様の材質のものを洗浄後、純
水ですすぎ、完全に乾燥させて使用した。
【0061】 液組成 カーボンブラック(MA−7、三菱化学製) 10% スチレン−無水マレイン酸共重合体(分子量1万、酸価175) 7% グリセリン 5% ニッコールTS−30(日光ケミカルズ社製) 2% 純水 75% トリエタノールアミン 1%。
【0062】次にこの分散液を遠心分離機にかけて粗大
粒子を除去し、次にこの分散液を平均孔径1μmのメン
ブランフィルタにて加圧濾過した後、濾液をプラスチッ
ク容器中に密閉し、冷暗所で3日間静置した後、再度1
μmのメンブランフィルタにて濾過してインクとした。
調製したインクについて、実施例1と同様にバリウム含
有量を測定したところ、0.009ppmであった。こ
のインクについて、実施例1と同様にT1〜T5の検討
を行ったが、実施例1と同様に優れた結果を示した。
【0063】<比較例1〜4>実施例1〜4と同様の市
販染料を用いて、実施例1のインク調製方法における濾
過を3μmのメンブランフィルタにて行い、再濾過を行
わずにインクを調製した。調製したインクぞれぞれにつ
いて実施例1と同様にT1〜T5の検討を行った結果、
T1において、不溶分の析出が認められた。T2、T3
では目詰まり、ジェト曲がり、飛翔速度変化等が頻繁に
観察され、回復しなかった。
【0064】比較例1 サイラススープラレッドF3B
(バイエル社製)→インク中のバリウム含有量6ppm 比較例2 ウオーターイエロー6(オリエント化学工業
(株)製)→インク中のバリウム含有量7ppm 比較例3 ラバセルファストブルーKS6GLL(バイ
エル社製)→インク中のバリウム含有量8ppm 比較例4 スペシャルブラック7984(バイエル社
製)→インク中のバリウム含有量10ppm。
【0065】
【発明の効果】以上説明したことから明かなように、本
発明の水性インク及び水性インクを用いたインクジェッ
ト記録方法においては、該インク中に含まれるバリウム
の含有量が4ppm以下であることを特徴としており、
さらに望ましくは、該インク中に含まれるバリウムの含
有量が0.01ppm以下であることを特徴としている
ため、使用時及び長期保存時、温度環境の変化によって
もノズル、オリフィスの目詰まりや、ジェット曲がり、
インク滴量変化、飛翔速度変化による印字不良を起こす
ことがなく、良好な印字が可能である。また、熱エネル
ギーを用いる熱インクジェット方式に本発明の水性イン
クを用いた場合には、発熱素子の表面に異物の沈着が生
じにくいため、ヘッドの耐久性を向上させるといった効
果がある。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水溶性染料または顔料を着色剤として含
    有する水性インクにおいて、該インク中に含まれるバリ
    ウムの含有量が4ppm以下であることを特徴とする水
    性インク。
  2. 【請求項2】 前記インク中に含まれるバリウムの含有
    量が0.01ppm以下であることを特徴とする請求項
    1記載の水性インク。
  3. 【請求項3】 前記水性インクは、その製造工程中にお
    いて、陽イオン交換樹脂による処理が為されることを特
    徴とする請求項1または2記載の水性インク。
  4. 【請求項4】 水溶性染料または顔料を着色剤として含
    有する水性インクを記録液として用いるインクジェト記
    録方法において、該インク中に含まれるバリウムの含有
    量が4ppm以下であることを特徴とするインクジェト
    記録方法。
  5. 【請求項5】 前記インク中に含まれるバリウムの含有
    量が0.01ppm以下であることを特徴とする請求項
    4記載のインクジェット記録方法。
  6. 【請求項6】 前記記録方法は、インク室内に設けられ
    た発熱素子からの熱エネルギーを用いてインクを噴射す
    る熱インクジェット方式であることを特徴とする請求項
    4または5記載のインクジェト記録方法。
JP12116795A 1995-05-19 1995-05-19 水性インク及びインクジェット記録方法 Pending JPH08311380A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10231448A (ja) * 1997-02-17 1998-09-02 Ricoh Co Ltd インクジェット記録用水性インク組成物およびそれを用いた記録方法

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