JPH08309541A - スタッド溶接治具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 金属部材の溶接すべき位置が周囲に障害物が
ある狭い部分のときにも、通常のスタッド溶接ガンで溶
接スタッドをスタッド溶接することが可能なスタッド溶
接治具を提供すること。 【構成】 このスタッド溶接治具は、スタッド溶接ガン
１のチャック６に着脱自在に連結されて該チャック６の
半径方向に延長する第１の連結体８と、スタッド溶接ガ
ン１の本体２に着脱自在に連結されて第１の連結体８と
同方向に延長する第２の連結体９と、第１の連結体８の
先端部に設けられたスタッド保持体１０と、第２の連結
体９の先端部に設けられた筒状のシールドグリップ１１
を備えている。そしてスタッド保持体１０とシールドグ
リップ１１は同軸とされる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は溶接スタッドをスタッド
溶接する際にスタッド溶接ガンのチャックに連結して使
用する治具に関し、特に周囲より凹んだ狭い部分に溶接
スタッドをスタッド溶接することを可能にするためのス
タッド溶接治具に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から、鋼材のような金属部材に部品
を取付けたり他の構造材を結合する際には、棒状の軸部
の先端に溶接部を設けた溶接スタッドが使用されてい
る。溶接スタッドは一般にスタッド溶接により金属部材
に固着されるが、それには先ずスタッド溶接ガンのチャ
ックに溶接スタッドを連結し、その溶接部を金属部材の
表面に接触させ、その周囲をセラミック製のアークシー
ルドで覆った状態とする。次いで、溶接ガンを起動して
溶接部をわずかに金属部材の表面から離反させることに
よってアークを生じさせ、発生する熱で溶接部と金属部
材とを溶融して固着する。金属部材に溶接スタッドをス
タッド溶接する際に、金属部材の溶接すべき部分の周囲
に障害物がなく開放されている場合には、スタッド溶接
ガンのチャックに溶接スタッドを同軸的に取付けてスタ
ッド溶接できる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、金属部材にお
ける凹んだ狭い部分、例えばＨ型鋼の上下フランジの対
向する面のような狭い部分に、垂直に溶接スタッドをス
タッド溶接したいときは、スタッド溶接ガンを該部分に
挿入することができないため、溶接スタッドをスタッド
溶接することは困難である。この解決策として、例えば
クランク型に変形させた溶接スタッドを使用することも
考えられるが、そのような変形溶接スタッドによって取
付けられる部品等の結合強度が低下したり、溶接スタッ
ドの製造コストが上昇するという問題がある。そこで本
発明は、金属部材における周囲より凹んだ狭い部分に通
常の溶接スタッドをスタッド溶接することを可能にする
スタッド溶接治具を提供することを課題とするものであ
る。

【０００４】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明のスタッド溶接治具は、金属部材にスタッドを溶接す
る際にスタッド溶接ガンに連結して使用される。そして
このスタッド溶接治具には、スタッド溶接ガンのチャッ
クに着脱自在に連結されて該チャックの半径方向に延長
する第１の連結体と、スタッド溶接ガンの本体に着脱自
在に連結されて第１の連結体と同方向に延長する第２の
連結体と、第１の連結体の先端部に設けられたスタッド
保持体と、第２の連結体の先端部に設けられた筒状のシ
ールドグリップを備えている。そして第１の連結体およ
び第２の連結体をスタッド溶接ガンのチャックおよび本
体にそれぞれ連結したとき、前記シールドグリップの軸
線とスタッド保持体の軸線が同軸となるように構成され
ていることを特徴とするものである。

【０００５】上記スタッド溶接治具の好ましい実施態様
においては、第１の連結体は、チャックに着脱自在に連
結される連結部材と、その連結部材から直角方向に延長
する連結板と、連結板からチャックの軸線方向に延長す
るガイド棒と、ガイド棒をスライド自在に支持すると共
にスタッド溶接ガンの本体に連結される支持部材とを有
し、前記連結板の先端部にスタッド保持体が結合され
る。上記スタッド溶接治具の別の好ましい実施態様にお
いては、第２の連結体は、その軸線がチャックの軸線と
同方向にされてスタッド溶接ガンの本体に着脱自在に連
結される軸体と、その軸体から半径方向に延長した支持
板を有し、支持板の先端部に設けられた切欠部にシール
ドグリップが支持される。上記スタッド溶接治具のさら
に別の好ましい実施態様においては、スタッドが溶接さ
れる金属部材に取り付けられて支持板を所定位置に設定
する位置設定手段が付加される。

【０００６】

【作用】本発明のスタッド溶接治具は、第１の連結体と
第２の連結体をスタッド溶接ガンのチャックと本体にそ
れぞれ連結しとき、第１の連結体の先端部に設けられた
スタッド保持体の軸線と、第２の連結体の先端部に設け
られた筒状のシールドグリップの軸線が同軸となり、且
つスタッド溶接ガンのチャックの軸線から所定間隔だけ
離れて位置するように構成されている。そしてスタッド
保持体に溶接スタッドを保持させると共に、シールドグ
リップにアークシールドを把持させ、金属部材における
凹んだ狭い部分にある溶接部分から離れた位置にスタッ
ド溶接ガンを保持させた状態で、溶接スタッドとアーク
シールドを該溶接位置に差し込んでスタッド溶接をする
ことができる。

【０００７】

【実施例】次に図面により本発明の実施例を説明する。
図１は本発明のスタッド溶接治具を使用して金属部材に
溶接スタッドをスタッド溶接している状態を示す正面図
であり、図２は図１におけるスタッド溶接治具部分の斜
視図である。これらの図において、スタッド溶接ガン１
は従来この分野で通常使用されているものであり、本体
２と把手３を有し、把手３には起動スイッチ５が設けら
れている。さらに把手３からケーブル４が溶接電源装置
（図示せず）に接続されている。本体２の先端部にはチ
ャック６が設けられている。本来このチャック６は溶接
スタッドの一端部を把持するものであるが、それを利用
して本発明のスタッド溶接治具を連結することができ
る。なお、チャック６はスタッド溶接ガン１を起動した
ときに軸線方向に伸縮動作をするため、その周囲は蛇腹
部７により覆われている。

【０００８】本発明のスタッド溶接治具は、スタッド溶
接ガン１のチャック６に着脱自在に連結されて該チャッ
ク６の半径方向に延長する第１の連結体８と、スタッド
溶接ガン１の本体２に着脱自在に連結されて第１の連結
体８と同方向に延長する第２の連結体９を有している。
さらに第１の連結体８の先端部にスタッド保持体１０が
設けられ、第２の連結体９の先端部に筒状のシールドグ
リップ１１が設けられている。第１の連結体８はチャッ
ク６に着脱自在に連結される連結部材１２と、その連結
部材１２から直角方向に延長する連結板１３と、連結板
１３からチャック６の軸線方向に延長するガイド棒１４
と、ガイド棒１４をスライド自在に支持すると共にスタ
ッド溶接ガン１の本体２に一体的に連結される支持部材
１５とを有し、その連結板１３の先端部にスタッド保持
体１０が結合されている。

【０００９】第２の連結体９は、その軸線がチャック６
の軸線と同方向とされてスタッド溶接ガン１の本体２に
連結される左右一対（図１，図２では一方が隠れてい
る）の軸体１６と、その軸体１６から半径方向に延長し
た支持板１７とを有し、支持板１７の先端部に設けられ
た切欠部１８に前記シールドグリップ１１が支持されて
いる。なお、この例では軸体１６が支持部材１５に上下
位置を調整可能に固定ねじ１９で固定され、それにより
間接的に本体２に連結されている。図１に示す金属部材
２０は上下のフランジ２１，２２とそれを結合するウエ
ブ２３により構成されたＨ型鋼で、その下側のフランジ
２２の上面の狭い部分に溶接スタッドをスタッド溶接す
るものである。この例では、金属部材２０に着脱自在に
取付けることができる位置設定手段２４によって、前記
第２の連結体９の支持板１７が金属部材２０の下側のフ
ランジ２２に間接的に支持されている。なお位置設定手
段２４は、位置設定基板２５と支持板１７に設けられた
一対の調整ボルト２６により構成される。

【００１０】図３に示すように、位置設定基板２５は矩
形に形成され、その縁部に一対の挟持部２７を有し、各
挟持部２７はそれぞれ上下の突片２７ａ，２７ｂと下側
の突片２７ｂに設けられた固定ボルト２７ｃとを有し、
挟持部２７の固定ボルト２７ｃにより位置設定基板２５
が下側のフランジ２２に締結支持される。そして各調整
ボルト２６を所定位置に調整してその先端を図１のよう
に位置設定基板２５の上面に当接することにより、スタ
ッド溶接ガン１を所定位置に設定してスタッド溶接する
ことができる。図４は金属部材２０が円形の上下のフラ
ンジ４０，４１とそれらを結合する円柱４２により構成
され、その下側のフランジ４１の上面の狭い部分に溶接
スタッドをスタッド溶接するときに本発明のスタッド溶
接治具を適用する例である。この場合は位置設定基板２
５の形状をそのフランジ４１の形状に適合するように、
図示のような円弧状のものを用意することが好ましい。

【００１１】図５はスタッド保持体１０とシールドグリ
ップ１１の部分を拡大して示す断面図である。スタッド
保持体１０は上部が棒状で下部が筒状とされている。そ
してその上部外周面にねじ部が形成され、下部周壁に軸
線方向に複数のスリット１０ａが設けられている。スタ
ッド保持体１０はそのねじ部を連結板１３の先端部に設
けたねじ孔に螺合することにより、連結板１３の面方向
に対し直角に結合される。そして下部から溶接スタッド
３０の頭部を押し込むと、そのスリット１０ａのスプリ
ング作用により溶接スタッド３０はスタッド保持体１０
に保持される。筒状のシールドグリップ１１の下部周壁
には軸線方向に複数のスリット１１ａが設けられてい
る。一方、下側のフランジ２２のスタッド溶接をすべき
部分に配置される筒状のアークシールド３１は、例えば
セラミックのような耐熱性を有する材料で作られ、その
上部に半径が縮小された段差部３１ａ、下部周壁に複数
の溝状のガス流通部３１ｂがそれぞれ設けられている。
そしてシールドグリップ１１をその段差部３１ａまで差
し込み、スリット１１ａのスプリング作用によりアーク
シールド３１はシールドグリップ１１にグリップされ
る。

【００１２】次に、上記スタッド溶接治具を使用してス
タッド溶接をする方法を説明する。先ず図１のように、
スタッド溶接治具をスタッド溶接ガン１に連結すると共
に、金属部材２０の所定位置に位置設定基板２５を取付
ける。次にスタッド保持体１０に溶接スタッド３０を保
持させ、アークシールド３１の段差部３１ａまでシール
ドクリップ１１を差し込み、それをグリップする。次い
でスタッド溶接ガン１を図１のよう位置させて、溶接ス
タッド３０の先端をフランジ２２の表面に接触させる。
この状態で調整ボルト２６を調整しその先端を位置設定
基板２５の上面に着座させることにより、スタッド溶接
ガン１は安定して位置設定される。なお、このような位
置設定手段を使用しないときは、スタッド溶接ガン１を
手で位置決めして溶接作業を行えばよい。

【００１３】次にスタッド溶接ガン１の起動スイッチ５
を押すと、通電すると共にチャック６が僅かに上昇して
溶接スタッド３０の先端部とフランジ２２の表面間にア
ークが生じ、発生する熱で溶接スタッド３０の先端部と
フランジ２２の表面が溶融する。そして図示しない溶接
電源装置等に設けられたタイマーがセットアップすると
溶接電流が遮断されると共に、溶接スタッド３０が下方
に移動し、その先端が溶融池に押し込まれ、溶接操作は
停止する。次いでスタッド溶接ガン１を上方に持ち上げ
スタッド保持体１０から溶接スタッド３０を抜いた後、
位置設定基板２５を取り外して次の溶接作業に移る。

【００１４】

【発明の効果】本発明のスタッド溶接治具は、第１の連
結体と第２の連結体をスタッド溶接ガンのチャックと本
体にそれぞれ連結したとき、第１の連結体の先端部に設
けられたスタッド保持体の軸線と、第２の連結体の先端
部に設けられた筒状のシールドグリップの軸線が同軸と
なり、且つスタッド溶接ガンのチャックの軸線から所定
間隔だけ離れて位置するように構成されている。そして
スタッド保持体に溶接スタッドを保持させると共に、シ
ールドグリップにアークシールドを把持させ、金属部材
における凹んだ狭い溶接位置から離れた所にスタッド溶
接ガンを保持させた状態で、溶接スタッドとアークシー
ルドを該溶接位置に差し込んでスタッド溶接をすること
ができる。そのため本発明のスタッド溶接治具を使用す
ることにより、金属部材において周囲に障害物のある凹
んだ狭い部分にも通常の溶接スタッドをスタッド溶接す
ることができる。また、金属部材の端部にスタッドを溶
接する場合に生ずる磁気吹き現象（アークが片寄った側
に発生するために良好な溶接結果が得られない）が、位
置設定基板を取付けることにより防止できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のスタッド溶接治具を使用して金属部材
に溶接スタッドをスタッド溶接している状態を示す正面
図。

【図２】図１におけるスタッド溶接治具部分の斜視図。

【図３】図１における位置設定基板２５の斜視図。

【図４】図１における位置設定基板２５の他の例を示す
斜視図。

【図５】図１におけるスタッド保持体１０とシールドグ
リップ１１の部分を拡大して示す断面図。

【符号の説明】

１ スタッド溶接ガン ２ 本体 ３ 把手 ４ ケーブル ５ 起動スイッチ ６ チャック ７ 蛇腹部 ８ 第１の連結体 ９ 第２の連結体 １０ スタッド保持体 １０ａ スリット １１ シールドグリップ １１ａ スリット １２ 連結部材 １３ 連結板 １４ ガイド棒 １５ 支持部材 １６ 軸体 １７ 支持板 １８ 切欠部 １９ 固定ねじ ２０ 金属部材 ２１ フランジ ２２ フランジ ２３ ウエブ ２４ 位置設定手段 ２５ 位置設定基板 ２６ 調整ボルト ２７ 挟持部 ２７ａ 突片 ２７ｂ 突片 ２７ｃ 固定ボルト ３０ 溶接スタッド ３１ アークシールド ３１ａ 段差部 ３１ｂ ガス流通部 ４０ フランジ ４１ フランジ ４２ 円柱

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 金属部材２０にスタッドを溶接する際に
   スタッド溶接ガン１に連結して使用するスタッド溶接治
   具であって、スタッド溶接ガン１のチャック６に着脱自
   在に連結されて該チャック６の半径方向に延長する第１
   の連結体８と、スタッド溶接ガン１の本体２に着脱自在
   に連結されて前記第１の連結体８と同方向に延長する第
   ２の連結体９と、前記第１の連結体８の先端部に設けら
   れたスタッド保持体１０と、前記第２の連結体９の先端
   部に設けられた筒状のシールドグリップ１１を備え、前
   記第１の連結体８と第２の連結体９をスタッド溶接ガン
   １のチャック６と本体２にそれぞれ連結したとき、前記
   シールドグリップ１１の軸線と前記スタッド保持体１０
   の軸線が同軸となるように構成されているスタッド溶接
   治具。
2. 【請求項２】 第１の連結体８は、チャック６に着脱自
   在に連結される連結部材１２と、該連結部材１２から直
   角方向に延長する連結板１３と、該連結板１３からチャ
   ック６の軸線方向に延長するガイド棒１４と、該ガイド
   棒１４をスライド自在に支持すると共にスタッド溶接ガ
   ン１の本体２に連結される支持部材１５とを有し、前記
   連結板１３の先端部にスタッド保持体１０が結合されて
   いる請求項１のスタッド溶接治具。
3. 【請求項３】 第２の連結体９は、その軸線がチャック
   ６の軸線と同方向にされてスタッド溶接ガン１の本体２
   に着脱自在に連結される軸体１６と、該軸体１６から半
   径方向に延長した支持板１７を有し、該支持板１７の先
   端部に設けられた切欠部１８にシールドグリップ１１が
   支持されている請求項１または請求項２のスタッド溶接
   治具。
4. 【請求項４】 スタッド溶接される金属部材２０に取付
   けて支持板１７を所定位置に設定する位置設定手段２４
   がさらに設けられている請求項３のスタッド溶接治具。