JPH08309535A - 溶接用ワイヤ送給制御装置 - Google Patents

溶接用ワイヤ送給制御装置

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JPH08309535A
JPH08309535A JP12178595A JP12178595A JPH08309535A JP H08309535 A JPH08309535 A JP H08309535A JP 12178595 A JP12178595 A JP 12178595A JP 12178595 A JP12178595 A JP 12178595A JP H08309535 A JPH08309535 A JP H08309535A
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勝義 堀
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 TIG溶接においてスパッタの発生頻度をよ
り少なくして、適正なワイヤ溶融状態に保つ溶接用ワイ
ヤ送給制御装置を提供する。 【構成】 溶接トーチ側に配置されて定速度制御がなさ
れるプルモータ16と、ワイヤリール側に配置されたプ
ッシュモータ20と、プルモータ16とプッシュモータ
20間にワイヤを案内するコンジット8と、ワイヤの案
内経路を伸縮する伸縮器18と、伸縮器18の伸縮状態
を検出する検出手段36とを備え、その検出手段36か
らの信号に基づいて常に一定の伸縮器長となるように前
記プッシュモータ20の回転を制御するように構成され
た溶接用ワイヤ送給制御装置において、独立して定速度
制御されるプルモータ16の駆動電流を検出して、その
プルモータ16と母材間のワイヤ送給抵抗を検知する送
給抵抗検知手段を備えたことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶接用ワイヤ送給制御
装置に係り、特にコールドあるいはホットワイヤ添加の
TIG溶接におけるワイヤ加熱状態の制御、および消耗
電極アーク溶接などにおけるチップ詰まりを未然に検知
する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図2に、ホットワイヤTIG溶接法とし
て従来から一般的に用いられている溶接装置の構成を示
す。
【0003】TIG溶接トーチ1の中のタングステン電
極2と母材3に直流溶接用のアーク電源4を接続し、ア
ルゴン・シールドガス中でタングステン電極2を負極と
してアーク5を形成する。溶接用の添加ワイヤ6はワイ
ヤ送給装置7からコンジット8、およびそれと連結され
たワイヤトーチ9を通ってアーク形成部に導かれて母材
3と接触させる。ワイヤトーチ9はTIG溶接トーチ1
と連結部材10によって機械的に結合されていて一体に
なって動く。
【0004】ワイヤトーチ9の先端部に配置されたコン
タクトチップ11と母材3間にワイヤ加熱電源12を接
続し、直流または交流電流をワイヤ6に流してジュール
発熱させ、それによりワイヤ6の溶融速度を高めてい
る。なお、ワイヤ6に通電加熱しないコールドワイヤT
IG溶接の場合には、図2でワイヤ加熱電源12を除外
した構成になる。
【0005】このホットワイヤTIG溶接では添加する
ワイヤ送給速度に応じて加熱電力を調整することが必要
で、加熱電力が不足気味の時には、ワイヤ6が溶融池か
ら押し出てきたり母材3に突き当たってワイヤトーチ9
およびそれと連結されたTIG溶接トーチ1を持ち上
げ、その結果、アーク長を非常に長くしてしまうので溶
接が続行できなくなる。逆に加熱電力が過大の時には、
ワイヤ6が頻繁に加熱溶断し、スパッタを発生してタン
グステン電極2に付着したり、ワイヤ6の先端とタング
ステン電極2間にアークを形成したりして溶接状態を不
安定にする。
【0006】そこで通常は、ワイヤ6が適正溶融状態、
即ちワイヤ先端が溶融ないし溶融直前の状態になってい
てかつ常に母材3と接触している状態になるよう、作業
者が溶接部を監視しながら加熱電流を手動で調整するこ
とによって結果的に加熱電力を調整している。
【0007】加熱電力調整については、本発明者らは特
公平5−75512号公報に記載されているように、ワ
イヤ電圧から溶断の発生を検知し、溶断発生時には多少
ワイヤ加熱電力を下げ、そこから徐々に加熱電力を増加
して再び溶断を発生させることを繰り返すことにより、
適正溶融状態に近い状態に自動的にワイヤ加熱電力を保
つ制御方法を提案した。
【0008】溶断の発生はなるべく少ないことが好まし
いが、この方法では2〜3秒に1回程度の頻度ではある
が溶断を発生させる必要があり、多少のスパッタ発生は
避けられなかった。
【0009】また、モータからチップに至る添加ワイヤ
の送給経路を溶接中に伸縮する装置として、本発明者ら
はプッシュプルワイヤ送給装置を提案した(特願平6−
41170号)。
【0010】図3はその構成を示す説明図で、多間接溶
接ロボット13の先端アーム14などに取り付けたGM
A溶接トーチ15に組み込まれたプルモータ16により
駆動されるプルローラ17へのワイヤ導入部に、ワイヤ
送給経路の伸縮に応じて伸縮する伸縮器18を設け、そ
の伸縮量に応じて中間アーム19に載せたプッシュモー
タ20によるワイヤ送給速度を制御することを特徴とし
ている。
【0011】なお、21はプッシュモータ20と伸縮器
18間を結ぶコンジットで、22はプルモータ16とプ
ッシュモータ20用の制御装置、23はワイヤリール2
4とプッシュモータ20間のワイヤを案内するコンジッ
ト、25はスタンド、26はワイヤである。
【0012】図4はその伸縮器18の詳細を説明するも
ので、17はプルモータに取り付けられたプル送給ロー
ラ、27,28,29は伸縮器18の中に設けられたリ
ミットスイッチ、30は圧縮バネ、31はリニアシャフ
ト、32はスライダ、33は外筒、34はストッパ、2
1はコンジット、26は溶接ワイヤである。
【0013】圧縮バネ30の伸縮に対応してスライダ3
2がリニアシャフト31に沿って動き、その状態により
リミットスイッチ27,28,29がオン/オフされ
る。スライダ32は、圧縮バネ30が伸びきった状態よ
りもさらに離れないように、ストッパ34によりその動
きに制限を設けてある。
【0014】この状態でプルモータ17およびプッシュ
モータ20を定速度でワイヤ送給すると、両モータから
送り出されるワイヤ速度の差および途中のコンジット2
1内でのワイヤ経路の変化などの結果として伸縮器18
が伸縮する。
【0015】伸縮器18の伸縮の状況をリミットスイッ
チ27,28,29の変化から知り、常に中央のリミッ
トスイッチ28近くにスライダ32の先端が来るよう
に、プッシュモータ20の速度を制御している。
【0016】これにより、溶接ロボット13のアームが
急激な動きをして、コンジット21が大きく撓むなどし
てコンジット21内のワイヤ経路が急激に変化しても、
伸縮器18でその変化量を一時的に吸収し、その後にプ
ッシュモータ20の速度を変化して基準の伸縮状態に戻
す。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】前記特願平6−411
70号にて提案した技術においては、プルモータで定速
供給することにのみに着眼しており、プルモータから母
材側の状態についての配慮がなされていなかった。すな
わち、ワイヤの突っ張りによるトーチの持ち上げや加熱
溶断によるスパッタ発生を防止するために、常時、溶接
作業者がワイヤの溶融状況を監視しながらワイヤ送給速
度や加熱電流を調節しなければならないという難点を有
している。
【0018】また、前述した溶断現象を利用した従来の
自動制御方法では、まだスパッタが発生することがあ
り、タングステン電極にスパッタが蓄積するので、長時
間連続運転することが難しいという問題がある。
【0019】さらに、前述のGMA溶接においては、通
電チップは長時間使用するとチップ孔の磨耗が進行して
接触不良を起こしてアーク切れを起こす。このため、殊
に溶接ロボットに搭載したGMA溶接では、時間を決め
てアーク切れを起こす前に交換することがしばしば行わ
れている。
【0020】しかし、同時に銅メッキワイヤのメッキ屑
など異物が通電チップ孔に溜まって、溶接中にワイヤ詰
まりを起こすようなことがしばしば発生する。このワイ
ヤ詰まりは発生時期が定まらないこと、それを事前に検
知する実用的な方法はまだ実現されていないため、突然
アークが中断して製品に溶接欠陥を発生したりするの
で、溶接ロボットを用いた連続無人運転を実現する上で
大きな支障となっている。
【0021】本発明はこのような背景に基づいてなされ
たものであり、その目的は、TIG溶接においてスパッ
タの発生頻度をより少なくして適正なワイヤ溶融状態に
保つように、ワイヤ加熱電流やワイヤ送給速度などの自
動調整を行うことができる溶接用ワイヤ送給制御装置を
提供することにある。
【0022】また、他の目的は、GMA溶接においてチ
ップ詰まり発生前にチップ交換が行える、チップ詰まり
の進行状態検出器つきの溶接用ワイヤ送給制御装置を提
供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、第1の本発明は、溶接トーチ側に配置されて定速度
制御がなされるプルモータと、ワイヤリール側に配置さ
れたプッシュモータと、前記プルモータとプッシュモー
タ間にワイヤを案内するコンジットと、ワイヤの案内経
路を伸縮する伸縮器と、その伸縮器の伸縮状態を検出す
る検出手段とを備え、その検出手段からの信号に基づい
て常に一定の伸縮器長となるように前記プッシュモータ
の回転を制御するように構成された溶接用ワイヤ送給制
御装置を対象とするものである。
【0024】そして独立して定速度制御される前記プル
モータの駆動電流を検出して、そのプルモータと母材間
のワイヤ送給抵抗を検知する送給抵抗検知手段を備えた
ことを特徴とする。
【0025】前記目的を達成するため、第2の本発明
は、ホットワイヤTIG溶接用のワイヤが母材と接触し
ているか分離しているかを検知する接触検知手段を備
え、その接触検知手段によってワイヤが母材から分離し
ていることが検知されたときのプルモータと母材間のワ
イヤ送給抵抗をプルモータ電流で検出して、チップ詰ま
りを未然に検知するように構成したことを特徴とするも
のである。
【0026】前記目的を達成するため、第3の本発明
は、消耗電極アーク溶接装置のプルモータと母材間のワ
イヤ送給抵抗を検出するワイヤ送給抵抗検出手段を備
え、そのワイヤ送給抵抗検出手段によるワイヤ送給抵抗
の変化から、チップ詰まりを未然に検知するように構成
したことを特徴とするものである。
【0027】
【作用】前記第1の本発明は前述のように、プルモータ
とプッシュモータの間にワイヤ送給経路伸縮器を配置
し、その伸縮状態が一定になるようプッシュモータでフ
ィードバック制御し、かつプルモータをトーチの近傍に
おいて定速度でワイヤ送給する場合には、プルモータ
は、伸縮器が発生する一定の力と、ワイヤ送給用プルロ
ーラを無負荷で回転する一定の力、およびそこから母材
に至る間にワイヤが外部から受ける力を加算した力を発
生することになる。
【0028】この場合、通電したワイヤをガイドするチ
ップを通過する際に受ける摩擦力とワイヤが母材に接触
して母材から受ける反力とで構成される力の変動は、結
果としてプルモータのモータ電流の変動として検出され
る。
【0029】従って、ワイヤが母材と接触しているかど
うかを電気的に検知し、ワイヤが接触している時のプル
モータ電流の変化量、接触していない時のプルモータ電
流の変化量から、ワイヤが母材に押し付けられる力やチ
ップ詰まりの進行状況を検知でき、ワイヤ溶融状態の制
御やチップ詰まりの未然検知に役立てることができる。
【0030】TIG溶接においては、ワイヤ溶融が進ま
ず硬いワイヤが母材に当たっている場合には、強い押し
付け力を発生する。適正なワイヤ溶融状態の場合には、
ワイヤが軟化しているため、接触しても押し付けの反力
を発生しない。従って、この母材からの反力を検知でき
ると、ワイヤ送給速度、ワイヤ加熱電力、ワイヤ挿入位
置などを変化させて、ワイヤ加熱状態を適正な値に制御
できる。
【0031】また第2ならびに第3の本発明により、チ
ップ詰まりの発生を未然にかつ確実に検知でき、チップ
詰まり発生前の適当時期にチップ交換できるから、溶接
中にチップ詰まりを発生して不良製品を生じることがな
くなり、ロボット溶接ラインなどでの連続無人運転が可
能となる。
【0032】
【実施例】
(第1実施例)図1は、本発明の第1実施例に係るTI
G溶接装置用のプッシュプルワイヤ送給制御装置の構成
図である。
【0033】TIGアーク電源4、ワイヤ加熱電源1
2、TIG溶接トーチ1の他、TIG溶接トーチ1から
離れた所にワイヤ送給用プッシュモータ20を内蔵した
ワイヤ送給装置7を置き、プルモータ16を組み込んだ
ワイヤトーチ9側へワイヤ6を案内するコンジット8の
ワイヤトーチ側端部とプルモータ16との間にワイヤ6
の案内経路を伸縮する伸縮器18を配置し、これらの機
器によってホットワイヤTIG溶接を行う。
【0034】伸縮器18は従来技術で説明した図4と同
じ構造のものを用いたので、その詳細説明は省略する。
35はワイヤ送給制御とワイヤ加熱電流制御信号を形成
するワイヤ関連制御装置である。36は伸縮状態検出回
路で、伸縮器18のリミットスイッチ27,28,29
(図4参照)のH(ハイ)、L(ロウ)信号を受け、プ
ッシュモータ20の制御回路37に増速、減速を指令す
る。
【0035】38は作業者の指令に従ってプルモータ1
6を定速度制御するプルモータ制御回路、39はプルモ
ータ電流を検出して制御する回路で、プルモータ電流の
状態によってワイヤ加熱電流の増加、減少を指示する制
御信号をワイヤ加熱電流制御回路40に出力する。
【0036】なお、ワイヤ加熱電流制御回路40は、プ
ルモータ制御回路38からワイヤ速度信号を受け、ワイ
ヤ速度に対応した出力電流を初期電流として出力し、そ
の後はプルモータ電流に対応して電流を増減する。41
はワイヤ加熱電源12に組み込まれたタッチ検出回路
で、前記特公平5−75511号公報に記載したもので
あり、ワイヤ6が母材3と接触しているか分離している
かをH,L信号でプルモータ電流検出制御回路39に出
力するものである。
【0037】次に本実施例の装置の動作について説明す
る。ワイヤ送給自体は伸縮器18を利用し、先に説明し
た特願平6−41170号の方法で行われている。従っ
て、伸縮器18は基本的には中央のリミットスイッチ2
8(図4参照)がオン、オフする程度の長さに縮んでい
る。
【0038】さて、TIGアーク5を発生して溶融池に
ワイヤ6を送給する時、初めワイヤ送給速度に概略対応
したワイヤ加熱電流をワイヤ加熱電源12から供給する
ようにしている。もし、そのワイヤ加熱電流が不足気味
であれば、ワイヤ溶融の進行よりワイヤ送給速度が速く
なるので、ワイヤ先端は母材3に突き当たり、プルモー
タ16に押し付け力が反力として働く。プルモータ16
は定速送給しようとして、より高いトルクを発生させる
ためモータ電流が増加する。
【0039】逆に、ワイヤ加熱電流が過大の時は、ワイ
ヤ6は過熱して溶断し、ワイヤ先端は母材3から分離す
る。このワイヤ先端の分離信号をタッチ検出回路41で
検出し、ワイヤ加熱電流を減少するようにワイヤ加熱電
源12に制御信号を出力する。併せて、この時のプルモ
ータ電流をプルモータ電流検出回路39で測定し、ワイ
ヤ電流増加をさせない基準状態として記憶しておく。そ
してプルモータ電流がこの値になるべく近づき、かつワ
イヤ加熱電流を出来るだけ低い値に保つようにワイヤ加
熱電流を制御する。
【0040】このようにすると、プルモータ出口からチ
ップ出口までのワイヤ送給抵抗と伸縮器18からの負荷
を加算した負荷がプルモータ電流に反映され、常にそれ
ら負荷を差し引いた形のプルモータ電流、即ちワイヤ6
が母材3に当たって生じるモータへの反力を検出して、
ワイヤ加熱電流を制御することになっている。
【0041】この第1実施例において、チップが新しく
て未だ詰まりが発生していない時に、ワイヤ6が母材3
から離れている時のプルモータ電流を測定して新チップ
状態の基準値として記憶しておくと、その後のワイヤ6
が母材3から離れている時のプルモータ電流増加はチッ
プ詰まりによるものと判断される。従って、このプルモ
ータ電流変化から、TIG溶接におけるチップ詰まりの
発生を未然に検知することができる。
【0042】また、この第1実施例においては、タッチ
検出回路41を用いてワイヤ6が母材3に突き当たる反
力を検出して、ワイヤ加熱電力を制御する場合について
説明した。しかし、チップ詰まりなどによるワイヤ送給
抵抗が少ない場合には、単にプルモータ電流が一定にな
るようにワイヤ加熱電力を制御することによっても、同
様な制御が行える。
【0043】(第2実施例)次に、本発明の方法を消耗
電極アーク溶接に適用した場合について説明する。実際
には、図3の従来装置とほぼ同じ構成をとっており、そ
のモータ制御装置22の中に、前記図1のワイヤ送給制
御装置35内のプルモータ電流検出回路39を追加した
に過ぎないので、図面は省略した。
【0044】GMA溶接の場合にはワイヤ先端でアーク
が発生している。アークスタートの時を除いてはワイヤ
先端は瞬間的に母材と接触(短絡)することもあるが、
母材に突き当たって反力を発生するような状態にまでは
至らず、殆どが空間に浮かんでいる状態といえる。
【0045】従って、チップが新しい状態の時のプルモ
ータ電流を測定して記憶しておき、使用中のプルモータ
電流の経時的変化から、チップ詰まりの発生を未然に検
知することが容易にできた。
【0046】第1、第2実施例によれば、TIG溶接に
おいては、スパッタ発生が極めて少ない状態でワイヤ6
の適正加熱電力を自動的に保てるので、溶接中に作業者
が加熱電力調整のために常時監視することは不要とな
り、無人化・省人化溶接の実現に大きく寄与する。
【0047】また、半自動TIG溶接に運用すると、ワ
イヤ6が母材3に突き当たってトーチを母材3から引き
離して溶接できなくなる事態が発生せず、半自動TIG
溶接が容易に行えるようになった。
【0048】即ち、通常の半自動TIG溶接トーチで
は、ワイヤ送給速度調整の難しさから生じるワイヤ突っ
張りをなるべく少なくする意味もあって、ワイヤ6はな
るべく母材表面に沿うような形でアーク下の溶融池に向
けて送給されている。
【0049】このため、アーク長が少し長くなったり短
くなったりすると、ワイヤ先端が母材3に接する位置が
大きくずれ、溶融池から外れたりして溶接困難になる問
題が生じてきて、結局ホットワイヤでもコールドワイヤ
でも、TIG溶接の半自動TIG溶接が実用されること
は殆どなかった。
【0050】一方、本発明者らになる特開平3−297
574号公報による、ワイヤをシールドノズルの内側か
らタングステン電極に沿ってほぼ並行に挿入する方法は
ロボット溶接では実用されているが、半自動TIG溶接
では、アーク長が不安定でワイヤ溶融速度が変化しやす
いので、益々ワイヤが母材に突き当たってトーチを持ち
上げやすくなるのでこれまで採用できなかった。
【0051】しかし、本発明によってワイヤ突っ張りが
なくなったので、ワイヤをシールドノズル内側から送給
できる、より小型のトーチで半自動TIG溶接ができる
ようになった。
【0052】GMA溶接に本発明を適用すると、チップ
の詰まり発生を未然に検知し、チップ詰まり発生前の適
当時期にチップ交換できるようになったので、溶接中に
チップ詰まりを発生して不良製品を生じることが避けら
れ、ロボット溶接ラインなどでの連続無人運転が可能で
ある。
【0053】
【発明の効果】前記第1の本発明は前述のような構成に
なっており、ワイヤが母材に押し付けられる力が検知で
き、それに基づいてワイヤ送給速度、ワイヤ加熱電力、
ワイヤ挿入位置などを変化させて、ワイヤ加熱状態を適
正な値に制御できる。また、チップ詰まりの進行状況を
検知でき、チップ詰まりの未然検知に役立つ。
【0054】また第2ならびに第3の本発明により、チ
ップ詰まりの発生を未然にかつ確実に検知でき、チップ
詰まり発生前の適当時期にチップ交換できるから、溶接
中にチップ詰まりを発生して不良製品を生じることがな
くなり、ロボット溶接ラインなどでの連続無人運転が可
能となるなどの特長を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るホットワイヤTIG溶接
装置の一例を示す構成図である。
【図2】従来例に係るホットワイヤTIG溶接装置の構
成図である。
【図3】本発明の先願に係るプッシュプルワイヤ送給装
置の構成図である。
【図4】その伸縮器の構成図である。
【符号の説明】
1 TIGトーチ 2 タングステン電極 3 母材 4 アーク電源 5 アーク 6 ワイヤ 7 ワイヤ送給装置 8 コンジット 9 ワイヤトーチ 10 連結部材 11 コンタクトチップ 12 加熱電源 16 プルモータ 18 伸縮器 20 プッシュモータ 22 モータ制御装置 35 ワイヤ関連制御装置 36 伸縮状態検出回路 37 プッシュモータ制御回路 38 プルモータ制御回路 39 プルモータ電流検出回路 40 ワイヤ加熱電流制御回路 41 タッチ検出回路

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶接トーチ側に配置されて、定速度制御
    がなされるプルモータと、 ワイヤリール側に配置されたプッシュモータと、 前記プルモータとプッシュモータ間にワイヤを案内する
    コンジットと、 ワイヤの案内経路を伸縮する伸縮器と、 その伸縮器の伸縮状態を検出する検出手段とを備え、 その検出手段からの信号に基づいて常に一定の伸縮器長
    となるように前記プッシュモータの回転を制御するよう
    に構成された溶接用ワイヤ送給制御装置において、 独立して定速度制御される前記プルモータの駆動電流を
    検出して、そのプルモータと母材間のワイヤ送給抵抗を
    検知する送給抵抗検知手段を備えたことを特徴とする溶
    接用ワイヤ送給制御装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載において、ワイヤ送給用プ
    ルモータと母材間におけるワイヤ送給抵抗を一定とする
    ためにワイヤ加熱電力を調整するように構成したことを
    特徴とする溶接用ワイヤ送給制御装置。
  3. 【請求項3】 請求項2記載において、ワイヤが母材と
    接触しているか分離しているかを検知する検知手段を備
    え、ワイヤが母材と接触している時のプルモータと母材
    間のワイヤ送給抵抗が、ワイヤが母材と分離している時
    のプルモータと母材間のワイヤ送給抵抗に近づくように
    ワイヤ加熱電力を制御するように構成したことを特徴と
    する溶接用ワイヤ送給制御装置。
  4. 【請求項4】 ホットワイヤTIG溶接用のワイヤが母
    材と接触しているか分離しているかを検知する接触検知
    手段を備え、 その接触検知手段によってワイヤが母材から分離してい
    ることが検知されたときのプルモータと母材間のワイヤ
    送給抵抗をプルモータ電流で検出して、チップ詰まりを
    未然に検知するように構成したことを特徴とする溶接用
    ワイヤ送給制御装置。
  5. 【請求項5】 消耗電極アーク溶接装置のプルモータと
    母材間のワイヤ送給抵抗を検出するワイヤ送給抵抗検出
    手段を備え、 そのワイヤ送給抵抗検出手段によるワイヤ送給抵抗の変
    化から、チップ詰まりを未然に検知するように構成した
    ことを特徴とする溶接用ワイヤ送給制御装置。
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