JPH08309178A - ガス発生器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 軽量のエアバッグ展開用ガス発生器構造を提
供すること。 【構成】 点火器にガス発生剤線材層、冷却剤線材、フ
ィルタ線材及び強化線材層を順次巻きつけて構成され、
更に軽量の防湿ケースに収容してなる金属製耐圧ケーシ
ングを用いない軽量ガス発生器構造。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】 本発明は、車両等に装着される
エアバッグ装置に於いてエアバッグの急速展開用ガスを
発生させるガス発生器に関し、特に、小型軽量の安全性
の高いエアバッグ装置用ガス発生器に関する。

【０００２】

【従来の技術】 従来、運転席用エアバッグ装置に用い
られるガス発生器は、主として円盤状の外形でありその
構造並びに機能等については例えば米国特許第４５４７
３４２号明細書にステアリングホイールの中央に取りつ
け使用される運転席用のガス発生器が開示されている。
このガス発生器の構造は、金属製の耐圧ケーシングの中
心部の点火室内には、スクイブがあり、その周囲には同
スクイブにより発火し、ペレット状ガス発生剤に対して
着火の働きをする点火薬が配置されている。この点火薬
の周囲の燃焼室内には、ガス発生剤が充填され、更にそ
の外周のフィルタ室内にはガス発生剤の燃焼生成物を冷
却すると同時に凝結物を発生ガスより分離捕集する為の
フィルタが配置されている。

【０００２】 また運転席用ガス発生器として円筒状の
ガス発生器構造も開示されている、例えば米国特許第４
７９６９１２号に於いてはガス発生器全体が前述と同様
金属製の耐圧ケーシングで構成され、中心部にガス発生
室、その両端部にフィルタ室を配置し、ガス発生室には
ガス発生剤と点火装置を、亦フィルタ室にはフィルタエ
レメントを組み込んだ構造が示されている。

【０００３】 また更に米国特許第５２９００６０号に
は運転席用ガス発生器として円筒状のハイブリド式ガス
発生器構造が開示されて居り、円筒状ガス発生器全体が
前述と同様金属製耐圧ケーシングで構成され、内部にア
ルゴン等の高圧ガスが充填されると同時に、その一端部
にガス発生室、その他端部にフィルタ材を配置し、ガス
発生室には充填ガスの断熱膨張による温度低下を補償す
るに必要充分な量の発熱剤と点火装置を組み込んだ構造
が示されている。

【０００４】 また更に客席用ガス発生器としては多く
の構造が開示されて居り、例えば米国特許第４８９０８
６０号について説明すれば、金属製の円筒状耐圧ケーシ
ングの中央部の点火管内に、スクイブがあり、その周囲
には同スクイブにより発火し、更にガス発生剤に対して
着火の働きをする点火薬が配置されている。この点火薬
の周囲の燃焼室内には、円盤状のガス発生剤が充填さ
れ、更にその外周にはガス発生剤の燃焼生成物を冷却す
ると同時に凝結性副成物を発生ガスより分離捕集する為
の円筒状フィルタが配置されている。

【０００５】 しかしながら、かかるガス発生器に於い
ては充填されるガス発生剤の機械的強度を着火の際に齎
される熱及びガスの強い衝撃に充分耐え且つ約３０ミリ
秒前後で燃焼を完了させる必要があることから、通常ケ
ーシング内に装填されるガス発生剤は錠剤状或いは円盤
状で強固に加圧成型され且つその燃焼時の圧力を約１０
０気圧から２００気圧と高く設定し、従って前記耐圧ケ
ーシングの強度を破裂の危険を避ける為充分に高める必
要があり、重量が著しく増大する。亦このようなガス発
生器の軽量化と組み立て方をより簡略化させる為、レー
ザ或いはビーム溶接等による高価な溶接構造の採用が通
常おこなはれ、その結果著しくコストの増大をもたらす
という問題があった。

【０００６】 また前記燃焼副成物は通常人体に吸入さ
れた場合有害であってフィルタを用いて無害な程度まで
十分に除去する必要があるが、その為の充分な機能を持
つフィルタを組み込む事はガス発生器全体の重量とコス
トの増大をもたらすと言う問題があった。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】 本発明は前述の問題
に鑑みてなされたもので、金属製耐圧ケーシングを用い
ない簡略化されたガス発生剤方式のガス発生器構造によ
る軽量化と簡略化された製造方法によるコスト低減を目
的とするる。

【０００８】

【課題を解決する為の手段】 上記問題点を解決する為
に、本発明では複数のガス噴出孔を備えた細管状の点火
器の外周に先ず本発明者による線状ガス発生剤からなる
線材（以降ガス発生剤線材と称する）を、更にその外周
に線状冷却剤からなる線材（以降冷却剤線材と称す
る）、線状フィルタ材からなる線材（以降フィルタ材線
材と称する）（特開平６−４７２２３）と線状強化材か
らなる線材（以降強化材線材と称する）を順次所定量巻
きつけそれぞれの層（以降ガス発生剤層、冷却層、フィ
ルタ層及び強化層と称する）を作成する事によりガス発
生器を構成するという手段を採用している。

【０００９】 前述のガス発生剤線材は高抗張力の柔軟
性に富む糸材の表面にガス発生剤を塗布固定したもので
あって、糸材には線径１ミリ以下の鉄、ニッケル、アル
ミニウム、マグネシウム、銀、銅等の金属単体、並びに
相互の合金からなる単線もしくは複数のより細径の線か
らなる長繊維糸、各種組成のガラス、シリカ、セラミッ
ク、炭素、ほう素等からなる無機長繊維糸、及びセルロ
ース、ポリエステル、脂肪族ナイロン、芳香族ナイロン
等からなる有機長繊維糸等を用いることが出来る。特に
ガス発生剤の燃焼性を高めるにはアルミニウム、銅等の
金属線材の使用が有利である。耐熱性と発生ガスの青酸
化合物、一酸化炭素等の有害成分による汚染防止を考慮
する場合，ガラス、シリカ、セラミックス等の無機長繊
維糸特にガラス及びセラミクス長繊維糸の使用が有利で
ある。

【００１０】 ガス発生剤線材に用いるガス発生剤には
従来より用いられているアジド系化合物、テトラゾール
系化合物、グアニジン誘導体、セルロース系化合物、合
成樹脂系化合物等の還元性化合物と金属酸化物、硝酸
塩、塩素酸塩、過塩素酸塩等酸化性化合物及び結合性化
合物が使用されるが、特に糸に対し固着性と還元性を兼
ね備える例えばセルロース系化合物、合成樹脂系化合物
等を用いる事が好ましい。しかしながら発生ガス中に有
害物質を副成する恐れのある場合には珪酸塩等無機結合
剤を使用する事が出来る。

【００１１】 ガス発生剤層の燃焼により発生するガス
の温度は通常糸材の融点より高く、フィルタを焼損する
恐れがある為、冷却剤層をガス発生剤層とフィルタ層の
間に巻き込み介在させ、ガス温度の調整を行う。この冷
却剤層はガス発生剤線材に用いる金属系繊維糸、若しく
はガラス或いはセラミック長繊維糸夫々の単体、若しく
はこれらの糸に炭酸塩の如き吸熱分解性の化学冷却剤を
コーティングして作成する事が出来る。

【００１２】 ガス発生剤線材の点火器への巻き方はヘ
リカル状を基本とし、円周方向で隣接するガス発生剤線
材同志の間隔は密着状態から線材径の数倍以上と任意に
採ることも可能であるがガス発生器の小型化の目的から
は線材径と同等の間隔迄が適当であり、また中心軸にた
いし直角方向で隣接する線材同志の交差角度は約１度か
ら１７９度まで可能であるが、好ましくは９０度を中心
に４５度から１３５度の範囲を採用することが好まし
い。これにより円周方向と同時に軸方向にたいする抗張
力を出現させてガス発生剤層両端面での燃焼時に生ずる
燃焼内圧に対応する耐圧構造を省略する事が出来る。

【００１３】 フィルタ材線材は前述のガス発生剤線材
の糸材と同一素材糸の中から発生ガス温度、種類及び副
生成物との化学的反応性等を考慮してフィルタとして耐
久性のあるものを選定する。例えば濾過分離する必要の
ある凝縮性副生成物が塩基性化合物であればガラス、無
水珪酸、セラミックス等が有利であり、またフィルタ層
の巻き方はガス発生剤層と基本的に同一である。

【００１４】 フィルタ層の外層部には特別な機能を付
与する以外はフィルタ層と通常同一の糸材を用いて交差
角度を９０度から１８０度の範囲、好ましくは１２０度
から１７５度の範囲に巻き付けて構成する強化材層を設
け、円周方向の強度増大と搭載車両からの長期にわたる
震動により層全体構造の弛緩発生並びに燃焼時に発生す
る内圧による層構造の弛緩を防止する。

【００１５】 また更に叙上の方法により得られるガス
発生剤層、冷却剤層、フィルタ層及び強化層の軸方向の
長さはほぼ同一とすることが好ましく、これにより以下
述べるシーリング処理が簡略化されコスト削減に有利で
ある。

【００１６】 ガス発生剤層、フィルタ層、冷却剤層、
及び強化層の両端面には発生ガスの両端面からの流出を
防止する為シーリング剤をガス発生剤の燃焼を阻害しな
い深さ迄含浸固定する。シーリング剤には珪酸のアルカ
リ金属塩等ガス発生剤の燃焼に際し発生ガスを汚染する
ことの無いものを用いるのが好ましい。

【００１７】 ガス発生器は外力による損傷並びに外気
からの吸湿劣化より保護する為に軽量の防湿ケースに収
容する。ガス発生器の作動時にガス流出を出来るだけ阻
害しない為、表面を防食処理したアルミニウム等金属薄
板若しくはアルミ薄板等を合成樹脂フィルムでラミネー
トしたもので構成するのが好適である。

【００１８】 点火器は複数のガス噴出孔を有する火管
とその中に充填される点火薬及びスクイブからなる。点
火薬の組成はほう素２５部と硝石７５部及び添加剤２部
から成り、顆粒状並びにペレット状で使用される。スク
イブには微小電流で確実に数ミリ秒以内で点火薬を着火
させる為、ジルコニウムと過塩素酸カリとの混合物が充
填使用される。

【００１９】

【作用】 上記のように構成された本発明のガス発生器
では、例えばガス発生装置を備えた自動車が衝突する
と、装置の電源が投入されて点火器が発火し、その火炎
がガス発生剤層に伝はりガス発生剤層が燃焼を開始し、
副成物を伴ったガスを発生する。ガス発生に伴い圧力上
昇が生じガス発生剤を飛散させる力が生じるがガス発生
剤線材自体が高抗張力であるため初期の状態で燃焼が持
続される。発生ガスは更にフィルタ層で副成物を分離さ
れた後エアバッグ内に流入してエアバッグを展開させ
る。

【００２０】

【第一実施例】 以下に本発明の一実施例を添付図面に
基ずいて説明する。

【００２１】 第１図は本発明ガス発生器の縦断面図を
示す。ガス発生器は外径１５ｍｍ、長さ７０ｍｍの円筒
状火管１の外周に、アジ化ソーダ４３ｇ、酸化鉄１９
ｇ、硝石３ｇ及び水ガラス５ｇからなるガス発生剤ペー
ストを径６ミクロンのＥガラス繊維１６００本からなる
糸の外表面に均一に塗布乾燥し調製したガス発生剤線材
を０．１ｍｍの間隔でヘリカル状に所定長さ巻き重ねガ
ス発生剤層２とし、更にその外周に炭酸マグネシウム８
０部と水ガラス２０部からなる冷却剤を同一糸の外表面
に塗布乾燥して調製した冷却剤線材及びフィルタ線材を
順次同様に巻き重ねた冷却層４、フィルタ層６と強化層
１０とからなる。このガス発生剤層２、冷却剤層４、フ
ィルタ層６と強化層１０の両端面には水ガラスを用いて
シール層９を形成させる。

【００２２】 火管１には予め点火薬５を充填し、更に
その端部にリード線８からの電気信号により作動するス
クイブ３が取りつけられる。得られたガス発生器は更に
アルミ薄板製防湿ケース７に収納される。得られたガス
発生器の重量は約３００ｇであり、容量６０立のエアバ
ッグを約３５ミリ秒で展開させた。

【００２３】

【発明の効果】 以上のように本発明によれば、高抗張
力繊維糸材単体並びにガス発生剤等との複合材を点火装
置に単に巻きつける事により、ガス発生器重量の大半を
占める耐圧容器を用いること無く軽量且つ安価なガス発
生器を作ることができる。また更に車両火災等によりフ
ィルタ部に一部焼損が生じたとしても、従来の金属ケー
スを用いたガス発生器に見られるような破裂に至る危険
性が無い為、自動発火装置を組み込む必要の無い安全性
の高いガス発生器を得ることが出来る。

【図面の簡単な説明】

【図１】ガス発生器の縦断図面

【符号の説明】

１ 火管 ２ ガス発生剤層 ３ スクイブ ４ 冷却剤層 ５ 点火薬 ６ フィルタ層 ７ 防湿ケース ８ リード線 ９ シール層 １０ 強化層

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 軽量の防湿ケースに収容され、中心位置
   の点火手段と、該点火手段に各両端面位置が揃うように
   線状ガス発生剤、線状冷却剤、線状フィルタ材及び線状
   強化材各線材を順次巻き付けてなるガス発生剤層、該ガ
   ス発生剤層に外接する冷却剤層、該冷却剤層に外接する
   フィルタ層及び該フィルタ層に外接する強化層からな
   り、且つ両端面をシーリング剤により気密にシールされ
   てなるガス発生器。
2. 【請求項２】 中心軸に直角方向でガス発生剤層、冷却
   剤層及びフィルタ層を構成する各隣接する線材相互の中
   心軸方向での交差角度は４５度から１３５度の範囲であ
   り強化層に於ける交差角度は１２０度から１７５度の範
   囲である。
3. 【請求項３】 請求項１でのシーリング剤は珪酸のアル
   カリ金属塩である。