JPH082971A - 工具用窒化珪素焼結体及びその製造方法 - Google Patents

工具用窒化珪素焼結体及びその製造方法

Info

Publication number
JPH082971A
JPH082971A JP6159557A JP15955794A JPH082971A JP H082971 A JPH082971 A JP H082971A JP 6159557 A JP6159557 A JP 6159557A JP 15955794 A JP15955794 A JP 15955794A JP H082971 A JPH082971 A JP H082971A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sintered body
silicon nitride
volume
powder
silicon
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP6159557A
Other languages
English (en)
Inventor
Tetsuya Kashiwagi
哲哉 柏木
Masaru Matsubara
優 松原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Niterra Co Ltd
Original Assignee
NGK Spark Plug Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NGK Spark Plug Co Ltd filed Critical NGK Spark Plug Co Ltd
Priority to JP6159557A priority Critical patent/JPH082971A/ja
Publication of JPH082971A publication Critical patent/JPH082971A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Ceramic Products (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 相対密度が高く、高温における強度が大き
く、且つ耐摩耗性及び耐欠損性に優れ、切削加工具等に
好適なβ−Si3 4 焼結体からなる工具用窒化珪素焼
結体及びその製造方法を提供する。 【構成】 平均粒径0.5μm、α結晶化率95%以
上、酸素量1.5体積%の原料窒化珪素粉末98体積%
に、焼結助剤として、平均粒径0.3〜0.4μmの酸
化マグネシウム1体積%、酸化アルミニウム0.4体積
%及び酸化ジルコニウム0.6体積%を加え、これに窒
化珪素玉石、溶媒としてのエタノールを添加して、16
時間粉砕混合し、更に有機結合剤を加えて、金型プレス
にて予圧した後、1.5t/cm2 の圧力で冷間静水圧
成形して、工具SNGN432用の成形体を得、次い
で、この成形体を脱脂後、温度1800〜1950℃、
圧力2〜5気圧の条件で焼成し、工具用窒化珪素焼結体
を得た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐摩耗性及び耐欠損性
に優れ、機械工作工具、特に切削工具用として好適な窒
化珪素焼結体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、窒化珪素焼結体は、耐熱性、
耐熱衝撃性及び耐摩耗性等に優れることから、各種の熱
機関用構造材料及び切削工具用材料などとしての応用が
進められている。しかし、例えば、鋼の切削では、窒化
珪素からなる切削工具では、珪素と鉄との反応により工
具が異常に摩耗したり、欠損したりすることがあり、ア
ルミナ等に比べて耐摩耗性が劣るということが問題にな
っている。そこで、窒化珪素の上記欠点を補うため、窒
化珪素からなる切削工具等の表面をアルミナ等、耐摩耗
性のより優れた材料によって被覆することが提案されて
いる(特公平3−52430号公報、特公平5−103
12号公報、特開平5−9078号公報、特開平5−5
1259号公報等)。
【0003】しかしながら、これら表面被覆窒化珪素を
製造するにあたっては、CVD処理を必要とし、製造コ
ストの上昇を招くという問題があり、また、これらの表
面被覆材料は、使用条件によっては被覆層が剥離するこ
ともあり、必ずしも優れた耐摩耗性が安定して発揮され
るとは言えず、性能に対する信頼性に欠ける。更に、窒
化珪素は耐熱性が高いだけに焼結が容易ではなく、通常
焼結助剤を用いて焼成されるが、その量が多い場合は緻
密な焼結体を得ても、窒化珪素本来の特性が低下し、特
に高温における機械的強度の低下等の問題を生ずる。し
かし、少ない焼結助剤で理論密度近くのポアの少ない組
織からなる窒化珪素焼結体を得ることも難しく、そのよ
うな問題を解決するためにガス圧焼結法、又はHIP法
を2次焼成方法として用いることが提案されている(特
公平3−52430号公報、特開平5−9078号公
報、特開平5−51259号公報等)が、これらの方法
を実施するには、大型の焼結設備を必要とし、コスト及
び生産性の点で必ずしも優れた方法ではない。
【0004】また、特公昭58−49509号公報に
は、窒化珪素焼結体を焼結温度1600〜2000℃、
好ましくは1600〜1800℃、窒素圧力1.5〜5
0kg/cm2 で焼結する方法が開示されている。しか
し、この方法で好ましいとされる1600〜1800℃
での焼成で緻密な焼結体を得るには、比較的多量の焼結
助剤を必要とし、ガラス相の量が多くなるため耐摩耗性
材料には適さない。更に、この方法では、気孔率の低い
焼結体であっても2%程度のポアが残っており、この点
でも耐摩耗性を要求される用途には使用できない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題
点を解決し、少量の焼結助剤によって、特別な二次焼成
等を要することなく焼結でき、且つアルミナ等を被覆し
なくても十分な耐摩耗性及び耐欠損性を有する工具用窒
化珪素焼結体(以下、工具用焼結体ということもあ
る。)及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、窒化珪素
焼結体の耐摩耗性、特にアブレッシブな摩耗に対して、
焼結助剤の総量、ひいては粒界相量を低減させることが
有効であること、及び耐欠損性の向上に酸化アルミニウ
ムの添加が効果的であることに着目し、酸化アルミニウ
ムを含むより少ない焼結助剤量で焼結する方法について
鋭意研究を進めた。上記目的を達成するためには、従来
より、より高温で焼成する方法、ホットプレスを用いる
方法、二次焼成にガス圧焼成法を用いる方法或いはHI
Pによる方法等が知られており、それらについて検討を
重ねた結果、揮発性の高い焼結助剤をできるだけ少量使
用し、低い窒素圧(1.5〜9atm)によって窒化珪
素の分解を抑えるとともに、1800〜1950℃の高
温下で焼成し、焼結助剤等の相当部分を揮散させること
により、得られる焼結体中の粒界相の割合を減少させる
方法が優れているとの知見を得た。
【0007】本第1発明の工具用窒化珪素焼結体は、β
−Si3 4 を主体とする粒子相と、該粒子の粒界に形
成されるガラス相により構成される焼結体からなる工具
用窒化珪素焼結体において、上記ガラス相は、焼結助剤
構成成分である、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウ
ムと、ジルコニウム及び希土類元素のうちの1種以上の
酸化物と、窒化珪素原料粉末中に存在する酸素と珪素と
が反応して生成する酸化珪素とを含み、上記焼結体を1
00体積%とした場合に、上記ガラス相は4〜8体積%
であり、また、上記窒化珪素原料粉末に添加される焼結
助剤と、上記酸素の全量が珪素と反応するとして算出さ
れる酸化珪素の量との合計量を100体積%とした場合
に、その10〜30体積%が揮散して上記焼結体中には
残存せず、上記ガラス相を形成するのはその残部の70
〜90体積%であり、上記焼結体の相対密度が98%以
上であることを特徴とする。
【0008】ここで相対密度とは初期配合組成から理論
的に計算した焼結体の密度で、実測の密度を除して10
0倍した値であり、本発明のように窒化珪素より重い焼
結助剤成分の揮散量の多い焼結体の場合、焼結体中にポ
アの少ない組織であっても、見掛け上(計算上)の相対
密度は低くなる。
【0009】第2発明は、上記焼結体を100体積%と
した場合に、上記ガラス相は4〜6体積%であり、且つ
上記窒化珪素原料粉末に添加される焼結助剤と、上記酸
素の全量が珪素と反応するとして算出される酸化珪素の
量との合計量を100体積%とした場合に、上記ガラス
相はその70〜80体積%であることを特徴とする。ま
た、第3発明の工具用焼結体は、特定の被削材を特定の
切削条件により切削加工した場合の逃げ面摩耗量が2.
0mm以下であることを特徴とする。更に、第4発明
は、第1又は2発明の工具用焼結体の逃げ面摩耗量が
2.0mm以下であることを特徴とし、第5発明は、第
1〜4発明の工具用焼結体の逃げ面摩耗量が、2.0m
m以下であり、且つ特定の切削条件による耐欠損性(加
工山数)が25個以上であることを特徴とする。
【0010】また、第6発明の工具用窒化珪素焼結体の
製造方法は、ベースとしての窒化珪素原料粉末(A)、
並びに、焼結助剤である、酸化マグネシウム粉末(B
1)と、酸化アルミニウム粉末(B2)と、ジルコニウ
ム及び希土類元素のうちの1種以上の酸化物粉末(B
3)とからなる焼結助剤原料粉末(B)より構成される
粉末組成物(A+B)の成形体を、窒素雰囲気下に、温
度1800〜1950℃、圧力1.5〜9気圧で焼成
し、β−Si3 4 を主体とする粒子相と、該粒子の粒
界に形成されるガラス相により構成される焼結体からな
る工具用焼結体を製造する方法であって、上記酸化マグ
ネシウム粉末の平均粒径が0.05〜1.3μmであ
り、且つ上記窒化珪素原料粉末に添加される焼結助剤
と、上記窒化珪素原料粉末中に存在する酸素の全量が珪
素と反応するとして算出される酸化珪素の量との合計量
を100体積%とした場合に、その10〜30体積%が
焼成工程中に揮散して、上記焼結体中には残存せず、上
記ガラス相を形成するのはその残部の70〜90体積%
であることを特徴とする。
【0011】第7発明は、上記第6発明の方法により製
造される焼結体が、上記焼結体を100体積%とした場
合に、上記ガラス相は4〜8体積%であり、また、上記
焼結体の相対密度が98%以上であることを特徴とし、
第8発明は、焼結体中にはアルミニウムが酸化アルミニ
ウムとして0.2〜2.2体積%含まれることを特徴と
する。更に、第9発明は、上記第6〜8発明の方法によ
り製造される焼結体の原料粉末が、特定のポットと玉石
によって混合されることを特徴とする。また、第10発
明は、第3発明の特定の切削条件による第6〜9発明の
工具用焼結体の逃げ面摩耗量が2.0mm以下であるこ
とを特徴とし、第11発明は、第10発明に加え更に特
定の切削条件による第6〜10発明の工具用焼結体の耐
欠損性(加工山数)が25個以上であることを特徴とす
る。
【0012】上記「窒化珪素原料粉末」としては、通
常、不純物としての酸素量が1〜3%程度であり、その
他の不純物は少なく、また、α−Si3 4 の割合の大
きい、一般に原料粉末として好ましいとされているもの
を、特に限定されることなく使用できる。上記「焼結助
剤」としては、「酸化マグネシウム」と、「酸化アルミ
ニウム」と、「ジルコニウム及び希土類元素のうちの1
種以上の酸化物」とが粉末の形で使用される。ジルコニ
ウム及び希土類元素のうちの1種以上の酸化物として
は、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化イッテ
ルビウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化ジスプロ
シウム等が挙げられる。尚、焼結助剤としては、主とし
て上記酸化物が使用されるが、これに上記各元素の酸窒
化物を併用してもよい。
【0013】焼結助剤は、窒化珪素原料粉末と焼結助剤
原料粉末との合計量を100体積%とした場合に、1.
5〜8体積%、好ましくは2〜6体積%の範囲で使用さ
れる。焼結助剤の使用量が1.5体積%未満では焼結不
良となり、8体積%を越える場合は、高温における焼結
体の強度及び耐摩耗性等が低下するため好ましくない。
また、酸化マグネシウムは他の焼結助剤に比べて揮散し
易く、本発明では必須の焼結助剤として使用される。そ
の使用量は他の酸化物との量比及び窒化珪素原料粉末中
の酸素量等に基づいて決めればよいが、通常、上記合計
量に対して0.3〜3.5体積%の範囲が好ましい。こ
の量が0.3体積%未満では、焼結体が十分緻密化しな
いことがあり、3.5体積%を越える場合は、揮散量が
多くなり、焼結体中にポアを生ずる恐れがある。
【0014】更に、必須の焼結助剤の一つである酸化ア
ルミニウムは、焼結体中のアルミニウムを酸化アルミニ
ウムに換算した値として0.2〜2.2体積%、特に
0.4〜1.0体積%含むこととなる量配合する(実際
には焼結助剤として使用される酸化アルミニウムが1.
0体積%未満の少量では、使用量と焼結体中の酸化アル
ミニウムの量は実質的に同じであり、2.2体積%を越
えて使用しても、焼結体中にはその80〜90%が残存
する。これを目安に配合すればよい。)。この量が0.
2体積%未満では、耐欠損性の向上効果が小さく、2.
2体積%を超えると、添加量の増加に対する耐欠損性の
向上率が小さくなり、むしろ粒界ガラス相の量が増える
ことによる耐摩耗性の低下、特にアブレッシブな摩耗に
対する特性の低下が大きくなるので好ましくない。
【0015】本発明の工具用焼結体において、上記「ガ
ラス相」は実質的に非晶質であって、「焼結体全体を1
00体積%とした場合に、4〜8体積%」であり、特に
4〜6体積%の範囲が好ましい。この量が4体積%未満
であると、焼結体の強度が低下し、8体積%を越える場
合は、耐摩耗性、特にアブレッシブな摩耗に対する特性
が低下する。また、このガラス相の量は、「添加される
焼結助剤と、窒化珪素原料粉末中に存在する酸素の全量
が、珪素と反応したとして算出される量の酸化珪素との
合計量を100体積%とした場合に、その70〜90体
積%」であり、特に70〜80体積%の範囲が好まし
い。
【0016】本発明では、焼成温度が高く、また、焼結
助剤として揮発性の高い酸化マグネシウムを必須成分と
して使用しているため、上記の減量分(添加される焼結
助剤と算出される酸化珪素との合計量の30〜10体積
%)は、窒化珪素と固溶してサイアロンとなっているア
ルミニウム成分を除き、実質的にその殆どが焼結体製造
時に系外へ揮散しており、固溶体等として焼結体中に残
存している割合は少ない。この減量が30体積%を越え
て大きいと、揮散量の増大により焼結体中にポアが生成
し、10体積%未満であると、ガラス相量が多くなり過
ぎ、特に高温における焼結体の強度が低下する。
【0017】次に、本発明の工具用窒化珪素焼結体の製
造方法について述べる。窒化珪素の焼結法として、窒素
雰囲気下、高温、且つ高圧で焼結する方法は通常行われ
ている。それに対して本発明の方法は、焼結助剤として
特定の平均粒径の酸化マグネシウム粉末と、酸化アルミ
ニウム粉末と、ジルコニウム及び希土類元素のうちの1
種以上の酸化物粉末とを使用し、窒素雰囲気下、高温、
且つ数気圧の低圧で焼結することを特徴とする。また、
本発明の製造方法によれば、焼結助剤として揮散し易い
酸化物を使用し、高温下に焼成するため、添加した焼結
助剤等が焼成時に高い割合で揮散し、得られる焼結体中
に占める粒界相(ガラス相)の割合が減少することを特
徴とする。
【0018】より具体的には、先ず、窒化珪素原料粉末
及び焼結助剤原料粉末を秤量し、これを樹脂製ポット又
はアルミナ製ポット等に投入し、非水溶媒及び分散をよ
くするため窒化珪素玉石又はアルミナ玉石等を加えて混
合し、混合物に有機結合剤を添加した後、静水圧成形法
等によって所望の工具形状に成形し、この成形体を「窒
素雰囲気」下、「1800〜1950℃」の温度範囲に
おいて、圧力「1.5〜9気圧」、特に好ましくは2〜
5気圧で焼結する等の方法により耐摩耗性の高い焼結体
を得ることができる。尚、アルミナ製ポットとアルミナ
玉石を使用する場合は、ポット及び玉石からの摩耗アル
ミナの混入量を勘案して適量の酸化アルミニウムを配合
する必要がある。
【0019】上記酸化マグネシウム粉末の平均粒径は
0.05〜1.3μm、特に0.2〜0.5μmの範囲
が好ましい。酸化マグネシウム粉末の粒径を上記範囲と
することにより、焼結助剤が比較的少量であっても、二
次焼成等別段の焼結手段を用いることなく、高温におけ
る強度及び耐摩耗性、特に耐アブレッシブ摩耗に優れた
焼結体を得ることができる。上記平均粒径が0.05μ
m未満では、非常に嵩高い粉体となり、取り扱いが不便
になるとともに均一な分散が難しくなり、1.3μmを
越える場合は、焼結体が十分緻密化しないため好ましく
ない。
【0020】また、上記の焼成温度が1800℃未満で
は焼結体が十分緻密化せず、1950℃を越えると、添
加する焼結助剤と生成する酸化珪素の揮散量が30%を
越えて、焼結体中にポアが多くなる。また、上記の圧力
が1.5気圧未満では、窒化珪素の分解を十分抑えるこ
とができず、9気圧を越える場合は、より耐圧性の高い
焼結装置を必要とし、装置及び操作が高価、複雑とな
る。尚、使用する窒素は可能な限り純粋なものが望まし
く、純度が低い場合は窒化珪素の分解が十分抑制されな
い恐れがある。
【0021】
【作用】窒化珪素は耐熱性が高いだけに、逆に言えば焼
結し難い素材である。しかも融点はなく1800℃程度
から分解が始まるため、これ以上の温度で焼結するため
には、分解を抑制するか、短時間のうちに焼結を完了し
ない限り、強度の高い焼結体を得ることはできない。分
解抑止の一方法として雰囲気圧を上げる方法があり、通
常、数百気圧或いはそれ以上の高圧下に焼結される。そ
れに対して本発明では、焼結助剤として揮発性の高い酸
化物、特に酸化マグネシウムを必須助剤として少量使用
し、窒素雰囲気下、分解温度を越える温度において、十
気圧にも満たない低圧で焼結する。
【0022】そのため、低圧とはいえ窒化珪素の分解が
抑えられるとともに、非常に高温であるため、酸化マグ
ネシウム等の易揮発性の焼結助剤と生成する酸化珪素等
の、窒化珪素等粒子の粒界を形成することとなる成分の
相当量が系外へ揮散し、実際に粒界相として残る焼結助
剤等は少量となる。このように元々添加量の少ない焼結
助剤他が揮散により更に少量となり、焼結助剤の使用量
をより少なくしたのと同じ効果が奏せられ、その粒界相
が実質的に非晶質であるにもかかわらず、高温における
強度が大きく、耐摩耗性に優れたものとなる。また、高
温、低圧で焼成するため、添加する焼結助剤及び生成す
る酸化珪素等の揮散が容易であり、焼結体中のマイクロ
ポアの存在量はJISのA3以下であって、相対密度が
98%以上の焼結体が得られる。
【0023】更に、工具としての窒化珪素焼結体の耐欠
損性を向上させるために、焼結助剤として酸化アルミニ
ウムを使用した場合、その一部はサイアロンとして窒化
珪素と固溶し、他は粒界にガラス相として存在する。こ
のため窒化珪素(サイアロン)の粒内と粒界に存在する
アルミニウム成分が、窒化珪素(サイアロン)粒と粒界
ガラス相の濡れをよくし、窒化珪素をベースとする相と
粒界相との結合を強化する。その効果は、抗折力の変化
として明確には表れないが、工具として耐欠損性の評価
を行うと明瞭になる。
【0024】
【実施例】以下、実施例及び比較例により本発明を具体
的に説明する。 (1) 工具用焼結体の組成及びその製造 窒化珪素原料粉末として、平均粒径0.5μm、α結晶
化率95%以上、酸素量1.5重量%の粉末、焼結助剤
原料粉末として、平均粒径0.3〜0.4μmの酸化マ
グネシウム、酸化アルミニウムの他、酸化ジルコニウ
ム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化セリ
ウム及び酸化ジスプロシウムから選ばれた1種又は2種
の各粉末を使用し、表1(実施例1〜13)及び表2
(比較例1〜8)に示す組成で、樹脂製ポットを使用し
て、窒化珪素玉石、溶媒としてのエタノールとともに1
6時間粉砕混合し、有機結合剤を加え、金型プレスにて
予圧した後、1.5t/cm2 の圧力で冷間静水圧成形
して、工具SNGN432用の形状をした成形体を得
た。この成形体を脱脂後、表1及び表2に示す焼結条件
で焼成し、焼結体を得た。
【0025】尚、比較例4〜5は、表2に示した条件に
て一次焼成後、窒素雰囲気中、温度1800℃、圧力1
00気圧の条件にて二次焼成を行っている。また、比較
例6は、酸化マグネシウム粉末として平均粒径1.5μ
mのものを使用し、温度1950℃、圧力5気圧で焼成
した例であり、比較例7は、酸化ジルコニウムを酸化イ
ットリウムに代えた他は比較例6と同様にして焼結体を
得た。更に、比較例8は、初期配合助剤の合計量が実施
例4〜7と同じ3体積%であって、酸化アルミニウムを
含まない例である。また、表1及び2中の初期ガラス相
量(体積%)は、使用した焼結助剤量と、原料窒化珪素
中に不純物として含まれる酸素が全て酸化珪素として存
在するとして算出される量との合計量を意味する。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】(2) 得られた工具用焼結体の密度及び性状 得られた工具用焼結体の密度をアルキメデス法により測
定し、また、鏡面仕上げした焼結体をエッチング処理
し、走査型電子顕微鏡観察によりガラス相の存在面積割
合を求め、その値を以てガラス相の割合(体積%)とし
た。焼結体中の酸化アルミニウムの定量は蛍光X線法に
よって行った。これらの結果を表3に示す。尚、比較例
6及び7の相対密度はそれぞれ95.9%及び95.4
%であり、十分に緻密化していなかったため、切削試験
は行わなかった。また、粒界相が実質的にガラス相(非
晶質相)であることはX線回折法により確認した。ここ
で、表3の対初期量(%)は、表3のガラス相量を表1
及び表2の初期ガラス相量で除して100倍した値であ
り、焼結助剤と酸化珪素との合計量のうち揮散せずにガ
ラス相を形成している割合を正確に表すものではない
が、その目安とは十分なり得る数値である。
【0029】(3) 切削試験 次に、上記により得られた工具用焼結体を所要の工具形
状に精密に研磨した後、下記の条件により乾式にて10
秒間連続切削試験を行い、1パス切削による、鋳砂の残
る被削材黒皮へ入る際、出る際に生じる最大摩耗量を測
定し、逃げ面摩耗量VB とした。切削試験の結果を表3
に示す。 被削材:FC200 切削速度:300m/分 送り:0.34mm/rev 切込み:1.5mm 刃先:0.15mm×20°
【0030】(4) 切削試験 実施例4〜8と比較例8について下記条件にて耐欠損性
の評価を行い、加工山数をもって耐欠損性の指標とし
た。 被削材:FC200 切削速度:150m/分 送り:0.8mm/rev 切込み:2.0mm 刃先:0.08mm×20° 切削時間:欠損するまで
【0031】
【表3】
【0032】表3の結果から、各実施例の工具用焼結体
は、初期及び焼結体中のガラス相量が多い実施例9〜1
3並びに初期配合及び焼結体中の酸化アルミニウム量が
多い実施例8では、実施例1〜7に比べやや耐摩耗性が
低いものの、いずれの例も逃げ面摩耗量VB が2mm以
下と切削特性に優れたものであることが分かる。また、
アルミニウム量が1.0体積%以下である実施例1〜6
では、いずれも摩耗量が1.60mm未満であり、より
切削特性に優れていることが分かる。更に、耐欠損性も
酸化アルミニウムの少ない実施例4でやや低いものの、
実施例4〜8いずれの場合も優れている。
【0033】これに対して比較例1では原料に酸化マグ
ネシウムが含まれていないため、十分緻密化しておらず
耐摩耗性に劣る。比較例2では、焼成温度が高すぎるた
めに助剤成分の揮発量が多く、鏡面の観察によれば、焼
結体にポアが観察され、耐摩耗性も劣る。また、比較例
3では、添加した焼結助剤の量が多過ぎ、比較例4、5
では、焼結助剤の量が多いうえに、焼結温度も非常に低
く、これらは何れもガラス相の量が8体積%を越えてお
り、耐摩耗性においても劣っていることが分かる。
【0034】また、比較例6及び7の結果から分かるよ
うに、平均粒径が上限値を越えた酸化マグネシウム粉末
を使用して焼結体を製造した場合は、緻密化が十分では
なく、相対密度の小さい焼結体しか得られない。更に、
実施例4〜8と比較例8を比較すると、いずれも助剤系
は同じ(比較例8のみ酸化アルミニウムを含まない。)
であり、助剤の総量も同じであるが、実施例4〜8はい
ずれも酸化アルミニウムを含まない比較例8の約2倍以
上の耐欠損性を示している。尚、本発明においては、前
記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応
じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることが
できる。
【0035】
【発明の効果】第1発明のβ−Si3 4 を主体とする
焼結体からなる工具用窒化珪素焼結体は、高温における
強度が大きく、耐摩耗性を向上させるための被覆層の形
成等、別段の改良手段を要することなく、優れた耐摩耗
性及び耐欠損性を有する。そのため切削工具等として有
用であり、第2発明のようにガラス相量の少ない焼結体
では、より優れた性能の工具用焼結体が得られる。ま
た、第3発明の工具用焼結体は、特定の切削条件による
耐摩耗性に優れた材料であり、第1及び2発明の工具用
材料は第4発明のように第3発明に含まれるものであ
る。更に、第5発明では、上記耐摩耗性に加え、特定の
切削条件による耐欠損性にも優れる工具用焼結体が得ら
れる。
【0036】第6発明の工具用窒化珪素焼結体の製造方
法は、高温、且つ非常に低圧であるため、ホットプレス
法、熱間静水圧法、ガス圧焼結法のような高い圧力下に
焼結する方法と比べて、設備にかかる費用は大幅に少な
く、操作のうえでもたいへん容易であると利点がある。
また、第7発明のガラス相量及び焼結体の相対密度、第
8発明のアルミニウム成分量であれば、第6発明の、特
別な装置、操作を要さない方法であっても、より優れた
特性の工具用焼結体を得ることができる。更に、第9発
明によれば、本発明の工具用焼結体は、特定のポットと
玉石との組み合わせにより容易に混合し、製造すること
ができ、以上第6〜9発明の方法によれば、第10又は
11発明のように、特定の切削条件において優れた耐摩
耗性又はそれに加えて優れた耐欠損性をも有する工具用
焼結体を製造することができる。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 β−Si3 4 を主体とする粒子相と、
    該粒子の粒界に形成されるガラス相とからなる工具用窒
    化珪素焼結体において、 上記ガラス相は、焼結助剤構成成分である、酸化マグネ
    シウム及び酸化アルミニウムと、ジルコニウム及び希土
    類元素のうちの1種以上の酸化物と、窒化珪素原料粉末
    中に存在する酸素と珪素とが反応して生成する酸化珪素
    とを含み、上記焼結体を100体積%とした場合に、上
    記ガラス相は4〜8体積%であり、また、上記窒化珪素
    原料粉末に添加される焼結助剤と、上記酸素の全量が珪
    素と反応するとして算出される酸化珪素の量との合計量
    を100体積%とした場合に、その10〜30体積%が
    揮散して上記焼結体中には残存せず、且つ上記ガラス相
    を形成するのはその残部の70〜90体積%であり、上
    記焼結体の相対密度が98%以上であることを特徴とす
    る工具用窒化珪素焼結体。
  2. 【請求項2】 上記焼結体を100体積%とした場合
    に、上記ガラス相は4〜6体積%であり、且つ上記窒化
    珪素原料粉末に添加される焼結助剤と、上記酸素の全量
    が珪素と反応するとして算出される酸化珪素の量との合
    計量を100体積%とした場合に、上記ガラス相はその
    70〜80体積%である請求項1記載の工具用窒化珪素
    焼結体。
  3. 【請求項3】 β−Si3 4 を主体とする粒子相と、
    該粒子の粒界に形成されるガラス相とからなり、下記の
    切削条件による逃げ面摩耗量が2.0mm以下であるこ
    とを特徴とする工具用窒化珪素焼結体。 切削条件: 被削材;切削の入り口、出口両端面に鋳砂の残ったFC
    200、切削速度;300m/分、送り;0.34mm
    /rev、切込み;1.5mm、工具形状;SNGN4
    32、刃先;0.15mm×20°、切削時間;連続1
    0秒
  4. 【請求項4】 請求項3記載の切削条件による上記焼結
    体の逃げ面摩耗量が、2.0mm以下である請求項1又
    は2記載の工具用窒化珪素焼結体。
  5. 【請求項5】 請求項3記載の切削条件による上記焼結
    体の逃げ面摩耗量が、2.0mm以下であり、且つ下記
    の切削条件による耐欠損性(加工山数)が25個以上で
    ある請求項1、2、3又は4記載の工具用窒化珪素焼結
    体。 切削条件: 被削材;FC200、切削速度;150m/分、送り:
    0.8mm/rev、切込み;2.0mm、刃先;0.
    08mm×20°、工具形状;SNGN432、切削時
    間;欠損するまで
  6. 【請求項6】 窒化珪素原料粉末、並びに、焼結助剤で
    ある、酸化マグネシウム粉末と、酸化アルミニウム粉末
    と、ジルコニウム及び希土類元素のうちの1種以上の酸
    化物粉末とからなる焼結助剤原料粉末より構成される粉
    末組成物の成形体を、窒素雰囲気下に、温度1800〜
    1950℃、圧力1.5〜9気圧で焼成し、β−Si3
    4 を主体とする粒子相と、該粒子の粒界に形成される
    ガラス相とからなる工具用窒化珪素焼結体を製造する方
    法であって、上記酸化マグネシウム粉末の平均粒径が
    0.05〜1.3μmであり、且つ上記窒化珪素原料粉
    末に添加される焼結助剤と、上記窒化珪素原料粉末中に
    存在する酸素の全量が珪素と反応するとして算出される
    酸化珪素の量との合計量を100体積%とした場合に、
    その10〜30体積%が焼成工程中に揮散して、上記焼
    結体中には残存せず、上記ガラス相を形成するのはその
    残部の70〜90体積%であることを特徴とする工具用
    窒化珪素焼結体の製造方法。
  7. 【請求項7】 上記焼結体を100体積%とした場合
    に、上記ガラス相は4〜8体積%であり、また、上記焼
    結体の相対密度が98%以上である請求項6記載の工具
    用窒化珪素焼結体の製造方法。
  8. 【請求項8】 上記焼結体を100体積%とした場合
    に、アルミニウムが酸化アルミニウムに換算して0.2
    〜2.2体積%含まれている請求項6又は7記載の工具
    用窒化珪素焼結体の製造方法。
  9. 【請求項9】 上記窒化珪素原料粉末、並びに、焼結助
    剤である、上記酸化マグネシウム粉末と、上記酸化アル
    ミニウム粉末と、上記ジルコニウム及び希土類元素のう
    ちの1種以上の酸化物粉末とからなる上記焼結助剤原料
    粉末は、樹脂製ポットと窒化珪素玉石又はアルミナ製ポ
    ットとアルミナ玉石によって混合される請求項6、7又
    は8記載の工具用窒化珪素焼結体の製造方法。
  10. 【請求項10】請求項3記載の切削条件による上記焼結体
    の逃げ面摩耗量が、2.0mm以下である請求項6、
    7、8又は9記載の工具用窒化珪素焼結体の製造方法。
  11. 【請求項11】 請求項3記載の切削条件による上記焼結
    体の逃げ面摩耗量が、2.0mm以下であり、且つ請求
    項5記載の切削条件による耐欠損性(加工山数)が25
    個以上である請求項6、7、8、9又は10記載の工具
    用窒化珪素焼結体の製造方法。
JP6159557A 1994-06-17 1994-06-17 工具用窒化珪素焼結体及びその製造方法 Pending JPH082971A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6159557A JPH082971A (ja) 1994-06-17 1994-06-17 工具用窒化珪素焼結体及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6159557A JPH082971A (ja) 1994-06-17 1994-06-17 工具用窒化珪素焼結体及びその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH082971A true JPH082971A (ja) 1996-01-09

Family

ID=15696346

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP6159557A Pending JPH082971A (ja) 1994-06-17 1994-06-17 工具用窒化珪素焼結体及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH082971A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002012474A (ja) * 2000-06-22 2002-01-15 Ngk Spark Plug Co Ltd 窒化珪素質焼結体及びそれを用いた切削工具
US6528113B1 (en) 1999-08-23 2003-03-04 Teijin Limited Process for producing an adhesive-treated polyester fiber cord

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6528113B1 (en) 1999-08-23 2003-03-04 Teijin Limited Process for producing an adhesive-treated polyester fiber cord
JP2002012474A (ja) * 2000-06-22 2002-01-15 Ngk Spark Plug Co Ltd 窒化珪素質焼結体及びそれを用いた切削工具

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO1997003031A1 (en) Aluminum nitride sinter and process for the production thereof
JP4723127B2 (ja) アルミナセラミックス焼結体及びその製造方法並びに切削工具
KR960016070B1 (ko) 질화알루미늄 소결체 및 그 제조방법
JPS61111970A (ja) 窒化珪素焼結体及び製造法
JP2005281084A (ja) 焼結体およびその製造方法
EP0185224A2 (en) Abrasion resistant silicon nitride based articles
JP3588162B2 (ja) 窒化珪素質切削工具およびその製造方法
JPH05301776A (ja) 立方晶窒化硼素質焼結体
JPH082971A (ja) 工具用窒化珪素焼結体及びその製造方法
JP3145470B2 (ja) 炭化タングステン−アルミナ質焼結体およびその製法
JP2006206376A (ja) セラミック焼結体、切削インサート及び切削工具
JPH07149569A (ja) 耐磨耗性窒化珪素焼結体及びその製造方法
JP2849055B2 (ja) サイアロン基焼結体および被覆焼結体
US6010777A (en) Titanium carbo-nitride complex silicon nitride tool
JP2684250B2 (ja) 窒化珪素質焼結体及びその製造方法
JP7336063B2 (ja) 立方晶窒化硼素焼結体及び被覆立方晶窒化硼素焼結体
JP3975016B2 (ja) 窒化珪素焼結体及びその製造方法
JPH07267738A (ja) 耐摩耗性窒化珪素質焼結体及びその製造方法
JPH06298568A (ja) ウイスカー強化サイアロン基焼結体およびその被覆焼結体
JP2003267787A (ja) β´−サイアロン基セラミックス工具およびその製造方法
JP5289184B2 (ja) 高熱伝導性窒化けい素焼結体の製造方法
JPH09301773A (ja) 工具用窒化珪素焼結体
JPH06116045A (ja) 窒化珪素焼結体及びその製造方法
JP2001322009A (ja) アルミナセラミックス切削工具およびその製造方法
JPH11268957A (ja) 窒化珪素工具

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20040325

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20040420

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20041130