JPH08283922A - 熱交換器用アルミニウム合金製高強度高耐熱性フィン材の製造方法 - Google Patents

熱交換器用アルミニウム合金製高強度高耐熱性フィン材の製造方法

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JPH08283922A
JPH08283922A JP11387595A JP11387595A JPH08283922A JP H08283922 A JPH08283922 A JP H08283922A JP 11387595 A JP11387595 A JP 11387595A JP 11387595 A JP11387595 A JP 11387595A JP H08283922 A JPH08283922 A JP H08283922A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 真空ろう付けを施して使用される熱交換器用
フィン材として、ろう付け前の熱交換器組立時における
フィン強度が高くしかもろう付け時の高温による座屈変
形も少ない、薄肉化可能なフィン材を提供する。 【構成】 Mn1.0〜2.0%、Si0.2〜0.8
%、Cu0.05〜0.20%、Zn0.2%以上0.
5%未満を含み、Feが0.3%以下に規制されたAl
合金の鋳塊に、400〜550℃×1〜30時間の均質
化処理を施し、熱間圧延の開始温度を400〜550
℃、終了温度を300℃以下とし、熱間圧延後に50%
以上の冷間圧延を施してから、材料を完全再結晶させな
いように100〜300℃未満の温度域で中間焼鈍を施
し、さらに5〜50%の圧延率で最終冷間圧延を行な
い、板厚が0.03〜0.10mmで引張強さ200N
/mm2以上のフィン材を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はベア材(裸材)あるい
はブレージングシートの芯材の形態で自動車用クーラの
コンデンサやエバポレータ等の各種の熱交換器のフィン
として、真空ろう付けして用いられるアルミニウム合金
フィン材に関するものであり、特に板厚を薄肉化した場
合における熱交換器組立時のフィンの変形、座屈を防ぐ
ために真空ろう付け前の強度(元板強度)を高め、しか
も真空ろう付け時の高温による耐座屈性を高めた熱交換
器用フィン材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に自動車のラジエータ、インターク
ーラ、エバポレータ、コンデンサ、オイルクーラ等の熱
交換器としては、従来からAl合金製の熱交換器が広く
使用されている。このようなAl合金製の熱交換器にお
いては、水等の温度媒体(作動流体)が流通するチュー
ブもしくはコアプレートあるいはパイプにアルミニウム
合金からなるフィン材をろう付けして組立てるのが通常
であり、この場合のフィン材としては、ブレージングシ
ート、すなわちアルミニウム合金芯材の片面もしくは両
面にアルミニウム合金ろう材からなる皮材を予め被着さ
せた合せ板として用いたり、あるいは裸のままのベア材
として用いることが行なわれている。
【0003】ところで各熱交換器のうちでも、一般に真
空ろう付け法によりろう付けされる積層型エバポレータ
では、3003合金からなる芯材にろう材として400
4合金あるいは4104合金をクラッドしたブレージン
グシートがコアプレートとして使用されており、またこ
のコアプレートに真空ろう付けするフィン材としては、
Al−Mn−Zn−In系合金あるいはAl−Mn−Z
n−Sn系合金を使用するのが一般的である。なおこれ
らのフィン材用合金において、InやSnは、温度媒体
通路(冷媒通路)を構成しているコアプレートよりもフ
ィンの電位を卑にして、コアプレートに対する犠牲陽極
効果を作用させるために添加されており、またZnも犠
牲陽極効果のために多量に添加されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前述のような真空ろう
付けされる積層型エバポレータに従来使用されているA
l−Mn−Zn−In系合金やAl−Mn−Zn−Sn
系合金からなるフィン材は、SnやInを添加するため
製造コストが高くならざるを得ない問題がある。またこ
の種のフィン材ではZnが多量に含有されるが、Znが
多量に添加されれば、真空ろう付け時におけるZnの蒸
発量が多くなってろう付け炉内が汚染され、そのためろ
う付け炉のクリーニング回数を多くする必要があり、ラ
ンニングコストの増大を招く問題がある。さらにこの種
のフィン材に添加されているInやSnは、一般的な用
途のアルミニウム合金ではほとんど添加されることのな
い元素であるため、この種のフィン材のスクラップや製
造工程中の屑などを返り材として再使用するにあたって
は、他の一般的な用途に使用することはできず、またそ
のためこの種のフィン材の返り材が一般的なアルミニウ
ム合金の返り材と混合されることを避けなければならな
いなど、厳密な返り材管理が必要となる問題もある。
【0005】ところで近年、積層型エバポレータのコア
プレートとしては、3003合金よりも耐食性の優れた
Al−Mn−Cu系合金やAl−Mn−Cu−Ti系合
金が使用されることが多くなっている。これらの系のコ
アプレート用合金の場合、Cuが0.2〜0.8%程度
添加されるため、コアプレートそのものの電位が300
3合金よりもさらに貴となるから、コアプレートにろう
付けされるフィン材として、In,Snや多量のZnを
添加したものを用いなくても、フィン材の電位をコアプ
レートよりも充分に卑に保って、コアプレートに対する
フィン材による犠牲陽極効果を充分に発揮することが可
能となり、そこでこれらの系の合金をコアプレートに用
いた場合には、フィン材としてSnやInを含有せずま
た多量のZnを含有しない3003合金を使用すること
が可能となっている。
【0006】しかしながら従来の3003合金では、フ
ィン材として使用した場合、最近のフィン材薄肉化の要
求に応えられないという問題がある。すなわち従来一般
の自動車用熱交換器フィン材では、例えばブレージング
シート芯材の場合板厚が0.16mm程度が一般的であ
ったが、最近の自動車用熱交換器においては、軽量、小
型化が強く要求されており、そこで熱交換器用フィン材
についても従来よりもさらに薄肉化すること、具体的に
は0.03〜0.1mm程度まで薄肉化することが望ま
れている。そのためフィン材成形時における変形、座屈
の発生を防止するべく、ろう付け前の元板強度について
従来よりも一層の高強度化を図ることが要求され、また
高温のろう付け時の座屈変形を防止するべく耐熱性(耐
高温座屈性)を向上させることが望まれているが、従来
の3003合金では、0.03〜0.1mm程度まで薄
肉化した場合、高強度化を図ろうとすれば耐高温座屈性
が低下し、そのため熱交換器組立時におけるフィン材の
変形、座屈の発生防止とろう付け時の高温による座屈の
発生防止とを同時に図ることは困難であり、結局0.0
3〜0.1mm程度までフィン材の薄肉化を図ること
は、実際上困難であった。
【0007】この発明は以上の事情を背景としてなされ
たもので、Al−Mn−Cu系合金やAl−Mn−Cu
−Ti系合金を芯材とするブレージングシートからなる
コアプレート等の温度媒体通路を用いた積層型エバポレ
ータやラジエータ、あるいはAl−Cu系合金押出し多
穴管を温度媒体通路に用いた熱交換器向けの真空ろう付
け用フィン材として、ろう付け前の熱交換器組立時にお
けるフィン材強度(元板強度)が高く、しかも耐高温座
屈性が優れていてろう付け時の高温による座屈変形も少
なく、さらには製造コストも低廉でかつ返り材の管理・
処理も容易なアルミニウム合金製フィン材を提供するこ
とを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】前述のような課題を解決
するため、本願発明者等が種々実験・検討を重ねた結
果、Al−Mn−Si系合金をベースとしてフィン材の
合金成分を適切に調整すると同時に、フィン材製造プロ
セスを適切に選択しかつ各工程の条件を適切に定めるこ
とによって、ろう付け前の強度が高くしかもろう付時の
高温による座屈変形も少なく、さらには製造コストも低
廉でかつ返り材の管理・処理も容易で、しかもフィン材
として充分な犠牲陽極効果を有していて熱交換器に充分
な耐食性を与えることのできるフィン材が得られること
を見出し、この発明をなすに至った。
【0009】具体的には、この発明の熱交換器用アルミ
ニウム合金製高強度高耐熱性フィン材の製造方法は、M
n1.0〜2.0%、Si0.2〜0.8%、Cu0.
05〜0.20%、Zn0.2%以上0.5%未満を含
有し、しかもFeが0.3%以下に規制され、残部がA
lおよび不可避的不純物よりなる合金の鋳塊に対して4
00〜550℃で1〜30時間均質化処理を施し、さら
に熱間圧延を施すにあたって、熱間圧延開始温度を40
0〜550℃とするとともに熱間圧延終了温度を300
℃以下とし、熱間圧延終了後50%以上の圧延率で冷間
圧延を施してから、100℃以上300℃未満の温度域
で中間焼鈍を施し、さらに5〜50%の圧延率で冷間圧
延を行なって、板厚が0.03〜0.10mmの範囲内
でかつ引張強さが200N/mm2 以上のフィン材を得
ることを特徴とするものである。
【0010】
【作用】先ずこの発明における合金の成分組成の限定理
由について説明する。
【0011】Mn:Mnはこの発明で用いるフィン材合
金の基本的な合金成分であり、Al−Mn−Si系の微
細な金属間化合物析出物を生成して、元板(ろう付け前
の板)の強度およびろう付け後の強度を向上させ、また
成形性も向上させるに有効である。またAl−Mn−S
i系の微細な金属間化合物は、ろう付け時の再結晶粒を
粗大化させることを通じて、耐高温座屈性の向上にも寄
与する。Mn量が1.0%未満ではこれらの効果が充分
ではなく、一方2.0%を越えれば鋳造時に粗大な金属
間化合物が生成されて、圧延性が劣化し、板材の製造が
困難となる。したがってMn量は1.0〜2.0%の範
囲内とした。
【0012】Si:Siもこの発明に用いるフィン材合
金の基本的な合金成分であり、Al−Mn−Si系の微
細な金属間化合物析出物を生成して、元板強度およびろ
う付け後の強度を向上させるとともに、前述のようにろ
う付け時の再結晶粒の粗大化を通じて耐高温座屈性を向
上させるために有効な元素である。またSiは、Mnの
固溶量を減少させて熱伝導性を向上させ、さらに電位を
卑にしてフィン材による犠牲陽極効果を高めるために有
効である。Si量が0.2%未満ではこれらの効果が充
分に得られず、一方0.8%を越えれば、ろう付け時に
おいてろう材成分、特にSiのフィン材中への侵入(一
般にはこれをエロージョンと称す)によるフィンの溶損
や耐食性低下が発生してしまうおそれがある。したがっ
てSi量は0.2〜0.8%の範囲内とした。
【0013】Cu:Cuは元板強度およびろう付け後の
強度を向上させるに有効な元素である。Cu量が0.0
5%未満ではこれらの効果が少なく、一方0.2%を越
えて添加されればフィン材の電位が貴になってフィン材
による犠牲陽極効果が低下する。したがってCu量は
0.05〜0.2%の範囲内とした。
【0014】Zn:Znはフィン材の電位を卑にして、
犠牲陽極効果を高めるために有効な元素である。またZ
nは、真空ろう付け中にフィン材中から一部蒸発して真
空ろう付け炉を汚染させる原因となることがあるが、ろ
う材としてAl−Si−Mg系合金を用いている場合、
Al−Si−Mg系ろう材から蒸発するMgとフィン材
から蒸発するZnが反応してMg−Zn化合物を形成し
て炉壁に固着する。この場合のMg−Zn化合物からな
る固着物は、Mg固着物やZn固着物と比較して容易に
除去できるから、真空ろう付け炉の清掃時間が短縮さ
れ、ランニングコストが低減される。Zn量が0.2%
未満ではこれらの効果が充分に得られず、一方0.5%
以上となれば、真空ろう付け炉の汚染が激しくなってし
まう。したがってZn量は0.2%以上0.5%未満の
範囲内とした。
【0015】Fe:Feは通常のアルミニウム合金にお
いても不可避的不純物元素あるいは積極添加元素として
含有される元素であるが、0.3%を越えて含有されれ
ば、Al−Mn−Fe系の粗大金属間化合物晶出物を形
成して、ろう付け時の再結晶粒が微細になり過ぎ、耐高
温座屈性が著しく低下する。そこでこの発明の場合、F
eは不純物として0.3%以下に規制する必要がある。
【0016】以上の各元素のほかはAlおよびFe以外
の不可避的不純物とすれば良い。
【0017】次にこの発明における製造プロセスについ
て説明する。
【0018】一般に熱交換器用フィン材は、溶解鋳造→
均質化処理→熱間圧延→冷間圧延→中間焼鈍→最終冷間
圧延のプロセスを適用して、H1nの硬質テンパー状
態、すなわち加工硬化によって機械的性質を所定の範囲
内に調整した状態の製品として製造されるのが通常であ
る。そしてこの場合の中間焼鈍は、一般には320〜4
50℃で0.5〜6時間程度の条件(例えば特開平2−
129347号参照)を適用するのが通常であり、この
ような中間焼鈍を適用した場合、材料の再結晶が完全に
行なわれて、均一な再結晶組織が得られる。しかしなが
らこのような従来のH1nテンパー材製造プロセスで
は、ろう付け前の元板強度、耐高温座屈性の両者を同時
に満たすことは困難であった。そこでこの発明では、合
金の成分組成を前述のように調整すると同時に、製造プ
ロセス条件、特に中間焼鈍条件および最終冷間圧延条件
を適切に設定することによって、元板強度、耐高温座屈
性をともに改善することができたのである。すなわち、
中間焼鈍温度を300℃未満として完全な再結晶を起こ
さないように調整し、さらに圧延率5〜50%の適切な
最終冷間圧延を施すことによって、元板強度向上および
耐高温座屈性向上を図り得たのである。さらに具体的に
各プロセスについて説明する。
【0019】先ず溶解・鋳造工程は従来の通常の方法に
従ってDC鋳造法(半連続鋳造法)を適用すれば良い。
【0020】得られた鋳塊に対しては均質化処理(均熱
処理)を施す。この均質化処理は、単に鋳塊の組織の均
一化を図るためばかりでなく、Al−Mn系金属間化合
物(Al−Mn、Al−Mn−Fe、Al−Mn−Fe
−Si、Al−Mn−Si等)を微細に析出させて、ろ
う付け時における再結晶粒を粗大にし、もって耐高温座
屈性を改善するとともに、ろう付け後の強度を高めるた
めに必要な工程であり、耐高温座屈性向上、ろう付け後
強度の向上のためには均質化処理を400〜550℃の
範囲内で1〜30時間行なう必要がある。均質化処理の
温度が400℃未満では、Al−Mn系金属間化合物の
析出が充分に行なわれないため、ろう付け時の再結晶粒
が微細になり、耐高温座屈性が著しく低下してしまう。
一方550℃を越えれば、析出するAl−Mn系金属間
化合物が粗大となってろう付け後強度が低下し、また同
時にろう付け時の再結晶粒が微細になり、耐高温座屈性
が低下する。また均質化処理の時間が1時間未満では、
Al−Mn系金属間化合物の析出が充分ではないため、
耐高温座屈性やろう付け後強度の向上に及ぼす均質化処
理の効果が少ない。一方30時間を越えて均質化処理を
行なっても、前述のような効果が飽和し、消費エネルギ
の点から不経済となるだけである。なおこの均質化処理
の後には後述するように熱間圧延を行なうが、必要な熱
間圧延開始温度を得るための加熱と兼ねて均質化処理を
行ない、均質化処理に引続いて直ちに熱間圧延を行なっ
ても良く、あるいは均質化処理後に一旦冷却し、改めて
熱間圧延開始温度に加熱して熱間圧延を行なっても良
い。
【0021】均質化処理後の熱間圧延は、良好な熱間圧
延性を得ると同時に良好な耐高温座屈性、ろう付け後強
度を得るために、その開始温度を400〜530℃の範
囲内とする必要がある。熱間圧延開始温度が400℃未
満では、熱間圧延時の耳割れが激しくなって圧延が困難
となり、一方熱間圧延開始温度が530℃を越えれば、
ろう付け後の強度が低下するとともに、ろう付け後の再
結晶粒が微細になって耐高温座屈性が低下する。さらに
この熱間圧延における終了温度は300℃以下とする必
要がある。熱間圧延終了温度が300℃を越える場合、
熱間圧延後の熱延コイルの冷却中にAl−Mn系析出物
が析出して粗大化するため、ろう付け後の強度が低下し
かつ耐高温座屈性が低下してしまう。
【0022】熱間圧延後には、中間焼鈍の前に冷間圧延
(一次冷間圧延)を行なって中間板厚とする。この一次
冷間圧延は、圧延率を50%以上とする必要がある。こ
の一次冷間圧延率が50%未満では、元板強度が充分に
向上せず、また耐高温座屈性が低下する。
【0023】一次冷間圧延後の中間焼鈍は、100℃以
上300℃未満の温度域で行なって、材料を完全再結晶
組織とさせない状態で焼鈍する必要がある。300℃以
上の高温で焼鈍した場合には、中間焼鈍時に材料が完全
再結晶するから、最終冷間圧延板で引張強さ200N/
mm2 以上の強度を得るためには最終冷間圧延率を80
%以上とする必要が生じるが、このように最終冷間圧延
率を高くすれば耐高温座屈性が低下してしまう。一方中
間焼鈍温度が100℃未満では組織的変化がほとんど生
じず、耐高温座屈性が向上しない。なお中間焼鈍の保持
時間は特に限定しないが、通常は10時間以下0.5時
間以上が好ましい。10時間を越えて保持しても徐々に
軟化が進行するだけであって、耐高温座屈性向上に対す
る著しい寄与はなく、したがって生産コストの上昇を招
くだけであるから、10時間以下の保持とすることが好
ましい。また中間焼鈍の保持時間が0.5時間未満では
冷間圧延性の向上が充分に図れないおそれがある。
【0024】中間焼鈍後には、0.03〜0.10mm
の最終板厚まで冷間圧延(最終冷間圧延)を行なう。こ
の最終冷間圧延の圧延率は5%以上50%以下とする必
要がある。最終冷間圧延率が5%未満では、元板強度と
して200N/mm2 以上の値を達成することが困難と
なる。一方最終冷間圧延率が50%を越えれば、ろう付
け時の再結晶粒が微細になって耐高温座屈性が低下して
しまう。
【0025】なお以上のようなプロセスを経て得られる
0.03〜0.10mmの板厚のフィン材は、元板強度
として200N/mm2 以上が必要である。元板強度が
200N/mm2 未満では、0.03〜0.10mmの
薄肉板においてはフィン材成形時における成形不良の発
生率が高くなり、また熱交換器の組立時のフィンの座屈
が発生しやすくなり、いずれも製品歩留りが低下してし
まう。
【0026】以上のようにして得られたフィン材は、そ
のままベア材として熱交換器に用いても良く、あるいは
Al−Si−Mg系等のろう材とクラッドしてブレージ
ングシートとして用いても良い。
【0027】
【実施例】
実施例1:表1の合金No.1〜No.9に示す成分組
成の各合金について、常法に従って溶解鋳造し、得られ
た鋳塊に対して均質化処理(均熱処理)を行ない、熱間
圧延を施して板厚2.0〜2.5mmの熱延板を得た。
その後、一次冷間圧延、中間焼鈍および最終冷間圧延を
施して、板厚0.070mmのベアフィン材とした。こ
のような工程における均質化処理(均熱処理)の温度、
熱間圧延開始温度、熱間圧延終了温度、熱間圧延上り板
厚、中間焼鈍時の板厚(一次冷間圧延後の板厚)、中間
焼鈍までの一次冷間圧延率、中間焼鈍温度、最終冷間圧
延率を表2の製造条件A〜Qに示す。なおいずれの場合
も均質化処理の加熱保持時間は10時間、中間焼鈍の加
熱保持時間は5時間とした。
【0028】各成分組成の合金No.1〜No.9を用
いて、それぞれ製造条件A〜Qのいずれかによって製造
した各フィン材につき、引張試験を行なって元板強度
(引張強さ)を測定した。またろう付け後の強度を調べ
るため、5×10-5Torrの真空中で600℃×3分
間の真空ろう付けに相当する加熱処理を行ない、引張試
験を行なって真空ろう付け後相当の引張強さを測定し
た。
【0029】さらに熱交換器としての耐食性評価、特に
フィン材による犠牲陽極効果評価のために、各フィン材
の孔食電位を調べた。すなわち、一般にフィン材は温度
媒体(作動流体)通路用のチューブやコアプレートとろ
う付けされて、温度媒体通路に対して犠牲陽極効果を作
用させ、チューブやコアプレートを防食しているが、そ
の場合のフィン材の犠牲陽極効果を発揮させるために
は、温度媒体通路に対してフィン材の孔食電位が30m
V以上卑であることが必要である。そしてこの発明で対
象とする熱交換器温度媒体通路材としては、Cuを0.
2〜0.8%程度含有するAl−Mn−Cu(−Ti)
系合金が用いられるが、この合金の孔食電位は−660
mV程度であり、この温度媒体通路材に対してフィン材
による充分な犠牲陽極効果を発揮させるためには、フィ
ン材の孔食電位が−690mV以上の卑であることが必
要となる。そこでこの実施例では、フィン材の孔食電位
が−690mV以上の卑であるか否かで熱交換器として
の耐食性を評価することができる。なお孔食電位の測定
は、2.67%AlCl3 水溶液中で行なった。
【0030】さらに、ろう付け時における耐高温座屈性
能を評価するため、フィン材ろう付け時に相当する条件
でのサグ量を調べた。すなわち、試料を幅20mm、長
さ70mmに切断し、その一端を治具で固定して60m
mの長さに水平に突き出し、5×10-5Torrの真空
中で600℃×3分間の加熱を行ない、突き出した先端
の垂下量(サグ量)を測定した。
【0031】また、フィン材をコルゲート加工し、芯材
としてAl−1%Mn−0.5%Cu−0.10%Ti
合金を用いかつろう材とて4104合金を用いた厚さ
0.6mmのブレージングシート上に載置して、窒素ガ
ス雰囲気中で600℃×3分間のろう付け加熱を行なっ
た後、ろう付け状況をミクロ観察して真空ろう付け時の
溶融ろうによるフィン材へのエロージョン性を調べた。
さらにこれらの真空ろう付けサンプルを、720時間の
CASS試験に供し、ブレージングシートとフィンとの
接合面の最大腐食ピット深さを測定した。
【0032】以上の各調査結果を表3に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】表3から、この発明で規定する成分組成条
件、製造プロセス条件を満たして得られたフィン材(本
発明例)では、元板の強度が200N/mm2 を大幅に
越えるとともにろう付け後の強度も確実に100N/m
2 を越え、しかもサグ量も15mm以下で耐高温座屈
性が優れ、さらに自然電位が−690mVよりも確実に
卑であって犠牲陽極効果を充分に有しているとともに、
CASS試験による接合面の腐食深さも小さく、熱交換
器としての耐食性にも優れており、さらにろう付け時の
ろう材のエロージョンもほとんどないことが判明した。
これに対し成分組成条件、製造プロセス条件のいずれか
がこの発明で規定する範囲を外れた比較例は、上記のい
ずれかの性能が劣っていた。
【0037】
【発明の効果】前述の各実施例から明らかなように、こ
の発明の方法により得られた熱交換器用フィン材は、ろ
う付け前の強度(元板強度)が高く、板厚が0.1mm
以下と薄肉であっても、熱交換器組立時において変形、
座屈するおそれが極めて少なく、しかも耐高温座屈性も
優れていて、ろう付け時の高温によって座屈するおそれ
も少ない。そのほか、この発明の方法により得られたフ
ィン材は、ろう付け後の強度も高く、また熱交換器とし
てコアプレートやチューブとろう付けした後におけるこ
れらのチューブやコアプレートに対する犠牲陽極効果も
充分に発揮することができるとともにろう材によるエロ
ージョンも極めて少ない。さらにこの発明による熱交換
器用フィン材は、SnやIn等のアルミニウム合金添加
元素として特殊な元素を添加しておらず、そのため材料
コストが特に高くなることがないとともに、返り材の管
理・処理が容易であり、しかもZnを多量に含有しない
ため、真空ろう付け炉の汚染も少ないから、炉の清掃に
要するコストの上昇を招くこともない。したがってこの
発明の方法によって得られたフィン材を熱交換器に用い
れば、フィン材や熱交換器自体に要求される諸性能を損
なったりあるいは高コスト化を招いたりすることなく、
実際に0.1mm以下にフィン材を薄肉化して、熱交換
器の軽量化、低コスト化を図ることができる。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mn1.0〜2.0%(重量%、以下同
    じ)、Si0.2〜0.8%、Cu0.05〜0.20
    %、Zn0.2%以上0.5%未満を含有し、しかもF
    eが0.3%以下に規制され、残部がAlおよび不可避
    的不純物よりなる合金の鋳塊に対して400〜550℃
    で1〜30時間均質化処理を施し、さらに熱間圧延を施
    すにあたって、熱間圧延開始温度を400〜550℃と
    するとともに熱間圧延終了温度を300℃以下とし、熱
    間圧延終了後50%以上の圧延率で冷間圧延を施してか
    ら、100℃以上300℃未満の温度域で中間焼鈍を施
    し、さらに5〜50%の圧延率で冷間圧延を行なって、
    板厚が0.03〜0.10mmの範囲内でかつ引張強さ
    が200N/mm2 以上のフィン材を得ることを特徴と
    する、熱交換器用アルミニウム合金製高強度高耐熱性フ
    ィン材の製造方法。
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