JPH0827517A - 降伏強度と靭性の優れた9%Ni鋼の熱処理法 - Google Patents

降伏強度と靭性の優れた9%Ni鋼の熱処理法

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JPH0827517A
JPH0827517A JP16402594A JP16402594A JPH0827517A JP H0827517 A JPH0827517 A JP H0827517A JP 16402594 A JP16402594 A JP 16402594A JP 16402594 A JP16402594 A JP 16402594A JP H0827517 A JPH0827517 A JP H0827517A
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heating
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JP16402594A
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Naoki Saito
直樹 斉藤
Yutaka Tsuchida
豊 土田
Manabu Hoshino
学 星野
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 熱間加工後の9%Ni鋼の強度、靭性を改善
する熱処理法を提供する。 【構成】 9%Ni鋼において、焼入れおよびAc1
態点〜Ac3 変態点間に加熱して焼入れる中間焼入れ処
理をする際、それぞれの熱処理を500℃以上の温度範
囲で50℃/分以上の加熱速度で行い、その後、Ac1
変態点以下の温度で焼戻しをする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は9%Ni鋼において、靭
性を損なわずに優れた降伏強度を有する鋼板を製造する
ための熱処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】エネルギー需要の増大および地球環境へ
の配慮から、クリーンなエネルギー源としての天然ガス
の需要が急増している。従って、近年、LNG貯蔵用タ
ンクの建設が国内外で積極的に推進されており、タンク
建設時に使用される9%Ni鋼の需要も増加している。
同時に、タンク敷地の有効利用から、建設されるタンク
が大型化される傾向にあり、降伏強度の高い鋼板の製造
が望まれている。このようなタンクでは、脆性破壊に対
する安全性の確保から、主に靭性を改善すべく多くの研
究がなされてきた。その中でも靭性を低下させずに、高
強度化、あるいは厚肉化を図った例として、特開平4−
371520号公報記載のごとく、9%Ni鋼にMo:
0.04〜0.5%添加したスラブを850〜1200
℃に加熱し、700〜850℃での累積圧下率が30〜
80%の圧延を施し、その後、Ac3 変態点〜850℃
に加熱して冷却する焼入れ処理、Ac1 変態点〜Ac3
変態点間に加熱して冷却する中間焼入れ処理、およびA
1 変態点以下で焼戻すことを特徴とする母材および溶
接熱影響部のCTOD特性の優れた厚肉9%Ni鋼の製
造方法などのように、微量な合金元素およびプロセス条
件を工夫することで、靭性を改善しようとするものがあ
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これらの方法は、確か
に低温靭性の改善には効果があるものの、強度的には従
来鋼板とあまり変わらない。それに加えて、加工メーカ
ーなどでの二次加工で、熱間加工後、再熱処理を施され
る場合、その場合には、鋼板製造時のプロセスによる強
化は期待できず、厚肉材で問題となる強度の低下に対し
て、抜本的な解決策にはならない。また、強度改善のた
めの合金元素の添加は、溶接熱影響部靭性の低下を招く
ために、多量の添加は好ましくない。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、重量%
で、C:0.03〜0.10%、Si:0.03〜0.
5%、Mn:0.1〜3.0%、Ni:7.5〜10.
0%、Al:0.005〜0.10%、さらに、Mo:
0.04〜0.5%を選択的に含有し、残部がFeおよ
び不可避的不純物からなる鋼板の熱処理に際して、Ac
3 変態点〜850℃の間に加熱して水冷する焼入れ処理
およびAc1 変態点〜Ac3 変態点間に加熱して水冷す
る中間焼入れ処理を実施する際、500℃以上の温度範
囲で50℃/分以上の加熱速度で行い、その後、Ac1
変態点以下の温度で焼戻しをすることを特徴とする降伏
強度と靭性の優れた9%Ni鋼の熱処理法である。
【0005】
【作用】このような状況の中で、発明者らは9%Ni鋼
中に存在する残留オーステナイトに着目し、これを微細
分散することで、靭性を低下させずに、降伏強度を改善
する方法を見いだした。図1は表1の化学成分を有する
鋼において、焼入れ(800℃×45分保持)および中
間焼入れ処理(670℃×45分保持)を行う場合、5
00℃以上での加熱速度を100℃/分とした場合と通
常の炉加熱で得られる程度の20℃/分で昇温した場合
それぞれについて、焼戻した(570℃×30分保持)
後の0.2%耐力の変化を、それぞれの熱処理の平均冷
却速度に対して示す。
【0006】
【表1】
【0007】図から明らかなように、焼入れおよび中間
焼入れ処理の加熱速度を増加させた場合、それらの熱処
理時の冷却速度に対し、降伏強度の低下がほとんど認め
られない。このことは、肉厚が増加し、鋼板中央部の冷
却速度が低下しても強度の低下が起こらないことを意味
しており、降伏強度の改善には有効である。
【0008】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明の鋼板としては、重量%で、C:0.03〜0.1
0%、Si:0.03〜0.5%、Mn:0.1〜3.
0%、Ni:7.5〜10.0%、Al:0.005〜
0.10%、さらに、Mo:0.04〜0.5%を選択
的に含有することが必要である。この成分を限定した理
由を下記に述べる。
【0009】Cは強度を付与するのに重要な元素で0.
03%以上の添加が必要であるが、0.10%を超えて
添加されると母材および溶接熱影響部の靭性の低下を招
く。Siは強度の付与あるいは脱酸材として添加される
が、多量の添加は焼戻し脆化感受性を増加させるため
に、0.03〜0.5%の範囲の添加とする。
【0010】Mnも強度の上昇に寄与する元素で、0.
1%以上添加しないとその効果はないが、3.0%を超
える添加では強度が上昇しすぎるために、靭性が低下す
る。さらにMnは焼戻し脆化感受性を助長することか
ら、このような特性が要求されるとき1.0%を超えな
い添加量が好ましい。Niは低温靭性を付与するととも
に、残留オーステナイトの安定化に寄与する元素であ
り、7.5%以上の添加が必要であるが、10.0%を
超える添加では、その効果が飽和し、有効性が得られな
い。
【0011】Alは脱酸材として添加されると同時に、
結晶粒の細粒化にも効果があるために、0.005%以
上の添加が必要であるが、0.10%を超える添加では
粗大なアルミナ系の介在物が生成する。なお、特には規
制しないが、Pは粒界偏析元素として、多量に添加され
ると靭性を著しく阻害するために、一般には0.01%
以下が望ましい。上記の成分を有する鋼板に以下に説明
する熱処理を施すのであるが、実施する前の鋼板として
は、上記の成分を含有していれば、熱間圧延ままであっ
ても、さらに、一度熱処理された鋼板を熱間加工した後
であっても何等差し支えない。
【0012】以上のような鋼板に、まず、500℃以上
の温度範囲で加熱速度が50℃/分になるような速度で
加熱を行い、Ac3 変態点〜850℃の間に保持した
後、水冷を行い、引き続き同様の加熱条件でAc1 変態
点〜Ac3 変態点間に加熱保持した後、水冷を行う。焼
入れ処理は、後続の中間焼入れ処理の前組織として、均
一なマルテンサイト組織を得るために行われるもので、
Ac3 変態点以上の温度で加熱される必要があるが、8
50℃を超えると加熱時のオーステナイト結晶粒が粗大
化するために、Ac3 変態点〜850℃の温度範囲に保
持し、その後水冷する必要がある。
【0013】続けて行われる中間焼入れ処理は、焼戻し
処理後に生成する安定な残留オーステナイトを多量に生
じさせるために行うものである。すなわち、鋼板を二相
域に加熱することで、フェライトとオーステナイトの二
相組織を生成させ、これを急冷することで、フェライト
と、高合金元素を含んだマルテンサイト組織を生成する
ことを目的としている。従って、Ac1 変態点〜Ac3
変態点の中間に加熱後、水冷される必要がある。しかし
ながら、冷却速度が低下した場合、マルテンサイトがオ
ーステナイトまま残留することがある。このような場
合、次の焼戻し時にオーステナイトが不安定化し、靭性
の低下を招き好ましい結果を得られない。これを避ける
ために、このような熱処理を行うに際し、加熱にあたり
500℃以上の温度域でその加熱速度が50℃/分以上
の昇温を行う。
【0014】9%Ni鋼において、焼入れおよび中間焼
入れ処理時の加熱速度の上昇により強度が上昇する機構
の詳細は不明であるが、加熱速度の上昇による結晶粒の
微細化が、冷却速度の低下による残留オーステナイト相
の加工中(引張試験時)の不安定化による靭性の低下を
補い、結果として、靭性を低下させずに降伏強度の上昇
をもたらすものと推察される。従って、加熱速度が50
℃/分以下であると、焼入れ処理時には、加熱中にオー
ステナイト粒の成長が起こると同時に、中間焼入れ処理
時には、微細なオーステナイトが得られない。さらに、
このような加熱速度はオーステナイト変態が開始する温
度域である500℃以上で行われるべきであって、それ
より低温から加熱速度を上昇させてもその効果はない。
【0015】このようにして得られたマルテンサイトと
オーステナイトの微細な混合組織に対し、Ac1 変態点
以下の温度で通常の焼戻しを行う。焼戻しは転位密度を
低下させ、靭性の向上を図るとともに、オーステナイト
を生成させる処理であり、Ac1 変態点以下の温度で行
われる。なお、このような加熱速度の上昇は、高周波熱
処理炉などや通常の熱処理炉の温度設定を高温側に設定
するなどの工夫で達成できる。
【0016】
【実施例】表2に示す成分系を有する鋼板に、所定の熱
処理を施した場合の機械的性質を表3に示す。なお、鋼
板の履歴は、熱間圧延まま、あるいは、熱処理鋼板を再
度熱間加工されたままのものを用いた。
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
【表4】
【0020】本発明による鋼板(1,2,5,6,9,
12,17)の母材の降伏強度が64kgf/mm2 以上、−
196℃での衝撃値が20kgf・m以上と良好な値を示
している。
【0021】それに対し鋼板3,7は中間焼入れ時の加
熱速度が、鋼板4,8は焼入れ時の加熱速度が本発明条
件から逸脱して低いものである。この場合、鋼板3,7
では降伏強度の低下とともに、靭性の低下が見られ、鋼
板4,8では、降伏強度の低下は小さいものの、靭性が
顕著に低下している。また、鋼板10,13は中間焼入
れ処理時の保持温度が本発明の条件を逸脱しているもの
で、Ac3 変態点を超えて加熱保持された例である。こ
の場合、降伏強度は高いものの、靭性の低下が大きい。
さらに、鋼板11,14は中間焼入れ後の、鋼板16,
18は焼入れ時の冷却条件が本発明を逸脱した例であ
る。この場合、結晶粒の細粒化およびオーステナイトの
不安定化により主に靭性が低下する。鋼板19,20
は、成分系が本発明範囲を逸脱した例であり、Niが
7.5%未満であるために、靭性が著しく低い。
【0022】
【発明の効果】本発明により、製造された9%Ni鋼
は、優れた降伏強度および靭性を有し、LNGタンクの
大型化、安全性の向上に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】0.2%耐力に及ぼす冷却速度の影響を示す図
表である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.03〜0.10%、 Si:0.03〜0.5%、 Mn:0.1〜3.0%、 Ni:7.5〜10.0%、 Al:0.005〜0.10% 残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板の熱処理
    に際して、Ac3 変態点〜850℃の間に加熱して水冷
    する焼入れ処理およびAc1 変態点〜Ac3 変態点間に
    加熱して水冷する中間焼入れ処理を実施する際、それぞ
    れの処理を500℃以上の温度範囲で50℃/分以上の
    加熱速度で行い、その後、Ac1 変態点以下の温度で焼
    戻しをすることを特徴とする降伏強度と靭性の優れた9
    %Ni鋼の熱処理法。
  2. 【請求項2】 重量%で、 Mo:0.04〜0.5% を含有する請求項1記載の降伏強度と靭性の優れた9%
    Ni鋼の熱処理法。
JP16402594A 1994-07-15 1994-07-15 降伏強度と靭性の優れた9%Ni鋼の熱処理法 Withdrawn JPH0827517A (ja)

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