JPH08269477A - ドコサヘキサエン酸含有油脂 - Google Patents

ドコサヘキサエン酸含有油脂

Info

Publication number
JPH08269477A
JPH08269477A JP7075625A JP7562595A JPH08269477A JP H08269477 A JPH08269477 A JP H08269477A JP 7075625 A JP7075625 A JP 7075625A JP 7562595 A JP7562595 A JP 7562595A JP H08269477 A JPH08269477 A JP H08269477A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oil
oils
fat
fats
docosahexaenoic acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP7075625A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2735505B2 (ja
Inventor
Giichi Tsujiwaki
義一 辻脇
Hiroshi Yamamoto
浩志 山本
Kazuko Hirata
和子 平田
Noribumi Sato
則文 佐藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
UEDA SEIYU KK
Snow Brand Milk Products Co Ltd
Original Assignee
UEDA SEIYU KK
Snow Brand Milk Products Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by UEDA SEIYU KK, Snow Brand Milk Products Co Ltd filed Critical UEDA SEIYU KK
Priority to JP7075625A priority Critical patent/JP2735505B2/ja
Publication of JPH08269477A publication Critical patent/JPH08269477A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2735505B2 publication Critical patent/JP2735505B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Edible Oils And Fats (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Acyclic And Carbocyclic Compounds In Medicinal Compositions (AREA)
  • Fats And Perfumes (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 食品への添加量を制限することなく使用で
き、しかも保存時の特有の臭気の発生を抑制でき、酸化
安定性の高いDHA含有油脂を得る。 【構成】 マグロ油、カツオ油、イワシ油、アジ油、サ
バ油およびイカ油からなる群から選ばれる1種以上の油
脂、またはそれらを原料とするドコサヘキサエン酸濃縮
油脂からなるドコサヘキサエン酸含量10重量%以上の
油脂100重量部と、ヨウ素価70〜130でαーリノ
レン酸含量が2重量%未満の米油、綿実油、ごま油、コ
ーン油等の植物油脂の25〜400重量部とを混合した
混合油を、リパーゼを用いたエステル交換反応により改
質させてドコサヘキサエン酸含有量2〜30重量%のド
コサヘキサエン酸含有油脂とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、各種食品に利用され
るドコサヘキサエン酸含有油脂に関する。
【0002】
【従来の技術】ドコサヘキサエン酸(以下DHAと略記
する。)は、水産動物油脂、特に魚油に多く含まれ、数
々の生理機能を持つことが知られており、近年、これを
食品や医薬品として利用するための高度精製技術や濃縮
技術に関する研究が進められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】DHA含有油脂は、そ
の精製直後に風味良好であっても、特にDHAを多く含
有する水産動物油脂の代表例である魚油では、保存中に
わずかな酸化で魚油特有の臭気、いわゆるなまぐさ臭が
発生し、食用油脂として商品価値が低下するという問題
点がある。
【0004】この問題点を少しでも軽減するには、ま
ず、食品に利用する際の魚油の添加量を少なくすること
が考えられる。そこで、DHA含量の多い油脂を得るた
めにDHAの濃縮が試みられている。
【0005】ここで、濃縮される魚油の性状をみると、
魚油は、DHA等の高度不飽和脂肪酸がトリグリセリド
分子の2位いわゆるβ位に比較的多く分布しており、一
分子に二個の高度不飽和脂肪酸を持つトリグリセリド分
子も存在することが知られている。
【0006】そして、DHAを高濃度に含有するように
濃縮された油脂では、当然のことながら一分子に二個以
上の高度不飽和脂肪酸を持つトリグリセリド分子の含量
も多くなり、このような油脂は、DHAを濃縮する以前
の油脂と比べ、非常に酸化しやすく、風味の劣化も早い
という欠点を有する。
【0007】このように油脂の濃縮という操作によって
食品へのDHA含有油脂の添加量は低減できるが、これ
では酸化における連鎖反応によってより攻撃を受けやす
い分子が増加することになり、前記問題点を充分に解決
するまでに至らなかった。
【0008】また、高度不飽和脂肪酸の一種であるエイ
コサペンタエン酸(以下EPAと略記する。)と飽和脂
肪酸であるパルミチン酸がエステル結合した各種トリグ
リセリドにおいて、トリグリセリド中の総EPA含量は
同じであっても、一分子に三個のEPAを持つトリグリ
セリド分子を含有する油脂は、一分子中に一個のEPA
を持つトリグリセリドを含有する油脂より明かに酸化安
定性が劣るという報告もある。
【0009】これらのことから、DHAが濃縮された油
脂を高度不飽和脂肪酸を含有しない他の油脂と混合し
て、濃縮する前のDHA含量と同じ含量になるように調
製すると、この油脂は、濃縮される前の油脂より酸化安
定性が劣るとも推測できる。
【0010】実際、食品にDHA含有油脂を添加する場
合に、添加しようとする油脂のDHA濃度を2倍にし
て、食品への添加量を規定量の1/2にしたところ、濃
縮をしていない油脂を規定量添加したものにくらべて実
質的にあまり風味はよくなっていなかった。
【0011】したがって、DHAを濃縮してDHA含有
油脂の食品への添加量を減らす手段では、食品に任意の
量を風味のいい状態で添加することが難しかった。
【0012】そこで、一分子中にできるだけ高度不飽和
脂肪酸を集中させないようにするとよいとも考えられ、
この点に関しては、魚油だけをランダムにエステル交換
すると酸化安定性が向上するという報告もある。しかし
ながら、魚油の風味改良の点では顕緒な効果がなく、食
品として利用するには満足のいくものではなかった。実
際に、食品に添加した直後および所定期間の保存後にお
いて、風味と共に酸化安定性の点でも充分満足のいくD
HA含有油脂は未だ得られていない。
【0013】そこで、この発明の課題は、上記した問題
点を解決して、DHA含有油脂の風味を良好なものとし
て、食品への添加量を制限することなく使用でき、しか
も保存時の特有の臭気の発生を抑制でき、酸化安定性の
高いDHA含有油脂を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、この発明においては、ドコサヘキサエン酸含量10
重量%以上の油脂100重量部と、ヨウ素価70〜13
0でαーリノレン酸含量が2重量%未満の植物油脂の2
5〜400重量部とを混合した混合油を、リパーゼを用
いてエステル交換反応してなる全構成脂肪酸中のドコサ
ヘキサエン酸含量が2〜30重量%のドコサヘキサエン
酸含有油脂とする手段を採用したのである。
【0015】以下にその詳細を述べる。この発明に用い
る油脂は、通常の食用油脂として使用されているもので
あって、DHAを10重量%以上含有する油脂であれば
よく、特に他の制限はないが、そのような油脂の具体例
として、マグロ油、カツオ油、イワシ油、アジ油、サバ
油、イカ油を挙げることができ、またこれらの群から選
ばれる1種以上の油脂、または必要に応じてそのような
油脂を原料としてDHAが10重量%以上になるように
濃縮した油脂を用いてもよい。
【0016】DHA含量が10%未満では、エステル交
換のために混合する植物油脂の量が極めて少なくなり、
これでは目的とする程に安定化されかつ風味のよいDH
A含有油脂が得られないからである。
【0017】また、この発明においては、エステル交換
に用いられる油脂のDHA含量に上限はないが、好適に
は40重量%以下である。DHAの含量が40重量%を
越える油脂でも、エステル交換により得られる油脂のD
HAの含量が2〜30重量%となるように植物油脂の配
合量を調整し、エステル交換することで安定化され、か
つ風味のよいDHAを含有する油脂を得ることが可能で
ある。しかし、DHAの含量を40重量%を越える油脂
にすると、濃縮コストが高くなり、それに比例して風味
の向上が顕著に現れず、実用上はDHAの含量を40重
量%以下で用いるのがよい。
【0018】前記DHAを所定濃度に濃縮した油脂とし
ては、溶剤を使用しない分別法による濃縮油脂、もしく
は溶剤を使用した分別法による濃縮油脂、または酵素も
しくは微生物を用いた濃縮油脂、または超臨界ガスを利
用した抽出法による濃縮油脂を採用できる。
【0019】ここで前記した溶剤を使用しない分別法に
よる油脂濃縮方法とは、通常、ウィンタリングと呼ば
れ、または自然分別と称される方法であって、低温下で
油脂の部分結晶化を行い、析出した結晶部分と液体部分
を分画する方法である。
【0020】その場合の温度は、原料となるDHA含有
油脂の融点にもよるが、通常0〜20℃の範囲で行い、
油脂が完全に固化しないようにする必要がある。この場
合、DHA含量の増加はあまり大きくなく、2〜5重量
%である。
【0021】また、溶剤を使用した分別法による油脂濃
縮方法の場合は、溶剤としてヘキサン、アセトンが使用
でき、原料となる魚油を2〜10倍容量の溶剤に溶解さ
せ、この溶液を冷却し、析出した結晶部と溶剤に溶解し
た油脂部とを分別する。この場合は、−20〜−70℃
のかなり低温での分別を行うことにより、DHAが5重
量%以上増加するような濃縮が可能である。いずれもD
HAは、非結晶部分すなわち液体部分に濃縮される。
【0022】酵素を用いるDHAの濃縮方法は、リパー
ゼによりDHA以外の脂肪酸を加水分解し、DHAをグ
リセリンエステルの形で残すような酵素、条件を選択す
れば良い。カツオ油やマグロ油のような魚油では、DH
Aがトリグリセリドの2位置いわゆるβ位に集中してい
るので、この位置を切断し難い酵素を使用することによ
り、1,3位置を特異的に加水分解して相対的にDHA
含量を上げることができる。このような酵素としては、
アスペルギルス属、ムコール属、アルカリゲネス属由来
のリパーゼが挙げられる。
【0023】また、比較的DHAとグリセリンのエステ
ル結合を切断しにくい酵素を使用することでDHA含量
を上げることも可能である。このような酵素としては、
キャンディダ・シリンドラシェ由来のリパーゼが例示で
きる。
【0024】リパーゼのかわりにリパーゼを産生する微
生物を使用することもできる。この濃縮方法については
ドコサヘキサエン酸高含有油脂の製造方法(平成6年特
許願第81654号)を採用することができる。超臨界
ガスを用いたガス抽出は、主に炭酸ガスが用いられる。
【0025】この発明においてDHA含有油脂と混合し
てエステル交換反応させるために混合する植物油脂とし
ては、食用の植物油脂であって、ヨウ素価70〜130
でαーリノレン酸含量が2重量%未満という条件を満足
するものを採用すればよく、なかでも米油、綿実油、ご
ま油およびコーン油からなる群から選ばれる1種以上の
植物油脂、またはその硬化油もしくはその分別油を用い
て最も好ましい結果を得ている。
【0026】また、この発明に用いる植物油脂は、第一
に二重結合数が3以上の不飽和脂肪酸をできるだけ含ま
ないものが良く、望ましくは、モノエン酸の多い油脂が
よい。なぜなら、二重結合数が3以上の不飽和脂肪酸を
多く含んでいる場合、たとえエステル交換を行っても、
トリグリセリド1分子中に二重結合数の多い脂肪酸が集
中する割合が高くなり、安定性の劣るトリグリセリド分
子が多くできるからである。このように、風味を良好に
保つためには、トリグリセリド中のDHAの分布をバラ
つかせ、DHA含有量を特定の範囲内に制限することが
必要である。
【0027】第二に常温で液状である植物油脂が望まし
い。なぜなら、たとえかなり安定であっても、極端に融
点の高い油脂、例えば融点50℃以上のものを多く混合
すると、最終的なDHA含有油脂の融点が高くなり、実
際に使用しようとする際、固化したものを高温にして融
解させる必要があり、酸化を受けやすくなるためであ
る。
【0028】上記したような条件を満たす植物油脂は、
米油、綿実油、ごま油、コーン油の他にもあるが、DH
A含有油脂とのエステル交換後の保存時における風味、
酸化安定性でこれらの油脂より優れたものはなかった。
【0029】なぜならば、油脂は、たとえ精製したもの
であってもそれぞれ特有の風味を持っており、また、そ
れぞれに異なる微量成分を含有している。この微量成分
には、抗酸化としての機能を持っているものも多く、油
脂の脂肪酸組成だけでは説明できない安定性を油脂に付
与している原因となっている。そして、米油、綿実油、
ごま油、コーン油に含まれる微量の抗酸化成分のDHA
の酸化抑制効果は、エステル交換後に良く発揮されてい
るためと考えられる。
【0030】このことは、エステル交換を行わない当価
な混合油脂の酸化が抑制されていないことから明らかで
ある(比較例4〜7)。本発明は、エステル交換による
グリセリドの位置組成の変化と油脂中にあらかじめ含ま
れている抗酸化成分の相互作用により、安定性が向上す
ると考えられる。
【0031】たとえば、米油には、γートコフェロール
やフェルラ酸が含まれていることが知られており、さら
にこれらの類縁体も含めまだ多くの未知の抗酸化成分が
存在すると考えられている。そして、それぞれのもつ微
量の風味成分も作用して、エステル交換後に魚油のもつ
風味をほとんど感じさせなくさせている。そして、米
油、綿実油、ごま油、コーン油については、それぞれの
硬化油及び分別油のうちの一種以上の油脂を用いること
ができる。
【0032】エステル交換する方法では、酵素のリパー
ゼを使用する方法を採用する。なぜなら、化学的な触媒
である従来のソジウムメチレート、又は苛性ソーダ−グ
リセリン−水を使用する方法では、リパーゼを採用する
方法に比べると、反応後のDHA含有油脂の酸化安定性
および風味改善効果が低いからである。また、使用する
酵素の種類は、トリグリセリドの位置に対して特異性を
もたない、いわゆるランダム化の反応を行うもの、1,
3の位置に対して特異性を持つもの、どちらでも使用す
ることができるが、DHAをより均一に分布させるに
は、ランダム化の反応を行なう酵素の方が好ましい。ま
た、酵素の起源は、特に制限はないが、ランダム化の反
応を行なう酵素であればキャンディダ属由来のリパーゼ
が好ましく、1,3特異性反応であればアルカリゲネス
属由来のリパーゼが好ましい。実際に使用するには、反
応及びその後の油脂回収を簡便に行うためにケイソウ土
に固定化されたリパーゼを採用すると良い。反応の方法
としては、通常のリパーゼによるエステル交換油の製造
に準じて行えばよく、バッチ反応あるいはカラム状のリ
アクターを用いた連続式反応のどちらでもよい。
【0033】そして、食用として用いるには、エステル
交換を行なったDHA含有油脂を必要に応じて食用油脂
の精製工程として公知の処理を行ない、最後に減圧下に
水蒸気蒸留を行なって、油脂中の有臭成分を除去する処
理工程、いわゆる脱臭と称する処理を行なう必要がある
ことは当然のことである。
【0034】
【作用】上記のような処理工程を経て調製されたこの発
明のDHA含有油脂は、DHAが一部のグリセリド分子
に偏ることなく、油脂中のグリセリドに均一に分布され
ており、しかも、米油または綿実油またはごま油または
コーン油中の有効な抗酸化成分を含有しているので、い
ままでのDHA含有油脂に比べ、製造当初より非常に風
味がよく、その後の保存においても特有の臭気の発生が
抑えられており、酸化安定性にも優れた油脂となる。
【0035】
【実施例】
〔実施例1〕DHA含量が全構成脂肪酸中の25重量%
のカツオ油750gと、表1に示したヨウ素価とリノレ
ン酸含有の米油250gを混合し、このものにキャンデ
ィダ・シリンドラシェ由来のリパーゼを固定化した酵素
剤(名糖産業製:商品名 リパーゼOFG)を50g添
加し、60℃で7時間ランダムエステル交換反応を行っ
た。反応後、酵素を分離除去した油脂について、アルカ
リ脱酸、活性白土処理し、最後に減圧水蒸気蒸留によっ
て215℃で1時間、脱臭処理した。
【0036】脱臭処理後の油脂850gにトコフェロー
ル(ホーネンコーポレーション製)500ppmを添加
した後、脂肪酸組成中のDHA含有量をガスクロマトグ
ラフィーによって測定し、結果を表1中に併記した。
【0037】また、得られたDHA含有油脂のうち、1
00gを200ml容ビーカーに入れ、上部をシャーレ
で蓋をして60℃で保存し、油脂の過酸化物価の経時的
変化(0〜90時間)を調べると共に、同じ条件で臭気
の経時的変化(0〜90時間)を官能試験によって調べ
た。
【0038】上記の官能試験については、成人男女各3
人をパネラーとし、生臭さを全く感じない(◎印)、生
臭さを殆ど感じない(○印)、生臭さを少し感じる(△
印)、生臭さを感じる(×印)という4段階に評価し、
これらの結果をそれぞれ表1中に併記し、または表2に
示した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】〔実施例2〜4〕実施例1において、米油
のかわりに綿実油を用いたDHA含有油脂(実施例
2)、ごま油を用いたDHA含有油脂(実施例3)、コ
ーン油を用いたDHA含有油脂(実施例4)を調製し、
実施例1と全く同様にして水蒸気蒸留による脱臭を行
い、その後、同量のトコフェロールを添加して分析(脂
肪酸組成)及び保存テスト(過酸化物価及び臭気の官能
試験)を行なった。これらの結果は、表1または表2中
に併記した。
【0042】〔比較例1〜7〕実施例1において米油の
かわりにナタネ油を用いたもの(比較例1)、実施例1
において米油のかわりにヤシ油を用いたもの(比較例
2)、実施例1において米油のかわりにパーム油を用い
たもの(比較例3)、実施例1においてエステル交換を
行わないもの(比較例4)、実施例2においてエステル
交換を行わないもの(比較例5)、実施例3においてエ
ステル交換を行わないもの(比較例6)、実施例4にお
いてエステル交換を行わないもの(比較例7)を調製
し、同様に水蒸気蒸留による脱臭を行い、その後、同量
のトコフェロールを添加して分析及び保存テストを行な
い、これらの結果を表1または表2中に併記した。
【0043】表1および表2の結果からも明かなよう
に、エステル交換する油脂として米油を用いた実施例
1、綿実油を用いた実施例2、ごま油を用いた実施例
3、コーン油を用いた実施例4は、過酸化物価(PO
V)の上昇が非常に低く抑えられており、風味の劣化も
なかった。
【0044】しかし、αーリノレン酸を多く含有するナ
タネ油を用いた比較例1は、POVの上昇が速く、保存
20時間で酸化臭が発生した。また、ヨウ素価が低く、
αーリノレン酸を含有しないヤシ油を用いた比較例2、
同じくヨウ素価が低いパーム油を用いた比較例3も同様
の点での評価が良くなかった。また、エステル交換を行
わず、米油を混合しただけの比較例4、綿実油を混合し
ただけの比較例5、ごま油を混合しただけの比較例6、
コーン油を混合しただけの比較例7は、いずれもPOV
の上昇が速く、保存20時間後で生ぐさ臭が発生した。
【0045】〔実施例5〕DHA含量が全構成脂肪酸中
の25重量%であるカツオ油1200gをキャンディダ
・シリンドラシェ由来のリパーゼ(名糖産業製:商品名
リパーゼOF)で酸価40まで部分的に加水分解し、
アルカリ脱酸、活性白土処理を行ってDHA濃縮魚油
(DHA 32.0%)600g得た。このDHA濃縮
魚油600gと米油400gを混合し、このものにキャ
ンディダ・シリンドラシェ由来のリパーゼを顆粒状のケ
イソウ土に固定化したもの(名糖産業製:商品名 リパ
ーゼOFG)を50g添加し、60℃で7時間ランダム
エステル交換反応を行った。反応後、酵素を分離除去し
た油脂について、アルカリ脱酸、活性白土処理し、最後
に減圧水蒸気蒸留により215℃1時間、脱臭処理し
た。
【0046】脱臭処理後の油脂にトコフェロール(ホー
ネンコーポレーション製)500ppmを添加した後、
脂肪酸組成中のDHA含有量をガスクロマトグラフィー
により測定し、結果を表1中に併記した。この100g
の油脂を200ml容ビーカーに入れ、上部をシャーレ
で蓋をして、60℃に保存して、油脂の過酸化物価の経
時的変化(0〜90時間)を調べると共に、同じ条件で
臭気の経時的変化(0〜90時間)を官能試験によって
調べ、これらの結果をそれぞれ表3または表4に示し
た。
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】〔比較例8〕実施例5において、エステル
交換を行わないものを調製し、同様に水蒸気蒸留による
脱臭を行い、その後、同量のトコフェロールを添加して
分析及び保存テストを行ない、これらの結果を表3また
は表4中に併記した。
【0050】表3または表4の結果からも明らかなよう
に、DHA濃縮油脂を米油と混合しただけの比較例8
は、POVの上昇が速く、明らかに魚油の酸化による臭
気が発生した。これに対して、DHAを濃縮した魚油を
酵素でエステル交換したものは、POVの上昇が抑えら
れており、魚油が酸化した特有の臭気は感じられなかっ
た。
【0051】〔実施例6〕実施例1において、米油のか
わりに米硬化油(ヨウ素価80、融点30℃)を用いた
もの(実施例6)を調製し、同様に水蒸気蒸留による脱
臭を行い、その後、同量のトコフェロールを添加して分
析を行った。得られたDHA含有油脂100gを200
ml容ビーカーにとり、−20℃で一日保存後、60℃
の恒温槽で融解させた。この時の完全に融解するまでの
時間と融解後の過酸化物価を測定し、これらの結果を表
5に示した。
【0052】
【表5】
【0053】〔比較例9〕実施例6において米硬化油の
かわりに大豆硬化油(ヨウ素価33 融点55℃)を用
いたもの(比較例9)を調製し、同様に水蒸気蒸留によ
る脱臭を行い、その後、同量のトコフェロールを添加し
て分析を行った。その後同様に保存して融解時間と過酸
化物価を測定し、この結果を表5中に併記した。
【0054】表5の結果からも明らかなように、融点の
高い油脂を用いた比較例9は、実施例6に比べ油脂が完
全に融解するまでに約4倍の時間がかかっており、その
間に油脂も劣化している。このようなことから、エステ
ル交換に使用する植物油脂で融点が高い油脂を用いた場
合は、そのDHA含有油脂を融解して使おうとするとす
でに少し酸化されていることになる。
【0055】〔実施例7〜9〕実施例1においてカツオ
油のかわりにマグロ油(DHA25%)を用いたもの
(実施例7)、イワシ油(DHA10%)200gと米
油800gを用いたもの(実施例8)、キャンディダ・
シリンドラシェ由来のリパーゼ(名糖産業製:商品名
リパーゼOF)によりカツオ油中のDHAを濃縮した魚
油(DHA40%)1000gと米油250gを用いた
もの(実施例9)を調製し、同様に水蒸気蒸留による脱
臭を行い、その後、同量のトコフェロールを添加して実
施例1と同じ分析及び保存テストを行ない、この結果を
表6、表7に示した。
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
【0058】表6および表7の結果からは、DHA含有
油脂としてマグロ油を用いた実施例7は、カツオ油を用
いたのと同様に過酸化物価の上昇が非常に低く抑えられ
ており、風味の劣化も非常に少ないものであった。
【0059】また、DHA含量が2.0%である実施例
8では、さらに酸化に対して安定しており、DHA含量
が30%である実施例9においても、DHA含量が高い
分やや安定性が低下するが、風味的には充分満足のいく
DHA含有油脂であった。
【0060】〔実施例10〕実施例1において用いたキ
ャンディダ・シリンドラシェ由来のリパーゼのかわりに
アルカリゲネス属に由来する固定化リパーゼ(名糖産業
製:商品名 リパーゼPLG)を用いてトリグリセリド
の1,3位についてランダムにエステル交換を行い、反
応後同様の精製処理を経て最後に水蒸気蒸留による脱臭
を行い、その後、同量のトコフェロールを添加して実施
例1と同じ方法で分析及び保存テストを行ない、この結
果を表8、表9に示した。
【0061】
【表8】
【0062】
【表9】
【0063】〔比較例10〕実施例10において用いた
アルカリゲネス属に由来する固定化リパーゼのかわりに
ソジウムメチレート3gを用い、70℃で30分間ラン
ダムエステル交換反応を行い、反応後同様の精製処理を
経て最後に水蒸気蒸留による脱臭を行い、その後、同量
のトコフェロールを添加して実施例1と同じ方法で分析
及び保存テストを行ない、この結果を表8、表9に併記
した。
【0064】表8、表9の結果からは、アルカリゲネス
属に由来するリパーゼを用いた実施例10のDHA含有
油脂は、過酸化物価の上昇が低く抑えられており、魚油
特有の生ぐさ臭も感じられなかった。これに対して、化
学触媒であるソジウムメチレートを用いた比較例10
は、保存の初期には過酸化物価が低く風味の劣化も少な
かったが、90時間後には過酸化物価が高くなり、生臭
さも感じられた。
【0065】
【効果】この発明は、以上説明したように、所定のDH
A含有油脂に特定の植物油を混合し、リパーゼによりエ
ステル交換することにより、DHAを2〜30重量%含
有する安定な油脂としたので、DHA含有油脂の風味が
良好なものとなり、食品の品質、風味を損ねることなく
食品への添加量を制限することなく使用でき、しかも保
存時の特有の臭気の発生を抑制でき、酸化安定性の高い
DHA含有油脂を提供できるという利点がある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平田 和子 神戸市東灘区魚崎浜町17番地 植田製油株 式会社内 (72)発明者 佐藤 則文 川越市大字上戸253番地の7 パピーラB 101号

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ドコサヘキサエン酸含量10重量%以上
    の油脂100重量部と、ヨウ素価70〜130でαーリ
    ノレン酸含量が2重量%未満の植物油脂の25〜400
    重量部とを混合した混合油を、リパーゼを用いてエステ
    ル交換反応してなる全構成脂肪酸中のドコサヘキサエン
    酸含量が2〜30重量%のドコサヘキサエン酸含有油
    脂。
  2. 【請求項2】 ドコサヘキサエン酸含量10重量%以上
    の油脂が、マグロ油、カツオ油、イワシ油、アジ油、サ
    バ油およびイカ油からなる群から選ばれる1種以上の油
    脂、またはそれらを原料とするドコサヘキサエン酸濃縮
    油脂である請求項1記載のドコサヘキサエン酸含有油
    脂。
  3. 【請求項3】 ドコサヘキサエン酸濃縮油脂が、溶剤を
    使用しない分別法による濃縮油脂、もしくは溶剤を使用
    した分別法による濃縮油脂、または酵素もしくは微生物
    を用いた濃縮油脂、または超臨界ガスを利用した抽出法
    による濃縮油脂である請求項2記載のドコサヘキサエン
    酸含有油脂。
  4. 【請求項4】 植物油脂が米油、綿実油、ごま油および
    コーン油からなる群から選ばれる1種以上の植物油脂、
    またはその硬化油もしくはその分別油である請求項1記
    載のドコサヘキサエン酸含有油脂。
JP7075625A 1995-03-31 1995-03-31 ドコサヘキサエン酸含有油脂 Expired - Fee Related JP2735505B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP7075625A JP2735505B2 (ja) 1995-03-31 1995-03-31 ドコサヘキサエン酸含有油脂

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP7075625A JP2735505B2 (ja) 1995-03-31 1995-03-31 ドコサヘキサエン酸含有油脂

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH08269477A true JPH08269477A (ja) 1996-10-15
JP2735505B2 JP2735505B2 (ja) 1998-04-02

Family

ID=13581604

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP7075625A Expired - Fee Related JP2735505B2 (ja) 1995-03-31 1995-03-31 ドコサヘキサエン酸含有油脂

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2735505B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1178103A1 (en) * 2000-08-02 2002-02-06 Dsm N.V. Purifying crude pufa oils
JP2015002740A (ja) * 2013-05-20 2015-01-08 花王株式会社 油脂組成物
JP2015508439A (ja) * 2011-12-30 2015-03-19 ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー キャノーラ加工中のdha保持
JP2015112067A (ja) * 2013-12-12 2015-06-22 築野食品工業株式会社 食用油脂組成物

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07135972A (ja) * 1993-09-22 1995-05-30 Ajinomoto Co Inc リパーゼ酵素剤及び該リパーゼ酵素剤を用いる油脂の改質法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07135972A (ja) * 1993-09-22 1995-05-30 Ajinomoto Co Inc リパーゼ酵素剤及び該リパーゼ酵素剤を用いる油脂の改質法

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1178103A1 (en) * 2000-08-02 2002-02-06 Dsm N.V. Purifying crude pufa oils
WO2002010322A1 (en) * 2000-08-02 2002-02-07 Dsm N.V. Purifying crude pufa oils
JP2015508439A (ja) * 2011-12-30 2015-03-19 ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー キャノーラ加工中のdha保持
JP2015002740A (ja) * 2013-05-20 2015-01-08 花王株式会社 油脂組成物
JP2015112067A (ja) * 2013-12-12 2015-06-22 築野食品工業株式会社 食用油脂組成物

Also Published As

Publication number Publication date
JP2735505B2 (ja) 1998-04-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
RU2422498C2 (ru) Способ получения диолеоил пальмитоил глицерида
US9695384B2 (en) Process for producing a glyceride composition
JP2761293B2 (ja) ヒト乳脂の代替物の製造方法
KR100293297B1 (ko) 어유기재조성물
JP4516897B2 (ja) 食用油脂の製造方法および食用油脂
US7550615B2 (en) Preparation process of diglyceride-rich fat or oil
JP3375726B2 (ja) 食用油脂および油脂混合物
EP1928989A1 (en) Process for producing triglycerides
JPWO2006059592A1 (ja) トランス酸含量を低減した油脂組成物の製造法および該油脂組成物を含有する加工油脂製品
IE53399B1 (en) Edible fat process
WO2000073407A1 (fr) Compositions de graisses vegetales sterolees et procede de production
JPH04261497A (ja) ジグリセリドに富む油脂の脱臭工程における不均化反応を抑制する方法
JPH0516478B2 (ja)
JP2735505B2 (ja) ドコサヘキサエン酸含有油脂
CN116406233A (zh) 脂肪组合物
JPH0730352B2 (ja) 酵素による油脂の精製法
JP2000157170A (ja) 食用油
JP2000300176A (ja) 食用油
JP3537840B2 (ja) 食用エステル交換油脂ならびにそれを用いた栄養組成物
JP7528407B2 (ja) β位パルミチン酸含有油脂の製造方法
JPS59172596A (ja) 精製魚油及びその製法
CN116113684A (zh) 制造具有增加量的sn2位的棕榈酸的植物脂肪组合物的方法
JP2022088158A (ja) 油脂組成物
JP2023067821A (ja) 油脂組成物

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090109

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090109

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100109

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110109

Year of fee payment: 13

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110109

Year of fee payment: 13

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120109

Year of fee payment: 14

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120109

Year of fee payment: 14

R371 Transfer withdrawn

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R371

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120109

Year of fee payment: 14

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313115

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120109

Year of fee payment: 14

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120109

Year of fee payment: 14

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130109

Year of fee payment: 15

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130109

Year of fee payment: 15

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140109

Year of fee payment: 16

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees