JPH08267275A - 溶接用ニッケル合金材料 - Google Patents
溶接用ニッケル合金材料Info
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- JPH08267275A JPH08267275A JP7000595A JP7000595A JPH08267275A JP H08267275 A JPH08267275 A JP H08267275A JP 7000595 A JP7000595 A JP 7000595A JP 7000595 A JP7000595 A JP 7000595A JP H08267275 A JPH08267275 A JP H08267275A
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- welding
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 耐食性及び放射能汚染の問題がなく、高温で
の耐食性及び耐摩耗性がステライト合金と同等以上であ
り、耐焼き付き性が優れたプラズマ溶接用合金粉末又は
TIG溶接用鋳造ロッドを得ることができる溶接用ニッ
ケル合金材料を提供する。 【構成】 プラズマ溶接用合金粉末又はTIG溶接用鋳
造ロッドに使用される溶接用ニッケル合金材料は、C:
0.01乃至0.50重量%、Si:0.05乃至1.
50重量%、Mn:0.05乃至1.50重量%、C
r:40.0乃至55.0重量%、Nb:1.0乃至
2.5重量%、Al:2.5乃至4.0重量%、Fe:
8.0乃至15.0重量%、N:0.005乃至0.7
0重量%を含有し、残部Ni及び不可避的不純物からな
るNi合金からなる。このNiの一部を10重量%以下
のCoで置き換えてもよい。
の耐食性及び耐摩耗性がステライト合金と同等以上であ
り、耐焼き付き性が優れたプラズマ溶接用合金粉末又は
TIG溶接用鋳造ロッドを得ることができる溶接用ニッ
ケル合金材料を提供する。 【構成】 プラズマ溶接用合金粉末又はTIG溶接用鋳
造ロッドに使用される溶接用ニッケル合金材料は、C:
0.01乃至0.50重量%、Si:0.05乃至1.
50重量%、Mn:0.05乃至1.50重量%、C
r:40.0乃至55.0重量%、Nb:1.0乃至
2.5重量%、Al:2.5乃至4.0重量%、Fe:
8.0乃至15.0重量%、N:0.005乃至0.7
0重量%を含有し、残部Ni及び不可避的不純物からな
るNi合金からなる。このNiの一部を10重量%以下
のCoで置き換えてもよい。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は粉末プラズマ溶接(以
下、PTA溶接という)に使用されるプラズマ溶接用合
金粉末又はTIG溶接用鋳造ロッドに関し、特にケミカ
ルプラント及び原子力プラント等に使用されるバルブの
肉盛溶接に適した耐食耐摩耗性が優れたプラズマ溶接用
合金粉末又はTIG溶接用鋳造ロッドの製造に使用され
る溶接用ニッケル合金材料に関する。
下、PTA溶接という)に使用されるプラズマ溶接用合
金粉末又はTIG溶接用鋳造ロッドに関し、特にケミカ
ルプラント及び原子力プラント等に使用されるバルブの
肉盛溶接に適した耐食耐摩耗性が優れたプラズマ溶接用
合金粉末又はTIG溶接用鋳造ロッドの製造に使用され
る溶接用ニッケル合金材料に関する。
【0002】
【従来の技術】ケミカルプラント及び原子力プラント等
に使用されるバルブは開閉時における摺動による摩擦を
受け、更に各種薬品又は蒸気等による腐食も問題とな
る。このため、各使用環境に適した材料が使用されてい
る。また、摺動部に耐食性及び耐摩耗性が優れた材料を
肉盛溶接する方法も良く用いられている手段である。肉
盛材料としてはステライト合金が最も多く使用されてい
る。このステライト合金は耐摺動摩耗性が特に優れた特
性も有し、耐食性及び耐熱性も良好であり、バルブの肉
盛材料として最適な材料としてこれまで多用されてき
た。
に使用されるバルブは開閉時における摺動による摩擦を
受け、更に各種薬品又は蒸気等による腐食も問題とな
る。このため、各使用環境に適した材料が使用されてい
る。また、摺動部に耐食性及び耐摩耗性が優れた材料を
肉盛溶接する方法も良く用いられている手段である。肉
盛材料としてはステライト合金が最も多く使用されてい
る。このステライト合金は耐摺動摩耗性が特に優れた特
性も有し、耐食性及び耐熱性も良好であり、バルブの肉
盛材料として最適な材料としてこれまで多用されてき
た。
【0003】また、溶接方法としてはロッド状の溶接材
料を用いたガス溶接及びTIG溶接がこれまで多く使用
されてきたが、最近ではPTA溶接による施工が増えて
きている。PTA溶接は溶接材料として粉末を用いるプ
ラズマ溶接であり、高合金材料及び非鉄系材料の肉盛溶
接の分野で多く用いられている。このPTA溶接は溶接
材料が粉末であるため、材料の選択範囲が極めて広いの
が特徴であり、ワイヤ又はロッドに加工できないような
材料でも溶接材料に適用できる。また、PTA溶接は母
材の希釈を低く抑えることが可能で、粉末の連続供給で
自動溶接を簡単に行うことができる等、肉盛溶接に適し
た特性を備えている。
料を用いたガス溶接及びTIG溶接がこれまで多く使用
されてきたが、最近ではPTA溶接による施工が増えて
きている。PTA溶接は溶接材料として粉末を用いるプ
ラズマ溶接であり、高合金材料及び非鉄系材料の肉盛溶
接の分野で多く用いられている。このPTA溶接は溶接
材料が粉末であるため、材料の選択範囲が極めて広いの
が特徴であり、ワイヤ又はロッドに加工できないような
材料でも溶接材料に適用できる。また、PTA溶接は母
材の希釈を低く抑えることが可能で、粉末の連続供給で
自動溶接を簡単に行うことができる等、肉盛溶接に適し
た特性を備えている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ステラ
イト合金は金属間の摺動摩耗には極めて優れた特性を示
すが、Co基の合金であるため、以下に示す種々の問題
点があった。
イト合金は金属間の摺動摩耗には極めて優れた特性を示
すが、Co基の合金であるため、以下に示す種々の問題
点があった。
【0005】その一つは原料としての問題である。Co
は生産される地域が極く限られているので、供給が不安
定であるのに加え、価格の変動も大きく、工業用として
汎用するのに適しているとはいえない。
は生産される地域が極く限られているので、供給が不安
定であるのに加え、価格の変動も大きく、工業用として
汎用するのに適しているとはいえない。
【0006】また、ステライト合金は、使用される分野
が広がるにつれて性能上の問題が明確になってきた。例
えば、プラスチックスの製造設備等では耐食性に問題が
生じてきている。また、原子力プラントに使用される場
合はCoの溶出による放射能汚染の問題が指摘されてい
る。
が広がるにつれて性能上の問題が明確になってきた。例
えば、プラスチックスの製造設備等では耐食性に問題が
生じてきている。また、原子力プラントに使用される場
合はCoの溶出による放射能汚染の問題が指摘されてい
る。
【0007】こうした問題はCoを主成分としているた
めに発生しており、従来Co基以外の材料を使用するこ
とが検討されている。このCo基以外の材料としては、
Ni−Cr−Si−Bのコルモノイ系材料があり、一部
では使用されている。しかし、コルモノイ系の材料は硬
度は十分に得られるが、金属同士の摺動においては焼き
付きが発生しやすく、その適用分野は極く一部に限られ
ている。
めに発生しており、従来Co基以外の材料を使用するこ
とが検討されている。このCo基以外の材料としては、
Ni−Cr−Si−Bのコルモノイ系材料があり、一部
では使用されている。しかし、コルモノイ系の材料は硬
度は十分に得られるが、金属同士の摺動においては焼き
付きが発生しやすく、その適用分野は極く一部に限られ
ている。
【0008】そのため、従来より、Coを含まないでス
テライト合金と同等以上の性能を有する肉盛材料の開発
が要望されている。例えば、特開平1−273693で
は、Ni−Cr−Al系材料が提案されている。この材
料は高温での耐食性及び耐摩耗性はステライト合金に匹
敵する性能が期待できるが、金属間の摺動部ではやはり
耐焼き付き性が不十分であり、プラントバルブなどへの
適用は困難である。他にも幾つかの材料が提案されてい
るが、いずれも耐焼き付き性に問題があり、実用化まで
には至っていない。
テライト合金と同等以上の性能を有する肉盛材料の開発
が要望されている。例えば、特開平1−273693で
は、Ni−Cr−Al系材料が提案されている。この材
料は高温での耐食性及び耐摩耗性はステライト合金に匹
敵する性能が期待できるが、金属間の摺動部ではやはり
耐焼き付き性が不十分であり、プラントバルブなどへの
適用は困難である。他にも幾つかの材料が提案されてい
るが、いずれも耐焼き付き性に問題があり、実用化まで
には至っていない。
【0009】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、耐食性及び放射能汚染の問題がなく、高温
での耐食性及び耐摩耗性がステライト合金と同等以上で
あり、耐焼き付き性が優れたプラズマ溶接用合金粉末又
はTIG溶接用鋳造ロッドを得ることができる溶接用ニ
ッケル合金材料を提供することを目的とする。
のであって、耐食性及び放射能汚染の問題がなく、高温
での耐食性及び耐摩耗性がステライト合金と同等以上で
あり、耐焼き付き性が優れたプラズマ溶接用合金粉末又
はTIG溶接用鋳造ロッドを得ることができる溶接用ニ
ッケル合金材料を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に係る溶接用ニッ
ケル合金材料は、プラズマ溶接用合金粉末又はTIG溶
接用鋳造ロッドの製造に使用される。このニッケル合金
は、C:0.01乃至0.50重量%、Si:0.05
乃至1.50重量%、Mn:0.05乃至1.50重量
%、Cr:40.0乃至55.0重量%、Nb:1.0
乃至2.5重量%、Al:2.5乃至4.0重量%、F
e:8.0乃至15.0重量%、N:0.005乃至
0.70重量%を含有し、残部Ni及び不可避的不純物
からなる。また、Niの一部を10重量%以下のCoで
置き換えてもよい。
ケル合金材料は、プラズマ溶接用合金粉末又はTIG溶
接用鋳造ロッドの製造に使用される。このニッケル合金
は、C:0.01乃至0.50重量%、Si:0.05
乃至1.50重量%、Mn:0.05乃至1.50重量
%、Cr:40.0乃至55.0重量%、Nb:1.0
乃至2.5重量%、Al:2.5乃至4.0重量%、F
e:8.0乃至15.0重量%、N:0.005乃至
0.70重量%を含有し、残部Ni及び不可避的不純物
からなる。また、Niの一部を10重量%以下のCoで
置き換えてもよい。
【0011】
【作用】本願発明者は、Coを含まずステライト合金と
同等以上の性能を有する肉盛材料として、耐食性が優れ
たNi−高Cr系合金に注目して開発を行った。そこ
で、本願発明者は、これまでのNi基材料で問題となっ
ていた耐焼付き性を改善し、Ni−高Cr系の材料に、
Al及びNbを適量添加することにより十分な耐焼き付
き性と耐摩耗性が得られることを見いだした。
同等以上の性能を有する肉盛材料として、耐食性が優れ
たNi−高Cr系合金に注目して開発を行った。そこ
で、本願発明者は、これまでのNi基材料で問題となっ
ていた耐焼付き性を改善し、Ni−高Cr系の材料に、
Al及びNbを適量添加することにより十分な耐焼き付
き性と耐摩耗性が得られることを見いだした。
【0012】また、Feは、従来、硬度を低下させて耐
摩耗性を損なうとされていたが、本願発明はこのFeを
積極的に添加し、溶接時の耐割れ性を大幅に改善したも
のである。これにより、大型のプラントバルブまで肉盛
溶接施工可能な溶接材料が得られる。
摩耗性を損なうとされていたが、本願発明はこのFeを
積極的に添加し、溶接時の耐割れ性を大幅に改善したも
のである。これにより、大型のプラントバルブまで肉盛
溶接施工可能な溶接材料が得られる。
【0013】本発明の組成の合金は、熱間での加工性が
悪く、プラズマPTA溶接用の粉末とした方が好まし
い。しかしTIG溶接用の鋳造ロッドとすることもでき
る。
悪く、プラズマPTA溶接用の粉末とした方が好まし
い。しかしTIG溶接用の鋳造ロッドとすることもでき
る。
【0014】以下、本発明に係る粉体プラズマ溶接用合
金粉末又はTIG溶接用鋳造ロッドに使用される溶接用
ニッケル合金における各成分の添加理由及び組成限定理
由について説明する。C(炭素):0.01乃至0.50重量% Cは固溶体を強化する成分であり、Cが0.01%以上
の場合にマトリックスが強化されて耐摩耗性を向上させ
ることができる。しかし、Cの添加量が多くなると、C
はCrと炭化物を形成して耐食性が劣化し、耐割れ性も
低下するため、Cは0.50%以下とする必要がある。Si(シリコン):0.05乃至1.50重量% Siは溶接中に少量のスラグを発生し、母材と溶接金属
とのなじみ性を良好にする作用がある。また、Siはブ
ローホールの発生を抑える効果もある。こうした効果を
得るためには0.05%以上の添加が必要であり、逆に
Siが1.50%を超えるとスラグ量が多くなりすぎて
かえってなじみ性を阻害する。Mn(マンガン):0.05乃至1.50重量% Mnの添加は固溶体強化の効果があり、靱性を向上さ
せ、耐割れ性を改善する。Mnを0.05%以上添加す
ると効果が得られるが、1.50%を超えると脆化層が
現れ、延性不足により溶接特に割れが発生しやすくな
る。Cr(クロム):40.0乃至55.0重量% Crは耐食性を向上させるのに必須の成分であり、固溶
体を強化し、硬さを高める作用もある。Crが30%を
超える量から耐食性は良くなるが、40%以上で硬さ上
昇に効果が現れ、また耐応力腐食割れが向上して、バル
ブの肉盛材として優れた特性が得られる。
金粉末又はTIG溶接用鋳造ロッドに使用される溶接用
ニッケル合金における各成分の添加理由及び組成限定理
由について説明する。C(炭素):0.01乃至0.50重量% Cは固溶体を強化する成分であり、Cが0.01%以上
の場合にマトリックスが強化されて耐摩耗性を向上させ
ることができる。しかし、Cの添加量が多くなると、C
はCrと炭化物を形成して耐食性が劣化し、耐割れ性も
低下するため、Cは0.50%以下とする必要がある。Si(シリコン):0.05乃至1.50重量% Siは溶接中に少量のスラグを発生し、母材と溶接金属
とのなじみ性を良好にする作用がある。また、Siはブ
ローホールの発生を抑える効果もある。こうした効果を
得るためには0.05%以上の添加が必要であり、逆に
Siが1.50%を超えるとスラグ量が多くなりすぎて
かえってなじみ性を阻害する。Mn(マンガン):0.05乃至1.50重量% Mnの添加は固溶体強化の効果があり、靱性を向上さ
せ、耐割れ性を改善する。Mnを0.05%以上添加す
ると効果が得られるが、1.50%を超えると脆化層が
現れ、延性不足により溶接特に割れが発生しやすくな
る。Cr(クロム):40.0乃至55.0重量% Crは耐食性を向上させるのに必須の成分であり、固溶
体を強化し、硬さを高める作用もある。Crが30%を
超える量から耐食性は良くなるが、40%以上で硬さ上
昇に効果が現れ、また耐応力腐食割れが向上して、バル
ブの肉盛材として優れた特性が得られる。
【0015】しかし、55.0%を超える含有量になる
と、溶接金属が脆弱になり、耐割れ性が急速に低下する
ため添加量は55.0%以下とする。Nb(ニオブ):1.0乃至2.5重量% Al(アルミニウム):2.5乃至4.0重量% NbとAlの同時添加が本発明の特徴である。NbとA
lはいずれもNiと金属間化合物を形成し、微細に分散
析出することにより耐摩耗性と耐焼き付き性を向上させ
る。特に、これらのNb及びAl添加は耐焼き付き性の
向上に大きな効果がある。Nbは1.0乃至2.5重量
%、Alは2.5乃至4.0重量%の範囲で添加すると
有効であり、これ未満では特性が十分に得られず、多す
ぎると耐割れ性が低下する。また、Alについては、多
すぎるとスラグが多くなり、母材と溶接金属とのなじみ
性も阻害するという難点もある。NbとAlの単独添加
でも同様の効果を期待できるが、添加量が多くなりすぎ
て溶接時の耐割れ性が劣化する。Fe(鉄):8.0乃至15.0重量% 本発明の第2の特徴はFeの添加により良好な耐割れ性
を得ている点にある。本発明のNb,Al添加型の合金
は、Feを添加しないと、耐摩耗性及び耐食性は良好で
あるが、耐割れ性が不十分で大型バルブには肉盛りでき
ない。即ち、耐摩耗性及び耐食性を損なわずに耐割れ性
を改善する方法として、Feの添加が有効である。Ni
合金においては、従来、Feは耐食性を劣化させる成分
として低く抑えられているが、本発明の合金において
は、Feの15%までの添加は、耐食性及び耐摩耗性の
双方を損なわずに、耐割れ性を著しく向上させることが
できる。Feの含有量が15%を超える場合は耐食性が
不十分となり、8.0%未満では耐割れ性向上の効果が
ない。このため、Feの添加量は8.0〜15.0%と
する。N(窒素):0.005乃至0.70重量% Nを添加するとAlNが生成し、耐摩耗性の向上に効果
がある。N添加量が0.005%未満ではその効果が現
れず、0.70%以上ではブローホールが発生する。N(ニッケル)及び不可避的不純物 残部はNiと不可避の不純物であるが、不純物として
P,Sは夫々0.05重量%、Bは0.07重量%、M
o,Ti,V,Cu等は夫々0.5重量%までは許容で
きる。
と、溶接金属が脆弱になり、耐割れ性が急速に低下する
ため添加量は55.0%以下とする。Nb(ニオブ):1.0乃至2.5重量% Al(アルミニウム):2.5乃至4.0重量% NbとAlの同時添加が本発明の特徴である。NbとA
lはいずれもNiと金属間化合物を形成し、微細に分散
析出することにより耐摩耗性と耐焼き付き性を向上させ
る。特に、これらのNb及びAl添加は耐焼き付き性の
向上に大きな効果がある。Nbは1.0乃至2.5重量
%、Alは2.5乃至4.0重量%の範囲で添加すると
有効であり、これ未満では特性が十分に得られず、多す
ぎると耐割れ性が低下する。また、Alについては、多
すぎるとスラグが多くなり、母材と溶接金属とのなじみ
性も阻害するという難点もある。NbとAlの単独添加
でも同様の効果を期待できるが、添加量が多くなりすぎ
て溶接時の耐割れ性が劣化する。Fe(鉄):8.0乃至15.0重量% 本発明の第2の特徴はFeの添加により良好な耐割れ性
を得ている点にある。本発明のNb,Al添加型の合金
は、Feを添加しないと、耐摩耗性及び耐食性は良好で
あるが、耐割れ性が不十分で大型バルブには肉盛りでき
ない。即ち、耐摩耗性及び耐食性を損なわずに耐割れ性
を改善する方法として、Feの添加が有効である。Ni
合金においては、従来、Feは耐食性を劣化させる成分
として低く抑えられているが、本発明の合金において
は、Feの15%までの添加は、耐食性及び耐摩耗性の
双方を損なわずに、耐割れ性を著しく向上させることが
できる。Feの含有量が15%を超える場合は耐食性が
不十分となり、8.0%未満では耐割れ性向上の効果が
ない。このため、Feの添加量は8.0〜15.0%と
する。N(窒素):0.005乃至0.70重量% Nを添加するとAlNが生成し、耐摩耗性の向上に効果
がある。N添加量が0.005%未満ではその効果が現
れず、0.70%以上ではブローホールが発生する。N(ニッケル)及び不可避的不純物 残部はNiと不可避の不純物であるが、不純物として
P,Sは夫々0.05重量%、Bは0.07重量%、M
o,Ti,V,Cu等は夫々0.5重量%までは許容で
きる。
【0016】また、残部のNiは10%までのCoで置
き換えることができ、これでも本発明の効果及び性能を
損なわない。
き換えることができ、これでも本発明の効果及び性能を
損なわない。
【0017】本発明は、PTA溶接用の粉末として開発
されたものであるが、TIG用の鋳造ロッドとしても適
用は可能である。しかし、肉盛部の健全性からはPTA
溶接の方が良好な結果が得られる。
されたものであるが、TIG用の鋳造ロッドとしても適
用は可能である。しかし、肉盛部の健全性からはPTA
溶接の方が良好な結果が得られる。
【0018】
【実施例】次に、本発明の実施例について比較例と比較
して説明する。供試粉末の化学成分を下記表1に示す。
粒度は63〜250ミクロンに分級した。
して説明する。供試粉末の化学成分を下記表1に示す。
粒度は63〜250ミクロンに分級した。
【0019】また、供試粉末の評価のために、以下の試
験を行った。 耐摩耗性及び耐焼き付き性試験 ・溶接条件;下記表2に示す。 ・試験片;(A)片面に肉盛 厚さ:23×幅:24×
長さ:90(mm) (B)両面に肉盛 厚さ:25×幅:20×長さ:25
(mm) ・評価方法;図1に示すような試験方法により評価し
た。即ち、試験片Aの間に試験片Bをはさみ(初期面圧
は2MPa)、試験片Bを上下に摺動する。摺動距離は
5mmで、サイクルタイムは5秒とし、5サイクル毎に
面圧を2MPaづつ上昇させる。そして、試験後の表面
状態と摩耗粉の量で耐摩耗性と耐焼き付き性を評価し
た。図中、ハッチングは肉盛り部である。 溶接性試験 ・溶接条件;下記表3に示す。 ・評価方法;溶接中の粉末の飛散及びなじみ状態等から
溶接の作業性を判断し、溶接後の割れ発生状況により耐
割れ性を評価した。
験を行った。 耐摩耗性及び耐焼き付き性試験 ・溶接条件;下記表2に示す。 ・試験片;(A)片面に肉盛 厚さ:23×幅:24×
長さ:90(mm) (B)両面に肉盛 厚さ:25×幅:20×長さ:25
(mm) ・評価方法;図1に示すような試験方法により評価し
た。即ち、試験片Aの間に試験片Bをはさみ(初期面圧
は2MPa)、試験片Bを上下に摺動する。摺動距離は
5mmで、サイクルタイムは5秒とし、5サイクル毎に
面圧を2MPaづつ上昇させる。そして、試験後の表面
状態と摩耗粉の量で耐摩耗性と耐焼き付き性を評価し
た。図中、ハッチングは肉盛り部である。 溶接性試験 ・溶接条件;下記表3に示す。 ・評価方法;溶接中の粉末の飛散及びなじみ状態等から
溶接の作業性を判断し、溶接後の割れ発生状況により耐
割れ性を評価した。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】腐食試験 ・腐食試験・溶接条件は表2と同じである。 ・試験片:厚さ:2×幅:15×高さ:65(mm) ・評価方法:加圧水型原子力の一次冷却水を模した下記
表4に示す条件での応力腐食割れ試験で評価した。試験
片には図2に示すような治具を用いて耐力の70%の応
力を付加した。治具1に試験片2をその両端部で支持
し、試験片2の中央に押圧具3を2点で接触するように
配置し、ボルト4により押圧具3を介して試験片2を押
圧する。
表4に示す条件での応力腐食割れ試験で評価した。試験
片には図2に示すような治具を用いて耐力の70%の応
力を付加した。治具1に試験片2をその両端部で支持
し、試験片2の中央に押圧具3を2点で接触するように
配置し、ボルト4により押圧具3を介して試験片2を押
圧する。
【0024】
【表4】
【0025】下記表5は溶接試験の結果を示す。比較例
10はステライト合金である。
10はステライト合金である。
【0026】
【表5】
【0027】この表5から明らかなように、本発明の実
施例合金1〜8は溶接時の作業性は良好であり、割れな
ども発生せず、耐焼き付き性及び耐摩耗性も良好な結果
となっている。
施例合金1〜8は溶接時の作業性は良好であり、割れな
ども発生せず、耐焼き付き性及び耐摩耗性も良好な結果
となっている。
【0028】これに対し、比較例1はFeが少なく、溶
接時に割れが発生した。更に、Nも高いため、ブローホ
ールも認められた。比較例2はNbが低いため、硬さが
低く、耐摩耗性が悪く、Siが不足であり、なじみ性も
悪い。比較例3はCrが多すぎ、割れが発生した。比較
例4はCrが足らずに硬さが低く、耐摩耗性も不十分で
ある。比較例5ではNbが高すぎて割れが発生した。比
較例6では高Alに起因する割れが認められ、なじみ性
も悪い。比較例7はFeを多く添加したため、また比較
例8ではAlが不足するため、両者共に、硬さが低くな
っている。比較例9はSiが多すぎるため、スラグ量が
多くなり過ぎて作業性が悪くなると共に、Mnが少なす
ぎるため、十分な耐割れ性が得られない。比較例10は
ステライト合金であるため、全てについて良好な特性を
示している。本発明の実施例1〜8については、耐応力
腐食割れ試験の結果は全て良好であった。
接時に割れが発生した。更に、Nも高いため、ブローホ
ールも認められた。比較例2はNbが低いため、硬さが
低く、耐摩耗性が悪く、Siが不足であり、なじみ性も
悪い。比較例3はCrが多すぎ、割れが発生した。比較
例4はCrが足らずに硬さが低く、耐摩耗性も不十分で
ある。比較例5ではNbが高すぎて割れが発生した。比
較例6では高Alに起因する割れが認められ、なじみ性
も悪い。比較例7はFeを多く添加したため、また比較
例8ではAlが不足するため、両者共に、硬さが低くな
っている。比較例9はSiが多すぎるため、スラグ量が
多くなり過ぎて作業性が悪くなると共に、Mnが少なす
ぎるため、十分な耐割れ性が得られない。比較例10は
ステライト合金であるため、全てについて良好な特性を
示している。本発明の実施例1〜8については、耐応力
腐食割れ試験の結果は全て良好であった。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
C:0.01乃至0.50重量%、Si:0.05乃至
1.50重量%、Mn:0.05乃至1.50重量%、
Cr:40.0乃至55.0重量%、Nb:1.0乃至
2.5重量%、Al:2.5乃至4.0重量%、Fe:
8.0乃至15.0重量%、N:0.005乃至0.7
0重量%を含有し、残部Ni及び不可避的不純物からな
るNi合金からなるか、又はNiの一部をCo:10重
量%以下で置き換えたNi合金からなるので、高温での
耐食性及び耐摩耗性がステライト合金と同等以上である
と共に、耐焼き付き性が優れており、耐食性及び放射能
汚染等の問題がないプラズマ溶接用合金粉末又はTIG
溶接用鋳造ロッドが得られる。
C:0.01乃至0.50重量%、Si:0.05乃至
1.50重量%、Mn:0.05乃至1.50重量%、
Cr:40.0乃至55.0重量%、Nb:1.0乃至
2.5重量%、Al:2.5乃至4.0重量%、Fe:
8.0乃至15.0重量%、N:0.005乃至0.7
0重量%を含有し、残部Ni及び不可避的不純物からな
るNi合金からなるか、又はNiの一部をCo:10重
量%以下で置き換えたNi合金からなるので、高温での
耐食性及び耐摩耗性がステライト合金と同等以上である
と共に、耐焼き付き性が優れており、耐食性及び放射能
汚染等の問題がないプラズマ溶接用合金粉末又はTIG
溶接用鋳造ロッドが得られる。
【図1】耐摩耗性・耐焼き付き性試験方法を示す図であ
る。
る。
【図2】4点曲げ治具を示す図である。
1:治具 2:試験片 3:押圧具 4:ボルト
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 純一 大阪府大阪市北区中之島3丁目3番22号 関西電力株式会社内 (72)発明者 生野 健 大阪府大阪市北区中之島3丁目3番22号 関西電力株式会社内 (72)発明者 隅田 武男 大阪府大阪市北区中之島3丁目3番22号 関西電力株式会社内
Claims (4)
- 【請求項1】 プラズマ溶接用合金粉末に使用され、
C:0.01乃至0.50重量%、Si:0.05乃至
1.50重量%、Mn:0.05乃至1.50重量%、
Cr:40.0乃至55.0重量%、Nb:1.0乃至
2.5重量%、Al:2.5乃至4.0重量%、Fe:
8.0乃至15.0重量%、N:0.005乃至0.7
0重量%を含有し、残部Ni及び不可避的不純物からな
るNi合金からなることを特徴とする溶接用ニッケル合
金材料。 - 【請求項2】 プラズマ溶接用合金粉末に使用され、
C:0.01乃至0.50重量%、Si:0.05乃至
1.50重量%、Mn:0.05乃至1.50重量%、
Cr:40.0乃至55.0重量%、Nb:1.0乃至
2.5重量%、Al:2.5乃至4.0重量%、Fe:
8.0乃至15.0重量%、N:0.005乃至0.7
0重量%、Co:10重量%以下を含有し、残部Ni及
び不可避的不純物からなるNi合金からなることを特徴
とする溶接用ニッケル合金材料。 - 【請求項3】 TIG溶接用鋳造ロッドに使用され、
C:0.01乃至0.50重量%、Si:0.05乃至
1.50重量%、Mn:0.05乃至1.50重量%、
Cr:40.0乃至55.0重量%、Nb:1.0乃至
2.5重量%、Al:2.5乃至4.0重量%、Fe:
8.0乃至15.0重量%、N:0.005乃至0.7
0重量%を含有し、残部Ni及び不可避的不純物からな
るNi合金からなることを特徴とする溶接用ニッケル合
金材料。 - 【請求項4】 TIG溶接用鋳造ロッドに使用され、
C:0.01乃至0.50重量%、Si:0.05乃至
1.50重量%、Mn:0.05乃至1.50重量%、
Cr:40.0乃至55.0重量%、Nb:1.0乃至
2.5重量%、Al:2.5乃至4.0重量%、Fe:
8.0乃至15.0重量%、N:0.005乃至0.7
0重量%、Co:10重量%以下を含有し、残部Ni及
び不可避的不純物からなるNi合金からなることを特徴
とする溶接用ニッケル合金材料。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7000595A JPH08267275A (ja) | 1995-03-28 | 1995-03-28 | 溶接用ニッケル合金材料 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7000595A JPH08267275A (ja) | 1995-03-28 | 1995-03-28 | 溶接用ニッケル合金材料 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08267275A true JPH08267275A (ja) | 1996-10-15 |
Family
ID=13419066
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP7000595A Pending JPH08267275A (ja) | 1995-03-28 | 1995-03-28 | 溶接用ニッケル合金材料 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH08267275A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN107042370A (zh) * | 2017-03-16 | 2017-08-15 | 南京航空航天大学 | 一种高Cr含量Ni基耐高温合金焊丝及制备工艺 |
EP3202934A4 (en) * | 2014-09-29 | 2018-05-02 | Hitachi, Ltd. | Two-phase alloy, product obtained using said two-phase alloy, and process for producing said product |
CN108907426A (zh) * | 2018-07-13 | 2018-11-30 | 沈阳鼓风机集团核电泵业有限公司 | 一种核电用镍基硬质合金的等离子弧堆焊方法 |
WO2019163217A1 (ja) * | 2018-02-20 | 2019-08-29 | 株式会社日立製作所 | Cr-Fe-Ni系合金製造物 |
-
1995
- 1995-03-28 JP JP7000595A patent/JPH08267275A/ja active Pending
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US11466347B2 (en) | 2018-02-20 | 2022-10-11 | Hitachi, Ltd. | Cr—Fe—Ni-based alloy product |
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