JPH08266179A - 環境ストレス耐性植物及びその作出方法 - Google Patents

環境ストレス耐性植物及びその作出方法

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JPH08266179A
JPH08266179A JP7050315A JP5031595A JPH08266179A JP H08266179 A JPH08266179 A JP H08266179A JP 7050315 A JP7050315 A JP 7050315A JP 5031595 A JP5031595 A JP 5031595A JP H08266179 A JPH08266179 A JP H08266179A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 環境ストレスに対する耐性を有する植物の提
供。 【構成】 グリシンベタインの合成に関与するコリンデ
ヒドロゲナーゼ遺伝子及びベタインアルデヒドデヒドロ
ゲナーゼ遺伝子を導入することにより環境ストレスに対
する耐性が増強された植物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、種々の環境ストレス、
例えば高浸透圧、低温、高温、乾燥等によるストレスに
対する耐性が増強された植物、及びその作出方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】自然界に存在する植物は塩ストレス、乾
燥ストレス、高温ストレス、低温ストレス等様々な環境
ストレスにさらされており、植物は進化の過程で、植物
が自生する地域の環境ストレスに対応できるような機構
を獲得し、進化してきた。一方、農業の発展と共に交配
等人工的手段によって品種改良が行われ、環境ストレス
に若干強くなった品種も作られている。しかしながら、
砂漠や塩害地ではまだ十分な対応ができていない。
【0003】植物細胞における浸透圧調節には低分子有
機化合物の適合溶質の1種であるグリシンベタインが関
与することが知られている。グリシンベタインの生合成
においては、コリンがコリンデヒドロゲナーゼの関与の
もとにベタインアルデヒドに転換され、次にベタインア
ルデヒドがベタインアルデヒドデヒドロゲナーゼの関与
のもとにグリシンベタインに転換されると考えられる。
【0004】近年、遺伝子操作によって環境ストレスに
対する耐性を増強した植物を得ようとする研究が活発と
なっている。例えば、H.J.Bohnert ら、Science Vol.25
9, No.22, p508-510 (1993) は、タバコに大腸菌のマン
ニトール合成酵素を導入し、耐塩性を付与したことを報
告している。また、The Plant J.Vol.6, p749-758 (199
4)には、グリシンベタインの合成に関与する遺伝子であ
るベタインアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子の発現を
高め、植物の耐塩性を強化しようとした例が記載されて
いるが、実際にはコリンデヒドロゲナーゼの遺伝子を導
入していないので耐塩性の向上につながらなかった。
【0005】前記のごとく、グリシンベタインが植物の
環境ストレスの耐性に関与していることは知られている
が、いかなる遺伝子を導入すれば植物中のグリシンベタ
インを増加させることができるか、また外来性遺伝子を
人為的に導入することにより植物中のグリシンベタイン
を増加することにより該植物に環境ストレス耐性を付与
することができるか否かについては知られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、遺伝
子組換法により環境ストレス耐性を増強した植物、及び
その植物の作出方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の課題
を解決するため種々検討の結果、植物細胞の浸透圧調節
に関与すると考えられる低分子有機化合物性の適合溶質
の1種であるグリシンベタインの合成に関与するコリン
デヒドロゲナーゼ遺伝子及びベタインアルデヒドデヒド
ロゲナーゼ遺伝子の両者を植物に導入することによりグ
リシンベタインの合成、又はその合成の増強を行うこと
ができ、それにより植物に環境ストレスに対する耐性を
付与することができることを見出し、本発明を完成し
た。
【0008】従って本発明は、グリシンベタインの合成
に関与するコリンデヒドロゲナーゼ遺伝子及びベタイン
アルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子を導入することによ
り環境ストレスに対する耐性が増強された植物を提供す
る。本発明はまた、上記植物の作出方法であって、植物
に、グリシンベタインの合成に関与するコリンデヒドロ
ゲナーゼ遺伝子及びベタインアルデヒドデヒドロゲナー
ゼ遺伝子を導入することを特徴とする方法を提供する。
【0009】
【具体的な説明】本発明において使用するコリンデヒド
ロゲナーゼ遺伝子及びベタインアルデヒドデヒドロゲナ
ーゼ遺伝子の由来生物は特に限定せず、例えば生来的に
環境ストレス耐性の高い植物や微生物から得ることがで
きるが、微生物、特に細菌由来の遺伝子が好ましい。特
に、大腸菌由来の遺伝子はすでにクローニングされてお
り(Lamarkら、Mol.Microbiol.Vol.5, p1049-1064, 199
1)、本発明においては具体例として大腸菌由来の遺伝子
を用いて本発明を具体的に説明する。
【0010】しかしながら、本発明の遺伝子は植物細胞
内で発現すればよいから、大腸菌由来の遺伝子に限定さ
れない。大腸菌由来の遺伝子は、上記文献の記載に従っ
て、9kbp のBamHI断片として得ることができ、こ
の断片は、コリンデヒドロゲナーゼ遺伝子(betA)
及びベタインアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子(be
tB)を含んでいる。
【0011】本発明においては、植物として光合成能を
有する下等植物である淡水性らん藻シネココッカス属
(Synechococcus)の1種を用いるが、グ
リシンベタインは下等植物であるらん藻類から高等植物
にわたって存在しており、植物の環境ストレスに対する
耐性に関与していると考えられるから、本発明は広くす
べての光合成植物に適用することができる。この様な植
物としては、例えば、タバコ、トウモロコシ、イネ、小
麦、大麦、トマト、ジャガイモ、大豆、ワタ等の草本植
物、さらにはユーカリ、アカシア等の木本植物等に広く
適用することが可能である。
【0012】前記の遺伝子を前記の植物に導入するに
は、外来遺伝子を植物細胞に導入するための常用の方
法、例えばアグロバクテリウム法、パーティクルガン法
等の方法を用いればよい。また外来遺伝子が導入された
植物細胞を植物に再生するためにも常用の組織培養によ
る方法を用いることができる。本発明の具体例において
は、大腸菌とらん藻細胞との両方において複製すること
ができるシャトルベクターに目的とする遺伝子を挿入
し、このベクターをらん藻細胞に導入する方法を用い
た。
【0013】多くの植物は、グリシンベタインの生合成
能を生来的に有しており、本発明によればそれらの植物
においてグリシンベタインの生産能をさらに増強し、環
境ストレスに対する耐性を増強することができる。グリ
シンベタインの生合成能を実質的に有しない植物に本発
明を適用することができることは言うまでもない。多く
の植物は、グリシンベタインの生合成における中間原料
となるコリンの合成能を有しており、この様な植物に本
発明で用いる前記遺伝子を導入することによりコリンか
らグリシンベタインの合成を増強することができるが、
さらに、本発明で用いる遺伝子を植物細胞に導入するこ
とにより、コリンの取り込みが増加するという効果も得
られる。
【0014】グリシンベタインは細胞等に存在し、酵素
や細胞の構造蛋白質の安定化に寄与すると考えられるか
ら、本発明の植物は、塩などによる浸透圧ストレスのみ
ならず、乾燥ストレス、低温ストレス、高温ストレス等
の多様な環境ストレスに対しても耐性を有する。
【0015】
【実施例】次に、実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。実施例1 シネココッカスsp.PCC7942への遺
伝子の導入 (1)遺伝子のクローニング 遺伝子のクローニングはAndresenら、J.Gen.Microbiol.
Vol.134, p1737-1764(1988)及びLamarkら、Mol.Microbi
ol.Vol.165, p1059-1062 (1991)に記載されている方法
に従って行った。この方法により9kb BamHI D
NA断片を大腸菌(CSH26)から得た。
【0016】このDNA断片は、図1に示すごとく、コ
リンデヒドロゲナーゼ遺伝子をコードするオープンリー
ディングフレーム(betA)、ベタインアルデヒドデ
ヒドロゲナーゼをコードするオープンリーディングフレ
ーム(betB)、及びコリンのエネルギー依存性輸送
系をコードするオープンリーディングフレーム(bet
T)を含有する。
【0017】(2)発現シャトルベクターの作製 前記9kb BamHI DNA断片をプラスミドpUC
303−BmのBamHI部位に挿入することによりプ
ラスミドpBETを得た。プラスミドpUC303は大
腸菌/シネココッカスシャトルベクターとして市販され
ており、pUC303−BmはpUC303のEcoR
I断片にBamHI断片を含む12bpを導入したプラス
ミドである。このプラスミドpUC303−BmのBa
mHI部位に、前記プラスミドpBET中の9kb Ba
mHI部位を挿入することにより20kbのプラスミドp
CBETを得た。なお、上記の遺伝子組換え操作は宿主
として大腸菌DH5αを用いて行った。
【0018】(3)らん藻類の形質転換 らん藻の遺伝子操作で一般的に用いられているシネココ
ッカス(Synechococcus)sp.PCC7
942を20mMのHepes−KOH(pH8.0)を追
加したBG11液体培地(組成:NaNO3 ;1.5g
/l,K2 HPO4 ・7H2 O;40mg/l,MgSO
4 ・7H2 O;75mg/l,CaCl2・2H2 O;3
6mg/l,Ciuic Acid;6mg/l,Ferr
ic Ammonium Citrate;6mg,ED
TA;1mg/l,Na2 CO3 ;20mg,MnSO4
7H2 O;2.5mg,ZnSO4 ・7H2 O;222μ
g/l,CuSO4 ・5H2 O;79μg/l,H3
4 ;2.86mg/l,NaMoO4 ;21μg/l,
Co(NO32 ・6H2 O;500μg/l)中で、
30℃にて蛍光白色光の連続照射のもとで培養した。培
養したらん藻体とシャトルプラスミドpCBETとを混
合することにより形質転換し、ストレプトマイシン耐性
により選択した。10μg/mlのストレプトマイシンの
存在下で増殖するらん藻を選択した。生成したコロニー
を、32P−標識した前記9kb DNA断片(図1)をプ
ローブとして用いてSouthernハイブリダイゼー
ションによりスクリーニングし、陽性クローンを選択し
た。
【0019】次に、目的とする遺伝子の発現を確認する
ため、培養したらん藻細胞から、H.Aibaら、J.Biol.Che
m.Vol.256, p11905-11910 (1981)に記載されている方法
により全RNAを抽出し、そしてYang H. ら、Nucleic
Acids Research vol.21, p3337-3338 (1993)に記載の方
法により、プローブとして32P−標識したPstI及び
BglII断片(図1を参照のこと)を用いてNorth
ernブロット分析により転写されたRNAの検出を行
った。この試験においては、前記の選択された陽性クロ
ーンをNaClを含有しない培地で2日間培養し、さら
に200mM NaClを含有するBG11−コリン培地
で培養した後、検出を行った。
【0020】図2のレーン2に示すように、本発明のら
ん藻については約9kbのRNA転写物が検出されたが、
遺伝子の挿入を行わなかったプラスミドベクターpUC
303−Bmにより形質転換された細胞については、図
2のレーン1に示すごとく、プローブとハイブリダイズ
するRNAは転写されなかった。転写されたRNAのサ
イズが約9kbであることから、挿入した9kb DNA断
片が転写されたものと推定される。
【0021】実施例2 形質転換された植物の特性 (1)コリンの取り込み ベクタープラスミドpUC303−Bm又はプラスミド
pCBETにより形質転換されたシネココッカスの細胞
を、200mM NaClを含有するか又は含有しないB
G11培地において対数増殖中期まで増殖せしめた。コ
リン輸送活性(コリンの取り込み)は25℃にて、Lama
rkら、Mol.Microbiol.Vol.5, p1049-1064 (1991)に記載
されている方法により、10μM〔14C〕−コリン(5
8.5mCi /mmol) を用いて行った。なお、コリンの非
存在下に増殖した藻体中には内因性コリンは検出されな
かった。この結果を図3に示す。
【0022】図3のAに示すごとく、対象細胞(pUC
303−Bmにより形質転換された細胞)及びbet遺
伝子含有細胞(pCBETにより形質転換された細胞)
のいずれにおいても、非−ストレス条件下でコリンの取
込みが進行したが、初速度及び30分後の細胞内コリン
含量はpCBET担持細胞において約40%高かった。
この差は、大腸菌中で活性なコリン輸送系(Lamark T.,
ら、Mol.Microbiol.Vol.5, p1049-1064 (1991)) をコー
ドしている、pCBET中のbetT遺伝子が機能的に
発現した結果であろう。すべての場合において、カルボ
ニルシアニド−p−トリフルオロメトキシフェニルヒド
ラゾン(FCCP)の5μMの添加によりコリンの取り
込みが強く阻害され、シネココッカスにエネルギー依存
性コリン輸送系が存在することが示唆された。
【0023】なお、図3中で、中空円はpUC303−
Bmで形質転換された細胞をFCCPの非存在下で培養
した場合の結果を示し、中空四角はpCBETにより形
質転換された細胞をFCCPの非存在下で培養した場合
の結果を示し、黒円はpUC303−Bmで形質転換さ
れた細胞をFCCPの存在下で培養した場合の結果を示
し、そして黒四角はpCBETにより形質転換された細
胞をFCCPの存在下で培養した場合の結果を示す。
【0024】図3のBに示すように、塩ストレス条件下
では、コリンはpCBETにより形質転換されたシネコ
コッカスによってのみ取り込まれた。これは、シネココ
ッカスの原形質膜に存在するエネルギー依存性コリン輸
送系が培地中の高濃度の存在によって変化し、他方グリ
シンベタインの合成が膜を安定化し高温濃度条件下でコ
リンの輸送を可能にしたためと予想される。この場合、
グリシンベタイン合成におけるコリンの使用によって、
bet遺伝子含有細胞中での輸送系のコリンによるフィ
ードバック抑制が解除されたためかも知れない。
【0025】(2)グリシンベタインの生産 形質転換されていないシネココッカスsp.PCC79
42中にはコリンデヒドロゲナーゼ及びベタインアルデ
ヒドデヒドロゲナーゼの両酵素活性は検出されず、そし
て塩条件下でグリシンベタインは全く蓄積しなかった。
1mMより高濃度のコリンの添加によってシネココッカス
sp.PCC7942細胞の増殖は非ストレス条件下及
びストレス条件下で阻害されたので、pCBETで形質
転換された細胞でのグリシンベタインの生産のために1
00μMのコリンを加えた。
【0026】このレベルのコリンは、種々の条件下で対
象細胞の増殖に影響を与えなかった。100μMのコリ
ンを含有するBG11培地(BG11−コリン培地)中
で2日間(対数期中期まで)増殖したシネココッカスの
細胞を、種々のNaCl濃度を有するBG11−コリン
培地に移した。3日間のインキュベーションの後、第四
アンモニウム化合物を1N H2 SO4 により細胞から
抽出し、そしてその過ヨウ素酸塩として沈澱させた(Wa
ll, JSら、Anal.Chem.Vol.32, p870-847 (1960) を参照
のこと)。ペレットを、内部標準としての600μLの
t−ブタノール含有D2 Oに溶解した。
【0027】第四アンモニウム化合物の分析を、 1
NMRスペクトル法によりJEOLJMN−500フー
リエ交換NMR計を用いて行った。細胞の体積はBlumwa
ldE. ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.80, p2599-2602
(1983)に記載されている方法により測定した。濃縮さ
れた細胞を、膜不透過性常磁性消去剤Na3 Fe(C
N)6 (20mM)及びNa2 Mn EDTA(75mM)
の存在下で1mMの自由に透過するニトロキサイドスピン
プローブTHMPONE(2,2,6,6−テトラメチ
ルピペリドン−N−オキシル)により処理し、細胞内ス
ピンプローブのESRシグナルを励起した。細胞体積は
また、 32 O及び〔14C〕−ソルビトールを用いて、
Incharoensakidi A.ら、Plant Cell Physiol.Vol.29, p
1073-1075 (1988)の方法によっても測定した。
【0028】結果を図4に示す。図4においてAは対象
(pUC303−Bmにより形質転換された細胞)から
の四級アンモニウム化合物の 1H NMRスペクトルを
示し、βはpCBETにより形質転換された細胞からの
それを示す。ピークb及びcがそれぞれベタイン及びコ
リンを示す。図4から明らかなようにpCBETにより
形質転換された細胞のみがグリシンベタインを合成しそ
して蓄積した。
【0029】これらの細胞中のグリシンベタインのレベ
ルは培地中の塩濃度により変化し、表1に示すように、
非ストレス条件下での約3mMから、NaCl濃度375
mMでの45mMにわたった。これらのレベルのグリシンベ
タインは種々の細胞機能に十分な保護効果を与える(Ge
rard H. ら、Plant Cell Physiol.Vol 29, p1073-1075
(1991)、及びRhodes D. ら、Annu.Rev.Plant Physiol.P
lant Mol.Biol.Vol.44, p357-384 (1993) を参照のこ
と)。
【0030】
【表1】
【0031】(3)光合成活性 BG11−コリン培地中で2日間(対数増殖期中期)増
殖した細胞を、200mM NaClを添加したBG11
−コリン培地に移し、そして4日間培養を続けた。これ
らの細胞の光合成活性は低かったので、NaClを含有
しない新鮮なBG11−コリン培地に1日間移した後、
光合成による酸素の発生並びにPSI(光化学系I)及
びPSII(光化学系II)を、Clark−タイプ酸素電
極中で測定した。
【0032】反応媒体は100μMのDCMU(3−
(3,4−ジクロロフェニル)−ジメチル尿素)、1mM
のアスコルビン酸ナトリウム、500μMのDAD
(2,3,5,6−テトラメチル−β−フェニレンジア
ミン)、及びPSI電子輸送活性の測定のためには40
0μMのMV(メチルビオローゲン)又はPSII電子輸
送活性の測定のためには1mMのPBQ(フェニル−1,
4−ベンゾキノン)を含有していた。光合成活性はま
た、細胞を200mM NaClの存在下での浸透圧スト
レスにかけた直後にも測定した。
【0033】シネココッカスは400mMという高濃度で
NaClを含有する培地中で増殖することができるが、
300mMのNaClの存在下で4日間の増殖の後細胞は
淡黄色に変色した。この効果はpCBETにより形質転
換された細胞においては観察されず、緑色のままであっ
た。この結果を白黒写真として図6に示す。図6におい
て、右側はpCBETにより形質転換されたシネココッ
カスの培養物の写真であり、左側は対照培養物の写真で
ある。
【0034】予想通り、pCBETにより形質転換され
た細胞に比べてpUC303−Bmにより形質転換され
た細胞において、吸収スペクトルは、フィコビリゾーム
(Phycobilisome)〔C−フィコシアニン
(λ620−630nm)〕及びクロロフィル含量の劇的
な低下を示した(データーは示さず)。光合成によるO
2 の発生並びにPSI及びPSIIに関連する活性のいず
れもが、pUC303−Bmにより形質転換された対照
細胞に比べてpCBETにより形質転換された細胞にお
いて高かった。この結果を表2に示す。なお、表2の値
は3回の測定値の平均であり、その標準誤差は5%以内
であった。
【0035】
【表2】
【0036】下記の表3は、非ストレス条件下で増殖し
た細胞を高塩濃度条件(200mMNaCl)に移した後
に得られた光合成活性を示す。いずれの測定値も(特に
PSIのそれは)、対照細胞においては、塩ストレス非
存在下において得られた値に比べてほとんど瞬間的に低
下した。この低下は、pCBETにより形質転換された
細胞においては顕著でなかった。なお表3の値は3回の
測定値の平均であり、その標準誤差は5%以内であっ
た。
【0037】
【表3】
【0038】これらの観察結果が示すところによれば、
グリシンベタインの生産が、塩ストレス条件下でフィコ
ビリゾーム及びPS複合体に対して安定化効果をもたら
す。
【0039】(4)塩ストレス条件下での増殖 pUC303−Bmで形質転換された細胞(対照)及び
pCBETにより形質転換された細胞をBG11−コリ
ン培地中で2日間増殖させた後、種々のNaCl濃度の
BG11−コリン培地中で増殖せしめた。対照細胞及び
pCBETで形質転換された細胞のいずれも0.3M
NaClまでほとんど同じ増殖速度を示した。しかしな
がら、0.3Mより高いNaCl濃度において、pCB
ETで形質転換された細胞は対照細胞に比べて増殖速度
が高かった(図5のB及びC)。図5中、AはNaCl
濃度0.1M、Bは0.375M、Cは0.4Mの結果
を示す。総合的な結果が示すところによれば、プラスミ
ドpCBET中に存在するbet遺伝子はシネココッカ
ス細胞中で発現され、そして機能的蛋白質が生成した。
さらに、細胞により生産されたグリシンベタインは、塩
ストレス条件下でシネココッカス細胞に一般的に有利な
効果を生じさせた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明において用いる遺伝子群の配置を
示す図である。
【図2】図2は、シネココッカスに導入された遺伝子か
ら転写された約9kbのmRNAをNorthernブロ
ット法により検出した電気泳動図であって図面代用写真
である。
【図3】図3は、種々の条件でのコリンの取り込みを示
すグラフである。
【図4】図4は、形質転換された細胞中にグリシンベタ
イン(b)が生成したことを示すNMRスペクトル図で
ある。
【図5】図5は種々のNaCl濃度でのシネココッカス
の増殖を示すグラフである。
【図6】図6において、右側はpCBETにより形質転
換されたシネココッカスの培養物の写真であり、左側は
対照培養物の写真である。いずれも生物の形態を表わす
図面代用写真である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 グリシンベタインの合成に関与するコリ
    ンデヒドロゲナーゼ遺伝子及びベタインアルデヒドデヒ
    ドロゲナーゼ遺伝子を導入することにより環境ストレス
    に対する耐性が増強されている植物。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の植物の作出方法であっ
    て、植物に、グリシンベタインの合成に関与するコリン
    デヒドロゲナーゼ遺伝子及びベタインアルデヒドデヒド
    ロゲナーゼ遺伝子を導入することを特徴とする方法。
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