JPH0826447B2 - 曲げ疲労強度に優れた鋼製部品及びその製造法 - Google Patents
曲げ疲労強度に優れた鋼製部品及びその製造法Info
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- JPH0826447B2 JPH0826447B2 JP1175284A JP17528489A JPH0826447B2 JP H0826447 B2 JPH0826447 B2 JP H0826447B2 JP 1175284 A JP1175284 A JP 1175284A JP 17528489 A JP17528489 A JP 17528489A JP H0826447 B2 JPH0826447 B2 JP H0826447B2
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Description
【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、曲げ疲労強度に優れた鋼製部品とその製造
法に関する。
法に関する。
(従来の技術) 近年、産業界では材料の高強度化の期待がますます強
くなっている。このような状況の中で、使用中繰り返し
応力が作用するような部品、例えば歯車、各種シャフ
ト、ピニオン等の鋼製部品には、従来よりもより高い曲
げ疲労強度の賦与が必要とされている。
くなっている。このような状況の中で、使用中繰り返し
応力が作用するような部品、例えば歯車、各種シャフ
ト、ピニオン等の鋼製部品には、従来よりもより高い曲
げ疲労強度の賦与が必要とされている。
鋼製部品の曲げ疲労強度上昇のためのもっとも代表的
な手法の一つに浸炭処理がある。浸炭処理は鋼のオース
テナイト領域にて炭素を鋼の表面より浸透拡散させ、そ
の後オーステナイト領域より焼入れ焼戻し処理を行っ
て、鋼の表面を高強度の高炭素マルテンサイトとするも
のである。浸炭による曲げ疲労強度の上昇効果は、この
鋼表面の高さ炭素マルテンサイトによるところが多い。
通常このような高炭素マルテンサイトを得るためには、
浸炭処理でのカーボンポテンシャルを0.8〜1.2重量%程
度にする。
な手法の一つに浸炭処理がある。浸炭処理は鋼のオース
テナイト領域にて炭素を鋼の表面より浸透拡散させ、そ
の後オーステナイト領域より焼入れ焼戻し処理を行っ
て、鋼の表面を高強度の高炭素マルテンサイトとするも
のである。浸炭による曲げ疲労強度の上昇効果は、この
鋼表面の高さ炭素マルテンサイトによるところが多い。
通常このような高炭素マルテンサイトを得るためには、
浸炭処理でのカーボンポテンシャルを0.8〜1.2重量%程
度にする。
しかしながら、このような高炭素マルテンサイトの強
度のみにたよっただけでは疲労強度の上昇には限界があ
った。
度のみにたよっただけでは疲労強度の上昇には限界があ
った。
そこで、数々の研究・調査の結果、現在では高炭素マ
ルテンサイトの強度のみにたよるのではなく、他の疲労
限上昇のための因子をたくみに取り入れた新しい浸炭方
法が提案されている。代表的なものを以下にあげる。
ルテンサイトの強度のみにたよるのではなく、他の疲労
限上昇のための因子をたくみに取り入れた新しい浸炭方
法が提案されている。代表的なものを以下にあげる。
残留応力の活用 熱処理の際生じる残留応力は、曲げ疲労強度に大きな
影響を与える。特に、圧縮残留応力は、曲げ疲労強度を
上昇させるため、浸炭焼入れの際(特に焼入れの際)、
この圧縮残留応力を積極的に導入し疲労限を上昇させる
(本出願人が先に出願した特願昭63−143298号)。
影響を与える。特に、圧縮残留応力は、曲げ疲労強度を
上昇させるため、浸炭焼入れの際(特に焼入れの際)、
この圧縮残留応力を積極的に導入し疲労限を上昇させる
(本出願人が先に出願した特願昭63−143298号)。
高炭素浸炭処理 浸炭の際、カーボンポテンシャルを鉄−炭素状態図の
Acm点以上に保持して、炭化物を球状に析出させ、基地
の高炭素マルテンサイトと球状硬質析出物の分散とによ
り、曲げ疲労強度を上昇させる(特公昭59−35630号公
報)。
Acm点以上に保持して、炭化物を球状に析出させ、基地
の高炭素マルテンサイトと球状硬質析出物の分散とによ
り、曲げ疲労強度を上昇させる(特公昭59−35630号公
報)。
一方、浸炭処理方法のみではなく、浸炭処理に供され
る鋼の材質の研究・調査も数多く実施され、次のような
新しい浸炭用鋼もある。
る鋼の材質の研究・調査も数多く実施され、次のような
新しい浸炭用鋼もある。
浸炭異常層低減鋼 通常の肌焼鋼(例えばJIS規格SCR420、SCM420等)を
ガス浸炭すると鋼の表面近傍に浸炭異常層と称される粒
界酸化と不完全焼入組織とから構成される層が生成す
る。浸炭異常層は曲げ疲労強度に悪影響を及ぼすので、
この浸炭異常層を低減した肌焼鋼である(特公昭55−32
777号公報等)。
ガス浸炭すると鋼の表面近傍に浸炭異常層と称される粒
界酸化と不完全焼入組織とから構成される層が生成す
る。浸炭異常層は曲げ疲労強度に悪影響を及ぼすので、
この浸炭異常層を低減した肌焼鋼である(特公昭55−32
777号公報等)。
低P化による浸炭層粒界強化鋼 浸炭部品の曲げ疲労破壊によって浸炭層の破面形態は
旧オーステナイト粒界破壊となる。浸炭層の旧オースト
ナイトの境界を強化するために旧オーステナイト粒界を
脆弱化するPの粒界偏折を低減した肌焼鋼である(特願
昭60−243252号公報)。
旧オーステナイト粒界破壊となる。浸炭層の旧オースト
ナイトの境界を強化するために旧オーステナイト粒界を
脆弱化するPの粒界偏折を低減した肌焼鋼である(特願
昭60−243252号公報)。
(発明が解決しようとする課題) 以上のように、鋼製部品の曲げ疲労強度上昇のために
種々の浸炭方法、種々の浸炭用鋼は提案されており、こ
れにより鋼製部品の曲げ疲労強度は上昇したは、上記の
いずれの方法、いずれの浸炭用鋼においても次にような
共通した問題点がある。
種々の浸炭方法、種々の浸炭用鋼は提案されており、こ
れにより鋼製部品の曲げ疲労強度は上昇したは、上記の
いずれの方法、いずれの浸炭用鋼においても次にような
共通した問題点がある。
すなわち、前記のとおり曲げ疲労強度を上昇させるた
めには、鋼の表面を高炭素マルテンサイトにすることが
第一に必要であり、このためには、上記のいずれの浸炭
方法、いずれの浸炭用鋼においても浸炭処理の際には、
鋼の表面を高炭素マルテンサイトにするために、カーボ
ンポテンシャルを0.8〜1.2重量%程度にすることが必要
である。
めには、鋼の表面を高炭素マルテンサイトにすることが
第一に必要であり、このためには、上記のいずれの浸炭
方法、いずれの浸炭用鋼においても浸炭処理の際には、
鋼の表面を高炭素マルテンサイトにするために、カーボ
ンポテンシャルを0.8〜1.2重量%程度にすることが必要
である。
しかしながら、上記の方法、上記の鋼において、高炭
素マルテンサイトを得るために、このような高いカーボ
ンポテンシャルで浸炭した場合には、マトリックスは高
炭素マルテンサイトとなり高い硬度が得られるは、粒界
は相対的に著しく脆弱化するという問題がある。
素マルテンサイトを得るために、このような高いカーボ
ンポテンシャルで浸炭した場合には、マトリックスは高
炭素マルテンサイトとなり高い硬度が得られるは、粒界
は相対的に著しく脆弱化するという問題がある。
このため、曲げ疲労破壊は、浸炭部における粒界破壊
によって生起し、マトリックスを構成する高炭素マルテ
ンサイトの強度は十分に曲げ疲労強度に反映しないので
ある。
によって生起し、マトリックスを構成する高炭素マルテ
ンサイトの強度は十分に曲げ疲労強度に反映しないので
ある。
本発明は、この問題を解決し、曲げ疲労強度に優れた
鋼製部品およびその製造法の提供を目的としたものであ
る。
鋼製部品およびその製造法の提供を目的としたものであ
る。
すなわち、本発明の目的は、換言すれば、浸炭の際の
カーボンポテンシャルを0.8〜1.2重量%にしても粒界を
脆化させることなく曲げ疲労に対して、まマトリックス
を構成する高炭素マルテンサイドの強度を十分に反映さ
せた曲げ疲労強度にすぐれた鋼製部品およびその製造法
を提供することにある。
カーボンポテンシャルを0.8〜1.2重量%にしても粒界を
脆化させることなく曲げ疲労に対して、まマトリックス
を構成する高炭素マルテンサイドの強度を十分に反映さ
せた曲げ疲労強度にすぐれた鋼製部品およびその製造法
を提供することにある。
(課題を解決するための手段) 本発明物らは、上記の目的を達成するため種々検討を
重ねた結果、前述の従来技術に示したいずれの浸炭方
法、いずれの浸炭用鋼についても、次に示すような基本
的な事実があることに着目した。すなわち、マトリック
ス強度を充分に強化するためにカーボンポテンシャル0.
8〜1.2重量%で浸炭した場合、曲げ疲労による浸炭部の
破面は粒界破壊が支配的になることである。
重ねた結果、前述の従来技術に示したいずれの浸炭方
法、いずれの浸炭用鋼についても、次に示すような基本
的な事実があることに着目した。すなわち、マトリック
ス強度を充分に強化するためにカーボンポテンシャル0.
8〜1.2重量%で浸炭した場合、曲げ疲労による浸炭部の
破面は粒界破壊が支配的になることである。
この事実に基づき、本発明者らはさらに詳細な検査・
検討を進めた結果、次に示すような新規知見を得た (a)曲げ疲労により浸炭部が粒界破壊支配となる理由
は、浸炭中、旧γ粒界にフィルム状の炭化物が析出し、
これが粒界を脆弱化させる。
検討を進めた結果、次に示すような新規知見を得た (a)曲げ疲労により浸炭部が粒界破壊支配となる理由
は、浸炭中、旧γ粒界にフィルム状の炭化物が析出し、
これが粒界を脆弱化させる。
(b)浸炭中のフィルム状炭化物の析出による粒界脆化
については、微量Bの存在が有効であり、浸炭処理に先
立ってボロナイジングをして鋼中にBが浸入させておく
と、浸炭後の粒界が強化され、疲労限が大幅に上昇す
る。この際、浸炭層の破面状況から粒界破壊が大幅に減
少しているのが分かる。
については、微量Bの存在が有効であり、浸炭処理に先
立ってボロナイジングをして鋼中にBが浸入させておく
と、浸炭後の粒界が強化され、疲労限が大幅に上昇す
る。この際、浸炭層の破面状況から粒界破壊が大幅に減
少しているのが分かる。
(c)Bにより粒界強化の機構としては、(7)粒界偏
析ポロンによる粒界歪エネルギーの低下、(イ)浸炭中
のフィルム状炭化物析出の阻止である。
析ポロンによる粒界歪エネルギーの低下、(イ)浸炭中
のフィルム状炭化物析出の阻止である。
第1図(a)は従来技術の例の疲労破面の顕微鏡組織
写真であり、第1図(b)はその一部拡大写真であり、
浸炭層粒界に析出したフィルム状炭化物を示す。
写真であり、第1図(b)はその一部拡大写真であり、
浸炭層粒界に析出したフィルム状炭化物を示す。
これらの知見により、本発明者らはさらに検討を重ね
た結果、浸炭処理前にボロナイジング処理をして鋼中に
Bを浸入させて、(ア)固溶粒界偏析ボロンによる粒界
歪エネルギーの低下、および(イ)浸炭中のフィルム状
炭化物析出の阻止により、浸炭層の粒界を強化し、その
後に浸炭を行うことにより、曲げ疲労強度を上昇させる
ことができることを知り、本発明を完成した。
た結果、浸炭処理前にボロナイジング処理をして鋼中に
Bを浸入させて、(ア)固溶粒界偏析ボロンによる粒界
歪エネルギーの低下、および(イ)浸炭中のフィルム状
炭化物析出の阻止により、浸炭層の粒界を強化し、その
後に浸炭を行うことにより、曲げ疲労強度を上昇させる
ことができることを知り、本発明を完成した。
第2図に本発明による疲労破面の顕微鏡組織写真を示
すが、粒界破壊が大幅に低減しているのが分かる。
すが、粒界破壊が大幅に低減しているのが分かる。
ここに、本発明の要旨とするところは、表面に、マル
テンサイト結晶粒界に固溶BあるいはFe3(CB)を存在
させたBの浸透拡散層であって、B濃度が0.01重量%以
下のガス浸炭硬化層を備えた、Cを0.1〜0.5重量%含有
する炭素銅または合金鋼よりなることを特徴とする、曲
げ疲労強度に優れた鋼製部品である。
テンサイト結晶粒界に固溶BあるいはFe3(CB)を存在
させたBの浸透拡散層であって、B濃度が0.01重量%以
下のガス浸炭硬化層を備えた、Cを0.1〜0.5重量%含有
する炭素銅または合金鋼よりなることを特徴とする、曲
げ疲労強度に優れた鋼製部品である。
また、別の面からは、Cを0.1〜0.5重量%含有する炭
素銅および合金鋼からなる鋼製部品の浸炭焼入処理に際
して、まず浸炭焼入処理に先だち、鋼の表面にBを浸透
拡散させて、しかる後にガス浸炭、焼入、焼戻し処理を
施して、得られるガス浸炭硬化層のB濃度を0.01%以下
とすることを特徴とする曲げ疲労強度に優れた鋼製部品
の製造法である。
素銅および合金鋼からなる鋼製部品の浸炭焼入処理に際
して、まず浸炭焼入処理に先だち、鋼の表面にBを浸透
拡散させて、しかる後にガス浸炭、焼入、焼戻し処理を
施して、得られるガス浸炭硬化層のB濃度を0.01%以下
とすることを特徴とする曲げ疲労強度に優れた鋼製部品
の製造法である。
浸炭処理に先立ち、Bの浸透拡散、つまりボロナイジ
ング処理を行うことが本発明の特徴である。一般にボロ
ナイジング処理は鉄の表面に高い硬度を有する鉄−ボロ
ンの金属間化合物(FeB、Fe2B)を形成して、耐摩耗性
に向上を目的とした表面硬化法の一種である。このよう
な目的をもった方法として現在まで、例えば特開昭57−
35684号公報に記載された提案がある。
ング処理を行うことが本発明の特徴である。一般にボロ
ナイジング処理は鉄の表面に高い硬度を有する鉄−ボロ
ンの金属間化合物(FeB、Fe2B)を形成して、耐摩耗性
に向上を目的とした表面硬化法の一種である。このよう
な目的をもった方法として現在まで、例えば特開昭57−
35684号公報に記載された提案がある。
一方、本発明で行うボロナイジング処理はあくまでも
その後に行う浸炭処理の前処理であり、浸炭処理との組
合せにより曲げ疲労強度に優れた硬化層を得ようとする
ものである。
その後に行う浸炭処理の前処理であり、浸炭処理との組
合せにより曲げ疲労強度に優れた硬化層を得ようとする
ものである。
なお、浸炭処理後の浸炭硬化層は高炭素マルテンサイ
トを主体として、Fe3(CB)を含む硬化層であり、ボロ
ナイジング単独処理によるFe2B、FeBを主体として耐摩
耗性向上を目的とした硬化層とは異なる。実際にボロナ
イジング単独処理を行って得た硬化層には、曲げ疲労強
度の改善効果はない。従って、本発明は特開昭57−3568
4号公報に記載された提案とは、それぞれの目的、構成
およびと効果を全く異にするものである。
トを主体として、Fe3(CB)を含む硬化層であり、ボロ
ナイジング単独処理によるFe2B、FeBを主体として耐摩
耗性向上を目的とした硬化層とは異なる。実際にボロナ
イジング単独処理を行って得た硬化層には、曲げ疲労強
度の改善効果はない。従って、本発明は特開昭57−3568
4号公報に記載された提案とは、それぞれの目的、構成
およびと効果を全く異にするものである。
(作用) 本発明において各構成要件を限定した理由を以下に説
明する。なお、本明細書において「%」は特にことわり
がない限り「重量%」を意味するものとする。
明する。なお、本明細書において「%」は特にことわり
がない限り「重量%」を意味するものとする。
Cを0.1〜0.5%としたのは、次の理由による。
Cは非硬化層である芯部の強度を上昇させ、かつ芯部
の靱性を低下させる作用がある元素である。しかし、、
C含有量が0.1%未満であると芯部の強度は十分得られ
なく、硬化層を含めた材料全体の強度は不足する。従っ
て下限を0.1%とする。また、0.5%を超えて添加する
と、芯部の強度は上昇するが、逆に芯部の靱性は低下
し、材料全体の靱性が不足してしまう。そこで、上限を
0.5%とする。
の靱性を低下させる作用がある元素である。しかし、、
C含有量が0.1%未満であると芯部の強度は十分得られ
なく、硬化層を含めた材料全体の強度は不足する。従っ
て下限を0.1%とする。また、0.5%を超えて添加する
と、芯部の強度は上昇するが、逆に芯部の靱性は低下
し、材料全体の靱性が不足してしまう。そこで、上限を
0.5%とする。
なお、C以外の元素については特に制限を設ける必要は
なく、この種の鋼製部品に用いられる一般的な範囲でよ
い。例えば、Si:0〜2.0%、Mn:0.2〜2.0%。P:0〜0.03
%、S:0〜0.10%程度は許容される。
なく、この種の鋼製部品に用いられる一般的な範囲でよ
い。例えば、Si:0〜2.0%、Mn:0.2〜2.0%。P:0〜0.03
%、S:0〜0.10%程度は許容される。
ここで、対象を炭素鋼および合金鋼とした理由は次の
通りである。
通りである。
(1)曲げ疲労強度が必要な浸炭鋼製部品の中には、
用途によっては大型の部品もある。このような大型部品
の場合は、焼入性確保のため合金鋼が多数使用されるか
らである。
用途によっては大型の部品もある。このような大型部品
の場合は、焼入性確保のため合金鋼が多数使用されるか
らである。
(2)合金鋼に添加される合金元素の種類にかかわら
ず、本発明による表面硬化法は曲げ疲労強度の上昇を実
現できる作用があるからである。
ず、本発明による表面硬化法は曲げ疲労強度の上昇を実
現できる作用があるからである。
また、浸炭焼入処理に先立ち鋼の表面にBを浸透拡散
させることは、本発明の最大の必須要素であり、これに
は次の2つの作用がある。
させることは、本発明の最大の必須要素であり、これに
は次の2つの作用がある。
(3)浸炭中の鋼のγ粒界へのフィルム状の炭化物の析
出を阻止し、粒界脆化を起こさない。
出を阻止し、粒界脆化を起こさない。
(4)浸透拡散したBは、浸炭後には固溶状態あるいは
Fe3(CB)となって粒界に偏析して、粒界の歪エネルギ
ーを低下させて浸炭層の粒界を強化する。
Fe3(CB)となって粒界に偏析して、粒界の歪エネルギ
ーを低下させて浸炭層の粒界を強化する。
以上の(3)、(4)の作用により、本発明において
は浸炭層の粒界が強化され、曲げ疲労強度の上昇を実現
することができる。
は浸炭層の粒界が強化され、曲げ疲労強度の上昇を実現
することができる。
Bの浸透拡散処理を浸炭に先立って行う理由は、次の
如くである。
如くである。
Bは浸炭中の銅のγ粒界へのフィルム状の炭化物の析
出を防止する効果を有するが、この効果は浸炭処理の際
にすでに鋼中のBが存在しなければ期待できない。たと
えば、浸炭を行って鋼のγ粒界へフィルム状の炭化物が
析出した後にBを浸透拡散してもすでに析出したフィル
ム状の炭化物は除去できないのである。
出を防止する効果を有するが、この効果は浸炭処理の際
にすでに鋼中のBが存在しなければ期待できない。たと
えば、浸炭を行って鋼のγ粒界へフィルム状の炭化物が
析出した後にBを浸透拡散してもすでに析出したフィル
ム状の炭化物は除去できないのである。
浸炭焼入は鋼の表面を高炭素マルテンサイトとして鋼
の表面のマトリックス強度を上昇させ、鋼の曲げ疲労強
度を上昇させる作用がある。
の表面のマトリックス強度を上昇させ、鋼の曲げ疲労強
度を上昇させる作用がある。
浸炭処理条件はガス浸炭法とする。これはガス法によ
り浸透拡散層に存在するBをマルテンサイトの結晶の粒
界に固溶BあるいはFe3(CB)として存在させることが
できるからである。鋼の表面のマトリックスを充分に強
化するためには、0.7〜1.2%のカーボンポテンシャルで
処理することが望ましい。
り浸透拡散層に存在するBをマルテンサイトの結晶の粒
界に固溶BあるいはFe3(CB)として存在させることが
できるからである。鋼の表面のマトリックスを充分に強
化するためには、0.7〜1.2%のカーボンポテンシャルで
処理することが望ましい。
焼入はオーステナイト固溶体から冷却により、過飽和
固溶体(マルテンサイト)を生成させ、浸炭層および芯
部を硬化させる工程である。曲げ疲労限の向上のために
は一般には、十分に焼きを入れて、表面硬度、芯部硬度
ともに高くすることが望ましいが、鋼製部品の用途によ
っては、焼入歪の軽減を考慮して焼きの入りを意識的に
不充分にすることもあり、この点、限定を必要とするも
のではない。従って本発明では、用度に応じて、焼入後
の具体的な材料の硬度規定および焼入方法を適宜選定す
ればよい。なお、焼きの入りの程度によって本発明の効
果は全く影響されることがないというまでもない。
固溶体(マルテンサイト)を生成させ、浸炭層および芯
部を硬化させる工程である。曲げ疲労限の向上のために
は一般には、十分に焼きを入れて、表面硬度、芯部硬度
ともに高くすることが望ましいが、鋼製部品の用途によ
っては、焼入歪の軽減を考慮して焼きの入りを意識的に
不充分にすることもあり、この点、限定を必要とするも
のではない。従って本発明では、用度に応じて、焼入後
の具体的な材料の硬度規定および焼入方法を適宜選定す
ればよい。なお、焼きの入りの程度によって本発明の効
果は全く影響されることがないというまでもない。
浸炭焼入処理の後に行う焼戻処理には、浸炭焼入後の
浸炭層を高靱性化する作用があり、鋼の浸炭による表面
効果処理においては必須の工程である。焼戻条件は特に
指定しないが、例えば通常の浸炭焼入処理の後行われる
170〜200℃×2hr→ACの条件が本発明においても有効で
ある。
浸炭層を高靱性化する作用があり、鋼の浸炭による表面
効果処理においては必須の工程である。焼戻条件は特に
指定しないが、例えば通常の浸炭焼入処理の後行われる
170〜200℃×2hr→ACの条件が本発明においても有効で
ある。
浸炭硬化層のB濃度を重量比で0.01以下としたのは、
次の理由による。
次の理由による。
浸炭硬化層のフィルム状炭化物の粒界析出抑制および
粒界歪エネルギー緩和による粒界強化に必要な浸炭層中
のB濃度は、重量比で数十ppmで充分であり、これ以上
添加しても効果は変わらないからである。一方、0.01%
を越えると、この後に行う浸炭処理でのCの浸透が困難
となり充分な硬化層を得ることが出来ないからである。
粒界歪エネルギー緩和による粒界強化に必要な浸炭層中
のB濃度は、重量比で数十ppmで充分であり、これ以上
添加しても効果は変わらないからである。一方、0.01%
を越えると、この後に行う浸炭処理でのCの浸透が困難
となり充分な硬化層を得ることが出来ないからである。
なお、B濃度は、上記の作用効果を奏するためには、
0.0010%以上含有することが望ましい。
0.0010%以上含有することが望ましい。
本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、
これは本発明の例示であり、これにより本発明が限定さ
れるものではない。
これは本発明の例示であり、これにより本発明が限定さ
れるものではない。
実施例1 JIS規格SCR420鋼を溶製し、インゴットを30φに鍛造
して焼準を行って第3図に示す小野式回転曲げ疲労試験
片を2つ作製した。次にこの試験片を一方はボロナイジ
ングと浸炭とを行い、他方は浸炭のみを行って、双方と
も焼戻しを行った後、小野式回転曲げ疲労テストを行っ
た。
して焼準を行って第3図に示す小野式回転曲げ疲労試験
片を2つ作製した。次にこの試験片を一方はボロナイジ
ングと浸炭とを行い、他方は浸炭のみを行って、双方と
も焼戻しを行った後、小野式回転曲げ疲労テストを行っ
た。
ボロナイジング処理はガス法により行い、具体的には
BCl3とArとを体積比で1:50の割合で混合したガス雰囲気
中で、600℃に加熱して0.5hr保持した後空冷することに
より行った。
BCl3とArとを体積比で1:50の割合で混合したガス雰囲気
中で、600℃に加熱して0.5hr保持した後空冷することに
より行った。
浸炭処理もガス法で行い、カーボンポテンシャル0.8
%の雰囲気で930℃加熱で2hr保持した後、常温の油中に
焼入した。
%の雰囲気で930℃加熱で2hr保持した後、常温の油中に
焼入した。
焼戻処理は、170℃加熱で2hr保持した後空冷して行っ
た。
た。
使用した鋼組成は第1表の通りである。
この結果、第2表に示すようにボロナイジングと浸炭
処理とを行った試料は、浸炭のみの試料に比べ約10%疲
労限を上昇することができる。また、試験片の破面の中
に粒界破面が占める割合(粒界破面率)は、浸炭前には
ボロナイジング処理することにより著しく減少した。こ
れは浸炭硬化層での粒界の強度が枠内に比べ相対的に上
昇したものと考えられる。そしてこの結果、疲労限が上
昇したものと考えられる。
処理とを行った試料は、浸炭のみの試料に比べ約10%疲
労限を上昇することができる。また、試験片の破面の中
に粒界破面が占める割合(粒界破面率)は、浸炭前には
ボロナイジング処理することにより著しく減少した。こ
れは浸炭硬化層での粒界の強度が枠内に比べ相対的に上
昇したものと考えられる。そしてこの結果、疲労限が上
昇したものと考えられる。
実施例2 第3表に示す供試鋼A〜Dを溶製し、実施例1の要領
で疲労試験を行った。供試鋼AはJIS規格S20Cの炭素鋼
である。供試鋼BはJIS規格SCM420鋼、供試鋼C、D
は、各々、特公昭55−32777号公報および特開昭60−243
2523号公報で提案されている浸炭異常層低減鋼および低
Pによる浸炭層粒界強化鋼である。
で疲労試験を行った。供試鋼AはJIS規格S20Cの炭素鋼
である。供試鋼BはJIS規格SCM420鋼、供試鋼C、D
は、各々、特公昭55−32777号公報および特開昭60−243
2523号公報で提案されている浸炭異常層低減鋼および低
Pによる浸炭層粒界強化鋼である。
この結果、第4表に示すように炭素鋼および合金鋼に
かかわらず、また、現在提案されている高強度浸炭用鋼
にかかわらず、本発明による浸炭方法により曲げ疲労強
度は上昇したことがわかる。
かかわらず、また、現在提案されている高強度浸炭用鋼
にかかわらず、本発明による浸炭方法により曲げ疲労強
度は上昇したことがわかる。
実施例3 実施例1と同様にしてJIS規格SCR420鋼の30φ焼準材
から小野式回転曲げ疲労試験片を製作した。この後、ボ
ロナイジング処理の条件を種々変更させて、鋼表面のB
浸炭量を変化させ、浸炭焼入焼戻処理を行い、小野式回
転曲げ疲労試験を実施し、曲げ疲労限に及ぼす浸炭硬化
層中のB量の影響を調査した。
から小野式回転曲げ疲労試験片を製作した。この後、ボ
ロナイジング処理の条件を種々変更させて、鋼表面のB
浸炭量を変化させ、浸炭焼入焼戻処理を行い、小野式回
転曲げ疲労試験を実施し、曲げ疲労限に及ぼす浸炭硬化
層中のB量の影響を調査した。
ボロナイジング処理条件は温度を600〜800℃、処理時
間を0.5〜2.0hr変化させ、処理雰囲気は実施例1と同様
にBCl3とAr(1:50)の混合ガス中とした。
間を0.5〜2.0hr変化させ、処理雰囲気は実施例1と同様
にBCl3とAr(1:50)の混合ガス中とした。
浸炭、焼入、焼戻処理は実施例1と同様とした。浸炭
硬化層中のB濃度の測定は、ボロナイジング+浸炭処理
+焼戻した小野式回転疲労試験片の横断面の硬度分布を
測定して、硬化深さ(芯部硬さに収束した深さ)に相当
する厚みを研削し切粉を分析することにより行った。
硬化層中のB濃度の測定は、ボロナイジング+浸炭処理
+焼戻した小野式回転疲労試験片の横断面の硬度分布を
測定して、硬化深さ(芯部硬さに収束した深さ)に相当
する厚みを研削し切粉を分析することにより行った。
この結果、第5表に示すように、浸炭硬化層中のボロ
ン濃度は0.0040〜0.0060wt%が最適である。処理の
温度を上昇すると、硬化層中のB濃度が上昇しボロナイ
ンジング処理による疲労限の上昇は小さくなる。本例の
結果より、100ppm以下の濃度が最適であるといえる。
ン濃度は0.0040〜0.0060wt%が最適である。処理の
温度を上昇すると、硬化層中のB濃度が上昇しボロナイ
ンジング処理による疲労限の上昇は小さくなる。本例の
結果より、100ppm以下の濃度が最適であるといえる。
(発明の効果) 以上説明したように構成された本発明により浸炭鋼部
品の問題点である、曲げ疲労による浸炭層の粒界割れを
解決して、曲げ疲労強度の向上を達成し、繰り返し応力
が作用するような歯車、各種シャフト、ピニオン等に応
力でき、従来よりもより高い応力の負荷を実現できると
いう顕著な効果を奏することができる。
品の問題点である、曲げ疲労による浸炭層の粒界割れを
解決して、曲げ疲労強度の向上を達成し、繰り返し応力
が作用するような歯車、各種シャフト、ピニオン等に応
力でき、従来よりもより高い応力の負荷を実現できると
いう顕著な効果を奏することができる。
第1図(a)、(b)は、従来技術での疲労破面に観察
されて浸炭層粒界に析出したフィルム状炭化物の顕微鏡
金属組織写真; 第2図は、本発明製品の疲労破面における顕微鏡金属組
織写真;および 第3図は、曲げ回転疲労試験片の外観を示す略式断面図
である。
されて浸炭層粒界に析出したフィルム状炭化物の顕微鏡
金属組織写真; 第2図は、本発明製品の疲労破面における顕微鏡金属組
織写真;および 第3図は、曲げ回転疲労試験片の外観を示す略式断面図
である。
Claims (2)
- 【請求項1】表面に、マルテンサイト結晶粒界に固溶B
あるいはFe3(CB)を存在させたBの浸透拡散層であっ
て、B濃度が0.01重量%以下のガス浸炭硬化層を備え
た、Cを0.1〜0.5重量%含有する炭素鋼または合金鋼よ
りなることを特徴とする、曲げ疲労強度に優れた鋼製部
品。 - 【請求項2】Cを0.1〜0.5重量%含有する炭素鋼および
合金鋼からなる鋼製部品の浸炭焼入処理に際して、まず
浸炭焼入処理に先だち、鋼の表面にBを浸透拡散させ
て、しかる後にガス浸炭、焼入、焼戻し処理を施して、
得られるガス浸炭硬化層のB濃度を0.01%以下とするこ
とを特徴とする曲げ疲労強度に優れた鋼製部品の製造
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1175284A JPH0826447B2 (ja) | 1989-07-06 | 1989-07-06 | 曲げ疲労強度に優れた鋼製部品及びその製造法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1175284A JPH0826447B2 (ja) | 1989-07-06 | 1989-07-06 | 曲げ疲労強度に優れた鋼製部品及びその製造法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0339460A JPH0339460A (ja) | 1991-02-20 |
JPH0826447B2 true JPH0826447B2 (ja) | 1996-03-13 |
Family
ID=15993436
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP1175284A Expired - Fee Related JPH0826447B2 (ja) | 1989-07-06 | 1989-07-06 | 曲げ疲労強度に優れた鋼製部品及びその製造法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0826447B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP1333105B1 (de) * | 2002-02-04 | 2008-04-02 | Ipsen International GmbH | Verfahren zur Wärmebehandlung metallischer Werkstücke sowie wärmebehandeltes Werkstück |
CN113322428A (zh) * | 2021-05-26 | 2021-08-31 | 盐城市金洲机械制造有限公司 | 一种减速机齿轮热处理方法 |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS5933190B2 (ja) * | 1980-12-05 | 1984-08-14 | トヨタ自動車株式会社 | 低炭素ボロン鋼の熱処理方法 |
DE3322957C2 (de) * | 1983-06-25 | 1985-05-15 | Hauni-Werke Körber & Co KG, 2050 Hamburg | Verfahren zum Härten der Oberfläche von Gegenständen aus Eisenwerkstoff |
JPS62127459A (ja) * | 1985-11-28 | 1987-06-09 | Kawasaki Heavy Ind Ltd | 鋼の浸炭処理方法 |
-
1989
- 1989-07-06 JP JP1175284A patent/JPH0826447B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0339460A (ja) | 1991-02-20 |
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