JPH08259782A - 熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体及びその製造方法 - Google Patents

熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体及びその製造方法

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JPH08259782A
JPH08259782A JP12140595A JP12140595A JPH08259782A JP H08259782 A JPH08259782 A JP H08259782A JP 12140595 A JP12140595 A JP 12140595A JP 12140595 A JP12140595 A JP 12140595A JP H08259782 A JPH08259782 A JP H08259782A
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和敏 原口
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 フェノ−ル樹脂及び/又はフェノ−ル樹脂を
含有する熱硬化性樹脂の溶液中で、シリコンアルコキシ
ド及び/又はその低縮合物を含有する金属アルコキシド
の加水分解・重縮合を行なうのと平行して、溶媒の除去
または樹脂の硬化反応を行わせることにより、熱硬化性
樹脂中に平均径0.01μm〜5μmの金属酸化物を、
マクロ相分離を示すこと無く均質に含有させた、熱硬化
性樹脂と金属酸化物の複合体、熱硬化性樹脂と金属酸化
物の複合体未硬化物、及びその製造方法、並びにクラッ
クを含まない該複合体成形物の製造方法。 【効果】 本発明は、熱硬化性樹脂の硬度等の表面特
性、及び力学物性、特に強度、弾性率、及び伸びをいず
れも向上せしめた、成形材料、塗料材料、膜等に有用
な、熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体、及びその製造
方法、並びにクラックを含まない複合成形物の製造方法
を提供できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は金属アルコキシドの加水
分解・重縮合反応により得られる金属酸化物と熱硬化性
樹脂との複合体及びその製造方法、その成形方法に関す
る。本発明による熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体
は、透明性、硬度等の表面特性、及び力学物性、特に強
度、弾性率、伸びや耐衝撃性、摺動・摩擦特性に優れて
おり、成形材料、塗料、膜等の分野で有用である。
【0002】
【従来の技術】フェノ−ル樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹
脂等の熱硬化性樹脂は耐熱性、耐久性、力学物性および
硬度等の表面特性等に優れることから、成形材料、塗膜
材料、バインダ−材料等として電気、電子、自動車、建
築、土木を始めとする広い分野で使用されているが、要
求性能の高度化に伴い、複合化による熱硬化性樹脂特性
の改良研究が幅広く行われている。
【0003】特に無機材料を強化素材とする複合化は、
力学物性、耐熱性、電気特性等のポリマ−の諸特性を大
きく向上させるものとして、現在、最も広く行われてい
る複合化手法である。通常、複合化に用いる無機素材と
しては、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状材料や、炭酸
カルシウム、シリカ、チタニア、酸化マグネシウム等の
粉末状材料がある。
【0004】実際には、これら無機素材の1種または2
種以上を、溶融ブレンド法または溶液ブレンド法により
樹脂に分散・混合して使用される。この複合化において
目的とする物性を向上させ、高性能の複合材料を得るた
めには、添加無機素材を不均一に凝集させることなく出
来るだけ均質に分散・混合することが重要である。
【0005】一方、より高度の物性向上を達成するため
に、無機材料の形状を小さくし、微粒子形態とすること
が検討されている。しかし、一般に無機素材が微粒子状
になるほど均質な混合・分散は難しくなり特性の向上も
制限される問題がある。
【0006】又、微粒子になるほど無機素材の価格は高
くなる問題もある。現在、通常では10μm前後の無機
強化素材を用いるのが最も一般的で、目的に応じて1〜
数μmの形状のもの、または無機素材種によっては1μ
m以下の微粒子状のものが使用されている。
【0007】このような種々の大きさの無機素材と樹脂
を、目的とする割合で均質に、かつ容易に分散混合でき
れば、有機ポリマ−と無機素材の複合材料にとって新た
な可能性が開けると考えられる。
【0008】一方、シリカ、チタニアを始めとする金属
酸化物の製造法として、金属アルコキシドの加水分解・
重縮合による、いわゆるゾル−ゲル反応を利用した方法
が報告されている。最近、このゾル−ゲル反応を有機ポ
リマ−溶液中で行わせることで、得られる金属酸化物を
ポリマ−中に分散させる方法が検討されている。
【0009】これまでマトリックスとしての有機ポリマ
−としては、主に水溶性のポリマ−やいくつかの熱可塑
性高分子が検討されている。例えばポリエチレングリコ
−ル、ポリビニルアルコ−ル、ポリビニルピドリロン、
ポリオキサゾリン、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム
等の水溶性高分子やポリオキシテトラメチレン、ポリエ
−テルケトン、(メタ)アクリル酸系重合体の他、両末
端にシラノ−ル基を有するポリジメチルシロキサン等の
ヒドロキシル基含有シリコン樹脂修飾体、シリコ−ンエ
ラストマ−等が検討され、各樹脂の物性向上が計られて
いる。
【0010】一方、熱硬化性樹脂としては、ポリイミド
とシリカとの複合体が、ポリイミドの前駆体であるポリ
アミック酸とシリコンアルコキシドとの複合化により主
に検討されている(例えば、Journal of M
aterial Chemistry、2巻、679
(1992))。このポリアミック酸を用いたポリイミ
ド/シリカの複合体の場合、シリカ含有量が増すと、複
合体は不透明となり、複合したシリカの粒径を自由に制
御できていないと共に、走差型電子顕微鏡で観測される
界面は殆ど剥離しており、複合体の透明性に拘らず界面
の密着性は不十分である。
【0011】また、得られた複合体の力学物性は弾性率
を除いていずれも樹脂単体よりも大きく低下している。
このことは金属アルコキシドをポリマ−溶液中で反応さ
せて金属酸化物を生成させると共にマトリックスポリマ
−を熱不融化させた熱硬化性樹脂/金属酸化物複合体に
おいても容易には優れた力学物性等を有する高性能材料
が得られないことを示している。
【0012】該ポリイミド/シリカ複合体においては、
更に、ポリアミック酸としてエトキシシリル基を導入す
るなどの化学変性をしたものを用いたり、金属アルコキ
シドの出発物質としてフェニルトリエトキシシランを用
いたりすることで複合体の物性向上が検討されている
が、せいぜい弾性率が向上するのみで強度、伸びの樹脂
単体に比しての大きな向上は達成されていない。また、
かかる化学変性を伴う方法はコスト的にも問題があり、
一般的に採用することは困難である。
【0013】その他の熱硬化性樹脂としては、天然樹脂
であり構造が不明瞭なセラック樹脂を用いた例(特開平
05−65418公報)やケトン樹脂を用いた例(特開
平05−331353公報)以外は、エポキシ樹脂、フ
ェノ−ル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂を始めとする各
種熱硬化性樹脂との複合化検討は報告されていない。ま
た、上記例を含めて特に強度、伸び、弾性率等の力学物
性を樹脂単体より大きく向上させた例は報告されていな
い。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、熱硬化性樹脂の強度、弾性率、伸びを始め
とする各種力学物性や硬度等の表面特性などを向上せし
めた、成形材料、塗料材料、膜等に有用な、熱硬化性樹
脂と金属酸化物の複合体、及びその製造方法、並びにク
ラックを含まない複合成形物の製造方法を提供すること
にある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、熱硬化性
樹脂と金属酸化物からなる均質で複合効果の高い複合体
を得るべく鋭意研究に取り組んだ結果、熱硬化性樹脂と
してフェノ−ル樹脂またはフェノ−ル樹脂を含有する熱
硬化性樹脂を用いること、また金属酸化物として該熱硬
化性樹脂溶液中でシリコンアルコキシド及び/またはそ
の低縮合物を含有する金属アルコキシドの加水分解・重
縮合を行うことにより得られる金属酸化物を用いるこ
と、
【0016】且つ、該金属酸化物がマクロな相分離をす
ることなく、ミクロに且つ均質に分散していること、ま
た分散粒子の大きさが制御されていること、更に分散し
た金属酸化物がマトリックス樹脂とよく密着した界面を
持つことが重要であることを見いだし、その製造条件を
検討し、本発明を完成するに至った。
【0017】即ち、本発明は、フェノ−ル樹脂及び/又
はフェノ−ル樹脂を含有する熱硬化性樹脂の溶液中で、
シリコンアルコキシド及び/又はその低縮合物を含有す
る金属アルコキシドの加水分解・重縮合を行なうのと平
行して、溶媒の除去及び/または樹脂の硬化反応を行わ
せることにより、熱硬化性樹脂中に平均径0.01μm
〜5μmの金属酸化物を含有率1〜35重量%で、マク
ロ相分離を示すこと無く均質に含有させた、熱硬化性樹
脂と金属酸化物の複合体である。
【0018】また本発明は、金属アルコキシドと、水及
び/または溶媒、及び/または触媒からなる溶液を調製
し、且つその溶液自体のゲル化時間の90%以内の時間
で予め反応させたものと、フェノ−ル樹脂及び/または
フェノ−ル樹脂を含有する熱硬化性樹脂の溶液とからな
る均質溶液を調製し、次いで該均質溶液中で金属アルコ
キシドの更なる加水分解・重縮合を行うと共に、溶媒の
除去及び/または樹脂の硬化反応を行わせることによ
り、熱硬化性樹脂中に平均径0.01μm〜5μmの金
属酸化物を含有率1〜35重量%で、マクロ相分離を示
すこと無く均質に含有させた、熱硬化性樹脂と金属酸化
物の複合体である。
【0019】本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合
体は、フェノ−ル樹脂及び/又はフェノ−ル樹脂を含有
する熱硬化性樹脂が、金属アルコキシドと相溶性のある
溶媒に可溶なものであること、またフェノ−ル樹脂及び
/又はフェノ−ル樹脂を含有する熱硬化性樹脂が、金属
アルコキシドの加水分解により得られるアルコ−ルに可
溶なものであることを特徴とする。
【0020】また本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の
複合体は、フェノ−ル樹脂が、特にレゾ−ル系フェノ−
ル樹脂、ハイオルト系フェノ−ル樹脂であることを特徴
とする。更に、本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複
合体は、用いるフェノ−ル樹脂が、有機溶媒無しで溶融
成形可能であり、且つ有機溶剤に可溶なノボラック系フ
ェノ−ル樹脂であることを特徴とする。
【0021】また本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の
複合体は、熱硬化性樹脂がフェノ−ル樹脂であり、且つ
金属アルコキシドがシリコンアルコキシド及び/又はシ
リコンアルコキシドの低縮合物から成ることを特徴とす
る。該金属アルコキシドとしては、テトラアルコキシシ
ラン及び/又はその低縮合物100重量部に対して、モ
ノアルキルトリアルコキシシラン及び/またはジアルキ
ルジアルコキシシランを1〜40重量部含んだものを用
いることが好ましい。
【0022】また本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の
複合体は、含有される金属酸化物の大きさが、平均径
0.01μmから0.2μm未満であること、または含
有される金属酸化物の大きさが平均径0.2μmから5
μmであることを特徴とする。更に、これらの熱硬化性
樹脂と金属酸化物の複合体は、光透過率が50%以上で
あり、透明性を有するものである。
【0023】更に、本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物
の複合体は、熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体の曲げ
強度、曲げ弾性率及び破断伸び値の全てが、熱硬化性樹
脂単体の値より大きいこと特徴とするものであり、該複
合体の表面硬度の熱硬化性樹脂単体の表面硬度に対する
比が1.05以上であることを特徴とする。
【0024】本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合
体は、更に金属やガラス等の無機繊維及び/または粉
末、セルロ−スやアラミド等の有機繊維及び/または粉
末を含んでいても良い。また繊維やミルドもしくはそれ
らを基材とする織布や不織布の表面に、本発明の熱硬化
性樹脂と金属酸化物の複合体を0.5重量%以上被覆し
てなる複合体も本発明に含まれる。
【0025】更に、本発明は、フェノ−ル樹脂及び/又
はフェノ−ル樹脂を含有する熱硬化性樹脂の溶液中で、
シリコンアルコキシド及び/又はその低縮合物を含有す
る金属アルコキシドの加水分解・重縮合を行なうのと平
行して、式1で表わされる見かけの溶剤含有率が1〜2
0重量%の範囲まで溶剤を除去して得られる、熱硬化性
樹脂と金属酸化物の複合体未硬化物を含むものである。
【0026】(式1) 見かけの溶剤含有率(重量%)={(溶剤含有の複合体
重量)−(溶剤完全除去後の複合体重量)}/(溶剤完
全除去後の複合体重量)×100
【0027】また本発明は、有機溶媒無しで溶融成形可
能であり且つ有機溶媒に可溶なノボラック系フェノ−ル
樹脂の溶液中で、シリコンアルコキシド及び/又はその
低縮合物を含有する金属アルコキシドの加水分解・重縮
合を行なった後、ノボラック系フェノ−ル樹脂の溶融温
度以下の温度で、用いた有機溶媒を乾燥除去して得られ
ることを特徴とする、熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合
体未硬化物を含む。
【0028】本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合
体未硬化物は、予め硬化剤を含ませたノボラック系フェ
ノ−ル樹脂を用いることを特徴とし、更に金属やガラス
等の無機繊維及び/または粉末、セルロ−スやアラミド
等の有機繊維及び/または粉末を含んで成るものも含
む。
【0029】本発明は、フェノ−ル樹脂及び/又はフェ
ノ−ル樹脂を含有する熱硬化性樹脂の溶液中で、シリコ
ンアルコキシド及び/又はその低縮合物を含有する金属
アルコキシドの加水分解・重縮合を行なうのと平行し
て、溶媒の除去及び/または樹脂の硬化反応を行わせる
ことにより、金属酸化物をマクロ相分離を示すこと無く
均質に複合体中に含有させることを特徴とする熱硬化性
樹脂と金属酸化物の複合体の製造方法である。
【0030】本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合
体の製造方法は、詳しくは下記の工程からなる。 (1)金属アルコキシド及び水に対して共に混和性のあ
る溶媒に、フェノ−ル樹脂及び/又はフェノ−ル樹脂を
含有する熱硬化性樹脂を溶解した樹脂溶液を調製する。
【0031】(2)樹脂溶液に、シリコンアルコキシド
及び/又はシリコンアルコキシドの低縮合物を含有する
金属アルコキシドと、金属アルコキシド及び水に対して
共に混和性のある溶媒と、必要に応じて水及び/又は触
媒とを加えて、該混合溶液が相分離すること無く均質溶
液を形成するように調製する。
【0032】(3)該混合溶液がゲル化する前に金属ア
ルコキシドの加水分解及び重縮合反応と溶媒の除去及び
樹脂の硬化反応を平行して行ない、マクロな相分離を生
じず、均質な熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体を得
る。
【0033】本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合
体の製造方法は、金属アルコキシドと水及び/または触
媒からなる溶液を調製し、且つその溶液自体のゲル化時
間の90%以内の時間予め反応させたものと、フェノ−
ル樹脂及び/またはフェノ−ル樹脂を含有する熱硬化性
樹脂の溶液とからなる均質溶液を調製し、次いで該均質
溶液中で金属アルコキシドの更なる加水分解・重縮合を
行うと共に、溶媒の除去及び/または樹脂の硬化反応を
行わせることにより、金属酸化物をマクロ相分離を示す
こと無く均質に含有させた、熱硬化性樹脂と金属酸化物
の複合体の製造方法である。
【0034】更に本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の
複合体の製造方法は、下記の工程からなる熱硬化性樹脂
と金属酸化物の複合体の製造方法である。 (1)金属アルコキシド及び水に対して共に混和性のあ
る溶媒に、フェノ−ル樹脂及び/又はフェノ−ル樹脂を
含有する熱硬化性樹脂を溶解した樹脂溶液を調製する。
【0035】(2)シリコンアルコキシド及び/又はシ
リコンアルコキシドの低縮合物を含有する金属アルコキ
シドと、該金属アルコキシド及び水に対して共に混和性
のある溶媒、及び水と、及び必要に応じて触媒とを含む
溶液を調製し、且つその溶液自体のゲル化時間の90%
以内の時間予め反応させた金属アルコキシド液を調製す
る。
【0036】(3)樹脂溶液、及び金属アルコキシド
液、及び必要に応じて両液に混和性のある溶媒と、及び
必要に応じて水及び/又は触媒とを含む混合溶液を、相
分離すること無く均質溶液を形成するように調製する。 (4)該混合溶液がゲル化する前に金属アルコキシドの
更なる加水分解及び重縮合反応と溶媒の除去及び樹脂の
硬化反応を平行して行ない、マクロな相分離を生じず、
均質な熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体を得る。
【0037】本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合
体の製造方法は、熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体に
含有される金属酸化物の大きさが平均径0.01μm〜
5μmであること、該複合体中の金属酸化物の含有率が
1〜35重量%であることを特徴とする。
【0038】また水が金属アルコキシドに対して0.5
〜12モル比であり、かつ溶媒量が金属アルコキシドと
水を混和させるに足る量であること、熱硬化性樹脂と金
属アルコキシドを含む溶液に水を含ませず、溶媒キャス
ト時に接触させた空気中の水分により金属アルコキシド
の加水分解・重縮合を進めることを特徴とする製造方法
である。
【0039】本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合
体の製造方法に用いられる触媒は有機酸もしくは無機酸
であり、その量が金属アルコキシドに対して0〜0.3
モル比である。またフェノ−ル樹脂及び/又はフェノ−
ル樹脂を含有する熱硬化性樹脂は、金属アルコキシドと
相溶性のある溶媒に可溶であること、更に詳しくは、フ
ェノ−ル樹脂及び/又はフェノ−ル樹脂を含有する熱硬
化性樹脂が、金属アルコキシドの加水分解により得られ
るアルコ−ルに可溶なものであることを特徴とする。
【0040】また本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の
複合体の製造方法に用いるフェノ−ル樹脂は、レゾ−ル
系フェノ−ル樹脂、ハイオルト系フェノ−ル樹脂である
ことを特徴とする。また金属アルコキシドが、シリコン
アルコキシドまたはその低縮合物であることを特徴と
し、該金属アルコキシドが、特にテトラアルコキシシラ
ン及び/又はその低縮合物100重量部に対して、モノ
アルキルトリアルコキシシランまたはジアルキルジアル
コキシシランを1〜40重量部含んだものであることを
特徴とする製造方法である。
【0041】更に本発明は、フェノ−ル樹脂及び/又は
フェノ−ル樹脂を含有する熱硬化性樹脂の溶液中で、シ
リコンアルコキシド及び/又はその低縮合物を含有する
金属アルコキシドの加水分解・重縮合を行なうのと平行
して、式1で表わされる見かけの溶剤含有率が1〜20
重量%となるまで溶剤除去を行なうことを特徴とする、
熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体未硬化物の製造方法
を含むものである。
【0042】(式1) 見かけの溶剤含有率(重量%)={(溶剤含有の複合体
重量)−(溶剤完全除去後の複合体重量)}/(溶剤完
全除去後の複合体重量)×100
【0043】本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合
体未硬化物の製造方法は、有機溶媒無しで溶融成形可能
であり且つ有機溶媒に可溶なノボラック系フェノ−ル樹
脂の溶液中で、シリコンアルコキシド及び/又はその低
縮合物を含有する金属アルコキシドの加水分解・重縮合
を行なうのと平行して、ノボラック系フェノ−ル樹脂の
溶融温度以下の温度で、用いた溶媒を乾燥除去すること
を特徴とする、製造方法である。
【0044】本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合
体未硬化物の製造方法は、ノボラック系フェノ−ル樹脂
もしくはその溶液中に予め硬化剤を含ませておくことを
特徴とする製造方法を含む。
【0045】また本発明は、フェノ−ル樹脂及び/又は
フェノ−ル樹脂を含有する熱硬化性樹脂の溶液中で、シ
リコンアルコキシド及び/又はその低縮合物を含有する
金属アルコキシドの加水分解・重縮合を行なうのと平行
して、式1で表わされる見かけの溶剤含有率が1〜20
重量%となるまで溶剤除去を行なって製造した、溶剤を
含有する、熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体未硬化物
を、溶媒除去条件より高温又は高温高圧で加熱成形する
ことを特徴とする熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体の
成形物の製造方法を含む。
【0046】(式1) 見かけの溶剤含有率(重量%)={(溶剤含有の複合体
重量)−(溶剤完全除去後の複合体重量)}/(溶剤完
全除去後の複合体重量)×100
【0047】更に本発明は、見かけの溶剤含有率が1〜
20重量%である熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体未
硬化物を、ペレット状、粉末状、ブロック状に粉砕また
は成形した後、溶媒除去の条件より高温又は高温高圧で
加熱成形することを特徴とする、熱硬化性樹脂と金属酸
化物の複合体の成形物の製造方法、また、ノボラック系
フェノ−ル樹脂と金属酸化物の複合体未硬化物を粉末状
に粉砕したものをそのまま、もしくは硬化剤を添加した
後、ノボラック系フェノ−ル樹脂の溶融温度以上で加熱
成形することを特徴とする熱硬化性樹脂と金属酸化物の
複合体の成形物の製造方法を含むものである。
【0048】即ち、本発明は、フェノ−ル樹脂またはそ
れを含有する熱硬化性樹脂と、シリコンアルコキシドま
たはそれを含有する金属アルコキシドから得られるシリ
カ等金属酸化物からなる熱硬化性樹脂と金属酸化物の複
合体に関するものであり、特にフェノ−ル樹脂/シリカ
複合体にその中心をおくものである。
【0049】本発明における複合体中の熱硬化性樹脂と
しては、硬化が完了したもの、または充分硬化していな
い未硬化の状態のものが含まれる。一般に最終用途では
硬化した状態のものが、また成形材料としては未硬化の
状態のものが用いられる。本発明においては、未硬化の
樹脂状態を有する複合体を意味する場合のみ、複合体未
硬化物と称する。
【0050】本発明における熱硬化性樹脂と金属酸化物
の複合体は、フェノ−ル樹脂又はそれを含む熱硬化性樹
脂溶液中で、シリコンアルコキシド又はそれを含む金属
アルコキシドの加水分解・重縮合反応と脱溶剤及び/又
は、樹脂硬化反応を同時・平行して行わせることによ
り、最終的に0.01〜5μmの範囲の制御された大き
さからなるシリカ等の金属酸化物微粒子が熱硬化性フェ
ノ−ル樹脂と均質な複合体を形成するものであり、金属
酸化物界面の密着性の制御性に優れる。
【0051】例えば、本発明により得られるフェノ−ル
樹脂/シリカ複合体は、広いシリカ含有範囲において均
質であり、制御された透明性、優れた界面結合性を有
し、又表面硬度の他、曲げ弾性率、曲げ強度、破断伸
び、さらには耐衝撃性といった力学物性や耐熱性等に優
れた性質を有するものである。
【0052】従来、微少サイズのシリカ源としては乾燥
粒子状のものとしてのエアロジルや、液体分散状のもの
としてのオルガノシリカゾルが知られているが、分散性
が不充分であったり樹脂との界面濡れ性が低いことなど
により、本発明によるin−situでシリカを生成さ
せたものと比べて、得られる複合体の透明性や力学物性
が劣ったものとなる。
【0053】本発明で言う熱硬化性樹脂としては、特に
フェノ−ル樹脂を用いた場合に、フェノ−ル樹脂とその
溶液中でのシリコンアルコキシドの加水分解・重縮合に
より得られるシリカとが特徴的に均質、且つ物性良好な
複合体を形成する。例えば、その他の代表的な熱硬化性
樹脂であるエポキシ樹脂等を用いた場合は、調製中に容
易にマクロ相分離したり、粒径制御や界面制御が出来な
かったりして、本発明にいう均質で且つ力学物性等に優
れた熱硬化性樹脂/金属酸化物複合体を得ることが困難
であった。
【0054】本発明で言うフェノ−ル樹脂としては、使
用する金属アルコキシド及び水に対して共に混和性のあ
る溶媒に可溶なものが用いられる。特に使用する金属ア
ルコキシドの加水分解により得られるアルコ−ルを溶剤
とするフェノ−ル樹脂は本発明における金属酸化物の粒
径制御等において好ましく用いられる。
【0055】本発明で言う金属アルコキシド及び水に対
して共に混和性のある溶媒とは、金属アルコキシド及び
水と混和して相分離しない均一な系を形成する溶媒を意
味し、ベンジルアルコール等を含むアルコール類、とり
わけ使用する金属アルコキシドの加水分解により得られ
るメタノール、エタノール等のアルコ−ル類が好ましく
用いられ、この他、NMP、THF、DMAc、DM
F、MEK、m−クレゾール等の溶媒が用いられる。
【0056】溶媒に不溶なフェノ−ル樹脂は、本発明に
おけるシリコンアルコキシド等の金属アルコキシドを用
いた均質な複合体調製が困難である。しかし溶媒に不溶
なフェノ−ル樹脂も本発明により得られる熱硬化性樹脂
と金属酸化物の複合体もしくはその完全硬化前の前駆体
と混合して使用することは可能である。また溶媒溶解性
のあるフェノ−ル樹脂のなかでも、特にレゾ−ル系フェ
ノ−ル樹脂が好ましく、ノボラック系フェノ−ル樹脂
は、調製の容易さ及びシリカの粒径制御において劣る。
【0057】但し、一般に二価金属(Ca、Mg、Zn
など)の酢酸塩のようなおだやかな酸触媒を用い、中間
pH領域(例えば4〜7)で合成される、高度にオルト
配向したハイオルト系フェノ−ル樹脂は、レゾ−ル型だ
けではなく、ノボラック型でも微粒子状の金属酸化物が
均質に分散した良好な複合体を得ることができる。
【0058】また一般に、有機溶媒無しで溶融成形可能
であり且つ溶媒溶解性のあるノボラック樹脂において
は、溶液中にて金属アルコキシドとの複合化を行った
後、真空もしくはガス流通下、ノボラック樹脂の溶融温
度以下の温度にて、用いた有機溶媒を乾燥除去すること
によって力学良好な複合体を得ることが可能である。但
し、透明性等の制御においては良好でない場合が多い。
【0059】本発明では、熱硬化性樹脂として、かかる
フェノ−ル樹脂の単体物の他、当該フェノ−ル樹脂を均
質状態で含むような熱硬化性樹脂混合物を使用すること
も可能であり、混合される熱硬化性樹脂としては、用い
るフェノ−ル樹脂の溶媒に可溶であって均質な混合樹脂
溶液を形成するものか、熱溶融時に均質複合化出来るも
ので有ればいずれであっても良く、特に限定されない。
【0060】本発明における金属酸化物としては、テト
ラメチルオルソシリケ−ト(別称テトラメトキシシラ
ン)、テトラエチルオルソシリケ−ト(別称テトラエト
キシシラン)、テトラプロピルオルソシリケ−ト(別称
テトラプロポキシシラン)等のSi(OR)4、(ここ
でRは炭素数1〜4のアルキル基)で表されるシリコン
アルコキシド(テトラアルコキシシラン)、及び/又は
それらの低縮合物、例えば、該シリコンアルコキシドの
2〜10量体等の低縮合物から加水分解・重縮合により
得られるシリカが良好である。
【0061】また、金属アルコキシドとして、上記のテ
トラアルコキシシラン及び/又はその低縮合物100重
量部に対して、モノメチルトリメトキシシランやモノメ
チルトリエトキシシラン、モノエチルトリメトキシシラ
ン、モノエチルトリエトキシシラン、モノフェニルトリ
メトキシシランのようなモノアルキルトリアルコキシシ
ラン、またはジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエ
トキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジ
エトキシシランのようなジアルキルジアルコキシシラン
を1〜40重量部、更に好ましくは3〜30重量部含ん
だものを用いることは、物性良好な熱硬化性樹脂と金属
酸化物の複合体を得るのに有効である。
【0062】シリコン以外の金属種の金属アルコキシド
を用いたもの、例えばチタンアルコキシドやアルミニウ
ムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド等はアルコ
キシドの種類によらず、シリコンアルコキシドの場合と
比較して均質・微分散の複合体を得ることが困難であ
る。
【0063】但し、本発明における金属アルコキシドと
して、前記シリコンアルコキシドと他の金属アルコキシ
ドを併用して用いることは、均質な反応が進められる限
りにおいて可能である。
【0064】本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合
体中に含まれる金属酸化物の量は、その目的とする用
途、並びに成形方法によっても異なるが、一般に複合体
中の金属酸化物の含有率が1〜35%のものが好まし
く、更に好ましくは1〜20%、特に好ましくは2〜1
5%のものである。金属酸化物含有率が35重量%以上
では、成形条件によってはクラックの発生等により、均
質良好な樹脂複合体が得られにくく、又1重量%未満で
は複合化の効果が得られない。
【0065】本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合
体に含有される金属酸化物の大きさは平均径0.01〜
5μmであることが好ましい。本発明で言う複合体中に
含有される金属酸化物の平均径0.01μmの数値は、
本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体中に0.0
1μm以下の金属酸化物が含まれていないことを意味す
るものではない。
【0066】即ち、本発明の金属酸化物の平均径値0.
01〜5μmは、走査型電子顕微鏡(SEM)で実測し
た数値に基づいており、0.01μmを下回る粒径のも
のは、走査型電子顕微鏡(SEM)による測定が困難
で、数値化が困難な為に、特許請求範囲に記載されてい
ないだけであって、例えば、0.01〜0.001μm
の金属酸化物を複合体中に含有するものも本発明に含ま
れて何等問題はない。
【0067】複合体に含有される金属酸化物の大きさ
が、平均径0.2μmから5μmの範囲で粒径制御され
た場合は、不透明から半透明の均質な複合体が得られ、
一方、0.01μmから0.2μm未満の範囲で粒径制
御された場合には、半透明から透明の均質な複合体が得
られる特徴を有する。
【0068】本発明の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合
体の可視光の透過率は、通常50%以上であり、好まし
くは70%以上、90%以上である複合体も製造可能で
あり、これらは透明性を有する複合体としての用途に特
に有効である。
【0069】本発明の均質な熱硬化性樹脂と金属酸化物
の複合体を得るためには、まず未硬化のフェノ−ル樹脂
及び/又はフェノ−ル樹脂を含有する熱硬化性樹脂を、
金属アルコキシドと水の両方に混和性のある溶媒に溶か
し溶液としたものに、金属アルコキシドと、上記の金属
アルコキシドと水の両方に混和性のある溶媒と、及び必
要に応じて水と、必要に応じて触媒もしくは触媒を含む
溶液とを加え、当該混合溶液が相分離することなく均質
溶液を形成するように調製する。
【0070】次いで、混合溶液全体がゲル化する前に塗
布、注入等の加工を行い、次いで通風、加熱、減圧処理
等により溶媒の除去と樹脂の硬化反応を平行して同時に
進めることで、最終的にマクロな相分離を生じず均質な
熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体を得る。
【0071】また、上記金属アルコキシドとして、金属
アルコキシドと水、及び/または溶媒、及び/または触
媒からなる溶液を調製し、且つその溶液自体のゲル化時
間の90%以内の時間、好ましくは5〜60%、特に好
ましくは5〜30%の時間予め反応させたものを用いる
以外は、上記と同様な方法で、反応時間が0のものと比
べて力学物性等により優れた、熱硬化性樹脂と金属酸化
物の複合体を得ることが可能である。
【0072】ここで予めの反応時間を長くしていくと、
複合体の力学物性、特に強度及び/または伸びは最大値
をとり、以後、低下していく傾向を示す。更に、予めの
反応時間がゲル化時間の90%をこえる場合は均質で物
性良好な複合体が得られなくなる。
【0073】本発明において用いる水の量としては、金
属アルコキシドに対して0.5〜12モル、好ましくは
0.5〜6モル比であることが望ましい。水は系に直接
添加する他、初期添加水量は0で、例えば溶媒キャスト
時に接触する雰囲気中の水分を吸うことにより、最終的
に系内に取り込むことになる水でもよい。
【0074】水の量が0.5モル比以下では加水分解反
応の進行が遅く、12モル以上では逆に加水分解が早
く、又より3次元的な重縮合反応進行となり、均質な複
合体が得にくかったり、界面の密着性が悪くなったりす
る。
【0075】本発明において用いる触媒としては、酢
酸、塩酸等の有機酸、無機酸等の酸触媒が良好であり、
その量は金属アルコキシドに対して、0〜0.3モル
比、好ましくは0〜0.15モル比であるのが良い。こ
の量比で示すように、本発明では触媒の添加は必ずしも
必須ではなく、触媒を添加しない系も含まれる。
【0076】但し、アンモニアや水酸化ナトリウム等の
アルカリを触媒として、本発明の系に添加した場合に
は、良好な複合体を得にくくする。特にゲル化時間を短
くすることや界面の密着性を不良にする。
【0077】本発明においては、系に存在する水の量に
もよるが、一般にアルカリを添加した場合には、ゲル化
時間が極めて短く、混合物の取扱いに困難を生じる。ま
た系内に触媒を添加しない場合には、用いるシリカ含有
量や水量、更には溶媒量にもよるが、通常、ゲル化は数
10分から数十時間の間で起こり、更に系に酸触媒を添
加した場合には、ゲル化時間をそれらの数倍から数十倍
程度に長くするよう制御することが可能である。
【0078】本発明において得られる熱硬化性樹脂と金
属酸化物の複合体は、強度・弾性率や耐衝撃性等の力学
物性の他、硬度等の表面特性、耐熱性、ガラス等に対す
る密着性に優れたものであると共に、均質性、透明性制
御に優れたものである。
【0079】従来、広く行われて来た無機材料による有
機樹脂の性能強化では、力学物性において強度、弾性
率、伸びのいずれか一つ、又はせいぜい二つを向上させ
得るものであって、この3つを同時に向上させることは
理想的だが非常に難しいものと考えられていた。
【0080】本発明によれば、従来の無機材料(繊維、
粉末)/樹脂混合系に比較して、分散金属酸化物の粒径
がμmオ−ダ−の大きいものから非常に小さいもの(約
10nm)まで制御可能であり、且つ均質に分散され、
樹脂との界面の結合が良好であることから、優れた均質
性、透明性、硬度等の表面特性、力学物性を有する複合
材を提供できる。
【0081】特に、本発明は従来から嘱望されていた、
原料樹脂の強度、弾性率、伸びの3つを同時に改良する
効果を有し、かつ、透明性に関しては、例えばシリカを
1〜35重量%含む複合体においては、透明性が樹脂単
体の場合の98%程度に高く制御することも可能であ
る。
【0082】本発明における熱硬化性樹脂と金属酸化物
の複合体は、他の金属やガラス等の無機繊維及び/また
はセルロ−スやアラミド等有機繊維及び/またはそれら
の粉末を更に含んだ系にて調製することも可能であり、
優れた複合材料となる。
【0083】かかる良好な特性を有する熱硬化性樹脂と
金属酸化物の複合体も、溶媒キャスト時に収縮によるク
ラックを発生しやすい問題を有している。これは熱硬化
性樹脂と金属アルコキシドが共に熱硬化性であり、また
加熱により異なる収縮特性を持つ為、その複合体は収縮
及びそれに伴う内部応力によるクラックを発生しやすく
なる為と考えられる。特に試料厚みが大きい程、また金
属酸化物含有率が大きいほどクラックの発生頻度が多く
見られる。
【0084】図4に溶剤キャスト法により調製した当該
熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体の厚みと複合体中の
クラック含有率との関係の1例を示す。クラック発生は
厚みとシリカ含有率に大きく依存し、厚みが厚いほど、
またシリカ含有率の高い組成であるほどクラックは発生
しやすい為、クラックを生じさせない成形物の製造に
は、後述する製造方法を用いることが好ましい。
【0085】即ち、本発明において、厚もの成形品の製
造に用いる熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体未硬化物
は、溶剤を含有するものが好ましく、式1で表わされる
見かけの溶剤含有率が1〜20重量%、更に好ましく
は、2〜15重量%であることが好ましい。 (式1) 見かけの溶剤含有率(重量%)={(溶剤含有の複合体
重量)−(溶剤完全除去後の複合体重量)}/(溶剤完
全除去後の複合体重量)×100
【0086】ここで、見かけの溶剤含有率と称したの
は、加熱成形時もしくは、その後の熱処理時に脱離する
のは必ずしも溶剤だけでは無く、樹脂及び金属アルコキ
シドの未硬化部分からの縮合等による脱離低分子も含ま
れるからである。ここではこれら全ての脱離量で、溶剤
を含有する、熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体未硬化
物の適正溶剤含有量条件を示している。
【0087】即ち、見かけの溶剤含有率が1重量%未満
では、加熱成形による充分な一体化が不可能であり、そ
れからの最終成形物は力学強度が低下する。一方、見か
けの溶剤含有率が20重量%以上では溶剤脱離に伴う気
泡発生を加熱成形時に抑えることが難しくなり、不均質
で力学物性の低い複合体が得られることが多い。
【0088】本発明において、見かけの溶剤含有率が1
〜20重量%である複合体未硬化物は、一般にペレッ
ト、粉末、ブロック等に粉砕または成形されるが、かか
る形態変化を伴わずキャスト物をそのまま熱プレスで型
押し、引き続き次の加熱成形条件に移ることも可能であ
る。
【0089】溶剤を含有する複合体未硬化物の粉砕また
はペレット状等への成形は、適正な溶剤を含有する複合
体未硬化物となってから脱溶剤が無い条件で行うか、も
しくは溶剤をより多く含む過程で行い、最終的に適正範
囲の溶剤含有量をもつ複合体未硬化物を調製するいずれ
でも良い。
【0090】また見かけの溶剤含有率が1〜20重量%
である、適正な溶剤を含有する複合体未硬化物から最終
成形物への加熱成形方法としては、熱プレス成形、射出
成形、押出し成形等の一般的な方法が用いられ、特に限
定されない。但し、加熱成形時には、前段階の溶媒除去
条件より高温及び/または高圧で行う必要がある。
【0091】溶媒除去条件より低温、低圧ではクラック
の無い均質良好な複合化が達成されない。但し、本発明
において、有機溶媒無しで溶融成形可能であり且つ溶媒
溶解性のあるノボラック樹脂と金属酸化物から調製され
た複合体未硬化物の場合は、粉体やブロック状の該複合
体未硬化物の見かけの溶剤含有率が1重量%以下でも溶
融プレス成形等の方法により、物性良好な複合体成形物
を得ることが可能である。
【0092】上記の方法で得られる複合体はミクロな金
属酸化物が熱硬化性樹脂中に均質に分散したものであ
り、特に厚物においてもクラック等の発生がなく、また
複雑形状の成形物も反り、変形等が少なくして得られる
特徴を有する。また、得られた複合体は、強度・弾性率
や耐衝撃性等の力学物性や硬度等の表面特性の他、耐熱
性やガラス等に対する密着性に優れたものであると共に
均質性、透明性制御に優れたものである。
【0093】本発明における熱硬化性樹脂と金属酸化物
の複合体は、他の公知慣用の添加物、例えば、セラミッ
クやガラス等の無機質材料及び/またはゴム、セルロ−
スやアラミド等の有機質材料を繊維または粉末状にて含
んだ系として調製することも可能であり、優れた複合材
料となる。
【0094】例えば、具体的には、アルミナ、炭酸カル
シウム、ガラス、アスベスト等の無機質、及び/又は炭
素繊維、黒鉛等の炭素材料、及び/又は鋼繊維等の金属
材料、及び/またはアラミド繊維、セルロ−ス、4ふっ
化エチレン樹脂等の熱可塑性樹脂やゴム等の有機質の繊
維状物質や粉末状物質、及び/またはその他各種の摩擦
低減剤や増摩剤、摩擦調整剤等を含ませて加熱成形する
ことが可能であり、単独または複数種のものが目的に応
じて選択して添加される。
【0095】これらの添加は適正な溶剤を含有する複合
体未硬化物の調製迄に行っても、また適正な溶剤を含有
する複合体未硬化物の調製後、最終成形物への成形時に
行っても良く、併用することも可能である。
【0096】本発明で得られた熱硬化性樹脂と金属酸化
物の複合体は、優れた力学物性や表面特性また耐熱性を
有する高性能複合材料として、成形材料、塗膜等の形態
で用いられる他、ガラス繊維等との界面密着性に優れて
いることから、ガラス繊維及びその粉末、アラミド繊
維、パルプまたはそれらを基材とする織物、不織布等の
表面に好ましくは0.5重量%以上被覆するための表面
サイジング剤やプリプレグ剤等としても、好ましく用い
られる。
【0097】
【実施例】次いで本発明を実施例によって更に説明す
る。尚、例中の%は特に断りの無い限り重量基準であ
る。
【0098】(実施例1)フェノ−ル樹脂(プライオ−
フェンJ−325、大日本インキ化学工業株式会社製レ
ゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、固形分=60%、pH=
8.2、Mw=1700)100重量部に対して、テト
ラメチルオルソシリケ−ト(東京化成工業株式会社製)
25重量部、メタノ−ル45重量部、水14重量部から
なる均質液を、攪はんしながら順次、滴下混合し、均質
混合溶液を調製した。
【0099】本混合溶液を密閉容器中、30℃で1時間
保持後、清浄なガラス板上に塗布し、以後25℃にて溶
媒をゆっくりと約5時間かけてキャストし除去した。そ
の後、170℃まで2℃/分の速度で昇温し、170℃
で30分間保持した。
【0100】これらのキャストから加熱の間にフェノ−
ル樹脂の熱硬化及び金属アルコキシドの重縮合反応が同
時に進められる。得られたフィルム中のシリカの含有率
(シリカ/(シリカ+樹脂)は14.5重量%であっ
た。
【0101】またフィルムは均質且つ透明(光透過率=
97%)であった。ここで光透過率は波長800nmの
光を用い、入射光と換算透過光の比((IA/I0)×1
00)で得られる。なお、IA=exp{lnI/(d
/100)}、d=厚み(μm)である。
【0102】一方、SEM測定(倍率50000倍)に
よる分散シリカ粒子の大きさは約50nmであり、マト
リックス樹脂との密着性は粒子が小さいため明確ではな
いが界面の剥離等なく良好であった。
【0103】フィルムの三点曲げ試験(サンプル形状=
5.0mm×30mm×厚み0.35mm:スパン距離
15mm)により得られた力学物性は、弾性率=745
kgf/mm2、強度=24.2kgf/mm2、伸び=
3.95%であり、いずれも原料の熱硬化性樹脂単体で
の値(弾性率=545kgf/mm2、強度=17.0
kgf/mm2、伸び=3.0%)を上回った。
【0104】フィルム表面の硬さをフッシャ−株式会社
製フィッシャ−スコ−プH100Vを用いて、押し込み
深さ0.2〜3μmの範囲で測定し、図1に示す約42
0N/mm2の高い値を得た(原料樹脂単体の値は31
0N/mm2)。
【0105】図2に動的粘弾性測定装置(セイコ−電子
工業株式会社製DMS200)により測定した貯蔵弾性
率(E’)とtanδの温度変化を示す。図3に示した
樹脂単体のそれと比較して、特に高温での物性保持(耐
熱性)が優れているのがわかる。
【0106】(実施例2、3及び比較例1)フェノ−ル
樹脂(プライオ−フェンJ−325、大日本インキ化学
工業株式会社製レゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、固形分=
60%)100重量部に対して、テトラメチルオルソシ
リケ−ト(東京化成工業株式会社製)18重量部、メタ
ノ−ル30重量部、水9重量部に、
【0107】実施例2として、塩酸0.01モル比(実
施例2)、実施例3として、塩酸0.1モル比(実施例
3)及び比較例1として塩酸0.4モル比(比較例1)
(いずれも対テトラメチルオルソシリケ−トモル比)か
らなる均質液を攪はんしながら順次、滴下混合して、均
質混合溶液を調製した。
【0108】本溶液を直ちに清浄なガラス板上に塗布
し、以後25℃にて溶媒をゆっくりと約5時間かけてキ
ャストし除去した。その後150℃まで2℃/分の速度
で昇温し150℃で30分間保持した。
【0109】得られたフィルム中のシリカの含有率は1
0.5重量%であった。またフィルムは実施例2では透
明(光透過率=99%)、実施例3では白色半透明(光
透過率=75%)で、いずれもマクロな相分離は無く均
質であった。一方、比較例1では白色不透明(光透過率
=13%)で不均質な複合体であった。
【0110】SEM測定による分散シリカ粒子の大きさ
は、各々約40nm(実施例2)と約300〜500n
m(実施例3)であった。マトリックス樹脂との密着性
は実施例2及び3は良好で、比較例1は不均質複合体の
ため不良であった。
【0111】実施例1と同様なフィルムの三点曲げ試験
により得られた力学物性の値は、実施例2では弾性率=
800kgf/mm2、強度=26.5kgf/mm2
伸び=4.2%、また実施例3では弾性率=785kg
f/mm2、強度=24.5kgf/mm2、伸び=3.
8%で、いずれも原料樹脂単体での値を上回った。
【0112】一方、比較例1では強度8kgf/m
2、伸び=0.9%(弾性率は脆くて計測誤差大)で
あり、かつ強度、伸びは共に低く不良であった。
【0113】(実施例4及び比較例2)フェノ−ル樹脂
(プライオ−フェンJ−325、大日本インキ化学工業
株式会社製レゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、固形分=60
%)100重量部に対して、テトラメチルオルソシリケ
−ト(東京化成工業株式会社製)18重量部、メタノ−
ル18重量部、水9重量部に、
【0114】実施例4として酢酸0.05モル比(実施
例4)、比較例2としてアンモニア0.1モル比(比較
例2)(いずれも対テトラメチルオルソシリケ−トモル
比)からなる均質液を、攪はんしながら順次滴下して混
合し、均質混合溶液を調製した(調製後のゲル化時間は
実施例4が145分なのに対して比較例2は4分と短か
った)。
【0115】本溶液を調製後直ちに清浄なガラス板上に
塗布し、以後25℃にて溶媒をゆっくりと約5時間かけ
てキャストし除去した。その後150℃まで2℃/分の
速度で昇温し150℃で30分間保持した。得られたフ
ィルム中のシリカの含有量はほぼ10.5重量%であっ
た。
【0116】フィルムは実施例4では少し白濁した透明
(光透過率=93%)で、比較例2でもほぼ透明(光透
過率=95%)であり、いずれもマクロな相分離等無く
均質であった。SEM測定による分散シリカ粒子の大き
さは実施例4で約100nmであり、比較例2では約6
0nmであった。
【0117】但し、マトリックス樹脂との密着性は、実
施例4では良好で、比較例2ではシリカと樹脂の界面が
明確で両者の濡れが不良であった。実施例1と同様なフ
ィルムの三点曲げ試験により得られた力学物性は、実施
例4では弾性率=838kgf/mm2、強度=26.
0kgf/mm2、伸び=4.3%であり、いずれも原
料樹脂単体での値を上回った。一方、比較例2は弾性率
=726kgf/mm2、強度=12.2kgf/m
2、伸び=1.76%であり、弾性率は樹脂単体より
高かったが、強度、伸びは低くなった。
【0118】(実施例5、6及び比較例3)テトラメチ
ルオルソシリケ−ト(東京化成工業株式会社製)20重
量部、メタノ−ル20重量部、水10重量部からなる均
質液を、予め25℃にて一定時間攪拌させ、シリコンア
ルコキシドの加水分解・重縮合を行わせた(実施例5で
はゲル化時間(約40時間)の10%の時間、実施例6
では50%の時間、比較例3では96%の時間)。
【0119】得られた該溶液を、フェノ−ル樹脂(プラ
イオ−フェンJ−325、大日本インキ化学工業株式会
社製レゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、固形分=60%)1
00重量部に対して、メタノール30重量部を加えた均
質溶液に、滴下混合し、均質混合溶液を調製した。
【0120】該混合溶液を密閉容器中にて30℃で15
分間攪はん後、清浄なガラス板上に塗布し、以後25℃
にて溶媒をゆっくりと約5時間かけてキャストし除去し
た。その後、150℃まで2℃/分の速度で昇温し、1
50℃で50分間保持した。
【0121】これらのキャストから加熱の間にフェノ−
ル樹脂の熱硬化及び金属アルコキシドの更なる重縮合反
応が同時に進められる。得られたフィルム中のシリカの
含有率(シリカ/(シリカ+樹脂)は11.5重量%で
あった。
【0122】またフィルムの透明性は実施例5では(光
透過率=97%)、実施例6では(光透過率=96%)
でいずれも複合体は均質且つ透明であった。 一方、比
較例3では(光透過率=22%)であり、相分離、凝集
がみられた。
【0123】一方、SEM測定(倍率50000倍)に
よる分散シリカ粒子の大きさは実施例5、6共、約50
nmであり、マトリックス樹脂との密着性は粒子が小さ
いため明確ではないが界面の剥離等なく良好であった。
比較例3では約10μmの凝集粒子が見られ、密着性は
不良であった。
【0124】(実施例7、8及び9)フェノ−ル樹脂
(プライオ−フェンJ−325、大日本インキ化学工業
株式会社製レゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、固形分=60
%)100重量部に対して、テトラメチルオルソシリケ
−ト(東京化成工業株式会社製)30重量部にメタノ−
ル40重量部(実施例7)、
【0125】または実施例8としてテトラメチルオルソ
シリケ−ト20重量部、メチルエチルケトン50重量
部、水8重量部(実施例8)、または実施例9としてテ
トラメチルオルソシリケ−ト20重量部、N−メチルピ
ドリロン50重量部、水8重量部(実施例9)からなる
均質液を攪はんしながら順次滴下して混合し、均質混合
溶液を調製した。
【0126】本溶液を調製後、直ちに清浄なガラス板上
に塗布し、以後、湿度70%、25℃の雰囲気にて溶媒
をゆっくりと約12時間かけてキャストし除去した。そ
の後150℃まで2℃/分の速度で昇温し150℃で3
0分間保持した。
【0127】得られたフィルム中のシリカの含有量は1
4.5重量%(実施例7)、11.0重量%(実施例8
及び9)であった。またフィルムの透明性は実施例7で
は透明(光透過率=99%)、実施例8(光透過率=9
8%)、実施例9(光透過率=97%)で、いずれも複
合体は透明、均質であった。
【0128】SEM測定による分散シリカ粒子の大きさ
は約30nm(実施例7)、約50nm(実施例8)、
約50nm(実施例9)であった。いずれの分散粒子も
マトリックスとの界面の密着性は良好であった。
【0129】(実施例10、11、12及び13)フェ
ノ−ル樹脂(プライオ−フェンJ−325、大日本イン
キ化学工業株式会社製レゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、固
形分=60%)100重量部に対して、メタノール20
重量部を加えた均質溶液に、各々実施例10として、テ
トラメチルオルソシリケ−ト(東京化成工業株式会社
製)28重量部、メタノ−ル30重量部、水13重量部
に、モノメチルトリメトキシシラン(東京化成工業株式
会社製)2重量部、
【0130】実施例11として、テトラメチルオルソシ
リケ−ト24重量部、メタノ−ル30重量部、水12重
量部に、モノメチルトリメトキシシラン6重量部、実施
例12として、テトラメチルオルソシリケ−ト18重量
部、メタノ−ル30重量部、水12重量部に、モノメチ
ルトリメトキシシラン12重量部、実施例13として、
テトラメチルオルソシリケ−ト28重量部、メタノ−ル
30重量部、水13重量部に、ジメチルジメトキシシラ
ン(東京化成工業株式会社製)2重量部からなる均質溶
液を攪はんしながら、滴下混合して、均質混合溶液を調
製した。
【0131】本溶液を30℃で10分間攪はん保持後、
清浄なガラス板上に塗布し、以後25℃にて溶媒をゆっ
くりと約10時間かけてキャストし除去した。その後1
50℃まで2℃/分の速度で昇温し150℃で45分間
保持した。
【0132】得られたフィルム中のシリカの含有率はい
ずれもほぼ16重量%であった。またフィルムは実施例
10(光透過率=98%)、実施例11(光透過率=9
8%)、実施例12(光透過率=96%)、実施例13
(光透過率=97%)でいずれも透明且つ均質であっ
た。SEM測定による分散シリカ粒子の大きさは、いず
れも約30nm〜80nmであった。マトリックス樹脂
との密着性は実施例10〜13とも良好であった。
【0133】実施例1と同様なフィルムの三点曲げ試験
により得られた力学物性の値は、実施例10では弾性率
=754kgf/mm2、強度=29.4kgf/m
2、伸び=5.0%、実施例11では弾性率=732
kgf/mm2、強度=28.4kgf/mm2、伸び=
4.9%、また実施例13では弾性率=712kgf/
mm2、強度=25.6kgf/mm2、伸び=4.7%
でありいずれも原料樹脂単体での値を上回った。
【0134】一方、実施例12では得られた力学物性の
値は、弾性率=735kgf/mm2、強度=19.8
kgf/mm2、伸び=3.5%であり、原料樹脂単体
と比べ弾性率は上がり、強度、伸びは少し上回る程度で
あった。
【0135】(実施例14)フェノ−ル樹脂(フェノラ
イト5510、大日本インキ化学工業株式会社製ノボラ
ック型、ヘキサミン10重量%含有物)100重量部を
メタノ−ル140重量部、トルエン60重量部に溶解さ
せたものに対して、テトラメチルオルソシリケ−ト(東
京化成工業株式会社製)30重量部、メタノ−ル50重
量部、水14重量部からなる均質液を攪はんしながら順
次滴下して混合し、均質混合溶液を調製した。
【0136】本溶液を密閉容器中、30℃で30分間保
持後、清浄なガラス板上に塗布し、以後25℃にて溶媒
をゆっくりと約12時間かけてキャストし除去した。そ
の後150℃まで2℃/分の速度で昇温し150℃で3
0分間保持した。
【0137】得られたフィルム中のシリカの含有量は約
10重量%であった。またフィルムは均質ではあるが、
透明のものは得られず、白黄不透明(光透過率=62
%)であった。また、サンプル厚みの厚いものは微小な
発泡現象が見られた。SEM測定による分散粒子の大き
さは約500nmであり、マトリックス樹脂との密着性
は良好であった。
【0138】(実施例15)フェノ−ル樹脂(フェノラ
イトUG-1101、大日本インキ化学工業株式会社製
ハイオルト・ノボラック型、固形分=70%)100
重量部に対して、テトラメチルオルソシリケ−ト(東京
化成工業株式会社製)17重量部、メタノ−ル50重量
部、水2重量部からなる均質液を攪はんしながら順次滴
下して混合し、均質透明混合溶液を調製した。
【0139】本溶液を密閉容器中、20℃で1週間保持
(透明液のまま)後、清浄なガラス板上に塗布し、以後
25℃にて溶媒をゆっくりと約12時間かけてキャスト
し除去した。その後、150℃まで2℃/分の速度で昇
温し、150℃で60分間保持した。
【0140】得られたフィルム中のシリカの含有量は約
9重量%であった。またフィルムは均質、透明で光透過
率=91%であった。また、サンプルにクラック等の発
生や変形は見られなかった。SEM測定による分散粒子
の大きさは約60nmであり、マトリックス樹脂との密
着性は良好であった。
【0141】(実施例16)フェノ−ル樹脂(フェノラ
イトUG-1101、大日本インキ化学工業株式会社製
ハイオルト・ノボラック型、固形分=70%)100重
量部に対して、テトラメチルオルソシリケ−トの低縮合
物MKCシリケ−ト(MS−51、分子量約500、三
菱化成株式会社製)13重量部、メタノ−ル50重量
部、水1.8重量部からなる均質液を攪はんしながら順
次滴下して混合し、均質透明混合溶液を調製した。
【0142】本溶液を密閉容器中、25℃で12時間保
持(透明液のまま)後、清浄なガラス板上に塗布し、以
後25℃にて溶媒をゆっくりと約12時間かけてキャス
トし除去した。その後150℃まで2℃/分の速度で昇
温し150℃で60分間保持した。
【0143】得られたフィルム中のシリカの含有量は約
8.5重量%であった。またフィルムは均質、透明で光
透過率=89%であった。また、サンプルにクラック等
の発生や変形は見られなかった。SEM測定による分散
粒子の大きさは約70nmであり、マトリックス樹脂と
の密着性は良好であった。
【0144】(実施例17)フェノ−ル樹脂(プライオ
−フェンJ−325、大日本インキ化学工業株式会社製
レゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、固形分=60%)100
重量部に対して、テトラメチルオルソシリケ−ト(東京
化成工業株式会社製)20重量部、テトラエチルオルソ
チタネ−ト(東京化成工業株式会社製)2重量部、メタ
ノ−ル50重量部、テトラヒドロフラン40重量部、水
1.5重量部からなる均質液を攪はんしながら順次滴下
して混合し、均質混合溶液を調製した。
【0145】本溶液を密閉容器中、30℃で30分間保
持後、清浄なガラス板上に塗布し、以後25℃にて溶媒
をゆっくりと約5時間かけてキャストし除去した。その
後150℃まで2℃/分の速度で昇温し、150℃で3
0分間保持した。
【0146】得られたフィルム中のシリカ及びチタニア
の含有量は計12重量%であった。またフィルムは均
質、且つ透明(光透過率=96%)であった。SEM測
定による分散粒子の大きさは約40〜80nmであり、
マトリックス樹脂との密着性は良好であった。
【0147】(実施例18)フェノ−ル樹脂(プライオ
−フェンJ−325、大日本インキ化学工業株式会社製
レゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、固形分=60%)80重
量部、エポキシ樹脂(エピクロン850:大日本インキ
化学工業株式会社製ビスフェノ−ルA型)20重量部の
混合樹脂に対して、
【0148】テトラメチルオルソシリケ−ト(東京化成
工業株式会社製)15重量部、メタノ−ル20重量部、
水2重量部からなる均質液を攪はんしながら順次滴下し
て混合し、混合溶液を調製した。
【0149】本溶液を密閉容器中、30℃で1時間保持
後、清浄なガラス板上に塗布し、以後25℃にて溶媒を
ゆっくりと約5時間かけてキャストし除去した。その
後、150℃まで2℃/分の速度で昇温し150℃で3
0分間保持した。
【0150】得られたフィルム中のシリカの含有量は
7.5重量%であった。またフィルムは均質、且つ透明
(光透過率=97%)で、SEM測定による分散シリカ
粒子の大きさは約40〜60nmであり、マトリックス
樹脂との密着性は粒子が小さいため明確ではないが、界
面の剥離がなく良好であった。
【0151】(実施例19)フェノ−ル樹脂(プライオ
−フェンJ−325、大日本インキ化学工業株式会社製
レゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、固形分=60%)100
重量部に対して、テトラメチルオルソシリケ−トの低縮
合物MKCシリケ−ト(MS−56、分子量約100
0、三菱化成株式会社製)20重量部、メタノ−ル35
重量部、水2重量部、酢酸0.01モル比(対シリケ−
トモル)からなる均質液を攪はんしながら順次滴下して
混合し、均質混合溶液を調製した。
【0152】本溶液を密閉容器中、30℃で1時間保持
後、清浄なガラス板上に塗布し、以後25℃にて溶媒を
ゆっくりと約5時間かけてキャストし除去した。その
後、150℃まで2℃/分の速度で昇温し150℃で3
0分間保持した。
【0153】得られたフィルム中のシリカの含有量は1
6.1重量%であった。またフィルムは均質、且つ透明
(光透過率=98%)で、SEM測定による分散シリカ
粒子の大きさは約50nmであり、マトリックス樹脂と
の密着性は粒子が小さいため明確ではないが界面の剥離
はなく良好であった。
【0154】フィルムの三点曲げ試験(サンプル形状=
5.0mm×30mm×厚み0.35mm、スパン距離
15mm)により得られた力学物性は弾性率=762k
gf/mm2、強度=29.2kgf/mm2、伸び=
5.25%であり、いずれも原料樹脂単体での値(弾性
率=545kgf/mm2、強度=17.0kgf/m
2、伸び=3.0%)を上回った。
【0155】(実施例20)フェノ−ル樹脂(プライオ
−フェンJ−325、大日本インキ化学工業株式会社製
レゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、固形分=60%)100
重量部に対して、テトラメチルオルソシリケ−ト(東京
化成工業株式会社製)18重量部、メタノ−ル30重量
部、水9重量部からなる均質液を攪はんしながら順次滴
下して混合し、均質混合溶液を調製した。
【0156】本溶液を調製後、直ちにガラス不織布(キ
ュムラスEPM−4100、日本バイリ−ン株式会社
製、目付け100g/m2、厚み0.75mm)に含浸
し、以後25℃にて溶媒をゆっくりと約5時間かけて除
去し風乾した。その後130℃で3分間加熱後、150
℃、40kg/cm2で40分間プレスした。
【0157】得られた含浸物の力学物性をフェノ−ル樹
脂の含浸物と比較した。引っ張り試験の結果、強度は
6.8kgf/mm2から8.3kgf/mm2へ、また
弾性率は330kgf/mm2から370kgf/mm2
へ、伸びは2.5%から3.7%へと、いずれも向上し
た。
【0158】(実施例21)メタノ−ルの量が200重
量部である以外は実施例20と同様にして均質混合溶液
を調製し、その後、密閉容器中にて30℃で約2時間攪
はんした。得られた均質混合溶液をガラス不織布(キュ
ムラスEPM−4100、日本バイリ−ン株式会社製、
目付け100g/m2、厚み0.75mm)に含浸し、
表面サイジングに必要な量以上の余分な樹脂液を絞り出
した後、80℃にて短時間乾燥した。SEM測定で複合
体が均質にガラス繊維表面に付着しているのが観察され
た。
【0159】付着量は単位ガラス重量あたり2.3%で
あった。以上のようにして得られたガラス不織布を用い
て、実施例20と同様にしてフェノ−ル樹脂(J−32
5)を含浸し乾燥後、150℃での熱プレス成形をおこ
なった。得られたものの引っ張り試験結果は、強度7.
3kg/mm2、弾性率は334kg/mm2、伸びは
2.9%と良好であった。
【0160】(実施例22)フェノ−ル樹脂(プライオ
−フェンJ−325、大日本インキ化学工業株式会社製
レゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、固形分=60%)100
重量部に対して、テトラエチルオルソシリケ−ト(東京
化成工業株式会社製)25重量部、エタノ−ル50重量
部、水8重量部からなる均質液を、攪はんしながら順
次、滴下混合し、均質混合溶液を調製した。
【0161】本混合溶液を調製後、直ちに清浄なガラス
板上に塗布し、以後25℃にて溶媒をゆっくりと約5時
間かけてキャストし除去した。その後、150℃まで2
℃/分の速度で昇温し、150℃で30分間保持した。
【0162】得られたフィルム中のシリカの含有量は1
0.5重量%であった。マクロな相分離のない白濁半透
明なもの(光透過率=58%)であった。またSEM測
定による分散シリカ粒子の大きさは約600nmであっ
た。
【0163】(実施例23及び24)フェノ−ル樹脂
(プライオ−フェンJ−325:大日本インキ化学工業
株式会社製レゾ−ル型:メタノ−ル溶媒:固形分=60
%)100重量部に対して、テトラメチルオルソシリケ
−ト(東京化成工業株式会社製)10重量部(実施例2
3)及び37重量部(実施例24)、メタノ−ル45重
量部、水5重量部(実施例23)及び21重量部(実施
例24)からなる均質液を攪はんしながら順次滴下して
混合し、均質混合溶液を調製した。
【0164】該溶液を密閉容器中、30℃で1時間保持
後、清浄なポリプロピレン板上に塗布し、以後25℃に
て溶媒をゆっくりと約10時間かけてキャストし除去し
た。キャスト物をポリプロピレン板より剥離し、粉砕に
より平均径1mmの粒子状とした後、110℃で60分
間(実施例23)または70℃で60分間(実施例2
4)保持して複合体を得た。
【0165】複合体の見かけの溶剤含有率は、各々1.
8重量%(実施例23)、16.5重量%(実施例2
4)であった。その後、複合体の粒子を型枠中に充填し
熱プレスにより150℃、35kg/cm2の条件で約15分
間成形して複合成形体(厚み3mm、長さ55mm、幅
7mm)を得た。
【0166】得られた複合成形体中のシリカの含有率
(シリカ/(シリカ+樹脂))は6.2重量%(実施例
23)及び20.1重量%(実施例24)で、クラック
及び反り、ねじれ等が一切無い均質な成形体であった。
また成形体は透明(光透過率=97%:実施例23)及
び白濁不透明(光透過率=15%:実施例24)であっ
た。
【0167】SEM測定(倍率50000倍)による分
散シリカ粒子の大きさは約50nm(実施例23)及び
約2000nm(実施例24)であり、マトリックス樹
脂との密着性は界面の剥離等なく良好であった。
【0168】(比較例4)粉砕して粒子状とした後の乾
燥条件が120℃で60分間である以外は実施例23と
同様にして粒状の複合体を得た。複合体の見かけの溶剤
含有率は、0.81重量%であった。その後、実施例2
3と同条件にて熱プレスにより複合成形体を得た。得ら
れた複合成形は、シリカの含有率は6.3重量%であっ
たが、複合体粒子の界面が複合成形体の表面及び内部に
そのまま残った模様を持った半透明(光透過率=60
%)の不均質体であった。
【0169】(実施例25及び26)フェノ−ル樹脂
(プライオ−フェンJ−325:大日本インキ化学工業
株式会社製レゾ−ル型:メタノ−ル溶媒:固形分=60
%)100重量部に対して、テトラメチルオルソシリケ
−ト(東京化成工業株式会社製)18重量部、メタノ−
ル30重量部、水9重量部、塩酸0.01モル比(実施
例25)、または塩酸0.1モル比(実施例26)(い
ずれも対テトラメチルオルソシリケ−トモル比)からな
る均質液を攪はんしながら順次滴下して混合し均質混合
溶液を調製した。
【0170】該溶液を25℃にて溶媒の一部をゆっくり
と約1時間かけてキャストしたあと、直径約5mmのペ
レット状に加工してから、更に40℃で約2時間、引き
続き120℃で15分間溶媒をキャストした。得られた
ペレット状複合体の溶剤含有率は実施例18及び19と
もに約4重量%であった。
【0171】その後、最高温度150℃の小型押出し成
形機で、実施例23と同じ大きさ(厚物)及び厚み0.
5mm、幅5mm、長さ30mmの大きさ(薄物)に成
形した。そのあと約170℃で15分間アニ−ルし、最
終成形体を得た。得られた成形体中のシリカの含有率は
実施例25、26ともに10.5重量%であり、厚物、
薄物のいずれもクラック等が一切無く均質な成形体であ
った。
【0172】また厚物成形体は実施例25では透明(光
透過率=95%)、実施例26では白色半透明(光透過
率=60%)で、いずれもマクロな相分離は無く均質で
あった。ここで光透過率は波長800nmの光を用い、
入射光と換算透過光の比((I*/I0)×100)で得
られる。なお、I*=exp{lnI/(d/10
0)}、d=厚み(μm)。一方、SEM測定による分
散シリカ粒子の大きさは、各々約60nm(実施例2
5)と約500nm(実施例26)であった。
【0173】マトリックス樹脂との密着性は実施例25
及び26とも良好であった。薄物成形体の三点曲げ試験
(スパン距離=15mm)により得られた力学物性の値
は、実施例25では弾性率=810kgf/mm2、強
度=26kgf/mm2、伸び=4.0%、また実施例
26では弾性率=790kgf/mm2、強度=25k
gf/mm2、伸び=3.9%でありいずれも樹脂単体
での値を上回った。
【0174】(実施例27)実施例25と同じ複合体1
00重量部を、炭素繊維ミルド(株式会社ドナック製ド
ナカ−ボS−241)30重量部と共に、簡易射出成形
機内で溶融混練したあと160℃にて厚み2mm、幅5
mm、長さ30mmに成形した。得られた成形体は均質
でクラック等は一切観測されなかった。SEM測定によ
る分散シリカ粒子の大きさは約60〜80nmであっ
た。
【0175】(実施例28)フェノ−ル樹脂(フェノラ
イト5510、大日本インキ化学工業株式会社製ノボラ
ック型、ヘキサミン10重量%含有物)100重量部に
対して、メタノール100重量部を加えた均質溶液に、
テトラメチルオルソシリケ−ト(東京化成工業株式会社
製)30重量部、メタノ−ル50重量部、水14重量部
からなる均質液を、攪拌しながら順次滴下混合し、均質
混合溶液を調製した。
【0176】本混合溶液を密閉容器中、30℃で1時間
保持後、清浄なポリスチレン製容器にて、溶媒をゆっく
りと約12時間かけてキャストし除去した後、真空下2
時間かけ65℃まで徐々に昇温し1時間保持した後、粉
砕して粒径約50μm程度の粒子とした。これを80℃
で5時間乾燥してメタノールを除去した。このときの見
かけの溶剤含有率は0.89重量%であった。これを金
型(10mm×60mm×厚さ2mm)に充填してプレ
ス成形した。成形条件は150℃×30min、25k
g/cm2とし、更に成形後150℃/45min熱処
理した。
【0177】得られたプレス成形物中のシリカ含有率は
(シリカ/(シリカ+樹脂)は10.4重量%であり、
白濁不透明だが均質体であった。SEM観察(倍率30
000倍)による分散シリカ粒子の大きさは約8000
nmであり、マトリックス樹脂との密着性は良好であっ
た。
【0178】プレス成形物の三点曲げ試験(サンプル形
状=10mm×60mm×厚み2mm:スパン距離30
mm)により得られた力学物性は、弾性率=620kg
f/mm2、強度=14.6kgf/mm2、伸び=2.
45%であり、原料の熱硬化性樹脂単体での値(弾性率
=569kgf/mm2、強度=8.8kgf/mm2
伸び=1.59%)に対して上回った。
【0179】(実施例29、30)フェノール樹脂(プ
ライオーフェンJ−325:大日本インキ化学工業株式
会社製レゾール型、メタノール溶媒、固形分60%)1
00重量部に対して、テトラメチルオルソシリケート
(東京化成工業株式会社製)17重量部、メタノール4
5重量部、水8重量部からなる均質液を攪拌しながら滴
下して混合し、均質混合溶液を調製した。
【0180】本溶液を密閉容器中、30℃で15分攪拌
保持後、ポリスチレン製容器に入れ溶媒をゆっくりと3
日かけてキャストした。その後、2℃/分の速度で80
℃まで昇温した後、10時間保持した。更に、ポリスチ
レン製容器よりキャスト物を取り出した後、引き続き1
50℃まで2℃/分の速度で昇温して150℃で45分
間保持することにより目的とするフェノール樹脂とシリ
カの複合体を得た。
【0181】得られた複合体中のシリカ含有率(シリカ
/(シリカ+樹脂))は9.90重量%であり、厚さ
0.3mm(実施例29)および0.6mm(実施例3
0)の均質、且つ透明(光透過率=97%)なキャスト
成形物を得た。成形物中にクラックは観察されなかっ
た。
【0182】走差型電子顕微鏡(SEM)観察(倍率3
0000倍)による分散シリカ粒子の大きさは、約50
nmであり、マトリックス樹脂との密着性は良好であっ
た。キャスト成形物の耐衝撃性試験は、おもりの落下距
離を20cmと固定し、おもりの質量を変えて実験する
以外はJIS−K5400(1979)と同様な方法を
用いて行い、キャスト成形物にひびが入るかまたは割れ
る時の質量Gをもって耐衝撃性を評価した。(測定件数
5、以下のG値は5件の測定の平均値)
【0183】その結果、実施例29(キャスト成形物厚
さ0.3mm)ではG=36g、実施例30(キャスト
成形物厚さ0.6mm)ではG=62gであった。これ
らは、樹脂単体の時の値(キャスト成形物厚さ0.3m
mでG=20g、0.6mm厚さでG=24g)と比べ
て高く、耐衝撃性が大きく向上していることが判る。
【0184】(比較例5及び6)フェノ−ル樹脂(プラ
イオ−フェンJ−325、大日本インキ化学工業株式会
社製、レゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、固形分=60%)
100重量部に対して、メタノ−ル30重量部に、
【0185】比較例5として、ガラス繊維ミルド(RE
VX0025、9μm直径×60μm長さ、日本板硝子
株式会社製)10重量部(比較例5)、
【0186】また比較例6として、ガラス微粒子(MK
Cシリカ:粒径1.7μm:三菱化成株式会社製)10
重量部(比較例6)を均質になるように混合した。混合
液は放置しておくとガラスと樹脂溶液の比重差により不
均質となった。
【0187】混合液を調製直後、清浄なガラス板上に塗
布し、以後25℃にて溶媒を約5時間かけてキャストし
除去した。その後150℃まで2℃/分の速度で昇温し
150℃で30分間保持した。得られたフィルムは、い
ずれも白濁不透明でガラスが不均質に分布したものとな
った。比較例5ではフィルム底部にミルドが堆積して観
測された。
【0188】実施例1と同様なフィルムの三点曲げ試験
により得られた力学物性の値は、強度=9.8kgf/
mm2、伸び=1.2%(比較例5)及び強度=11.
1kgf/mm2、伸び=2.2%(比較例6)と低下
した。
【0189】(比較例7)ビスフェノールA(東京化成
工業株式会社製)100重量部に対して、テトラメチル
オルソシリケート50重量部、触媒としてp−トルエン
スルホン酸2.5重量部を混合し、110〜120℃で
4時間反応を行った。その後、反応生成するメタノール
を留出させながら170℃まで昇温して、理論量のメタ
ノールが留出するまで反応を行った。得られた反応物を
キシレンで希釈し、不揮発分50%の透明な液体を得
た。
【0190】得られた透明液体を密閉容器中、30℃で
30分間保持後、清浄なガラス板上に塗布し、以後25
℃にて溶媒をゆっくりと約15時間かけてキャストし除
去した。得られたフィルムは、不均一で不透明な凝集を
生じており、均質なフィルムは得られなかった。また膜
厚100μm程度以上ではフィルム下部にシリカの凝
集、相分離が見られた。
【0191】(比較例8、9)フェノ−ル樹脂(プライ
オ−フェンJ−325、大日本インキ化学工業株式会社
製レゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、固形分=60%)10
0重量部に対して、メタノール30重量部を加えた均質
溶液に、比較例8では、シリカゾル(日産化学工業株式
会社製、メタノール溶媒、固形分30.3%、粒子径1
0−15nm)22重量部、メタノ−ル10重量部、比
較例9では、エアロジル(日本アエロジル株式会社製、
粒子径7nm)7重量部、メタノール20重量部からな
る均質液を、滴下混合し、均質混合溶液を調製した。
【0192】本混合溶液を密閉容器中、30℃で1時間
保持後、清浄なガラス板上に塗布し以後25℃にて溶媒
をゆっくりと約5時間かけてキャストし除去した。その
後、150℃まで2℃/分の速度で昇温し、150℃で
50分間保持した。フィルムの透明性は比較例8では透
明(光透過率=97%)であり、比較例9では白濁〜半
透明(光透過率=60%)であった。
【0193】比較例8のフィルムに対して実施例1と同
様な三点曲げ試験を行って得られた力学物性の値は、弾
性率=606kgf/mm2、強度=18.8kgf/
mm2、伸び=3.60%であった。熱硬化性樹脂単体
での値より若干の増加は見られたが本発明における効果
に比べてずっと小さかった。
【0194】(比較例10)フェノ−ル樹脂(プライオ
−フェンJ−325、大日本インキ化学工業株式会社製
レゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、固形分=60%)100
重量部に対して、テトラメチルオルソシリケ−ト(東京
化成工業株式会社製)90重量部、メタノ−ル50重量
部、水50重量部からなる均質液を攪はんしながら順次
滴下して混合し、均質混合溶液を調製した。
【0195】本溶液を直ちに清浄なガラス板上に塗布
し、以後25℃にて溶媒をゆっくりと約5時間かけてキ
ャストし除去した。その後150℃まで2℃/分の速度
で昇温し150℃で30分間保持した。
【0196】得られたフィルム中のシリカの含有量は3
7.5重量%であった(シリカ/樹脂の重量比では0.
60)。フィルムは透明(光透過率=96%)ではある
が、クラックが数多く発生することで細分化された複合
体となり、強度等の測定は出来なかった。
【0197】(比較例11)エポキシ樹脂(エピクロン
850、大日本インキ化学工業株式会社製:ビスフェノ
−ルA型)100重量部と、硬化剤(エピクロンB−0
53、大日本インキ化学工業株式会社製、脂肪族ポリア
ミン)20重量部に対して、テトラメチルオルソシリケ
−ト(東京化成工業株式会社製)30重量部、メタノ−
ル40重量部、水14重量部からなる均質液を攪はんし
ながら順次滴下して混合した。混合により溶液は白沈を
生じて不均質となり、実施例に示したような均質な複合
体調製は出来なかった。
【0198】(比較例12)フェノ−ル樹脂(プライオ
−フェンJ−325、大日本インキ化学工業株式会社製
レゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、固形分=60%)100
重量部に対して、テトラエチルオルソチタネート(東京
化成工業株式会社製)20重量部、THF80重量部か
らなる均質液を攪はんしながら順次滴下して混合した
が、滴下と同時に沈澱が生じ、均質混合溶液は得られ
ず、該混合液から均質な複合体は得られなかった。
【0199】
【発明の効果】本発明は、熱硬化性樹脂の硬度等の表面
特性、制御された摩擦係数、高限界PV値、低磨耗性等
の摺動特性、及び耐衝撃性や特に強度、弾性率、及び伸
びの力学物性をいずれも向上せしめた、成形材料、摺動
材料、摩擦材料、塗料材料、膜等に有用な、熱硬化性樹
脂と金属酸化物の複合体、熱硬化性樹脂と金属酸化物の
複合体未硬化物、及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた熱硬化性樹脂と金属酸化物
の複合体、及び原料フェノール樹脂単体の動的硬さの測
定結果を示す図である。図中、縦軸は動的硬さ[N/m
2]、横軸は押し込み深さ[μm]を示し、複合体の
2つの結果(1)及び(2)は、熱硬化性樹脂と金属酸
化物の複合体の異なる測定部位での測定結果を示す。
【図2】実施例1で得られた熱硬化性樹脂と金属酸化物
の複合体の動的粘弾性測定による貯蔵弾性率とtanδ
の温度依存性を示す図である。図中、縦軸は動的粘弾性
E′[Kg/cm2]及びtanδ[−]、横軸は温度
[℃]を示し、E′及びtanδの後に記された括弧内
の数値は熱処理温度を示す。
【図3】実施例1で用いた原料フェノール樹脂単の動的
粘弾性測定結果を示す図である。図中、縦軸は動的粘弾
性E′[Kg/cm2]及びtanδ[−]、横軸は温
度[℃]を示し、E′及びtanδの後に記された括弧
内の数値は熱処理温度を示す。
【図4】溶剤キャスト法により調製した、熱硬化性樹脂
と金属酸化物の複合体の厚みと複合体中のクラック含有
率との関係の1例を示す図である。図中の数字(%)は
SiO2の含有率を示す。

Claims (43)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェノ−ル樹脂及び/又はフェノ−ル樹
    脂を含有する熱硬化性樹脂の溶液中で、シリコンアルコ
    キシド及び/又はその低縮合物を含有する金属アルコキ
    シドの加水分解・重縮合を行なうのと平行して、溶媒の
    除去及び/または樹脂の硬化反応を行わせることによ
    り、熱硬化性樹脂中に平均径0.01μm〜5μmの金
    属酸化物を含有率1〜35重量%で、マクロ相分離を示
    すこと無く均質に含有させた、熱硬化性樹脂と金属酸化
    物の複合体。
  2. 【請求項2】 金属アルコキシドと、水及び/または溶
    媒、及び/または触媒からなる溶液を調製し、且つその
    溶液自体のゲル化時間の90%以内の時間で予め反応さ
    せたものと、フェノ−ル樹脂及び/またはフェノ−ル樹
    脂を含有する熱硬化性樹脂の溶液とからなる均質溶液を
    調製し、次いで該均質溶液中で金属アルコキシドの更な
    る加水分解・重縮合を行うと共に、溶媒の除去及び/ま
    たは樹脂の硬化反応を行わせることにより、熱硬化性樹
    脂中に平均径0.01μm〜5μmの金属酸化物を含有
    率1〜35重量%で、マクロ相分離を示すこと無く均質
    に含有させた、熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体。
  3. 【請求項3】 フェノ−ル樹脂及び/又はフェノ−ル樹
    脂を含有する熱硬化性樹脂が、金属アルコキシドと相溶
    性のある溶媒に可溶なものであることを特徴とする請求
    項1又は2記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体。
  4. 【請求項4】 フェノ−ル樹脂及び/又はフェノ−ル樹
    脂を含有する熱硬化性樹脂が、金属アルコキシドの加水
    分解により得られるアルコ−ルに可溶なものであること
    を特徴とする請求項3記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物
    の複合体。
  5. 【請求項5】 フェノ−ル樹脂がレゾ−ル系フェノ−ル
    樹脂であることを特徴とする請求項1から4のいずれか
    一つに記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体。
  6. 【請求項6】 フェノ−ル樹脂がハイオルト系フェノ−
    ル樹脂であることを特徴とする請求項1から4のいずれ
    か一つに記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体。
  7. 【請求項7】 フェノ−ル樹脂が、有機溶媒無しで溶融
    成形可能であり、且つ有機溶剤に可溶なノボラック系フ
    ェノ−ル樹脂であることを特徴とする請求項1から4の
    いずれか一つに記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合
    体。
  8. 【請求項8】 熱硬化性樹脂がフェノ−ル樹脂であり、
    且つ金属アルコキシドがシリコンアルコキシド及び/又
    はシリコンアルコキシドの低縮合物から成ることを特徴
    とする請求項1から7のいずれか一つに記載の熱硬化性
    樹脂と金属酸化物の複合体。
  9. 【請求項9】 金属アルコキシドとして、テトラアルコ
    キシシラン及び/又はその低縮合物100重量部に対し
    て、モノアルキルトリアルコキシシラン及び/またはジ
    アルキルジアルコキシシランを1〜40重量部含んだも
    のを用いることを特徴とする請求項8記載の熱硬化性樹
    脂と金属酸化物の複合体。
  10. 【請求項10】 含有される金属酸化物の大きさが、平
    均径0.01μmから0.2μm未満であることを特徴
    とする請求項1から9のいずれか一つに記載の熱硬化性
    樹脂と金属酸化物の複合体。
  11. 【請求項11】 含有される金属酸化物の大きさが平均
    径0.2μmから5μmであることを特徴とする請求項
    1から9のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂と金属酸
    化物の複合体。
  12. 【請求項12】 光透過率が50%以上であり、透明性
    を有する請求項10に記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物
    の複合体。
  13. 【請求項13】 熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体の
    曲げ強度、曲げ弾性率及び破断伸び値の全てが、熱硬化
    性樹脂単体の値より大きいこと特徴とする請求項1から
    11のいずれか1つに記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物
    の複合体。
  14. 【請求項14】 熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体の
    表面硬度の熱硬化性樹脂単体の表面硬度に対する比が
    1.05以上であることを特徴とする請求項1から11
    のいずれか1つに記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複
    合体。
  15. 【請求項15】 更に金属やガラス等の無機繊維及び/
    または粉末を含んで成ることを特徴とする請求項1から
    11のいずれか1つに記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物
    の複合体。
  16. 【請求項16】 更にセルロ−スやアラミド等の有機繊
    維及び/または粉末を含んで成ることを特徴とする請求
    項1から11のいずれか1つに記載の熱硬化性樹脂と金
    属酸化物の複合体。
  17. 【請求項17】 繊維やミルドもしくはそれらを基材と
    する織布や不織布の表面に、請求項1〜11のいずれか
    一つに記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体を0.
    5重量%以上被覆してなる複合体。
  18. 【請求項18】 フェノ−ル樹脂及び/又はフェノ−ル
    樹脂を含有する熱硬化性樹脂の溶液中で、シリコンアル
    コキシド及び/又はその低縮合物を含有する金属アルコ
    キシドの加水分解・重縮合を行なうのと平行して、式1
    で表わされる見かけの溶剤含有率が1〜20重量%の範
    囲まで溶剤を除去して得られる、熱硬化性樹脂と金属酸
    化物の複合体未硬化物。 (式1) 見かけの溶剤含有率(重量%)={(溶剤含有の複合体
    重量)−(溶剤完全除去後の複合体重量)}/(溶剤完
    全除去後の複合体重量)×100
  19. 【請求項19】 有機溶媒無しで溶融成形可能であり且
    つ有機溶媒に可溶なノボラック系フェノ−ル樹脂の溶液
    中で、シリコンアルコキシド及び/又はその低縮合物を
    含有する金属アルコキシドの加水分解・重縮合を行なっ
    た後、ノボラック系フェノ−ル樹脂の溶融温度以下の温
    度で、用いた有機溶媒を乾燥除去して得られることを特
    徴とする、熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体未硬化
    物。
  20. 【請求項20】 予め硬化剤を含ませたノボラック系フ
    ェノ−ル樹脂を用いることを特徴とする請求項19記載
    の複合体未硬化物。
  21. 【請求項21】 更に金属やガラス等の無機繊維及び/
    または粉末を含んで成ることを特徴とする請求項18〜
    20のいずれか1つに記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物
    の複合体未硬化物。
  22. 【請求項22】 更にセルロ−スやアラミド等の有機繊
    維及び/または粉末を含んで成ることを特徴とする請求
    項18〜20のいずれか1つに記載の熱硬化性樹脂と金
    属酸化物の複合体未硬化物。
  23. 【請求項23】 フェノ−ル樹脂及び/又はフェノ−ル
    樹脂を含有する熱硬化性樹脂の溶液中で、シリコンアル
    コキシド及び/又はその低縮合物を含有する金属アルコ
    キシドの加水分解・重縮合を行なうのと平行して、溶媒
    の除去及び/または樹脂の硬化反応を行わせることによ
    り、金属酸化物をマクロ相分離を示すこと無く均質に複
    合体中に含有させることを特徴とする熱硬化性樹脂と金
    属酸化物の複合体の製造方法。
  24. 【請求項24】 下記の工程からなる請求項23記載の
    熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体の製造方法。 (1)金属アルコキシド及び水に対して共に混和性のあ
    る溶媒に、フェノ−ル樹脂及び/又はフェノ−ル樹脂を
    含有する熱硬化性樹脂を溶解した樹脂溶液を調製する。 (2)樹脂溶液に、シリコンアルコキシド及び/又はシ
    リコンアルコキシドの低縮合物を含有する金属アルコキ
    シドと、金属アルコキシド及び水に対して共に混和性の
    ある溶媒と、必要に応じて水及び/又は触媒とを加え
    て、該混合溶液が相分離すること無く均質溶液を形成す
    るように調製する。 (3)該混合溶液がゲル化する前に金属アルコキシドの
    加水分解及び重縮合反応と溶媒の除去及び樹脂の硬化反
    応を平行して行ない、マクロな相分離を生じず、均質な
    熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体を得る。
  25. 【請求項25】 金属アルコキシドと水及び/または触
    媒からなる溶液を調製し、且つその溶液自体のゲル化時
    間の90%以内の時間予め反応させたものと、フェノ−
    ル樹脂及び/またはフェノ−ル樹脂を含有する熱硬化性
    樹脂の溶液とからなる均質溶液を調製し、次いで該均質
    溶液中で金属アルコキシドの更なる加水分解・重縮合を
    行うと共に、溶媒の除去及び/または樹脂の硬化反応を
    行わせることにより、金属酸化物をマクロ相分離を示す
    こと無く均質に含有させた、熱硬化性樹脂と金属酸化物
    の複合体の製造方法。
  26. 【請求項26】 下記の工程からなる請求項25記載の
    熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体の製造方法。 (1)金属アルコキシド及び水に対して共に混和性のあ
    る溶媒に、フェノ−ル樹脂及び/又はフェノ−ル樹脂を
    含有する熱硬化性樹脂を溶解した樹脂溶液を調製する。 (2)シリコンアルコキシド及び/又はシリコンアルコ
    キシドの低縮合物を含有する金属アルコキシドと、該金
    属アルコキシド及び水に対して共に混和性のある溶媒、
    及び水と、及び必要に応じて触媒とを含む溶液を調製
    し、且つその溶液自体のゲル化時間の90%以内の時間
    予め反応させた金属アルコキシド液を調製する。 (3)樹脂溶液、及び金属アルコキシド液、及び必要に
    応じて両液に混和性のある溶媒と、及び必要に応じて水
    及び/又は触媒とを含む混合溶液を、相分離すること無
    く均質溶液を形成するように調製する。 (4)該混合溶液がゲル化する前に金属アルコキシドの
    更なる加水分解及び重縮合反応と溶媒の除去及び樹脂の
    硬化反応を平行して行ない、マクロな相分離を生じず、
    均質な熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体を得る。
  27. 【請求項27】 熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体に
    含有される金属酸化物の大きさが平均径0.01μm〜
    5μmであることを特徴とする請求項23から26のい
    ずれか一つに記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体
    の製造方法。
  28. 【請求項28】 熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体中
    の金属酸化物の含有率が1〜35重量%であることを特
    徴とする請求項23から26のいずれか一つに記載の熱
    硬化性樹脂と金属酸化物の複合体の製造方法。
  29. 【請求項29】 水が金属アルコキシドに対して0.5
    〜12モル比であり、かつ溶媒量が金属アルコキシドと
    水を混和させるに足る量であることを特徴とする請求項
    23から26のいずれか1つに記載の熱硬化性樹脂と金
    属酸化物の複合体の製造方法。
  30. 【請求項30】 熱硬化性樹脂と金属アルコキシドを含
    む溶液に水を含ませず、溶媒キャスト時に接触させた空
    気中の水分により金属アルコキシドの加水分解・重縮合
    を進めることを特徴とする請求項23から26のいずれ
    か1つに記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体の製
    造方法。
  31. 【請求項31】 触媒が有機酸もしくは無機酸であり、
    その量が金属アルコキシドに対して0〜0.3モル比で
    あることを特徴とする請求項23から26のいずれか1
    つに記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体の製造方
    法。
  32. 【請求項32】 フェノ−ル樹脂及び/又はフェノ−ル
    樹脂を含有する熱硬化性樹脂が、金属アルコキシドと相
    溶性のある溶媒に可溶であることを特徴とする請求項2
    3から26のいずれか1つに記載の熱硬化性樹脂と金属
    酸化物の複合体の製造方法。
  33. 【請求項33】 フェノ−ル樹脂及び/又はフェノ−ル
    樹脂を含有する熱硬化性樹脂が、金属アルコキシドの加
    水分解により得られるアルコ−ルに可溶なものである請
    求項32に記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体の
    製造方法。
  34. 【請求項34】 フェノ−ル樹脂がレゾ−ル系フェノ−
    ル樹脂であることを特徴とする請求項23から26のい
    ずれか1つに記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体
    の製造方法。
  35. 【請求項35】 フェノ−ル樹脂がハイオルト系フェノ
    −ル樹脂であることを特徴とする請求項23から26の
    いずれか1つに記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合
    体の製造方法。
  36. 【請求項36】 金属アルコキシドが、シリコンアルコ
    キシドまたはその低縮合物であることを特徴とする請求
    項23から26のいずれか1つに記載の熱硬化性樹脂と
    金属酸化物の複合体の製造方法。
  37. 【請求項37】 金属アルコキシドが、テトラアルコキ
    シシラン及び/又はその低縮合物100重量部に対し
    て、モノアルキルトリアルコキシシランまたはジアルキ
    ルジアルコキシシランを1〜40重量部含んだものであ
    ることを特徴とする請求項23から26のいずれか1つ
    に記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体の製造方
    法。
  38. 【請求項38】 フェノ−ル樹脂及び/又はフェノ−ル
    樹脂を含有する熱硬化性樹脂の溶液中で、シリコンアル
    コキシド及び/又はその低縮合物を含有する金属アルコ
    キシドの加水分解・重縮合を行なうのと平行して、式1
    で表わされる見かけの溶剤含有率が1〜20重量%とな
    るまで溶剤除去を行なうことを特徴とする、熱硬化性樹
    脂と金属酸化物の複合体未硬化物の製造方法。 (式1) 見かけの溶剤含有率(重量%)={(溶剤含有の複合体
    重量)−(溶剤完全除去後の複合体重量)}/(溶剤完
    全除去後の複合体重量)×100
  39. 【請求項39】 有機溶媒無しで溶融成形可能であり且
    つ有機溶媒に可溶なノボラック系フェノ−ル樹脂の溶液
    中で、シリコンアルコキシド及び/又はその低縮合物を
    含有する金属アルコキシドの加水分解・重縮合を行なう
    のと平行して、ノボラック系フェノ−ル樹脂の溶融温度
    以下の温度で、用いた溶媒を乾燥除去することを特徴と
    する、熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体未硬化物の製
    造方法。
  40. 【請求項40】 ノボラック系フェノ−ル樹脂もしくは
    その溶液中に予め硬化剤を含ませておくことを特徴とす
    る請求項39記載の熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体
    未硬化物の製造方法。
  41. 【請求項41】 フェノ−ル樹脂及び/又はフェノ−ル
    樹脂を含有する熱硬化性樹脂の溶液中で、シリコンアル
    コキシド及び/又はその低縮合物を含有する金属アルコ
    キシドの加水分解・重縮合を行なうのと平行して、式1
    で表わされる見かけの溶剤含有率が1〜20重量%とな
    るまで溶剤除去を行なって製造した、溶剤を含有する、
    熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体未硬化物を、溶媒除
    去条件より高温又は高温高圧で加熱成形することを特徴
    とする熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体の成形物の製
    造方法。 (式1) 見かけの溶剤含有率(重量%)={(溶剤含有の複合体
    重量)−(溶剤完全除去後の複合体重量)}/(溶剤完
    全除去後の複合体重量)×100
  42. 【請求項42】 請求項18から22のいずれか一つに
    記載の、見かけの溶剤含有率が1〜20重量%である熱
    硬化性樹脂と金属酸化物の複合体未硬化物を、ペレット
    状、粉末状、ブロック状に粉砕または成形した後、溶媒
    除去の条件より高温又は高温高圧で加熱成形することを
    特徴とする、熱硬化性樹脂と金属酸化物の複合体の成形
    物の製造方法。
  43. 【請求項43】 請求項19または20記載の、ノボラ
    ック系フェノ−ル樹脂と金属酸化物の複合体未硬化物を
    粉末状に粉砕したものをそのまま、もしくは硬化剤を添
    加した後、ノボラック系フェノ−ル樹脂の溶融温度以上
    で加熱成形することを特徴とする熱硬化性樹脂と金属酸
    化物の複合体の成形物の製造方法。
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US6515073B2 (en) 2000-03-30 2003-02-04 Tokyo Ohka Kogyo Co., Ltd. Anti-reflective coating-forming composition
US6667104B2 (en) 2001-06-04 2003-12-23 Sumitomo Bakelite Company Limited Phenol resin composition for wet friction material and wet friction material
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JP2017011032A (ja) * 2015-06-18 2017-01-12 住友ベークライト株式会社 ビルドアップ材、積層板、プリント配線基板、半導体装置および積層板の製造方法
JP2019085506A (ja) * 2017-11-08 2019-06-06 住友ベークライト株式会社 固形フェノール樹脂、樹脂組成物および成形品

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