JPH08248194A - 多層膜反射鏡 - Google Patents

多層膜反射鏡

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JPH08248194A
JPH08248194A JP7047047A JP4704795A JPH08248194A JP H08248194 A JPH08248194 A JP H08248194A JP 7047047 A JP7047047 A JP 7047047A JP 4704795 A JP4704795 A JP 4704795A JP H08248194 A JPH08248194 A JP H08248194A
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JP
Japan
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multilayer film
layer
reflectance
wavelength
multilayer
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JP7047047A
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English (en)
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Wakana Wasa
若菜 和佐
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Nikon Corp
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Nikon Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 軟X線領域において、特に波長28.42 nmの
鉄の輝線スペクトル(Fe XV)に対して、高い反射
率と波長分解能を有する多層膜反射鏡を提供すること。 【構成】 軟X線領域での屈折率と真空の屈折率との差
が小さい物質の第1層(3)と大きい物質の第2層
(2)とを基板(1)上に交互に積層してなる多層膜反
射鏡において、前記屈折率の差が小さい物質としてAl
またはMgを用い、前記屈折率の差が大きい物質として
Si、SiCまたはSiNを用いたことを特徴とする多
層膜反射鏡。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、軟X線領域で用いられ
る多層膜反射鏡、特にX線望遠鏡に好適な多層膜反射鏡
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】X線領域における物質の複素屈折率は、
n=1−δ−ik(δ、k:実数、kはX線の吸収を示
す)で表され、δ、kとも1に比べて非常に小さい。そ
のためX線領域では可視光領域のような屈折を利用した
レンズは利用できない。そこで、反射を利用した光学系
が用いられる。しかし、全反射臨界角θc(波長10n
mで20゜程度以下)よりも垂直に近い入射角では反射
率が非常に小さいので、界面の振幅反射率がなるべく高
い物質の組み合わせを何層も積層することにより、反射
面を多数(例えば数百層も)設けて、それぞれの反射波
の位相が合うように、光学干渉理論に基づいて各層の厚
さを調整した多層膜反射鏡が用いられる。
【0003】より具体的に説明すれば、多層膜反射鏡は
使用するX線波長における屈折率と真空の屈折率(=
1)との差が小さい物質層(第1層)と、差の大きい物
質層(第2層)とを交互に多数積層することによって得
られる。その代表例として、W(タングステン)/C
(炭素)、Mo(モリブデン)/Si(シリコン)など
の組み合わせが従来から知られており、スパッタリン
グ、真空蒸着、CVD(Chemical Vapor
Deposition)などの薄膜形成技術によって
形成されている。
【0004】多層膜反射鏡は、X線を垂直に反射するこ
とも可能なので、全反射を利用した斜入射光学系よりも
収差の小さい光学系を構成することができる。また、多
層膜反射鏡はブラッグの式:2dsinθ=mλ(d:
多層膜の周期長、θ:斜入射角、λ:X線の波長、m:
正の整数)を満たすときのみX線を強く反射するので波
長選択性を有する。なお、dは前記屈折率の差が小さい
物質層と大きい物質層を各1層ずつ積層した積層体の層
厚(膜厚)に相当する。
【0005】近年、X線望遠鏡を宇宙空間に設置して天
体のX線像を観測する、いわゆるX線天文学分野の研究
が盛んに行われるようになった。我国でも、これまでに
「ようこう」、「あすか」と名付けられた人工衛星にX
線望遠鏡が搭載され、太陽等の天体からのX線の観測が
行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの人工
衛星に搭載されたX線望遠鏡は、全反射を利用した斜入
射光学系によるものであり、斜入射光学系には波長選択
性がないことと、収差が大きいために解像力が悪いとい
う問題点があった。例えば、太陽フレアで生成される高
温プラズマやコロナの観測においては、ある特定の温度
領域の画像を得ることが望まれており、そのために多層
膜反射鏡を用いたX線望遠鏡が開発されつつある。
【0007】観測対象の温度は、そこから発生するX線
の波長により知ることができるので多層膜光学系により
特定波長のX線のみの画像を観測すれば、特定の温度分
布のみを抽出して観測することができることになる。具
体的には、鉄の輝線スペクトル(Fe XV)の28.42
nmの波長が重要である。この波長は200万℃の温度
に相当する。
【0008】このような用途に使用する多層膜反射鏡に
は一般に、垂直入射で15%程度以上の反射率と20程
度以上の波長分解能が好ましい値として要求される。波
長分解能とは、波長に対する反射率のカーブを描いた際
のピーク波長をλ、ピークの半値幅をΔλとしてλ/Δ
λで定義される量である。多層膜反射鏡の反射率と波長
分解能は、いずれも積層回数(積層数)を増やすと増加
するが、ある積層数に到達すると、それ以上は増加しな
くなり飽和する。これは、多層膜を構成する物質の吸収
のために基板近傍の層が反射に寄与しなくなるためであ
る。
【0009】多層膜の周期長(d)は、使用波長と光学
系に依存する入射角が決まれば、前記ブラッグの式によ
り決まってしまうが、この場合でも多層膜の周期長に対
する重原子層(前記屈折率の差が大きい物質の層)の層
厚比(Γ)または各層(第1層と第2層)の層厚比には
自由度がある。Γに対する反射率と波長分解能の振る舞
いは異なっており、図2に示すように反射率は上に凸、
波長分解能は下に凸の各曲線を描く。したがって、適切
なΓの値を選択することによって、反射率と波長分解能
とを両立させた多層膜反射鏡を得ることができる。
【0010】しかしながら、前記従来の材料層からなる
多層膜反射鏡では、軟X線領域において、十分な反射率
と波長分解能が得られないという問題点があった。例え
ば、従来から知られているMo/Si多層膜では、図2
に示すように反射率は25%程度得られるが、波長分解
能は10程度の低い値しか得ることができない。本発明
は、このような問題点に鑑みて成されたものであり、軟
X線領域において、特に波長28.42 nmの鉄の輝線スペ
クトル(Fe XV)に対して、高い反射率と波長分解
能を有する多層膜反射鏡を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】したがって、上記目的を
達成する為に本発明では、第一に「軟X線領域での屈折
率と真空の屈折率との差が小さい物質の第1層と大きい
物質の第2層とを基板上に交互に積層してなる多層膜反
射鏡において、前記屈折率の差が小さい物質としてAl
またはMgを用い、前記屈折率の差が大きい物質として
Si、SiCまたはSiNを用いたことを特徴とする多
層膜反射鏡(請求項1)」を提供する。
【0012】また、本発明では第二に「前記積層の回数
を反射率が飽和する値にしたことを特徴とする請求項1
記載の多層膜反射鏡(請求項2)」を提供する。また、
本発明では第三に「前記第1層と前記第2層を一層ずつ
積層した積層体の層厚に相当する前記積層の周期長、及
び前記第1層と前記第2層との層厚比を反射率の中心波
長が28.42 nmまたは略28.42 nmになる値の組み合わ
せにしたことを特徴とする請求項1または2記載の多層
膜反射鏡(請求項3)」を提供する。
【0013】
【作用】多層膜反射鏡の反射率と波長分解能を高めるた
めには、使用する材料の選択が最も重要である。波長分
解能は、反射率が飽和するまでは多層膜の積層回数(積
層数)に比例して増加するので、これを高めるためには
多数の層を積層しても反射率が飽和しないように、吸収
の小さい物質の組み合わせを用いるのがよい。すなわ
ち、複素屈折率n=1−δ−ikの虚部k(物質の吸収
の大きさを表す量)の値が小さい物質を用いるのがよ
い。
【0014】一方、高い反射率を得るためには、各界面
での反射率が高くなるような材料を用いるのがよい。垂
直入射の場合における多層膜界面での振幅反射率rは、
フレネルの式より、多層膜を構成する二つの物質の屈折
率をそれぞれn1 、n2 として次式で与えられる。 r=(n2 −n1 )/(n2 +n1 ) ={(δ12+i(k1 −k2 )}/{(δ12+i(k1+k2 )} ここではkの小さい物質(吸収が小さい物質)を用いる
ので、δ》kとなり、前式は次式のように近似すること
ができる。
【0015】r=(δ1 −δ2 )/(δ1 +δ2 ) 従って、多層膜界面での反射率を高くするためには、δ
の差の大きい物質の組み合わせを用いるのがよい。そこ
で前記2条件(kが小さい物質、δの差の大きい物質の
組み合わせを考慮して多数の物質の組み合わせを検討し
た結果、(前記屈折率の差が小さい物質/前記屈折率の
差が大きい物質)の組み合わせとして、AlとSi、
SiC、またはSiNの各組み合わせ、MgとSi、
SiC、またはSiNの各組み合わせ、が軟X線領域に
おいて、特に波長28.42 nmの鉄の輝線スペクトル(F
eXV)に対して高い反射率と波長分解能を有する多層
膜反射鏡を作製する上で好ましいことが判った。
【0016】そして、この中でも後記の実施例にかかる
組み合わせが特に好ましいことがわかった。また、多層
膜反射鏡の反射率と波長分解能の両方を高めるために
は、反射率の値が飽和するまで積層回数を多くすること
が好ましい。さらに、多層膜反射鏡の反射率の中心波長
を28.42 nmまたは略28.42 nmにするために、積層の
周期長と前記層厚比の各値の組み合わせを選択すること
が好ましい。
【0017】図2は本発明にかかる組み合わせのSiC
/Al多層膜(周期長14.8nm、積層数100ペア)と
従来から知られている組み合わせのMo/Si多層膜
(周期長15.2nm、積層50ペア)の反射率と波長分解
能(λ/Δλ)をΓに対して描いた曲線(計算値)を示
す。Mo/Si多層膜ではΓ0.2 のときに反射率25%
であるが、波長分解能は10となり十分ではない。しか
し、本発明にかかるSiC/Al多層膜を用いるとΓ0.
1 のときに反射率18%、波長分解能42となり、Γ0.
2 のときに反射率32%、波長分解能33となるので、
X線望遠鏡に用いる多層膜反射鏡として十分な性能を得
ることができる。
【0018】なお、計算値のみならず実際に作製した各
多層膜の実測値においても、Mo/Si多層膜(周期長
15.2nm、積層数50ペア)ではX線望遠鏡に用いる多
層膜反射鏡として十分な反射率及び波長分解能は得られ
なかった(反射率15%、波長分解能9)。一方本発明
にかかる多層膜(一例、SiC/Al、周期長14.8n
m、積層数100ペア)を用いると、計算値のみならず
実測値においても、X線望遠鏡に用いる多層膜反射鏡と
して十分な反射率及び波長分解能を得た(反射率25
%、波長分解能31)。
【0019】以下、実施例により本発明をさらに詳しく
説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもの
ではない。
【0020】
【実施例1】本実施例では、重原子層としてSiC、軽
原子層としてAlを用いた。基板1には鏡面研磨した合
成石英を用いた。SiCとAlの各ターゲットを用い
て、イオンビームスパッタリングにより、基板1上にA
l層3とSiC層2を交互に積層して多層膜を作製し
た。SiC/Al多層膜の周期長は14.8nm、Γは0.2
、積層数は100ペアとした。図1にその断面図を示
す(図中では多層膜の層数は実際よりも少なく描いてあ
る)。
【0021】本実施例にかかるSiC/Al多層膜(周
期長14.8nm、積層数100ペア)の反射率を波長に対
して描いた曲線(計算値)を図3に示す。波長28.42 n
mにおける反射率は約32%であり、波長分解能は約3
3であるまた、作製した多層膜の垂直入射の軟X線反射
率を放射光を用いて実測したところ、X線望遠鏡に用い
る多層膜反射鏡として充分な反射率及び波長分解能が得
られた(反射率26%、波長分解能31)。
【0022】
【実施例2】本実施例では、重原子層としてSi、軽原
子層としてAlを用いた。基板1には鏡面研磨した合成
石英を用いた。SiとAlの各ターゲットを用いて、イ
オンビームスパッタリングにより、基板1上にAl層3
とSi層2を交互に積層して多層膜を作製した。Si/
Al多層膜の周期長は14.8nm、Γは0.5 、積層数は1
00ペアとした。図1にその断面図を示す(図中では多
層膜の層数は実際よりも少なく描いてある)。
【0023】本実施例にかかるSi/Al多層膜(周期
長14.8nm、積層数100ペア)の反射率を波長に対し
て描いた曲線(計算値)を図4に示す。波長28.42 nm
における反射率は約19%であり、波長分解能は約50
であるまた、作製した多層膜の垂直入射の軟X線反射率
を放射光を用いて実測したところ、X線望遠鏡に用いる
多層膜反射鏡として充分な反射率及び波長分解能が得ら
れた(反射率16%、波長分解能48)。
【0024】
【実施例3】本実施例では、重原子層としてSiN、軽
原子層としてAlを用いた。基板1には鏡面研磨した合
成石英を用いた。SiNとAlの各ターゲットを用い
て、イオンビームスパッタリングにより、基板1上にA
l層3とSiN層2を交互に積層して多層膜を作製し
た。SiN/Al多層膜の周期長は14.8nm、Γは0.1
、積層数は100ペアとした。図1にその断面図を示
す(図中では多層膜の層数は実際よりも少なく描いてあ
る)。
【0025】本実施例にかかるSiN/Al多層膜(周
期長14.8nm、積層数100ペア)の反射率を波長に対
して描いた曲線(計算値)を図5に示す。波長28.42 n
mにおける反射率は約18%であり、波長分解能は約3
4であるまた、作製した多層膜の垂直入射の軟X線反射
率を放射光を用いて実測したところ、X線望遠鏡に用い
る多層膜反射鏡として充分な反射率及び波長分解能が得
られた(反射率15%、波長分解能31)。
【0026】
【実施例4】本実施例では、重原子層としてSi、軽原
子層としてMgを用いた。基板1には鏡面研磨した合成
石英を用いた。SiとMgの各ターゲットを用いて、イ
オンビームスパッタリングにより、基板1上にMg層3
とSi層2を交互に積層して多層膜を作製した。Si/
Mg多層膜の周期長は14.4nm、Γは0.2 、積層数は1
00ペアとした。図1にその断面図を示す(図中では多
層膜の層数は実際よりも少なく描いてある)。
【0027】本実施例にかかるSi/Mg多層膜(周期
長14.4nm、積層数100ペア)の反射率を波長に対し
て描いた曲線(計算値)を図6に示す。波長28.42 nm
における反射率は約51%であり、波長分解能は約44
であるまた、作製した多層膜の垂直入射の軟X線反射率
を放射光を用いて実測したところ、X線望遠鏡に用いる
多層膜反射鏡として充分な反射率及び波長分解能が得ら
れた(反射率42%、波長分解能41)。
【0028】以上の実施例では、積層の回数を多層膜反
射鏡の反射率が飽和する値とし、また反射率の中心波長
が28.42 nmまたは略28.42 nmになるように、積層の
周期長と層厚比の各値の組み合わせを選択した。
【0029】
【発明の効果】以上のように、本発明にかかる多層膜反
射鏡は、軟X線領域において、特に太陽からのX線観測
において重要な波長28.42 nmの鉄の輝線スペクトル
(FeXV)に対して、高い反射率と高波長分解能の両
方を有する。従って、本発明にかかる多層膜反射鏡をX
線望遠鏡に用いると、その性能を著しく向上させること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる多層膜反射鏡(一例)の概略断
面図である。
【図2】本発明にかかる多層膜反射鏡(一例、SiC/
Al)と従来の多層膜反射鏡(一例、Mo/Si)の反
射率と波長分解能を比較した図である。
【図3】実施例1のSiC/Al多層膜の軟X線領域に
おける反射率(計算値)を示す図である。
【図4】実施例2のSi/Al多層膜の軟X線領域にお
ける反射率(計算値)を示す図である。
【図5】実施例3のSiN/Al多層膜の軟X線領域に
おける反射率(計算値)を示す図である。
【図6】実施例4のSi/Mg多層膜の軟X線領域にお
ける反射率(計算値)を示す図である。
【主要部分の符号の説明】
1・・・基板 2・・・重原子層(軟X線領域での屈折率と真空の屈折
率との差が大きい物質の層) 3・・・軽原子層(軟X線領域での屈折率と真空の屈折
率との差が小さい物質の層) 以 上

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軟X線領域での屈折率と真空の屈折率と
    の差が小さい物質の第1層と大きい物質の第2層とを基
    板上に交互に積層してなる多層膜反射鏡において、 前記屈折率の差が小さい物質としてAlまたはMgを用
    い、前記屈折率の差が大きい物質としてSi、SiCま
    たはSiNを用いたことを特徴とする多層膜反射鏡。
  2. 【請求項2】 前記積層の回数を反射率が飽和する値に
    したことを特徴とする請求項1記載の多層膜反射鏡。
  3. 【請求項3】 前記第1層と前記第2層を1層ずつ積層
    した積層体の層厚に相当する前記積層の周期長、及び前
    記第1層と前記第2層との層厚比を反射率の中心波長が
    28.42 nmまたは略28.42 nmになる値の組み合わせに
    したことを特徴とする請求項1または2記載の多層膜反
    射鏡。
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