JPH08245455A - トランス−2−ブロモインダン−1−オールの製造方法 - Google Patents

トランス−2−ブロモインダン−1−オールの製造方法

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JPH08245455A
JPH08245455A JP7054213A JP5421395A JPH08245455A JP H08245455 A JPH08245455 A JP H08245455A JP 7054213 A JP7054213 A JP 7054213A JP 5421395 A JP5421395 A JP 5421395A JP H08245455 A JPH08245455 A JP H08245455A
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Yoshio Igarashi
喜雄 五十嵐
Shigeru Nakano
茂 中野
Hirohito Konno
裕仁 今野
Fumihiro Asano
文浩 浅野
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ICHIKAWA GOSEI KAGAKU KK
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    • C07C2602/02Systems containing two condensed rings the rings having only two atoms in common
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 トランス−2−ブロモインダン−1−オール
を工業的かつ安価に製造する。 【構成】 一般式(I)で表される1,2−ジブロモイ
ンダン(ただし、式中、1位と2位の臭素原子の配置は
トランスでもシスでもよく、トランス体とシス体の混合
物でもよい)を加水分解することにより、式(II)で表
されるトランス−2−ブロモインダン−1−オールを製
造する。インデンを臭素化して1,2−ジブロモインダ
ンを合成し、これを単離することなく連続的に加水分解
して式(II)で表されるトランス−2−ブロモインダン
−1−オールを製造してもよい。インデンを過酸化水素
の存在下に臭化水素と反応させて1,2−ジブロモイン
ダンを製造することもできる。 【化18】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はトランス−2−ブロモイ
ンダン−1−オールの工業的に有用な製造方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】トランス−2−ブロモインダン−1−オ
ールは抗HIV薬等の医薬中間体である、シス−1−ア
ミノインダン−2−オール製造用原料として有用であ
る。例えば、本願出願人の先願である特願平6−298
619号においては、トランス−2−ブロモインダン−
2−オールを酸性条件下にアセトニトリルと反応させ
て、トランス−1−(アセトアミド)−2−ブロモイン
ダンとし、これを閉環してシス−オキサゾリン誘導体と
した後に加水分解することにより、シス−1−アミノイ
ンダン−2−オールが得られることが記載されている。
また、ガジス(Gagis)等[J.Org.Che
m.,37,3181(1972)]の方法で、トラン
ス−2−ブロモインダン−1−オールを塩基性条件で処
理することにより、シス−1,2−エポキシインダンが
得られる。前記特願平6−298619号には、このエ
ポキシ化合物を酸性条件下にアセトニトリルと反応させ
ることにより、シス−オキサゾリン誘導体が生成し、こ
れを加水分解することにより、シス−1−アミノインダ
ン−2−オールが得られることが示されている。
【0003】これまで、トランス−2−ブロモインダン
−1−オールの製造については、いくつかの方法が開示
されている。例えば、ポーター(Porter)等
[J.Am.Chem.Soc.,57,2022(1
935)]は、臭素水とインデンを反応させて、トラン
ス−2−ブロモインダン−1−オールを得ているが、収
率は31%と低い。また、スーター(Suter)等
[J.Am.Chem.Soc.,62,3473(1
940)]は、臭化ナトリウム水溶液に臭素を飽和さ
せ、多量の分散剤の存在下にインデンと反応させ、トラ
ンス−2−ブロモインダン−1−オールを94%の収率
で得ている。この方法は比較的収率が良いが、5リット
ルの反応容器を用いて204gの目的物しか得られず、
効率が悪い。さらに、反応終了後の反応母液が大量に発
生すること、反応母液は臭化ナトリウムと臭化水素の混
合物であり処理が煩雑であることから工業的には問題が
ある。一方、グース(Guss)等[J.Am.Che
m.Soc.,77,2549(1955)]は、室温
下に3時間、水中でインデンにN−ブロモコハク酸イミ
ドを反応させることにより、トランス−2−ブロモイン
ダン−1−オールを59%の収率で得ている。この方法
は比較的効率が良いものの、経済性を考慮すると、副生
するコハク酸イミドを分離後に臭素化によるN−ブロモ
コハク酸イミドへの再生が必要である。
【0004】以上のように、トランス−2−ブロモイン
ダン−1−オールについては工業的かつ安価な製造方法
が知られていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、トランス−
2−ブロモインダン−1−オールを工業的かつ安価に提
供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】アルケン類を水中で臭素
化すると、臭素カチオンが炭素−炭素二重結合を攻撃す
ることによりブロモニウムカチオン中間体を生成し、こ
の中間体を、溶媒和したアニオン(水中での反応ではO
- アニオン)が攻撃して、ブロモヒドリン類が生成す
ることがダルトン(Dalton)等[J.Am.Ch
em.Soc.,90,5498(1968)]によっ
て開示されている。
【0007】すなわち、先に挙げた先行技術のいずれも
が、この反応機構を含んでいるものと推定される。例え
ば、ポーター(Porter)等の臭素水とインデンの
反応では、臭素水中に含まれる(臭素と水の平衡反応で
生じる)Br+ OH- が反応試剤となっており、最初に
Br+ のインデンへの攻撃によりブロモニウムカチオン
中間体を生成させ、ついでOH- の作用により、トラン
ス−2−ブロモインダン−1−オール(インデンブロム
ヒドリン)が生成している。しかしながら、水中のBr
+ OH- 濃度が小さいために収率が低い。また、スータ
ー(Suter)等は、水中のBr+ OH- 濃度を大き
くするために臭化ナトリウム水溶液に臭素を溶解してい
る。さらに、グース(Guss)等は、水とN−ブロモ
コハク酸イミドからBr+ OH- を発生させ、インデン
との反応に用いている。
【0008】本発明者等は、トランス−2−ブロモイン
ダン−1−オール合成の中間段階として、ブロモニウム
カチオン中間体の生成と濃度が重要であることに着目し
て鋭意検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】インデン系におけるブロモニウムカチオン
中間体の発生方法としては、 1) 1−(置換)−2−ブロモインダン誘導体からの
1位の置換基の引き抜き 2) インデンへのBr+ の攻撃 の2つの方法がある。本発明者等は、まず1)の方法に
ついて検討を進めた。
【0010】インダン骨格の1位の置換基が水酸基であ
る場合、酸性条件下で容易に引き抜かれ、カルボカチオ
ンが生成することが知られている。例えば、スーター
(Suter)等[J.Am.Chem.Soc.,6
2,3473(1940)]は、1,2−インダンジオ
ールや2−クロロ−1−インダノールを酸性水溶液中で
加熱することにより、シス−トランス異性化が生じるこ
とを報告しており、これは1位の水酸基が引き抜かれて
カルボカチオン中間体を生成していることを示唆してい
る(下記式)。
【0011】
【化5】
【0012】一方、本発明者等はトランス−2−ブロモ
インダン−1−オールが酸性条件下でアセトニトリルと
反応して、トランス−1−アセトアミド−2−ブロモイ
ンダンを生成することを見いだしているが(特願平6−
298619号)、これは1位の水酸基が酸によって引
き抜かれて生成したカルボカチオンをアセトニトリルが
攻撃していることを示している(下記式)。
【0013】
【化6】
【0014】さらに本発明者等は、1,2−ジブロモイ
ンダンを用いても、この反応が可能であることを見いだ
している。すなわち、この結果は選択された条件下にお
いて、1,2−ジブロモインダンの1位の臭素原子が引
き抜かれてブロモニウムカチオン中間体を生成すること
を示唆している(下記式)。
【0015】
【化7】
【0016】以上の事実をふまえ、検討を進めた結果、
本発明者等は一般式(I)
【0017】
【化8】
【0018】で表される1,2−ジブロモインダン(た
だし、式中、1位と2位の臭素原子はシス配置でもトラ
ンス配置でもよく、それらの混合物でもよい)を選択さ
れた条件で加水分解することにより、容易に、式(II)
【0019】
【化9】
【0020】で表されるトランス−2−ブロモインダン
−1−オールが得られることを見いだした。
【0021】以下に本発明を詳細に説明する。
【0022】原料である1,2−ジブロモインダンはシ
ス体でもトランス体でもよく、それらの混合物を用いて
も差し支えない。1,2−ジブロモインダンは適当な溶
媒中でインデンと臭素を反応させることによって得られ
る。例えば、ビルップス(Billups)等[J.O
rg.Chem.,44,4218(1979)]は、
エーテル中でインデンを臭素化して1,2−ジブロモイ
ンダンを得ている。また、インデンの臭素化においては
反応溶媒によって生成するシス−1,2−ジブロモイン
ダンとトランス−1,2−ジブロモインダンの比率が異
なることが知られている。ヘーズリー(Heasle
y)等[J.Org.Chem.,45,5150(1
980)]は種々の溶媒中でインデンの臭素化を行って
シス体とトランス体の生成比を報告している。本発明に
おいては、いずれの異性体を用いても、1位の臭素原子
が引き抜かれてブロモニウムカチオン中間体が生成する
ために原料としての使用が可能である。
【0023】1,2−ジブロモインダンは水中でかき混
ぜることによって、所望のトランス−2−ブロモインダ
ン−1−オールに転化する。反応温度は室温から100
℃とすることが好ましいが、より好ましくは50℃〜8
0℃である。温度がこれより低い場合には反応の進行が
遅く、温度がこれより高い場合には、生成した目的物で
あるトランス−2−ブロモインダン−1−オールが異性
化により、シス−2−ブロモインダン−1−オールを経
由して、1−インダノンや2−インダノンに転化するた
めに収率が低下する(下記式)。
【0024】
【化10】
【0025】この加水分解反応を水に難溶の1,2−ジ
ブロモインダンと水の不均一系で行う場合には、撹拌効
率が高いことが好ましい。さらに、有機層と水層との接
触を十分に行わせるためにエマルジョンを形成させるこ
とが好ましく、分散剤や乳化剤の添加が有効である。使
用される分散剤や乳化剤としてはグリセリン脂肪酸エス
テル類、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エス
テル、プロピレングリコ−ル脂肪酸エステル、ポリオキ
シエチレンのエーテル類があり、ポリオキシエチレン
(10)オクチルフェニルエーテル(商品名:Trit
onX−100)が好適である。分散剤や乳化剤の使用
量は1,2−ジブロモインダンに対して0.5重量%〜
10重量%とすることが好ましく、1重量%から5重量
%とすることがより好ましい。分散剤や乳化剤の使用量
がこれより少ないと十分な分散・乳化効果が得られない
ことがあり、これより多いと経済性が悪い。
【0026】また、この加水分解反応は、反応進行とと
もに水に不溶のトランス−2−ブロモインダン−1−オ
ールが析出してくるため、十分な撹拌効果を得るため
に、非プロトン性有機溶媒の存在下に行うことも可能で
ある。例えば、水に不溶あるいは難溶の溶媒を使用する
と反応系は不均一となるから、前述のように分散剤や乳
化剤の使用が好適である。使用できる溶媒としてはジク
ロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭
素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒
やヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエ
ン、キシレン等の炭化水素等が挙げられる。これらの溶
媒の使用量は、原料である1,2−ジブロモインダンと
の相溶性や目的物であるトランス−2−ブロモインダン
−1−オールの溶解度を考慮して決定できる。さらに、
この反応は50〜80℃で行うことが好ましいため、溶
媒もしくは溶媒と水の共沸混合物の沸点が、常圧下にお
いて好ましい反応温度よりも低い場合は、加圧下で行え
ばよい。好ましい溶媒はクロロベンゼン、ジクロロエタ
ンであり、より好ましくはクロロベンゼンである。ま
た、1,2−ジブロモインダンを過剰に使用(すなわ
ち、原料を溶媒として使用)することも可能である。
【0027】一方、この加水分解反応は、水および1,
2−ジブロモインダン、トランス−2−ブロモインダン
−1−オールと相溶性のある溶媒の存在下に行うことも
可能である。溶媒の使用量が少ない場合には不均一系反
応となるが、使用量を選択することにより均一系の反応
も可能である。使用できる溶媒としては、アセトン、メ
チルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルス
ルホキシド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル
−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。この場合も、
好適な反応温度を得るために加圧下の反応が可能であ
る。
【0028】また、1,2−ジブロモインダンの加水分
解反応の速度はpHによって異なり、より低いpH領域
で行うことが好ましい。加水分解の進行に伴って臭化水
素が副生するため、系のpHは次第に低下するので問題
ないが、加水分解の初期のpHが酸性領域において比較
的高い場合には、系のpHを低く設定することが好まし
い。
【0029】反応の進行はガスクロマトグラフィー(G
C)あるいは液体クロマトグラフィー(HPLC)で追
跡できるため、1,2−ジブロモインダンの残存量とト
ランス−2−ブロモインダン−1−オールの生成量から
反応の終了を決定できる。1,2−ジブロモインダンの
加水分解反応に要する時間は反応温度、分散剤の有無、
非プロトン性溶媒の有無および添加した水量で異なるた
め、前述の方法で反応を追跡することが好ましい。
【0030】さらに、出発原料の1,2−ジブロモイン
ダンを合成し、これを単離せずに連続して加水分解を行
って、所望のトランス−2−ブロモインダン−1−オー
ルを得ることも可能である。この場合、臭素化されない
非プロトン性溶媒の存在もしくは非存在下にインデンと
臭素を反応させることにより、1,2−ジブロモインダ
ンを合成し、これに所要量の水を添加して、前記反応条
件で加水分解する方法と、水中でインデンを分散させつ
つ臭素化して1,2−ジブロモインダンを合成し、これ
を臭素化されない非プロトン性溶媒の存在もしくは非存
在下に加水分解する方法とがある。後者の方法の場合、
反応条件を選択することによって、1,2−ジブロモイ
ンダンの生成と加水分解を並行して行うことも可能であ
る。また、過剰のインデンを使用して(すなわち、イン
デンを非プロトン性溶媒として用いて)臭素化を行って
1,2−ジブロモインダンを合成し、未反応のインデン
の存在下に加水分解を行い、トランス−2−ブロモイン
ダン−1−オールを合成することも可能である。1,2
−ジブロモインダンの加水分解では臭化水素が副生する
が、反応条件を選択すれば、インデンへの臭化水素の付
加反応は抑えられる。
【0031】反応終了後の目的物の単離は、非プロトン
性溶媒の使用の可否、および使用量で異なる。
【0032】例えば、非プロトン性溶媒を用いずに反応
を行った場合、生成物は水と分離しているので、これを
固液分離した後に、通常の方法で精製すればよい。ただ
し、生成物は油状の副生成物を含んでおり、これをその
まま濾過、遠心分離すると、所望のトランス−2−ブロ
モインダン−1−オールが濾液中の油状物質に溶解する
ために収率が低下する。このため、反応終了後に、適当
な温度で、トランス−2−ブロモインダン−1−オール
が比較的溶けにくく、副生物が溶けやすい有機溶媒を加
え、水層を分離した後に有機溶媒に分散した目的物を固
液分離することが好ましい。この際には、ジクロロメタ
ン、ジクロロエタン、クロロベンゼン等の有機溶媒を用
いることができる。あるいは、適当な温度でトランス−
2−ブロモインダン−1−オールの溶解度が大きい有機
溶媒で抽出した後に、通常の方法で結晶化させて取り出
せばよい。抽出溶媒としては、酢酸エチル、酢酸プロピ
ル、酢酸イソプロピル等を用いることができる。
【0033】一方、非プロトン性溶媒を用いて反応を行
った場合は、以下のように処理する。トランス−2−ブ
ロモインダン−1−オールの溶解度が比較的小さい溶媒
を使用した場合は、前述のように水層を分離した後に有
機溶媒に分散した目的物を固液分離すればよい。トラン
ス−2−ブロモインダン−1−オールの溶解度が比較的
大きい溶媒を使用した場合は、目的物の晶出が認められ
れば、これを分離後に母液を濃縮し、通常の方法で目的
物を結晶化させればよい。
【0034】本発明者等は、次にインデンへのブロモカ
チオン(Br+ )の攻撃によるインデンブロモニウムカ
チオン中間体の生成について検討した。
【0035】過酸化水素は臭化水素と反応してBr+
- やBr2 を生成すること、この反応系には平衡が存
在することが知られている[ジョレス(Jolles)
編、“Bromine and its compou
nds”,p.100(1966)](下記式)。
【0036】
【化11】
【0037】本発明者等は、インデンの存在下に過酸化
水素および臭化水素を反応させることにより、Br+
発生させ、対アニオンがBr- の場合には、1,2−ジ
ブロモインダンが生成し、対アニオンがOH- の場合に
は、所望とするトランス−2−ブロモインダン−1−オ
ールの合成が可能ではないかと考え、鋭意検討を進めた
結果、1,2−ジブロモインダンおよびトランス−2−
ブロモインダン−1−オールが生成することを発見し、
本発明を完成するに至った。
【0038】本発明を具体的に説明する。
【0039】インデンに対して、過酸化水素は0.5倍
モル〜1.2倍モル使用することが好ましい。インデン
に対して臭化水素は0.5倍モル〜2.2倍モル使用す
ることが好ましい。
【0040】1,2−ジブロモインダンの生成には臭化
水素がインデンに対して2当量モルが必要であるから、
その生成量の最大はインデンの0.5当量モルであり、
トランス−2−ブロモインダン−1−オールの生成には
臭化水素がインデンに対して1当量モル必要であるか
ら、その生成量の最大はインデンの1当量モルである。
(下記式)。
【0041】(1,2−ジブロモインダン生成の場合)
【0042】
【化12】
【0043】(トランス−2−ブロモインダン−1−オ
ール生成の場合)
【0044】
【化13】
【0045】この場合、反応温度と反応系のpH,およ
び水の量(あるいは水中の臭化水素濃度)によって、
1,2−ジブロモインダンとトランス−2−ブロモイン
ダン−1−オールの生成比は変化する。すなわち、反応
温度とpHは1,2−ジブロモインダンの加水分解速度
に影響し、反応温度が好ましくは0℃以下、より好まし
くは−10℃以下の場合、およびpHが好ましくは0.
0以上、より好ましくは1.0以上の場合の生成比は、
ほぼインデンへの付加反応におけるそれとなるが、これ
よりも高い反応温度や低いpHの場合には、1,2−ジ
ブロモインダンの加水分解がインデンへのBr2 もしく
はBrOHの付加反応と並行して生じるために、トラン
ス−2−ブロモインダン−1−オールの生成比が大きく
なる。また、臭化水素と過酸化水素の反応系には平衡が
存在するために、水の量(あるいは水中の臭化水素濃
度)は反応系に発生するBr2 とBrOHの比率に影響
するから、結果として付加反応生成物の比率に関係して
くる。このように、適当な反応条件を選択することによ
り、1,2−ジブロモインダンとトランス−2−ブロモ
インダン−1−オールの生成比を制御することができ
る。すなわち、1,2−ジブロモインダンが所望される
場合は、低い反応温度、pHが0〜7の比較的高い領域
であること、反応系の水量が少ないこと(すなわち、水
中の臭化水素濃度が大きいこと)が好ましく、トランス
−2−ブロモインダン−1−オールが所望の場合は、比
較的高い反応温度、0以下の低いpHで、反応系の水量
が多いこと(すなわち、水中の臭化水素濃度が小さいこ
と)が好ましい。また、トランス−2−ブロモインダン
−1−オールが所望される場合に、これらの混合物を、
前述のように、水の存在下に前述した好ましい条件で処
理するすることにより、混合物中の1,2−ジブロモイ
ンダンが加水分解されて、トランス−2−ブロモインダ
ン−1−オールが得られる。同時に、副生した臭化水素
が残存する過酸化水素と反応して、最終的にはトランス
−2−ブロモインダン−1−オールとなる。
【0046】過酸化水素や臭化水素は一般的には水溶液
であるから、種々の濃度を選択することが可能である。
さらに、過酸化水素水と臭化水素ガスを組み合わせて用
いることもできる。
【0047】本反応を不均一系の液相で水の存在下に行
って、トランス−2−ブロモインダン−1−オールを得
ようとする場合には、臭素化試剤が水層に、インデンが
油層にあるため、撹拌効率が高いことが好ましい。さら
に、有機層と水層の接触を十分に行わせるためにエマル
ジョンを形成させることが好ましく、分散剤や乳化剤の
添加が有効である。使用される分散剤や乳化剤としては
グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソ
ルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコ−ル脂肪酸
エステル、ポリオキシエチレンのエーテル類等があり、
ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル
(商品名:TritonX−100)が好適である。分
散剤や乳化剤の使用量はインデンに対して0.5重量%
〜10重量%とすることが好ましく、1重量%から5重
量%の使用がより好ましい。分散剤や乳化剤の使用量が
これよりも少ないと十分な分散・乳化効果が得られず、
これより多いと経済性が悪い。
【0048】また、この反応を水の存在下に行う場合
は、反応の進行とともに水に不溶のトランス−2−ブロ
モインダン−1−オールが析出してくるため、十分な撹
拌効果を得るために、非プロトン性有機溶媒の存在下に
行うことも可能である。水に不溶あるいは難溶の溶媒を
使用すると反応系は不均一となるから、前述のような分
散剤や乳化剤の使用が好適である。使用できる溶媒とし
ては、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホル
ム、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等
の塩素系溶媒やヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼ
ン、トルエン、キシレン等の炭化水素等が挙げられる。
また、1,2−ジブロモインダンの加水分解条件で付加
反応を行うことも可能である。この際、反応温度は50
〜80℃であることが好ましいため、溶媒もしくは溶媒
と水との共沸混合物の沸点が常圧下において好ましい反
応温度よりも低い場合は、加圧下で行えばよい。好まし
い溶媒はクロロベンゼン、ジクロロエタンであり、より
好ましくはクロロベンゼンである。
【0049】一方、この反応は、水およびインデン、ト
ランス−2−ブロモインダン−1−オールと相溶性のあ
る溶媒の存在下に行うことも可能である。溶媒の使用量
が少ない場合には不均一系反応となるが、使用量を選択
することにより均一系の反応が可能である。使用できる
溶媒としては、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロ
リドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が
挙げられる。この場合も、好適な反応温度を得るために
加圧下の反応が可能である。
【0050】本反応は、前述したように、インデンと臭
素の反応により、1,2−ジブロモインダンを合成し、
その加水分解に引き続いて行うとより有効である。すな
わち、1,2−ジブロモインダンの加水分解では臭化水
素酸が副生するから、反応混合物に臭化水素酸に対して
ほぼ等モル量のインデンを添加し、臭化水素酸とほぼ等
モル量の過酸化水素を作用させることによって、連続的
に所望のトランス−2−ブロモインダン−1−オールを
製造することが可能である。
【0051】さらに、インデンからの連続的な製造も可
能である。例えば、以下のプロセスが可能である。ま
ず、水溶媒でインデン2モルに対して臭素1モルを加え
ることにより、1,2−ジブロモインダン1モルを生成
させる(下記式1)。
【0052】
【化14】
【0053】ついで、加熱下に撹拌することにより1,
2−ジブロモインダンを加水分解を進行させ、1モルの
トランス−2−ブロモインダン−1−オールと1モルの
臭化水素を生成させる(下記式2)。
【0054】
【化15】
【0055】最後に過酸化水素1モルを添加し、トラン
ス−2−ブロモインダン−1−オールもしくは1,2−
ジブロモインダンを生成させ、1,2−ジブロモインダ
ンが生成した場合は所定の温度で加水分解してトランス
−2−ブロモインダン−1−オールを生成させる(下記
式3)。
【0056】
【化16】
【0057】総括すると、2モルのインデンとそれぞれ
1モルの臭素と1モルの過酸化水素の使用により、2モ
ルのトランス−2−ブロモインダン−1−オールが生成
する(下記式4)。
【0058】
【化17】
【0059】
【実施例】以下の実施例で本発明をさらに詳細に説明す
る。
【0060】実施例1 1,2−ジブロモインダン
(I)の加水分解によるトランス−2−ブロモインダン
−1−オール(II)の合成(分散剤を添加) 100mlの三ツ口フラスコに、水50ml、1,2−
ジブロモインダン5.0g(トランス:シス=84:1
6、0.018mol)、TritonX−100
0.2gを仕込み、マグネチックスターラーで混合撹拌
して乳化させた。50〜60℃で6時間かき混ぜた。黄
色の柔らかい粒状の半結晶が沈降した。室温まで冷却し
た後、減圧濾過、ついで水洗して、湿潤した粗結晶4.
26gを得た。これをジクロロメタン10mlに分散さ
せ、0℃でかき混ぜて洗浄した。結晶を減圧濾過して少
量のジクロロメタン(0℃)で洗浄後に乾燥して、トラ
ンス−2−ブロモインダン−1−オールの淡黄色結晶
2.64g(収率:68.4%、HPLC純度:96.
5%)を得た。
【0061】実施例2 1,2−ジブロモインダン
(I)の加水分解によるトランス−2−ブロモインダン
−1−オール(II)の合成(インデンの臭素化からの連
続合成、インデンを臭素と等モル使用、分散剤を添加) 100mlの三ツ口フラスコに、水50ml、インデン
(含量:95重量%)2.44g(0.02mol)、
TritonX−100 0.2gを仕込み、マグネチ
ックスタ−ラ−で混合撹拌して乳化させた。50〜60
℃で臭素3.2g(0.02mol)を滴下し、同温度
で6時間かき混ぜた。沈降した半結晶を濾別し、実施例
1と同様に処理し、トランス−2−ブロモインダン−1
−オールの淡黄色結晶2.89g(インデンからの収
率:67.8%、HPLC純度:97.2%)を得た。
【0062】実施例3 インデン−臭化水素酸−過酸化
水素の反応によるトランス−2−ブロモインダン−1−
オール(II)の合成(分散剤を添加) 1000mlの三ツ口フラスコに、水237ml、イン
デン173.9g(92重量%、1.38mol)、T
ritonX−100 2.8g,臭化水素酸262.
0g(47重量%、1.52mol、インデンの1.1
倍モル)を仕込み、撹拌して乳化させた。60℃でかき
混ぜながら、過酸化水素水147.2g(35重量%、
1.52mol、インデンの1.1倍モル)を4時間2
0分で滴下した。同温度で2時間かき混ぜた後、室温で
一夜かき混ぜた。反応混合物にジクロロメタン200m
lを加え、室温で1時間かき混ぜた後に減圧濾過した。
湿潤結晶を乾燥して、淡黄色結晶のトランス−2−ブロ
モインダン−1−オール(II)246.1g(収率:8
3.9%、GC純度:97.0%)を得た。
【0063】実施例4 1,2−ジブロモインダン
(I)の加水分解によるトランス−2−ブロモインダン
−1−オール(II)の合成(インデンの臭素化からの連
続合成、インデンを過剰に使用、分散剤を添加) 500mlの三ツ口フラスコにインデン43.5g(9
2重量%、0.345mol)、TritonX−10
0 0.7g、水100mlを仕込み、撹拌混合した。
60℃でかき混ぜながら、臭素27.5g(0.172
mol、インデンの0.5倍モル)を約3時間で滴下し
た。この後、60℃でかき混ぜを続けた。臭素滴下直
後、かき混ぜ1時間後において、反応混合物を酢酸エチ
ルで抽出した。トランス−2−ブロモインダン−1−オ
ールの収率を水層中の臭化水素濃度(硝酸銀による沈殿
滴定による)から算出し、抽出層中のインデン量をGC
を用いた絶対検量線法で求めて転化率を算出した。
【0064】
【表1】
【0065】以上の結果から、以下の事実が明らかであ
る。
【0066】1) 臭素滴下後に60℃で1時間かき混
ぜれば、約80%の1,2−ジブロモインダンが目的と
するトランス−2−ブロモインダン−1−オールに転化
する。
【0067】2) 臭素滴下終了時には滴下した臭素の
大半は消費されていることから、1,2−ジブロモイン
ダンの生成速度は極めて大きい。
【0068】3) 臭素滴下終了時においては、生成し
た1,2−ジブロモインダンの約60%がトランス−2
−ブロモインダン−1−オールに転化している。
【0069】実施例5 インデンの臭素化による1,2
−ジブロモインダンの合成と、その加水分解によるトラ
ンス−2−ブロモインダン−1−オールの合成/副生臭
化水素酸−過酸化水素によるインデンからのトランス−
2−ブロモインダン−1−オールの合成(分散剤を添
加) 2000mlの四ツ口フラスコに水1200ml、Tr
itonX−1005.6gを仕込んで、撹拌・分散さ
せた。インデン(88重量%)330.5g(2.50
mol)を添加して一夜放置した。60〜70℃でかき
混ぜながら、臭素200.0g(1.25mol)を4
時間を要して滴下した。溶液はトランス−2−ブロモイ
ンダン−1−オールの結晶とインデンを含む黄色エマル
ジョンとなっていた。同温度で1時間かき混ぜた後、過
酸化水素水(35重量%)139.0g(1.43mo
l)を3.5時間で滴下した。滴下終了後は黄色の結晶
を含むスラリーとなった。60℃で1時間かき混ぜ、放
冷しつつ18時間かき混ぜた。反応液にジクロロメタン
400mlを加え、かき混ぜた後、減圧濾過した。ケ−
キを水200ml、ジクロロメタン160mlで洗浄し
て減圧乾燥して、白色結晶のトランス−2−ブロモイン
ダン−1−オールを410.6g(収率:77.1%)
得た。
【0070】実施例6 インデンの臭素化による1,2
−ジブロモインダンの合成と、その加水分解による、ト
ランス−2−ブロモインダン−1−オールの合成/副生
臭化水素酸−過酸化水素によるインデンからのトランス
−2−ブロモインダン−1−オ−ルの合成(クロロベン
ゼンを使用、分散剤を添加) 500mlの三ツ口フラスコに水160ml、インデン
(95重量%)60.0g(0.49mol)、Tri
tonX−100 1.12gを仕込み、かき混ぜなが
ら60℃まで加熱した。クロロベンゼン80mlを添加
し、60〜63℃で臭素41.2g(0.258mo
l)を1時間で滴下した。クロロベンゼン層をサンプリ
ングし、酢酸エチルで希釈して、GC分析したところ、
以下の組成であった。
【0071】
【表2】
【0072】以上の結果から、インデンのほぼ半量が消
費していること、臭素化で生成する1,2−ジブロモイ
ンダンの約60%が所望のトランス−2−ブロモインダ
ン−1−オールに転化していることがわかる。
【0073】さらに、同温度で2時間45分かき混ぜる
と、クロロベンゼン層にトランス−2−ブロモインダン
−1−オールの白色の結晶が析出した。ついで、61〜
62℃で過酸化水素水(35重量%)23.5g(0.
242mol)を1時間45分を要して滴下し、同温度
で、さらに2時間かき混ぜた。反応混合物を、約2時間
を要して30℃まで冷却後、放冷しつつ一夜かき混ぜ
た。下層のスラリー部分を分離し、5℃まで冷却した後
に減圧濾過した。ケーキをクロロベンゼン20mlで洗
浄後に減圧乾燥して、白色結晶のトランス−2−ブロモ
インダン−1−オールを81.87g(収率:78.2
%)を得た。
【0074】実施例7 インデンの臭素化による1,2
−ジブロモインダンの合成と、その加水分解によるトラ
ンス−2−ブロモインダン−1−オールの合成/副生臭
化水素酸−過酸化水素によるインデンからのトランス−
2−ブロモインダン−1−オールの合成(分散剤を添加
しない) 500mlの四ツ口フラスコに水160ml、インデン
(95重量%)60.0g(0.49mol)を仕込
み、かき混ぜながら63℃に加熱した。60℃〜63℃
で30分を要して、臭素40.1g(0.25mol)
を滴下した。静置すると2層に分離し、下層(有機層)
は淡オレンジ色透明で結晶は観察されなかった。さら
に、60℃で1時間15分かき混ぜると、有機層にトラ
ンス−2−ブロモインダン−1−オールの結晶が観察さ
れた。ついで、62〜67℃でかき混ぜながら、過酸化
水素(35重量%)23.55g(0.24mol)を
25分を要して滴下した。同温度で3.5時間かき混ぜ
た後に、空冷下に一夜かき混ぜた。粘調な半結晶を含む
反応混合物にクロロベンゼン80mlを加え、30分間
かき混ぜた。18℃でスラリ−を減圧濾過し、ケ−キを
少量のクロロベンゼンで洗浄し、減圧乾燥した。白色結
晶のトランス−2−ブロモインダン−1−オールを5
2.14g(収率:49.9%)得た。
【0075】実施例8 インデンの臭素化による1,2
−ジブロモインダンの合成と、その加水分解によるトラ
ンス−2−ブロモインダン−1−オールの合成/副生臭
化水素酸−過酸化水素によるインデンからのトランス−
2−ブロモインダン−1−オールの合成(オルト−ジク
ロロベンゼンを使用、分散剤を使用) 300mlの四ツ口フラスコに水100ml、Trit
onX−100 0.70gを仕込み、かき混ぜなが
ら、オルト−ジクロロベンゼン80ml、インデン(9
5重量%)60.0g(0.491mol)を加えた。
強くかき混ぜながら、空冷下に、20℃から臭素41.
54g(0.259mol)を約5分間で滴下した。滴
下終了時には反応混合物の温度は52℃になった。60
℃で13時間かき混ぜた後、同温度で、過酸化水素水
(35重量%)23.8g(0.245mol)を3時
間を要して滴下した。その後、60℃で3時間かき混ぜ
た後に同温度で分液し、水層とスラリー層に分離した。
水層を、オルト−ジクロロベンゼン120mlで抽出
し、抽出層を先のスラリー層と合わせた。温スラリー層
を撹拌下に徐冷して20℃とし、析出結晶を遠心分離
し、オルト−ジクロロベンゼン30mlで洗浄した。湿
潤結晶を65〜70℃で減圧乾燥して、トランス−2−
ブロモインダン−1−オールの白色結晶を72.18g
(収率:69.0%)得た。
【0076】実施例9 インデン−臭化水素酸−過酸化
水素の反応による1,2−ジブロモインダン(I)およ
びトランス−2−ブロモインダン−1−オール(II)の
混合物の合成 100mlの三ツ口フラスコに、インデン21.6g
(88重量%、0.164mol)、水16.9g、臭
化水素酸31.0g(47重量%、0.18mol)、
クロロベンゼン9mlを仕込み、かき混ぜながら、−1
0℃に冷却した。この時のpHは4.13であった。−
9〜−11℃で過酸化水素水17.5g(35重量%、
0.18mol)を1時間15分を要して滴下した。こ
の時のpHは−0.71であった。滴下終了後に同温度
でかき混ぜを行い、1,2−ジブロモインダン(I)と
トランス−2−ブロモインダン−1−オール(II)の面
積比をHPLCで、インデンの濃度変化をGCの面積%
で追跡した。
【0077】
【表3】
【0078】同温度で、5.5時間かき混ぜた。この時
のpHは−0.31だった。15分を要して15℃に昇
温した。その後同温度で30分かき混ぜ、HPLCおよ
びGC分析を行ったところ、HPLC面積比で(I):
(II)=86:14であり、GCにおけるインデンの面
積%は43であった。さらに、16〜21℃で一夜(約
13時間)かき混ぜて同様に分析すると、HPLC面積
比で(I):(II)=82:18であり、インデンはG
C面積で32%であった。このときのpHは1.33で
あった。ついで、21℃で1.5時間かき混ぜた後、6
0℃に昇温して3.5時間後に分析すると、HPLC面
積比で(I):(II)=79:21であり、インデンは
GC面積で25%であった。さらに、60℃から放冷し
つつ一夜かき混ぜて分析すると、HPLC面積比で
(I):(II)=63:37であり、インデンはGC面
積で13%であった。また、この時のpHは1.40で
あった。
【0079】以上の結果から以下のことが明らかとなっ
た。
【0080】1) −10℃では、低いpH領域(pH
<0)でありながら、(I):(II)の比率がほぼ一定
である。また、インデンは反応で消費されている。この
ことから、0℃以下の低温では、インデンへのBrOH
やBr2 の付加は進行するものの、(II)の加水分解は
極めて遅い。
【0081】2) 室温においては、0℃以下の時と比
較して加水分解反応の進行は速い。また、反応の進行に
伴ってpHは上昇し、速度は低下する傾向がみられる。
【0082】3) 同様のpHにおいて、60℃での加
水分解反応速度は室温の時よりもかなり大きい。
【0083】反応混合物を減圧濾過し、水5ml、クロ
ロベンゼン10mlで洗浄後に40℃で減圧乾燥して、
白色結晶のトランス−2−ブロモインダン−1−オール
(II)26.7g(収率:76.5%)を得た。GC面
積百分率法における純度は100.0%であった。
【0084】実施例10 インデン−臭化水素酸−過酸
化水素の反応による1,2−ジブロモインダン(I)お
よびトランス−2−ブロモインダン−1−オール(II)
の混合物の合成 100mlの三ツ口フラスコにインデン21.6g(8
8重量%、0.164mol)、過酸化水素水17.5
g(35重量%、0.18mol)、クロロベンゼン9
mlを仕込み、かき混ぜながら冷却した。この時のpH
は4.06であった。−9〜−11℃で臭化水素酸3
1.0g(47重量%、0.18mol)を1時間20
分で滴下した。HPLC分析での面積比は(I):(I
I)=95:5であり、GCにおけるインデンの面積%
は53であった。さらに、同温度で1時間20分を要し
て臭化水素酸31.0g(47重量%,0.18mo
l)を滴下した。このときのpHは−0.21であっ
た。また、HPLC分析における面積比は(I):(I
I)=94:6であり、GCにおけるインデンの面積%
は22であった。同温度で1時間かき混ぜて分析する
と、HPLC面積比は(I):(II)=94:6であ
り、GCにおけるインデンの面積%は2.8であった。
このときのpHは0.03であった。さらに、同温度で
一夜かき混ぜて分析すると、HPLC面積比は(I):
(II)=93:7であり、GCにおけるインデンの面積
%は2.6であった。
【0085】以上の結果から、以下のことが明らかとな
った。
【0086】1) 臭化水素濃度が大きくなると(系の
水量が少なくなると)、インデンへの付加反応速度は大
きくなる。
【0087】2) 臭化水素濃度が大きくなると、イン
デンへの付加反応生成物である(I)と(II)の比率が
変わり、(I)の比率が大きくなる。
【0088】3) 実施例9の結果と同様に、−10℃
においては(I)の加水分解は極めて遅い。
【0089】反応混合物を60℃で9時間、ついで一夜
放冷下にかき混ぜた後、析出結晶を減圧濾過し、水5m
l、クロロベンゼン10mlで洗浄した。40℃で減圧
乾燥すると白色結晶のトランス−2−ブロモインダン−
1−オール(II)27.3g(収率:78.1%)を得
た。
【0090】
【発明の効果】本発明によれば、1、2−ジブロモイン
ダンないしインデンを原料とすることにより、良好な収
率で安価かつ簡便にトランス−2−ブロモインダン−1
−オールの工業的製造が可能である。
フロントページの続き (72)発明者 浅野 文浩 福島県いわき市泉町下川字大剣1−133 市川合成化学株式会社内

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I) 【化1】 で表される1,2−ジブロモインダン(ただし、式中、
    1位と2位の臭素原子の配置はトランスでもシスでもよ
    く、トランス体とシス体の混合物でもよい)を加水分解
    することを特徴とする式(II) 【化2】 で表されるトランス−2−ブロモインダン−1−オール
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記加水分解反応を非プロトン性有機溶
    媒の存在下に行うことを特徴とする請求項1記載のトラ
    ンス−2−ブロモインダン−1−オールの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記非プロトン性有機溶媒がクロロベン
    ゼンであることを特徴とする請求項2記載のトランス−
    2−ブロモインダン−1−オールの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記加水分解反応を50〜80℃で行う
    ことを特徴とする請求項1記載のトランス−2−ブロモ
    インダン−1−オールの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記加水分解反応を分散剤もしくは乳化
    剤の存在下に行うことを特徴とする請求項1記載のトラ
    ンス−2−ブロモインダン−1−オールの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記分散剤もしくは乳化剤がポリオキシ
    エチレン(10)オクチルフェニルエーテルであること
    を特徴とする請求項5記載のトランス−2−ブロモイン
    ダン−1−オールの製造方法。
  7. 【請求項7】 インデンを臭素化して前記1,2−ジブ
    ロモインダンを合成し、これを単離することなく連続的
    に加水分解することを特徴とする請求項1記載のトラン
    ス−2−ブロモインダン−1−オールの製造方法。
  8. 【請求項8】 インデンを過酸化水素の存在下に臭化水
    素と反応させることを特徴とする式(I) 【化3】 で表される1,2−ジブロモインダン(ただし、式中、
    1位と2位の臭素原子の配置はトランスでもシスでもよ
    く、トランス体とシス体の混合物でもよい)で表される
    1,2−ジブロモインダンの製造方法。
  9. 【請求項9】 前記反応の溶媒として水を用いることを
    特徴とする請求項8記載のトランス−1,2−ジブロモ
    インダンの製造方法。
  10. 【請求項10】 前記反応を非プロトン性有機溶媒の存
    在下に行うことを特徴とする請求項8記載の1,2−ジ
    ブロモインダンの製造方法。
  11. 【請求項11】 前記非プロトン性有機溶媒がクロロベ
    ンゼンであることを特徴とする請求項10記載の1,2
    −ブロモインダンの製造方法。
  12. 【請求項12】 前記反応を−30〜0℃で行うことを
    特徴とする請求項8記載の1,2−ジブロモインダンの
    製造方法。
  13. 【請求項13】 前記反応を分散剤もしくは乳化剤の存
    在下に行うことを特徴とする請求項8記載の1,2−ジ
    ブロモインダンの製造方法。
  14. 【請求項14】 前記分散剤もしくは乳化剤がポリオキ
    シエチレン(10)オクチルフェニルエーテルであるこ
    とを特徴とする請求項13記載の1,2−ブロモインダ
    ンの製造方法。
  15. 【請求項15】 インデンを水の存在下に過酸化水素お
    よび臭化水素と反応させることを特徴とする式(II) 【化4】 で表されるトランス−2−ブロモインダン−1−オール
    の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記反応を非プロトン性有機溶媒の存
    在下に行うことを特徴とすることを特徴とする請求項1
    5記載のトランス−2−ブロモインダン−1−オールの
    製造方法。
  17. 【請求項17】 前記非プロトン性溶媒がクロロベンゼ
    ンであることを特徴とする請求項16記載のトランス−
    2−ブロモインダン−1−オールの製造方法。
  18. 【請求項18】 前記反応を50〜80℃で行うことを
    特徴とする請求項15記載のトランス−2−ブロモイン
    ダン−1−オールの製造方法。
  19. 【請求項19】 前記反応を分散剤もしくは乳化剤の存
    在下に行うことを特徴とする請求項15記載のトランス
    −2−ブロモインダン−1−オールの製造方法。
  20. 【請求項20】 前記分散剤もしくは乳化剤がポリオキ
    シエチレン(10)オクチルフェニルエーテルであるこ
    とを特徴とする請求項19記載のトランス−2−ブロモ
    インダン−1−オールの製造方法。
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